(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記膜(22)のパターン(26)が、前記支持層(50)の厚さの少なくとも一部にわたって前記支持層(50)の中にも形成されていることを特徴とする請求項6に記載のアレイボロメータ検出器。
前記支持層(50)が、支持側壁と共に、気密筐体(58)を形成し、前記気密筐体(58)が、該気密筐体の中に配置されたマイクロプレート(14)を備えた少なくとも一つのマイクロプレートのアセンブリを有することを特徴とする請求項6又は7に記載のアレイボロメータ検出器。
前記パターン(26)が、前記膜に設けられた開口部によって形成されていて、ガス、特に空気で充填されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のアレイボロメータ検出器。
前記膜(22)が、前記マイクロプレート(14)の支持素子(18)の少なくとも一部の上に存在している構造体によって支持されていることを特徴とする請求項1から7、又は10のいずれか一項に記載のアレイボロメータ検出器。
請求項1から16のいずれか一項に記載のボロメータ検出器を製造する方法であって、支持素子(18)によって基板(16)の上に懸架されたボロメータマイクロプレート(14)のアレイを形成することを備え、該マイクロプレートのアレイを形成することが、
前記基板(16)の上に第一犠牲層(40)を堆積させるステップと、
前記第一犠牲層(40)の上に前記マイクロプレート(14)を堆積させるステップと、
前記第一犠牲層(40)及び前記ボロメータマイクロプレート(14)の上に第二犠牲層(42)を堆積させるステップと、
前記第二犠牲層(42)の上に、検出される放射に対して少なくとも部分的に透明であり、h2=(m×λ)/(2×n2)の関係式を実質的に満たす厚さを有する支持層(50)を堆積させるステップであって、h2が該厚さであり、n2が前記支持層の屈折率であり、mが1以上の正の整数である、ステップと、
支持層(50)及び各マイクロプレート(14)の上に、検出される放射に対して実質的に透明であり且つ第一屈折率を有する層(56)を堆積させるステップと、
マイクロプレート(14)の上に配置された各層(56)の厚さの少なくとも一部にわたって、前記第一屈折率よりも小さな第二屈折率を有するパターン(26)を形成するステップであって、前記パターン(26)が、λ/n以下の周期で、少なくとも一つの所定の軸に沿って、前記層(56)の中に周期的に配置され、λが検出される波長範囲の波長であり、nが前記マイクロプレート(14)を前記層(56)から離隔する媒体の平均屈折率であり、前記第一犠牲層及び前記第二犠牲層が除去されると、各所定の軸に沿った前記パターン(26)の幅が、前記マイクロプレート(14)の中心領域の上に位置する前記層(56)の箇所から、前記層(56)の周辺に向けて増大していく、ステップと、
前記第一犠牲層(40)及び前記第二犠牲層(42)を除去するステップと、を備える、方法。
前記支持層(50)を堆積させるステップが、酸化可能物質の第一層を堆積させるステップと、前記支持層の自由表面を酸化させて酸化層を得るステップと、を備えることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
一般的に受け入れられているように、赤外線検出(広範な意味においては、0.75マイクロメートルから1000マイクロメートルの間の波長範囲)は、ある問題を抱えた技術分野である。実際のところ、あらゆる物体は、0Kよりも高い温度になるやいなや、赤外スペクトルでの放出を行う。従って、赤外線検出器の環境が冷却されていないと、感度の高い素子(基板、コネクタ、パッケージ、光学システム等)を取り囲む部材が、顕著な赤外線を放射して、検出したい場所からの放射に加わる。こうした不要な成分は顕著なものになり得て、場合によっては、測定したい信号よりも大きな信号を形成する。暗信号は、例えば、IRフォトダイオードの場合におけるキャリアの熱生成に起因するものであったり、ボロメータの場合におけるオームの法則に起因するものであったりするものであるが、その暗信号が放射に追加される。こうした不要な成分は、一般的に“熱ノイズ”や“コモンモード”と呼ばれている。
【0003】
従って、他のタイプの検出(特に可視光検出)とは異なり、このコモンモードを効率的に管理することができる構造及び動作を提供することが必要である。このため、初期の高感度赤外線検出器は、超低温(数百ケルビンや、数ケルビン程度)に冷却されて、コモンモードを最少化していた。
【0004】
赤外線検出器には、所謂“量子”検出器と、所謂“熱”検出器という二つの異なる種類があり、特に、熱検出器として、ボロメータ熱検出器がある。周知のように、これら二つの種類の検出の物理的原理は根本的に異なり、それぞれの問題を抱えている。
【0005】
量子検出器の場合、半導体を用いて、赤外スペクトルにおける光子吸収効果の下で電子正孔対を発生させて、それによって生じた電荷キャリアを、電極(大抵の場合、PN接合と組み合わせられる)を介して収集する。
【0006】
一方、ボロメータ熱検出器の場合、入射赤外線のパワーを熱に変換する性能によって選択された吸収物質を用いる。そして、この物質、又は第一物質に接触した第二物質を用いて、発生した熱を、電気特性の変化、一般的には電気抵抗の変化に変換する。そして、その電気特性の変化を測定する。
【0007】
検出器の感度を改善するため、特定のボロメータ検出器構造が設計されていて、つまり、検出器が、断熱支持素子を用いて所謂“読み取り”基板の上に懸架されたボロメータマイクロプレートアレイを備える。
【0008】
既知のように、こうした構造は、特に、基板からのボロメータ素子の断熱を提供する。よって、顕著な感度利得が得られる一方で、この構造は、超低温への冷却を排除することを可能にしている。
【0009】
懸架されたマイクロプレートを用いた構造は多くの利点を有し、特に超低温へ冷却せずに使用することを可能にするが、ボロメータマイクロプレート支持素子の存在によって、現状の製造方法では満足のいく充填率が提供されておらず、マイクロプレートの製造が高度になるほど、充填率が悪くなる。
【0010】
充填率を上昇させる解決法が開発されているが、これは、製造方法をより複雑にして、コストが高くなる。
【0011】
例えば、特許文献1には、三つの積み重ねられたステージ、具体的には、集積回路を備えたステージと、支持ステージと、吸収ステージとを有する検出器が記載されている。従って、吸収ステージが、検出器の全表面を占めることができ、効率を改善している。しかしながら、吸収ステージを支持ステージに電気的に接続するため、電気的相互接続素子が、支持ステージと吸収ステージとの間に入れられる。電気的相互接続素子は、導電性チャネルで形成されて、誘電体シースで包まれる。これは、複雑な製造プロセスにつながり、検出器の一つのステージから他のステージまでの電気的導通性を直に危うくするが、その導通性は、検出器の最適動作によって重要な要素である。更に、吸収ステージと接触した電気的相互接続素子の存在によって、吸収の質及び検出器の感度が低下する。
【0012】
更に、生産量を増やし及び/又は生産コストを減らすために、集合的製造方法が一般的には実施されており、例えば、特許文献2及び特許文献3に記載されているように、複数のマイクロプレートアレイが、同じシリコンウェーハ上で共に製造されて、その後、分離される。
【0013】
集合的製造法方法がマイクロプレートアレイを製造するのに既に使われている場合には、上記二つの特許文献に記載されているように、マイクロエレクトロニクスに基づいた集合的製造方法も用いて、各マイクロプレート用の真空パッケージを直接集積した検出器を形成する。このようなパッケージ、一般的に“集積気密マイクロパッケージ”は、各マイクロプレートの上に形成され且つ両側において基板上に存在するカプセルで形成されて、真空気密に密封される。従って、パッケージングステップを集合的に行うことによって、各マイクロプレートアレイに対して個別に一つの気密パッケージを形成する場合と比較して、検出器の製造時間及びコストを減らすことができる。
【0014】
しかしながら、カプセル支持部のためにマイクロプレートの間に必要な空間は、同じサイズのアレイに対して、検出器の光学活性表面の顕著な減少を意味し、つまりは、検出効率の直接的な減少を意味する。
【0015】
従って、支持素子によって懸架されたボロメータマイクロプレートの有効表面積(赤外線又はテラヘルツ放射の検出専用)が、基板の表面積に対して構造的に制限されて、検出器の感度が低下する。
【0016】
例えば、一辺の長さが12マイクロメートルの正方形のマイクロプレートを備えた検出器(この寸法は、現状におけるボロメータマイクロプレートの最小レベルであり、λ=10μm付近で吸収を行う)では、各マイクロプレートに対して、一辺の長さが少なくとも17マイクロメートルの正方形の基板表面積が必要とされる。従って、一辺の長さが12マイクロメートルのマイクロプレートのアレイの有効表面積(検出専用)は、最大でもアレイの全表面積の50%を占めるだけである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、懸架されたマイクロプレートを用いたボロメータ検出器における有効表面積の減少による感度の減少という上記問題を解決することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
このため、本発明は、赤外線波長又はテラヘルツ波長の所定の範囲内の電磁放射の検出用のアレイボロメータ検出器を対象としていて、その検出器は:
・ 基板;及び
・ その放射の検出用に、支持素子によって基板の上に懸架されたボロメータマイクロプレートのアレイと、を備える。
【0020】
本発明によると、
・ 検出器は、検出される放射に対して実質的に透明な膜を備え、その膜は、第一屈折率を有し、各マイクロプレートの上に配置されていて、その膜の中には、第一屈折率よりも小さな第二屈折率を有するパターンが、その膜の厚さの少なくとも一部にわたって形成されていて;
・ 膜のパターンは、λ/n以下の周期で、少なくとも一つの所定の軸に沿って、その膜の中に周期的に配置されていて、ここで、λは、検出される波長範囲の波長であり、nは、マイクロプレートを膜から離隔する媒体の平均屈折率であり;
・ 各所定の軸に沿ったパターンの幅は、マイクロプレートの中心領域の上に位置する膜の箇所から、膜の周辺に向けて増大していく。
【0021】
更に、膜は支持層の上に存在していて、その支持層は、検出される放射に対して少なくとも部分的に透明であり、h
2=(m×λ)/(2×n
2)という関係式を実質的に満たす厚さを有し、ここで、h
2はその厚さであり、n
2は、支持層の屈折率であり、mは1以上の正の整数である。
【0022】
言い換えると、本発明は、集束現象を共に生じさせる以下の複数の物理的特性の組み合わせである:
・ 検出される放射に対して透明な膜;
・ 検出される放射よりも短い周期によって画定されて、その放射に関する限り区分的に一様な有効屈折率となるように異なる屈折率を有する複数の物質(膜の物質と、膜の中に形成されたパターンの物質)を交互にすること;
・ 膜平面内の有効屈折率勾配、つまり、有効屈折率が、膜の“中心”箇所(又は、マイクロプレートとの関係で検討される他の箇所)から離れるにつれて減少していくこと。例えば、一定のパターンサイズの増分を考えると、双曲線状の有効屈折率プロファイルが、各周期軸に沿って膜平面内に得られる。
【0023】
従って、膜に入射する平面波面について、膜を通り抜ける光は、膜の中心に近づくにつれて益々遅くなる。何故ならば、有効屈折率が中心に向けて増大するからである。膜の出力部における波面は凸曲線を有する。本発明に係る膜は、検出される放射にとって従来の収束レンズと同じ様に振る舞う。従って、膜に入射した放射がマイクロプレート上に集束される。特に、膜がマイクロプレートを越えて延伸しているので、マイクロプレートと一列になっていない膜の部分に入射する放射の一部が、マイクロプレートに“向け直される”。従って、放射検出用の有効表面積が増大して、結果として、検出器の一般的な感度が最適化される。更に、この効果は、マイクロプレートの表面積と、マイクロプレートアレイの全表面積との間の比を実質的に変化させずに、得られる。
【0024】
以下の説明においては、当該分野において一般的に受け入れられているように、検出アレイに関して言及する場合、ピクセルとの用語は、像点に対して出力信号を発生させる全てのハードウェア素子、並びに、その素子用の表面のことであると理解される。
【0025】
更に、支持層は、特に膜を強化することができる。上記の関係式に従って厚さを選択することによって、支持層は光学的に中性になり、膜の出力部における放射は、支持層が存在しないかのように実質的に振る舞う。
【0026】
支持層は、堆積、フォトリソグラフィ、エッチング法によって形成された薄層である。支持層は、薄い厚さ、好ましくは10マイクロメートルよりも薄い厚さを有する。
【0027】
本発明の一実施形態によると、パターンの周期は、λ/(4×n)に実質的に等しい。この値は、放射用の均一な有効屈折率を定めることができる膜パターンのステップのサブ波長特性と、パターン製造の単純性との間の有利な妥協点である。
【0028】
特に、膜のその箇所におけるパターンの幅は、W
0/P≦0.5の関係式を満たし、ここで、W
0は、その箇所における幅であり、Pは、所定の軸に沿った周期である。この値は、得ることのできるパターン寸法を一般的に制限することになる技術的制約を考慮しながら、中心において幅が小さく、外側に向けて幅が大きくなるパターンを提供する。
【0029】
好ましくは、二つの隣接するパターンの幅と幅との間の間隔は、λ/(10×n)以下である。これによって、検出される放射に関して、屈折率の変化が規則的になる。
【0030】
本発明の一実施形態によると、パターンの厚さは、λ/(10×n)以上である。
【0031】
膜の中心と縁との間における膜の出力部における放射の位相シフト差は、特に膜の厚さに依存する。何故ならば、最大位相シフトΔφ
maxが、Δφ
max=(2π/λ)×(n
h−n
b)×h
1との関係式を満たすからであり、ここで、n
hは膜の屈折率であり、n
bはパターンの屈折率であり、h
1はパターンの厚さである。厚さh
1がλ/(10×n)以上となるように選択することによって、高集束を可能にする顕著な位相シフトが得られる。
【0032】
一実施形態によると、mは1である。
【0033】
本発明の一変形例によると、膜のパターンは、支持層の厚さの少なくとも一部にわたって、その支持層の中にも形成される。
【0034】
有利には、支持層は、支持側壁と共に、気密筐体を形成し、その気密筐体は、その気密筐体の中に配置されたマイクロプレートを備えた少なくとも一つのマイクロプレートのアセンブリを有する。
【0035】
一実施形態によると、パターンは、膜の中に形成された開口物を気密充填し、膜が、支持側壁と共に、気密筐体を形成し、その気密筐体は、その気密筐体の中に配置されたマイクロプレートを備えた少なくとも一つのマイクロプレートのアセンブリを有する。膜が、集束機能を果たしながら、マイクロパッケージに属するようにする。
【0036】
特に、気密筐体は、単一のマイクロプレートを備えた個別の筐体である。
【0037】
一実施形態によると、パターンは、膜の中に形成された開口部であり、ガス、特に空気で充填されていて、膜の物質とパターンとの間の強い屈折率比を提供する。何故ならば、ガスの屈折率は、一般的に1に近いからである。従って、高集束が得られる。
【0038】
本発明の一実施形態によると、膜は、マイクロプレート支持素子の少なくとも一部の上に存在する構造体によって支持されて、膜の支持構造の大きさを減少させる。
【0039】
一実施形態によると、膜のパターンは平行なストリップであり、テクスチャリング検出が、単一の偏光に対して高感度となる。
【0040】
一変形例では、膜の中心から縁に向けて減少していく有効屈折率勾配を有する複数の軸が存在する。特に、膜のパターンは正方形又は円形である。これによって、テクスチャリング検出が、入射放射の偏光に対して無反応となる。
【0041】
一実施形態によると、膜は、ゲルマニウム、シリコン、又はこれらの合金製である。これらの物質は、赤外線波長範囲において特に透明である。
【0042】
一変形例では、膜は、SiO
x、SiON、SiN、又はこれらの合金製である。これらの物質は、テラヘルツ範囲内において特に透明である。
【0043】
また、本発明は、上記タイプのボロメータ検出を製造する方法も対象としていて、その方法は、支持素子によって基板の上に懸架されたボロメータマイクロプレートのアレイを形成することを備える。そのマイクロプレートのアレイを形成することは、基板の上に第一犠牲層を堆積させるステップと、第一犠牲層の上にマイクロプレートを堆積させるステップと、を備える。
【0044】
本発明によると、本方法は:
・ 第一犠牲層及びボロメータ膜の上に第二犠牲層を堆積させるステップ;
・ 第二犠牲層の上に、検出される放射に対して少なくとも部分的に透明であり、h
2=(m×λ)/(2×n
2)の関係式を実質的に満たす厚さを有する支持層を堆積させるステップ(h
2はその厚さであり、n
2は支持層の屈折率であり、mは1以上の正の整数である);
・ 支持層及び各マイクロプレートの上に、検出される放射に対して実質的に透明であり、第一屈折率を有する層を堆積させるステップ;
・ マイクロプレートの上に配置された各層の厚さの少なくとも一部にわたって、第一屈折率よりも小さな第二屈折率を有するパターンを形成するステップ(パターンは、λ/n以下の周期で、少なくとも一つの所定の軸に沿って、その層の中に周期的に配置され、ここで、λは、検出される波長範囲の波長であり、nは、マイクロプレートを層から離隔する媒体の平均屈折率であり、第一及び第二犠牲層が除去されると、各所定の軸に沿ったパターンの幅は、マイクロプレートの中心領域の上に位置する層の箇所から、層の周辺に向けて増大するようになる);及び
・ 第一及び第二犠牲層を除去するステップを備える。
【0045】
一実施形態によると、パターンを形成するステップは、層をその厚さ全体にわたってエッチングするステップを備え、支持層及びそのエッチングは、層の選択的エッチングが得られるように選択される。
【0046】
従って、膜層のエッチングによってパターンを形成する際に、支持層が、停止層を形成する。
【0047】
特に、支持層の堆積は、酸化可能物質の第一層を堆積させるステップと、支持層の自由表面を酸化させて酸化層を得るステップと、を備える。
【0048】
本発明は、添付図面を参照して、単に例示として提供される以下の説明を読むことによって、より良く理解されるものである。図面において、同じ参照符号は、同じ又は同様の素子を指称している。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る集束素子を備えた3ボロメータピクセル×3ボロメータピクセルのアレイの概略平面図である。
【
図2】A‐Aに沿った
図1のアレイの概略断面図である。
【
図4】
図1の膜のパターンの周期軸に沿ったその膜の有効屈折率のプロファイルである。
【
図5A】本発明に係る集束膜の存在下における電磁場強度のその膜に垂直な平面内におけるマッピングである。
【
図5B】本発明の集束膜が有る場合と無い場合とにおけるTiNマイクロプレートの吸収曲線のプロットである。
【
図6】本発明に係る集束膜の他の実施形態の平面図である。
【
図7】本発明の第一実施形態に係る集束膜支持構造を製造する方法を示す概略断面図である。
【
図8】本発明の第一実施形態に係る集束膜支持構造を製造する方法を示す概略断面図である。
【
図9】本発明の第一実施形態に係る集束膜支持構造を製造する方法を示す概略断面図である。
【
図10】本発明の第一実施形態に係る集束膜支持構造を製造する方法を示す概略断面図である。
【
図11】本発明の第一実施形態に係る集束膜支持構造を製造する方法を示す概略断面図である。
【
図12】本発明の第一実施形態に係る集束膜支持構造を製造する方法を示す概略断面図である。
【
図13】本発明の第二実施形態に係る気密マイクロパッケージを備えた集束膜支持構造を製造する方法を示す概略断面図である。
【
図14】本発明の第二実施形態に係る気密マイクロパッケージを備えた集束膜支持構造を製造する方法を示す概略断面図である。
【
図15】本発明の第二実施形態に係る気密マイクロパッケージを備えた集束膜支持構造を製造する方法を示す概略断面図である。
【
図16】本発明の第二実施形態に係る気密マイクロパッケージを備えた集束膜支持構造を製造する方法を示す概略断面図である。
【
図17】本発明の第二実施形態に係る気密マイクロパッケージを備えた集束膜支持構造を製造する方法を示す概略断面図である。
【
図18】本発明の第二実施形態に係る気密マイクロパッケージを備えた集束膜支持構造を製造する方法を示す概略断面図である。
【
図19】本発明の第二実施形態に係る気密マイクロパッケージを備えた集束膜支持構造を製造する方法を示す概略断面図である。
【
図20】気密マイクロパッケージを備えた集束膜支持構造を製造する方法の一変形例を示す概略断面図である。
【
図21】気密マイクロパッケージを備えた集束膜支持構造を製造する方法の一変形例を示す概略断面図である。
【
図22】気密マイクロパッケージを備えた集束膜支持構造を製造する方法の一変形例を示す概略断面図である。
【
図23】個別の支持素子を備えたマイクロプレートアレイの平面図である。
【
図24】共通支持素子を備えたマイクロプレートアレイの平面図である。
【
図25】本発明の第四実施形態に係る集束膜支持構造を製造する方法を示す概略断面図である。
【
図26】本発明の第四実施形態に係る集束膜支持構造を製造する方法を示す概略断面図である。
【
図27】本発明の第四実施形態に係る集束膜支持構造を製造する方法を示す概略断面図である。
【
図28】本発明の第四実施形態に係る集束膜支持構造を製造する方法を示す概略断面図である。
【
図29】本発明の第四実施形態に係る集束膜支持構造を製造する方法を示す概略断面図である。
【
図30】本発明の第四実施形態に係る集束膜支持構造を製造する方法を示す概略断面図である。
【
図31】ボロメータマイクロプレートの断熱素子を延長させるためにピクセルの表面積の増大を利用することを示す概略平面図である。
【
図32】テラヘルツアンテナを集積するためにピクセルの表面積の増大を利用することを示す概略平面図である。
【
図33】基板内に追加機能を実装するためにピクセルの表面積の増大を利用することを示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1及び
図2を参照すると、本発明の第一実施形態に係る3ピクセル×3ピクセルのボロメータ検出アレイ10が一例として示されている。
【0051】
各ピクセルは、断熱支持素子18によって基板16の上に懸架されたボロメータマイクロプレート14を備え、0.75マイクロメートルから100マイクロメートルの赤外線波長範囲内及び/又は100マイクロメートルから3ミリメートルのテラヘルツ波長範囲内の入射電磁放射“IR”(incident radiation)を検出することができる。
【0052】
既知のように、マイクロプレート14は、入射放射IRの作用で熱くなり、その加熱に応じた電気抵抗変化を“みる”。例えばシリコン等の同一の物質がこれら二つの機能を果たし、シリコンは、中赤外線範囲の波長を検出するのに適している。
【0053】
断熱支持素子18は、熱伝導性の低い物質で主に形成されて、マイクロプレート14に電気抵抗用のバイアス電圧及び/又は電流を印加することを可能にしている。支持素子18は、基板16内に配置された読み取り回路に電気的に接続されて、マイクロプレート14の分極を生じさせる。
【0054】
各ピクセル12は、基板16の上に堆積させた金属層で形成され且つマイクロプレートの下に配置された平坦な反射体20を更に備える。反射体20は、吸収されずにマイクロプレート14を通り抜けた放射の一部を反射する機能を有し、放射がマイクロプレートを少なくとも2回通過することを可能にし、又は、マイクロプレート14と反射体20との間の距離が例えば四分の一波長板を形成するように調整される場合には共鳴現象を可能にしさえもする。
【0055】
本発明において、ボロメータマイクロプレート14の構造及び動作はあまり本質的ではなく、例えば特許文献4に記載されているようなあらゆるタイプのマイクロプレートが想定され得る。本発明は、マイクロプレートの表面積がピクセルの表面積と比較して小さいあらゆるボロメータアレイに適用される。
【0056】
有利には、各ピクセル12は、検出される放射に対して透明な集束膜22を更に備え、その集束膜22は、支持構造24によってマイクロプレート14の上に懸架されて、その支持構造24は、一つのピクセル12とその隣のピクセルとの間の実質的に中間地点において基板16の上に形成される。集束膜22は、例えば、ゲルマニウム、シリコン、又はこれらの合金製であり、これらの物質は、赤外線放射に対して透明であり、赤外線検出に適している。又は、集束膜22は、例えば、SiO
x、SiON、SiN製であり、これらの物質は、テラヘルツ放射に対して透明であり、テラヘルツ検出に適している。
【0057】
図示されている例において、マイクロプレート14及び膜22は矩形であり、互いの上に中心が置かれている。
【0058】
支持構造24は、例えば、側壁状であり、マイクロプレート14と、支持素子と、ピクセル12用の基板16の表面S
16とを取り囲み、膜22がピクセル12の全表面積を実質的に覆うようにする。特に、膜22は、マイクロプレート14によって覆われていないピクセル12の表面S
16‐S
14の大部分又は全てを実質的に覆う。
【0059】
膜22は、その膜22の幅全体にわたって形成された矩形断面を有する平行で直線状のスロット膜アセンブリを更に備え、それらスロット26は、膜22に入射した放射IR、特に、マイクロプレート14の上に位置していない膜22の部分に入射した放射をマイクロプレート14上に集束させるように配置される。
【0060】
既知のように、マイクロプレート14は、その周囲環境から断熱されて、このために、ガス(例えば、空気や中性ガス)中で懸架されて、大抵は減圧下にある。つまり、膜22はこのガス中で懸架されて、ガスが1に近い屈折率を有するので、スロット26は、膜22を形成する物質の屈折率よりも小さな屈折率を有するパターンを膜22に画定する。
【0061】
図3を参照すると、スロット26は、スロットに垂直な方向Xに沿って規則的に配置され、スロット26の中心軸は、一定周期Pで配置される。この周期は、マイクロプレート14の上に集束される波長λに応じて選択されて、λ/nよりも短い。ここで、nは、マイクロプレート14を膜22から離隔している媒体の屈折率である。周期Pは、好ましくは、λ/(4×n)に実質的に等しく、この値は、一方では周期Pが波長λ/nよりも短くあるべきであることと、他方では周期が短くなるほど製造が難しくなるので簡単にスロットが製造できることとの間の有利な妥協点である。
【0062】
更に、方向Xに沿ったスロット26の幅Wは、膜の22の中心から増大していき、つまり、図示されている例では、マイクロプレート14の中心線上の膜22の箇所から膜22の周辺に向けて幅が増大していき、膜22に入射した光を膜22の下の中心空間に集束させて、マイクロプレート14が“見て”そして吸収する放射量を増大させることができる。
【0063】
有利には、二つの隣接するスロットの幅W
nとW
n+1との間の差(W
n+1−W
n)は、λ/(10×n)以下である。これによって、検出される放射について有効屈折率の変化が規則的なものになる。
【0064】
有利には、膜22の中心から離れていくにつれた幅の増分は一定であり、スロットの幅が線形に増える。しかしながら、スロットの幅を非線形に増加させることもできる。
【0065】
更に有利には、スロットの幅W
0は、W
0/P≦0.5の関係を満たし、好ましくは、実質的にP/2に等しい。W
0/Pが実質的にP/2に等しい条件では、スロットが製造するのに細すぎることを防止して、スロットの製造を容易にすることができる。しかしながら、はるかに小さな値のW
0/Pを提供することができる点に留意されたい。周期Pがλ/(4×n)に等しい場合、幅W
0は、λ/(3×n)よりも小さく、つまり、検出される放射と比較して非常に小さい。スロット26の幅は、膜22の中心から周辺に向けて増えていくが、幅の増分の値(W
n+1−W
n)を考えると、波長と比較して小さいままである。
【0066】
更に有利には、膜22の厚さh
1、つまりスロット26によって形成されるパターンの厚さは、λ/(10×n)以上である。
【0067】
膜22の中心から周辺に向けてのスロット26の増加によって、周期方向に沿って、膜平面内に有効屈折率勾配が存在する。
【0068】
このような勾配が
図4に示されていて、
図4は、方向Xに沿った横軸に対する有効屈折率のプロットである。有効屈折率n
effは、膜を形成する物質の屈折率n
hと、スロットを充填する物質又は媒体の屈折率n
bとの平均を計算することによって計算され、これら屈折率は、物質の充填率によって重み付けされて、有効屈折率は、
【数1】
の関係に従う。ここで、f
bは、低屈折率n
bの物質又は媒体の局所的割合であり、つまり、本実施形態においては、スロット26の局所的幅w
iを周期Pで割ったものである。
【0069】
有効屈折率は、膜22の中心において最大値(n
max)となり、膜22を形成する物質の屈折率n
h以下であり、膜22の周辺において最小値n
minに達するように減少していき、この最小値は、スロット26を充填する媒体の屈折率n
b以上である。値n
maxから値n
minへの減少は、スロット26の幅が増加していく様子に依存する。上記実施形態において、スロット26の幅の増加は一定であり、有効屈折率は、双曲線の一部となる。
【0070】
屈折率勾配によって、膜22を通り抜ける放射は、膜22の中心に近づくにつれて位相シフトの増加を受ける。特に、膜22に入射した平面波面FO
iが受ける位相シフトφ(x)は、一次において、φ(x)=(2π/λ)n
eff(x)×h
1に等しい。膜22を通り抜けた波面FO
tは凸曲線を有し、放射は、中心よりも周辺において速く膜を通り抜ける。そして、放射は、膜22の下において、マイクロプレート14上に集束される。
【0071】
好ましくは、膜は、マイクロプレートからλ/(4n)よりも離れた距離で配置されて、集束強度がその距離において高くなる。
【0072】
図5Aは、方向Xに沿った膜22に垂直な平面内における、集束膜22の存在下における電磁場強度のマッピングであり、膜22に、8〜14μmの範囲内の赤外線放射が照射されている。横軸は方向Xを示し、グレイレベルは、電磁場強度が強くなるほど、明るくなっていて、検出器パラメータは以下のように定められている:
・ 膜22は、11μmの波長に対して調整されている:
・ 周期Pは、2.2μmである;
・ 中心のスロットの幅W0は、0.4μmに等しい;
・ 二つの隣接するスロットの間の幅の増分(W
n+1−W
n)は400nmに等しい;
・ 膜22の厚さh
1は、1.25μmに等しい;
・ シリコン膜22の支持層の厚さh
2は、1.4μmに等しい;
・ 方向Xに沿ったピクセルの幅は、17μmである;
・ その方向に沿ったマイクロプレート14の幅は、12μmであり、マイクロプレート14及び膜が互いの上に中心が置かれている。
【0073】
膜22及びマイクロプレート14は空気中に配置される。マイクロプレート14は、一例として、膜22の底部から5.4μmに等しい膜22からの距離lに存在するものとして示されている。
【0074】
図5Aによく見て取れるように、赤外線電磁場強度の増強を、膜22の下において観測することができ、特に膜22の下の中心領域30において最大の増強を観測することができる。
【0075】
図5Bは、上記膜22が有る場合(実線の曲線)と膜が無い場合(破線の曲線)とにおける6〜15μmの範囲内におけるTiNマイクロプレート14の吸収曲線のプロットである。見て取れるように、広範な波長範囲に対して、吸収の実質的な増強を観測することができ、この増強は、吸収ピークの最大値の30%に近い。
【0076】
膜22によって行われる集束の偏光選択性を可能にする平行な直線状のスロットが膜22に形成された実施形態について説明してきた。その集束光は、膜22の平面内においてスロットに垂直に偏光しているものである。
【0077】
しかしながら、集束は、複数の偏光に適用できることが望まれることもある。
【0078】
一変形例では、集束膜22のパターンを、膜平面内の複数の異なる方向に沿って規則的に配置する。
図6に示される一例では、交差したスロット32、34の二つのネットワークが、それぞれ軸X及び軸Yに沿って規則的に配置されていて、二つのネットワークは、同じ幅の増分を有する。このような配置は、軸X及び軸Yに沿った同じ偏光検出を提供する。勿論、対象とする応用に応じて、他の構成も可能である。一つには、軸Xに沿った周期が、軸Yに沿った周期と異なり得る。同様に、軸Yに沿ったものとは異なる軸Xに沿った幅の増分を提供することができる。同様に、直交しない軸X及び軸Y、及び/又は、一つ又は複数の追加的な軸に沿ったスロットを提供することができる。また、一変形例として、スロットネットワークに代えて、長方形、正方形、円形、又は他のパターンを集束膜の厚さ方向にわたって形成することができる。この場合も、膜平面内に軸を定義することができて、その軸に沿って、パターンが規則的に間隔を空けて配置されて、軸に沿ったパターンの幅は、膜の縁に近づくにつれて増加していく。同様に、同心状の閉じた輪郭、例えば、正方形、長方形、又は円形の輪郭を成すスロットを画定することができる。こうした一部構成には、膜22の部分的エッチングや、膜22の機械的保持のための支持層の存在が必要とされる。
【0079】
以下、本発明に係る膜の複数の実施形態及びその製造方法を、特に集束膜懸架構造に関して、説明する。
【0080】
概略断面図である
図7から
図12は、第一実施形態の懸架構造の製造方法を示す。
【0081】
本方法は、基板16の上に、マイクロプレートアレイ14と、支持素子18と、反射体20とを製造することで始まる。この製造ステップは従来どおりの既知のものであり、基板16の上に堆積させた犠牲層40の上に、マイクロプレート14が形成される(
図7)。
【0082】
マイクロプレートが形成されると、本方法は、第一犠牲層40と、マイクロプレート14と、支持素子18との上に第二犠牲層42を堆積させることへと続く。第二層42の厚さは、集束膜22とマイクロプレート14との間の所望の距離lに等しい(
図8)。第二層42は、例えば、スピンコーティング法によって堆積されて、有利には、第一層40と同じ物質製であり、特に、ポリイミド、ポリマー、例えば、BCB(ベンゾシクロブテン,benzocyclobutene)ベースのもの、アニーリングされたレジスト等である。第一層40及び第二層42が共に一般的な一つの犠牲層44を形成する。
【0083】
次に、犠牲層44を基板16までエッチングして、集束膜の支持構造に対して望まれる箇所において、各マイクロプレート14及びその支持素子18の周囲全体にわたってトレンチ46を設け、例えば、トレンチが、マイクロプレート14用の基板16の表面まで形成される(
図9)。トレンチ46は、有利には、大きなエッチング異方性を提供する反応性イオンエッチング(RIE,reactive ion etching)によって、又は酸素ベースのエッチング剤によって形成される。
【0084】
次に、検出される放射に対して透明な物質を全面に堆積させて、犠牲層44及びトレンチ46を、集束膜を形成する層48で覆う(
図10)。この堆積は、好ましくは、化学気相堆積(CVD,chemical vapor deposition)によって行われ、トレンチ46側面における堆積の優れたコンフォーマル性を提供する。例えば、層48は、赤外線検出用にはゲルマニウム、シリコン、又はそれらの合金製であり、テラヘルツ検出用にはSiO
x、SiON、又はSiN製である。
【0085】
次に、リソグラフィ及びエッチング、例えばRIE型ドライエッチングを行って、層48に開口部26を形成し、本発明の集束膜22を形成する(
図11)。本願では、リソグラフィ及びエッチングは既知の方法で行われる。
【0086】
最後に、例えば、酸素又はオゾンプラズマによって、犠牲層44を除去する(
図12)。
【0087】
本実施形態は、製造ステップが最小数であるため、有利である。
【0088】
以下、概略断面図である
図13から
図19を参照して、第二実施形態の支持構造及びその製造方法を説明する。本第二実施形態は、集束膜及び各マイクロプレート用の気密カプセルを共に製造することを可能にする。
【0089】
本方法は、
図7から
図9を参照して説明したものと同じステップで始まり、半導体又は誘電体の物質を全面に堆積させることへと続き、犠牲層44及びトレンチ46が、その物質の層50で覆われる(
図13)。第一実施形態とは異なり、マイクロプレート14の上に堆積される第二犠牲層42の厚さは、層50の厚さを考慮に入れていて、層42及び層50の厚さの和が、集束膜22とマイクロプレート14との間の所望の距離lに等しい。
【0090】
層50の物質は、特に、結合及び堆積のコンフォーマル性に関して、基板16の物質と適合性があるように有利には選択される。
【0091】
更に、層50の物質は、検出される波長範囲においてあまり吸収性を示さないように選択される。例えば、赤外線波長範囲に対して、層50の物質は、ゲルマニウム、シリコン、又はSiGeであり、テラヘルツ波長範囲に対して、層50の物質は、シリコン酸化物SiO
x、SiON、又はSiNである。
【0092】
層50(その上に後で膜22が形成される)の厚さは、有利には、層50が光学的に中性であるように選択される。このため、その厚さは、h
2=(m×λ)/(2×n
2)という関係式を実質的に満たす。ここで、h
2は、その層50の厚さであり、n
2は、支持層の屈折率であり、mは、1以上の正の整数である。
【0093】
本方法は、リソグラフィ及びエッチング、例えば、ドライRIE型エッチングへと続き、犠牲層44に至るまで層50内に解放ベント54を形成する(
図14)。次に、例えば、解放ベント54を介して適用される酸素又はオゾンプラズマによって、犠牲層44を除去する(
図15)。
【0094】
本方法は、集束膜を形成する物質、例えば上述のもののいずれかを全面に堆積させることへと続き、トレンチ46及び解放ベント54の中を含んで層50を覆う層56を形成する(
図16)。従って、マイクロプレート14及び支持素子18の周りに気密空間58が得られる。層56は、空間58内に高真空が得られるように、スパッタリング、CVD、又は蒸着によって形成される。そして、マイクロプレート14の気密集積パッケージが得られる。
【0095】
検出器の感度を最大化するためにその検出器の断熱が望まれる場合には、超低圧、典型的には1mTorr以下の圧力で行われる堆積法を用いて、層56の堆積を行い、層56の堆積による密封時におけるキャビティ内の圧力を最少化することが好ましい。
【0096】
更に、真空寿命、つまりは検出器寿命を最大化させることが望まれる場合には、検出器の寿命中においてキャビティ内で脱ガスを行い得る種の数を可能な限り減らすことが望ましい。CVD型の堆積前駆体ガスは、典型的にはこうした種に属し、同様に、スパッタリング堆積の場合に層56の物質をスパッタするのに用いられるイオン(典型的にはアルゴン)も、後にキャビティ内で脱ガスを行う傾向がある。従って、脱ガスを制限する解決法は、層56を堆積させるのに蒸着法を使用することである。
【0097】
しかしながら、気相堆積は一般的に、本質的に垂直方向に堆積される層の成長軸を有し、コンフォーマル性が非常に悪い。従って、気相堆積でベント54を気密密封することが(ベント54のサイズに応じて)困難に又は不可能になり得る。これは、蒸発した原子が非常に低いエネルギーしか有さず、堆積用の支持体(この場合、層50)として用いられる表面と接触すると、非常に短い距離しか移動しないからである。
【0098】
そこで、気相堆積によって提供される非常に良好な真空レベル及び低い脱ガス性を利用する解決法は、堆積支持体(この場合、層50)と接触する際に、蒸発原子のエネルギーを増大させることである。これは、例えば、蒸着中に基板16を典型的には150℃以上に加熱することによって行われ得る。層50は、トレンチ46によって基板16と直接接触するので、層50も加熱されて、入射してきた蒸発原子にエネルギーを与え、層50の表面においてその原子が移動する距離が増えて、層56の堆積のコンフォーマル性を増大させることによって、ベント54の密封を(ベント54のサイズに応じて)可能に又は容易にすることができる。
【0099】
次に、リソグラフィ及びエッチング、例えば、RIE型ドライエッチングが行われて、層56内に開口部26を形成し、本発明の集束膜22を形成する。エッチングは、層56の厚さ全体にわたって行われ(
図17)、又は、上述のパターンの厚さh
1が層56のエッチングされた厚さとなるように層56の厚さの一部にわたって行われ(
図18)、又は、層56全体に対して且つ層50の厚さの一部にわたって行われる(
図19)。
【0100】
層56の厚さ全体にわたるネットワークのエッチング(
図17)は、エッチングステップ中において停止層を使用することを可能にする。停止層の存在は、集束膜22を形成するのに複数の利点を提供する。これは、オーバーエッチングによって、エッチングの不均一性の可能性を排除することを可能にする。同様に、オーバーエッチングは、エッチングを行うのに用いられる設備のドリフトが生じた場合であっても、層56のエッチングが開口部26内で効果的に完了することを保証する。従って、停止層の使用は、開口部26をエッチングする方法の制御、つまりは集束膜22の出力を増大させる。更に、停止層の存在は、開口部26の深さが全てのアレイ検出器に対して同一となることを保証し、従って、アレイスケールにおける集束の均一性、つまりは吸収の均一を保証し、これは画像形成にとって重要である。
【0101】
しかしながら、停止層としての層50の使用には、層50を形成する物質(典型的には、シリコン)に対して非常に高い選択性を有する層56のエッチング法を用いる必要がある。現状では、この選択性は得ることが難しいか不可能なものである。例えば、集積を簡単にするため、層56の物質は、層50の物質と同一であり得て(典型的にはシリコン)、又は、層56及び50の物質(典型的にはゲルマニウム及びシリコン)は、エッチングに用いられる化学薬品に対して同じ選択性を有し得る。
【0102】
そこで、層56をエッチングするための停止層を用いること(上述の利点を有する)を可能にする解決法は、層56を堆積させる前に、層50の表面酸化ステップを行うことである。例えば、解放ステップの最後における100℃以上の温度上昇段階が、層50を酸化させることを可能にする。形成される表面酸化物は、停止層として使用するのに十分なものである一方、十分に薄い(典型的には10から20nmの間)のままであり、入射波の透過を妨げない。典型的には、臭化水素(HBr)の流れを用いたRIEエッチング法が、層50のシリコンの表面酸化物で停止するように、層56を形成するシリコン又はゲルマニウムをエッチングすることを可能にする。
【0103】
以下、
図20から
図22の概略断面図を参照して、一変形例の実施形態の支持構造及びその製造方法を説明する。本変形例は、犠牲層44の除去を加速させること、及び/又は、検出器に対して制限が少ない解放方法、例えば、低温及び/又は低出力での方法を使用することを可能にする。
【0104】
本方法は、
図13を参照して説明した構造を得るためのステップで始まり、リソグラフィ及びエッチング、例えばRIE型ドライエッチングへと続き、層50の全体に、低屈折率のパターン26を画定し、パターン26は、後で、膜の高屈折率物質と交互にされる(
図20)。次に、例えば、層50に設けられた開口部を介して適用される酸素又はオゾンプラズマによって、犠牲層44が除去される(
図21)。
【0105】
本方法は、集束膜を形成する物質、例えば、上述のもののいずれかを全面に堆積させることへと続き、トレンチ46の中を含んで層50を覆い且つパターン26間の開口部を充填する層60を形成する(
図22)。空間58内に高真空が得られるように、層60の堆積は、スパッタリング、CVD、又は蒸着によって行われる。これによって、マイクロプレート14用の集積気密パッケージが得られる。
【0106】
個々の支持素子によって懸架されたボロメータマイクロプレートに対する本発明の応用、つまり、各マイクロプレートを一つずつ懸架することについて説明してきた。個別の支持素子18を備えたマイクロプレートアレイ14の平面図が
図23に示されている。
【0107】
他方、
図24に示されるように、支持素子が二つの隣接するマイクロプレートを共に懸架する構造も存在し、
図24は、共通支持素子18を備えたマイクロプレートアレイの平面図である。
【0108】
しかしながら、自由空間が各マイクロプレート及びその支持素子の周囲全体にわたって存在しているという個別の支持素子を備えた設計とは異なり、共通支持素子を用いる場合、マイクロプレート及びその支持素子の周りの連続的な側壁で形成された集束膜用支持構造を形成することは不可能である。従って、基板上に存在させようとすると、共通支持素子に基づいた設計でこの構造を製造することが複雑になることは容易に理解できる。
【0109】
以下、
図25から
図30の簡略化した断面図を参照しながら、共通支持素子に基づいた設計で集束膜を製造する単純な方法を説明する。
【0110】
本方法は、基板16の上に、マイクロプレートアレイ14と、共通支持素子18と、反射体20とを製造することで始まる。この製造ステップは、従来どおりの既知のものであり、マイクロプレート14が、基板16上に堆積させた犠牲層40の上に形成される(
図25)。
【0111】
マイクロプレート14が形成されると、本方法は、第一犠牲層40と、マイクロプレート14と、共通支持素子18との上に第二犠牲層42を堆積させることへと続く。第二層42の厚さは、集束膜22とマイクロプレート14との間の所望の距離lに等しい(
図26)。第二層42は、例えば、スピンコーティング法によって堆積され、有利には、第一層40と同じ物質製であり、特に、ポリイミド、ポリマー、例えばBCB(ベンゾシクロブテン)ベースのもの、アニーリングされたレジスト等である。第一層40及び第二層42は共に一般的な一つの犠牲層44を形成する。
【0112】
次に、犠牲層44のエッチングステップを行い、共通支持素子18の少なくとも一部の上に、より正確には、基板16に機械的に接続された素子18の垂直構造の一部又は全部の上に、トレンチ62を形成する(
図27)。例えば、高いエッチング異方性を与えるRIE型ドライエッチングが行われる。
【0113】
次に、検出される放射に対して透明な物質、例えば上述のもののいずれかを全面に堆積させて、犠牲層44及びトレンチ62が、この物質の層64で覆われる(
図28)。
【0114】
次に、リソグラフィ及びエッチング、例えばRIE型ドライエッチングを行い、層64の中にパターン26を形成し、本発明の集束膜22を形成する(
図29)。最後に、例えば、酸素又はオゾンプラズマによって、犠牲層44を除去する(
図30)。
【0115】
集束膜のみが上記実施形態に従って形成されているが、
図13から
図19の実施形態に関して説明した実施形態と同様に誘電体及び/又は半導体の層を提供することもできる。有利には、追加的な層は、共通支持素子の断熱機能を可能な限り乱さないように更に断熱性の物質製である。同様に、
図20から
図22に関して説明した方法と同様に集束膜を製造することができる。
【0116】
同様に、必要に応じて、個々の支持素子の上に存在する集束膜支持構造を提供することもできる。
【0117】
本発明は、有利には、気密集積マイクロパッケージにおいて使用可能であり、マイクロパッケージの上面に配置された集束膜が、マイクロパッケージの側面によって生じる光学活性表面積の損失を補償する。このタイプのパッケージでは必ず生じる検出器の効率低下を最少化しながら、パッケージの集合的形成によって製造コストの削減が可能になるという利点が得られる。
【0118】
また、本発明を用いて、マイクロプレートの表面積を増大させずにピクセルサイズを増大させることもでき、ピクセルの表面積の増大は、既存の機能を改善したり、新たな機能を追加したりするのに資する。例えば、ボロメータマイクロプレート断熱素子用の表面積を、
図31に示されるように増大させることができ、その
図31は、破線の正方形で示された表面を有する本発明に係る膜22の下に配置された延長断熱素子70を備えたマイクロプレート14の概略断面図である。
【0119】
他の例では、ピクセル表面積の増大を用いて、
図32の概略平面図に示されるように、第二検出素子を提供することができ、具体的には、テラヘルツアンテナ72が、テラヘルツ放射の検出用に提供されている。
【0120】
他の例では、
図33に示されるように、ピクセル当たりの表面積の増大を用いて、懸架されているボロメータマイクロプレートを有する基板内において、追加機能、例えば、ピクセル信号のデジタル変換、又はCMOSレベルの可視センサを実装することができる。