特許第6019131号(P6019131)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6019131架橋されたポリ乳酸を用いた発泡シート及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019131
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】架橋されたポリ乳酸を用いた発泡シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/10 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
   C08J9/10CFD
【請求項の数】16
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-547091(P2014-547091)
(86)(22)【出願日】2012年12月6日
(65)【公表番号】特表2015-500386(P2015-500386A)
(43)【公表日】2015年1月5日
(86)【国際出願番号】KR2012010514
(87)【国際公開番号】WO2013089387
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2014年6月11日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0133976
(32)【優先日】2011年12月13日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509286787
【氏名又は名称】エルジー・ハウシス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LG HAUSYS,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】カン・チャンウォン
(72)【発明者】
【氏名】フアン・スンチョル
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ジヒャン
【審査官】 芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/078413(WO,A1)
【文献】 特開2010−111740(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/052543(WO,A1)
【文献】 特開2007−069965(JP,A)
【文献】 特開2004−181821(JP,A)
【文献】 特開2011−213820(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/103969(WO,A1)
【文献】 特開2003−128901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00−42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸樹脂を含む樹脂層を少なくとも一つ含む発泡シートにおいて、
前記樹脂層に含まれたポリ乳酸樹脂は非晶質ポリ乳酸樹脂であり、架橋されたものであり、発泡セルはクローズド構造であり、
前記樹脂層は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、架橋剤0.001重量部ないし10重量部、発泡剤0.1重量部ないし10重量部、
架橋助剤としてTAIC(トリアリルイソシアヌレート)を1.0重量部以下(0は含まない)、
発泡助剤としてジンク2―エチルヘキサノエートを10.0重量部以下(0は含まない)、
を含む生分解性樹脂組成物によって形成されることを特徴とする発泡シート。
【請求項2】
前記ポリ乳酸樹脂は、L―ポリラクチド、D―ポリラクチド、L,D―ポリラクチドから選ばれた1以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の発泡シート。
【請求項3】
前記架橋剤は、ジクミルパーオキシドまたはパーブチルパーオキシド、ジメチルジ―t―ブチルパーオキシヘキサン、t―ブチルエチルヘキシルモノパーオキシカーボネート、1,1―ジ(t―ブチルパーオキシ)―3,3,5―トリメチルシクロヘキサンから選ばれた1種以上の有機過酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の発泡シート。
【請求項4】
前記発泡剤は、アゾジカルボンアミド(azodicarbonamide)、p,p’―オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(p,p’―oxybisbenzenesulfonylhydrazide)、p―トルエンスルホニルヒドラジド(p―toluenesulfonylhydrazide)、ベンゼンスルホニルヒドラジド(benzenesulfonylhydrazide)から選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の発泡シート。
【請求項5】
前記生分解性樹脂組成物は、可塑剤、無機充填剤から選ばれた1種以上をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の発泡シート。
【請求項6】
前記可塑剤の含量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して100重量部以下であることを特徴とする請求項5に記載の発泡シート。
【請求項7】
前記無機充填剤の含量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して300重量部以下であることを特徴とする請求項5に記載の発泡シート。
【請求項8】
ポリ乳酸樹脂を含む樹脂層を少なくとも一つ含む発泡シートの製造方法であり、
非晶質ポリ乳酸樹脂100重量部、架橋剤0.001重量部ないし10重量部、および架橋助剤としてTAIC(トリアリルイソシアヌレート)を1.0重量部以下(0は含まない)を含む第1組成物を昇温して架橋すること;
前記の架橋された第1組成物にポリ乳酸樹脂100重量部に対して発泡剤0.1重量部ないし10重量部、発泡助剤としてジンク2―エチルヘキサノエートを10.0重量部以下(0は含まない)をさらに添加して得た第2組成物を、押出またはカレンダリングしてシートを製造すること;
前記シートをオーブンに通過させて発泡させること;
を含むことを特徴とする発泡シートの製造方法。
【請求項9】
前記発泡シートの発泡セルは、クローズド構造であることを特徴とする請求項8に記載の発泡シートの製造方法。
【請求項10】
前記ポリ乳酸樹脂は、L―ポリラクチド、D―ポリラクチドから選ばれた1以上を含むことを特徴とする請求項8に記載の発泡シートの製造方法。
【請求項11】
前記架橋剤は、ジクミルパーオキシドまたはパーブチルパーオキシド、ジメチルジ―t―ブチルパーオキシヘキサン、t―ブチルエチルヘキシルモノパーオキシカーボネート、1,1―ジ(t―ブチルパーオキシ)―3,3,5―トリメチルシクロヘキサン等からなる群からから選ばれた1種以上の有機過酸化物であることを特徴とする請求項8に記載の発泡シートの製造方法。
【請求項12】
前記発泡剤は、アゾジカルボンアミド(azodicarbonamide)、p,p’―オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(p,p’―oxybisbenzenesulfonylhydrazide)、p―トルエンスルホニルヒドラジド(p―toluenesulfonylhydrazide)、ベンゼンスルホニルヒドラジド(benzenesulfonylhydrazide)から選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項8に記載の発泡シートの製造方法。
【請求項13】
前記第1組成物は、可塑剤をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の発泡シートの製造方法。
【請求項14】
前記第2組成物は、可塑剤、無機充填剤から選ばれた1種以上をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の発泡シートの製造方法。
【請求項15】
前記可塑剤の含量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して100重量部以下であることを特徴とする請求項13または14に記載の発泡シートの製造方法。
【請求項16】
前記無機充填剤の含量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して300重量部以下であることを特徴とする請求項14に記載の発泡シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋されたポリ乳酸を用いた発泡シート及びその製造方法に関するものであり、より詳しくは、ポリ乳酸、架橋剤および/または架橋助剤を含む組成物を用いて一定の条件で架橋されたポリ乳酸樹脂を製造した後、前記の架橋されたポリ乳酸樹脂および発泡剤を含む組成物を用いて一定の条件でシート形状を形成し、比較的高い温度条件で発泡させることにより、耐水性および加工性に優れるだけでなく、比較的高い発泡倍率、均一なクローズド発泡セル(closed foam cell)構造を有するポリ乳酸発泡シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル(PVC)等の石油系樹脂を使用した発泡シートは、住宅、マンション、アパート、オフィス、又は店舗等の建築物で広く使われている。
【0003】
前記のような発泡シートは、ポリ塩化ビニル(PVC)等の樹脂を使用して押出またはカレンダリング方式等で製造される。ところが、原料が限定されている資源である原油等から全量得られるため、石油資源の枯渇等によって今後原材料の需給困難等の問題が発生すると予想されている。
【0004】
また、近年高くなってきている環境問題に対する関心を考慮しても、ポリ塩化ビニル(PVC)系発泡シートは、有害物質を排出し易く、廃棄時にも環境に負担を与えるという問題点がある。
【0005】
このような問題点により、近年では植物資源から抽出、合成されたポリ乳酸(Poly Lactic Acid)樹脂が前記の石油系樹脂を代替できる手段として脚光を浴びている。ポリ乳酸は、再生可能な植物資源(トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモ等)から抽出したでん粉を発酵させて得た乳酸を重合させて製造した樹脂であり、COが低減されるだけでなく、非再生エネルギーを節減できる環境にやさしい樹脂である。韓国特許公開公報第10―2008―0067424号を始めとする多数の先行文献にはこのようなポリ乳酸樹脂を使用した発泡シートが開示されている。
【0006】
しかし、このようなポリ乳酸は、一定の湿度および温度条件で簡単に加水分解されるため、ポリ乳酸樹脂で製造された発泡シートは、既存のPVC樹脂で製造された発泡シートと比べて、熱合板加工時に加工設備にくっ付いたり、高温加工時に粘弾性が不足して多層に積層する加工作業が容易でないという短所があった。よって、耐水性および加工性の向上が非常に重要な課題であった。
【0007】
また、ポリ乳酸は結晶性が強く、分子量が比較的低い樹脂であって溶融強度が弱いため、発泡時の発泡倍率が低いだけでなく、不均一なオープン発泡セル(open foam cell)を形成するという問題があったため、均一でありながらもクローズド発泡セル構造を有する発泡シートを製造する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国特許公開公報第10―2008―0067424号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、架橋されたポリ乳酸を用いた発泡シート及びその製造方法を提供するためのものであり、より詳しくは、ポリ乳酸、架橋剤および/または架橋助剤を含む組成物を用いて一定の条件で架橋されたポリ乳酸樹脂を製造した後、前記の架橋されたポリ乳酸樹脂および発泡剤を含む組成物を用いて一定の条件でシート形状を形成し、比較的高い温度条件で発泡させることにより、耐水性および加工性に優れるだけでなく、比較的高い発泡倍率、均一なクローズド発泡セル(closed foam cell)構造を有するポリ乳酸発泡シート及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための本発明の一実施例にかかる発泡シートは、ポリ乳酸樹脂を含む樹脂層を少なくとも一つ含む発泡シートであり、前記樹脂層に含まれたポリ乳酸樹脂は架橋されたものであって、発泡セルはクローズド構造であることを特徴とする。
【0011】
前記目的を達成するための本発明の他の一実施例にかかる発泡シートの製造方法は、ポリ乳酸樹脂を含む樹脂層を少なくとも一つ含む発泡シートの製造方法であって、ポリ乳酸樹脂100重量部、架橋剤0.001重量部ないし10重量部を含む第1組成物を昇温して架橋すること;前記の架橋された第1組成物にポリ乳酸樹脂100重量部に対して発泡剤0.1重量部ないし10重量部をさらに添加して得た第2組成物を、押出またはカレンダリングしてシートを製造すること;前記シートをオーブンに通過させて発泡させることを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかるポリ乳酸樹脂を使用した発泡シートは、ポリ乳酸樹脂を含む生分解性樹脂が架橋反応によって改質されることにより、分子鎖間架橋化が起こって溶融強度が増加するため熱加工が容易で、加工後の製品において、耐水性、引張強度、伸率等の物理的性質が向上するだけでなく、発泡物性が大幅に改善されてクローズド構造のセルを形成できるという効果がある。
【0013】
本発明にかかるポリ乳酸樹脂を使用した発泡シートは、バインダーとして一般的に使用する石油資源基盤のPVCの代わりに、植物資源基盤のポリ乳酸樹脂を使用することにより、石油資源の枯渇による原材料需給問題を解決することができる。
【0014】
また、本発明にかかるポリ乳酸樹脂を使用した発泡シートは、製造時にCO等の環境有害物質の排出が少なく、廃棄が容易で環境にやさしいという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例によって製造された発泡シートの断面写真である。
図2】本発明の比較例によって製造された発泡シートの断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付の図面と併せて詳しく後述してある実施例を参照すると明確になると考える。しかし、本発明は以下で開示する実施例に限定されるのではなく、相違する多様な形態で具現でき、単に本実施例は本発明の開示が完全になるようにし、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供するものであり、本発明は請求項の範疇によって定義されるだけである。明細書全体に亘って同一参照符号は同一構成要素を指す。
【0017】
以下、本発明にかかるポリ乳酸樹脂を使用した発泡シート形成用組成物、これを用いて形成した発泡シート、その製造方法に関して詳しく説明する。
【0018】
(発泡シート)
本発明の一実施例にかかる発泡シートは、ポリ乳酸樹脂を含む樹脂層を少なくとも一つ含む発泡シートであり、前記樹脂層に含まれたポリ乳酸樹脂は架橋されたものであって、
発泡セルはクローズド構造であることを特徴とする。
【0019】
前記のような本発明の発泡シートは、耐水性および加工性に優れるだけでなく、比較的高い発泡倍率、均一なクローズド発泡セル(closed foam cell)構造を有することを特徴とする。
【0020】
先ず、本発明の発泡シートはポリ乳酸樹脂を含む。前記ポリ乳酸樹脂は、ラクチド又は乳酸を重合して得た熱可塑性ポリエステルであって、製造例を挙げると、トウモロコシ、ジャガイモ等から抽出したでん粉を発酵させて製造される乳酸またはラクチドを重合させて製造することができる。前記のトウモロコシ、ジャガイモ等は、いくらでも再生できる植物資源のため、これらから確保できるポリ乳酸樹脂は、石油資源の枯渇による問題に効果的に対処することができる。
【0021】
また、ポリ乳酸樹脂は、使用または廃棄過程でCO等の環境有害物質の排出量がポリ塩化ビニル(PVC)等の石油基盤素材に比べて遥かに少なく、廃棄時にも自然環境の下で容易に分解できるという環境にやさしい特性を持つ。
【0022】
前記ポリ乳酸樹脂は、結晶質ポリ乳酸(c―ポリ乳酸)樹脂と非晶質ポリ乳酸(a―ポリ乳酸)樹脂に分けることができる。このとき、結晶質ポリ乳酸樹脂の場合は、可塑剤が発泡シートの表面に上がってくるブリーディング(bleeding)現象が発生し得るため、非晶質ポリ乳酸樹脂を使用することが好ましい。非晶質ポリ乳酸樹脂を使用する場合、ブリーディング現象を防止するために必須的に添加されていた相溶化剤を添加しなくてもよいという長所がある。非晶質ポリ乳酸樹脂を使用する場合、ポリ乳酸樹脂は100%非晶質ポリ乳酸樹脂を使用することが最も好ましく、必要に応じて、結晶質と非晶質が共存するポリ乳酸樹脂を使用することができる。
【0023】
ここで、前記ポリ乳酸樹脂は、特に、L―ポリ乳酸、D―ポリ乳酸から選ばれる1種以上を使用することが、加工性および可塑剤溶出(bleeding)防止等の点で好ましい。
【0024】
本発明の前記樹脂層は、ポリ乳酸樹脂以外にも、架橋剤、発泡剤を含む生分解性樹脂組成物によって形成される。
【0025】
ここで、前記架橋剤はポリ乳酸の架橋反応に用いられる。前記架橋剤は、有機過酸化物が好ましく、具体的に、ジクミルパーオキシド(DCP)またはパーブチルパーオキシド(PBP)、ジメチルジ―t―ブチルパーオキシヘキサン、t―ブチルエチルヘキシルモノパーオキシカーボネート等を挙げることができるが、これに制限されるのではない。
【0026】
前記架橋剤は、前記組成物中ポリ乳酸100重量部に対し0.001ないし10含まれることが好ましい。架橋剤の含量が前記範囲未満だと架橋反応の開始が行われないという問題があり、前記範囲を超えると架橋度が過度に高くなるため熱硬化性を帯びて加工時に問題が起きる。
【0027】
一方、前記発泡剤は、本発明の発泡シートのクローズドセルを形成する際に用いられる。前記発泡剤は、アゾジカルボンアミド(azodicarbonamide)、p,p’―オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(p,p’―oxybisbenzenesulfonylhydrazide)、p―トルエンスルホニルヒドラジド(p―toluenesulfonylhydrazide)、ベンゼンスルホニルヒドラジド(benzenesulfonylhydrazide)から選ばれた1種以上であることが好ましいが、これに制限されるのではない。
【0028】
前記発泡剤は、前記組成物中ポリ乳酸100重量部に対して0.1重量部ないし10重量部含まれることが好ましい。発泡剤の含量が前記範囲未満だと発泡の効果が微々たるものになるという問題があり、前記範囲を超えると発泡が過大してオープンセルが過度に発生するため強度が低下するという問題がある。
【0029】
本発明において、前記生分解性樹脂組成物は、架橋助剤、発泡助剤、可塑剤、無機充填剤から選ばれた1種以上をさらに含むことができる。
【0030】
先ず、前記架橋助剤は、本発明の架橋反応がスムーズに起こるように助ける役割をする。前記架橋助剤は、TAIC(トリアリルイソシアヌレート)であることが好ましいが、これに制限されるのではない。
【0031】
ここで、前記架橋助剤の含量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して1.0重量部以下であることが好ましい。前記含量が1.0重量部を超えると過度架橋が形成されて熱硬化性樹脂または加工し難い樹脂に転化するという問題がある。
【0032】
また、前記発泡助剤は、本発明の発泡反応がスムーズに起こるように助ける役割をする。前記発泡助剤は、ジンクネオデカーボネート、ポタシウムネオデカーボネート、ジンク2―エチルヘキサノエートから選ばれた1種以上であることが好ましいが、これに制限されるのではない。
【0033】
ここで、前記発泡助剤の含量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して10.0重量部以下であることが好ましい。前記含量が10.0重量部を超えると過度発泡が発生してシート熱成形過程で早期発泡が起こり得るだけでなく、オープンセル発泡形状が表れ得るという問題がある。
【0034】
また、前記可塑剤は、本発明の発泡シートの加工性を高める役割をする。前記可塑剤は、クエン酸、クエン酸エステルから選ばれた1種以上であることが好ましいが、これに制限されるのではない。
【0035】
ここで、前記可塑剤の含量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して100重量部以下であることが好ましい。前記含量が100重量部を超えると加工が困難になるという問題がある。
【0036】
また、前記無機充填剤は、樹脂との相溶性に優れるものであって、具体的には、炭酸カルシウム、タルク、ウッド繊維等を用いることができるが、これに制限されるのではない。
【0037】
前記無機充填剤の含量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して300重量部以下であることが好ましい。前記無機充填剤の含量が300重量部を超えると樹脂含量が過度に低くなり加工が困難で、強度が低下するという問題がある。
【0038】
以上で説明した本発明の発泡シートは、架橋剤によってポリ乳酸が架橋され耐水性、加工性に優れるという効果がある。以下では、本発明による発泡シートの製造方法を説明する。
【0039】
(発泡シートの製造方法)
本発明のまた別の一実施例にかかる発泡シートの製造方法は、ポリ乳酸樹脂を含む樹脂層を少なくとも一つ含む発泡シートの製造方法であり、ポリ乳酸樹脂100重量部、架橋剤0.001重量部ないし10重量部を含む第1組成物を昇温して架橋すること;前記の架橋された第1組成物にポリ乳酸樹脂100重量部に対して発泡剤0.1重量部ないし10重量部をさらに添加して得た第2組成物を、押出またはカレンダリングしてシートを製造すること;前記シートをオーブンに通過させて発泡させることを含むことを特徴とする。
【0040】
先ず、本発明のポリ乳酸樹脂を含む第1組成物を加熱することにより架橋させる。
【0041】
この過程で必要な温度は、前記熱成形時の温度より高い温度であって、約100℃ないし約250℃であることが好ましい。このとき、前記第1組成物に含まれた架橋剤がラジカルに分解されながらポリ乳酸樹脂間の架橋反応を開始する。このとき、押出器および混錬器を用いることができる。
【0042】
次に、前記の架橋された第1組成物に発泡剤等をさらに添加して得た第2組成物を押出またはカレンダリングしてシートを製造する。
【0043】
このとき、原料を混合または混錬するが、前記の混合および混錬工程は、例えば、液状または粉末状の原料を、スーパーミキサー、押出器、混錬器(kneader)、2本または3本ロール等を使用して行うことができる。
【0044】
また、原料の混合および混錬工程では、より効率的な混合のために、配合された原料をバンバリーミキサー(banbury mixer)等を使用して120℃ないし200℃程度の温度で混錬し、混錬された原料を120℃ないし200℃程度の温度で2本ロール等を使用して、1次および2次ミキシングする方式のように、前記混合および混錬工程を多段階で繰り返し行うこともできる。このとき、各原料に対する説明は前記の通りのため、ここでは省略する。
【0045】
次に、シートをオーブンに通過させて発泡させる。このとき、発泡条件は100℃ないし250℃であり、前記温度未満だと発泡が起きなく、前記温度を超えると可塑剤の揮発が深刻になりシートの柔軟性が急激に低下するという問題がある。
【0046】
発泡方法は通常の当業者に一般的な方法であって特に制限されない。
【0047】
前記のような本発明の発泡シートの製造方法によると、加工性に優れるため、作用が非常に容易だという効果があり、それによる製品が耐水性に優れるという効果がある。
【0048】
(実施例および比較例による発泡シートの製造)
以下では、本発明の好ましい実施例による発泡シートの製造例、および比較例による製造例を提示する。但し、これは本発明の好ましい例示として提示するものであり、如何なる意味でもこれによって本発明が制限されると解釈してはならない。
【0049】
ここに記載していない内容は、本技術分野の熟練者であれば十分に技術的に類推できるもののため、その説明は省略する。
【0050】
(実施例)
非晶質ポリ乳酸(Natureworks)100重量部に、架橋剤であるt―ブチル―2―エチルヘキシルモノパーオキシカーボネート0.3重量部、架橋助剤であるトリアリルイソシアヌレート0.1重量部をスーパーミキサーで原料を混合した後、160度の二軸押出器を用いて架橋反応させ、ペレット形態に架橋樹脂を製造した。製造された架橋樹脂100重量部に、充填剤(炭酸カルシウム)100重量部、可塑剤(クエン酸)40重量部、発泡剤(アゾジカーボネート80%/4,4’―オキシジベンゼンスルホニルヒドラジド20%)5重量部、発泡助剤(ジンクネオデカーボネート)2重量部を、130度のバンバリーミキサーでよく混錬して発泡成形用組成物を製造した。製造された組成物を、100度に設定された2本ロールを用いて120μm厚のシートを製造した後、190度の発泡オーブンで40秒間滞留させて発泡シートを完成させた。
【0051】
(比較例)
架橋剤を入れなかった点を除いては、実施例と同一条件で発泡シートを製造した。
【0052】
(評価)
実施例と比較例の物性(引張強度、浸漬収縮率)および発泡倍率に対する評価結果は、下記表1に示した通りである。
【0053】
【表1】
【0054】
前記評価結果の通り、本発明による発泡シートは、ポリ乳酸を架橋させることにより比較的高い温度条件で発泡させることで、耐水性および加工性に優れるだけでなく、比較的高い発泡倍率、均一なクローズド発泡セル(closed foam cell)構造を有するポリ乳酸発泡シートを製造できることが確認できた。
【0055】
また、前記実施例および比較例によって製造された発泡シートの断面を観察した結果は、図1、2に示した。
【0056】
図1から確認できるように、本発明の実施例によって製造された発泡シートはクローズド構造の発泡セルを形成できたのに対し、図2では比較例によって製造されたものはクローズド構造の発泡セルが形成されないことが確認できた。
【0057】
以上では本発明の実施例を中心に説明したが、これは例示的なものに過ぎなく、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する技術者であればこれにより多様な変形および均等な他実施例が可能であるという点を理解できると考える。よって、本発明の真正な技術的保護範囲は、以下に記載する特許請求の範囲によって判断しなければならないと考える。
図1
図2