【実施例】
【0066】
次に実施例を挙げて本発明の詳細を説明するが、下記実施例は本発明について具体的な認識を得る一助としてのみ挙げたものであり、これによって本発明の範囲が何ら制限されるものではない。
【0067】
(実施例1;プライマー、オリゴヌクレオチドプローブの設計)
本発明において検出、同定の対象とする
M.genitalium(X77334;配列番号1)、
M.hominis(M96660;配列番号2)、
U.urealyticum(AF073450;配列番号3)、
U.parvum(A073459;配列番号4)の4種について、GenBank(米国国立バイオテクノロジー情報センター;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genbank/)から16s rRNAの配列を入手した。入手した各配列をソフトウェアGENETIX(ゼネティックス社製)を使用して、多重整列プログラムであるClustalWのアルゴリズムに従って配列のアライメントを実施した。アライメント結果を
図1に示す。
【0068】
プライマー及びオリゴヌクレオチドプローブはアライメントデータを参考にして、プライマー及びオリゴヌクレオチドプローブを設計した。プライマーはこれらの種に共通する配列部位を選び出して設計した。オリゴヌクレオチドプローブは、種特異的な配列を選び出して設計した。
M.genitaliumはアンチセンス鎖に対してハイブリダイゼーションするようにオリゴヌクレオチドプローブを設計し、それ以外はすべてセンス鎖に対してハイブリダイゼーションするようにオリゴヌクレオチドプローブを設計した。
【0069】
PCR反応に使用したプライマー配列は以下の通りである。
Myco_Urea_F: 5’−CGCGGTAATACATAGGTTGCAAGCGTTATC−3’(配列番号5)
Rv1: 5’−GCACCACCTGTCACTCTGTTAACCTC−3’(配列番号6)
【0070】
また、種別に使用したオリゴヌクレオチドプローブ配列は以下の通りである。
M.genitalium特異的オリゴヌクレオチドプローブは、以下の通りである。なお、アレルプローブ中においてフラップ配列、すなわち、フラップエンドヌクレアーゼにより切断されて第三オリゴヌクレオチドプローブとなる配列は小文字で記載した。
アレルプローブ
Mg_SE_P1_arm7: 5’−tccgcgcgtccAGGGATCGCTCCG−3’(配列番号7)
第二オリゴヌクレオチドプローブ(インベーダープローブ)
Mg_SE_inv: 5’−AGATACTTAATGTGTTAACTTCACTACCGAT−3’(配列番号8)
第三オリゴヌクレオチドプローブ: 5’−tccgcgcgtcc−3’(配列番号9)
M.genitalium検出、同定用に設計した第四オリゴヌクレオチドプローブはその5’末端をFAMで標識されたものをホロジック社から購入した。
【0071】
M.hominis特異的プローブは、以下の通りである。なお、アレルプローブ中においてフラップ配列、すなわち、フラップエンドヌクレアーゼにより切断されて第三オリゴヌクレオチドプローブとなる配列は小文字で記載した。
アレルプローブ
Mh2_63_P1_arm7: 5’−tccgcgcgtccCGGCTCGCTTTGG−3’(配列番号10)
第二オリゴヌクレオチドプローブ(インベーダープローブ)
Mh2_inv2: 5’−GAGTTAAATCCCGGGGCTCAACCCA−3’(配列番号11)
第三オリゴヌクレオチドプローブ: 5’−tccgcgcgtcc−3’(配列番号12)
M.hominis検出、同定用に設計した第四オリゴヌクレオチドプローブはその5’末端をFAMで標識されたものをホロジック社から購入した。
【0072】
U.urealyticum特異的オリゴヌクレオチドプローブは、以下の通りである。なお、アレルプローブ中においてフラップ配列、すなわち、フラップエンドヌクレアーゼにより切断されて第三オリゴヌクレオチドプローブとなる配列は小文字で記載した。
アレルプローブ
Uu_63_P1_arm6: 5’−cgcgaggccgTCGAACGAGTCGGT−3’(配列番号13)
第二オリゴヌクレオチドプローブ(インベーダープローブ);
Urea_Inv2: 5’−ACCGTAAACGATCATCATTAAATGTCGGCA−3’(配列番号14)
第三オリゴヌクレオチドプローブ: 5’−cgcgaggccg−3’(配列番号15)
U.urealyticum検出、同定用に設計した第四オリゴヌクレオチドプローブはその5’末端をRedmond Redで標識されたものをホロジック社から購入した。
【0073】
U.parvum特異的オリゴヌクレオチドプローブは、以下の通りである。なお、アレルプローブ中においてフラップ配列、すなわち、フラップエンドヌクレアーゼにより切断されて第三オリゴヌクレオチドプローブとなる配列は小文字で記載した。
アレルプローブ
Up_63_P1_arm1: 5’−cgcgccgaggCCGAATGGGTCGGT−3’(配列番号16)
第二オリゴヌクレオチドプローブ(インベーダープローブ)は、
U.urealyticumと共通の配列(配列番号14)を設計し使用した。
第三オリゴヌクレオチドプローブ: 5’−cgcgccgagg−3’(配列番号17)
U.parvum検出、同定用に設計した第四オリゴヌクレオチドプローブはその5’末端をYakima Yellowで標識されたものをホロジック社から購入した。
【0074】
また、全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌に共通のオリゴヌクレオチドプローブは、以下の通り設計した。なお、アレルプローブ中においてフラップ配列、すなわち、フラップエンドヌクレアーゼにより切断されて第三オリゴヌクレオチドプローブとなる配列は小文字で記載した。
アレルプローブ
ALL2_SE_P1_arm4: 5’−aggccacggacgTAATCCTATTTGCTCCCCA−3’(配列番号18)
ALL2_SE_P1_G_arm4: 5’−aggccacggacgTAATCCTGTTTGCTCCC−3’(配列番号19)
第二オリゴヌクレオチドプローブ(インベーダープローブ)
ALL2_SE_inv: 5’−TACGGTGTGGACTACTAGGGTATCC−3’(配列番号20)
ALL2_SE_inv_CC: 5’−GCGTGGACTACCAGGGTATCC−3’(配列番号21)
第三オリゴヌクレオチドプローブ: 5’−aggccacggacg−3’(配列番号22)
全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌検出、同定用に設計した第四オリゴヌクレオチドプローブはその5’末端をRedmond Redで標識されたものをホロジック社から購入した。
【0075】
ウレアプラズマ属細菌(
U.urealyticum、
U.parvum)の検出、同定用第四オリゴヌクレオチドプローブは共通した配列となるように設計し、その5’末端を
U.urealyticum検出用オリゴヌクレオチドプローブはYakimaで、
U.parvum検出用オリゴヌクレオチドプローブはRedmondで標識した。Yakimaは励起波長531nm、検出波長550nmとVICとほぼ同等であるため、VIC用に設定されたフィルターを使用して検出、同定できる。また、Redmondは励起波長579nm、検出波長595nmとROXとほぼ同等であるため、ROX用に設定されたフィルターを使用して検出、同定できる。
【0076】
また、内部標準物質に対しても特異的なオリゴヌクレオチドプローブをそれぞれ設計した。なお、アレルプローブ中においてフラップ配列、すなわち、フラップエンドヌクレアーゼにより切断されて第三オリゴヌクレオチドプローブとなる配列は小文字で記載した。
アレルプローブ
Myco_IC_P_arm1: 5’−cgcgccgaggCGACAGCTAGTATCTATCG−3’(配列番号23)
第二オリゴヌクレオチドプローブ(インベーダープローブ)
IC_inv: 5’−TGCAGGATCGGAATTCCAGCA−3’(配列番号24)
第三オリゴヌクレオチドプローブ: 5’−cgcgccgagg−3’(配列番号25)
内部標準物質検出、同定用に設計した第四オリゴヌクレオチドプローブはその5’末端をYakima Yellowで標識されたものをホロジック社から購入した。
なお、全ての第三オリゴヌクレオチドプローブの3’末端に位置する塩基は、第一オリゴヌクレオチドプローブの5’末端に位置する塩基とホスホジエステル結合によって結合するように合成され、試薬混合時においては一つのオリゴヌクレオチドプローブとして反応溶液中に存在する。
【0077】
設計したプライマー及び各オリゴヌクレオチドプローブの位置をアライメント
図2に示す。また、プライマー及び各オリゴヌクレオチドプローブの一覧を表1に示す。第三オリゴヌクレオチドプローブについては、インベーダープローブとして記載した配列中に小文字で示した。なお、表中のICは内部標準物質を示す。
【0078】
【表1】
【0079】
(実施例2;材料の調製)
(菌株)
マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の菌株は、ATCC(American Type Culture Collection)より購入した
M.genitalium、
M.hominis、
U.urealyticum、
U.parvumのマイコプラズマ菌株及びウレアプラズマ菌株を使用した。
また、交差試験に使用したマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌以外の41種類の細菌、酵母についても全てATCCから購入して使用した。表2に使用した菌株の一覧を示す。
【0080】
【表2】
【0081】
(プライマー、オリゴヌクレオチドプローブの合成)
実施例1で設計したプライマー及びオリゴヌクレオチドプローブの合成は、ホロジック社に委託して製造した。
【0082】
(プラスミドの調製)
検出用陽性対照として、またPCR反応の鋳型として使用するDNAを作製した。検出、同定の対象とする
M.genitalium、
M.hominis、
U.urealyticum、
U.parvumの4菌株試料として、自動化精製試薬(QIAsymphony SP、QIAGEN社製)を使用してDNAの抽出を行った。抽出したDNAを鋳型として、実施例1で設計した配列番号5及び配列番号6からなるプライマーセットを使用して、通常のPCR反応条件により増幅した。M.genitaliumは516〜1037番目の塩基を、M.hominisは512〜1019番目の塩基を、U.urealyticumは492〜1013番目の塩基を、U.parvumは496〜1017番目の塩基を増幅した。
得られたPCR増幅産物を遺伝子組み換え用プラスミド(pT7 Blue T−vector,Novagen社製)内に、添付のプロトコルに従って挿入しクローニングした。これを検出用陽性対象及びPCR反応の鋳型とした。
【0083】
(内部標準物質の作製)
PCR反応時の阻害の有無を確認するために使用する内部標準物質を作製した。実施例2で作製した
M.genitaliumの配列を有するDNAが挿入されたプラスミドを鋳型として、M.genitalium配列部分を通常の方法に従ってPCR反応で増幅した。
得られたPCR産物を精製した後、その塩基配列の一部(X77334の769番目〜930番目に相当)を人為的に改変したものを遺伝子組み換え用プラスミド(pT7 Blue T−vector,Novagen社製)内に、添付のプロトコルに従って挿入しクローニングし、内部標準物質とした(配列番号36)。
【0084】
試薬キット1として実施例1で設計した共通プライマーセット、
M.genitaliumに特異的なオリゴヌクレオチドプローブセット、全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌に共通である(以後ALL Mycoと称する)オリゴヌクレオチドプローブセット、内部標準物質に対して設計したオリゴヌクレオチドプローブセットを、試薬キット2として
M.hominis、
U.urealyticum、
U.parvumのそれぞれに対して特異的なオリゴヌクレオチドプローブセットを検出する反応液として調製した。
【0085】
(実施例3:PCR条件サイクル数の検討)
PCR反応後にインベーダー反応による検出、同定を行う場合について、PCR反応のサイクル数と検出状況について検討し、最適なPCR反応のサイクル数を設定した。実施例2で調製した材料を使用して、試薬キット1を使用して
M.genitaliumを、試薬キット2を使用して
M.hominis、
U.urealyticum、
U.parvumの各細菌を検出、同定できる条件の検討を行った。鋳型としては、実施例2で調製したプラスミドを1反応あたり10
6〜10
1コピーとなるように使用した。
【0086】
PCR反応による増幅と同時にインベーダー反応によって検出、同定する方法は、上記のように混合した試薬を、95℃に加温したサーマルサイクラー(PRISM7900HT,アプライドバイオシステムズ社製)を使用して、PCRの増幅反応条件は(95℃、10秒)+(95℃、30秒+70℃、1分)×2+(95℃、15秒+70℃、1分)×10+(95℃、15秒+63℃、1分)×40で行った。
PCR反応後にインベーダー法による検出、同定を行うインベーダープラス法は、上記のように混合した試薬を、95℃に加温したサーマルサイクラー(PRISM7900HT,アプライドバイオシステムズ社製)を使用して、PCRの増幅反応条件を(95℃、10秒)+(95℃、15秒+70℃、1分)×30で行った後、99℃で10分加熱してTaqポリメラーゼを不活化し、(63℃、30秒)×60でインベーダー法による蛍光データ取得をした。インベーダー法とインベーダープラス法の比較結果を
図4(インベーダー法)及び
図5(インベーダープラス法)に示す。
【0087】
また、インベーダープラス法において、PCR反応のサイクル数を、20、27、30、40の各サイクルとして増幅後、99℃、10分加熱してTaqポリメラーゼを不活化させた後、インベーダー反応は63℃で60サイクルの蛍光データを取得(63℃で30秒毎に30分間蛍光データを取得)し判定を行った結果を
図5(PCR:30サイクル)、
図6(PCR:40サイクル)、
図7(PCR:20サイクル)、表3に示す。
【0088】
【表3】
【0089】
一般的には、PCRによる検出はPCRサイクル数を増やすことで低コピー数の核酸試料からも検出が可能となる。PCR反応と同時にインベーダー反応を実施して検出、同定する系では、核酸試料に含まれるコピー数が高コピーである場合にも低コピーである場合にもPCR増幅産物の量と蛍光強度が経時的に増加する状況を検出することが可能である。一方で本発明の方法では、PCR反応サイクル数の増加に伴いPCR増幅産物の量が過剰となるため、バックグラウンドの蛍光強度が上昇し、高コピー数の核酸試料において検出が困難となる。種によっては十分な核酸量があるにも関わらず検出対象外となり、誤判定の原因となりうることが分かった(
図6)。
【0090】
(実施例4:マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌由来核酸の検出、同定)
実施例2で調製した材料を使用して、試薬キット1を使用して
M.genitaliumを、試薬キット2を使用して
M.hominis、
U.urealyticum、
U.parvumの各細菌を検出、同定できることを確認した。鋳型としては、実施例2で調製したプラスミドを1反応あたり10
6〜10
1コピーとなるように使用した。
【0091】
混合した試薬を、95℃に加温したサーマルサイクラー(PRISM7900HT,アプライドバイオシステムズ社製)を使用して、PCRの増幅反応条件は95℃、10秒+(95℃、15秒+70℃、1分)×34cycles+99℃、10分+(63℃、30秒)×60cyclesで実施した。インベーダー反応は63℃で60cyclesの蛍光データを取得(63℃で30秒毎に30分間蛍光データを取得)し判定を行った。
【0092】
判定に際しては特異オリゴヌクレオチドプローブの蛍光検出量を測定し、検出判定基準を決定した。
プラスミドが0コピー/反応時の蛍光量をバックグランドとし、
M.genitaliumは6,000、
M.hominisは6,000、
U.parvumは1,700、
U.urealyticumは800、マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌について(以後ALL Mycoと略す)は800、内部標準物質については1,700を判定基準とした。
検出された各種オリゴヌクレオチドプローブの蛍光量を表4に示す。いずれの各種オリゴヌクレオチドプローブについても検出された蛍光量が1反応あたり10コピーまで判定値を上回ることが確認された。
【0093】
【表4】
【0094】
(実施例5:再現性の確認)
本発明において設計したプライマー及びオリゴヌクレオチドプローブを含む試薬キットを使用して、検出感度と再現性の確認を行った。
M.genitalium、
M.hominis、
U.urealyticum、
U.parvumのPCR増幅産物を組込んだプラスミドDNAの濃度が、1反応あたり10
2、10
1、0コピーとなるように3ロットを調製した。これら3ロットについて同時再現性の確認として6回測定し、さらに日を変えての日差再現性の確認測定を3回実施した。検出率が100%となる濃度を最小の検出限界とした。検出、同定の方法は実施例4と同様にして行った。その結果、実施した18回の測定において、検出率が100%となるコピー数は
M.genitalium、
M.hominis、
U.urealyticum、ALL Mycoが50コピー/テスト、
U.parvum、内部標準物質が100コピー/テストであり、検査室において求められる検出感度を十分に満たすものであった。
【0095】
(実施例6:交差反応性試験)
実施例2で調製した試薬キットを使用したマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定法について、他の種との交差反応性について検討を行った。
【0096】
6−1.マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌内における交差反応性試験
ヒトに対して感染が確認されているマイコプラズマ属13種、ウレアプラズマ属2種について、交差反応が起きないかを確認した結果を表5に示す。種特異的に設計した各オリゴヌクレオチドプローブは、いずれも対象とする菌とのみ反応が確認され、対象外の細菌と反応する非特異反応検出されなかった。
【0097】
【表5】
【0098】
6−2.泌尿器関連微生物に対する交差反応性試験
泌尿器への感染が報告されているマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属以外の細菌41種を使用して、それらの細菌との交差反応性について検討を行った結果を表6に示す。
種特異的に設計した各オリゴヌクレオチドプローブは、いずれも対象とする菌とのみ反応が確認され、対象外の細菌と反応する非特異反応検出されなかった。また、全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌に共通する配列を標的部位として設計したALLMycoプローブを使用した場合には、
Proteus mirabilis及び
Viblio parahaemolyticusの検出が確認されたが、その他では実施した全ての細菌、酵母からの検出はされなかった。対象種以外の種が相同性の高い配列を有する場合においても、臨床検体からの分離例がほとんど無い種については、実質的に問題にならないと思われた。
【0099】
【表6】
【0100】
(実施例7:臨床検体からの検出)
本発明の試薬キットを使用して、臨床検体73件から対象とする4種の検出、同定を試みた。対照法としては、特開2004−24206号公報に公開されている方法(以下、対照法と称する)を使用して比較を行った。試料からの核酸抽出には、QIAsymphony Virum/Bacteria Midi Kit(QIAGEN社製)を用いて核酸試料を調製した以外は、実施例3と同様の検出、同定方法にて行った。
【0101】
M.genitaliumの場合では、対照法によっては検出されなかった検体からも
M.genitaliumを検出、同定することができることが確認された。同様に他の種についても比較を行った結果、
M.hominis及び
U.urealyticumについても対照法によっては検出されなかった検体からも検出、同定が可能であることが確認された。
U.parvumについては、対照法と本発明の方法とで結果が不一致となる検体が見られた。不一致検体について検出されたPCR増幅産物について詳細を解析した結果、検体中に含まれる核酸試料が検出下限となる最小検出限界に近い低コピー数であること、また、複数の菌の感染が疑われる複合感染であることがあることが判明した。
【0102】
(比較例1:プライマー及びオリゴヌクレオチドプローブ設計)
実施例1で実施したアライメントデータを参考にしてプライマー及びオリゴヌクレオチドプローブを設計した。プライマー及びオリゴヌクレオチドプローブの設計方法は実施例に準拠して行った。設計されたプライマー及びオリゴヌクレオチドプローブは以下の通りである。
【0103】
このプライマーセットは、フォワードプライマーは実施例1で設計したものと同一の配列(配列番号5)で、リバースプライマーは実施例で使用したプライマーを下流側に12塩基ずれた設計となっている。使用したリバースプライマーの配列を以下に記す。
Myco_Urea R6: 5’−GACGACAACCATGCACCATCTGTCA−3’(配列番号26)
【0104】
また、種別に使用したオリゴヌクレオチドプローブ配列は以下の通りである。なお、アレルプローブ中においてフラップ配列、すなわち、フラップエンドヌクレアーゼにより切断されて第三オリゴヌクレオチドプローブとなる配列は小文字で記載した。
M.genitalium特異的オリゴヌクレオチドプローブは、センス鎖に対して設計した。なお、フラップ部分の第三オリゴヌクレオチドプローブとなる部分は変更していない。
アレルプローブ
Mg_63_P1_arm7: 5’−tccgcgcgtccTTCGGTAGTGAAGTTAACAC−3’(配列番号27)
第二オリゴヌクレオチドプローブ(インベーダープローブ)
Mg_inv: 5’−AGCTGTCGGAGCGATCCCA−3’(配列番号28)
第三オリゴヌクレオチドプローブ
5’−tccgcgcgtcc−3’(配列番号29)
第四オリゴヌクレオチドプローブは実施例1で設計した
M.genitalium検出、同定用第四オリゴヌクレオチドプローブと同じものを使用した。
【0105】
M.hominis特異的オリゴヌクレオチドプローブについては、実施例1で設計した第一〜第四オリゴヌクレオチドプローブと同じものを使用した。
【0106】
U.urealyticum特異的オリゴヌクレオチドプローブは、アレルプローブを2種類とした。また、フラップ部分の配列となる第三オリゴヌクレオチドプローブを変更し、それに伴って第四オリゴヌクレオチドプローブの配列も変更した。なお、アレルプローブ中においてフラップ配列、すなわち、フラップエンドヌクレアーゼにより切断されて第三オリゴヌクレオチドプローブとなる配列は小文字で記載した。
アレルプローブ
Uu_63_P1_arm3:5’−acggacgcggagTCGAACGAGTCGGT−3’(配列番号30)
Uu_63_P1_2_arm3:5’−acggacgcggagTCGAACGAGTCGGTT−3’(配列番号31)
第二オリゴヌクレオチドプローブ(インベーダープローブ)は、実施例1で設計したものと同じもの(配列番号14)を使用した。
第三オリゴヌクレオチドプローブ
5’−acggacgcggag−3’(配列番号32)
U.
urealyticum検出、同定用に設計した第四オリゴヌクレオチドプローブはその5’末端をYakima Yellowで標識されたものをホロジック社から購入した。
第四オリゴヌクレオチドプローブはUreaplasma属細菌(
U.urealyticum、
U.parvum)について共通するものとし、ウレアプラズマ属細菌の検出、同定用として、その5’末端をYakimaで標識した。
【0107】
U.parvum特異的プローブは実施例1で設計した第一〜第四オリゴヌクレオチドプローブと同じものを使用した。
【0108】
全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌に共通のオリゴヌクレオチドプローブは、以下の通りである。なお、アレルプローブ中においてフラップ配列、すなわち、フラップエンドヌクレアーゼにより切断されて第三オリゴヌクレオチドプローブとなる配列は小文字で記載した。
アレルプローブ
ALL2_63_P2−2_arm6: 5’−cgcgaggccgAGATACCCTAGTAGTCCAC−3’(配列番号33)
第二オリゴヌクレオチドプローブ(インベーダープローブ)
ALL2_inv2: 5’−AGGGTCGAAAGTGTGGGGAGCAAACAGGATTC−3’(配列番号34)
検出、同定用に設計した第二オリゴヌクレオチドプローブはその5’末端を『(標識化合物)』で標識した。
第三オリゴヌクレオチドプローブ:
5’−cgcgaggccg−3’(配列番号35)
全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌検出、同定用に設計した第四オリゴヌクレオチドプローブはその5’末端をYakima Yellowで標識されたものをホロジック社から購入した。
【0109】
設計したプライマー及び各オリゴヌクレオチドプローブの位置をアライメント
図3に示す。また、プライマー及び各オリゴヌクレオチドプローブの一覧を表7に示す。なお、表中のICは内部標準物質を示す。
【0110】
【表7】
【0111】
(比較例2:マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌由来核酸の検出、同定)
実施例2の方法に準拠して、比較例1で設計したプライマー及びオリゴヌクレオチドプローブを含む試薬キットを調製した。
試薬キットの構成としては、試薬キット1にはプライマーセットに加えて、
M.genitalium検出、同定用オリゴヌクレオチドプローブ、内部標準物質検出、同定用オリゴヌクレオチドプローブ、全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定用オリゴヌクレオチドプローブを含む。試薬キット2にはプライマーセットに加えて、
M.hominis、
U.urealyticum、
U.parvumのそれぞれを検出、同定するためのオリゴヌクレオチドプローブを含む。
該試薬キットを使用してマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定を試みた。
その結果、対象とした4種いずれについても検出することが可能であった。感度は、
U.urealyticumが1テストあたり100コピーである以外は、いずれも1テストあたり50コピーであった。
【0112】
(比較例3:交差反応性試験)
比較例2で調製した試薬キットを使用したマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定法について、他の種との交差反応性について検討を行った。
【0113】
3−1.マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌内における交差反応性試験
ヒトに対して感染が確認されているマイコプラズマ属13種、ウレアプラズマ属2種について、交差反応が起きないかを確認した結果を表8に示す。
M.genitalium特異的なオリゴヌクレオチドプローブにおいては、
M.genitalium以外に
M.pneumoniaeとの反応が確認された。
M.hominis特異的なオリゴヌクレオチドプローブでは、
M.hominis以外に
M.faucium、
M.orale、
M.primatum、
M.salivariumとの反応が確認されたことから、本試薬構成では高精度にマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定を行うには不十分であると考えられた。
【0114】
【表8】
【0115】
3−2.泌尿器関連微生物に対する交差反応性試験
泌尿器への感染が報告されているマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属以外の細菌41種(表2参照)を使用して、それらの細菌との交差反応性について検討を行った結果を表9に示す。なお、表9中の細菌番号(No.1〜41)は、表2の細菌番号と一致する。
その結果、
M.hominis特異的に設計したオリゴヌクレオチドプローブでは、
M.hominis以外に
Salmonella typhimurium及び
Staphylococcus aureusの2種との反応が確認された。また、全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌に共通する配列を標的部位として設計したALL Mycoプローブを使用した場合には、マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌以外の17種類の細菌との反応が確認された。このことから、目的とする4種のマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌以外の細菌とも反応することが確認された。
【0116】
【表9】
【0117】
上記のプライマーセット及びオリゴヌクレオチドプローブセットを含む試薬構成でマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出同定を行った場合には、目的とする4種の細菌以外と反応し本来検出、同定の対象とする種とは異なるマイコプラズマ細菌であると同定される可能性があるだけでなく、他の属の細菌を誤ってマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌であると同定してしまう可能性が高いため、治療方針の選択材料及び治療薬の効果判定材料として提供するには危険性が高く、採用することはできない。
【0118】
特にプライマーセットに関しては、配列情報から常法に従って設計した配列を有するプライマーセットだけでは不十分な場合があり、更に、インベーダー反応における検出、同定工程での特異性を考慮して特異性の高い反応系を構築する必要があることが分かった。
従って、公知の方法によって設計されたプライマーセット及びオリゴヌクレオチドプローブセットは、マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定に使用するためには不十分で使用できない場合があり、本発明において設計されたプライマー及び各種オリゴヌクレオチドプローブを使用した検査系は、特に、
M.genitalium、
M.hominis、
U.urealyticum、及び
U.parvumの4種を検出、同定するにあたって、有用であることが示された。
これらのプライマーセット及びオリゴヌクレオチドプローブセットを含む試薬を使用した検出、同定方法は、臨床検体を使用して多検体を迅速に処理することが可能であり、簡易かつ高感度で、一反応で複数のマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌を検出し、交差反応が無く信頼性の高い精度で種を同定可能であることが明らかとなった。