特許第6019134号(P6019134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6019134マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌を検出、同定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019134
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌を検出、同定する方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20060101AFI20161020BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   C12Q1/68 AZNA
   C12N15/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2014-551150(P2014-551150)
(86)(22)【出願日】2013年12月6日
(86)【国際出願番号】JP2013082779
(87)【国際公開番号】WO2014088088
(87)【国際公開日】20140612
【審査請求日】2015年5月27日
(31)【優先権主張番号】特願2012-268813(P2012-268813)
(32)【優先日】2012年12月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591122956
【氏名又は名称】株式会社LSIメディエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】柳原 玲
(72)【発明者】
【氏名】高梨 真樹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 修
【審査官】 北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−104379(JP,A)
【文献】 特開2001−299352(JP,A)
【文献】 特開2007−244349(JP,A)
【文献】 特開2004−024206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定を行う方法であって
(a)マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の16s rRNAにおいて、前記細菌群に含まれる核酸に共通する領域に対して設定した配列番号5の塩基配列、又は配列番号5の塩基配列において1〜5塩基が置換、欠失、挿入、付加され、且つ、マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の高感度且つ高精度な検出を妨げない塩基配列からなるプライマーと、配列番号6の塩基配列、又は配列番号6の塩基配列において1〜5塩基が置換、欠失、挿入、付加され、且つ、マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の高感度且つ高精度な検出を妨げない塩基配列からなるプライマーとの組合せであるプライマーセットを使用してPCRを実施する工程
(b)前記マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌群に含まれる所定の細菌を、以下の(a)〜(e)から少なくとも一つ以上選ばれるオリゴヌクレオチドプローブセットを用いるインベーダー反応を使用して検出、同定を実施する工程
を含む方法:
(a)M.genitaliumの検出、同定用の配列番号7で表わされるアレルプローブ及び配列番号8で表わされるインベーダープローブを含むオリゴヌクレオチドプローブセット、
(b)M.hominisの検出、同定用の配列番号10で表わされるアレルプローブ及び配列番号11で表わされるインベーダープローブを含むオリゴヌクレオチドプローブセット、
(c)U.urealyticumの検出、同定用の配列番号13で表わされるアレルプローブ及び配列番号14で表わされるインベーダープローブを含むオリゴヌクレオチドプローブセット、
(d)U.parvumの検出、同定用の配列番号16で表わされるアレルプローブ及び配列番号14で表わされるインベーダープローブを含むオリゴヌクレオチドプローブセット、
(e)マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌群の検出、同定用の配列番号18又は19で表わされるアレルプローブと配列番号20又は21で表わされるインベーダープローブを含むオリゴヌクレオチドプローブセット。
【請求項2】
前記インベーダー反応に使用されるオリゴヌクレオチドプローブセットを、同一反応容器内において複数使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
更に、内部標準物質と該内部標準物質に対するインベーダー反応に使用するオリゴヌクレオチドプローブセットを反応容器中に同時に存在させる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記オリゴヌクレオチドプローブセットが、配列番号36で表される塩基配列中の第329番塩基またはその相補的塩基を標的核酸として設計されるオリゴヌクレオチドプローブセットである、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記内部標準物質に対して特異的な配列を含むオリゴヌクレオチドプローブセットが、配列番号23で表わされるアレルプローブ及び配列番号24で表わされるインベーダープローブを含むオリゴヌクレオチドプローブセットである、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記PCRを実施する工程と前記インベーダー反応を使用して検出、同定を実施する工程とが同時に行われる、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記PCRを実施する工程に続いて、前記インベーダー反応を使用して検出、同定を実施する工程が行われる、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
配列番号5及び6のプライマーセット、及び、以下の(a)〜(e)から少なくとも一つ以上選ばれるオリゴヌクレオチドプローブセットを含む、マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定用核酸プローブアッセイ試薬キット:
(a)M.genitaliumの検出、同定用の配列番号7で表わされるアレルプローブ及び配列番号8で表わされるインベーダープローブを含むオリゴヌクレオチドプローブセット、
(b)M.hominisの検出、同定用の配列番号10で表わされるアレルプローブ及び配列番号11で表わされるインベーダープローブを含むオリゴヌクレオチドプローブセット、
(c)U.urealyticumの検出、同定用の配列番号13で表わされるアレルプローブ及び配列番号14で表わされるインベーダープローブを含むオリゴヌクレオチドプローブセット、
(d)U.parvumの検出、同定用の配列番号16で表わされるアレルプローブ及び配列番号14で表わされるインベーダープローブを含むオリゴヌクレオチドプローブセット、
(e)マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌群の検出、同定用の配列番号18又は19で表わされるアレルプローブと配列番号20又は21で表わされるインベーダープローブを含むオリゴヌクレオチドプローブセット。
【請求項9】
更に、内部標準物質の検出、同定用の配列番号23で表わされるアレルプローブ及び配列番号24で表わされるインベーダープローブを含むオリゴヌクレオチドプローブセットを含む、請求項に記載のマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定用核酸プローブアッセイ試薬キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定する方法、及び試薬キットに関する。
【背景技術】
【0002】
尿路感染症は、腎臓から尿管、膀胱を通って尿道口にいたる尿の通り道に病原体が生着・増殖することにより引き起こされ、感染菌の種類に関係なく同様の病像、病態を呈する。
尿道の細菌感染は、尿道に逆行した細菌が、男性の上部尿路と下部尿路、また女性の尿道全体に存在する尿道周囲腺に、急性または慢性に繁殖することにより起こる。中でも性的交渉により感染する性行為感染症における尿路感染症では、女性では一般的に無症候性であるものの、男性では尿道炎が多く見られる。
男子尿道炎の起炎菌として病原的意義の明らかなもののほとんどは淋菌(N.gonorrhoeae)とクラミジア・トラコマチス(C.trachomatis)であった。尿道炎は淋菌性尿道炎と非淋菌性尿道炎に分けられ、非淋菌性尿道炎はさらにクラミジア性尿道炎と非クラミジア性尿道炎とに分類される。尿道炎の70%を占める非淋菌性尿道炎患者においてC.trachomatisが検出されるのは30〜40%程度であり、多くはその症状が何に由来するか明らかでなかった。
【0003】
近年、尿道炎とマイコプラズマ属(genus Mycoplasma)およびウレアプラズマ属(genus Ureaplasma)細菌の関与が注目され、尿道炎の起炎菌としての意義についての知見が蓄積しつつある。
マイコプラズマ属(genus Mycoplasma)およびウレアプラズマ属(genus Ureaplasma)細菌は、細胞壁の欠如などから他の細菌とは区別され、自己複製機能を持った最小の微生物とされている。ヒトからはマイコプラズマ属で13種、ウレアプラズマ属で2種の検出が報告されている。その中で、ヒトに病原性を呈するものとしては、肺炎の起炎菌であるマイコプラズマ・ニューモニエ(M.pneumoniae)がよく知られている。また、近年では非淋菌性非クラミジア性尿道炎患者からの生殖器及び尿路からは、M.genitaliumの検出が報告され、非淋菌性非クラミジア性の起炎菌として注視されている。さらに、マイコプラズマ・ホミニス(M.hominis)、ウレアプラズマ・ウレアリティカム(U.urealyticum)、ウレアプラズマ・パルバム(U.parvum)が単離され、これらの細菌についても尿道炎起炎菌の可能性が考えられており、今後も上記以外の菌種の単離が報告される可能性がある。
【0004】
特にM.genitaliumは、非淋菌性尿道炎患者からの分離が報告されて以来、霊長類への接種実験の結果、健常人よりも有意に高い検出率などから、非淋菌性尿道炎の起炎菌であることが強く示唆されている。実際、M.genitaliumC.trachomatis感染やN.gonorrhoeae感染を否定された男子尿道炎患者の20〜30%、女子子宮頚管炎患者の10%弱に検出され、これらは無症候対照の検出率に比べて有意に高い。
【0005】
M.hominisは、卵管炎、羊膜炎、非特異的腟炎、及び産褥敗血症熱を引き起こす作用因子として関与しているとの報告がある一方で、無症状の女性からも単離された例が多く報告されている。
U.urealyticumは、非淋菌性尿道炎、絨毛性羊膜炎、早産に関与が指摘されており、分娩時の罹患率や死亡率についての報告がある。約40%もの急性非淋菌性尿道炎が、ウレアプラズマにより引き起こされているとの報告がM.genitaliumよりも以前からなされている一方で、否定的な報告も近年多くなされている。例えば、U.urealyticumは、重要かつ重大なヒトの罹患率及び死亡率に関連してはいるものの、同様に無症候性の健常人においても発見され得る、との報告がなされている。
M.hominisおよびU.urealyticumは、健常人との検出率に有意差が見られないとの報告もあり、その病原的な役割は未だ不明な点が多く存在する。
U.parvumは、妊娠初期に胎盤羊膜嚢の炎症を引き起こし、不妊症へと至る可能性が示唆されている。
以上のように、非淋菌性尿道炎におけるこれらの役割を明らかにすることが望まれており、臨床検体からの確実かつ高感度な検出法が重要である。
【0006】
更に、一般にクラミジア性非淋菌性尿道炎と非クラミジア性非淋菌性尿道炎の間に差は認められないが、通常の抗菌治療後に尿道炎症状の持続あるいは再発をきたす難治例にはM.genitaliumが関与する可能性が指摘されている。M.genitaliumの各種抗菌薬に対する感受性はC.trachomatis等とはやや異なり、尿道炎治療の第一選択薬であるニューキノロン系よりもテトラサイクリン系やマクロライド系でより効果が高く、特にマクロライド系抗菌薬の選択が推奨されている。そのため、的確な治療方針の選択および効果判定のためにも、マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属、特にはM.genitaliumの細菌について早期の検出と同定が可能な検査法が必要である。
【0007】
マイコプラズマ属およびウレアプラズマ属の検出、同定検査としては、分離培養法、DNA蛍光染色、生化学性状による分類法等が実施されている。
【0008】
分離培養法は、細菌の検出、同定のゴールドスタンダードとされる方法であるが、マイコプラズマの培養は複雑な栄養条件の培養培地を必要とする上に、細胞増殖用の培養条件として二酸化炭素の添加を必要とする事から、多くの検査施設においてはマイコプラズマの培養物の単離を容易に行うことができない。そのためこれらの重要な病原性細菌の存在を真に診断することができないままとなっている。しかも、増殖は比較的緩慢であり、大多数の細菌に比べて低い細胞密度にしか達しないため、臨床診断に利用するには著しく迅速性に欠けている。更には、血清学的試験においても、M.pneumoniaeM.genitaliumとの間などでは交差反応が懸念されるなど特異性の面で問題があった。
【0009】
DNA蛍光染色法は、その結果を得るまでに数日から数週間を要し、臨床診断に利用するには著しく迅速性に欠けている。
【0010】
生化学性状による分類は、マイコプラズマ属細菌が持つ構成酵素が少ないために、100を超える細菌を幾つかのグループに分ける程度にしかできないため、臨床診断に利用するには不適である。
【0011】
近年では微生物感染の検出に分子生物学的手法であるPCR法をはじめとした核酸増幅検査が多くの検査室、検査会社、試薬会社において採用されている。核酸増幅検査は、マイコプラズマ属およびウレアプラズマ属の検出にも活用され、種特異的プライマーを使用したPCR法による検出が行われるようになった結果、臨床材料からの検出が多数報告されるようになった。
【0012】
核酸増幅検査の最も一般的な方法はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)であり、その他にはリガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(LAMP)、転写媒介増幅(TMA)、配列に基づく増幅アッセイ、等に基づくものが存在する。
PCR法を利用したマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定方法としては、PCR増幅産物をプレートハイブリダイゼーションにより検出、同定する方法(特許文献1)、PCR産物の塩基配列を解読し、系統解析による検出、同定する方法(特許文献2)、M.genitaliumをターゲットとしたReal−time PCRによる検出、同定および定量方法(特許文献3)が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004− 24206号公報
【特許文献2】特開2001−299352号公報
【特許文献3】特開2002−281980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したような手法を用いたマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定方法は、作業工程が多く長いアッセイ時間を必要とする方法であったり、自動化することが困難な方法であったりするため、処理能力が低く大量の検体を処理する必要がある検査室、特に検査センター等の要求を満たすことはできない。結果として、的確な治療方針の選択材料及び治療薬の効果判定材料を迅速に提供するという目的を果たすことができない事態が生じていた。
更に、非淋菌性尿道炎においては、M.genitaliumをはじめ、M.hominisU.urealyticum及びU.parvumが起炎菌としてその関与が示唆されてきたが、これらの関与を解明し、的確な治療方針の選択及び効果判定をするためには、臨床検体を材料にヒトからの分離が報告されている全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌を同等の感度で検出し、その種類を同定する検査法が必要である。感度、特異性、迅速性、簡便性、コストの全てについて要求を満たす検出系を構築することは非常に困難であるが、ゆえに重要で意義のある課題である。
【0015】
既存の核酸増幅を使用した検査方法の多くは種特異的プライマーを使用して開発されているが、それぞれの検出系において、目的とするマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌以外の関与については触れられていない場合がある。しかも、わずかな塩基の違いも認識できるほどの高精度な条件を設定しているにも関わらず非特異反応が多く検出されるなど、細菌の種類を正確に同定できる検査系を構築することは非常に困難であった。
一方で、共通性の高い領域を使用したプライマー設計を行うPCR等の核酸増幅方法による検査法では、同じマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌との非特異反応が検出されやすくなる。また、このような共通性の高い領域を使用した場合には、マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属以外の細菌との非特異反応が検出される可能性が大きくなる。非特異反応が頻繁に検出される検査系では、再検査を実施するため、作業量が大幅に増えるだけでなく、非特異反応を陽性としてしまうリスクもある。このように、既存の検査方法では信頼性の高い情報を迅速に提供することが困難であることが問題視されていた。
本発明は上記のような問題に鑑みてなされたものであり、迅速、簡易、高精度に、マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌を検出、同定することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、上記課題を解決する手段を鋭意検討した結果、PCRによる遺伝子増幅反応法(以下PCR法と称することがある)及び侵襲的開裂構造体切断アッセイ法(以下、インベーダー法、あるいはその反応自体をインベーダー反応と称することがある)を組み合わせることにより、多検体から迅速、簡易、高感度で、マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌を検出、同定することができることを見出した。
【0017】
すなわち、本発明は以下の[1]〜[25]に関する。
[1]マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定を行う方法であって、以下の工程を含む方法;
(a)マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の16s rRNAにおいて、前記細菌群に含まれる核酸に共通する領域に対して設定したプライマーセットを使用してPCRを実施する工程
(b)前記マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌群に含まれる所定の細菌を、インベーダー反応を使用して検出、同定を実施する工程。
[2]前記所定の細菌がM.genitaliumM.hominisU.urealyticum、及びU.parvumから少なくとも一つ以上選ばれるものであり、
インベーダー反応が、前記選ばれた各細菌に含まれる核酸に対して特異的な配列を含むオリゴヌクレオチドプローブセットを使用する、[1]に記載の方法。
[3]前記所定の細菌がM.genitaliumM.hominisU.urealyticum、及びU.parvumから少なくとも一つ以上選ばれるものであり、
インベーダー反応が、前記選ばれた各細菌に含まれる核酸に対して共通な配列であり、且つ、前記マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌群に含まれる核酸に対して特異的な配列を含むオリゴヌクレオチドプローブセットを使用する、[1]に記載の方法。
[4]前記プライマーセットが、配列番号1で表される塩基配列の516〜1049番目からなる領域を増幅可能である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の方法。
[5]前記PCRプライマーセットが、配列番号5及び配列番号6で表される塩基配列からなるプライマーセットである、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6]前記オリゴヌクレオチドプローブセットが、M.genitalium検出、同定用であって、配列番号37で表される塩基配列中の第320番塩基またはその相補的塩基を標的核酸として設計されるオリゴヌクレオチドプローブセットである、[1]、[2]、[4]、[5]のいずれかに記載の方法。
[7]前記オリゴヌクレオチドプローブセットが、M.hominis検出、同定用であって、配列番号38で表される塩基配列中の第100番塩基またはその相補的塩基を標的核酸として設計されるオリゴヌクレオチドプローブセットである、[1]、[2]、[4]、[5]のいずれかに記載の方法。
[8]前記オリゴヌクレオチドプローブセットが、U.urealyticum検出、同定用であって、配列番号39で表される塩基配列中の第312番塩基またはその相補的塩基を標的核酸として設計されるオリゴヌクレオチドプローブセットである、[1]、[2]、[4]、[5]のいずれかに記載の方法。
[9]前記オリゴヌクレオチドプローブセットが、U.parvum検出、同定用であって、配列番号40で表される塩基配列中の第312番塩基またはその相補的塩基を標的核酸として設計されるオリゴヌクレオチドプローブセットである、[1]、[2]、[4]、[5]のいずれかに記載の方法。
[10]前記オリゴヌクレオチドプローブセットが、マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌検出、同定用であって、配列番号37で表される塩基配列中の第264番塩基またはその相補的塩基を標的核酸として設計されるオリゴヌクレオチドプローブセットである、[1]又は[3]に記載の方法。
[11]M.genitaliumに含まれる核酸に対して特異的な配列を含むオリゴヌクレオチドプローブが配列番号7で表わされるアレルプローブ及び配列番号8で表わされるインベーダープローブを含むオリゴヌクレオチドプローブセットである、[6]に記載の方法。
[12]M.hominisに含まれる核酸に対して特異的な配列を含むオリゴヌクレオチドプローブが配列番号10で表わされるアレルプローブ及び配列番号11で表わされるインベーダープローブを含むオリゴヌクレオチドプローブセットである、[7]に記載の方法。
[13]U.urealyticumに含まれる核酸に対して特異的な配列を含むオリゴヌクレオチドプローブが配列番号13で表わされるアレルプローブ及び配列番号14で表わされるインベーダープローブを含むオリゴヌクレオチドプローブセットである、[8]に記載の方法。
[14]U.parvumに含まれる核酸に対して特異的な配列を含むオリゴヌクレオチドプローブが配列番号16で表わされるアレルプローブ及び配列番号14で表わされるインベーダープローブを含むオリゴヌクレオチドプローブセットである、[9]に記載の方法。
[15]前記選ばれた各細菌に含まれる核酸に対して共通な配列であり、且つ、前記マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌群に含まれる核酸に対して特異的な配列を含むオリゴヌクレオチドプローブが配列番号18又は19で表わされるアレルプローブと配列番号20又は21で表わされるインベーダープローブを含むオリゴヌクレオチドプローブセットである、[10]に記載の方法。
[16]前記インベーダー反応に使用されるオリゴヌクレオチドプローブセットを、同一反応容器内において複数使用する、[1]〜[15]のいずれかに記載の方法。
[17]更に、内部標準物質と該内部標準物質に対するインベーダー反応に使用するオリゴヌクレオチドプローブセットを反応容器中に同時に存在させる、[1]〜[16]のいずれかに記載の方法。
[18]前記オリゴヌクレオチドプローブセットが、配列番号36で表される塩基配列中の第329番塩基またはその相補的塩基を標的核酸として設計されるオリゴヌクレオチドプローブセットである、[17]に記載の方法。
[19]前記内部標準物質に対して特異的な配列を含むオリゴヌクレオチドプローブセットが、配列番号23で表わされるアレルプローブ及び配列番号24で表わされるインベーダープローブを含むオリゴヌクレオチドプローブセットである、[18]に記載の方法。
[20]前記PCRを実施する工程と前記インベーダー反応を使用して検出、同定を実施する工程とが同時に行われる、[1]〜[19]のいずれかに記載の方法。
[21]前記PCRを実施する工程に続いて、前記インベーダー反応を使用して検出、同定を実施する工程が行われる、[1]〜[19]のいずれかに記載の方法。
[22]配列番号5及び6のプライマーセット、及び、対象とする全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌に共通する配列を標的部位として設計したオリゴヌクレオチドプローブセット、及び/又は、対象とする全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌から選ばれる少なくとも一つ以上の菌種特異的な配列を標的部位として設計したオリゴヌクレオチドプローブセットを含む、マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定用核酸プローブアッセイ試薬キット。
[23]配列番号5及び6のプライマーセット、及び、以下の(a)〜(e)から少なくとも一つ以上選ばれるオリゴヌクレオチドプローブセットを含む、[22]に記載のマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定用核酸プローブアッセイ試薬キット:
(a)M.genitaliumの検出、同定用の配列番号7で表わされるアレルプローブ及び配列番号8で表わされるインベーダープローブを含むオリゴヌクレオチドプローブセット、
(b)M.hominisの検出、同定用の配列番号10で表わされるアレルプローブ及び配列番号11で表わされるインベーダープローブを含むオリゴヌクレオチドプローブセット、
(c)U.urealyticumの検出、同定用の配列番号13で表わされるアレルプローブ及び配列番号14で表わされるインベーダープローブを含むオリゴヌクレオチドプローブセット、
(d)U.parvumの検出、同定用の配列番号16で表わされるアレルプローブ及び配列番号14で表わされるインベーダープローブを含むオリゴヌクレオチドプローブセット、
(e)マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌群の検出、同定用の配列番号18又は19で表わされるアレルプローブと配列番号20又は21で表わされるインベーダープローブを含むオリゴヌクレオチドプローブセット。
[24]配列番号5及び6のプライマーセット、及び、対象とする全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌に共通する配列を標的部位として設計したオリゴヌクレオチドプローブセットを含む、マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定用核酸プローブアッセイ試薬キット。
[25]更に、内部標準物質の検出、同定用の配列番号23で表わされるアレルプローブ及び配列番号24で表わされるインベーダープローブを含むオリゴヌクレオチドプローブセットを含む、[22]〜[24]のいずれかに記載のマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定用核酸プローブアッセイ試薬キット。
【発明の効果】
【0018】
本発明の実施の形態によれば、PCRとインベーダー反応による検出、同定反応に必要な試薬を容器内に混合して簡便に反応を行うことが可能である。そのため、作業工程が少なく短い時間でアッセイが可能であり、また、自動化することができるため、処理能力が高く大量の検体を処理できる。また、操作工程が簡便となるだけでなく、試薬混合後は容器を開封しないため、キャリーオーバー等によるコンタミネーションを回避することができる。
また、非淋菌性尿道炎と臨床検体からの分離が報告されている全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌を同等の感度で検出し、かつ高い特異性でその細菌の種を同定することができるため、非特異反応を陽性としてしまうリスクを考慮せずによくなり、信頼性の高い情報を迅速に提供することができる。
また、核酸量や配列の違いに由来するインベーダー反応効率の違い、また、核酸試料の分注精度等に影響を受けて精度が落ちることを回避することができるため、交差反応が無く信頼性の高い精度で細菌の種を同定することができる。
【0019】
以上のように、感度、特異性、迅速性、簡便性、コストの要求を満たすだけでなく、臨床検体を材料にヒトからの分離が報告されている全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌を同等の感度で検出し、非淋菌性尿道炎との関連が示唆されている種について同定することができるため、非淋菌性尿道炎の起炎菌についての正確な情報を蓄積する一助となり、的確な治療方針の選択材料及び治療薬の効果判定材料を迅速に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1M.genitaliumM.hominisU.urealyticumU.parvumの4種についてのGenBankから入手した配列を、16srRNA領域の一部についてclustalWのアルゴリズムに従って配列のアライメントを実施した結果である。
図2図1のアライメント結果に基づいて実施例1で設計したプライマーセット及び各種オリゴヌクレオチドプローブの位置情報を記載した図である。
図3図1のアライメント結果に基づいて比較例1で設計したプライマーセット及び各種オリゴヌクレオチドプローブの位置情報を記載した図である。
図4】核酸試料に含まれる鋳型量を変化させて、PCRによる増幅反応と同時にインベーダー反応を実施して蛍光を検出した時の結果である。
図5】核酸試料に含まれる鋳型量を変化させて、PCRによる増幅反応の後にインベーダー反応を実施して蛍光を検出した時の結果である。
図6】核酸試料に含まれる鋳型量を変化させて、PCRをサイクル数40サイクルで増幅させた後にインベーダー反応を実施して蛍光を検出した時の結果である。
図7】核酸試料に含まれる鋳型量を変化させて、PCRをサイクル数20サイクルで増幅させた後にインベーダー反応を実施して蛍光を検出した時の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下において、本発明の実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明するが、利用方法や試薬キットの態様についてはこれに限定されるものではない。
本発明のマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定の実施形態は、
(a)マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の16s rRNAにおいて、前記細菌群に含まれる核酸に共通する領域に対して設定したプライマーセットを使用してPCRを実施する工程と
(b)前記マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌群に含まれる所定の細菌を、インベーダー反応を使用して検出、同定を実施する工程
を含むことを特徴とする。
【0022】
本発明の実施形態においては、全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌が検出、同定の対象となる。例えば、ヒトからの検出が報告されている、マイコプラズマ属の13種、ウレアプラズマ属の2種が挙げられる。特に、尿路感染症を引き起こすと示唆されているM.genitaliumM.hominisU.urealyticumU.parvumを検出、同定の対象とすることが好ましい。
【0023】
本発明の実施形態において使用される生物試料とは、試験される単数又は複数種の前記細菌を含みうる試料を含むものとされ、ヒト、ヒト以外の動物、植物、又は食物から得ることができ、例えば、尿、便、膣、鼻、直腸又は咽頭のスワブ、血液、唾液、喀痰、精液、膣又は尿道の排出物及びそれらのスワブ、涙(すなわち涙管分泌液)、バイオプシー組織試料、及び上述の分泌物及び物質がその上で堆積した表面のスワブを含むが、中でも尿路感染症との関連が強く示唆される尿を用いることが好ましい。前記生物試料は、宿主生物、例えばヒトの患者由来の細胞、組織及び/又はDNAを含むことができ、該実施形態の目的はその宿主内における細菌の存在を試験することにあり、その宿主自身のDNAを試験するものではない。
【0024】
本発明の実施形態において、核酸、DNA、RNA、遺伝子発現、コード、鋳型、プロモーター、プライマー、オリゴヌクレオチドプローブ、PCR、配列等の用語の定義に関しては、分子生物学、遺伝学、遺伝子工学等で広く一般的に使用されている用語と同じ意味である。
【0025】
核酸試料とは、核酸を含有する試料であって、前記生物試料であれば、特に限定されるものではない。例えば、血液や組織等を試料として試料中の全細胞から得られるゲノムDNAやRNAが該当する。この核酸の抽出は、フェノール/クロロホルム法等の公知の手法により行うことができる。また、市販の核酸抽出用試薬キットを使用することもできる。
【0026】
標的部位とは、核酸試料中に存在する標的となる核酸配列において、第一オリゴヌクレオチドプローブ(アレルプローブの3’末側配列)及び第二オリゴヌクレオチドプローブ(インベーダープローブ)がハイブリダイゼーションする核酸配列を意味し、マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定に使用される。
【0027】
標的核酸とは、標的部位の核酸配列と、インベーダー法に使用する各種オリゴヌクレオチドプローブのうち以下の2つのオリゴヌクレオチドプローブとが三重構造を形成する箇所の塩基をさす。標的核酸の塩基は、同位置にあるアレルプローブの塩基に対して相補的であり、同位置にあるインベーダープローブの塩基とは非相補的である。
【0028】
ハイブリダイゼーションするとは、各種オリゴヌクレオチドプローブと該各種オリゴヌクレオチドプローブの対象となる核酸配列とが、その配列の全部又は一部と相補的に結合することを意味する。標的部位には、塩基の置換、挿入、欠失が含まれてもよい。また、遺伝情報をコードする配列を有する鎖(以下、センス鎖とする場合がある)を示すものであってもよいし、センス鎖に対して相補的な配列を有する鎖(以下、アンチセンス鎖とする場合がある)を示すものであってもよい。例えば、同じ領域内において複数の種を同時に検出、同定する反応系を構築する場合には、一部の種に対してアンチセンス鎖上に標的部位を設定することで、多くの種を検出、同定の対象とすることが可能となるだけでなく、非特異反応を抑えることもできる。その際、どの種の標的部位をアンチセンス鎖上に設定するかは、当業者であれば適宜設定することができる。また、遺伝情報に直接関与しない配列における核酸配列の変化も含まれるものとする。
【0029】
本発明の実施形態においては、16s rRNA領域を使用することができる。対象とする菌の検出・同定を高感度、高精度に行うことができるので好ましい。
【0030】
PCRを実施する工程においては、対象とする全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の16s rRNAにおいて、前記細菌群に含まれる核酸に共通する領域に対してプライマーを設定する。該プライマーは、当業者であれば配列情報から常法により設計、合成することができるが、後述するインベーダー反応における検出、同定工程を考慮して決定することが好ましい。例えば、配列番号1で表わされる塩基配列中の516番目〜1049番目からなる領域を増幅可能であって、好ましくは、516番目の塩基から3’末端側に連続した塩基配列を含むプライマー、或いは、1049番目の塩基から5’末端側にその相補的配列にハイブリダイゼーションすることのできる連続した塩基配列を含むプライマーから成るプライマーセットを使用することができる。連続する塩基数は、後述するオリゴヌクレオチドプローブとの関係によって適宜変更して使用することができる。特に好ましくは、配列番号5と6で表わされる塩基配列の組み合わせが挙げられる。これにより、全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌を対象として、高感度、高精度に対象とする菌の検出・同定を高感度、高精度に行うことができる。また、マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の高感度且つ高精度な検出を妨げない限り、1〜5個程度の数塩基の置換、欠失、挿入、付加を行うことができる。
なお、PCRにおいて用いられる該2種類のプライマーの各濃度は、PCR産物として二本鎖核酸を得ることができる濃度比であれば特に限定されるものではないが、等濃度で用いることが好ましい。
【0031】
インベーダー反応とは、フラップエンドヌクレアーゼ(クリベース)という酵素の性質を利用した標的部位の検出、同定方法である。すなわち、フラップエンドヌクレアーゼは、標的核酸の位置において標的核酸、アレルプローブ及びインベーダープローブの3つの塩基が並び三重構造体(以下、開裂構造体と称する場合がある)を形成した時に、アレルプローブの5’末端側の配列がフラップ状になっている部分を認識して、そのフラップ部分を切断する。アレルプローブは標的部位と同じ配列とFRETプローブに相補的な配列を含むように設計されている。
次に、アレルプローブから遊離したフラップ部分は、相補的な配列をもつFRETプローブとハイブリダイゼーションする。このとき、フラップ部分の5’末端に位置する塩基がFRETプローブ自身の相補結合部位に割り込んで侵入し、開裂構造体を形成する。フラップエンドヌクレアーゼは再びこの開裂構造体を認識して蛍光色素を有するレポーター塩基を切断する。切断された蛍光色素は、クエンチャーの影響を受けなくなり、蛍光を呈する。
アレルプローブが対象とする前記標的部位と同じ配列を有さない場合、例えば、他の細菌由来の配列である場合においては、開裂構造体を形成しない。従って、フラップエンドヌクレアーゼによる切断、フラップ部分の配列の遊離も起こらないため、レポーター塩基に結合した蛍光も検出されない。
【0032】
検出は、これらの蛍光を測定することによる。例えば、蛍光検出器によって検出される蛍光強度は反応開始から徐々に上昇し、やがてプラトーに達する。このため、反応開始から特定の時間が経過した時点における蛍光強度や、蛍光強度がプラトーに達するまでの時間とそのときの蛍光強度等から条件設定することもできる。
【0033】
インベーダー反応は、反応試薬中に存在している過剰なシグナルプローブやFRETプローブによって、反応が繰り返されて蛍光強度が増幅されるため、ハイブリダイゼーション単独による方法に比べてより高い標的特異性を示すことや、複数のユニバーサルFRETプローブを使用出来るため、標的部位ごとに蛍光プローブを必要とする融解曲線法やTaqMan法に比べて、費用効果が高いという利点をもつ。
このようなインベーダー反応を用いた方法によれば、PCRの後に反応容器の蓋を開けるために生じうるコンタミネーションを防ぐことが可能となり、簡便且つ迅速に高感度な分析を行うことができる。
【0034】
また、前記インベーダー反応は、PCRによる核酸増幅反応と同時に行うことができる。この方法は一般的にインベーダー法と呼ばれている。インベーダー法は、PCR工程を分けて実施する。前半の数サイクルではPCRによる核酸増幅のみを行い、後半のPCRサイクルにおいて、核酸増幅反応とインベーダー反応による検出、同定を同時に実施する。インベーダー法はインベーダー反応の前にPCRによる核酸増幅をするため、核酸増幅を実施する分感度が上昇し、直接核酸試料から検出を行うよりも迅速に検出が可能になる。なお、多く鋳型が持ち込まれるとバックグラウンドが上昇するため、反応系へ持ち込まれる核酸量を調節して反応条件を設定することが好ましい。
また、PCRによる核酸増幅反応に続いてインベーダー反応を行う方法があり、これはインベーダープラス法と呼ばれている。インベーダープラス法では1チューブで増幅とその後の検出ができるという長所を有する。
各々の方法は使用場面に応じて使い分けられており、例えば、インベーダー法はSNP解析への利用等、インベーダープラス法は微生物等の検出等への利用等が挙げられる。
更に、インベーダー反応によって生じる蛍光の増加量をリアルタイムに測定するリアルタイムインベーダー法によれば、核酸試料中の核酸量を正確に定量することもできる。
【0035】
インベーダープラス法では、予め反応容器にPCR用の試薬類とインベーダー反応用の試薬類とを全て収容し、まずインベーダー反応用のオリゴヌクレオチドプローブ(FRETプローブ及びインベーダープローブ)がハイブリダイゼーションし、これらがPCRのプライマーとはならない条件で、PCRによる核酸増幅反応を行う。
PCR終了後にTaqポリメラーゼを高温で失活させた後、一定時間、インベーダー反応の至適温度に維持することによりインベーダー反応を行う。
【0036】
インベーダー反応で使用するオリゴヌクレオチドプローブとは、ハイブリダイゼーション条件下において標的部位と安定的な水素結合を形成し得る塩基配列を有することを意味し、公知の一緒に結合された二つ以上のヌクレオシドサブユニット又は核酸塩基サブユニットを有するポリマーを意味し、DNAおよび/もしくはRNA又はそのアナログを含む。各種オリゴヌクレオチドプローブの核酸間の完全な一致は必要とされない。また、各種オリゴヌクレオチドプローブが標識化合物によって標識されているものを使用することができる。
以下、各種オリゴヌクレオチドプローブについて、標的部位がセンス鎖に設定された場合を例に説明する。
【0037】
アレルプローブは、第一オリゴヌクレオチドプローブと第三オリゴヌクレオチドプローブとから構成され、標的核酸から標的部位の5’側末端までの塩基を含む領域とハイブリダイゼーションして相補鎖を形成しうるハイブリダイゼーション領域(第一オリゴヌクレオチドプローブ)と、標的部位の配列とは無関係な配列を有して標的部位とハイブリダイゼーションしないフラップ領域(第三オリゴヌクレオチドプローブ)とから構成され、第三オリゴヌクレオチドプローブが第一オリゴヌクレオチドプローブの5’末端側に配置されている。第一オリゴヌクレオチドプローブ中の標的核酸に対応する塩基は、第一オリゴヌクレオチドプローブの最も5’側に位置し標的核酸に特異的な配列を有する。
【0038】
ここで特異的とは、対象細菌の標的部位の核酸配列とハイブリダイゼーションし、それ以外の細菌の核酸配列とは実質的にハイブリダイゼーションしないことを意味する。なお、原理上は他の細菌ともハイブリダイゼーションすると考えられるオリゴヌクレオチドプローブであっても、その細菌が検査される臨床検体において極めて稀にしか検出されることのない細菌である場合、或いは、通常は検出されることが極めて稀な細菌との交差反応による非特異反応が検出された場合、実際的な対象細菌の検出、同定において問題とならないため、このようなオリゴヌクレオチドプローブの使用が許容される。
後述のFRETプローブを使用せずに、アレルプローブの5’末端側配列である、第一オリゴヌクレオチドプローブを標識化合物によって標識しておき、フラップエンドヌクレアーゼによって切断された際に蛍光を発するように設計して、目的の細菌の検出、同定に使用することもできる。
【0039】
インベーダープローブ(以下、第二オリゴヌクレオチドプローブと称する場合がある)は非標識オリゴであって、標的核酸から標的部位の3’側末端までの塩基を含む領域とハイブリダイゼーションして相補鎖を形成する。インベーダープローブの3’末端に位置し標的核酸に対応する塩基は任意の塩基でよく、ハイブリダイゼーションしないように設計することもできる。
従って、標的核酸を含む核酸試料と、アレルプローブ、インベーダープローブをハイブリダイゼーションさせると、標的部位と第一オリゴヌクレオチドプローブとがハイブリダイゼーションした標的核酸の位置には、インベーダープローブの1塩基が割り込むように侵入し、その結果、塩基が三重に並んだ構造が部分的に形成される(第一開裂構造体)。既に述べたように、フラップエンドヌクレアーゼは、標的核酸、アレルプローブ及びインベーダープローブの3つの塩基が並び開裂構造体を形成した時に、アレルプローブの5’末端側の配列であるフラップ領域(第三オリゴヌクレオチドプローブ)を切断するため、第三オリゴヌクレオチドプローブが遊離する。この第三オリゴヌクレオチドプローブは、後述するFRETプローブの所定の領域と相補的な配列を有しているため、FRETプローブとハイブリダイゼーションする。
【0040】
検出は、FRETプローブ((fluorescence resonance energy transfer probe)以下、第四オリゴヌクレオチドプローブと称する場合がある)を使用して行う。
FRETプローブは、その5’末側の配列が自己会合してループ構造を形成するように設計されており、3つの領域から構成される。すなわち、FRETプローブの5’末端からループ構造までの領域(領域1)、ステムループを形成する領域(領域2)、ステムループから第三オリゴヌクレオチドプローブがハイブリダイゼーションするまでの領域(領域3)である。領域1は領域2と向き合ってループ構造を形成し、相補的な配列となるように設計されている。従って、領域1は領域2と自分自身で相補鎖を形成する。更にその下流には、第一オリゴヌクレオチドプローブにおけるフラップ、すなわち第三オリゴヌクレオチドプローブと相補的な配列を有し第三オリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイゼーションする領域(領域3)をもつ。
FRETプローブは標的配列とは全く無関係な配列を有するため、標的配列の種類によらず検出、同定の目的に沿って配列を選択、設定することが可能であり、共通の配列を設定することもできる。また、標的部位特異的に設計した第一オリゴヌクレオチドプローブ及びインベーダープローブの配列と、アレルプローブのフラップ部分、すなわち第三オリゴヌクレオチドプローブの配列との最適な組合せを適宜設定することも可能である。
【0041】
FRETプローブは、その5’末端の塩基にレポーターが標識されており、その下流にはクエンチャーが結合している。従って、この状態ではクエンチャーが蛍光を吸収するため、蛍光検出器では蛍光を検出できない。使用される色素としては、6−FAM、TET、HEX、Cy3、VIC、TAMRA、ROX、LC Red、Cy5、BHQ−1、BHQ−2、BHQ−3、Yakima Yellow、Redmond Red等の色素の使用が可能であるが、使用可能な色素はこれらに限定されるものではなく、当業者であれば、実際に測定に使用する機器が検出可能な波長の色素を適宜選択して使用することができる。上記色素のうち、使用する測定機器において割り当てられたチャネル数に応じて、色素を選択し使用することが可能であるが、検出波長が近い場合であっても、その蛍光が互いに干渉を受けない色素どうしであれば、同時に使用することができる。例えば、例えば、FAMは励起波長494nm、検出波長518nm、VICは励起波長538nm、検出波長552nm、ROXは励起波長587nm、検出波長607nmであるため、同時に使用することが許容される。更に、Yakima Yellowは励起波長531nm、検出波長550nmとVICとほぼ同等であるため、VIC用に設定されたフィルターを使用して検出、同定できる。また、Redmond Redは励起波長579nm、検出波長595nmとROXとほぼ同等であるため、ROX用に設定されたフィルターを使用して検出、同定できる。このように、複数の色素を組合せて検出、同定反応を構築することが可能である。
【0042】
第三オリゴヌクレオチドプローブがFRETプローブの領域3においてハイブリダイゼーションすると、FRETプローブの5’末端側でループを形成した相補鎖の間に第三オリゴヌクレオチドプローブの塩基が入り込んだ形でハイブリダイゼーションするため、第三オリゴヌクレオチドプローブはインベーダープローブとなり開裂構造体が形成される(以下、第二開裂構造体と称する場合がある)。該第二開裂構造体のうちFRETプローブのフラップ領域をフラップエンドヌクレアーゼが認識して切断すると、5’末の塩基に標識されているレポーター分子がクエンチャーから離れるため、蛍光を発する。
【0043】
FRETプローブはステムループを形成する性質を利用しているため、FRETプローブのプローブとしての性質を左右する因子としては、自己相補的な領域の長さ、オーバーラップ領域の長さ、ワトソン−クリック塩基対及び特別に安定なループ配列の存在又は不存在によって予測されるようなヘアピン又はステムループ構造の安定性などが想定されるが、当業者であれば、ステムループを形成する配列のデザインも考慮して、これら第四オリゴヌクレオチドプローブを適宜設計することができる。
【0044】
判定に際してはFRETプローブから発せられる蛍光強度を測定し、検出、同定を行うが、迅速に検査結果を報告するために、判定基準を設定することもできる。例えば、プラスミドが0コピー/反応時の蛍光量をバックグランドとし、M.genitaliumは6,000、M.hominisは6,000、U.parvumは1,700、U.urealyticumは800、マイコプラズマ属およびウレアプラズマ属(以後ALL Mycoと略す)は800、内部標準物質は1,700をカットオフ値として設定し、各々のオリゴヌクレオチドプローブについて検出、同定の判定基準とすることができる。
【0045】
これらオリゴヌクレオチドプローブがハイブリダイゼーションする標的部位は、全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定に使用する領域において種特異的な配列を有する部位を使用することができる。該標的部位は、検出、同定したい細菌に特異的な配列部分を標的核酸として、その前後の連続した塩基配列に対して設定し、例えば、M.genitaliumの場合には配列番号37で表わされる塩基配列の320番目の塩基、M.hominisの場合には配列番号38で表わされる塩基配列の100番目の塩基、U.urealyticumの場合には配列番号39で表わされる塩基配列の312番目の塩基、U.parvumの場合には配列番号40で表わされる塩基配列の312番目の塩基、マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定用の場合には配列番号37で表わされる塩基配列の264番目の塩基、内部標準物質の場合には配列番号36で表わされる塩基配列の329番目の塩基を標的核酸として標的部位を設定することができる。
【0046】
標的部位にハイブリダイゼーションする各々のオリゴヌクレオチドプローブの連続する塩基の数は、Tm値に加えて塩基の隣接計算や所与の構造の遊離エネルギー計算結果を考慮して適宜調整することができ、特定の塩基数に限定されるものではない。
インベーダー反応は、前述した通り、標的核酸の位置で検出、同定対象の核酸配列とアレルプローブ及びインベーダープローブとが三重構造体を形成させる反応を利用している。そのため、標的部位に対してアレルプローブがハイブリダイゼーションする前にインベーダープローブが侵入してハイブリダイゼーションする必要がある。従って、アレルプローブよりもインベーダープローブのTm値を小さくして三重構造体を形成するように設計して使用することができる。
【0047】
これら各種オリゴヌクレオチドプローブの設計は、通常は、配列情報に基づいて種特異的な配列を選択することにより設計できるが、当業者であれば、公知の方法に従って、適宜、設計して使用することが可能である。前述したように、インベーダー反応では、標的配列とアレルプローブとの間にインベーダープローブが入り込み開裂構造体を形成する反応を利用するため、インベーダープローブがアレルプローブに比してそのTm値が小さくなるような配列にする等を考慮した上で、また、該当の配列部位の高次構造の有無や、GC含量等に基づいて適宜調整可能である。例えば、ホロジック社に委託して設計し、プライマーやプローブとの最適な組み合わせを検討して配列を選択することも可能である。また、設計された各種オリゴヌクレオチドプローブの製造は、当業者であれば公知の方法に従って、適宜製造することが可能である。例えばホロジック社などのような会社に製造を委託してもよい。
【0048】
なお、通常、上記のような一般的な指標に基づいて複数のオリゴヌクレオチドプローブを設計し、これら複数のオリゴヌクレオチドプローブを使用して同時に複数のマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定を行うのに適したインベーダー反応の条件を適宜設定することができるが、インベーダー反応の条件を特定の条件に定めたい場合には、該条件の下で各々のオリゴヌクレオチドプローブが同等の反応性を示し、各々のオリゴヌクレオチドプローブが検出、同定の対象となる細菌の標的部位と特異性高く反応することができるように、オリゴヌクレオチドプローブ配列側を改良することも可能である。このような場合には、例えば、上記のような一般的な指標に基づいてオリゴヌクレオチドプローブを設計した後、オリゴヌクレオチドプローブ配列の一部改変を行ったり、類似の配列を有する複数のオリゴヌクレオチドプローブを調製したりして、特定の条件下で最も適切な反応を示すものを選択する等により適宜確定することができる。
【0049】
本発明によって、種特異的なオリゴヌクレオチドプローブを設計してマイコプラズマ属又はウレアプラズマ属細菌について各々の種を同定することができる。種ごとに設計したオリゴヌクレオチドプローブに異なる色素を標識することで、複数の種を同時に検出、同定することもできる。
【0050】
将来新たに尿路感染症を引き起こすマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌が分離報告された場合には、前述した公知のオリゴヌクレオチドプローブ設計法に基づいて、対象となる種を追加することも可能である。その場合、新たに報告された細菌がマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌のいずれかに系統発生的に近い関係であること、すなわち、その生物が進化的意味において互いに近い関係があり、ゆえに遠い関係の生物より全体の核酸配列が高い相同性を有していればよく、該4種の細菌のみに近縁で高い相同性を有する細菌である必要はない。
【0051】
本発明においてオリゴヌクレオチドプローブセットとは、アレルプローブとインベーダープローブを含み、FRETプローブを使用せずに対象とするマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定を行うこともできる。その場合、前述の通りアレルプローブ末端を標識しておき、フラップエンドヌクレアーゼによって切断された場合に蛍光を発するように設計するとよい。
また、必要に応じてFRETプローブを含むこともできる。その場合、反応液中には、検出、同定の対象となる標的部位あたりの、第三オリゴヌクレオチドプローブ配列に続いて第一オリゴヌクレオチドプローブの配列が位置する塩基配列をもつアレルプローブ、第二オリゴヌクレオチドプローブ配列からなるインベーダープローブ、及び第四オリゴヌクレオチドプローブ配列からなるFRETプローブが存在する。
【0052】
オリゴヌクレオチドプローブセットは、検出、同定を実施する目的や状況に応じて、どのようなオリゴヌクレオチドプローブセットを組み合わせるか、適宜選択して使用することができる。
例えば、少なくとも一セット以上の検出、同定の対象とする種特異的なオリゴヌクレオチドプローブセットだけを使用して実施することができる。これらは、一セットのオリゴヌクレオチドプローブセットで使用してもよいし、二セット以上のオリゴヌクレオチドプローブセットを組み合わせて使用してもよい。
【0053】
例えば、M.genitaliumの検出、同定の場合には、配列番号7で表わされるアレルプローブ及び配列番号8で表わされるインベーダープローブを含むオリゴヌクレオチドプローブセット、M.hominisの検出、同定の場合には、配列番号10で表わされるアレルプローブ及び配列番号11で表わされるインベーダープローブを含むオリゴヌクレオチドプローブセット、U.urealyticumの検出、同定の場合には、配列番号13で表わされるアレルプローブ及び配列番号14で表わされるインベーダープローブを含むオリゴヌクレオチドプローブセット、U.parvumの検出、同定の場合には配列番号16で表わされるアレルプローブ及び配列番号14で表わされるインベーダープローブを含むオリゴヌクレオチドプローブセットを使用することで、高感度且つ高精度に対象の種を検出、同定することができるので好ましい。
【0054】
また、必要に応じて、全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌を検出、同定の対象とするオリゴヌクレオチドプローブセットを追加して実施してもよい。
全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌に共通する配列を標的部位として、該標的部位に対して特異的な第一オリゴヌクレオチドプローブを含むアレルプローブ及びインベーダープローブを設計して、各々の種特異的に設計されたオリゴヌクレオチドプローブと同時に使用することもできる。この場合、アレルプローブから切断されて遊離する第三オリゴヌクレオチドプローブ及び該第三オリゴヌクレオチドプローブが結合するFRETプローブの配列と蛍光標識化合物は、それぞれ種特異的に設計したオリゴヌクレオチドプローブの配列及び蛍光標識化合物とは異なるように設計する。
全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌に共通した配列を検出することで、PCRによって増幅され検出された細菌がマイコプラズマ属或いはウレアプラズマ属細菌であることを確認することができる。これにより、種特異的なオリゴヌクレオチドプローブで検出、同定されたシグナルが非特異的反応である場合などには誤判定を防ぐことが可能となり、検査精度を向上させることができる。
【0055】
また、検出、同定の対象としている種特異的なオリゴヌクレオチドプローブによっては検出されなかったが、全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌を対象としたオリゴヌクレオチドプローブによって検出がされた場合には、現在尿路感染症への関与が示唆されている種類の細菌以外の新たな関与を示唆する発見が可能となり、尿路感染症の起炎菌を正確に把握することが可能となる。
【0056】
例えば、M.genitalilumに特異的な配列を標的部位とする、第一オリゴヌクレオチドプローブ、インベーダープローブを設計する。更に、アレルプローブから切断されて遊離する第三オリゴヌクレオチドプローブと該第三オリゴヌクレオチドプローブと相補結合する、5’末端側の塩基をFAMで標識したFRETプローブを準備する。
一方で、全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌に共通する配列を標的部位として第一オリゴヌクレオチドプローブ、インベーダープローブを設計する。更に、第一オリゴヌクレオチドプローブが切断されて遊離する第三オリゴヌクレオチドプローブと該第三オリゴヌクレオチドプローブと相補結合する、5’末端側の塩基をVICで標識したFRETプローブを準備する。
これらの試薬を全て混合し、インベーダー反応を行う。この時、PCRとインベーダー反応を同時に行うインベーダー法を行ってもよいし、PCR反応による増幅反応終了後にインベーダー反応を行うインベーダープラス法を行ってもよい。インベーダープラス法により、更に、簡便且つ迅速に高感度な分析を行うことができるので好ましい。
【0057】
蛍光検出器によってFAM及びVICの蛍光強度を測定して検出を行う。すなわち、検出の結果、強いFAMの蛍光に加えてVICの蛍光を検出できた場合には、試料に含まれる核酸がマイコプラズマ属またはウレアプラズマ属細菌であることを意味し、更には標的部位の核酸配列がM.genitalium特異的な配列を有することを意味し、M.genitaliumであると同定することができる。また、検出の結果、FAMの蛍光のみでVICの蛍光が検出できない場合には、M.genitalium以外のマイコプラズマ属又はウレアプラズマ属細菌であると推定することができる。
【0058】
更に、内部標準物質を検出、同定の対象とするオリゴヌクレオチドプローブセットを組合せて実施してもよい。PCR反応時の阻害の有無を確認するために、反応溶液中に内部標準物質を添加して実施することができる。内部標準物質は、使用するプライマーセットにより増幅されるが、インベーダー反応の工程で使用される種特異的オリゴヌクレオチドプローブのいずれとも反応せず、内部標準物質の検出、同定用に設計したオリゴヌクレオチドプローブのみと反応する配列を有するものを用いる。
内部標準物質を使用するために、PCRの条件を変更したりプライマーを追加することもできるが、プライマーセットの数を増やさず反応に大きな影響を与えない程度に添加され使用されることが好ましい。例えば、M.genitaliumの配列(X77334)の配列の一部を人為的に改変したものを使用することができる。
【0059】
本発明の実施形態である核酸プローブアッセイ用組成物を含む試薬キットは、本発明の実施形態によるPCRとインベーダー反応を使用したマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定が実施できるように構成される。
例えば、対象とする全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌に共通する16s rRNA領域に設計したプライマーセット(配列番号5、6)、対象とする全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌に共通する配列を標的部位として設計したオリゴヌクレオチドプローブセット、及び/又は、対象とする全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌から選ばれる少なくとも一つ以上の種特異的な配列を標的部位として設計したオリゴヌクレオチドプローブセット、を含み、更に、Taqポリメラーゼ、フラップエンドヌクレアーゼを含むことができる。
【0060】
オリゴヌクレオチドプローブセットは、検出、同定を実施する目的や状況に応じて、どのようなオリゴヌクレオチドプローブセットを組み合わせるか、適宜選択して使用することができ、選択の仕方としては、前述した検出、同定する方法に倣って組み合わせを選択することが可能である。オリゴヌクレオチドプローブセットは、アレルプローブとインベーダープローブを含み、必要に応じてFRETプローブを含むこともできる。FRETプローブを使用せずに実施する場合、アレルプローブ末端を標識しておき、フラップエンドヌクレアーゼによって切断された場合に蛍光を発するように設計するとよい。
例えば、少なくとも一セット以上の検出、同定の対象とする種特異的なオリゴヌクレオチドプローブセットを含むことができる。これらは、一セットのオリゴヌクレオチドプローブセットを含んでいてもよいし、二セット以上のオリゴヌクレオチドプローブセットを含んでいてもよい。
具体的なオリゴヌクレオチドプローブセットとしては、以下の(a)〜(e)から少なくとも一つ以上選ばれるオリゴヌクレオチドプローブセットを挙げることができる。
(a)M.genitaliumの検出、同定用の配列番号7で表わされるアレルプローブ及び配列番号8で表わされるインベーダープローブを含む、オリゴヌクレオチドプローブセット、
(b)M.hominisの検出、同定用の配列番号10で表わされるアレルプローブ及び配列番号11で表わされるインベーダープローブを含む、オリゴヌクレオチドプローブセット、
(c)U.urealyticumの検出、同定用の配列番号13で表わされるアレルプローブ及び配列番号14で表わされるインベーダープローブを含む、オリゴヌクレオチドプローブセット、
(d)U.parvumの検出、同定用の配列番号16で表わされるアレルプローブ及び配列番号14で表わされるインベーダープローブを含む、オリゴヌクレオチドプローブセット、
(e)マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌群の検出、同定用の配列番号18又は19で表わされるアレルプローブと配列番号20又は21で表わされるインベーダープローブを含む、オリゴヌクレオチドプローブセット。
試薬キットの構成とするオリゴヌクレオチドプローブセットは、検査目的や対象とする菌種に合わせて、適宜、選択して使用することができる。
【0061】
更に、内部標準を検査する場合には、内部標準物質、及び、内部標準物質の検出、同定用オリゴヌクレオチドプローブセットを含むこともできる。
内部標準としては、適宜、選択して使用することができるが、例えば、内部標準物質としてM.genitaliumの配列の一部を改変したものを使用し、配列番号23で表わされるアレルプローブ及び配列番号24で表わされるインベーダープローブを含む、オリゴヌクレオチドプローブセットを含むこともできる。
【0062】
検査目的に合わせた具体的な試薬キットの構成としては、例えば、尿路感染症との関連が強く示唆され、最も検出率の高いM.genitaliumの検出検査に使用が想定される場合には、M.genitaliumの検出、同定用の配列番号7で表わされるアレルプローブ及び配列番号8で表わされるインベーダープローブを含む、オリゴヌクレオチドプローブセット、内部標準物質、及び、内部標準物質の検出、同定用のオリゴヌクレオチドプローブセットを含むこともできる。
【0063】
また、特定の細菌の感染状況を調べる疫学調査等に使用が想定される場合には、
(a)M.genitaliumの検出、同定用の配列番号7で表わされるアレルプローブ及び配列番号8で表わされるインベーダープローブを含む、オリゴヌクレオチドプローブセット、
(b)M.hominisの検出、同定用の配列番号10で表わされるアレルプローブ及び配列番号11で表わされるインベーダープローブを含む、オリゴヌクレオチドプローブセット、
(c)U.urealyticumの検出、同定用の配列番号13で表わされるアレルプローブ及び配列番号14で表わされるインベーダープローブを含む、オリゴヌクレオチドプローブセット、
(d)U.parvumの検出、同定用の配列番号16で表わされるアレルプローブ及び配列番号14で表わされるインベーダープローブを含む、オリゴヌクレオチドプローブセット、
(e)マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌群の検出、同定用の配列番号18又は19で表わされるアレルプローブと配列番号20又は21で表わされるインベーダープローブを含む、オリゴヌクレオチドプローブセット、
のいずれかから対象とする細菌のオリゴヌクレオチドプローブセットを選択し、含むことができる。
【0064】
また、尿路感染症とその起炎菌との関連について調査する場合には、
(a)M.genitaliumの検出、同定用の配列番号7で表わされるアレルプローブ及び配列番号8で表わされるインベーダープローブを含む、オリゴヌクレオチドプローブセット、
(b)M.hominisの検出、同定用の配列番号10で表わされるアレルプローブ及び配列番号11で表わされるインベーダープローブを含む、オリゴヌクレオチドプローブセット、
(c)U.urealyticumの検出、同定用の配列番号13で表わされるアレルプローブ及び配列番号14で表わされるインベーダープローブを含む、オリゴヌクレオチドプローブセット、
(d)U.parvumの検出、同定用の配列番号16で表わされるアレルプローブ及び配列番号14で表わされるインベーダープローブを含む、オリゴヌクレオチドプローブセット、
(e)マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌群の検出、同定用の配列番号18又は19で表わされるアレルプローブと配列番号20又は21で表わされるインベーダープローブを含む、オリゴヌクレオチドプローブセット、
更に、内部標準物質、及び、内部標準物質の検出、同定用のオリゴヌクレオチドプローブセットを含むこともできる。
【0065】
また、上記以外のマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属について調査研究の対象とする場合には、
(e)マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌群の検出、同定用の配列番号18又は19で表わされるアレルプローブと配列番号20又は21で表わされるインベーダープローブを含む、オリゴヌクレオチドプローブセット、
を更に含む試薬キット構成とし、いずれの種特異的オリゴヌクレオチドプローブセットとも反応しない菌が検出、同定された場合に更なる解析を実施する対象を絞り込むこともできる。
【実施例】
【0066】
次に実施例を挙げて本発明の詳細を説明するが、下記実施例は本発明について具体的な認識を得る一助としてのみ挙げたものであり、これによって本発明の範囲が何ら制限されるものではない。
【0067】
(実施例1;プライマー、オリゴヌクレオチドプローブの設計)
本発明において検出、同定の対象とするM.genitalium(X77334;配列番号1)、M.hominis(M96660;配列番号2)、U.urealyticum(AF073450;配列番号3)、U.parvum(A073459;配列番号4)の4種について、GenBank(米国国立バイオテクノロジー情報センター;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genbank/)から16s rRNAの配列を入手した。入手した各配列をソフトウェアGENETIX(ゼネティックス社製)を使用して、多重整列プログラムであるClustalWのアルゴリズムに従って配列のアライメントを実施した。アライメント結果を図1に示す。
【0068】
プライマー及びオリゴヌクレオチドプローブはアライメントデータを参考にして、プライマー及びオリゴヌクレオチドプローブを設計した。プライマーはこれらの種に共通する配列部位を選び出して設計した。オリゴヌクレオチドプローブは、種特異的な配列を選び出して設計した。M.genitaliumはアンチセンス鎖に対してハイブリダイゼーションするようにオリゴヌクレオチドプローブを設計し、それ以外はすべてセンス鎖に対してハイブリダイゼーションするようにオリゴヌクレオチドプローブを設計した。
【0069】
PCR反応に使用したプライマー配列は以下の通りである。
Myco_Urea_F: 5’−CGCGGTAATACATAGGTTGCAAGCGTTATC−3’(配列番号5)
Rv1: 5’−GCACCACCTGTCACTCTGTTAACCTC−3’(配列番号6)
【0070】
また、種別に使用したオリゴヌクレオチドプローブ配列は以下の通りである。
M.genitalium特異的オリゴヌクレオチドプローブは、以下の通りである。なお、アレルプローブ中においてフラップ配列、すなわち、フラップエンドヌクレアーゼにより切断されて第三オリゴヌクレオチドプローブとなる配列は小文字で記載した。
アレルプローブ
Mg_SE_P1_arm7: 5’−tccgcgcgtccAGGGATCGCTCCG−3’(配列番号7)
第二オリゴヌクレオチドプローブ(インベーダープローブ)
Mg_SE_inv: 5’−AGATACTTAATGTGTTAACTTCACTACCGAT−3’(配列番号8)
第三オリゴヌクレオチドプローブ: 5’−tccgcgcgtcc−3’(配列番号9)
M.genitalium検出、同定用に設計した第四オリゴヌクレオチドプローブはその5’末端をFAMで標識されたものをホロジック社から購入した。
【0071】
M.hominis特異的プローブは、以下の通りである。なお、アレルプローブ中においてフラップ配列、すなわち、フラップエンドヌクレアーゼにより切断されて第三オリゴヌクレオチドプローブとなる配列は小文字で記載した。
アレルプローブ
Mh2_63_P1_arm7: 5’−tccgcgcgtccCGGCTCGCTTTGG−3’(配列番号10)
第二オリゴヌクレオチドプローブ(インベーダープローブ)
Mh2_inv2: 5’−GAGTTAAATCCCGGGGCTCAACCCA−3’(配列番号11)
第三オリゴヌクレオチドプローブ: 5’−tccgcgcgtcc−3’(配列番号12)
M.hominis検出、同定用に設計した第四オリゴヌクレオチドプローブはその5’末端をFAMで標識されたものをホロジック社から購入した。
【0072】
U.urealyticum特異的オリゴヌクレオチドプローブは、以下の通りである。なお、アレルプローブ中においてフラップ配列、すなわち、フラップエンドヌクレアーゼにより切断されて第三オリゴヌクレオチドプローブとなる配列は小文字で記載した。
アレルプローブ
Uu_63_P1_arm6: 5’−cgcgaggccgTCGAACGAGTCGGT−3’(配列番号13)
第二オリゴヌクレオチドプローブ(インベーダープローブ);
Urea_Inv2: 5’−ACCGTAAACGATCATCATTAAATGTCGGCA−3’(配列番号14)
第三オリゴヌクレオチドプローブ: 5’−cgcgaggccg−3’(配列番号15)
U.urealyticum検出、同定用に設計した第四オリゴヌクレオチドプローブはその5’末端をRedmond Redで標識されたものをホロジック社から購入した。
【0073】
U.parvum特異的オリゴヌクレオチドプローブは、以下の通りである。なお、アレルプローブ中においてフラップ配列、すなわち、フラップエンドヌクレアーゼにより切断されて第三オリゴヌクレオチドプローブとなる配列は小文字で記載した。
アレルプローブ
Up_63_P1_arm1: 5’−cgcgccgaggCCGAATGGGTCGGT−3’(配列番号16)
第二オリゴヌクレオチドプローブ(インベーダープローブ)は、U.urealyticumと共通の配列(配列番号14)を設計し使用した。
第三オリゴヌクレオチドプローブ: 5’−cgcgccgagg−3’(配列番号17)
U.parvum検出、同定用に設計した第四オリゴヌクレオチドプローブはその5’末端をYakima Yellowで標識されたものをホロジック社から購入した。
【0074】
また、全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌に共通のオリゴヌクレオチドプローブは、以下の通り設計した。なお、アレルプローブ中においてフラップ配列、すなわち、フラップエンドヌクレアーゼにより切断されて第三オリゴヌクレオチドプローブとなる配列は小文字で記載した。
アレルプローブ
ALL2_SE_P1_arm4: 5’−aggccacggacgTAATCCTATTTGCTCCCCA−3’(配列番号18)
ALL2_SE_P1_G_arm4: 5’−aggccacggacgTAATCCTGTTTGCTCCC−3’(配列番号19)
第二オリゴヌクレオチドプローブ(インベーダープローブ)
ALL2_SE_inv: 5’−TACGGTGTGGACTACTAGGGTATCC−3’(配列番号20)
ALL2_SE_inv_CC: 5’−GCGTGGACTACCAGGGTATCC−3’(配列番号21)
第三オリゴヌクレオチドプローブ: 5’−aggccacggacg−3’(配列番号22)
全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌検出、同定用に設計した第四オリゴヌクレオチドプローブはその5’末端をRedmond Redで標識されたものをホロジック社から購入した。
【0075】
ウレアプラズマ属細菌(U.urealyticumU.parvum)の検出、同定用第四オリゴヌクレオチドプローブは共通した配列となるように設計し、その5’末端をU.urealyticum検出用オリゴヌクレオチドプローブはYakimaで、U.parvum検出用オリゴヌクレオチドプローブはRedmondで標識した。Yakimaは励起波長531nm、検出波長550nmとVICとほぼ同等であるため、VIC用に設定されたフィルターを使用して検出、同定できる。また、Redmondは励起波長579nm、検出波長595nmとROXとほぼ同等であるため、ROX用に設定されたフィルターを使用して検出、同定できる。
【0076】
また、内部標準物質に対しても特異的なオリゴヌクレオチドプローブをそれぞれ設計した。なお、アレルプローブ中においてフラップ配列、すなわち、フラップエンドヌクレアーゼにより切断されて第三オリゴヌクレオチドプローブとなる配列は小文字で記載した。
アレルプローブ
Myco_IC_P_arm1: 5’−cgcgccgaggCGACAGCTAGTATCTATCG−3’(配列番号23)
第二オリゴヌクレオチドプローブ(インベーダープローブ)
IC_inv: 5’−TGCAGGATCGGAATTCCAGCA−3’(配列番号24)
第三オリゴヌクレオチドプローブ: 5’−cgcgccgagg−3’(配列番号25)
内部標準物質検出、同定用に設計した第四オリゴヌクレオチドプローブはその5’末端をYakima Yellowで標識されたものをホロジック社から購入した。
なお、全ての第三オリゴヌクレオチドプローブの3’末端に位置する塩基は、第一オリゴヌクレオチドプローブの5’末端に位置する塩基とホスホジエステル結合によって結合するように合成され、試薬混合時においては一つのオリゴヌクレオチドプローブとして反応溶液中に存在する。
【0077】
設計したプライマー及び各オリゴヌクレオチドプローブの位置をアライメント図2に示す。また、プライマー及び各オリゴヌクレオチドプローブの一覧を表1に示す。第三オリゴヌクレオチドプローブについては、インベーダープローブとして記載した配列中に小文字で示した。なお、表中のICは内部標準物質を示す。
【0078】
【表1】
【0079】
(実施例2;材料の調製)
(菌株)
マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の菌株は、ATCC(American Type Culture Collection)より購入したM.genitaliumM.hominisU.urealyticumU.parvumのマイコプラズマ菌株及びウレアプラズマ菌株を使用した。
また、交差試験に使用したマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌以外の41種類の細菌、酵母についても全てATCCから購入して使用した。表2に使用した菌株の一覧を示す。
【0080】
【表2】
【0081】
(プライマー、オリゴヌクレオチドプローブの合成)
実施例1で設計したプライマー及びオリゴヌクレオチドプローブの合成は、ホロジック社に委託して製造した。
【0082】
(プラスミドの調製)
検出用陽性対照として、またPCR反応の鋳型として使用するDNAを作製した。検出、同定の対象とするM.genitaliumM.hominisU.urealyticumU.parvumの4菌株試料として、自動化精製試薬(QIAsymphony SP、QIAGEN社製)を使用してDNAの抽出を行った。抽出したDNAを鋳型として、実施例1で設計した配列番号5及び配列番号6からなるプライマーセットを使用して、通常のPCR反応条件により増幅した。M.genitaliumは516〜1037番目の塩基を、M.hominisは512〜1019番目の塩基を、U.urealyticumは492〜1013番目の塩基を、U.parvumは496〜1017番目の塩基を増幅した。
得られたPCR増幅産物を遺伝子組み換え用プラスミド(pT7 Blue T−vector,Novagen社製)内に、添付のプロトコルに従って挿入しクローニングした。これを検出用陽性対象及びPCR反応の鋳型とした。
【0083】
(内部標準物質の作製)
PCR反応時の阻害の有無を確認するために使用する内部標準物質を作製した。実施例2で作製したM.genitaliumの配列を有するDNAが挿入されたプラスミドを鋳型として、M.genitalium配列部分を通常の方法に従ってPCR反応で増幅した。
得られたPCR産物を精製した後、その塩基配列の一部(X77334の769番目〜930番目に相当)を人為的に改変したものを遺伝子組み換え用プラスミド(pT7 Blue T−vector,Novagen社製)内に、添付のプロトコルに従って挿入しクローニングし、内部標準物質とした(配列番号36)。
【0084】
試薬キット1として実施例1で設計した共通プライマーセット、M.genitaliumに特異的なオリゴヌクレオチドプローブセット、全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌に共通である(以後ALL Mycoと称する)オリゴヌクレオチドプローブセット、内部標準物質に対して設計したオリゴヌクレオチドプローブセットを、試薬キット2としてM.hominisU.urealyticumU.parvumのそれぞれに対して特異的なオリゴヌクレオチドプローブセットを検出する反応液として調製した。
【0085】
(実施例3:PCR条件サイクル数の検討)
PCR反応後にインベーダー反応による検出、同定を行う場合について、PCR反応のサイクル数と検出状況について検討し、最適なPCR反応のサイクル数を設定した。実施例2で調製した材料を使用して、試薬キット1を使用してM.genitaliumを、試薬キット2を使用してM.hominisU.urealyticumU.parvumの各細菌を検出、同定できる条件の検討を行った。鋳型としては、実施例2で調製したプラスミドを1反応あたり10〜10コピーとなるように使用した。
【0086】
PCR反応による増幅と同時にインベーダー反応によって検出、同定する方法は、上記のように混合した試薬を、95℃に加温したサーマルサイクラー(PRISM7900HT,アプライドバイオシステムズ社製)を使用して、PCRの増幅反応条件は(95℃、10秒)+(95℃、30秒+70℃、1分)×2+(95℃、15秒+70℃、1分)×10+(95℃、15秒+63℃、1分)×40で行った。
PCR反応後にインベーダー法による検出、同定を行うインベーダープラス法は、上記のように混合した試薬を、95℃に加温したサーマルサイクラー(PRISM7900HT,アプライドバイオシステムズ社製)を使用して、PCRの増幅反応条件を(95℃、10秒)+(95℃、15秒+70℃、1分)×30で行った後、99℃で10分加熱してTaqポリメラーゼを不活化し、(63℃、30秒)×60でインベーダー法による蛍光データ取得をした。インベーダー法とインベーダープラス法の比較結果を図4(インベーダー法)及び図5(インベーダープラス法)に示す。
【0087】
また、インベーダープラス法において、PCR反応のサイクル数を、20、27、30、40の各サイクルとして増幅後、99℃、10分加熱してTaqポリメラーゼを不活化させた後、インベーダー反応は63℃で60サイクルの蛍光データを取得(63℃で30秒毎に30分間蛍光データを取得)し判定を行った結果を図5(PCR:30サイクル)、図6(PCR:40サイクル)、図7(PCR:20サイクル)、表3に示す。
【0088】
【表3】
【0089】
一般的には、PCRによる検出はPCRサイクル数を増やすことで低コピー数の核酸試料からも検出が可能となる。PCR反応と同時にインベーダー反応を実施して検出、同定する系では、核酸試料に含まれるコピー数が高コピーである場合にも低コピーである場合にもPCR増幅産物の量と蛍光強度が経時的に増加する状況を検出することが可能である。一方で本発明の方法では、PCR反応サイクル数の増加に伴いPCR増幅産物の量が過剰となるため、バックグラウンドの蛍光強度が上昇し、高コピー数の核酸試料において検出が困難となる。種によっては十分な核酸量があるにも関わらず検出対象外となり、誤判定の原因となりうることが分かった(図6)。
【0090】
(実施例4:マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌由来核酸の検出、同定)
実施例2で調製した材料を使用して、試薬キット1を使用してM.genitaliumを、試薬キット2を使用してM.hominisU.urealyticumU.parvumの各細菌を検出、同定できることを確認した。鋳型としては、実施例2で調製したプラスミドを1反応あたり10〜10コピーとなるように使用した。
【0091】
混合した試薬を、95℃に加温したサーマルサイクラー(PRISM7900HT,アプライドバイオシステムズ社製)を使用して、PCRの増幅反応条件は95℃、10秒+(95℃、15秒+70℃、1分)×34cycles+99℃、10分+(63℃、30秒)×60cyclesで実施した。インベーダー反応は63℃で60cyclesの蛍光データを取得(63℃で30秒毎に30分間蛍光データを取得)し判定を行った。
【0092】
判定に際しては特異オリゴヌクレオチドプローブの蛍光検出量を測定し、検出判定基準を決定した。
プラスミドが0コピー/反応時の蛍光量をバックグランドとし、M.genitaliumは6,000、M.hominisは6,000、U.parvumは1,700、U.urealyticumは800、マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌について(以後ALL Mycoと略す)は800、内部標準物質については1,700を判定基準とした。
検出された各種オリゴヌクレオチドプローブの蛍光量を表4に示す。いずれの各種オリゴヌクレオチドプローブについても検出された蛍光量が1反応あたり10コピーまで判定値を上回ることが確認された。
【0093】
【表4】
【0094】
(実施例5:再現性の確認)
本発明において設計したプライマー及びオリゴヌクレオチドプローブを含む試薬キットを使用して、検出感度と再現性の確認を行った。M.genitaliumM.hominisU.urealyticumU.parvumのPCR増幅産物を組込んだプラスミドDNAの濃度が、1反応あたり10、10、0コピーとなるように3ロットを調製した。これら3ロットについて同時再現性の確認として6回測定し、さらに日を変えての日差再現性の確認測定を3回実施した。検出率が100%となる濃度を最小の検出限界とした。検出、同定の方法は実施例4と同様にして行った。その結果、実施した18回の測定において、検出率が100%となるコピー数はM.genitaliumM.hominisU.urealyticum、ALL Mycoが50コピー/テスト、U.parvum、内部標準物質が100コピー/テストであり、検査室において求められる検出感度を十分に満たすものであった。
【0095】
(実施例6:交差反応性試験)
実施例2で調製した試薬キットを使用したマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定法について、他の種との交差反応性について検討を行った。
【0096】
6−1.マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌内における交差反応性試験
ヒトに対して感染が確認されているマイコプラズマ属13種、ウレアプラズマ属2種について、交差反応が起きないかを確認した結果を表5に示す。種特異的に設計した各オリゴヌクレオチドプローブは、いずれも対象とする菌とのみ反応が確認され、対象外の細菌と反応する非特異反応検出されなかった。
【0097】
【表5】
【0098】
6−2.泌尿器関連微生物に対する交差反応性試験
泌尿器への感染が報告されているマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属以外の細菌41種を使用して、それらの細菌との交差反応性について検討を行った結果を表6に示す。
種特異的に設計した各オリゴヌクレオチドプローブは、いずれも対象とする菌とのみ反応が確認され、対象外の細菌と反応する非特異反応検出されなかった。また、全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌に共通する配列を標的部位として設計したALLMycoプローブを使用した場合には、Proteus mirabilis及びViblio parahaemolyticusの検出が確認されたが、その他では実施した全ての細菌、酵母からの検出はされなかった。対象種以外の種が相同性の高い配列を有する場合においても、臨床検体からの分離例がほとんど無い種については、実質的に問題にならないと思われた。
【0099】
【表6】
【0100】
(実施例7:臨床検体からの検出)
本発明の試薬キットを使用して、臨床検体73件から対象とする4種の検出、同定を試みた。対照法としては、特開2004−24206号公報に公開されている方法(以下、対照法と称する)を使用して比較を行った。試料からの核酸抽出には、QIAsymphony Virum/Bacteria Midi Kit(QIAGEN社製)を用いて核酸試料を調製した以外は、実施例3と同様の検出、同定方法にて行った。
【0101】
M.genitaliumの場合では、対照法によっては検出されなかった検体からもM.genitaliumを検出、同定することができることが確認された。同様に他の種についても比較を行った結果、M.hominis及びU.urealyticumについても対照法によっては検出されなかった検体からも検出、同定が可能であることが確認された。
U.parvumについては、対照法と本発明の方法とで結果が不一致となる検体が見られた。不一致検体について検出されたPCR増幅産物について詳細を解析した結果、検体中に含まれる核酸試料が検出下限となる最小検出限界に近い低コピー数であること、また、複数の菌の感染が疑われる複合感染であることがあることが判明した。
【0102】
(比較例1:プライマー及びオリゴヌクレオチドプローブ設計)
実施例1で実施したアライメントデータを参考にしてプライマー及びオリゴヌクレオチドプローブを設計した。プライマー及びオリゴヌクレオチドプローブの設計方法は実施例に準拠して行った。設計されたプライマー及びオリゴヌクレオチドプローブは以下の通りである。
【0103】
このプライマーセットは、フォワードプライマーは実施例1で設計したものと同一の配列(配列番号5)で、リバースプライマーは実施例で使用したプライマーを下流側に12塩基ずれた設計となっている。使用したリバースプライマーの配列を以下に記す。
Myco_Urea R6: 5’−GACGACAACCATGCACCATCTGTCA−3’(配列番号26)
【0104】
また、種別に使用したオリゴヌクレオチドプローブ配列は以下の通りである。なお、アレルプローブ中においてフラップ配列、すなわち、フラップエンドヌクレアーゼにより切断されて第三オリゴヌクレオチドプローブとなる配列は小文字で記載した。
M.genitalium特異的オリゴヌクレオチドプローブは、センス鎖に対して設計した。なお、フラップ部分の第三オリゴヌクレオチドプローブとなる部分は変更していない。
アレルプローブ
Mg_63_P1_arm7: 5’−tccgcgcgtccTTCGGTAGTGAAGTTAACAC−3’(配列番号27)
第二オリゴヌクレオチドプローブ(インベーダープローブ)
Mg_inv: 5’−AGCTGTCGGAGCGATCCCA−3’(配列番号28)
第三オリゴヌクレオチドプローブ
5’−tccgcgcgtcc−3’(配列番号29)
第四オリゴヌクレオチドプローブは実施例1で設計したM.genitalium検出、同定用第四オリゴヌクレオチドプローブと同じものを使用した。
【0105】
M.hominis特異的オリゴヌクレオチドプローブについては、実施例1で設計した第一〜第四オリゴヌクレオチドプローブと同じものを使用した。
【0106】
U.urealyticum特異的オリゴヌクレオチドプローブは、アレルプローブを2種類とした。また、フラップ部分の配列となる第三オリゴヌクレオチドプローブを変更し、それに伴って第四オリゴヌクレオチドプローブの配列も変更した。なお、アレルプローブ中においてフラップ配列、すなわち、フラップエンドヌクレアーゼにより切断されて第三オリゴヌクレオチドプローブとなる配列は小文字で記載した。
アレルプローブ
Uu_63_P1_arm3:5’−acggacgcggagTCGAACGAGTCGGT−3’(配列番号30)
Uu_63_P1_2_arm3:5’−acggacgcggagTCGAACGAGTCGGTT−3’(配列番号31)
第二オリゴヌクレオチドプローブ(インベーダープローブ)は、実施例1で設計したものと同じもの(配列番号14)を使用した。
第三オリゴヌクレオチドプローブ
5’−acggacgcggag−3’(配列番号32)
U.urealyticum検出、同定用に設計した第四オリゴヌクレオチドプローブはその5’末端をYakima Yellowで標識されたものをホロジック社から購入した。
第四オリゴヌクレオチドプローブはUreaplasma属細菌(U.urealyticumU.parvum)について共通するものとし、ウレアプラズマ属細菌の検出、同定用として、その5’末端をYakimaで標識した。
【0107】
U.parvum特異的プローブは実施例1で設計した第一〜第四オリゴヌクレオチドプローブと同じものを使用した。
【0108】
全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌に共通のオリゴヌクレオチドプローブは、以下の通りである。なお、アレルプローブ中においてフラップ配列、すなわち、フラップエンドヌクレアーゼにより切断されて第三オリゴヌクレオチドプローブとなる配列は小文字で記載した。
アレルプローブ
ALL2_63_P2−2_arm6: 5’−cgcgaggccgAGATACCCTAGTAGTCCAC−3’(配列番号33)
第二オリゴヌクレオチドプローブ(インベーダープローブ)
ALL2_inv2: 5’−AGGGTCGAAAGTGTGGGGAGCAAACAGGATTC−3’(配列番号34)
検出、同定用に設計した第二オリゴヌクレオチドプローブはその5’末端を『(標識化合物)』で標識した。
第三オリゴヌクレオチドプローブ:
5’−cgcgaggccg−3’(配列番号35)
全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌検出、同定用に設計した第四オリゴヌクレオチドプローブはその5’末端をYakima Yellowで標識されたものをホロジック社から購入した。
【0109】
設計したプライマー及び各オリゴヌクレオチドプローブの位置をアライメント図3に示す。また、プライマー及び各オリゴヌクレオチドプローブの一覧を表7に示す。なお、表中のICは内部標準物質を示す。
【0110】
【表7】
【0111】
(比較例2:マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌由来核酸の検出、同定)
実施例2の方法に準拠して、比較例1で設計したプライマー及びオリゴヌクレオチドプローブを含む試薬キットを調製した。
試薬キットの構成としては、試薬キット1にはプライマーセットに加えて、M.genitalium検出、同定用オリゴヌクレオチドプローブ、内部標準物質検出、同定用オリゴヌクレオチドプローブ、全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定用オリゴヌクレオチドプローブを含む。試薬キット2にはプライマーセットに加えて、M.hominisU.urealyticumU.parvumのそれぞれを検出、同定するためのオリゴヌクレオチドプローブを含む。
該試薬キットを使用してマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定を試みた。
その結果、対象とした4種いずれについても検出することが可能であった。感度は、U.urealyticumが1テストあたり100コピーである以外は、いずれも1テストあたり50コピーであった。
【0112】
(比較例3:交差反応性試験)
比較例2で調製した試薬キットを使用したマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定法について、他の種との交差反応性について検討を行った。
【0113】
3−1.マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌内における交差反応性試験
ヒトに対して感染が確認されているマイコプラズマ属13種、ウレアプラズマ属2種について、交差反応が起きないかを確認した結果を表8に示す。M.genitalium特異的なオリゴヌクレオチドプローブにおいては、M.genitalium以外にM.pneumoniaeとの反応が確認された。M.hominis特異的なオリゴヌクレオチドプローブでは、M.hominis以外にM.fauciumM.oraleM.primatumM.salivariumとの反応が確認されたことから、本試薬構成では高精度にマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定を行うには不十分であると考えられた。
【0114】
【表8】
【0115】
3−2.泌尿器関連微生物に対する交差反応性試験
泌尿器への感染が報告されているマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属以外の細菌41種(表2参照)を使用して、それらの細菌との交差反応性について検討を行った結果を表9に示す。なお、表9中の細菌番号(No.1〜41)は、表2の細菌番号と一致する。
その結果、M.hominis特異的に設計したオリゴヌクレオチドプローブでは、M.hominis以外にSalmonella typhimurium及びStaphylococcus aureusの2種との反応が確認された。また、全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌に共通する配列を標的部位として設計したALL Mycoプローブを使用した場合には、マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌以外の17種類の細菌との反応が確認された。このことから、目的とする4種のマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌以外の細菌とも反応することが確認された。
【0116】
【表9】
【0117】
上記のプライマーセット及びオリゴヌクレオチドプローブセットを含む試薬構成でマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出同定を行った場合には、目的とする4種の細菌以外と反応し本来検出、同定の対象とする種とは異なるマイコプラズマ細菌であると同定される可能性があるだけでなく、他の属の細菌を誤ってマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌であると同定してしまう可能性が高いため、治療方針の選択材料及び治療薬の効果判定材料として提供するには危険性が高く、採用することはできない。
【0118】
特にプライマーセットに関しては、配列情報から常法に従って設計した配列を有するプライマーセットだけでは不十分な場合があり、更に、インベーダー反応における検出、同定工程での特異性を考慮して特異性の高い反応系を構築する必要があることが分かった。
従って、公知の方法によって設計されたプライマーセット及びオリゴヌクレオチドプローブセットは、マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌の検出、同定に使用するためには不十分で使用できない場合があり、本発明において設計されたプライマー及び各種オリゴヌクレオチドプローブを使用した検査系は、特に、M.genitaliumM.hominisU.urealyticum、及びU.parvumの4種を検出、同定するにあたって、有用であることが示された。
これらのプライマーセット及びオリゴヌクレオチドプローブセットを含む試薬を使用した検出、同定方法は、臨床検体を使用して多検体を迅速に処理することが可能であり、簡易かつ高感度で、一反応で複数のマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌を検出し、交差反応が無く信頼性の高い精度で種を同定可能であることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の実施形態によれば、PCRによる増幅反応とインベーダー法による検出、同定反応に必要な試薬を一つの容器内に一度に混合して、臨床検体を材料にヒトからの分離が報告されている全てのマイコプラズマ属及びウレアプラズマ属細菌を同等の感度で検出し、非淋菌性尿道炎との関連が示唆されている種について同定することができる。また、非淋菌性尿道炎の起炎菌についての正確な情報を蓄積する一助となり、的確な治療方針の選択材料及び治療薬の効果判定材料を迅速に提供することができる。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。
【配列表フリーテキスト】
【0120】
配列表の配列番号7、10、13、16、18、19、23、24、27、30、31、33は、それぞれ、Mg_SE_P1_arm7、Mh2_63_P1_arm7、Uu_63_P1_arm6、Up_63_P1_arm1、ALL2_SE_P1_arm4、ALL2_SE_P1_G_arm4、Myco_IC_P_arm1、IC_inv、Mg_63_P1_arm7、Uu_63_P1_arm3、Uu_63_P1_2_arm3、ALL2_63_P2-2_arm6である。配列番号9、12、15、17、22、25、29、32、35の各塩基配列は第三オリゴヌクレオチドプローブ配列である。配列番号36の塩基配列は内部標準物質である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]