【実施例】
【0020】
〔実施例1の構成〕
本発明に係る充填斉1は、液状のエポキシ樹脂と粉末状にされた金属粉末と硬化剤とを混合した混合剤から成り、液状のエボキシ樹脂が硬化剤によって硬化し、または液状のエボキシ樹脂が硬化剤によって硬化すると共にこの硬化後の加熱処理によってエポキシ樹脂が炭化する。このエポキシ樹脂は、芳香族エポキシ樹脂・脂肪族エポキシ樹脂・脂環式エポキシ樹脂などにおけるそれぞれの液状のエポキシ樹脂(以下、単に「液状エポキシ樹脂」ともいう)である。そして、これらの液状エポキシ樹脂は、例えばビスフェノールA型液状エポキシ樹脂またはビスフェノールAD型液状エポキシ樹脂などが好ましく、これらより更に低粘度のビスフェノールF型液状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0021】
エポキシ樹脂は、低融点金属よりも硬化収縮率が低く、且つポリエステルよりも接着力が強い。ここで、低融点金属は、例えば亜鉛、スズ、鉛などである。また、エポキシ樹脂の硬化収縮率は0.1%であり、低融点金属(合金)たとえばハンダ等の硬化(凝固)収縮率1−2%程度であるので、エポキシ樹脂の方が低融点金属よりも硬化収縮率が低い。エポキシ樹脂の接着力は約20mPa−40mPaであり、ポリエステル樹脂またはウレタン樹脂の接着力は約10mPa−20mPaである。即ち、エポキシ樹脂は、接着力がウレタン樹脂などよりも約2倍ほど強い。
【0022】
本発明に係る充填剤は、これらの液状エポキシ樹脂を主剤とすると共に、粉末状の金属粉末と液状または粉末状などの硬化剤とから成る。本発明において、液状のエポキシ樹脂は、金属粉末を繋ぐいわゆる接着剤として使用している。一方、金属粉末はサーモグリスよりも熱伝導率が高い、例えばステンレス鋼・鉄・亜鉛・銅などの粉末である。これらのなかでも、金属粉末は、例えば錆止めには亜鉛粉末が好ましく、または熱伝導を重視すれば銅粉末が好ましい。
【0023】
一般的に亜鉛は、鉄よりも早くイオン化して酸化するので、その酸化被膜により錆の発生を防止する。即ち、亜鉛粉末は、上述したイオン化傾向より鉄・銅などへの防錆効果があり、熱伝導も鉄・ステンレス鋼などよりも良い。一方、酸化燃焼し易い亜鉛粉末などの場合は、空気中の酸素を遮断する必要がある。そのため、本発明では、亜鉛粉末を液状のエポキシ樹脂中で混合し、亜鉛粉末の表面をエポキシ樹脂で覆う処理を行う。なお、この混合処理する際、液状の硬化剤を併せて加えるようにしても良い。
【0024】
なお、サーモグリスの熱伝導率は約8.2W/m・Kであり、この熱伝導率よりも高い金属であるステンレス鋼(24W/m・K)・鉄(84W/m・K)・亜鉛(383W/m・K)・銅(403W/m・K)などの粉末が好ましい。また、液状エポキシ樹脂および金属粉末の質量比(含有比)は、実験結果より、金属粉末を85−95質量%以上とし、液状エポキシ樹脂を15−5質量%以下とするが好ましい。
【0025】
金属粉末は、その粒径を1μmよりも径大とする。金型80などの場合には、例えば後述する挿入孔およびブッシュの隙間(例えば0.1mm−0.5mm程度の間隔) を考慮し、金属粉末の粒径を4μm−100μmとするが好ましい。より好ましくは、実験結果より、金属粉末の粒径を4μm−50μmとすべきである。また、金属粉末は、例えば40μmの粒子と4μmの粒子を混合することにより、40μm同士の粒子間を4μmの粒子で埋め密状態とする。更に、金属粉末は、ステンレス鋼・鉄・亜鉛・銅粉末など単一種類の粉末であっても、これらを適宜に組合せた複合体としてもよい。
【0026】
本発明に係る硬剤は、変性ポリアミンが好ましく、変性ポリアミドアミン・変性脂肪
族ポリアミン・変性脂環式ポリアミンなどが含まれる。この変性ポリアミンは、液状となり、エポキシ樹脂の粘度を低くして常温で硬化させる。この硬化剤は、実験結果より、エポキシ樹脂及び金属粉末の混合物に対して3−10質量%を含有するが好ましい。アミン系硬化剤によるエポキシ樹脂の硬化は、一級アミンの活性水素とエポキシ基が反応して二級アミンがエポキシ基と反応して進行する。
【0027】
そして、この硬化物が橋架高分子になるためには、硬化剤は一分子中に活性水素が3 個以上必要で、アミノ基が2個以上必要である。即ち、エポキシ樹脂は、分子中にエポキシ基を2個以上持った化合物(主剤)と、分子中に活性水素(−NH
2 、−NH、−CONH−など)を2個以上持った化合物(硬化剤としてポリアミド、ポリアミンなど)とが付加反応重合して、立体構造(三次元編目状構造)を形成して硬化する。なお、アミンによる硬化速度は、アミンの種類・配合量・エポキシ樹脂の種類などによって異なる。
【0028】
本発明に係る難燃剤は、主剤(液化エポキシ樹脂)が硬化しない場合にエポキシ樹脂を燃え難くするもので、リン系難燃剤またはハロゲン系難燃剤などが好ましい。また、液状または粉末状などの難燃剤は、実験結果より、液状エポキシ樹脂及び金属粉末の混合物に対して0.5−1.0質量%を含有することが好ましい。ここで、難燃剤は、ハロゲン系またはリン系などが挙げられる。毒素が含有されるハロゲン系には、更に臭素系・フッ素系・塩素系などが挙げられる。この臭素系では、ペンタブロモジフェニルエーテルなどが挙げられる。毒素がないリン系では、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機物の難燃剤などがより好ましい。
【0029】
(充填剤を用いてシーリングするシーリング構造)
以下、
図1乃至
図4に基づいて、本発明の一実施例である充填剤を用いる金型冷却シーリング構造およびその製造方法について説明する。ここで、本実施例は、シーリング構造を金型冷却機構に適用する例である。
図2に示すように、金型80(装置本体に含まれる冷却対象物)は、鋳物を型造るキヤビテ
ィ面81Aと、このキヤビテ
ィ面81Aの反対面81B(以下、「型面」ともいう)側に金型80を冷却する冷却孔82(挿入孔)を備える。
【0030】
この冷却孔82には、その上部にネジ部83が形成されていると共に、このネジ部83に連続して同一径の孔部82Aが形成されている。冷却孔82の底部は、半球状の半球部82Bとな
っている。なお、冷却孔82は、その孔径が後述するブッシュ12と同一径といっても、ブッシュ12の外半径と対応していると言うべきであり、ブッシュ12を挿入できるように、若干だけ径大となっている。また、冷却孔82の内周面には、開口する際に生じるツールマークなどの凹凸があり、ブッシュ12との隙間14(
図1及び
図4参照)が生じる。
【0031】
(金型冷却機構の概略構成)
図1に示す金型冷却機構10は、上述した冷却孔82内に挿入するブッシュ12と、この挿入手段であるブッシュ12を冷却孔82の所定位置で確実に位置決めするロックナット22と、ブッシュ12に接続される配管継手24を備える。この配管継手24及びブッシュ12は、通水媒体である冷却媒体を連続的に供給し及び排出する通水経路(冷却回路と同義)の一部を構成する。
【0032】
(ブッシュに関する構成)
図1乃至
図4に示すように、ブッシュ12は、その外形が冷却孔82と同一形状となっている。このブッシュ12は、冷却孔82へ装着完了した後において、その軸心が冷却孔82の軸心P(
図2の一点鎖線参照)と同一の有底筒状である(
図1及び
図3参照) 。即ち、ブッシュ12には、ストレート部12Aと、その基端側に開放口12B(
図3参照)が形成されている。
【0033】
一方、
図2に示すように、ブッシュ12は、冷却孔82の半球部82Bに対応するように、その先端に半球部12Cが形成されている。また、ブッシュ12は、その軸方向長さが、孔部82A及び半球部82Bの長さL1(
図2の二点鎖線参照)よりも若干長くなっている。
図3に示すように、ブッシュ12は、その開放口12Bに対して着脱可能に連結されるツバ部18を備える。この場合、例えば図示しない密閉手段(ネジカラーなど)を介して装着する。なお、ツバ部18は、ブッシュ12に溶融手段(ロウ付けなどの概念を含む溶接)で溶着させても良い。
【0034】
このツバ部18は、
図3に示すように、ブッシュ12の開放口12Bへ挿入する挿入部19と、挿入部19よりも径大な外ネジ20を備える。この外ネジ20は、冷却孔82のネジ部83に噛合するよう形成されている。なお、挿入部19は、ツバ部18がブッシュ12に装着できるように、開放口12Bの直径よりも若干径小となるように形成されている。
【0035】
また、
図3に示すように、ツバ部18には、その外ネジ20に対応する中央に、六角レンチ孔18A(以下、「レンチ孔」という)が形成されている。このレンチ孔18Aには、図示しない六角レンチが挿入される。また、ツバ部18には、レンチ孔18Aに連通する雌ネジの内ネジ18Bが形成されている。この内ネジ18Bは、
図1に示すように、配管継手24のネジ部34Aが噛合するよう形成されている。
【0036】
即ち、内ネジ18Bは、ネジ部34Aに対応するように形成されている。ここで、ブッシュ1 2 は、例えば軟鉄で成形された高張力鋼板などで、一体成型、例えばプレス成型により形成されている。なお、ブッシュ12は、プレス成型の他に、例えばスエージング加工または中ぐり加工などにより成形してもよい。
【0037】
(ロックナットの構成)
図3に示すロックナット22は、外ネジ20の緩み防止用ナットで、冷却孔82のネジ部83に噛合するよう形成されている。ロックナット22には、その中央に六角レンチ孔22A(以下、「レンチ孔」という)が形成されている。この六角レンチ孔22Aはツバ部18のレンチ孔18Aと同一形状になっている。そのため、ブッシュ12及びロックナット22を締結などする場合、図示しない六角レンチをレンチ孔18A及び22Aに挿入し、同時に締結などを行
うことができる。
【0038】
(配管継手の構成)
図1に示す配管継手24は、冷却媒体たとえば水をブッシュ12内へ連続的に給水する給水コネクタ28と、この給水コネクタ28に連通する給水パイプ30と、熱変換された排水を排水源に送る排水コネクタ32と、この排水コネクタ32に連通する排水パイプ34を備える。給水コネクタ28には、図示しない水源(例えば水道の蛇口など)から導出される通水配管( 図示省略) が接続される。なお、給水パイプ30は、
図1に示す装着後の配管継手24において、ブッシュ12の半球部12C付近まで延設されている。
【0039】
配管継手24には、レンチ孔18A及び22A(
図3参照)に挿入により支持する円柱状の支持パイプ26が配置されている。上述した排水パイプ34は、支持パイプ26の下部で支持パイプ26よりも径小となっている。そして、排水パイプ34には、その外周面にネジ部34Aが形成されている。即ち、配管継手24は、その支持パイプ26がレンチ孔18A及び22A(
図3参照)に挿入できるような円柱となっている。
【0040】
(金型冷却シーリング構造の製造方法)
図1に示す金型冷却機構
10における金型冷却シーリング構造の製造方法 (具体的には組立手順)を説明する。この製法は、冷却孔82へ上述した充填剤S(
図2参照)を注入充填する充填工程と、ブッシュ12を冷却孔82へ挿入するブッシュ挿入工程(
図3参照)と、ブッシュ12を冷却孔82に締込み(「押込み」と同義)密着させる密着工程(
図4参照)より成る。なお、この組付け後は、配管継手24をブッシュ12に装着させる。
【0041】
(充填工程)
充填工程は、
図2に示すように、予め計算などで決められた充填量(例えば3g−5g)の充填剤Sを冷却孔82へ流し込み充填する。この充填量は、
図4に示すように、ブッシュ12を冷却孔82へ締め込む状態(「押込む状態」と同義)において、ネジ部83の最下端付近まで満ちるよう予め設定されている。
【0042】
ここで、本実施例では、充填作業時において液状の充填剤Sを使用するので、その取扱が容易である。即ち、本実施例によれば、常温下で液化している充填剤Sを、冷却孔82内に注入するという簡易な工程で行
うことができる。
【0043】
(ブッシュ挿入工程)
次に、ブッシュ挿入工程は、
図2の2点鎖線に示すブッシュ12を冷却孔82内に差し込む。この際、
図3に示すように、充填剤Sはブッシュ12の外周面と冷却孔82の内周面との間に生じるシーリング空間(例えば0.1mm−0.5mm程度の隙間)から空気を上方に押し上げつつ上昇する。ブッシュ12を冷却孔82へ挿入する前後に、ツバ部18を装着する。
【0044】
そして、図示しない六角レンチなどで外ネジ20(
図3参照)をネジ部83に締込む。
図3に示すように、ロックナット22の締付表面が金型80の型面81Bと面一になるまで、ロックナット22及びブッシュ12を更に締込む。この面一までの締込みでは、ブッシュ12における半球部12Cの頂点から冷却孔82における半球部12Cの内面頂点までの隙間(距離L2)となる。
【0045】
この際には、充填剤Sがブッシュ12及び冷却孔82の隙間の空気を、冷却孔82のネジ部83の直前まで更に押上げる。充填剤Sには、上述したように粉末状の金属粉末が含まれている。しかし、この金属粉末は、ブッシュ12び冷却孔82の隙間よりも微小な4μm−50μmであるので、上記隙間を流動する。
【0046】
(密着工程) l 密着工程では、ブッシュ12を冷却孔82へ更に隙間(距離L2)に相当する所定量まで締込むと、
図4に示すように、ロックナット22が金型の型面81Bよりも距離L2まで入り込み、ブッシュ12は締結される。即ち、ブッシュ12及び冷却孔82の隙間が均一となり、充填剤Sはブッシュ12及び冷却孔82の隙間全面を覆うよう上記隙間の空気を更に上方へ押し上げ、冷却孔82におけるネジ部83の最下端付近まで更に押上げる (
図4参照) 。
【0047】
(密着工程)
そして、充填剤S中には硬化剤が含有されているので、15℃−40℃程度の環境温度下では、エポキシ樹脂は2時間−24時間程度で硬化する。なお、15℃以下でも時間をかければ硬化するが、可能な限り15℃−40℃程度の温度下で放置するのが望ましい。この硬化によって、充填剤Sはブッシュ12及び冷却孔82の隙間であるシーリング空間内で固着する。
【0048】
本実施形態においては、ブッシュ12と冷却孔82との間のシーリング空間としての隙間(例えば0.1mm−0.5mm程度の間隔)よりも、寸法精度が高い例えば0.01mm−0.09mmなどの間隔に設定しなくて良い。即ち、本実施例によれば、上記隙間を液状の充填剤Sで充填する(填剤Sが隙間形状にそれぞれ対応して隙間を埋める)ので、冷却孔82またはブッシュ12の精度誤差に余裕(幅)ができ、製品管理が行い易くなるとともに、作業能率などが向上する。
【0049】
また、本実施形態においては、冷却孔82内に注入される充填剤Sをブッシュ12で押上げ上記隙間に埋め尽くすように充填固化( いわゆる「エアー抜き」と同義) するので、空気溜りの発生を防止して熱伝導性を向上させることができる。更に、本実施例においては、この密着状態でブッシュ1 2 及び冷却孔82を仕切るので、介在物である硬化した充填剤S(
図1及び
図4参照)がブッシュ12及び冷却孔82を確実に分断する。
【0050】
即ち、本実施例おいては、ブッシュ12及び冷却孔82の隙間全面を覆うよう固着した充填剤S(金属粉末など)がブッシュ12を冷却孔82へ接触しないように構成しているので、膜としての充填剤Sにより水漏れが防止される。従って本実施例によれば、ブッシュ12及び冷却孔82の隙間(シーリング空間)に充填固着させた金属粉末などを介在させているので、ブッシュ12と冷却孔82との間の熱伝達効率が向上し、金型80の温度調整が良好となる。
【0051】
(加熱工程)
加熱工程では、上述した密着工程の後(
図4参照)に、金型80を加熱処理して硬化したエポキシ樹脂を炭化させる。この加熱工程は、
図3に示す状態の金型80を入熱し、エポキシ樹脂の炭化が始まる略250℃−600℃まで昇温させる。すなわち、金型80の温度が300℃程度になると、エポキシ樹脂の水素・酸素などの気体成分が分子の隙間より外部に放出されるとともに、残された炭素などは炭化される。
なお、金型80の場合には、その鋳造過程で入熱するので、入熱工程ないしは加熱工程は必要に応じて設ければよい。
【0052】
ここで、エポキシ樹脂は液体の状態では、200℃で燃え易くなるが、硬化したエポキシ樹脂は火種がない状態では燃え難く、更なる温度上昇により炭化する。即ち、充填剤では、金属粉末の繋ぎとして混合したエポキシ樹脂が加熱処理により炭化する。そのため、本実施例では、熱伝導の高い金属粉末(銅・亜鉛などの粉末)がシーリング空間内でブッシュ12及び冷却孔82の隙間全面を覆うように残るので、熱伝達効率が更に向上し、金型80の温度調整が更に良好となる。
【0053】
(昇温試験結果)
図5に基づき、充填剤Sの熱伝達効率における試験結果を説明する。
図5に示す昇温試験結果は、図示しない温度センサーをブッシュ1 2 及び冷却孔8 2 の半球部1 2 C及び82B(
図3参照)にそれぞれ装着しての測定結果である。また、この試験グラフは、室温22℃からの開始であり、時間経過と温度の関係を示す。更に、熱の伝わり方は、ブッシュ12中の水からブッシュ12を経て充填剤S及びセンサーに向かう経路である。
【0054】
図5中の
白抜き三角は、ブッシュ12も充填剤Sも無い状態での冷却孔82のみの結果であり、この結果数値が最高の熱伝達効率である。
図5中の
白抜き四角は、ステンレス鋼製のブッシュで且つ市販のサーモグリスを用いた場合の結果数値である。
図5中の
黒丸印は、スチール製のブッシュで且つ充填剤Sを用いた場合の結果数値である。そして、
図5に示すように、サーモグリスよりも充填剤Sを用いる場合の方が、冷却孔82のみの結果数値(最高の熱伝達効率)に最も近い近傍に所在する。
【0055】
本実施例によれば、ブッシュ1 2 及び冷却孔8 2 の隙間全面を覆う炭化したエポキシ樹脂と混合された金属粉末が、ブッシュ1 2 及び冷却孔82を確実に分断するので、ブッシュ12が冷却孔82に接触することがなく、たとえ金型80が型割れしても冷却媒体が冷却孔82へと流出することを防止し得る。
【0056】
なお、通水工程は、上述した加熱工程の後に、
図1に示す配管継手24をブッシュ12に装着する。即ち、配管継手24の装着は、
図1に示すように、給水パイプ30をブッシュ12内へ挿入すると共に、支持パイプ26をロックナット22及びツバ部18のレンチ孔18A及び22A(
図3参照)に挿入する。その後、配管継手24のネジ部34Aをブッシュ12の内ネジ18Bへ噛合させる。なお、ネジ部34Aは、内ネジ18Bに締結されるため、支持パイプ26からの水漏れが防止される。
【0057】
また、給水コネクタ2 8 は図示しない通水配管を介して例えば水道の蛇口などに接続すると共に、排水コネクタ3 2 は図示しない通水配管を介して例えば排水場に導出させる。即ち、通水経路は、配管継手24をブッシュ12に装着すると共に、給水コネクタ28及び排出コネクタ32をそれぞれの通水配管に接続させることによって完成する。
【0058】
水道からの水は、
図1に示すように、給水コネクタ28及び給水パイプ30を介して筒状のブッシュ12に連続して送出され、排出パイプ34及び排出コネクタ32を介して排出する(
図1の矢印参照)。即ち、ブッシュ12内へ送られる水は、溶湯入湯時などの金型80を冷却する。また、熱変換された(即ち、熱せられた)水は、ブッシュ12内から排出パイプ34を経て外部へ排出される。
【0059】
金型80の歪取りなどのメンテナンスを行う際、ブッシュ12及び冷却孔82の隙間に存する炭化したエポキシ樹脂と混合された金属粉末は、例えばブラシなどを用いて洗い流せば良い。即ち、本実施例では、ブッシュ12及び冷却孔82の隙間全面に硬化された金属粉末または炭化したエポキシ樹脂と混合された金属粉末を、簡単に洗い流せるので、例えば従来例のように冷却孔及び金型用溶湯冷却ピンの隙間に溶解金属を介在させる構成に比べ、交換時などの労力が軽減でき使い勝手が良くなる。
【0060】
ここで、装置本体の概念は、実施例に示す金型またはエンジンなどを含む。また、装置本体には、図示しないスーパーコンピュータ(例えば建物のワンフロア内に収容する大きさの装置)のCPUなども含む。即ち、本発明は、このCPUなどを冷却する装置本体にも適用できる。一方、本発明では、冷却の場合のみならず、装置本体を予熱する温暖用にも適用できる。金型交換後あるいは金型の始運転時などに、例えば100℃程度の湯を本発明のシーリング構造におけるブッシュに通水させても良い。
【0061】
金型の概念は、例えば溶湯に直接接触する溶湯冷却ピン(従来例においては外筒体)などを含む。この溶湯冷却ピンは、金型の鋳造時における型の一部を構成するものとなり、且つ冷却孔を有するからである。即ち、本発明では、そのブッシュを溶湯冷却ピンの冷却孔内に挿入するようにしても良い。また、金型は、例えば固定側の金型に配置される湯口装置または可動側の金型に配置される分流子などを含む概念である。即ち、本発明では、ブッシュ装置を金型本体または分流子などに形成される冷却孔へ装着するようにしても良い。
【0062】
本実施例では、ブッシュ12を任意の締付け完了位置( 装着完了位置と同義) 例えばロックナット22の締付表面が金型80の型面81Bと面一になるようにしても良い。また本実施例では、その緩み止めを、ツバ部18の外ネジ20に対し簡易な仮付け溶接などとしても良い。更に、本発明では挿入手段をブッシュとする例であるが、挿入手段はスリーブ・ピン・ケーシングなどであっても良い。
【0063】
図6は本発明における実施例の変形例である。この変形例が実施例と異なるところは、ブッシュ12の外周面には、極細(径寸法が例えば0.1mmから0.5mm程度)の金属線12Eを糸状にして所定ピッチの螺旋状に巻回したことである。ブッシュ12を冷却孔82に挿入した時、金属線12Eがスペーサの役割を果たす。このため、ブッシュ12の外周面と冷却孔82の内周面との間に形成されるシーリング空間が環状空間として均等幅に保持される。このため、冷却水の冷熱がブッシュ12からシーリング空間の充填剤を介して金型80(装置本体)側に均等に伝わる。また、金属線12Eは硬化時にはエポキジ樹脂と一体なり、加熱時には炭化物と一体となって金型80(装置本体)に対する熱伝導に貢献する。
なお、金属線12Eは金材、銀材、銅材、アルミニウム材、ステンレス鋼材あるいはフェルトなどから形成しても良い。