特許第6019144号(P6019144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6019144ラベル粒子を検出するマイクロエレクトロニクスセンサデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019144
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】ラベル粒子を検出するマイクロエレクトロニクスセンサデバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20161020BHJP
   G01N 15/00 20060101ALI20161020BHJP
   G01N 21/552 20140101ALI20161020BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   G01N21/17 N
   G01N15/00 A
   G01N15/00 C
   G01N21/552
   G01N21/64 G
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-15528(P2015-15528)
(22)【出願日】2015年1月29日
(62)【分割の表示】特願2009-540926(P2009-540926)の分割
【原出願日】2007年12月10日
(65)【公開番号】特開2015-121552(P2015-121552A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2015年2月12日
(31)【優先権主張番号】06125907.3
(32)【優先日】2006年12月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】フェルスフーレン,クーン アドリアニュス
(72)【発明者】
【氏名】ブリュルス,ドミニク マリア
(72)【発明者】
【氏名】イミンク,アンドレー アルベルト ヘンドリク ヤン
(72)【発明者】
【氏名】デ テイエ,フェムケ カリナ
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル ウェイク,テア
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル レー,アレクサンデル マルク
(72)【発明者】
【氏名】スフレイペン,ヨハネス ヨセフ ヒューベルティナ バルバラ
【審査官】 佐々木 龍
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−077338(JP,A)
【文献】 国際公開第95/022754(WO,A1)
【文献】 特開昭63−273042(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/022155(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0048599(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/01
G01N 21/17−21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場及び/又は電場の作用を受けるラベル粒子を有する標的成分を検出するためのマイクロエレクトロニクスセンサデバイスであって:
標的成分の収集が可能で、かつ、1つ以上の標的成分結合可能な少なくとも1種類の捕獲分子が供される結合表面と、前記結合表面に隣接して配置される試料チャンバとを備えるキャリア;
入射光ビームが前記結合表面の検査領域において内部全反射されるよう前記キャリアへ入射光ビームを出射する光源であって、前記標的成分に結合する前記ラベル粒子が巨視的な散乱粒子及び/又は吸収粒子であるときに、前記内部全反射された光ビームが減衰し、その結果前記内部全反射された光ビームの強度が減少する、光源;
前記内部全反射された光ビームのうちの少なくとも一部を含む射出光ビームの光の量を決定する光検出器;及び
前記ラベル粒子に作用する電場及び/又は磁場を生成し、かつ、前記試料チャンバの中で前記標的成分を操作するために配置される電磁場発生装置;
を有するマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項2】
前記電磁場発生装置は、異なる検査領域に関連してそれぞれ独立制御可能であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項3】
記試料チャンバは、内部に標的成分を有する試料を供することが可能であり、及び
前記の測定された射出光ビームから前記検査領域内の標的成分の量を決定する評価モジュール、
を有することを特徴とする請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項4】
観察期間にわたって射出光ビームの前記の決定された光の量を観測する記録モジュールを有する、ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項5】
前記キャリアが、様々な入射光ビームが内部全反射可能な複数の検査領域を有する請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイスであって、
前記結合表面の様々な検査領域に対して前記光源及び/又は前記光検出器を光学的に結合する走査モジュール、
前記結合表面の様々な検査領域に対して光学的に結合される複数の光源及び/又は複数の光検出器、
を有する、ことを特徴とするマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項6】
透明材料の覆いを備えたラベル粒子を有する請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイスであって、前記透明材料は、前記キャリアと同じ屈折率を有する材料である、ことを特徴とするマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項7】
前記結合表面の標的成分によって放出される蛍光を決定する第2光検出器を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項8】
前記入射光ビームでの光の量を決定する入射光観測センサを有する請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイスであって、
前記入射光観測センサは前記光源内部に設けられているか、又は該光源の外部に設けられ、かつ
前記の決定された射出光ビームでの光の量を、前記決定された入射光の光の量に関係づける評価モジュール、
を有する、
ことを特徴とするマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項9】
前記光源は、直線偏光入射光ビームを生成するように備えられ、
前記直線偏光入射光ビームは、該直線偏光入射光ビームが前記キャリアへ入り込む入射窓に対して、入射面内で直線偏光を有し、かつ
前記射出光ビームは、該射出光ビームがキャリアを飛び出す射出窓に対して、入射面内で直線偏光を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項10】
被検査試料を供する請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス用キャリアであって
前記試料チャンバは透明な検査壁を有し、
該透明な検査壁は、1つ以上の標的成分と結合可能な少なくとも1種類の捕獲分子が供される結合表面を内側に有し、かつ少なくとも1つの光学構造を外側に有し、
前記光学構造は、
前記キャリアの外側から前記光学構造へ導光される前記入射光ビームは前記検査壁に入り込み、
前記入射光ビームは前記結合表面の検査領域内で内部全反射し、かつ
前記結合表面の標的成分によって放出される内部全反射光及び/又は蛍光の少なくとも一部を含む前記射出光ビームは、前記光学構造を通り抜けて前記検査壁を飛び出す、
キャリア。
【請求項11】
請求項10に記載の複数のキャリアを有するウエルプレート。
【請求項12】
前記キャリアが透明材料で構成され、
λが前記入射光ビームの特徴的な波長であり、
前記検査領域の粗さは0.5λ未満であり、
前記検査領域が、標的成分と結合可能な少なくとも1種類の捕獲分子によって覆われ、
前記キャリアの表面が、前記入射光ビームに実質的に垂直な入射窓及び/又は前記射出光ビームに実質的に垂直な射出窓を有し、
前記入射光ビームは前記入射窓から前記キャリアへ入り込み、又は、
前記射出光ビームは前記射出窓から前記キャリアを飛び出し、
前記キャリアが、半球又は切頭ピラミッドのような形状を有する少なくとも1つの表面部分を有し、
前記キャリアが、電磁場発生装置の少なくとも一部が内部に設けられたキャビティを有し、
前記キャリアが交換可能部品として設計される、
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項13】
前記電磁場発生装置の少なくとも一部は、前記キャリアの底面側に形成されたキャビティの内部に配置される、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項14】
磁場及び/又は電場の作用を受けるラベル粒子を有する標的成分を検出するマイクロエレクトロニクスセンサデバイスにおける読み取り装置であって:
入射光ビームが結合表面の検査領域において内部全反射されるようキャリアへ入射光ビームを出射する光源であって、前記キャリアは、標的成分の収集が可能で、かつ、1つ以上の標的成分に結合可能な少なくとも1種類の捕獲分子が供される結合表面と、前記結合表面に隣接して配置される試料チャンバとを備え、前記標的成分に結合する前記ラベル粒子が巨視的な散乱粒子及び/又は吸収粒子であるときに、前記内部全反射された光ビームが減衰し、その結果前記内部全反射された光ビームの強度が減少する、光源;
前記内部全反射された光ビームのうちの少なくとも一部を含む射出光ビームの光の量を決定する光検出器;及び
前記ラベル粒子に作用する電場及び/又は磁場を生成し、かつ、前記試料チャンバの中で前記標的成分を操作するために配置される電磁場発生装置;
を有する読み取り装置。
【請求項15】
ラベル粒子を有する標的成分の検出方法であって
1つ以上の標的成分と結合可能な少なくとも1種類の捕獲分子が供されるキャリアの結合表面に標的成分を収集する工程;
前記キャリアへ入り込んで、前記結合表面の検査領域内で内部全反射する入射光ビームを検出する工程;及び
前記入射光ビームのうちの内部全反射光の少なくとも一部を含む射出光ビームの光の量を決定する工程;
を有し、
前記ラベル粒子は、前記結合表面に隣接して配置される試料チャンバの中で、磁場及び/又は電場によって操作され、
該操作は、前記検査領域への粒子の引き付け、又は前記検査領域からの前記粒子の引き離しであり、
前記入射光ビームでの光の量が測定され、かつ
前記入射光ビームでの光の量は前記の決定された射出光ビームでの光の測定量に関連付けられ、
前記入射光ビームが前記キャリアへ入り込む際に通り抜ける入射窓は、前記入射光ビームに対してブリュースター角をなすように設けられ、かつ/又は、
前記射出光ビームが前記キャリアを飛び出す際に通り抜ける射出窓は、前記射出光ビームに対してブリュースター角をなすように設けられる、
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロエレクトロニクスセンサデバイス、及びラベル粒子を有する標的成分-たとえば生体分子-の検出方法に関する。しかも本発明は、当該センサデバイスに特に適したキャリア及びウエルプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、粒子によってタグが付された微生物の検査方法を開示している。そのようにタグが付されることによって、その微生物に力(たとえば磁力)を作用させることが可能となる。この方法の一の実施例では、光ビームは、透明材料を介して、内部全反射を起こす表面へ導光される。この光ビームは前記透明材料を発出する。エバネッセント波が、表面に存在する微生物及び/又は他の成分によって散乱され、その後光検出器によって検出されるか、又は視覚的観察できるようにその微生物を照射するのに用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0048599号明細書
【特許文献2】国際公開第2005/010543号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2005/010542号パンフレット
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ペドロッチ(Pedorotti)、「光学入門」(Introduction to Optics)、プレンティスホール(Prentice Hall)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この状況に基づき、本発明の目的は、ラベル粒子を有する標的成分の検出が改善された手段を供することである。特に、当該方法は単純で、かつその感度及び精度は従来技術よりも改善されていることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス、請求項19に記載のキャリア、請求項20に記載のウエルプレート、及び請求項28に記載の方法によって実現される。好適実施例は従属請求項に開示されている。
【0007】
本発明によるマイクロエレクトロニクスセンサデバイスは、ラベル粒子を有する標的成分の定性的又は定量的検出を行うように機能する。前記標的成分とはたとえば、生体分子、複合体、細胞組織片、又は細胞のような生体物質であって良い。「ラベル粒子」という語は、ある特性(たとえば光学密度、磁気感受率、電荷、蛍光、放射化率等)を有する粒子(原子、分子、複合体、ナノ粒子、マイクロ粒子等)を指し示す。その特性は検出可能であるので、前記の関連する標的成分の存在を間接的に明らかにする。当該マイクロエレクトロニクスセンサデバイスは以下の構成要素を有する。
a) 標的成分の収集が可能な結合表面を備えたキャリア。「結合表面」という語は本願においては、前記キャリア表面の特定部分を意味するものとして選ばれる。実際多くの用途において、前記標的成分は前記表面に結合するが、このことは必ずしも必要というわけではない。必要なことは、前記標的成分が前記結合表面に到達して収集されうることである(典型的には、前記標的成分に関連するパラメータ、該標的成分と前記結合表面との相互作用に関連するパラメータ、該標的成分の移動度に関連するパラメータによって決定される濃度である)。前記キャリアは、所与のスペクトル範囲-特に以降で定義される光源によって放出される光-に対して高い透過率を有していなければならない。前記キャリアはたとえば、ガラス又は透明プラスチックから製造されて良い。
b) 前記キャリアへ光ビーム-以降では「入射光ビーム」と呼ぶ-を照射する光源。前記入射光ビームは、前記キャリアの結合表面の検査領域内で内部全反射する。前記光源はたとえば、レーザー又は発光ダイオード(LED)であって良く、任意で前記入射光ビームの整形及び導光を行う光学系が備えられて良い。「検査領域」とは、前記結合表面の一部の領域であって良いし、又は結合表面全体を有していても良い。前記検査領域は一般的には、前記入射光ビームによって照射される実質的に円形のスポット形状を有する。しかも内部全反射を起こすには、前記キャリアの屈折率が前記結合表面に隣接する材料の屈折率よりも大きい必要があることに留意すべきである。これはたとえば、前記キャリアがガラスで作られていて、かつ前記隣接する材料が水(n=1.3)である場合が該当する。さらに、「内部全反射」という語は、入射光の一部が反射過程中に失われる(吸収、散乱等)、所謂「減衰内部全反射」の場合も含むことに留意して欲しい。
c) 「射出光ビーム」の光の量を決定する光検出器。前記射出光ビームには、前記入射光ビームの内部全反射から生じる光が含まれる。前記射出光ビームが内部全反射光の全てを含む必要はなく(たとえ全て含むことが好ましいとしても)、この光の一部はたとえば他の目的に用いられても良いし、又は単純に失われても良い。あるいは前記射出光ビームは、内部全反射光で完全に構成される必要もない。たとえば散乱光又は蛍光が含まれても良い。
【0008】
検出器は、所与のスペクトルの検出が適切なセンサ又は複数のセンサを有して良い。そのようなセンサの例には、フォトダイオード、フォトレジスタ、太陽電池、CCDチップ、又は光電子増倍管がある。
【0009】
当該マイクロエレクトロニクスセンサデバイスは、前記結合表面での検査領域内の標的成分の敏感かつ正確な定量的又は定性的検出を可能にする。これは、前記内部全反射光ビームが、前記キャリア表面から短い距離だけ前記隣接材料へ入り込むエバネッセント波を発生させるためである。このエバネッセント光波が前記結合表面に存在する標的成分に結合するラベル粒子によって散乱又は吸収される場合、このエバネッセント光波は前記射出光ビームでは失われる。従って前記射出光ビームでの光の量(より厳密には前記入射光ビームと比較して前記射出光ビームで失われた光の量)は、前記結合表面でのラベル粒子の存在及び量を示す。説明された光学検出手法の一の利点は精度を有することである。その理由は、前記エバネッセント波は、前記結合表面の直上で典型的な厚さがわずか10〜300nmである小さな体積しか利用しないため、この体積の後方に位置するバルク材料からの妨害が回避されるからである。高感度は、反射光を測定するときに実現される。その理由は、内部全反射光の量を減少させる効果が検出されるからである。しかも前記光学検出は任意で間隔を空けて-つまり前記キャリアと前記光源又は光検出器とが機械的に接触しない状態で-実行されて良い。
【0010】
当該マイクロエレクトロニクスセンサデバイスは、前記標的成分に結合する前記ラベル粒子が巨視的な散乱粒子及び/又は吸収粒子であるときに、前記内部全反射光ビームが減衰し、その結果前記内部全反射光強度が減少するように設計されて良い。
【0011】
好適実施例では、当該マイクロエレクトロニクスセンサデバイスは、ラベル粒子に影響を及ぼすことができる磁場及び/又は電場を発生させる電磁場発生装置を有する。その電磁場発生装置はたとえば、永久磁石、ワイヤ、一対の電極、又はコイルによって実現されて良い。発生した電磁場は、磁化若しくは分極を誘起することによって、及び/又は力を加えることによってラベル粒子に影響を及ぼして良い。当該マイクロエレクトロニクスセンサデバイスは、電磁場による標的成分の様々な操作を可能にする。前記電磁場による標的成分の様々な操作は、結合表面での標的成分の収集の加速、及び/又は結合表面からの意図しない成分(未結合のもの、ストリンジェンシー検査に用いられたもの、弱く結合したもの)の除去に用いられて良い。
【0012】
一般的な場合では、結合表面側のキャリアに隣接する空間は任意に設計されて良い。たとえば、この空間は当該マイクロエレクトロニクスセンサデバイスの外部であることが可能であり、標的成分は噴霧又は塗布によって結合表面に堆積され、かつその空間はまた、たとえば大気圧で標的成分を検出するため外界に対して開いていることも可能である。しかも標的成分は、たとえば拡散によってキャリアを介して結合表面に到達することが可能である。しかし本発明の好適実施例では、当該マイクロエレクトロニクスセンサデバイスは結合表面に隣接して設けられる試料チャンバを有し、かつその試料チャンバ内には標的成分を有する試料が供されて良い。その試料チャンバは典型的には空のキャビティであるか、又は試料物質を吸収できるゲルのようなある種の物質で満たされたキャビティである。そのキャビティは開いたキャビティ、閉じたキャビティ、又は流体接続チャネルによって他のキャビティと接続するキャビティであって良い。
【0013】
既に述べたように、当該マイクロエレクトロニクスセンサデバイスは、標的成分の定性的検出に用いられて良い。それによりたとえば、特定の標的分子に対する単純な2値応答が得られる(「存在する」又は「存在しない」)。しかし好適には当該センサデバイスは、検出された出力光ビームから検査領域内の標的成分の量を定量的に決定する評価モジュールを有する。これはたとえば、ラベル粒子によって吸収又は散乱されるエバネッセント光波での光の量が、検査領域内でのラベル粒子に結合する標的成分の濃度に比例するという事実に基づく。検査領域内での標的成分の量は、関係する結合過程の動力学により、隣接する試料流体内でのこれらの成分の濃度を示すことができる。
【0014】
上記実施例のさらなる発展型では、当該マイクロエレクトロニクスセンサデバイスは、観察期間にわたって出力光ビームの決定された光の量を観測する記録モジュールを有する。よって、結合表面への標的成分の収集又はその結合表面からの標的成分の脱離に係る動力学を観測することが可能である。これにより、標的成分及び/又は周囲の条件についての貴重な情報を明らかにすることができる。評価モジュール及び/又は記録モジュールは典型的には光検出器と結合し、かつデータ処理ハードウエア-たとえば関連ソフトウエアが付属したマイクロコンピュータ-によって実現されて良い。
【0015】
ここで当該マイクロエレクトロニクスセンサデバイスの説明には、結合表面上に検査領域が1箇所しか存在しない場合も含まれる。以降では、当該マイクロエレクトロニクスセンサデバイスの複数の実施例について検討する。その実施例では、キャリアは、様々な入射光ビームが内部全反射可能な複数の検査領域を有する。よって1つのキャリアで、複数の検査領域の処理、つまりたとえば様々な標的成分の探索、様々な条件下での同一標的成分の観察、及び/又は統計目的での複数の測定のサンプリングが可能となる。「様々な入射光ビーム」は任意で、光源によって均一に生成される一の広い光ビームの成分であって良い。
【0016】
上述の実施例に用いられる様々な入射光ビームは、時間に対して異なっていて良い。これはたとえば、当該マイクロエレクトロニクスセンサデバイスが、様々な検査領域に対して光源を順次結合する走査モジュールを有する場合に該当する。あるいはその代わりに、又はそれに加えて、当該マイクロエレクトロニクスセンサデバイスは、結合表面上の様々な検査領域に対して光検出器を光学的に結合する走査モジュールを有して良い。その走査モジュールはたとえば、入射光ビーム又は射出光ビームを適切に導光するレンズ又はミラーのような光学部品を有して良い。その走査モジュールはまた、光源及び/又は光検出器に対してキャリアを動かす手段をも有して良い。
【0017】
複数の検査領域を備えた当該マイクロエレクトロニクスセンサデバイスの他の実施例では、複数の光源及び/又は複数の光検出器が存在する。前記複数の光源及び/又は複数の光検出器は結合表面の様々な検査領域に関連する。この場合、複数の検査領域を同時に処理することで、関連する測定処理の処理速度を向上させることが可能である。この実施例は当然のこととしてこれまでに説明してきた実施例と組み合わせられて良い。つまりたとえば、検査領域の様々なアレイ全体にわたって複数の光源の入射光ビームを走査させる走査モジュール、及び/又は、射出光ビームを検査領域の様々なアレイから複数の光検出器へ導光する走査モジュールが存在して良い。走査モジュールを用いることによって、光源/光検出器の数は、検査領域の数よりも少ない状態に維持することが可能である。
【0018】
複数の検査領域を有する他の実施例では、当該マイクロエレクトロニクスセンサデバイスは、様々な検査領域に関連する個別に制御可能な複数の(電磁)場発生装置を有する。この場合では、実行される特定の試験の要件に従って、各検査領域内のラベル粒子を個別的に操作することが可能である。
【0019】
当該マイクロエレクトロニクスセンサデバイスは原則として、如何なる種類のラベル粒子と共に用いられても良い。しかし当該マイクロエレクトロニクスセンサデバイスには、当該デバイスの他の成分に対して選択的に適合するラベル粒子が供されることが好ましい。当該センサデバイスは特に透明材料の覆いを備えたラベル粒子を有して良い。その覆いは典型的には、他の材料-たとえば鉄酸化物のグレイン-からなる1つ以上の核を(完全又は部分的に)覆う。この場合、結合表面でのエバネッセント光波の光はすぐにラベル粒子へ入り込むことができる。そのラベル粒子では、その光は吸収及び/又は散乱されることで、射出光ビームとして失われる。その覆いの透明材料は特に、キャリアの材料と同じ屈折率を有する材料であって良い。なぜならこれにより、キャリアからラベル粒子への光の遷移が最適化されるからである。その覆いはたとえばキャリアと同じ材料で構成されても良い。
【0020】
当該マイクロエレクトロニクスセンサデバイスは任意で、結合表面の標的成分によって放出される蛍光を(定性的又は定量的に)決定する「第2光検出器」を有して良い。その蛍光は、結合表面に隣接する小さな体積内での入射光ビームのエバネッセント波によって刺激され、その後検出されて良い。それにより蛍光標的成分の存在(及び量)が表される。
【0021】
本発明の他の実施例では、当該マイクロエレクトロニクスセンサデバイスは、入射光ビームでの光の量を決定する入射光観測センサを有する。これにより、射出光ビームの測定を(定量的に)評価する間に前記量を考慮すること、及び/又はフィードバックループにおいて入射光ビームを制御するが可能となる。
【0022】
入射光観測センサは光源と一体化されて良い。一体化されることで、頑丈かつ小型の設計が供される。係る一体化はフィードバック制御ループでの一体化にとっても好ましい。あるいはその代わりに入射光観測センサ(又はその一部)が、独立した部品として光源の外部に設けられても良い。後者の配置は、このセンサの測定が、実際の入射光ビームがキャリアへ入り込む際、その光ビームを良好に集光できるという利点を有する。その理由は、観測測定は、典型的には光源の光路中に存在する光学素子-たとえばレンズ又はピンホール-の後方で行われるためである。
【0023】
入射光観測センサの測定結果が、光検出器によって決定される射出光ビームでの光の量に関係づけられて良いということはすでに述べた。従って当該マイクロエレクトロニクスセンサデバイスは、係る関係付けを行うように備えられた評価モジュールを有して良い。この目的のため、その評価モジュールには一般的に、決定された光の量を表す入射光観測センサ及び光検出器からの信号が供される。その評価モジュールは任意でこれらの信号を処理-たとえば(ローパスフィルタリングによる)フィルタリング-して良い。好適実施例では、射出光ビームでの光の量は入射光ビームでの光の量によって規格化される。それによって、結果が光源の出力変化とは独立する。
【0024】
本発明の他の実施例では、光源は、偏光入射光ビーム-特に直線偏光した入射光ビーム-を生成するように備えられている。偏光ビームでは、電場(つまりは関連する磁場の)ベクトルは、光ビームの伝播方向に対して垂直な面内でランダムに配向せず、規則的な配向を有する。この配向は、直線偏光ビームについては空間内で一定であり、かつ円偏光又は楕円偏光ビームについては規則的に回転する。偏光するように入射光ビームを発生させることで、この入射光ビームには、他のもの-たとえば光路中の光学部品又は被検出標的粒子-とこのビームとの相互作用に影響を及ぼす固有内部特性が供される。これにより好適に利用可能な様々な可能性が開かれる。様々な可能性とはたとえば、入射光ビームに起因する射出光ビームでの光を、他の発生源-たとえば大気-からの入射光ビームと区別する可能性である。
【0025】
上述した実施例の好適実現型では、入射光ビームは、その入射光ビームがキャリアへ入り込む入射窓に対して、入射面内で直線偏光を有する。それに加えて又はその代わりに、射出光ビームは、その射出光ビームがキャリアを飛び出す射出窓に対して、入射面内で直線偏光を有しても良い。通常、光ビームの「入射面」とは、前記光ビームを含み、かつ前記光ビームが衝突する表面に垂直な面を意味する。光ビームがキャリア表面に衝突するとき、その光の(わずかな)一部分は通常反射される。他の目的ではこの光は失われるという事実に加えて、係る反射の欠点は、他の構成要素-たとえば光源内の光検出器又はレーザー-を妨害する恐れがあることである。従ってキャリアの入射窓又は射出窓で反射される光の量を減少させることが望ましい。そのような減少は、入射光ビーム及び/又は射出光ビームが説明した偏光を有するように提案された設定によって可能である。
【0026】
本発明の好適実施例では、入射光ビームがキャリアへ入り込む際に通り抜ける入射窓はその入射光ビームに対してブリュースター角をなすように設けられ、かつ/又は、射出光ビームがキャリアを飛び出す際に通り抜ける射出窓はその射出光ビームに対してブリュースター角をなすように設けられる。光学から周知であるように、入射面内で直線偏光した入射光ビームが対応するブリュースター角で表面に衝突する場合に反射ビームは消滅する。この実施例が上述の実施例(直線偏光した入射光ビームを有する実施例)と組み合わせられる場合、キャリアの入射窓又は射出窓での反射を完全に抑制できる。特別な設定についてのブリュースター角は、ブリュースター角で入射する場合、屈折光ビームと(抑制された)反射光ビームとが90°をなすという事実から計算できる。
【0027】
本発明はさらに被検査試料を供するキャリアに関する。前記キャリアは特に、上述した型のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス用キャリアに適していると思われる。そのキャリアは試料チャンバを有する。その試料チャンバには試料が供されて良い。その試料チャンバは透明な検査壁を有する。その透明壁は、試料の成分を収集することのできる結合表面を内側に有する。外側では、検査壁は少なくとも1つの光学構造を有する。その光学構造は次のように設計される。
(i) キャリアの外側から光学構造へ導光される入射光ビームは検査壁に入り込む。
(ii) 前記入射光ビームは(少なくとも1回は)結合表面の検査領域内で内部全反射する。
(iii) 結合表面の標的成分によって放出される内部全反射光及び/又は蛍光の少なくとも一部を含む射出光ビームは、好適にはキャリアから遠ざかる方向に、光学構造を通り抜けて検査壁を飛び出す。
【0028】
検査壁は典型的には、実質的に平行な内側表面及び外側表面を備えたプレートの基本形状を有する。内側表面は結合表面を有する。光学構造は外側表面から外側へ向かって突き出ている。しかも検査壁は原則として試料チャンバ壁のどの部分-たとえば側壁又は上部-であっても良い。しかし検査壁はキャリア底部の一部(又は全部)であることが好ましい。検査壁はキャリア底部の一部(又は全部)であることには2つの利点があるからである。第1は、沈殿を起こす試料成分が底部の結合表面に集中することである。第2は、関連する装置の部品を前記底部の下に設けることが可能なため、他のキャリアを配置できるようにキャリア側に空間を設けることができる。
【0029】
記載したキャリアは、その試料チャンバ内部に存在する試料は、内部全反射する入射光ビームによって光学的に検査可能であるため、結合表面のわずかな体積内にエバネッセント場が供される、という利点を有する。この小さな体積内で起こる効果-たとえば吸収又は散乱-は、キャリアを飛び出す射出光ビームに影響を及ぼす。それに加えて、蛍光は蛍光標的成分内のエバネッセント波によって刺激されうるので、その蛍光は標的をさらに表すものとなる。入射光ビームと射出光ビームのいずれも外側からキャリアへ向かって、又はその反対に導光されるので、対応する光源及び光検出器は、距離を置いて配置されて良いし、かつキャリアから離されて良い。
【0030】
本発明はさらに、上述した型の複数のキャリアを有するウエルプレートに関する。上述した型の複数のキャリアとはつまり、内側に結合表面を有し、かつ外側に少なくとも1つの光学構造を有する透明な検査壁を備えた複数の試料チャンバである。前記光学構造は、キャリアの外側からの入射光ビームが、検査壁へ入射し、結合表面で内部全反射し、かつキャリアから遠ざかる射出光ビームとして検査壁を飛び出すことを可能にする。
【0031】
ウエルプレートは、アレイ内で上述した複数のキャリアを1つにするので、多数の試料の並列検査、及び/又は多数の検査アッセイでの1つの試料の並列検査を可能にする。ウエルプレートが記載したキャリアに基づくので、さらなる詳細については、前記ウエルプレートの利点、特徴、及び改良についての上記記載を参照して欲しい。
【0032】
以降では上述した型のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス、キャリア、及びウエルプレートに適用可能な本発明の様々な実施例について説明する。
【0033】
キャリアが様々な材料からなる多数の成分を有する専用の構造を有することが可能である一方で、そのキャリアは、透明材料-たとえば透明プラスチック-から均一に作製されることが好ましい。よってそのキャリアは、たとえば注入成形によってすぐに作製されて良い。
【0034】
(減衰)内部全反射への意図しない影響を最小限に抑制するため、キャリアの検査領域の粗さは小さいことが好ましい。λは入射光ビームを構成する光の特徴的な(ピーク又は平均)波長であり、検査領域の粗さは0.5λ未満であることが好ましく、0.1λ未満であることがより好ましい(これは、検査領域内でのキャリア表面の微視的な「谷」と「頂上」との高さの差がこれらの値よりも小さいことを意味する)。
【0035】
キャリアの検査領域は任意で、1つ以上の標的成分と結合可能な少なくとも1種類の捕獲分子によって覆われて良い。係る捕獲分子の典型例は、対応する光源が選択的に結合可能な抗体である。ある特定の標的成分に対して選択的な捕獲分子を検査領域へ供することによって、その検査領域内でのこれらの標的成分の濃度を選択的に増大させることが可能である。しかも意図しない標的成分は、適切な(たとえば磁気的な)反発力(意図した標的成分と捕獲分子との間の結合は壊さない)によって、結合表面から取り除くことが可能である。好適にはその結合表面には、各異なる標的成分に対して選択的な複数の型の捕獲分子が供されて良い。複数の検査領域が備えられたマイクロエレクトロニクスセンサデバイスでは、各異なる捕獲分子を有する少なくとも2つの検査領域が存在することで、これらの領域が各異なる標的成分に対して選択的となることが好ましい。
【0036】
本発明の他の実施例によると、キャリアの表面は、入射窓での入射光ビーム及び/又は射出窓での射出光ビームに対して実質的に垂直である。これらのビームは、入射窓からキャリアへ入り込み、又は射出窓からキャリアを飛び出す。つまり入射角は約90°±5°の範囲内に属する。この場合、入射光ビーム及び/又は射出光ビームの方向は、周囲の媒質からキャリアへ遷移する間、又はその逆方向に遷移する間では、変化しないか、又はわずかしか変化しない。しかも反射は最小限に抑制される。それに加えて又はその代わりに、対応する領域もまた反射防止コーティングを有して良い。光源(たとえばレーザー)への光フィードバックを防止するため、入射ビームを(最大でも)数度軸から外すことが好ましいと考えられる。
【0037】
キャリアは特に、半球又は切頭ピラミッドと同様又は同一の形状を有する少なくとも1つの表面を有して良い。図を参照してより詳細に論じられているように、これらの形状はレンズ及び/又はプリズムのように機能するので、入射及び射出光ビームを好適に導光する。
【0038】
そのキャリアはさらに任意で、(電磁)場発生装置の少なくとも一部が内部に設けられたキャビティを有して良い。よってその電磁場源は、可能な限り結合表面に近づけて位置設定されて良い。それにより、作用(たとえば電流)が最小で、かつ他の領域(隣接する検査領域)への外乱が最小の検査領域内での高い電磁場強度の発生を可能にする。しかも係るキャビティは、電磁場発生装置、光源、及び光検出器に対してキャリアを中心とするのに用いられて良い。
【0039】
当該マイクロエレクトロニクスセンサデバイスが原理的には、硬くマウントされた複数の部品からなる「一部品」ユニットとして構成されて良い。前記キャリアは当該デバイスの交換可能部品-たとえばウエルプレート-として設計されることが好ましい。よって前記キャリアは、当該デバイスの交換可能な部品-たとえばウエルプレート-として設計されることが好ましい。よって前記キャリアは、低コストの使い捨て部品として用いられて良い。これは、前記キャリアが生体試料と接する場合、又は(たとえば抗体による)コーティングが1回の測定過程中に使い尽くされる場合に、特に有効である。
【0040】
本発明はさらに、ラベル粒子を有する標的成分の検出方法に関する。当該方法は以下の工程を有する。
a) キャリアの結合表面に標的成分を収集する工程、
b) 前記キャリアへ入り込んで、前記結合表面の検査領域内で内部全反射する入射光ビームを検出する工程、及び
c) 前記入射光ビームのうちの内部全反射光の少なくとも一部を含む射出光ビームの光の量を決定する工程、
を有する。前記射出光ビームは前記内部全反射光のみを含むことが好ましい。
【0041】
当該方法は、一般的な形式として、上述の型のマイクロエレクトロニクスセンサデバイスで実行可能な工程を有する。従って、さらなる詳細な情報については、当該方法の利点、特徴、及び改良についての上記記載を参照して欲しい。
【0042】
当該方法の実施例では、ラベル粒子は、磁場及び/又は電場によって操作される。この操作は特に、検査領域への粒子の引き付け、又は前記検査領域からの前記粒子の引き離しを有して良い。
【0043】
当該方法の他の実施例では、入射光ビームでの光の量が、測定され、かつ射出光ビームでの光の測定量に関連づけられる。よって入射光ビームでの強度変化が検出可能で、かつたとえば射出光ビームの測定量を補正するのに用いられて良い。それにより測定結果は、入射光のゆらぎの影響を受けなくなる。
【0044】
本発明のこれら及び他の態様は以降で説明する(複数の)実施例を参照することで明らかになる。これらの実施例は添付図面の助けを借りた例示によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明によるマイクロエレクトロニクスセンサデバイスの一般的な設定を概略的に図示している。
図2】入射光ビームと射出光ビームがブリュースター角で配向したときの入射角を図示している。
図3】球形状の底部を有するウエルを備えたマイクロエレクトロニクスセンサデバイスを図示している。
図4図3の設計に光ビームを集光する追加的手段が備えられたものを図示している。
図5】底部に複数の半球を有するウエルを図示している。
図6】切頭ピラミッド形状の底部を有するウエルを図示している。
図7図6の設計に電磁石用のキャビティが備えられたものを図示している。
図8】磁性粒子によるラベルが付された様々な濃度のモルヒネ溶液についての時間tにわたる規格化測定信号sを示す図である。
図9】磁性粒子によるラベルが付された様々な濃度のモルヒネと自由モルヒネを含む溶液についての時間tにわたる規格化測定信号sを示す図である。
図10】磁場中において磁気ビーズのピラーが形成される様子を図示している。
図11】磁気的に引き付ける一工程だけが行われるときの、磁性粒子によるラベルが付された様々な濃度のモルヒネ溶液についての時間tにわたる規格化測定信号sを示す図である。
図12】磁性粒子によるラベルが付された様々な濃度のモルヒネと唾液を含む溶液についての時間tにわたる規格化測定信号sを示す図である。
図13】PTHを含まない溶液と比較した、2ステップPTHアッセイ法についての時間tにわたる規格化測定信号sを示す図である。
図14】光学検出についての緩衝溶液中でのPTHの照射応答曲線を図示している。
図15図13の結果を様々なPTH濃度について示したものである。
図16】光学検出についての緩衝溶液中及び血液中でのPTHの照射応答曲線を図示している。
図17】GMRセンサによる検出についてのビーズ応答曲線を図示している。
図18】光学検出についてのビーズ応答曲線を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図中の同様の参照番号、又は100の位の数が異なるものは、同一又は同様の構成要素を指し示している。
【0047】
図1は本発明によるマイクロエレクトロニクスセンサデバイスの一般的な設定を概略的に図示している。このデバイスの中心的な構成要素はキャリア11である。当該キャリア11はたとえばガラス又はポリスチレンのような透明プラスチックで作られて良い。キャリア11は試料チャンバ2の隣に設けられている。試料チャンバ2には、被検出標的成分(たとえば薬、抗体、DNA等)を有する試料流体が供されて良い。その試料は、磁性粒子1-たとえば超常磁性ビーズ-をさらに有する。これらの粒子1は通常、上述の標的成分に対するラベルとして結合する(簡明を期すため図には磁性粒子1のみを示している)。
【0048】
キャリア11と試料チャンバ2との間の界面は、「結合表面」と呼ばれる表面12によって形成される。この結合表面12は任意で捕獲分子-たとえば抗体-によってコーティングされて良い。その捕獲分子は、標的成分と選択的に結合することができる。
【0049】
当該センサデバイスは、結合表面12及び試料チャンバ2の隣接空間内で磁場Bを制御可能なように発生させる磁場発生装置41-たとえばコイルとコアを有する電磁石-を有する。この磁場Bの助けを借りて、磁性粒子1を操作-つまり磁化され、かつ特に動かす(勾配を有する磁場が用いられる場合)-することが可能である。よってたとえば、前記表面への関連する標的成分の結合を加速させるため、前記結合表面12へ磁性粒子1を引き付けることが可能である。
【0050】
当該センサデバイスは光源21-たとえばレーザー又はLED-をさらに有する。光源21は、キャリア11へ入り込む入射光ビームL1を発生させる。入射光ビームL1は、内部全反射(TIR)の臨界角θcよりも大きな角度で結合表面12へ到達するので、「射出光ビーム」L2として内部全反射される。射出光ビームL2はキャリア11を発出して他の表面を通り抜け、光検出器31-たとえばフォトダイオード-によって検出される。光検出器31は、射出光ビームL2の光の量(スペクトル全体又はスペクトルのある特定部分でのこの光ビームの光強度によって表される)を決定する。その測定結果は、検出器31と結合する評価及び記録モジュール32によって、観察期間全体にわたって評価され、かつ任意で観測される。
【0051】
光源21では、市販のDVD(λ=658nm)レーザーダイオードが用いられて良い。コリメータレンズは、入射光ビームL1を平行にするのに用いられて良い。たとえば0.5mmのピンホール23はビーム径を小さくするのに用いられて良い。正確な測定のためには非常に安定な光源が必要となる。しかしたとえ完全に安定な電源を有していても、レーザーの温度変化は、出力のドリフトなランダムな変化を引き起こしてしまう。
【0052】
この問題を解決するため、光源は任意で、レーザーの出力レベルを測定する一体化された入射光観測ダイオード22を有して良い。観測センサ22の(ローパスフィルタされた)出力は評価モジュール32と結合して良い。このため、観測センサ22の出力によって検出器31からの(ローパスフィルタされた)光信号を分離することが可能である。信号対雑音比を改善するため、最終結果である信号は時間平均されて良い。その分離によって、温度ドリフトによるレーザー出力の揺らぎの効果が排除される(ペルチェ素子のような予防措置を必要としない)だけではなく、出力のばらつきによるレーザー出力の揺らぎの効果も排除される(安定化電源を必要としない)。
【0053】
さらなる改善は、レーザー出力自体の測定(だけ)ではなく、光源21の最終出力を測定することによって実現可能である。図1で大雑把に図示されているように、レーザー出力の一部だけがピンホール23を飛び出す。この一部だけがキャリア11内での実際の測定に用いられるので、この一部は最も直接的な光源信号である。明らかに、この一部は、たとえば一体化したモニタダイオード22によって決定されることでレーザー出力に関連づけられるが、この一部は光路中での機械的変化又は不安定性よる影響を受ける(レーザービームプロファイルはガウシアンプロファイルを有するほぼ楕円形-つまりかなり不均一-である)。よって、ピンホール23の通過後及び/又は光源21の最終的な他の光学部品の通過後に、入射光ビームL1の光の量を測定することが有利である。これは様々な方法によって行われて良い。たとえば以下のような方法で行われて良い。
- ピンホール23の後方に、平行ガラス板24が45°で設けられるか、又はビームスプリッタキューブ(たとえば90%透過、10%反射)が光路中に挿入されることで、光ビームのわずかな一部を別個の入射光観測センサ22へ偏向させる。
- ピンホール23又は入射光ビームL1の端部に設けられた小さなミラーが、そのビームのわずかな一部を検出器へ偏向させるのに用いられて良い。
【0054】
図は、「第2光検出器」31’を図示している。光検出器31の代わりに又はそれに加えて、第2光検出器31は、入射光ビームL1のエバネッセント波によって刺激された蛍光粒子1によって放出される蛍光を検出するのに用いられて良い。この蛍光は通常全ての面に等方的に放出されるので、第2検出器31’は原則としてどこに設けられても良い-たとえば結合表面12の上に設けられても良い-。しかも蛍光サンプリングに検出器31を用いることも当然可能である。蛍光サンプリングに検出器31際は、たとえば反射光L2からスペクトル分離されて良い。
【0055】
当該マイクロエレクトロニクスセンサデバイスは、磁性粒子1、及び実際の関心対象である標的成分を検出するのに光学手段を用いる。(たとえば唾液、血液といった試料流体による)バックグラウンドの影響を排除又は少なくとも最小限に抑制するため、検出手法は表面に特有でなければならない。これは、以降で説明する減衰内部全反射の原理を用いて実現される。
【0056】
スネルの屈折の法則によると、媒質Aと媒質Bとの間の界面の法線に対する角度θA及びθBは、nAsinθA=nBsinθBを満たす。
【0057】
ここでnAとnBはそれぞれ媒質Aと媒質Bでの屈折率である。高い屈折率を有する媒質A(たとえばnA=2であるガラス)での光線は、低い屈折率を有する媒質B-たとえば空気(nB=1)又は水(nB≒1.3)-との界面で、法線から角度θBで遠ざかるように屈折する。入射光の一部は界面で反射される。その際の反射角は入射角θAと同一である。入射角θAが徐々に増大するとき、屈折角θBは90°に達するまで増大する。対応する入射角は臨界角θcと呼ばれ、sinθc=nB/nAで与えられる。大きな入射角では、全ての光が媒質A(ガラス)内部で反射されるので、「内部全反射」と呼ばれる。しかし媒質A(ガラス)と媒質B(空気又は水)の間の界面の非常に近くでは、エバネッセント波が媒質B内に生成される。このエバネッセント波は表面から指数関数的に減衰する。表面からの距離zの関数としてのエバネッセント場の振幅は次式で表すことができる。
【0058】
【数1】
ここでk=2π/λ、θAは全反射ビームの入射角で、nAとnBは各対応する媒質の屈折率である。
【0059】
波長λの典型的な値-たとえばλ=650nm-及びnA=1.53でnB=1.33では、エバネッセント場の振幅は、約228nmの距離を進んだ後では、元の値のexp(-1)≒0.37にまで減衰した。図1の設定において、このエバネッセント波が他の媒質-たとえば磁性粒子1-と相互作用するとき、入射光の一部は試料流体の一部と結合(これは「減衰内部全反射」と呼ばれる)し、かつ反射強度は減少する(その一方で、清浄表面でかつ相互作用がない場合には反射強度は100%である)。外乱の量-つまり(試料チャンバ2の他の部分ではなく)結合表面12上又はその非常に近く(約200nm以内)での磁気ビーズの量-に依存して、反射強度も減少する。この強度の減少は、結合した磁気ビーズの量、つまりは標的分子の濃度の直接的な測定結果である。約200nmであるエバネッセント波の上記相互作用距離が、抗体、標的分子、及び磁気ビーズの典型的な大きさに匹敵するとき、バックグラウンドの影響が最小になることは明らかである。波長λが長くなることで相互作用距離も増大するが、バックグラウンドとなる液体の影響は依然として非常に小さい。
【0060】
説明した処理は印加磁場に独立である。このため、調製、測定、及び洗浄工程をリアルタイムで観測することが可能である。観測された信号はまた、測定又は個々の処理工程の制御に用いられて良い。
【0061】
典型的な用途の材料では、キャリア11の媒質Aは、典型的には屈折率が1.52のガラス及び/又は透明プラスチックであって良い。試料チャンバ2内の媒質Bは水ベースであって、1.3付近の屈折率を有する。これは60°の臨界角度θcに相当する。従って70°の入射角は、ある程度大きな屈折率(nA=1.52でnBは最大で1.43まで可能となるものと仮定している)を有する流体媒質を可能にするための現実的な選択である。nBの値が大きくなると、大きなnA及び/又は大きな入射角が必要となる。
【0062】
作動用磁気ラベルと併用される説明した光学読み取りの利点は以下である。
- 安価なカートリッジ。キャリアカートリッジ11は、ポリマー材料の比較的単純な注入成形部分で構成されて良い。その部分は、流体チャネルを有することも可能である。
- 多検体検査のあらゆる可能性。使い捨て可能なカートリッジ内の結合表面12は大面積にわたって光学的に走査されて良い。あるいはその代わりに、大きな検出アレイを可能にする大面積イメージングが可能である。係るアレイは、たとえば光学表面上への様々な結合分子のインクジェットプリントによって作られて良い。当該方法はまた、多数のビーム、多数の検出器、及び多数の作動磁石(機械的に動くか又は電磁的に動く)を用いたウエルプレート内での高速処理検査をも可能にする。
- 作動と検知が直交している。(大きな磁場及び磁場勾配による)磁性粒子の磁気作動は検知過程に影響しない。従って当該光学的方法では、作動中での信号の連続的な観測が可能である。これによりアッセイ処理について多くの知見が供され、かつ、これにより信号の傾きに基づく容易な動力学的検出方法が可能となる。
- 当該システムは、エバネッセント場が指数関数的に減衰するため、真に表面敏感である。
- 安易な界面。カートリッジと読み取り装置との間を電気的に接続する必要がない。カートリッジの検査に必要なものは光学窓だけである。従って非接触読み取りが可能である。
- 低雑音の読み取りが可能である。
【0063】
図2は、キャリア11の入射窓14での入射光ビームL1の入射角、結合表面12、及び射出窓15での射出光ビームL2の射出角をより詳細に図示している。入射窓14と射出窓15が入ってくるビームに対して直交するときには、通常は光の一部(典型的には約4%)が後方に反射され、たとえば光源21において、意図しないレーザー出力のふらつき(「レーザーフィードバック」と呼ばれる)を引き起こす。この結果測定結果が改変されてしまう。さらに光検出器内の検出側で干渉効果も起こる恐れがある。その理由は、典型的には垂直配向が用いられ、かつコヒーレント光源(レーザー)が用いられるからである。
【0064】
たとえば動作中での作動磁石41の加熱又は他の外的要因による測定用カートリッジの意図しない加熱のため、キャリアのファセット位置がわずかにシフトすることで、光源及び設定の検出部の両方で強度が緩やかに変化してしまう恐れがある。これを測定結果から除去することは難しい。入ってくる射出光ビームL2に対して(垂直ではない)ある角度をなすように光検出器を設置することによって、設定の検出側で起こる問題の一部は有効に解決できる。しかし光源側では、これはできない。
【0065】
従って、キャリア11の入射窓14と射出窓15が、高価な反射防止コーティングを用いなくても反射を除去するようにすることが望ましい。
【0066】
この問題を解決するため、入ってくる光ビームに対してブリュースター角をなすように入射窓14と射出窓15を設置すること、及び入射面内で(直線)偏光(「p偏光」と呼ばれる)をこのビームに供することを提案する。光学(たとえば非特許文献1を参照のこと)から知られているように、p偏光した入射ビームがブリュースター角で(透明)媒質の表面に衝突する場合に反射ビームは消滅する。
【0067】
p偏光した入射光ビームL1は、光源内での半導体レーザーの正しい配向を選ぶことによって、又は半波長板を用いて偏光を回転させることで正しい配向にすることによって、実現されて良い。
【0068】
入射光ビームL1がTIRの臨界角θcよりも大きな角θ3で結合表面12に衝突するために、キャリア11内部での入射光ビームL1の伝播は変化する。屈折ビームに対するキャリア11の入射窓の角度θ2及び射出窓の角度θ6が、ブリュースター角に相当する場合、L1の伝播の変化により、キャリア11の入射及び射出窓、すなわちファセットの配向も変化する。結局これにより、入射光ビームL1と射出光ビームL2の方向が変化する。
【0069】
入射光ビームL1の入射角θ1と屈折角θ2の総和が90°であるとき、θ1はブリュースター角となる。この条件とスネルの法則とを合わせることで、ブリュースター角での入射角について以下の式が導かれる。
【0070】
tan(θ1)=n2/n1
n1は、入射光ビームL1が屈折前に伝播する媒質の屈折率-通常は空気-である。n2は、屈折した光線が伝搬する媒質の屈折率-通常はキャリアのプラスチック(たとえばポリカーボネート、ゼオネックス、又はポリスチレン)-である。
【0071】
屈折ビームの角度θ2については、
tan(θ2)=n1/n2
であることが分かる。
【0072】
満たされる必要のある他の条件は、入射光ビームL1が角度θ3に近いが、結合表面12での内部全反射の臨界角θcよりも大きな角度で入射することである。つまり、
θ3cで、sin(θc)=n3/n2
である。
【0073】
n3は結合表面の上の媒質の屈折率である。さらに射出光ビームL2の側での角度は入射側の角度を反映している。つまり、θ43、θ52、及びθ61である。
【0074】
典型的な値であるn1=1(空気)、n2=1.5(透明プラスチック)、及びn3=1.3(水)では、以下のような数値が導かれうる。それは、θ43>60°、θ52=56°、及びθ61=34°である。
【0075】
キャリアの入射窓及び射出窓をブリュースター角に設置することによって、高価な反射防止コーティングを必要とせずに、レーザーへの意図しない後方への反射が防止される。さらに垂直ではない角度に検出を設置することによって、検出器側での干渉効果も同様に防止することが可能である。そのようにすることによって、測定中でのキャリア/カートリッジの膨張/収縮-たとえば熱効果による-は測定結果に影響を及ぼさない。
【0076】
実験室環境では、多くの試料チャンバ(「ウエル」)からなるアレイを有するウエルプレートが一般的に用いられる。そのウエル内では各異なる検査を並行して行うことができる。図3-7は、説明した測定原理の用途に特に適したウエルプレートのうちの一のウエルに係る様々な可能な実施例を図示している。これらの(使い捨て可能な)ウエルの製造は非常に単純かつ安価である。その理由は一の注入成形工程で十分だからである。
【0077】
図3に図示された光源121は、臨界角θcよりも大きな角度でウエル底面に入射する平行光ビームL1を生成するように備えられている。大気からキャリア111(たとえばガラス又はプラスチック材料)への第1界面でこの入射光ビームL1が過剰に反射されないように、ウエル底面は半径Rの半球形状114を有する。半球形状114の中心は検出表面112の中心と一致する。入射光ビームL1はこの同一中心へ向かうように導光される。反射側では、光検出器-たとえばフォトダイオード131-は、射出光ビームL2の強度を検出するように位置設定される。ウエル102の典型的な直径Dは1mm〜8mmの範囲である。図3は、ウエル102内部の作動磁場を発生させる磁石141をさらに表している(簡明を期すため以降の図ではこの磁石は図示されない)。
【0078】
図4は代替実施例を図示している。この代替実施例では、光源は光学素子-たとえばレンズ222-を有する。レンズ222は、半球214の中心に実質的に集光される入射光ビームL1を生成する。検出側では、同様の光学素子232が、射出光ビームL2の光強度を収集及び検出するのに用いられて良い。
【0079】
測定処理のさらなる発展型では、多数の入射光ビーム及び射出光ビームが、同一ウエル内の異なる位置での様々な標的分子の存在を同時に検出するのに用いられて良い。図5は、この点について、ウエル底面上に複数の半球314a、314bを有するウエルを図示している。このウエルは、複数の入射光ビームL1a、L1bからの光を、そのウエル底面上の各対応する検査領域313a、313bに結合させるのに用いられて良い。複数の光検出器(図示されていない)は、この場合、複数の射出光ビームL2a、L2bを測定するのに用いられて良い。
【0080】
図6は代替実施例を図示している。この代替実施例では、プリズム又は切頭ピラミッド構造414が、入射光ビームL1と射出光ビームL2の光を結合するのに用いられる。そのピラミッドの傾斜端部はこれらの光線に対して実質的に垂直でなければならない。この設計の利点は、製造が容易で、かつ隣接する領域からのビームを阻止しないことである。隣接するウエルは、この図では破線で表されている。
【0081】
図6に表されているように、ウエル底面上の全検出領域を網羅する直径を有する単一の平行入射光ビームL1を用いることが可能である。検出器として、各検出領域に対して位置合わせされた複数のフォトダイオードが用いられて良い。あるいはその代わりに、デジタルカメラに用いられているCCD又はCMOSチップが、ウエル底面全体-全検出領域を含む-の反射強度応答を可視化するのに用いられて良い。適切な信号処理を行うことで、全信号は、事前に位置合わせを行う必要なく、個々の検出器によって得ることが可能である。
【0082】
図7はさらに他の実施例を図示している。そのさらに他の実施例では、ウエル底面511は開口キャビティ515を有する。その開口キャビティ515、(複数の)入射光ビームL1と(複数の)射出光ビームL2の光路から外れた位置に中心をとる。これにより以下のような有利な特徴を得ることが可能となる。
- エバネッセント場強度及び濃度が改善された磁気コイル541の(T字形状の)フェライトコア542を結合表面512の近くに設けることができる。それにより小型で低出力設計が可能となる。
- 自己位置合わせ構造が実現される。光学系及び磁場発生装置541が修正される場合に、フェライトコア542上のウエルの自動位置合わせが起こる。
【0083】
本発明の記載された実施例で用いられている磁気ビーズ1は典型的には、(たとえば鉄酸化物の)小さな磁気グレインで満たされたポリスチレン球である。これにより、そのビーズは超常磁性となる。ポリスチレンの屈折率は、ウエルプレートの典型的な基板材料の屈折率に見事に一致する。このようにして光の光学出力結合が改善される。
【0084】
[実験結果A]
以降では、図3のようなウエルプレートを備えた設定で得られた実験結果について説明する。平坦な底面(直径6mm、底面の厚さ約1mm)を有する標準的な96のウエルポリスチレン滴定プレートが用いられた。半球形状の底部を得るため、屈折率を一致させる浸漬オイル(n=1.55)を用いてガラスレンズが底部に取り付けられた。そのガラスレンズは、半球形状(直径6mm)から厚さ2mmにまで研磨された。一組の実験のために選ばれたモデルアッセイ法は唾液中の薬物乱用である。薬物乱用は、一般に1つのエピトープしか持たない小さな分子であり、そのためサンドイッチアッセイ法で検出することができない。競合アッセイ法又は抑制アッセイ法は、これらの分子を検出する方法である。周知の競合アッセイの設定は、標的分子を表面に結合させ、かつ抗体を検出タグ(たとえば酵素、フルオロフォア、又は磁性粒子)に接続する。この系は、タグが付された抗体を用いることによって、試料からの標的分子と表面上の標的分子との間での競合アッセイ法を実行するのに用いられた。これらの実験ではタグは磁性粒子だった。作動の際、永久磁石は、機械的な移動によってウエルの下に設けられた。ウエル底部と磁石との間の距離は約2mmであった。ウエル内の永久磁石は磁気洗浄に用いられた。
【0085】
図8は、第1感度試験について時間tにわたる規格化測定信号を図示している。そのため、標的分子を検出するため、ウエルの底部が調製された。検査される標的はモルヒネであった。モルヒネは1つしかエピトープを有していない小さな分子であるため、試料中のモルヒネ量を表すためには競合アッセイ法を行わなくてはならない。きれいなポリスチレン表面(96のウエル滴定プレート)が、1pg/ml〜1μg/mlの範囲のBSA-モルヒネ濃度で2時間コーティングされた。続いて、PBS+10mg/mlのBSA+0.65%のTween-20内で溶解する官能化された超常磁性ナノ粒子”MP”(単クローン性抗モルヒネ抗体によって官能化された300nmのカルボキシル-アデムビーズ(Carboxyl-Adembeads))が、ウエル(1:20に希釈されたMPで、溶液の全量は50μlだった)に挿入された。図8の記号Aで示されているように、MPは磁力(10fNのオーダー)を交互に印加することによって表面に引き付けられた。このため、未結合粒子は、図8の記号Wによって示された洗浄工程によって表面から除去された。図8は、最低濃度のBSA-モルヒネ(10pg/ml)が最大の動的測定範囲を得ていることを示している。また作動後の曲線の急峻さが最大であるため、高速応答/短測定時間及び最高感度が可能となる。
【0086】
アッセイの感度を検査するため、表面に結合する官能化したMPに対して自由モルヒネが競合する能力が検査された。図9は、検出器によって収集される最終結果である規格化信号sを時間tの関数として図示している。きれいなポリスチレン表面(96のウエル滴定プレート)が、10pg/mlのBSA-モルヒネ濃度で2時間コーティングされた。PBS+10mg/mlのBSA+0.65%のTween-20内で溶解する明確な量の自由モルヒネを事前に混合した抗モルヒネ抗体によって官能化されたMPが、ウエル(1:20に希釈されたMPで、溶液の全量は40μlだった)に挿入された。上述し、かつ図に示したように、MPは、t=30s、t=140s、t=210s、t=290sの4回、15秒間作動した(記号A参照)。t=390sでは、未結合MPは、磁気洗浄Wの手段によってウエルから除去された。つまり未結合MPは、結合表面上の流体内の永久磁石を用いて磁力を印加することによって除去される。
【0087】
最高濃度の自由モルヒネでは、(磁気洗浄W後の)信号の減少は低い一方で、低濃度の自由モルヒネでは、信号の減少は大きい(磁気洗浄W後、表面上の高濃度のMPは明確に減少している)。
【0088】
微視的な検査からすでに収集された情報と共に、これらの実験で分かったように作動中及び磁気緩和中での信号の減少から、以下のような結果の解釈を提案する。磁気作用の際、表面への結合の増大を示すことなく(信号が減少することなく)、MPは表面に集中する。磁場を除去する際、信号が減少し、表面にMPが結合することを示す。磁場の印加はピラーの生成を誘起する。MPは磁化し、それらの自由に移動可能なMP(選択的に結合していないMP及び溶液中で自由に振る舞うMP)は、磁場線の方向で選択結合するMPに結合する。磁場線は結合表面に対して垂直である。この状態は図10に図示されている。この図はエバネッセント場EFも表している。エバネッセント検出系は表面のMPしか検出しないので、磁気作用中にピラーが形成される結果、信号が減少する変化が起こる。磁場を除去する際、MPは磁気特性を失い、かつ再度結合を起こすことのできる表面へ向かう。
【0089】
高速アッセイを得るため、作動処理は、上の結果を用いることによって最適化されて良い。図11は、10pg/mlのBSA-モルヒネでコーティングされたポリスチレンウエルでの照射量応答曲線を図示している。PBS+10mg/mlのBSA+0.65%のTween-20内で溶解する明確な量の自由モルヒネを事前に混合した抗モルヒネ抗体によって官能化されたMPが、ウエル(1:20に希釈されたMPで、溶液の全量は40μlで、最終モルヒネ濃度は1〜1000ng/mlだった)に挿入された。MPは、表面付近でのMPの濃度を上昇させるため、ウエルの下に設けられた永久磁石を用いることによって、15秒間Aで作用させた。続いてMPは、60秒間表面に結合することが可能となった。データは、すでに20秒経過した後、表面への磁性粒子の結合率が、溶液中での自由モルヒネの濃度を直接表す指標となることを示している。このことは、洗浄工程を必要としないため、測定処理が単純化され、より迅速となりうることを意味する。これを迅速に起こすためには、磁気濃度上昇工程Aが必要となる。
【0090】
次に唾液からのバックグラウンド信号が検査された。濾過された唾液がウエル内に導入され、信号を120秒間追跡した。図12から分かるように、バックグラウンドは無視できる。比較として、0.1ng/mlのモルヒネと混合したPBS+10mg/mlのBSA+0.65%のTween-20内のMPの信号も含まれる。t=13sでは、唾液(SL)とモルヒネ溶液+MPのいずれも注入された。唾液からのバックグラウンド信号は<1%で、無視することができることが分かる。
【0091】
[実験結果B]
検出方法の感度を確認するため、2ステップPTH(PTH=副甲状腺ホルモン)アッセイ法が、光学基板上の記載したウエルプレート内で行われた。図13では、何もない状態(0nM、上側の曲線)と比較的高濃度(4nM)の両方についての信号の遷移s(任意単位)が、時間tの関数としてプロットされている。動力学的結合領域での明確な差異が観測され、かつ洗浄W後の明確な信号の差異もそのまま残る。
【0092】
磁気読み取り(たとえば特許文献2又は特許文献3に記載されたような巨大磁気抵抗(GMR)センサによる)と、光学読み取り(上述した減衰内部全反射の原理による)とを比較するため、PTH照射量応答曲線が図14にプロットされている。
【0093】
光学的に検出されたPTHアッセイ法についての対応する遷移曲線は図15で与えられている。図14の照射量応答曲線は、緩衝溶液母体中で測定される。その曲線は、何も入っていない基板からの反射によって生じる信号の割合として光学信号sを図示している。興味深いことに、その曲線はlog-logスケールでは直線である(磁気的に検出された曲線と同様に)ことを明記しておく。さらに検出限界が、“blanc+2*blancの標準偏差”に従って計算される(ここで”blanc”とは標的濃度がゼロの試料を検査するときの信号レベルを表している)。
【0094】
磁気読み取りでは、この値は3pMに等しい。非常に基本的な実験設定で実行された光学実験では、この値は13pMに等しかった。いずれの検出手法も同程度の感度を有すると結論づけることができる。
【0095】
続いて複合母体中で測定するときに、光学検出法のバックグラウンド信号を確認することは非常に重要である。このため、同一のPTHアッセイ法が血液母体中で行われた。図16に図示された結果から(Bld=血液、Buf.=緩衝溶液)、最終結果である照射量応答は、緩衝溶液中で測定された曲線と非常に良く一致することが明らかである。また何もない状態の信号は非常に小さい。この優れた特性は、内部全反射が、光学基板材料と母体との間の屈折率差によって生じるためだと考えられる。その母体は様々な成分-たとえば血漿、(赤血球)細胞等-で構成されて良い。しかしこれら全ての成分は、基板材料よりもはるかに低い屈折率を有する。従って内部全反射は母体による影響を受けない。ビーズが結合するとき(たとえば磁気グレインを有する高屈折率のポリスチレン)だけ、内部全反射は減衰し、反射強度の低下を測定することができる。
【0096】
[実験結果C]
提案された手法についての重要な照明は所謂ビーズ応答曲線である。ビーズ応答曲線は、センサ表面に付着するビーズ当たりの信号変化を示す。理想的には、1つのビーズの検出は(雑音、外乱が存在していても)可能である。この状況では、これ以上検出手法を改善する必要はない。生物学的検出限界は、(キャッチアッセイによって)ビーズの濃度を増大させるような方法によってしか改善できない。図17は、GMR型センサ及び300nmのビーズで検出を行う場合でのビーズ応答曲線を図示している(Δs=信号変化、BD=ビーズ密度、NB=ビーズ個数)。これらのビーズでは、検出限界は、1Hzのサンプリング周波数では40μm2で3個のビーズだった。
【0097】
光学検出のビーズ応答を推定するため、様々なビーズ濃度の多数の試料(ガラススライド)が準備された。最終的な表面被覆は光学顕微鏡と、それに続いてビーズのないきれいな参照用試料と比較した光学信号(変化)sの測定によって決定された。単純な設定で得られた実験データが図18でプロットされている。この設定では、雑音レベルは表面被覆SCが0.01%の場合での信号変化に相当する。これらのデータは、この手法の感度が、同一のビーズ濃度でGMRセンサを用いた従来技術の結果と少なくとも同程度であることを示している。
【0098】
まとめると、本発明は、ラベル粒子-たとえば磁性粒子1-を有する標的成分を検出するマイクロエレクトロニクスセンサデバイスに関する。当該センサデバイスは結合表面12を備えたキャリア11を有する。その結合表面12では、標的成分が収集可能であり、かつ、その標的成分は任意で特定の捕獲分子と結合可能である。入射光ビームL1はキャリアへ入り込み、結合表面12で内部全反射する。続いて射出光ビームL2での光の量が光検出器31によって検出される。内部全反射中に発生するエバネッセント光が、結合表面12の標的粒子と結合するラベル粒子1と相互作用することで、吸収及び/又は散乱が起こる。従ってそのエバネッセント光は、射出光ビームL2中で失われる。これは、射出光ビームL2、L2a、L2bでの光の量から、結合表面12での標的成分の量を決定するのに用いられて良い。磁場発生装置41は任意で、結合表面12で磁場Bを発生させるのに用いられる。その磁場Bによって、磁気ラベル粒子1は操作する-たとえば引き付ける又は引き離す-ことができる。
【0099】
ラベル粒子1はたとえば磁気ビーズである。磁気ビーズとはたとえば、常磁性、強磁性、若しくは超常磁性粒子又はビーズを意味する。これらのラベル粒子1は、キャリアの結合表面12に衝突する光ビームL1の反射の影響を受ける。結合表面12に結合するラベル粒子1が増えれば増えるほど、光ビームL1はますます結合表面12で全反射しなくなり、その代わりにエバネッセント波が発生する。結合表面12によって反射される光ビームL2は、ラベル粒子1による入ってくる光ビームL1の散乱効果によって、所謂減衰する。結合表面に結合するラベル粒子1が増えれば増えるほど、反射光ビームL2はより減衰する。光検出器31、131は、結合表面12からの光ビームL2を測定し、かつ結合表面12に結合するラベル粒子1の量を測定するのに反射光ビームL2を用いる。結合表面12に結合するラベル粒子1が増えれば増えるほど、ラベル粒子1による光ビームL1の散乱がより起こって、エバネッセント波が発生する。説明した効果を可能にするラベル粒子1はたとえば以下のような特徴を有する。直径約300nmの均一な超常磁性粒子からなる磁気ビーズは、ポリマーのコアシェル構造を有する。これらのラベル粒子1又は磁気ビーズは、ラベル粒子1を決定するための反射光ビームL2の検出にとって十分な光ビームL1の散乱を示す。同様の材料及び直径-たとえば直径200nm-のラベル粒子1もまた可能である。それでも、ラベル粒子1が結合する標的成分からのみの光の散乱は、検出に適していないことが分かる。このことは、減衰内部反射による標的成分の直接測定でこれらの標的成分の量を測定することが不可能であることを意味する。標的粒子1の量の検出及びそれに続く計算は、ラベル粒子1での光の散乱によって可能となる。ここでは、従来技術において他の光学検出系で用いられているような蛍光材料の蛍光を検出する必要はない。さらに本明細書では、標的成分によって放出される蛍光の検出は、説明した方法及びセンサデバイスと組み合わせることができる追加の特徴である。
【0100】
本発明は、上で特定の実施例を参照しながら説明されたが、様々な修正型及び発展型が可能である。それはたとえば以下のようなものである。
- 分子アッセイに加えて、大きな構成部分-たとえば細胞、ウイルス、又は細胞若しくはウイルス断片、細胞組織片を抽出したもの等-を、本発明によるセンサデバイスによって検出することができる。
- センサ表面に対してセンサ素子を走査しながら検出して良いし、又は走査せずに検出しても良い。
- 測定データは、動的又は断続的に信号を記録することによってのみならず、端点測定として得られても良い。
- ラベルとして機能する粒子は検知手法によって直接的に検出されて良い。同様に、その粒子は、検出前にさらに処理されて良い。さらなる処理の例は、材料を追加すること、又は、検出を助けるためにラベルの(生)化学若しくは物理的特性を改質することである。
- 当該デバイス及び方法は、複数の種類の生化学アッセイと併用されて良い。複数の種類の生化学アッセイとはたとえば、結合/未結合アッセイ、サンドイッチアッセイ、競合アッセイ、変位アッセイ、酵素アッセイ等である。係る併用はDNAの検出にとって特に適している。その理由は、大規模多重化が容易に可能であり、かつインクジェットプリントによって、様々なオリゴヌクレオチドを光学基板上に滴下することが可能だからである。
- 当該デバイス及び方法は、センサ多重化(つまり様々なセンサ及びセンサ表面の並列使用)、ラベル多重化(つまり様々な種類のラベルの並列使用)、及びチャンバ多重化(つまり様々な反応チャンバの並列使用)に適している。
- 当該デバイス及び方法は、迅速で、頑丈で、かつ使用が容易な、小さな試料体積向けのポイントオブケアバイオセンサに用いられて良い。反応チャンバは、小型読み取り装置との併用が可能な使い捨てアイテムであって良い。その反応チャンバは、1つ以上の電磁場発生装置及び1つ以上の検出手段を有する。また本発明のデバイス、方法、及びシステムは、自動高処理能力検査に用いられて良い。この場合、反応チャンバはたとえば、自動用装置に適合したウエルプレート又はキューベットである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18