特許第6019180号(P6019180)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧

特許6019180(メタ)アクリル系粘着剤及び粘着テープ
<>
  • 特許6019180-(メタ)アクリル系粘着剤及び粘着テープ 図000003
  • 特許6019180-(メタ)アクリル系粘着剤及び粘着テープ 図000004
  • 特許6019180-(メタ)アクリル系粘着剤及び粘着テープ 図000005
  • 特許6019180-(メタ)アクリル系粘着剤及び粘着テープ 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6019180
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】(メタ)アクリル系粘着剤及び粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20161020BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20161020BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20161020BHJP
   B24B 37/20 20120101ALI20161020BHJP
   B24B 37/11 20120101ALI20161020BHJP
【FI】
   C09J133/04
   C09J11/06
   C09J7/02 Z
   B24B37/04 Y
   B24B37/00 C
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-122925(P2015-122925)
(22)【出願日】2015年6月18日
【審査請求日】2016年3月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川本 友也
(72)【発明者】
【氏名】松井 梨絵
(72)【発明者】
【氏名】内田 徳之
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−136778(JP,A)
【文献】 特開2015−089924(JP,A)
【文献】 特開2012−246444(JP,A)
【文献】 特開2006−274151(JP,A)
【文献】 特開2010−150493(JP,A)
【文献】 特開2010−053258(JP,A)
【文献】 特開2013−213227(JP,A)
【文献】 特開2011−225668(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0309873(US,A1)
【文献】 特開2010−150446(JP,A)
【文献】 特開2009−258274(JP,A)
【文献】 特開2007−291299(JP,A)
【文献】 特許第5885051(JP,B2)
【文献】 特開2000−212534(JP,A)
【文献】 特開2008−231358(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/040422(WO,A1)
【文献】 特開2014−152317(JP,A)
【文献】 特開2014−196376(JP,A)
【文献】 特開2014−156552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B24B 21/00− 39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル共重合体と架橋剤とを含む架橋性組成物の架橋物である(メタ)アクリル材料を含み、
軟化点が130℃以上である粘着付与樹脂を含み、
前記(メタ)アクリル共重合体は、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(メタ)アクリル酸モノマー及び水酸基含有モノマーを含有する混合モノマーの共重合体であり、
前記混合モノマーにおいて、前記(メタ)アクリル酸エステルモノマー及び(メタ)アクリル酸モノマーの総量100重量部に対する前記水酸基含有モノマーの含有量が、0.1重量部以上、0.3重量部以下であり、
前記(メタ)アクリル材料100重量部に対する前記軟化点が130℃以上である粘着付与樹脂の含有量が、35重量部以上、43重量部以下であり、
ゲル分率が、53重量%以上である、(メタ)アクリル系粘着剤。
【請求項2】
前記水酸基含有モノマーが、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルである、請求項1に記載の(メタ)アクリル系粘着剤。
【請求項3】
基材と、前記基材の第1の表面上に積層された第1の粘着剤層とを備え、
前記第1の粘着剤層が、請求項1又は2に記載の(メタ)アクリル系粘着剤である、粘着テープ。
【請求項4】
基材と、前記基材の第1の表面上に積層された第1の粘着剤層と、前記基材の前記第1の表面とは反対の第2の表面上に積層された第2の粘着剤層を備え、
前記第1の粘着剤層及び前記第2の粘着剤層がそれぞれ、請求項1又は2に記載の(メタ)アクリル系粘着剤であり、
両面粘着テープである、粘着テープ。
【請求項5】
研磨機の定盤に研磨布を固定するために用いられ、
基材と、前記基材の第1の表面上に積層された第1の粘着剤層とを備え、
前記第1の粘着剤層が、(メタ)アクリル系粘着剤であり、
前記(メタ)アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル共重合体と架橋剤とを含む架橋性組成物の架橋物である(メタ)アクリル材料を含み、
前記(メタ)アクリル共重合体は、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(メタ)アクリル酸モノマー及び水酸基含有モノマーを含有する混合モノマーの共重合体であり、
前記混合モノマーにおいて、前記(メタ)アクリル酸エステルモノマー及び(メタ)アクリル酸モノマーの総量100重量部に対する前記水酸基含有モノマーの含有量が、0.1重量部以上、0.3重量部以下であり、
前記(メタ)アクリル系粘着剤のゲル分率が、53重量%以上である、粘着テープ。
【請求項6】
研磨機の定盤に研磨布を固定するために用いられ、
基材と、前記基材の第1の表面上に積層された第1の粘着剤層と、前記基材の前記第1の表面とは反対の第2の表面上に積層された第2の粘着剤層とを備え、
前記第1の粘着剤層及び前記第2の粘着剤層がそれぞれ、(メタ)アクリル系粘着剤であり、
前記(メタ)アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル共重合体と架橋剤とを含む架橋性組成物の架橋物である(メタ)アクリル材料を含み、
前記(メタ)アクリル共重合体は、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(メタ)アクリル酸モノマー及び水酸基含有モノマーを含有する混合モノマーの共重合体であり、
前記混合モノマーにおいて、前記(メタ)アクリル酸エステルモノマー及び(メタ)アクリル酸モノマーの総量100重量部に対する前記水酸基含有モノマーの含有量が、0.1重量部以上、0.3重量部以下であり、
前記(メタ)アクリル系粘着剤のゲル分率が、53重量%以上であり、
両面粘着テープである、粘着テープ。
【請求項7】
前記水酸基含有モノマーが、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルである、請求項5又は6に記載の粘着テープ。
【請求項8】
研磨機の定盤に研磨布を固定するために用いられる、請求項又はに記載の粘着テープ。
【請求項9】
研磨機を用いてビッカース硬度が7以上である硬質素材を研磨する際に、該研磨機の定盤に研磨布を固定するために用いられる、請求項のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項10】
研磨機を用いてサファイアガラスを研磨する際に、該研磨機の定盤に研磨布を固定するために用いられる、請求項7及び9のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル共重合体と、架橋剤とを用いた(メタ)アクリル系粘着剤に関する。また、本発明は、上記(メタ)アクリル系粘着剤を備える粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スマートフォンなどのカバーガラスとして、ゴリラガラスが広く用いられている。カバーガラスとしてゴリラガラスを用いると、傷や割れをある程度抑えることができる。しかしながら、傷や割れの発生の抑制がより一層求められることがある。そのため、ゴリラガラスの代替材料として、高い硬度を有するサファイアガラスが、近年、注目を集めている。
【0003】
ところで、スマートフォンなどのカバーガラスは、通常、研磨加工することにより平滑にして用いられる。研磨加工は、研磨機の定盤に固定された研磨布を用いて行われる。研磨布を研磨機の定盤に固定するために、通常、粘着テープが使用されている。
【0004】
また、(メタ)アクリル系粘着剤が両面粘着テープに用いられている。下記の特許文献1には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボキシル基含有単量体及び水酸基含有単量体を単量体成分として構成されるアクリル系ポリマー、粘着付与樹脂及び架橋剤を含む粘着剤組成物により形成される粘着テープが開示されている。特許文献1の粘着テープは、携帯電話のレンズ固定用、携帯電話のキーモジュール部材固定用、電子機器の衝撃材、テレビのデコレーションパネル固定用、パソコンのバッテリーパック保護用途、デジタルビデオカメラのレンズ防水用等に用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−252095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、研磨加工において、研磨布を研磨機の定盤に固定するために、粘着テープを用いることは特に記載されていない。特許文献1に記載された用途ではないが、仮に、特許文献1のような粘着テープにより研磨布を固定して、ガラスのような硬質素材を長時間研磨加工すると、研磨布が粘着テープから剥がれることがある。特に、硬質素材が硬いほど、研磨時に、研磨布が粘着テープから剥離しやすくなる。この原因について本願発明者らが鋭意検討した結果、硬質素材を研磨する際には高い圧力や熱が粘着テープに加えられるため、高温でのせん断粘着力が十分でない粘着テープでは、該粘着テープから研磨布が剥離し易いことが見出された。
【0007】
本発明の目的は、高温でのせん断粘着力に優れる(メタ)アクリル系粘着剤、並びに該(メタ)アクリル系粘着剤を備える粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の広い局面によれば、(メタ)アクリル共重合体と架橋剤とを含む架橋性組成物の架橋を進行させた(メタ)アクリル材料を含み、前記(メタ)アクリル共重合体は、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(メタ)アクリル酸モノマー及び水酸基含有モノマーを含有する混合モノマーの共重合体であり、前記混合モノマーにおいて、前記(メタ)アクリル酸エステルモノマー及び(メタ)アクリル酸モノマーの総量100重量部に対する前記水酸基含有モノマーの含有量が、0.1重量部以上、0.3重量部以下であり、ゲル分率が、53重量%以上である、(メタ)アクリル系粘着剤が提供される。
【0009】
本発明に係る(メタ)アクリル系粘着剤のある特定の局面では、軟化点が130℃以上である粘着付与樹脂を含む。
【0010】
本発明に係る(メタ)アクリル系粘着剤のある特定の局面では、前記(メタ)アクリル材料100重量部に対する前記粘着付与樹脂の含有量が、35重量部以上、43重量部以下である。
【0011】
本発明に係る(メタ)アクリル系粘着剤のある特定の局面では、周波数10Hz、かつ温度80℃におけるせん断貯蔵弾性率が、5.0×10Pa以上である。
【0012】
本発明に係る(メタ)アクリル系粘着剤のある特定の局面では、前記水酸基含有モノマーが、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルである。
【0013】
本発明の広い局面によれば、基材と、前記基材の第1の表面上に積層された第1の粘着剤層とを備え、前記第1の粘着剤層が、本発明に従って構成される(メタ)アクリル系粘着剤である、粘着テープが提供される。
【0014】
本発明の広い局面によれば、基材と、前記基材の第1の表面上に積層された第1の粘着剤層と、前記基材の前記第1の表面とは反対の第2の表面上に積層された第2の粘着剤層を備え、前記第1の粘着剤層及び前記第2の粘着剤層がそれぞれ、本発明に従って構成される(メタ)アクリル系粘着剤であり、両面粘着テープである、粘着テープが提供される。
【0015】
本発明に係る粘着テープのある特定の局面では、研磨機の定盤に研磨布を固定するために用いられる。
【0016】
本発明に係る粘着テープのある特定の局面では、研磨機を用いてビッカース硬度が7以上である硬質素材を研磨する際に、該研磨機の定盤に研磨布を固定するために用いられる。
【0017】
本発明に係る粘着テープのある特定の局面では、研磨機を用いてサファイアガラスを研磨する際に、該研磨機の定盤に研磨布を固定するために用いられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る(メタ)アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル共重合体と架橋剤とを含む架橋性組成物の架橋を進行させた(メタ)アクリル材料を含み、上記(メタ)アクリル共重合体は、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(メタ)アクリル酸モノマー及び水酸基含有モノマーを含有する混合モノマーの共重合体であり、上記混合モノマーにおいて、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー及び(メタ)アクリル酸モノマーの総量100重量部に対する上記水酸基含有モノマーの含有量が、0.1重量部以上、0.3重量部以下であり、ゲル分率が、53重量%以上であるため、高温でのせん断粘着力に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る粘着テープの模式的正面断面図である。
図2図2は、保持力の試験方法を説明するための模式図である。
図3図3は、せん断粘着力の試験方法を説明するための模式図である。
図4図4は、凝集力試験の方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0021】
本発明に係る(メタ)アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル共重合体と架橋剤とを含む架橋性組成物の架橋を進行させた(メタ)アクリル材料を含む。上記(メタ)アクリル共重合体は、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(メタ)アクリル酸モノマー及び水酸基含有モノマーを含有する混合モノマーの共重合体である。上記混合モノマーにおいて、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー及び(メタ)アクリル酸モノマーの総量100重量部に対する上記水酸基含有モノマーの含有量が、0.1重量部以上、0.3重量部以下である。本発明に係る(メタ)アクリル系粘着剤のゲル分率は、53重量%以上である。
【0022】
本発明に係る(メタ)アクリル系粘着剤は、上述した構成を備えているため、高温でのせん断粘着力に優れている。
【0023】
また、本発明に係る粘着テープでは、基材の少なくとも一方側の表面上に上記(メタ)アクリル系粘着剤である粘着剤層が積層されている。そのため、本発明の粘着テープを用いて研磨布を定盤に固定すると、硬質素材を研磨しても研磨布が剥離し難い。従って、本発明の粘着テープでは、信頼性に優れている。特に、硬質素材の研磨時には、高速で研磨したり、高い圧力で研磨したり、長時間研磨したりする必要がある。そのため、硬質素材の研磨時には、粘着テープがより高い温度に晒される。本発明では、高温でのせん断粘着力を高めることができるため、硬質素材の研磨時に、粘着テープを好適に用いることができる。
【0024】
特に、本発明に係る(メタ)アクリル系粘着剤及び本発明に係る粘着テープは、ビッカース硬度7以上の硬質素材や、サファイアガラスの研磨加工に、好適に用いることができる。例えば、従来の(メタ)アクリル系粘着剤及び粘着テープでは、ゴリラガラスの研磨加工に適用できたとしても、ゴリラガラスよりもビッカース硬度が高い硬質素材や、サファイアガラスの研磨加工には適用できないことがある。本発明では、かなり高度が高い硬質素素材であっても、研磨加工時に、研磨布の剥離を充分に抑えることができる。
【0025】
[(メタ)アクリル系粘着剤]
本発明に係る(メタ)アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル材料を含む。上記(メタ)アクリル材料は、(メタ)アクリル共重合体と架橋剤とを含む架橋性組成物の架橋を進行させた組成物である。上記(メタ)アクリル材料は、架橋剤によって、上記(メタ)アクリル共重合体の架橋が進行した架橋体を含む。なお、上記(メタ)アクリル材料は、架橋に寄与していない未反応の(メタ)アクリル共重合体及び架橋剤を含んでいてもよい。架橋の進行の程度は、ゲル分率などを考慮して適宜調整される。
【0026】
上記(メタ)アクリル共重合体は、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(メタ)アクリル酸モノマー及び水酸基含有モノマーを含有する混合モノマーの共重合体である。上記混合モノマーにおいて、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー及び(メタ)アクリル酸モノマーの総量100重量部に対する上記水酸基含有モノマーの含有量は、0.1重量部以上、0.3重量部以下である。
【0027】
本発明の(メタ)アクリル系粘着剤のゲル分率は、53重量%以上である。上記ゲル分率が、上記下限以上である場合、(メタ)アクリル系粘着剤の凝集力が高められる。また、(メタ)アクリル系粘着剤の粘着力をより一層高める観点からは、上記ゲル分率は、62重量%以下であることが好ましい。
【0028】
なお、上記ゲル分率は以下のようにして測定される。
【0029】
(メタ)アクリル系粘着剤をW1(g)採取し、採取した(メタ)アクリル系粘着剤を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬した際の不溶解分を200メッシュの金網で濾過する。この金網上の残渣を110℃にて加熱乾燥し、得られた乾燥残渣の重量W2(g)を測定する。下記式(1)によりゲル分率(架橋度)を算出する。
【0030】
ゲル分率(重量%)=100×W2/W1 …(1)
【0031】
(メタ)アクリル系粘着剤の粘着力と凝集力とを高いレベルで両立させ、高温でのせん断粘着力をより一層高める観点から、(メタ)アクリル系粘着剤の上記ゲル分率は、55重量%以上であることが好ましく、65重量%以下であることが好ましく、62重量%以下であることがより好ましい。
【0032】
また、本発明の(メタ)アクリル系粘着剤は、周波数10Hz、かつ温度80℃におけるせん断貯蔵弾性率が、5.0×10Pa以上であることが好ましい。上記せん断貯蔵弾性率が、上記下限以上である場合、(メタ)アクリル系粘着剤の凝集力をより一層高めることができる。また、(メタ)アクリル系粘着剤の粘着力をより一層高める観点からは、上記せん断貯蔵弾性率は、10×10Pa以下であることが好ましい。
【0033】
なお、上記せん断貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定により測定される。上記動的粘弾性測定は、動的粘弾性測定装置を用いて、固体せん断モードで、周波数10Hz、ひずみ0.1%の条件下で行われる。
【0034】
(メタ)アクリル系粘着剤の粘着力と凝集力とを高いレベルで両立させ、高温でのせん断粘着力をより一層高める観点から、(メタ)アクリル系粘着剤の上記せん断貯蔵弾性率は、6×10Pa以上であることが好ましい。
【0035】
以下、本発明の(メタ)アクリル系粘着剤を構成する材料の詳細について説明する。
【0036】
((メタ)アクリル材料)
上記(メタ)アクリル材料は、(メタ)アクリル共重合体と架橋剤とを含む架橋性組成物の架橋を進行させた組成物である。
【0037】
(メタ)アクリル共重合体;
上記(メタ)アクリル共重合体は、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(メタ)アクリル酸モノマー及び水酸基含有モノマーを含有する混合モノマーの共重合体である。
【0038】
上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル等のアルキル基の炭素数が1〜3の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸ブチル;(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等のアルキル基の炭素数が13〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0039】
上記混合モノマー100重量%中、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーの含有量は好ましくは75重量%以上、好ましくは100重量%以下である。上記混合モノマー100重量%中、上記(メタ)アクリル酸モノマーの含有量は好ましくは3重量%以上、好ましくは7重量%以下である。
【0040】
上記水酸基含有モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;アリルアルコール及びジエチレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。上記水酸基含有モノマーは、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。(メタ)アクリル系粘着剤の高温でのせん断粘着力をより一層高める観点から、上記水酸基含有モノマーは、上記(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルであることが好ましい。
【0041】
上記混合モノマーにおいて、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー及び(メタ)アクリル酸モノマーの総量100重量部に対する上記水酸基含有モノマーの含有量は、0.1重量部以上、0.3重量部以下である。上記水酸基含有モノマーの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であるため、本発明の(メタ)アクリル系粘着剤は、高温でのせん断粘着力に優れている。(メタ)アクリル系粘着剤の高温でのせん断粘着力をより一層高める観点から、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー及び(メタ)アクリル酸モノマーの総量100重量部に対する上記水酸基含有モノマーの含有量は、0.1重量部以上、0.2重量部以下であることが好ましい。
【0042】
上記混合モノマーは、必要に応じて共重合可能な他の重合性モノマーを含んでいてもよい。
【0043】
上記共重合可能な他の重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、グリセリンジメタクリレート、(メタ)アクリル酸グリシジル、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、イタコン酸、無水マレイン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸等の官能性モノマーが挙げられる。
【0044】
上記(メタ)アクリル重合体の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは65万以上、好ましくは120万以下である。上記重量平均分子量(Mw)が、上記下限以上及び上記上限以下である場合、(メタ)アクリル系粘着剤の粘着力と凝集力とを高いレベルで両立することができ、高温でのせん断粘着力をより一層高めることができる。
【0045】
上記重量平均分子量(Mw)を上記範囲に調整するためには、重合開始剤、重合温度等の重合条件を調整すればよい。上記重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
【0046】
上記混合モノマーを共重合させて上記(メタ)アクリル共重合体を得るには、例えば、上記混合モノマーを、重合開始剤の存在下にてラジカル反応させる。上記混合モノマーをラジカル反応させる方法、即ち、重合方法としては、従来公知の方法が用いられる。重合方法としては、例えば、溶液重合法(沸点重合法又は定温重合法)、乳化重合法、懸濁重合法、及び塊状重合法等が挙げられる。
【0047】
上記重合開始剤としては特に限定されず、有機過酸化物、及びアゾ化合物等が挙げられる。上記有機過酸化物としては、例えば、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、及びt−ブチルパーオキシラウレート等が挙げられる。上記アゾ化合物として、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、及びアゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等が挙げられる。上記重合開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
架橋剤;
上記(メタ)アクリル材料では、架橋剤により、上記(メタ)アクリル共重合体の架橋が進行されている。
【0049】
上記架橋剤としては、特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられる。上記架橋剤は、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0050】
(メタ)アクリル系粘着剤の高温でのせん断粘着力をより一層高める観点からは、上記架橋剤は、上記イソシアネート系架橋剤を含むことが好ましい。
【0051】
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネートなどが挙げられる。上記イソシアネート系架橋剤は、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0052】
架橋が進行する前の上記架橋性組成物において、上記架橋剤の含有量は、特に限定されないが、上記(メタ)アクリル共重合体100重量部に対して、1.5重量部以上、4重量部以下であることが好ましい。上記架橋剤の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下である場合、(メタ)アクリル系粘着剤の粘着力と凝集力とを高いレベルで両立することができ、高温でのせん断粘着力をより一層高めることができる。
【0053】
(粘着付与樹脂)
本発明の(メタ)アクリル系粘着剤は、さらに粘着付与樹脂を含んでいてもよい。本発明の(メタ)アクリル系粘着剤は、上記(メタ)アクリル材料、及び粘着付与樹脂を含んでいてもよい。
【0054】
上記粘着付与樹脂としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族系共重合体、芳香族系共重合体、脂肪族・芳香族系共重合体及び脂環式系共重合体等の石油系樹脂;クマロン−インデン系樹脂;テルペン系樹脂;テルペンフェノール系樹脂;重合ロジン等のロジン系樹脂;フェノール系樹脂;キシレン系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、水素添加された樹脂であってもよい。上記粘着付与樹脂は、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0055】
(メタ)アクリル系粘着剤の粘着力と凝集力とを高いレベルで両立させ、高温でのせん断粘着力をより一層高める観点から、上記粘着付与樹脂の軟化点は、110℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましく、170℃以下であることが好ましい。
【0056】
また、上記粘着付与樹脂の含有量は、特に限定されないが、上記(メタ)アクリル材料100重量部に対して、30重量部以上であることが好ましく、35重量部以上であることがより好ましく、50重量部以下であることが好ましく、43重量部以下であることがより好ましい。上記粘着付与樹脂の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下である場合、(メタ)アクリル系粘着剤の粘着力と凝集力とを高いレベルで両立することができ、高温でのせん断粘着力をより一層高めることができる。
【0057】
なお、上記(メタ)アクリル系粘着剤は、さらに、本発明の効果を阻害しない範囲内で、必要に応じて充てん剤、酸化防止剤又は紫外線吸収剤等の従来公知の添加剤を含有してもよい。
【0058】
また、上記粘着付与樹脂は、上記架橋性組成物の架橋を進行させる前に上記架橋性組成物と混合して用いてもよいし、上記架橋性組成物の架橋を進行させて(メタ)アクリル材料を得た後に、上記(メタ)アクリル材料と混合して用いてもよい。
【0059】
[粘着テープ]
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る粘着テープの具体的な実施形態を説明する。
【0060】
図1は、本発明の一実施形態に係る粘着テープを示す模式的正面断面図である。図1に示すように、粘着テープ1は、基材2、第1の粘着剤層3及び第2の粘着剤層4を備える。
【0061】
基材2は、第1の表面2a及び第2の主面2bを有する。第1の表面2aと、第2の表面2bとは、互いに対向している。第1の表面2a上には、第1の粘着剤層3が積層されている。第2の表面2b上には、第2の粘着剤層4が積層されている。粘着テープ1は、基材2の両面に粘着剤層が設けられた両面粘着テープである。なお、本発明においては、基材2の一方側の表面にのみ粘着剤層が設けられていてもよい。より具体的には、基材2の第1の表面2a上にのみ第1の粘着剤層3が設けられていてもよいし、第2の表面2b上にのみ第2の粘着剤層4が設けられていてもよい。
【0062】
基材2の材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等の合成樹脂フィルムが挙げられ、なかでも、平坦であり、厚みのぶれが小さく、一定の強度を有することから、ポリエステル系樹脂フィルムを好適に用いることができる。
【0063】
第1及び第2の粘着剤層3,4は、上述した本発明の(メタ)アクリル系粘着剤である。
【0064】
本発明においては、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層とがそれぞれ、上述した(メタ)アクリル系粘着剤であってもよく、第1の粘着剤層のみが、上述した(メタ)アクリル系粘着剤であってもよい。
【0065】
第1及び第2の粘着剤層の厚みはそれぞれ、特に限定されないが、好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは90μm以下である。
【0066】
粘着テープ1などの本発明に係る粘着テープは、上記の構成を備えており、粘着剤層が本発明の(メタ)アクリル系粘着剤であるため、高温でのせん断粘着力に優れている。従って、研磨機を用いて硬質素材を研磨する際に、本発明の(メタ)粘着テープを用いて研磨布を定盤に固定すると、研磨により研磨布が粘着剤から剥がれ難い。
【0067】
本発明の(メタ)アクリル系粘着剤及び粘着テープは、研磨機の定盤に研磨布を固定する用途で好適に用いることができる。特に、本発明の(メタ)アクリル系粘着剤及び粘着テープは、高温でのせん断粘着力に優れているため、ビッカース硬度が7以上である硬質素材を研磨する際に、上記研磨機の定盤に研磨布を固定する用途でより好適に用いることができる。なお、上記ビッカース硬度が7以上である硬質素材としては、サファイアガラスを好適に用いることができる。
【0068】
また、研磨機の定盤に研磨布を固定する用途で本発明の粘着テープを用いる場合は、研磨布が粘着剤層から剥離することを抑制する観点から、基材の研磨布側の表面に、本発明の(メタ)アクリル系粘着剤である粘着剤層が設けられていることが望ましい。
【0069】
(粘着テープの他の詳細)
本発明の粘着テープの製造方法として、例えば、以下のような方法が挙げられる。
【0070】
まず、(メタ)アクリル重合体及び架橋剤に、必要に応じて粘着付与樹脂等を加え、また溶剤を加えて粘着剤の溶液を作製する。この粘着剤の溶液を基材の一方側表面に塗布する。溶液中の溶剤を乾燥除去するとともに、(メタ)アクリル重合体の架橋を進行させ粘着剤層を形成する。次に、形成された粘着剤層の上に離型フィルムをその離型処理面が粘着剤層に対向した状態に重ね合わせる。この結果、離型フィルム/粘着剤層/基材の積層構造を有する粘着テープが得られる。なお、粘着テープが両面粘着テープの場合には、基材の他方側表面に同様の方法で粘着剤層を形成することにより、粘着テープを製造することができる。
【0071】
上記粘着剤の溶液を作製するための溶剤としては、特に限定されず、酢酸エチル、トルエン、ジメチルスルホキシド、エタノール、アセトン、ジエチルエーテルなどが挙げられる。
【0072】
上記溶剤の乾燥方法としては、IRヒータやオーブンなどの乾燥炉に入れて乾燥させる方法が挙げられる。乾燥は、常圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。
【0073】
本発明の粘着テープの形状は特に限定されず、長方形、円形、楕円形、及び円環状等が挙げられる。
【0074】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づき、更に詳しく説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0075】
(実施例1)
(メタ)アクリル系粘着剤の調製;
攪拌機、冷却器、温度計及び窒素ガス導入口を備える反応装置に、ブチルアクリレート(BA)95重量部、アクリル酸(AAc)5重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)0.1重量部を混合した混合モノマーと、溶剤としての酢酸エチル100重量部とを含む反応液を仕込み、窒素ガスを用いて30分間バブリングすることにより溶存酸素を除去した。
【0076】
その後、装置内を窒素ガスで置換し、反応液を攪拌しながらオイルバスにて反応液が還流温度になるまで昇温した。反応液が還流温度に到達した時点で、アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部をシクロヘキサン1.35重量部に溶解させた重合開始剤溶液を7時間かけて反応液に加え、混合モノマーを共重合させた。重合完了後に得られたアクリル共重合体溶液に、架橋剤としてのコロネート(日本ポリウレタン社製、商品名「L−55」)2.9重量部及び粘着付与樹脂としてのテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル社製、商品名「T160」、軟化点160℃)40重量部を加えて攪拌し、粘着剤溶液を調製した。
【0077】
両面粘着テープの作製;
一面が離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを用意した。このポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理面に上記で得られた粘着剤溶液を乾燥後の厚みが80μmとなるように塗布し、110℃で5分間乾燥させて、上記アクリル共重合体溶液中のアクリル共重合体の架橋を進行させ、ポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理面に粘着剤層を有する積層シートを作製した。同様の要領で上記積層シートをさらにもう1個作製し、合計2個の上記積層シートを得た。
【0078】
次に、基材としてポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み23μm)を用意した。上記基材の一方側の表面に、一方の上記積層シートを粘着剤層面から積層して粘着剤層を基材に転写及び積層一体化させた。基材の他方側の表面にもう一方の上記積層シートを粘着剤層面から積層して粘着剤層を基材に転写及び積層一体化させた。それによって、基材の両面に厚みが80μmの粘着剤層が設けられた両面粘着テープを得た。
【0079】
(実施例2〜6及び比較例1〜4)
ブチルアクリレート(BA)、アクリル酸(AAc)、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)、酢酸ビニル(VAc)及びメタクリル酸メチル(MMA)の中からモノマーを選択し、下記の表1に示す混合比で混合した混合モノマーを用いたこと、並びに、乾燥条件を調整してゲル分率を下記表1に示すように設定したこと以外は、実施例1と同様にして、両面粘着テープを得た。
【0080】
(実施例7)
粘着付与樹脂として重合ロジンエステル(荒川化学工業社製、商品名「D160」、軟化点160℃)を用いたこと、並びに、乾燥条件を調整してゲル分率を下記表1に示すように設定したこと以外は、実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。
【0081】
(実施例8)
粘着付与樹脂としてテルペンフェノール(ヤスハラケミカル社製、商品名「T160」、軟化点160℃)及び重合ロジンエステル(荒川化学工業社製、商品名「D160」、軟化点160℃)を下記の表1に示す混合比で用いたこと、並びに、乾燥条件を調整してゲル分率を下記表1に示すように設定したこと以外は、実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。
【0082】
(実施例9)
粘着付与樹脂としてニカノール(フドー化学社製、商品名「HP120」、軟化点120℃)を用いたこと、並びに、乾燥条件を調整してゲル分率を下記表1に示すように設定したこと以外は、実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。
【0083】
<評価>
実施例1〜9及び比較例1〜4で得られた両面粘着テープ、両面粘着テープを構成する(メタ)アクリル系粘着剤(粘着剤層)、(メタ)アクリル系粘着剤に用いた(メタ)アクリル共重合体について、下記の評価を行った。結果を下記の表1に示す。
【0084】
(1)(メタ)アクリル共重合体の分子量
両面粘着テープを作製するために用いた架橋前の(メタ)アクリル共重合体について、カラム(昭和電工社製、製品名「LF−804」)を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分析を行い、ポリスチレン換算を行って、(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
【0085】
(2)Tg
動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御株式会社製、品番「DVA−310」)を用いて、固体せん断モードで、周波数10Hz、ひずみ0.1%、温度−40℃〜140℃、昇温速度3℃/min条件下で、(メタ)アクリル系粘着剤(粘着剤層)試験片(厚み1.2mm、縦11mm×横6mm)の動的粘弾性測定を行い、tanδのピーク値であるTgを測定した。
【0086】
(3)ゲル分率
両面粘着テープから(メタ)アクリル系粘着剤(粘着剤層)をW1(g)採取し、採取した粘着剤を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬した際の不溶解分を200メッシュの金網で濾過した。この金網上の残渣を110℃にて加熱乾燥し、得られた乾燥残渣の重量W2(g)を測定し、下記式(1)によりゲル分率(架橋度)を算出した。
【0087】
ゲル分率(重量%)=100×W2/W1 …(1)
【0088】
(4)せん断貯蔵弾性率
(メタ)アクリル系粘着剤(粘着剤層)の上記せん断貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定により測定した。上記動的粘弾性測定は、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御株式会社製、品番「DVA−310」)を用いて、固体せん断モードで、周波数10Hz、ひずみ0.1%、温度−40℃〜140℃、昇温速度3℃/min条件下で、(メタ)アクリル系粘着剤(粘着剤層)試験片(厚み1.2mm、縦11mm×横6mm)の条件下で行った。
【0089】
(5)保持力
図2は、保持力の試験方法を説明するための模式図である。図2に示すように試験片5と第1のSUS板7とを上記の方法で作製した両面粘着テープ6を用いて貼り合わせ、続いて試験片5の一端に1kgの第1の重り8を下げ、100℃の温度で、1時間後及び24時間後のズレの距離を測定した。
【0090】
(6)高温せん断粘着力
10×10mmに切り出した両面粘着テープを2枚のアルミニウム板の間に挟み込み、続いて2kg/cmの圧力にて20分圧着後、さらに40℃、0.3MPaの条件でオートクレープ(平山製作所社製、型番「PTU30SVIII」)を用いて圧着することにより2枚のアルミニウム板を貼り付け、試験片とした。作製した試験片を80℃のオーブンにて1時間保管した後、80℃の雰囲気下で200mm/分の速度でせん断粘着力を測定した。より具体的には、図3に示すように両面粘着テープ6によって貼り合わされた第1及び第2のアルミニウム板9,10の両端を、図3に示す矢印の方向に引張り、接合部が破壊されるときの最大荷重を測定した。
【0091】
(7)凝集力試験
図4は、凝集力試験の方法を説明するための模式図である。図4に示すように、80℃の第2及び第3のSUS板11,12を40mm×20mmの両面粘着テープ6で貼り合わせ、第2のSUS板11の一端を固定し、第3のSUS板12の一端に、200gの第2の重り13を3分間ぶら下げたときの変位量を測定し、さらに第2の重り13を外して3分後の戻り量を精密測定した。
【0092】
(8)研磨機評価
厚み500μm、6インチ径のサファイア基板の表面に実施例1〜9及び比較例1〜4で得られた両面粘着テープを貼付したものをワークとして使用した。ワークであるサファイア基板の両面粘着テープ面側を研磨装置の吸着ヘッドにバキューム吸着し、ついで、前記吸着ヘッドを100rpmで回転および下降させて120rpmで回転している研磨定盤上でサファイア面を摺擦させ、120g/cmの圧力を掛けながら研磨加工を開始し、12μmの取り代となったところで研磨加工を終了させた。研磨加工の際、研磨定盤上には0.5〜1.5μm径のダイヤモンド砥粒分散研磨剤スラリー液を供給した。これらの操作が100時間経過した後、研磨定盤上に接着されている研磨布の状態を観察し、次の評価基準で評価した。
【0093】
[研磨機評価の判定基準]
○…研磨を行って100時間経過しても、剥がれ、浮きがいずれも観察されない。
△…研磨を行って100時間経過する前に、研磨を継続可能な程度にわずかに剥がれまたは浮きが観察された。
×…研磨を行って100時間経過する前に、剥がれまたは浮きが観察された。
【0094】
【表1】
【符号の説明】
【0095】
1…粘着テープ
2…基材
2a…第1の表面
2b…第2の表面
3,4…第1,第2の粘着剤層
5…試験片
6…両面粘着テープ
7,11,12…第1,第2,第3のSUS板
8,13…第1,第2の重り
9,10…第1,第2のアルミニウム板
【要約】
【課題】高温でのせん断粘着力に優れる(メタ)アクリル系粘着剤を提供する。
【解決手段】本発明に係る(メタ)アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル共重合体と架橋剤とを含む架橋性組成物の架橋を進行させた(メタ)アクリル材料を含み、前記(メタ)アクリル共重合体は、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(メタ)アクリル酸モノマー及び水酸基含有モノマーを含有する混合モノマーの共重合体であり、前記混合モノマーにおいて、前記(メタ)アクリル酸エステルモノマー及び(メタ)アクリル酸モノマーの総量100重量部に対する前記水酸基含有モノマーの含有量が、0.1重量部以上、0.3重量部以下であり、ゲル分率が、53重量%以上である。
【選択図】なし
図1
図2
図3
図4