(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
新聞やタウン情報誌等の配達エリアのある情報媒体にチラシを折り込んで各家庭に配布することが従来から行われている。また、このような情報媒体とは別に、配達エリアを細かく区切り、エリア毎にチラシを各家庭のポストに直接投函して配布するポスティング業務も従来から行われている。
【0003】
また、最近ではインターネットや携帯端末等の普及により、電子チラシをパソコンや携帯端末等に直接送信することも行われている。しかし、このような電子チラシの普及においても、従来から行われている上記の地域へのチラシの直接配布は、顧客の購買意欲を高めるきっかけとなり、実際に販売実績も上がっていることから、有効な宣伝手段の一つであることに変わりはない。
【0004】
しかし、配布対象となるエリアは広いため、限られた予算の中でできるだけ効率良くチラシを配布するためには、配布対象エリアをどのように絞り込むかが重要な課題であった。
【0005】
従来は、配布対象エリアを絞り込むために、市場に提供されている種々のデータ(例えば、国政調査データや民間調査会社等が提供している種々の地域データ等)を利用し、チラシの対象商品ごとに人がその属性を考慮して、配布対象エリアを人為的に判断しているのが現状であった。そのため、その人の経験や勘等にも左右されるため、一定の確実性を持って配布対象エリアを選択することが難しく、効率の良い配布対象エリアを選択することができなかった。
【0006】
例えば、エリア毎の過去の購買実績を考慮してチラシの配布対象エリアを選択すると、過去の購買人数の多いエリアから順に選択することになるので、一見すると効率の良い配布対象エリアを選択できているように見える。しかし、これではいつまで経っても他のエリアを選択することができず、販売エリアを拡大していくことができない。
【0007】
また、子供向けの商品を販売する場合、例えば65才以上の世帯数の多いエリアを除き、若い世代の多い新興住宅街のようなエリアを配布対象エリアとして選択すると、一見すると効率の良い配布対象エリアを選択できているように見える。しかし、65才以上の世帯であっても、孫のためにおもちゃを購入するケースも多いため、むしろ65才以上の世帯数の多いエリアにチラシを配布した方が効率の良い場合もある。実際の販売では、このような商品と販売対象者との直接的な因果関係とは別の要因が大きく作用する場合もあることから、人による経験と勘による従来の選択方法では限界があった。
【0008】
そこで、配布エリアを定量的に絞り込む手法が従来から提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
特許文献1には、店舗の商圏情報を取得する商圏情報処理装置と、媒体別影響度情報を取得する配達エリア情報処理装置と、及び前記商圏情報及び前記媒体別影響度情報に基づいて、前記特定の地域に配達エリアを有する一つ又は二つ以上のメディアのそれぞれの配達員に対して折り込みチラシを効率的に分配するための折り込みチラシ分配情報を作成する分配情報処理装置と、を備え、前記分配情報処理装置によって作成された前記折り込みチラシ分配情報に基づいて、前記折り込みチラシの数に対して購買者の数が最大になるように、前記特定の地域に配達エリアを有する一つ又は二つ以上のメディアのそれぞれに折り込みチラシを添付する折込チラシ分配システムが開示されている。
【0010】
より具体的には、エリア内の配布部数にエリア内の世帯数を掛け合わせてメディア世帯普及率を算出し、このメディア世帯普及率に顧客数を掛け合わせて顧客指数を算出し、この顧客指数を全顧客指数で割ってカバレッジ比率を算出し、このカバレッジ比率の数値を、実施した折込みプラン別に見ることによって、直近の購買者の動向を把握するようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献1では、実績値にのみ基づいた解析を行っており、予測値については全く考慮されていない。そのため、実績のないエリアはいつまで経っても配布対象エリアとして選択されることがなく、配布エリアにいつまでも空白地帯(空白エリア)が残るといった問題があった。
【0013】
人の動向は日々変化し、各エリアの属性も日々変化する。そのため、あるときには全く不要と思われていたエリアが、いつのまにか有効なエリアになっている場合もある。しかし、上記特許文献1では、その予測が考慮されていないため、人の動向や環境変化に臨機応変に対応できないといった問題が残されていた。
【0014】
なお、エリアマーケティングによる予測手法として、一般的に重回帰分析等の分析手法が用いられているが、この分析手法を用いて上記のチラシ配布エリアを分析したとしても、その分析結果からどのエリアに配布するのかを判断するのはあくまで人であり、分析手法に精通した者でないと、分析結果を十分に利用することができないといった問題があった。
【0015】
本発明はかかる問題点を解決すべく創案されたもので、その目的は、実績値と予測値の両方を考慮し、これらを所定係数を用いて関連付けることにより、人の動向や環境変化に対応して有効なエリアマーケティングの対象エリアを選択することができ、かつ、マーケティングユーザーに対して有効なエリアマーケティングを提示することのできるエリア選択装置及びエリア選択方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明のエリア選択装置は、複数に区分したエリアの中からエリアマーケティングの対象エリアを選択するエリア選択装置であって、前記エリア毎の過去の実績値をレスポンス実績として記憶する実績値記憶部と、エリア属性データを記憶する属性データ記憶部と、前記属性データ記憶部に記憶されている前記エリア属性データと前記実績値記憶部に記憶されている前記レスポンス実績との因果関係を定量的に分析する分析部と、前記分析部による分析結果に基づく前記エリア毎の予測値を予測レスポンスとして記憶する予測値記憶部と、前記実績値記憶部に記憶されているレスポンス実績と前記予測値記憶部に記憶されている予測レスポンスとを用い、これらに所定係数αを用いて下式(1)
エリアスコア=α×予測レスポンス+(1−α)×レスポンス実績 ・・・(1)
により前記エリア毎のスコアを算出するスコア算出部と、前記スコア算出部により算出された全アリアのスコアを記憶するスコア記憶部と、前記スコア記憶部に記憶されている全エリアのスコアに基づいてエリアマーケティングの対象エリアを選択して出力する出力部と、を備えたことを特徴としている。
【0017】
この構成によれば、実績値と予測値の両方を考慮し、これらを所定係数αを用いて関連付けることにより、人の動向や環境変化に対応して有効なエリアマーケティングの対象エリアを選択することができ、かつ、マーケティングユーザーに対して有効なエリアマーケティングを提示することができる。
【0018】
また、本発明のエリア選択装置によれば、前記所定係数αとして決定係数または重相関係数を用いることができる。決定係数または重相関係数を用いることによって、より精度の高いエリアマーケティングの対象エリアを選択することができる。
【0019】
また、本発明のエリア選択装置によれば、前記所定係数αとして、決定係数にサンプル数と説明変数の個数とを考慮して加えた自由度修正済み決定係数を用いる構成としてもよい。これにより、さらに精度の高いエリアマーケティングの対象エリアを選択することができる。
【0020】
また、本発明のエリア選択装置によれば、前記出力部は、前記スコアの順に選択された対象エリアを表示する表示部を備えた構成としてもよい。
【0021】
また、本発明のエリア選択装置によれば、前記表示部は、前記レスポンス実績を縦軸または横軸とし、前記予測レスポンスを前記レスポンス実績に対応する横軸または縦軸として前記エリアをグラフ表示するとともに、前記グラフ表示内に、前記スコアの順に従って選択された対象エリアを表示する構成としてもよい。
【0022】
この構成によれば、分析対象である全エリアに対して、選択された対象エリアを視覚的に比較して確認することができる。
【0023】
また、本発明のエリア選択装置によれば、前記表示部は、前記所定係数を傾きとして前記グラフ
表示内に基準直線を引き、この基準直線に直交する方向に移動直線を引くことにより、この移動直線を前記基準直線に沿って平行移動させることで、選択された対象エリアと選択されなかった対象エリアとを区分して表示する構成としてもよい。
【0024】
この構成によれば、移動直線を平行移動させることによって、エリアマーケティングの対象エリアの選択数を自由に変更することができ、かつ、その変更内容を目視によって容易に確認することができる。
【0025】
また、本発明のエリア選択方法は、複数に区分したエリアの中からエリアマーケティングの対象エリアを選択する
エリア選択装置によるエリア選択方法であって、前記エリア毎の過去の実績値をレスポンス実績として実績値記憶部に記憶する段階と、エリア属性データを属性データ記憶部に記憶する段階と、前記属性データ記憶部に記憶されている前記エリア属性データと前記実績値記憶部に記憶されている前記レスポンス実績との因果関係を分析部により定量的に分析する段階と、前記分析部による分析結果に基づく前記エリア毎の予測値を予測レスポンスとして予測値記憶部に記憶する段階と、スコア算出部により、前記実績値記憶部に記憶されているレスポンス実績と前記予測値記憶部に記憶されている予測レスポンスとを用い、これらに所定係数αを用いて下式(1)
エリアスコア=α×予測レスポンス+(1−α)×レスポンス実績 ・・・(1)
により前記エリア毎のスコアを算出する段階と、前記スコア算出部により算出された前記スコアに基づいてエリアマーケティングの対象エリアを出力部より選択して出力する段階と、を含むことを特徴としている。
【0026】
この構成によれば、実績値と予測値の両方を考慮し、これらを所定係数αを用いて関連付けることにより、人の動向や環境変化に対応して有効なエリアマーケティングの対象エリアを選択することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は上記のように構成したので、実績値と予測値の両方を考慮し、これらを所定係数を用いて関連付けることにより、人の動向や環境変化に対応して有効なエリアマーケティングの対象エリアを選択することができ、かつ、マーケティングユーザーに対して有効なエリアマーケティングを提示することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0030】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1に係るエリア選択装置の機能ブロック図である。
【0031】
実施の形態1に係るエリア選択装置1は、複数に区分したエリアの中からエリアマーケティングの対象エリアを選択する装置であって、エリア毎の過去の実績値をレスポンス実績として記憶する実績値記憶部11と、エリア属性データを記憶する属性データ記憶部12と、属性データ記憶部12に記憶されているエリア属性データと実績値記憶部11に記憶されているレスポンス実績との因果関係を定量的に分析する分析部13と、分析部13による分析結果に基づくエリア毎の予測値を予測レスポンスとして記憶する予測値記憶部14と、実績値記憶部11に記憶されているレスポンス実績と予測値記憶部14に記憶されている予測レスポンスとを用い、これらに所定係数を乗じて加えることによってエリア毎のスコアを算出するスコア算出部15と、スコア算出部15により算出された全アリアのスコアを記憶するスコア記憶部15aと、スコア記憶部15aに記憶されている全エリアのスコアに基づいてエリアマーケティングの対象エリアを選択して出力する出力部16と、を備えている。
【0032】
出力部16は、表示部16aと印刷部16bとを備えている。表示部16aは、スコア算出部15で算出されたスコアの順に選択された対象エリアを表示する。また、表示部16aは、レスポンス実績を縦軸とし、予測レスポンスを横軸とするグラフ上に、分析部13での分析結果に基づく全エリアの位置をプロットして表示する。また、グラフ表示内に、算出されたスコアの順に従って選択された対象エリアを表示する。これらの表示結果は、必要に応じて印刷部16bから印字出力する構成となっている。
【0033】
実施の形態1によれば、実績値と予測値の両方を考慮し、これらを所定係数を用いて関連付けることにより、人の動向や環境変化に対応して有効なエリアマーケティングの対象エリアを選択することができ、かつ、マーケティングユーザーに対して有効なエリアマーケティングを提示することができる。
【0034】
以下、実施の形態1に係るエリア選択装置1についてさらに具体的に説明する。
【0035】
エリア選択に際し、対象となるエリアをどのように区分するのかについては、マーケティングユーザーの要望により任意に設定すればよい。最も一般的な区分は市町村であるが、より細かい区分としては、例えばエリアマーケティングの対象エリアが政令指定都市等であれば、区毎に一つのエリアを設定してもよい。また、各区をさらに地理的に北と南に区分してもよく、さらに東西南北等に細かく区分することも可能である。また、このような地図上の住所等に基づく区分ではなく、エリアマーケティングの対象エリアが例えば大阪府である場合、大阪府全体を碁盤目状に分割して各エリアに区分することも可能である。
【0036】
実績値記憶部11には、例えば店舗での購買実績や通信販売等でのレスポンス実績のデータが、予め区分された複数のエリア毎に記憶されている。ここで、レスポンス実績のデータとは、各エリアに顧客がどの程度いるのかといったデータのことである。一例を示すと、例えばあるエリアの人口が10000人であり、そのエリア内の5人がそのエリアのある店舗のマーケティング対象である商品を購入していたとすると、その商品に対するそのエリアのレスポンス実績は5/10000×100=0.05(%)ということになる。実績値記憶部11には、このようなレスポンス実績がエリア毎に記憶されている。
【0037】
属性データ記憶部12には、エリア属性データが記憶されている。エリア属性データとして代表的なものは、国勢調査のデータがある。例えば、どのエリアに、どのような年齢層の人が住んでいるか、どのような職業の人が住んでいるか、といったデータが属性データとなる。このようなエリア属性データは、国勢調査によるものだけでなく、現在では多くのデータが有料で販売されているので、それらのデータを属性データとして利用することができる。その他にも、店舗からの距離、駅からの距離、ハフモデルの被吸引力、利用媒体など様々な属性が考えられる。また、属性データを因子分析し因子スコアを利用することも考えられる。
【0038】
分析部13は、例えば相関分析や重回帰分析等の各種の分析手法を用いて、属性データ記憶部12に記憶されているエリア属性データと実績値記憶部11に記憶されているレスポンス実績との因果関係を定量的に分析する。なお、この分析部13での分析手法については、従来周知の分析手法を用いることができ、本発明の特徴部分ではないので、ここでは簡単な説明に留めるものとする。
【0039】
図2は、分析部13による分析結果の一例を模式的に示した説明図である。
【0040】
分析部13では、エリア属性データに基づく予測レスポンスとレスポンス実績との因果関係を従来周知の分析手法を用いて分析し、その分析結果を出力する。
図2では、重回帰分析による分析結果の一例を示している。ただし、エリア属性データとレスポンス実績との因果関係を定量的に比較できる手法であれば、従来周知のどのような手法であってもよい。
【0041】
図2の下欄は、重回帰分析による分析結果の一例を示している。ここで、「Intercept」は切片、「Estimate」は推定値、「Std.Error」は標準誤差、「t value/t値」は、説明変数の係数や定数項の確からしさの度合いを示す数値、「Pr(>|t|)/p値」は、説明変数の係数や定数項がたまたまその値である確率、をそれぞれ示している。また、「Residual standard error」は残差の標準誤差、「Multiple R-squared」は寄与率/決定係数、「Adjusted R-squared」は修正済み寄与率/修正済み決定係数である。
【0042】
予測値記憶部14には、分析部13による分析結果に基づくエリア毎の予測値が予測レスポンスとして記憶される。
【0043】
図3は、表示部16aにおいて、レスポンス実績を縦軸とし、予測レスポンスを横軸とするグラフ上に、分析部13での分析結果に基づく全エリアの位置をプロットして表示した例を示している。
【0044】
スコア算出部15は、実績値記憶部11に記憶されているレスポンス実績と予測値記憶部14に記憶されている予測レスポンスとを用い、これらに所定係数を乗じて加えることによってエリア毎のスコア(エリアスコア)を算出する。具体的には、エリアスコアは、下式(1)によって算出される。
【0045】
エリアスコア=α×予測レスポンス+(1−α)×レスポンス実績 ・・・(1)
ここで、αの決定方法は、因果関係を計算した方法によるが、実施の形態1では、「Multiple R-squared」(寄与率/決定係数)、または、「Adjusted R-squared」(修正済み寄与率/修正済み決定係数)のいずれかをαとして用いている。
【0046】
「Multiple R-squared」(寄与率/決定係数)の場合、説明変数が多くなるほど値が大きくなる傾向があるため、「Adjusted R-squared」(修正済み寄与率/修正済み決定係数)を用いるのがより好ましい。ただし、決定係数としてサンプル数と説明変数の個数とを考慮して補正を加えた「自由度修正済み決定係数」を用いることも可能である。また、相関分析の場合には、相関関数をαとして用いることができる。
【0047】
ここで、αとして「Adjusted R-squared」(修正済み寄与率/修正済み決定係数)を用いた場合、
図2からαは0.3874である。
【0048】
このαを用いて、例えば
図2に示すエリアE1のエリアスコア(E1)を計算すると、エリアE1は、
図2からレスポンス実績が約0.05、予測レスポンスが約0.012であるから、
エリアスコア(E1)=0.3874×0.012+(1−0.3874)×0.05=0.0355112
となる。
【0049】
また、例えば
図2に示すエリアE2のエリアスコア(E2)を計算すると、エリアE2は、
図2からレスポンス実績が約0.022、予測レスポンスが約0.036であるから、
エリアスコア(E2)=0.3874×0.036+(1−0.3874)×0.022=0.0274236
となる。
【0050】
すなわち、
図3のグラフを見ただけでは、エリア(E1)とエリア(E2)のどちらをエリアマーケティングの対象エリアとして選択するのが良いのかが分からないが、各エリアのスコアを計算することで、エリア(E2)よりもエリア(E1)の方がエリアマーケティングの対象エリアとして有効であることが分かる。
【0051】
スコア算出部15は、以下同様にして、他の全てのエリアについて式(1)を用いてエリアスコアを計算し、その計算結果をスコア記憶部15aに記憶する。
【0052】
表示部16aは、スコア算出部15で算出され、スコア記憶部15aに記憶されたスコアの順に従って対象エリアを一覧表示する。また、印刷部16bは、スコア算出部15で算出され、スコア記憶部15aに記憶されたスコアの順に従って対象エリアの一覧表を作成し、これを用紙上に印刷して出力する。
【0053】
実施の形態1では、分析を行った全エリアのスコアを高い順にソートして一覧表示している。従って、マーケティングユーザーは、例えばチラシの配布エリアの選択に際し、広告予算等を考慮して決定したエリア数だけ、単純に上位から例えば10エリアを選択し、この上位10エリアにチラシを配布することで、広告予算内で効率の良いチラシ配布を行うことができる。この場合、エリアを選択する際に人の判断が入らないため、この業界での経験の有無等に左右されることなく、誰でも最適なエリア選択を行うことができる。
【0054】
実施の形態1によれば、レスポンス実績と予測レスポンスの両方を考慮し、これらを所定係数であるαを用いて関連付けることにより、人の動向や環境変化に対応して有効なエリアマーケティングの対象エリアを選択することができる。また、マーケティングユーザーに対して有効なエリアマーケティングを提示することができる。
【0055】
なお、上記実施の形態1では、エリアスコアの表示(出力)方法として、スコアの高い順に一覧表示しているが、以下では、他の実施の形態(実施の形態2、実施の形態3)について説明する。
【0056】
<実施の形態2>
まず、
図3に示すグラフと式(1)との関係について説明する。
【0057】
式(1)では、所定係数αとして、分析結果の「Adjusted R-squared」(修正済み寄与率/修正済み決定係数)を用いている。すなわち、係数αは、横軸である予測レスポンスに直接影響を与える係数である。
【0058】
従って、係数αが零である場合のエリアスコアは、予測レスポンスを全く考慮せず、レスポンス実績のみを考慮したスコアとなる。つまり、
図3に示すグラフの高さ方向だけを考慮することになり、エリアスコアは、高さ方向の高い位置にあるエリアほど高いスコアとなる。このことは、グラフ上の各エリアを、横軸と平行に縦軸方向にスライドさせて全て縦軸上に集約すると、縦軸上の全エリアは、高い位置から原点側に向かってエリアスコアの高い順に並ぶことになる。これを踏まえると、例えば全エリアの中から上位10エリアを選ぶ場合には、
図4に示すように、縦軸(基準直線)に直交する移動直線(この場合は横軸と平行な直線)L1をグラフの上方に引き、この移動直線L1を縦軸(基準直線)に直交した状態で(この場合には横軸と平行に)下方にスライドさせて行き、移動直線L1より上に10個のエリアが残る位置まで移動直線L1をスライドさせると、このときの移動直線L1′より上にある10個のエリアが、エリアスコアの高い上位10個のエリアに相当することになる。
【0059】
一方、係数αが1である場合のエリアスコアは、レスポンス実績を全く考慮せず、予測レスポンスのみを考慮したスコアとなる。つまり、
図3に示すグラフの横方向だけを考慮することになり、エリアスコアは、横方向の右寄りの位置にあるエリアほど高いスコアとなる。このことは、グラフ上の各エリアを、縦軸と平行に横軸方向にスライドさせて全て横軸上に集約すると、横軸上の全エリアは、右端の位置から原点側に向かってエリアスコアの高い順に並ぶことになる。これを踏まえると、例えば全エリアの中から上位10エリアを選ぶ場合には、
図5に示すように、横軸(基準直線)に直交する移動直線(この場合には縦軸に平行な直線)L2をグラフの右端に引き、この移動直線L2を横軸に直交した状態で(この場合には縦軸と平行に)左方向にスライドさせて行き、移動直線L2より右側に10個のエリアが残る位置まで移動直線L2を左側にスライドさせると、このときの移動直線L2′より右側にある10個のエリアが、エリアスコアの高い上位10個のエリアに相当することになる。
【0060】
上記説明(係数αが零である場合と1である場合の説明)からも明らかなように、予測レスポンスの係数であるαと、レスポンス実績の係数であるα−1との関係は、エリアスコアを高い順に並べるときの傾きに対応していることが分かる。
【0061】
この係数αと傾きとの関係について、より具体的に説明するために上記式(1)に当てはめて説明する。
【0062】
上記式(1)では、予測レスポンスの係数αは0.3874であり、レスポンス実績の係数(α−1)は0.6126である。
【0063】
そこで、
図6に示すように、縦軸と横軸の原点を通り、横軸方向に+0.3874移動したとき、縦軸方向に+0.6126移動するような傾きの直線(基準直線)L3を引く。この基準直線L3は、上記
図4では横軸に相当し、上記
図5では縦軸に相当する。つまり、グラフ上の各エリアを、基準直線L3と直交する方向にスライドさせて全て基準直線L3上に集約すると、基準直線L3上の全エリアは、原点から最も離れた位置から原点側に向かってエリアスコアの高い順に並ぶことになる。これを踏まえると、例えば全エリアの中から上位10エリアを選ぶ場合には、
図6に示すように、基準直線L3に直交する移動直線L4をグラフの上部に引き、この移動直線L4を基準直線L3に直交した状態で、基準直線L3に沿って原点方向にスライドさせて行き、移動直線L4より上部側(原点と反対側)に10個のエリアが残る位置まで移動直線L4をスライドさせると、このときの移動直線L4′より上部側(原点と反対側)にある10個のエリアが、エリアスコアの高い上位10個のエリアに相当することになる。
【0064】
従って、実施の形態2では、
図4乃至
図6に示したように、グラフ上に基準直線と移動直線とを引くことで、エリアマーケティングの対象エリアとして選択したエリアと、選択されなかったエリアとを移動直線によって区分し、この区分したグラフを表示部16aに表示する構成としている。この際、
図4乃至
図6では図示を省略しているが、
図3に示したように、選択したエリアの横にエリア番号(E1,E2等)を付与して表示することで、選択されたエリアがどのエリアであるのかを容易に認識することができる。
【0065】
また、表示部16aに表示した
図4乃至
図6に示すグラフを、印刷部16bより印刷して出力する構成としている。この場合、選択されたエリアと選択されなかったエリアとで、移動直線を介して表示色(印字色)を変えるようにしてもよい。この場合、実施の形態1に係るスコア順の対象エリアの一覧表も併せて印刷すればよい。これにより、マーケティングユーザーは、グラフ上で選択されたエリアの横に表示されたエリア番号とともに、一覧表も参考にして、参集的なマーケティングの対象エリアを選択することができる。
【0066】
実施の形態2によれば、分析対象である全エリアに対して、選択された対象エリアをグラフ上で目視により比較して確認することができる。また、グラフ上の移動直線を基準直線に沿って平行移動させることにより、エリアマーケティングの対象エリアの選択数を自由に変更することができ、かつ、その変更内容をグラフ上で目視によって容易に確認することができる。
【0067】
<実施の形態3>
実施の形態2では、選択したエリアマーケティングの対象エリアをグラフ上に表示することで、ユーザーにとって見易い表示形態となっているが、選択したエリアが地図上でどのように分布しているのかをイメージすることは難しい。
【0068】
そこで、実施の形態3では、選択したエリアマーケティングの対象エリアを地図上に重ねて表示(及び印刷)することで、例えばチラシを配布するマーケティングユーザーにとって、選択されたチラシ配布エリアをよりイメージとして把握し易くしたものである。
【0069】
図7は、表示の一例として、分析対象エリアを大阪市全体とし、大阪市の各区を一つのエリアとして設定した場合を例示しており、チラシの配布エリアとして選択されたエリア(エリアスコアの高いエリア)の表示色を他のエリアの表示色と変えている。
図7では、選択されたエリアに斜線を付して表示色の違いを示している。この例では、旭区、北区、福島区、中央区、阿倍野区が、エリアスコアの高いエリアとして選択されたことを示している。
【0070】
以上説明したように、本発明に係るスコア選択装置及びスコア選択方法によれば、実績値であるレスポンス実績と予測値である予測レスポンスの両方を考慮し、これらを所定係数αを用いて関連付けることにより、人の動向や環境変化に対応したエリアマーケティングの対象エリアを選択することができる。この場合、上記実施の形態2で説明したように、αの値によって基準直線の傾斜角度が微妙に変化し、その結果、この基準曲線上に集約される全エリアの順序(すなわち、エリアスコアの順序)も微妙に入れ代わることになる。つまり、係数αをどのように設定するかが重要である。上記実施の形態では、分析部13で分析した結果得られた決定係数をそのままαとして利用しているが、これに何らかの補正を加えて傾斜角度を変化させ、エリアスコアの順序を微妙に変更させることも可能である。この補正は、例えばエリアスコアの決定後、この装置を操作する操作者が経験と勘とに基づいて補正を加えるようにしてもよい。この場合には、図示しない操作部から補正後の数値を入力することで、スコア算出部15がその数値を計算に反映させるように構成すればよい。
【0071】
なお、今回開示した実施の形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本発明の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【解決手段】エリア毎の過去の実績値をレスポンス実績として記憶する実績値記憶部11と、エリア属性データを記憶する属性データ記憶部12と、前記エリア属性データと前記レスポンス実績との因果関係を定量的に分析する分析部13と、分析結果に基づくエリア毎の予測値を予測レスポンスとして記憶する予測値記憶部14と、前記レスポンス実績と前記予測レスポンスとに所定係数を乗じて加えることによってエリア毎のスコアを算出するスコア算出部15と、スコア算出部15により算出された全アリアのスコアを記憶するスコア記憶部15aと、スコア記憶部15aに記憶されている全エリアのスコアに基づいてエリアマーケティングの対象エリアを選択して出力する出力部16と、を備えている。