【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明の内容がこれにより限定されるものではない。
【0055】
<黒液の製造>
(実施例1)
黄色たばこ茎およびバーレーたばこ茎の粗砕品1gと、2N NaOH水溶液50mLを耐圧容器に封入し、撹拌しながら180℃まで加熱した後、3時間保持した。その後、容器ごと冷却し、黒液と残渣(すなわちたばこ繊維)とをガラスフィルターによりろ過し、分離回収した。黒液に含まれる香味成分量をGCMSにより測定し、たばこ原料1gから生成した香味成分量とした。
【0056】
黒液に含まれる香味成分量は以下の方法により測定した。
【0057】
〔黒液の前処理〕
黒液に内標(p−BPA:50μg)を添加し、純水で全量40mlに調整後、1N HCl水溶液を加えてpHが2±0.1となるよう調整した。pH調整後の黒液をあらかじめジエチルエーテル(20ml)→メタノール(20ml)→0.01N HCl水溶液(20ml)でコンディショニングした固相抽出カラムOasis HLB 1g/20cc(Waters製)に全量通液し、さらにジエチルエーテルを通液して回収液を得た。得られた回収液を常圧にて濃縮後、ジエチルエーテルでメスアップし、分析試料を得た。得られた分析試料のGCMS分析は、以下の方法により行った。
【0058】
〔GCMS分析〕
GCMS分析は、HP6890 GCシステム、5973N質量分析計、およびDB−FFAPカラム(30m, 0.2mm, 0.25μm)(いずれもAgilent製)を用いて行った。詳細な分析条件は、以下の表Aに示す。
【表A】
【0059】
結果を、以下の表1に示す。表1に香味成分として挙げた化合物は、シガレットの香喫味に影響を及ぼすと考えられている化合物である。
【表1】
【0060】
(実施例2)
バーレーたばこ茎の粗砕品1gと、2N NaOH水溶液50mLとを耐圧容器に封入し、撹拌しながら所定の温度に加熱した後、一定時間保持した。加熱温度は130℃、150℃および180℃とし、保持時間は5〜320分の範囲で変化させた。その後の冷却工程および分離回収工程は、実施例1と同様に行った。黒液中に含まれるバニリンの量をGCMSにより測定し、たばこ原料1gから生成したバニリン量とした。また、分離された残渣の重量を測定し、たばこ原料1gから得られた残渣量とした。その結果を、
図2A、
図2Bに示す。
【0061】
図2Aは、蒸解処理の時間および温度と、バニリン生成量との関係を示す図である。
図2Bは、蒸解処理の時間および温度と、残渣量との関係を示す図である。
図2Aからは、測定した範囲内であれば、蒸解温度が高いほど、また、処理時間が長いほど、黒液中に含まれるバニリンの量が多くなる傾向にあることが分かる。
図2Bからは、測定した範囲内であれば、蒸解温度が高いほど、また処理時間が長いほど、分離される残渣量が少なくなる傾向にあることが分かる。
【0062】
(実施例3)
バーレーたばこ茎の粗砕品1gと、2N NaOH水溶液50mLまたは10mLとを耐圧容器に封入し、撹拌しながら180℃に加熱した後、所定の時間保持した。保持時間は5〜320分の範囲で変化させた。その後の冷却工程および分離回収工程は、実施例1と同様に行った。黒液中に含まれるバニリンの量および分離された残渣の重量を、実施例2と同様に測定した。その結果を、
図3A、
図3Bに示す。
【0063】
図3Aは、蒸解処理の時間および固液比と、バニリン生成量との関係を示す図である。
図3Bは、蒸解処理の時間および固液比と、残渣量との関係を示す図である。ここで、たばこ原料1g当り2N NaOH水溶液を50mL使用した場合には、固液比1:50とし、たばこ原料1g当り2N NaOH水溶液を10mL使用した場合には、固液比1:10とした。
【0064】
図3Aからは、使用するアルカリ水溶液の量が多い方が、黒液中に含まれるバニリンの量が多くなる傾向にあることが分かる。また、
図3Bからは、差は顕著ではないものの、使用するアルカリ溶液の量が多い方が、分離される残渣量が少なくなる傾向にあることが分かる。
【0065】
(実施例4)
バーレーたばこの茎の粗砕品1gと、アルカリ水溶液50mLとを耐圧容器に封入し、撹拌しながら180℃に加熱した後、所定の時間保持した。保持時間は5〜320分の範囲で変化させた。アルカリ水溶液としては、2N NaOH(pH14.3)水溶液、0.5N NaOH水溶液(pH13.6)、0.1N NaOH水溶液(pH12.9)、0.05N NaOH水溶液(pH12.6)、0.01N NaOH水溶液(pH12.0)、2N KOH水溶液(pH14.3)、0.1N KOH水溶液(pH12.9)、または4mol/kg K
2CO
3水溶液(pH12.5)を使用した。その後の冷却工程および分離回収工程は、実施例1と同様に行った。黒液中に含まれるバニリンおよびシリンガアルデヒド量をGCMSにより測定し、たばこ原料1gから生成したバニリン量およびシリンガアルデヒド量とした。また、分離された残渣の重量を測定し、たばこ原料1gから得られた残渣量とした。その結果を、
図4A、
図4B、
図4Cに示す。
【0066】
図4Aは、蒸解処理の時間ならびに使用する薬液の種類および濃度と、バニリン生成量との関係を示す図である。
図4Bは、蒸解処理の時間ならびに使用する薬液の種類および濃度と、シリンガアルデヒド生成量との関係を示す図である。
図4Cは、蒸解処理の時間ならびに使用する薬液の濃度と、残渣量との関係を示す図である。
【0067】
より多くの香味成分量を含む黒液を得るという観点で
図4Aおよび
図4Bを参照すると、蒸解処理のための薬液は、0.1N以上の濃度で使用することが好ましく、0.5N以上の濃度で使用することがより好ましいことが分かる。また、pH12.9〜14.3の条件下で蒸解処理を行うことが好ましいことも分かる。これらのことから、蒸解処理は、強アルカリ性で行うことが好ましいと言える。また、
図4Cからは、使用する薬液のアルカリ性が強い方が、分離される残渣量が少なくなる傾向にあることが分かる。
【0068】
(実施例5:蒸解処理により得られる揮発性成分量の比較)
以下に示す黒液のサンプルA〜Dについて、バニリン生成量をGCMSにより測定した。その結果を、
図5に示す。
図5において、バニリン生成量は、たばこ原料1gから生成した量として示されている。
【0069】
(サンプルA:実施例1)
実施例1において、たばこ原料としてバーレーたばこ茎の粗砕品1gを使用したものを、サンプルAとした。
【0070】
(サンプルB:酸素封入)
バーレーたばこ茎の粗砕品と2N NaOH水溶液とを、固液比1:50(たばこ原料1g当りNaOHを50mL使用)(以下同様)で耐圧容器に封入し、容器内にゲージ圧が0.1MPaとなるように酸素を封入した。これを撹拌しながら、180℃まで加熱した後、3時間保持した。その後の冷却工程および分離回収工程は、実施例1と同様に行った。
【0071】
(サンプルC:中性亜硫酸塩法)
バーレーたばこ茎の粗砕品700g、Na
2SO
3210g、NaOH26.6g、アントラキノン0.35gと水2.1Lとを耐圧容器に封入し(固液比1:3)、これを撹拌しながら179℃まで加熱し、6時間保持した。その後の冷却工程および分離回収工程は、実施例1と同様に行った。
【0072】
(サンプルD:酸性亜硫酸塩法)
バーレーたばこ茎の粗砕品500gと蒸解薬液2L(SO
29重量%、Ca(OH)
2 1.32重量%)とを耐圧容器に封入し(固液比1:4)、158℃まで加熱した後、6時間保持した。その後、容器ごと冷却し、黒液と残渣(すなわちたばこ繊維)とをガラスフィルターによりろ過し、分離回収した。得られた黒液に、2N NaOHの濃度となるようにNaOHを加え、これを耐圧容器に封入して180℃で3時間加熱した。冷却後、黒液を回収した。
【0073】
図5より、本発明の方法(サンプルAおよびB)によると、中性亜硫酸塩法および酸性亜硫酸塩法により蒸解処理した場合(サンプルCおよびD)と同様にバニリンを含む黒液が得られることが分かる。特に、酸素を封入した場合には(サンプルB)、短時間で非常に高い量のバニリンを含む黒液が得られた。
【0074】
(実施例6:酸素封入条件下での蒸解処理により得られる揮発性成分量の比較)
バーレーたばこ茎の粗砕品700gに対し2N NaOH水溶液を各々2.1L、3.5L、7Lを添加し、固液比が各々1:3、1:5、1:10となるようサンプルを調整した。それらを耐圧容器に封入し、さらに耐圧容器内部の空気を0.4MPa(ゲージ圧)の酸素で置換した。耐圧容器を撹拌しながら150℃まで加熱した後、3時間保持した。その後、耐圧容器ごと冷却し、黒液と残渣(すなわちたばこ繊維)とをガラスフィルターによりろ過し、分離回収した。黒液に含まれるバニリン量をGCMSにより測定し、たばこ原料1gからのバニリン生成量とした。その結果を、
図6に示す。
図6より、固液比が1:5以上のときに特にバニリン生成量が高いことが分かる。
【0075】
(実施例7:酸素封入条件下での蒸解処理により得られる揮発性成分量の比較)
バーレーたばこ茎の粗砕品700gと2N NaOH水溶液7Lを耐圧容器に封入し、さらに耐圧容器内部の空気を各々0.1MPa、0.3MPa、0.4MPa(ゲージ圧)の酸素で置換した。耐圧容器を撹拌しながら150℃まで加熱した後、各々1時間、3時間、6時間保持した。その後、耐圧容器ごと冷却し、黒液と残渣(すなわちたばこ繊維)とをガラスフィルターによりろ過し、分離回収した。黒液に含まれるバニリン量をGCMSにより測定し、たばこ原料1gからのバニリン生成量を算出した。その結果を、
図7に示す。
図7より、置換した酸素の圧力が高いほど、バニリン生成量が高いことがわかる。
【0076】
(実施例8:空気圧入条件下での蒸解処理により得られる揮発性成分量の比較)
バーレーたばこ茎の粗砕品5gと2N NaOH水溶液50mLを耐圧容器に封入し、さらに耐圧容器内部に空気を0.5MPa(ゲージ圧)となるよう圧入した。耐圧容器を撹拌しながら150℃まで加熱した後、3時間保持した。その後、耐圧容器ごと冷却し、黒液と残渣(すなわちたばこ繊維)とをガラスフィルターによりろ過し、分離回収した。比較として、空気の圧入は行わず、その他の条件は同一で上記と同様に処理を実施した。各々の黒液に含まれるバニリン量をGCMSにより測定し、たばこ原料1gからのバニリン生成量を算出した。その結果を、
図8に示す。
図8より、空気の圧入を行うことにより高酸素雰囲気な条件下で反応を行った場合の方が、空気の圧入を行わない場合よりも、バニリン生成量が高いことがわかる。
【0077】
<香味成分含有液の製造>
(実施例9:溶媒抽出による黒液の脱塩)
実施例1で得られた黒液に塩酸を加え、pH7以下となるように中和した。中和した黒液および等量の酢酸エチルを分液漏斗に入れ、よく撹拌した。しばらく静置した後、有機層を回収した。有機層をロータリーエバポレーターを用いて濃縮し、酢酸エチルを除去した。得られた乾固物に適量のエタノールを加え、甘い香りを有する香味成分含有液を得た。得られた香味成分含有液に含まれるバニリン濃度をGCMSにより測定し、もとの黒液からのバニリン回収率を算出した。その結果を表3に示す。
【0078】
(実施例10:合成吸着剤による黒液の脱塩)
実施例6のうち、固液比1:10の条件で得られた黒液に塩酸を加え、pH7以下となるように中和した。中和した黒液440mLを、スチレン系合成吸着剤(アンバーライトXAD4、オルガノ株式会社)30mLを充填したカラムに通液した後、純水を通液して合成吸着剤を洗浄し、さらにエタノール240mLを通液し、全量を回収した。回収したエタノール溶液に含まれるバニリン濃度をGCMSにより測定し、もとの黒液からのバニリン回収率を算出した。その結果を表3に示す。
【0079】
(実施例11:イオン交換による黒液の脱塩)
実施例1で得られた黒液を水で10倍に希釈し、陽イオン交換樹脂(アンバーライトIRC76、オルガノ株式会社)を充填したカラムに通した。カラムを通過した液を回収してpHを測定したところ、pHが2〜6以下の画分が得られたことから、これらの画分では黒液中のNa
+イオンがH
+イオンに交換されたことがわかった。また、これらの画分に含まれるバニリン濃度をGCMSにて測定したところ、その濃度はカラム通過前の黒液とほぼ同等であった。もとの黒液からのバニリン回収率を算出し、その結果を表3に示す。
【0080】
(実施例12:減圧濃縮による脱塩および黒液中のバニリン量の変化)
減圧濃縮による脱塩および黒液中のバニリン量がどのように変化するのかを、モデル水溶液を使用して以下のように調べた。
【0081】
モデル水溶液(2mol/L NaCl、バニリン0.221g)20gを、エバポレーターを用いて50℃で減圧濃縮し、乾固させた。得られた乾固物をエタノールに溶解し、ろ紙を用いてろ過した。得られた回収液のバニリン濃度をGCMSにより測定した。減圧濃縮前のモデル溶液に含まれるバニリン量と減圧濃縮後の溶液に含まれるバニリン量とを比較することにより、バニリン回収率を算出した。その結果を表2および表3に示す。
【0082】
上記試験(実施例8〜12)の結果を、以下の表2および表3に示す。
【表2】
【表3】
【0083】
表2、3から、合成吸着剤による黒液の脱塩がバニリン回収率が最も高く、本発明における脱塩方法として好適であることがわかる。また、表2、3から、合成吸着剤による脱塩以外の脱塩方法についても良好なバニリン回収率が得られていることが分かる。従って、脱塩を行うことによるバニリンの損失量は、僅かであり、脱塩工程は、本発明の効果(すなわち、香味成分を含む香味成分含有液の調製)に影響を及ぼさないと言える。
【0084】
<たばこ充填材の製造>
(実施例13)
実施例9で得られた香味成分含有液を、バーレーたばこ茎から得られたたばこ繊維で作製したたばこベースシートにスプレー塗工し、乾燥した。乾燥したシートたばこを裁刻し、たばこ充填材を得た。
【0085】
<シガレットの製造>
(実施例14)
実施例13で得られたたばこ充填材をたばこ刻(90重量%)に10重量%配合し、手巻きシガレットを作製した。作製したシガレットを喫煙すると、バニラ様の香味が感じられた。