特許第6019223号(P6019223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019223
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】電着塗料組成物、電着塗料組成物用触媒
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20161020BHJP
   C09D 5/44 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   C09D201/00
   C09D5/44 A
【請求項の数】3
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-517540(P2015-517540)
(86)(22)【出願日】2015年3月20日
(86)【国際出願番号】JP2015058532
(87)【国際公開番号】WO2015166745
(87)【国際公開日】20151105
【審査請求日】2015年4月7日
(31)【優先権主張番号】特願2014-92739(P2014-92739)
(32)【優先日】2014年4月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227342
【氏名又は名称】日東化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 眞一
(72)【発明者】
【氏名】和崎 隆博
(72)【発明者】
【氏名】中川 侑哉
(72)【発明者】
【氏名】羽田 英男
(72)【発明者】
【氏名】中田 誠
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−501774(JP,A)
【文献】 特開2002−129100(JP,A)
【文献】 特開2007−084727(JP,A)
【文献】 特表2009−508985(JP,A)
【文献】 特開2006−057025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
B01J 23/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスマス化合物(A)を含有する電着塗料組成物用触媒であって、
前記ビスマス化合物は、下記化学式(2)又は下記化学式(3)で表される少なくとも一種のビスマス化合物である、電着塗料組成物用触媒。
化学式(2):
【化2】
(式中、Rは、互いに同一又は異なって、炭化水素基を表し、かつ、2つのRの炭素数合計は4以上である。Rは、水素原子、アルキル基、アシル基、−Bi−(O−R)の何れかであるか、又は2つのRがBi原子で置換されて2つの酸素原子を連結する。aは1又は2を表す。)
化学式(3):
【化3】
(式中、Rは、互いに同一又は異なって、炭化水素基を表し、かつ、2つのRの炭素数合計は4以上である。Rは、水素原子、アルキル基、アシル基、−Bi−(O−R)の何れかであるか、又は2つのRがBi原子で置換されて2つの酸素原子を連結する。bとcは、1以上の整数を表す。添字bが付された基と、添字cが付された基の並び順は任意である。)
【請求項2】
請求項1に記載の電着塗料組成物用触媒と基体樹脂(B)とを含有する電着塗料組成物。
【請求項3】
前記基体樹脂(B)がブロックイソシアネート基を含有するか、前記電着塗料組成物がブロックポリイソシアネート化合物からなる硬化剤(C)を含有する、請求項に記載の電着塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機錫化合物を含まず、現行と同等の焼き付け条件にて良好な塗膜の硬化性を確保することができる有機錫フリーの電着塗料組成物、及びこの組成物に含有され且つ架橋反応を促進する触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料を腐蝕から保護しその美感を使用期間中維持するため、その表面には一般に塗装が施される。電着塗装は、自動車、電気器具等、袋部構造を有する部材に対し、エアースプレー塗装や静電スプレー塗装と比較して、付き回り性に優れ、また環境汚染性も少ないことから、プライマー塗装として広く実用化されるに至っている。特にカチオン電着塗装は、連続的に塗装することができるので、自動車車体等の大型で、高い耐食性が要求される被塗物の下塗り塗装方法として汎用されている。
【0003】
カチオン電着塗装は、一般にカチオン性樹脂および硬化剤を含むバインダー成分を、有機酸等の中和剤を含む水性媒体中に分散させてなるカチオン電着塗料組成物中に被塗物を陰極として浸漬させ、電圧を印加することにより行われる。
【0004】
塗装の過程において電極間に電圧を印加すると、電気化学的な反応により陰極(被塗物)表面で電着塗膜が析出する。このように形成された電着塗膜にはカチオン性樹脂とともに硬化剤が含まれるので、電着塗装終了後、当該塗膜を焼き付けることによって、塗膜が硬化し、所望の硬化塗膜が形成される。
【0005】
カチオン電着塗料組成物に使用されるカチオン性樹脂としては、耐食性の観点から、アミン変性エポキシ樹脂が使用され、硬化剤として、ポリイソシアネートをアルコール等のブロック剤でブロックしたブロックポリイソシアネート等が使用されてきた。
【0006】
さらに、塗膜の諸性能の目安である硬化性を向上させるために、硬化剤による架橋反応を促進する触媒を添加することが行われ、代表的な触媒として、有機錫化合物が使用されてきた。
【0007】
しかし、有機錫化合物は、塗装ラインの焼き付け炉の脱臭触媒被毒の原因となり得、また、昨今の有機錫化合物に対する環境規制動向から今後の使用が制限される可能性もあるため、有機錫化合物に代わる触媒を使用するカチオン性電着塗料組成物の開発が強く望まれてきた。
【0008】
前記有機錫化合物の代替触媒として、ほう酸亜鉛、4級アンモニウム有機酸塩、亜鉛化合物などを用いたカチオン性電着塗料組成物が提案されている。(特許文献1〜3)しかし、これらの化合物では、触媒としての効果が不十分であり、硬化性、防食性は実用的に満足できるものではない。
また、金属キレート化合物、酸素含有配位子を有する四価の有機チタン・ジルコニウム・ハフニウム錯体、ジルコニウム・チタン等のフルオロ金属イオンを含有するカチオン性電着塗料組成物が提案されている。(特許文献4〜6)しかし、これらの化合物だけでは、塗膜硬化性が不十分なため有機錫化合物を併用する必要があった。
さらに、ビスマスアセチルアセトン錯体も提案されているが(特許文献7)、分散ペースト中での貯蔵安定性が悪いため、一定期間貯蔵すると触媒硬化性能が大幅に低下したり、貯蔵中に増粘ゲル化を起こしたりする問題があった。
このように、有機錫化合物を含まず、現行と同等の焼き付け条件にて良好な塗膜の硬化性を確保することができるカチオン電着塗料組成物はこれまでになかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−331130号公報
【特許文献2】特開平11−152432号公報
【特許文献3】特開2000−336287号公報
【特許文献4】特開平2−265974号公報
【特許文献5】特表2011−513525号公報
【特許文献6】特開2006−257268号公報
【特許文献7】特開2002−129100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、有機錫化合物を含まず、現行と同等の焼き付け条件にて良好な塗膜の硬化性を確保することができる有機錫フリーのカチオン電着塗料組成物及びこの組成物用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、ビスマス化合物(A)を含有する電着塗料組成物用触媒であって、
前記ビスマス化合物は、下記化学式(1)で表されるβジケトンから調製した配位子を有する化合物である、電着塗料組成物用触媒が提供される。
化学式(1):
【化1】

(式中、Rは、互いに同一又は異なって、炭化水素基を表し、かつ、2つのRの炭素数合計は4以上である。)
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、多くの物質について触媒性能を評価したところ、上記ビスマス化合物(A)が非常に優れた特性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明者らは表1に示すように、化学式(1)中の2つのRの炭素数の合計が4以上である種々のβジケトンからビスマス化合物(A)を製造して、その触媒活性を調べたところ、優れた結果が得られた。そこで、ビスマス化合物(A)の水系媒体中での安定性を調べるため、触媒ペーストを35℃30日間保存し再度電着塗装して触媒活性を確認したところ、表3に示すように、優れた結果が得られることが分かった。
【0014】
従来技術のビスマスアセチルアセトン錯体は、化学式(1)中の2つのRの炭素数の合計が2であるβジケトンであるアセチルアセトンから得られる化合物である。比較例1〜4に示すように、水系媒体中の安定性が悪いためか、触媒ペーストを35℃30日間保存した触媒ペーストを使用して電着塗装を実施して触媒活性を調べたところ、良好な結果を示さなかった。
【0015】
また、上記触媒活性が本発明のビスマス化合物(A)に特有の特性であるかどうかを調べるために、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、酢酸酸化ビスマスについても35℃30日間保存した触媒ペーストを使用して電着塗装を実施して触媒活性を調べたところ、比較例5〜7に示すように良好な結果を示さなかった。
【0016】
以上の結果により、本発明のビスマス化合物(A)が示す優れた触媒活性、水系媒体中の安定性、触媒ペースト中の安定性は、ビスマス化合物(A)に特有のものであることが分かった。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、有機錫化合物を使用せずに、これを配合した場合と同等ないしはそれ以上の硬化性、防食性、仕上がり性に優れたカチオン性電着塗料組成物及びこの組成物用触媒を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細を説明する。
本発明の電着塗料組成物は、ビスマス化合物(A)を含有する電着塗料組成物用触媒と、基体樹脂(B)を含有する。
【0019】
<電着塗料組成物用触媒>
本発明の電着塗料組成物用触媒は、ビスマス化合物(A)を含有する。
【0020】
<<ビスマス化合物(A)>>
ビスマス化合物(A)は、下記化学式(1)で表されるβジケトンから調製した配位子を有する化合物である。
【0021】
化学式(1):
【化1】

(式中、Rは、互いに同一又は異なって、炭化水素基を表し、かつ、Rの炭素数合計は4以上である。)
【0022】
で示される炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ドデカニル基、オクタデカニル基などの飽和炭化水素基、ビニル基、アリル基、プレニル基、クロチル基、シクロペンタジエニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、置換基を有するアリール基などの不飽和炭化水素基が挙げられる。これらのうち、炭素数1〜12の炭化水素基が好ましく、メチル基、フェニル基、置換基を有するアリール基が特に好ましい。
また、2つのRの炭素数合計が4以上となるRの組合せとしては、メチル基と炭素数が3以上の炭化水素基の組み合わせ、炭素数が2以上の炭化水素基と炭素数が2以上の炭化水素基の組み合わせが挙げられ、具体的には、例えば、エチル基とエチル基、メチル基とt−ブチル基、メチル基とフェニル基、フェニル基とフェニル基、4-t-ブチルフェニル基と4-メトキシフェニル基などが挙げられる。
【0023】
ビスマス化合物(A)は、好ましくは、下記化学式(4)で表される基を有する少なくとも一種のビスマス化合物である。
化学式(4):
【化4】

(式中、Rは、化学式(1)と同様である。)
【0024】
ビスマス化合物(A)は、より好ましくは、下記化学式(5)で表される少なくとも一種のビスマス化合物である。
化学式(5):
【化5】

(式中、Xは、−OR、又は前記化学式(1)のβジケトンに由来する1,3−ジカルボニレートであり、複数個のXのうちの少なくとも1つが前記1,3−ジカルボニレートであり、Rは、水素原子、アルキル基、アシル基、−Bi−Xの何れかであるか、又は2つのRがBi原子で置換されて2つの酸素原子を連結する。)
【0025】
ビスマス化合物(A)は、より好ましくは、下記化学式(2)又は化学式(3)で表される一種のビスマス化合物である。
【0026】
化学式(2):
【化2】

(式中、Rは、化学式(1)と同様である。Rは、水素原子、アルキル基、アシル基、−Bi−(O−R)の何れかであるか、又は2つのRがBi原子で置換されて2つの酸素原子を連結する。aは、1、2又は3の整数を表す。)
【0027】
化学式(3):
【化3】

(式中、Rは、化学式(1)と同様である。Rは、化学式(2)と同様である。bとcは、1以上の整数を表す。)
【0028】
又はRで示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、オクタデカニル基などが挙げられ、炭素数1〜18のものが好ましい。
又はRで示されるアシル基としては、例えば、アセチル基、グルコロイル基、プロピオニル基、ラクトイル基、ブチリル基、ベンゾイル基、置換基を有する芳香族アシル基、オクタノイル基、2−エチルヘキサノイル基、ステアロイル基などが挙げられ、炭素数1〜18のものが好ましい。また、マロニル基、スクシニル基、アジポロイル基等の二塩基酸アシル基として同じBi原子に結合していても良く、異なるBi原子間に結合していても良い。
【0029】
で示される−Bi−(O−R)としては、例えば、ビスマス原子を介して、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基を有するものが挙げられる。また、2つのRがBi原子で置換されて2つの酸素原子を連結することによって架橋又は環化されてもよい。
【0030】
ビスマス化合物(A)中のビスマス原子数は、特に限定されないが、例えば1〜1000であり、1〜200が好ましく、1〜50がより好ましい。
【0031】
前記ビスマス化合物(A)の製造方法は、特に限定されないが、例えば、上記化学式(1)で表されるβジケトンと、ビスマスアルコキシド又は酸化ビスマスとを反応させることによって製造することができる。ビスマス化合物(A)は、具体的には、以下の方法により製造することができる。
【0032】
例えば、ビスマストリアルコキシドと前記βジケトンをモル比0.1〜10、好ましくは0.2〜3.3の範囲で反応させる。ビスマストリアルコキシドとしては、例えば、ビスマストリメトキシド、ビスマストリエトキシド、ビスマストリイソプロポキシド、ビスマストリブトキシド等が挙げられる。
反応溶媒は特に制限がないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、DMF等のアミド系溶媒、DMSO等のスルホキシド系溶媒等の単独溶媒、それらの混合溶媒が挙げられる。反応温度は特に制限がないが、通常、0〜200℃の範囲で反応させる。反応系で生成するアルコールを反応系外に留出させても良い。また、反応液に水やカルボン酸を添加しても良い。このようにして得られた反応液を濃縮してビスマス化合物(A)を得ることができる。必要に応じて、蒸留、昇華、溶媒による洗浄、再沈殿、再結晶等により精製することもできる。ビスマス化合物(A)は、反応条件等によって実質的に単一のビスマス化合物になる場合もあれば、複数のビスマス化合物の混合物になる場合もある。このような混合物から特定の化合物を単離して触媒として用いてもよく、混合物をそのまま触媒として用いてもよい。どちらの場合であっても触媒として機能する。
【0033】
本発明の電着塗料組成物中におけるビスマス化合物(A)の含有量は、特に制限されないが、通常、電着塗料組成物中の基体樹脂(B)と硬化剤(C)の合計固形分100質量部に対して、0.2〜10質量部、好ましくは、0.4〜4.0質量部である。添加量が前記範囲外であっても特に塗料性能に大きな問題は生じないが、上記0.2〜10質量部の範囲内であれば、硬化性、防食性、電着塗料の安定性等の実用的なバランスが良くなる。
【0034】
本発明における電着塗料組成物には、前記ビスマス化合物(A)及び基体樹脂(B)のほかに、必要に応じて、硬化剤(C)、金属化合物(D)、中和剤(E)、その他の添加剤等を配合することができる。
【0035】
<<基体樹脂(B)>>
基体樹脂(B)としては、エポキシ系、アクリル系、ポリブタジエン系、アルキド系、ポリエステル系などのいずれの樹脂でもカチオン性基を導入することにより使用することができる。なかでも、カチオン性基を有するエポキシ変性樹脂が好ましい。
【0036】
上記エポキシ変性樹脂は、出発原料であるエポキシ樹脂が有するエポキシ環を、1級アミン、2級アミン等のアミン類、3級アミンと酸との反応生成物である4級アンモニウム塩、スルフィドと酸との混合物等との反応によって開環して製造される。なお、本明細書における「カチオン性基」とは、そのもの自身がカチオンであるもの及び酸を加えることによってカチオンとなるものを意味する。
【0037】
上記エポキシ変性樹脂の製造に使用されるポリエポキシド化合物は、エポキシ基を1分子中に少なくとも2個有する化合物であり、一般に少なくとも200、好ましくは、400〜4000、更に好ましくは、800〜3000の範囲の数平均分子量を有するものが適しており、特に、ポリフェノール化合物とエピクロロヒドリンとの反応によって得られるものが好ましい。
【0038】
前記ポリエポキシド化合物の形成のために用い得るポリフェノール化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等を挙げることができる。
【0039】
前記ポリエポキシド化合物は、ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアミドアミン、ポリカルボン酸、ポリイソシアネート化合物などと一部反応させたものであっても良い。また、前記ポリエポキシド化合物は、更に、ε―カプロラクトン、アクリルモノマーなどをグラフト重合させたものでも良い。
【0040】
エポキシ環を開環し、アミノ基を導入する際に使用するアミン類としては、例えば、ブチルアミン、オクチルアミン、モノエタノールアミン、2-(2-アミノエトキシ)エタノール等の1級アミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、ジエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン等の2級アミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン等のポリアミン、アミノエチルエタノールアミンメチルイソブチルケチミン等のケチミンブロック1級アミノ基含有2級アミンも使用することができる。
【0041】
また、N,N−ジメチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン等の3級アミンと酸の反応生成物である4級アンモニウム塩をエポキシ環の開環に使用することができる。
【0042】
スルフィドと酸との混合物との反応によってエポキシ環を開環する例として、ジエチルスルフィド、ジプロピルスルフィド、ジブチルスルフィド、ジフェニルスルフィド、エチルフェニルスルフィド、テトラメチレンスルフィド、チオジエタノール、チオジプロパノール、チオジブタノール、1-(2-ヒドロキシエチルチオ)-2-プロパノール、1-(2-ヒドロキシエチルチオ)-2,3-プロパンジオール、1-(2-ヒドロキシエチルチオ)-2-ブタノール等が挙げられる。
【0043】
前記で使用する酸の例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、ジメチロールプロピオン酸、スルファミン酸等が挙げられる。
【0044】
基体樹脂(B)は、外部架橋型及び内部(又は自己)架橋型のいずれのタイプのものであってもよい。架橋反応は、架橋部と、これと反応する活性水素含有部(例:アミノ基、水酸基)とが必要であるので、架橋部と活性水素含有部の両方が基体樹脂(B)に含まれている場合には内部架橋型となり、これらのうちの一方のみが基体樹脂(B)に含まれている場合には外部架橋型となる。
【0045】
内部架橋型のタイプとしては、例えば、基体樹脂(B)の分子中に、ブロックイソシアネート基等を導入したものが挙げられる。基体樹脂(B)中へのブロックイソシアネート基の導入方法は、既知の方法を用いることができ、例えば、部分ブロックしたポリイソシアネート化合物中の遊離のイソシアネート基と基体樹脂中の活性水素含有部とを反応させることによって導入することができる。
【0046】
<<硬化剤(C)>>
前記基体樹脂(B)が外部架橋型の樹脂の場合、併用される硬化剤(C)としては、架橋部を有する架橋剤(例:ブロックポリイソシアネート化合物)や、活性水素含有部を有する化合物(例:アミノ基、水酸基等を含有する樹脂)が挙げられる。より具体的には、基体樹脂(B)に活性水素含有部が含まれている場合には、硬化剤として架橋剤を用いることが好ましく、基体樹脂(B)に架橋部が含まれている場合には、硬化剤として活性水素含有部を有する化合物を用いることが好ましい。
【0047】
ブロックポリイソシアネート化合物は、各々理論量のポリイソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤とを付加反応させて得ることができる。
【0048】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートなどの芳香族、又は脂肪族のポリイソシアネート化合物、及びこれらのイソシアネート化合物の過剰量にエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物を反応させて得られる末端イソシアネート含有化合物を挙げることができる。
【0049】
イソシアネートブロック剤としては、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に付加してブロックするものであり、そして付加によって生成するブロックポリイソシアネート化合物は常温において安定で且つ約100〜200℃に加熱した際、ブロック剤を解離して遊離のイソシアネート基を再生しうるものであることが望ましい。
【0050】
ブロック剤としては、例えば1−クロロ−2−プロパノール、エチレンクロルヒドリン等のハロゲン化炭化水素類、フルフリルアルコール、アルキル基置換フルフリルアルコール等の複素環式アルコール類、フェノール、m−クレゾール、p−ニトロフェノール、p−クロロフェノール、ノニルフェノール等のフェノール類、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、アセトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、マロン酸ジエチル等の活性メチレン化合物類、ε−カプロラクタム等のラクタム類、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、2−エチルヘキサノール等の脂肪族アルコール類、ベンジルアルコール等の芳香族アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類等を挙げることができる。
【0051】
アルコール類及びグリコールエーテル類のブロック剤解離温度は、オキシム類、活性メチレン化合物類、ラクタム類の解離温度よりも高い。しかし、アルコール類及びグリコールエーテル類は、他のブロック剤と比較して安価のため、自動車車体等の大型で経済性が要求される分野において一般的に使用されている。
【0052】
前記、基体樹脂(B)/硬化剤(C)の固形分質量比は、好ましくは20/80〜90/10、より好ましくは30/70〜80/20である。
【0053】
<<金属化合物(D)>>
金属化合物(D)としては、例えば、チタン、亜鉛、鉄、マグネシウム、アルミニウム、カルシウムからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物が挙げられる。
チタン化合物としては、例えば、WO2013/125562,WO2013/137174に記載の化合物が挙げられる。チタン化合物は、単独で本発明の電着塗料組成物に添加しても良いし、前記特許記載の方法で、ビスマス化合物(A)とチタン化合物の複合触媒を調製して、該複合触媒から電着塗料組成物を調製しても良い。
亜鉛化合物としては、例えば、酢酸亜鉛、乳酸亜鉛、ジメチロールプロピオン酸亜鉛、安息香酸亜鉛等の無置換及び種々の置換基を有する脂肪族及び芳香族カルボン酸亜鉛、2,4−ペンタンジオン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン等の1,3−ジカルボニル化合物から調製した配位子を有する亜鉛キレート錯体などが挙げられる。
鉄化合物としては、例えば、トリス(2−エチルヘキサン酸)鉄(III)等のカルボン酸塩、2,4−ペンタンジオン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン等の1,3−ジカルボニル化合物から調製した配位子を有する鉄キレート錯体などが挙げられる。
マグネシウム化合物としては、例えば、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム等のカルボン酸塩、2,4−ペンタンジオン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン等の1,3−ジカルボニル化合物から調製した配位子を有するマグネシウムキレート錯体などが挙げられる。
アルミニウム化合物としては、例えば、ポリリン酸アルミニウム等のリン酸塩、2,4−ペンタンジオン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン等の1,3−ジカルボニル化合物から調製した配位子を有するアルミニウムキレート錯体などが挙げられる。
カルシウム化合物としては、例えば、酢酸カルシウム等のカルボン酸塩、2,4−ペンタンジオン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン等の1,3−ジカルボニル化合物から調製した配位子を有するカルシウムキレート錯体などが挙げられる。
本発明の電着塗料組成物中における金属化合物(D)の含有量は、特に制限されないが、通常、ビスマス化合物(A)100質量部に対して、5〜300質量部、好ましくは10〜100質量部である。前記範囲にある場合、電着塗料物性の向上の効果が得られる。
【0054】
<<中和剤(E)>>
本発明の電着塗料組成物は、前記成分を水分散するための中和剤(E)をさらに含むことができる。中和剤(E)としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸などの脂肪族カルボン酸、スルファミン酸等が挙げることができる。この中和剤(E)の量は、上記基体樹脂(B)中のアミノ基の量によって異なるものであり、水分散できる量であればよく、電着塗料のpHを3.0〜9.0の範囲に保つ量であればよい。本発明では前記基体樹脂(B)に含まれるアミノ基を中和するのに必要な中和剤(E)の当量数は、0.25〜1.5、好ましくは0.5〜1.25である。前記範囲にある場合、組成物の仕上り性、つきまわり性、低温硬化性などの向上の効果が得られる。
【0055】
<<その他の添加剤>>
本発明の電着塗料組成物には、さらに必要に応じて、着色顔料、体質顔料、有機溶剤、顔料分散剤、塗面調整剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの慣用の塗料添加物を配合することができる。
【0056】
<電着塗料組成物の製造方法>
本発明の電着塗料組成物は、上記成分を一括して混合することにより製造することができるが、以下のような方法でも製造することができる。
例えば、まず、基体樹脂(B)と硬化剤(C)を混合し、中和剤(E)を加える。水単独又は水と親水性有機溶剤の混合物である水性媒体中に、前記基体樹脂(B)・硬化剤(C)・中和剤(E)の混合物を分散させてエマルションを製造する。あるいは、基体樹脂(B)と硬化剤(C)を混合し、中和剤(E)を添加した水溶液又は中和剤(E)を添加した水と親水性有機溶剤の混合溶液に、前記基体樹脂(B)・硬化剤(C)の混合物を分散させてエマルションを製造する。
次いで、予め調製したカチオン性の顔料触媒分散用の基体樹脂(B)溶液に、上記ビスマス化合物(A)、金属化合物(D)、その他添加物、顔料、顔料分散剤等を所定量加えて混合した後、必要に応じて、ボールミルやサンドミルなどの通常の分散装置を用いて混合物中の固体が一定の粒径以下になるまで良く分散させて顔料触媒分散ペーストを製造する。
最後に、前記エマルションと所定量の上記顔料触媒分散ペーストを良く混合し電着塗料組成物を製造する。
【0057】
<電着塗料組成物の塗装方法>
本発明の電着塗料組成物は、電着塗装によって所望の基材表面に塗装することができる。
電着塗装は、一般には、固形分濃度が約5〜40質量%となるように脱イオン水などで希釈し、さらにpHを3.0〜9.0の範囲内に調整した本発明の電着塗料組成物からなる電着浴を、通常、浴温15〜45℃に調整し、負荷電圧100〜400Vの条件で行うことができる。
【0058】
本発明の電着塗料組成物を用いて形成しうる電着塗膜の膜厚は、特に制限されるものではないが、一般的には、硬化塗膜に基づいて5〜40μm、特に10〜30μmの範囲内が好ましい。また、塗膜の焼き付け温度は、被塗物表面で一般に100〜200℃の範囲、好ましくは140〜180℃温度が適しており、焼き付け時間は5〜60分間、好ましくは10〜30分程度、被塗物表面が保持されることが好ましい。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれによって限定されるものではない。尚、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」を示す。
【0060】
<ビスマス化合物(A)の製造>
製造例1〜10及び比較製造例1〜2に従って、ビスマス化合物(A)を製造した。これらの製造例及び比較製造例の内容を表1にまとめた。
【0061】
【表1】
【0062】
<<製造例1>>
窒素雰囲気下、攪拌装置、温度計、冷却器を備えた10L4つ口丸底フラスコに、塩化ビスマス(和光純薬工業社製):500g(1.58mol)、エタノール:365g、トルエン:2175gを加え攪拌し、加熱昇温して30分間還流させた。20%ナトリウムエトキシドエタノール溶液(和光純薬工業社製):1620g(4.76mol)を加熱還流下4時間かけて滴下し、その後3時間加熱還流した。その後、攪拌しながら20℃まで冷却し、不溶物を窒素雰囲気下、吸引濾過し、ビスマストリエトキシド溶液:4340gを得た。EDTA滴定によるBi濃度:0.336mmol/g、Bi基準収率92.3%
【0063】
窒素雰囲気下、攪拌装置、温度計、冷却器を備えた1L4つ口丸底フラスコに、上記ビスマストリエトキシド溶液:300g(0.10mol)を仕込み、化学式(6)で表される3,5−ヘプタジオン:13.2g(0.10mol)を内温20〜30℃の範囲で15分間かけて滴下し、同温度範囲でそのまま1時間攪拌した。イオン交換水:5.4g(0.30mol)を内温20〜30℃の範囲で5分間かけて滴下し、同温度範囲でそのまま1時間攪拌した。反応液を1Lナスフラスコに移し、50℃の湯浴で加熱しながら減圧濃縮して濃縮液62gを得た。濃縮液の入ったフラスコにヘプタン:40gを攪拌しながら10分間かけて滴下し、そのまま10分間攪拌した。得られたスラリー溶液を吸引濾過し、淡黄色湿固体を得、60℃の湯浴で加熱しながら減圧乾燥(減圧度10〜20mmHg)4時間し、乾燥した淡黄色固体18.2gを得た。得られた淡黄色固体ビスマス化合物(A)のEDTA滴定によるBi含量分析値は65.2%であった。
【化6】
【0064】
<<製造例2>>
窒素雰囲気下、攪拌装置、温度計、冷却器を備えた1L4つ口丸底フラスコに、製造例1で合成したビスマストリエトキシド溶液300g(0.10mol)を仕込み、化学式(7)で表される52,52−ジメチル−23,45−ヘキサジオン14.2g(0.10mol)を内温20〜30℃の範囲で15分間かけて滴下し、同温度範囲でそのまま1時間攪拌した。イオン交換水5.4g(0.30mol)を内温20〜30℃の範囲で5分間かけて滴下し、同温度範囲でそのまま1時間攪拌した。反応液を1Lナスフラスコに移し、50℃の湯浴で加熱しながら減圧濃縮して濃縮液68gを得た。濃縮液の入ったフラスコにヘプタン:20gを攪拌しながら10分間かけて滴下し、そのまま10分間攪拌した。得られたスラリー溶液を吸引濾過し、淡黄色湿固体を得、60℃の湯浴で加熱しながら減圧乾燥(減圧度10〜20mmHg)4時間し、乾燥した淡黄色固体11.8gを得た。得られた淡黄色固体ビスマス化合物(A)のEDTA滴定によるBi含量分析値は64.0%であった。
【化7】
【0065】
<<製造例3>>
窒素雰囲気下、攪拌装置、温度計、冷却器を備えた1L4つ口丸底フラスコに、製造例1で合成したビスマストリエトキシド溶液:300g(0.10mol)を仕込み、化学式(8)で表される1−フェニル−1,3−ブタンジオン:19.4g(0.12mol)をトルエン:50gに溶解した溶液を内温20〜30℃の範囲で30分間かけて滴下し、同温度範囲でそのまま2時間攪拌した。イオン交換水:3.6g(0.20mol)を内温20〜30℃の範囲で5分間かけて滴下し、同温度範囲でそのまま1時間攪拌した。反応液を1Lナスフラスコに移し、50℃の湯浴で加熱しながら減圧濃縮して濃縮液57gを得た。攪拌装置、温度計、冷却器を備えた3L4つ口丸底フラスコにヘプタン:700gを仕込み、攪拌しながら上記濃縮液を内温20〜30℃の範囲で30分間かけて滴下し、トルエン:10gで洗いこんだ。同温度範囲でそのまま1時間攪拌した。得られたスラリー溶液を吸引濾過し、淡黄色湿固体を得、60℃の湯浴で加熱しながら減圧乾燥(減圧度10〜20mmHg)4時間し、乾燥した淡黄色固体36.0gを得た。得られた淡黄色固体ビスマス化合物(A)のEDTA滴定によるBi含量分析値は56.3%であった。
【化8】
【0066】
<<製造例4〜5>>
1−フェニル−1,3−ブタンジオン及び水の仕込み量を変更し、製造例3と同様の方法でビスマス化合物(A)を得た。結果を表1に示す。
【0067】
<<製造例6>>
窒素雰囲気下、攪拌装置、温度計、蒸留ヘッド、冷却器を備えた1L4つ口丸底フラスコに、製造例1で合成したビスマストリエトキシド溶液:150g(0.050mol)を仕込み、化学式(9)で表される1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン:33.7g(0.15mol)をトルエン:180gに溶解した溶液を内温20〜30℃の範囲で30分間かけて滴下し、同温度範囲でそのまま1時間攪拌した。攪拌しながら油浴で加熱して液内温が100℃になるまで溶媒を常圧で留去した。濃縮液を500mLナスフラスコに移し、60℃湯浴で加熱しながら減圧濃縮して濃縮液51gを得、ヘプタン:50gを添加し黄色固体を析出させ、60℃の湯浴で加熱しながら減圧濃縮乾固(減圧度10〜20mmHg)6時間し、乾燥した黄色固体43.7gを得た。得られた黄色固体ビスマス化合物(A)のEDTA滴定によるBi含量分析値は23.8%であった。
【化9】
【0068】
<<製造例7>>
窒素雰囲気下、攪拌装置、温度計、蒸留ヘッド、冷却器を備えた1L4つ口丸底フラスコに、製造例1で合成したビスマストリエトキシド溶液:300g(0.10mol)を仕込み、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン:18.0g(0.080mol)をトルエン:100gに溶解した溶液を内温20〜30℃の範囲で30分間かけて滴下し、同温度範囲でそのまま1時間攪拌した。攪拌しながら油浴で加熱して液内温が100℃になるまで溶媒を常圧で留去した。攪拌しながら液内温を20℃まで冷却し、イオン交換水:4.5g(0.25mol)を内温20〜30℃の範囲で5分間かけて滴下し、同温度範囲でそのまま1時間攪拌した。反応液を500mLナスフラスコに移し、60℃の湯浴で加熱しながら減圧濃縮して濃縮液60gを得た。攪拌装置、温度計、冷却器を備えた3L4つ口丸底フラスコにヘプタン:700gを仕込み、攪拌しながら上記濃縮液を内温20〜30℃の範囲で30分間かけて滴下し、トルエン:10gで洗いこんだ。同温度範囲でそのまま1時間攪拌した。得られたスラリー溶液を吸引濾過し、淡黄色湿固体を得、60℃の湯浴で加熱しながら減圧乾燥(減圧度10〜20mmHg)4時間し、乾燥した淡黄色固体37.3gを得た。得られた黄色固体ビスマス化合物(A)のEDTA滴定によるBi含量分析値は52.5%であった。
【0069】
<<製造例8>>
1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン及び水の仕込み量、反応時間を変更し、製造例7と同様の方法でビスマス化合物(A)を得た。結果を表1に示す。
【0070】
<<製造例9>>
攪拌装置、温度計、冷却器を備えた300mL4つ口丸底フラスコに、酸化ビスマスBi:11.7g(0.025mol)、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン:33.6g(0.15mol)、イオン交換水:50gを仕込み攪拌した。攪拌しながら100℃まで昇温し同温度で5時間反応した。25℃まで冷却しトルエン:40gを添加しスラリーを吸引濾過し黄色湿固体を得た。固体を300mLナスフラスコに移しヘプタン:100gを添加し15分間攪拌しスラリーを吸引濾過し黄色湿固体を得、60℃の湯浴で加熱しながら減圧乾燥(減圧度10〜20mmHg)4時間し、乾燥した淡黄色固体13.8gを得た。得られた黄色固体ビスマス化合物(A)のEDTA滴定によるBi含量分析値は73.5%であった。
【0071】
<<製造例10>>
窒素雰囲気下、攪拌装置、温度計、蒸留ヘッド、冷却器を備えた500mL4つ口丸底フラスコに、製造例1で合成したビスマストリエトキシド溶液:150g(0.050mol)を仕込み、化学式(10)で表される1-(4-t-ブチルフェニル)-3-(4-メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオン:15.5g(0.050mol)をトルエン:90gに溶解した溶液を内温20〜30℃の範囲で30分間かけて滴下し、同温度範囲でそのまま1時間攪拌した。攪拌しながら油浴で加熱して液内温が100℃になるまで溶媒を常圧で留去した。攪拌しながら液内温を20℃まで冷却し、イオン交換水:2.0g(0.11mol)を内温20〜30℃の範囲で1分間かけて滴下し、同温度範囲でそのまま3時間攪拌した。反応液を500mLナスフラスコに移し、60℃の湯浴で加熱しながら減圧濃縮乾固(減圧度10〜20mmHg)8時間し、乾燥した黄色固体26.5gを得た。得られた黄色固体ビスマス化合物(A)のEDTA滴定によるBi含量分析値は40.1%であった。
【化10】
【0072】
<<比較製造例1:Bi(acac)3、トリス(2,4−ペンタジオナト)ビスマス(III)>>
窒素雰囲気下、攪拌装置、温度計、冷却器を備えた500mL4つ口丸底フラスコに、製造例1で合成したビスマストリエトキシド溶液:150g(0.050mol)を仕込み、化学式(11)で表されるアセチルアセトン:15.0g(0.15mol)を内温20〜30℃の範囲で30分間かけて滴下し、同温度範囲でそのまま1時間攪拌した。反応液を500mLナスフラスコに移し、50℃湯浴で加熱しながら減圧濃縮して濃縮液41gを得、ヘプタン:50gを添加し、60℃の湯浴で加熱しながら減圧濃縮乾固(減圧度10〜20mmHg)6時間し、乾燥した淡黄色固体24.2gを得た。得られた黄色固体ビスマス化合物(A)のEDTA滴定によるBi含量分析値は43.0%であった。
【化11】
【0073】
<<比較製造例2:ビスマスアセチルアセトン錯体 ビスマス含量70%>>
窒素雰囲気下、攪拌装置、温度計、冷却器を備えた1L4つ口丸底フラスコに、製造例1で合成したビスマストリエトキシド溶液:300g(0.10mol)を仕込み、アセチルアセトン:10.0g(0.10mol)を内温20〜30℃の範囲で15分間かけて滴下し、同温度範囲でそのまま1時間攪拌した。イオン交換水:5.4g(0.30mol)を内温20〜30℃の範囲で5分間かけて滴下し、同温度範囲でそのまま1時間攪拌した。反応液を1Lナスフラスコに移し、50℃の湯浴で加熱しながら減圧濃縮して濃縮液62gを得た。濃縮液の入ったフラスコにヘプタン:300gを攪拌しながら30分間かけて滴下し、そのまま10分間攪拌した。得られたスラリー溶液を吸引濾過し、淡黄色湿固体を得、60℃の湯浴で加熱しながら減圧乾燥(減圧度10〜20mmHg)4時間し、乾燥した淡黄色固体29.6gを得た。得られた淡黄色固体ビスマス化合物(A)のEDTA滴定によるBi含量分析値は70.0%であった。
【0074】
<基体樹脂(B)の製造>
<<製造例11 メインバインダー用>>
窒素雰囲気下、攪拌装置、温度計、冷却器を備えた3L4つ口フラスコに、エポキシ樹脂「jER1004AF」(三菱化学社製、エポキシ当量896g/eq、平均分子量 約1650):1425g(エポキシ基換算1.59mol)、エチレングリコールモノブチルエーテル(以下、ブチルセルソルブと表記):406gを仕込み、120℃油浴で加熱し攪拌して樹脂を溶解させた。ジエタノールアミン:175.5g(1.67mol)を滴下漏斗で内温95〜115℃の範囲で1時間かけて滴下し、滴下漏斗をブチルセルソルブ:64gで洗いこんだ。そのまま、内温115〜120℃の範囲で16時間加熱攪拌した。その後、攪拌しながら、ブチルセルソルブ:597gを30分かけて滴下し、そのまま50℃まで攪拌しながら放冷し、ジエタノールアミン付加エポキシ樹脂ブチルセルソルブ溶液B−1(固形分60%):2667gを得た。B−1の水酸基価を測定し溶媒ブチルセルソルブの水酸基価を差し引き補正した樹脂固形分の水酸基価は、199mgKOH/g(OH基換算3.55mmol/g)であった。計算によるアミン含量は、0.63mmol/gであった。
【0075】
<<製造例12 顔料触媒分散用4級アンモニウム塩型>>
窒素雰囲気下、攪拌装置、温度計、冷却器を備えた2L4つ口フラスコに、トリレンジイソシアネート(以下、TDIと表記):420.6g(2.41mol)、メチルイソブチルケトン(以下、MIBKと表記):82gを仕込み、攪拌しながら加熱して内温50℃まで昇温した。ブチルセルソルブ:285.4g(2.41mol)を内温50〜55℃に保ち4時間かけて滴下した。50℃で4時間反応しブチルセルソルブハーフブロック化TDI:788gを得た。
窒素雰囲気下、攪拌装置、温度計、冷却器を備えた1L4つ口フラスコに、ジメチルエタノールアミン:106.0g(1.19mol)に仕込み、攪拌しながら上記ブチルセルソルブハーフブロック化TDI:394g(1.21mol)を内温25〜50℃の範囲で2時間かけて滴下した。その後、80℃まで昇温し1時間攪拌した。その後、攪拌しながら、75%乳酸水溶液:142g(1.19mol)を75〜85℃の範囲で1時間かけて滴下し、ブチルセルソルブ:88gを添加し、65〜70℃で3時間攪拌して4級化剤:730gを得た。
窒素雰囲気下、攪拌装置、温度計、冷却器を備えた3L4つ口フラスコに、エポキシ樹脂「jER1001AF」(三菱化学社製、エポキシ当量468g/eq、平均分子量 約900):378g(エポキシ基換算0.81mol)を仕込み、120℃の油浴で加熱攪拌して樹脂を溶融させた。攪拌しながら、上記ブチルセルソルブハーフブロック化TDI:394gを内温117〜123℃の範囲で2時間かけて滴下した。同温度範囲で2時間反応した後、90℃まで冷却した。攪拌しながら、上記4級化剤:495g(0.81mol)を85〜90℃の範囲で1時間かけて滴下した。ブチルセルソルブ:136gを添加し75〜85℃の範囲で16時間反応させ、ブチルセルソルブ:500g添加して希釈し攪拌しながら50℃まで放冷し顔料触媒分散用4級アンモニウム塩型樹脂溶液B−2(固形分60%):1903gを得た。
【0076】
<<製造例13 顔料触媒分散用3級スルホニウム塩型>>
窒素雰囲気下、攪拌装置、温度計、冷却器を備えた1L4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと表記):222.3g(1.00mol)、MIBK:39.5gを仕込み、攪拌しながら加熱して内温50℃まで昇温した。ブチルセルソルブ:118.2g(1.00mol)を内温47〜53℃に保ち2時間かけて滴下した。同温度範囲で10時間反応しブチルセルソルブハーフブロック化IPDI:380gを得た。
窒素雰囲気下、攪拌装置、温度計、冷却器を備えた500mL4つ口フラスコに、2−メルカプトエタノール:75.3g(0.96mol)、MIBK:154gを仕込み攪拌して均一溶液とした。
ジメチルベンジルアミン:0.39g(2.9mmol)を添加し、攪拌しながら内温50℃まで昇温した。攪拌しながら、グリシドール:78.6g(1.06mol)を47〜53℃の範囲で2時間かけて滴下し、同温度範囲で5時間反応した。反応液を1Lナスフラスコに移し、50℃の湯浴で減圧濃縮(減圧度10〜20mmHg)3時間し淡黄色粘張液体1−(2−ヒドロキシエチルチオ)−2,3−プロパンジオール:163gを得た。
窒素雰囲気下、攪拌装置、温度計、冷却器を備えた3L4つ口フラスコに、エポキシ樹脂「jER1001AF」(三菱化学社製、エポキシ当量468g/eq、平均分子量 約900):234.5g(エポキシ基換算0.50mol)を仕込み、140℃の油浴で加熱攪拌して樹脂を溶融させた。
攪拌しながら、上記ブチルセルソルブハーフブロック化IPDI:190g(0.50mol)を、内温137〜143℃の範囲で1時間かけて滴下した。同温度範囲で2時間反応した後、ブチルセルソルブ:100g添加し70℃まで冷却した。攪拌しながら上記1−(2−ヒドロキシエチルチオ)−2,3−プロパンジオール:83g、ジメチロールプロピオン酸:59g(0.5mol)、イオン交換水:60gを添加した。内温67〜73℃の範囲で6時間攪拌後、ブチルセルソルブ:50gを添加し67〜73℃の範囲で12時間反応させた。ブチルセルソルブ:134.5g添加して希釈し攪拌しながら50℃まで放冷し顔料触媒分散用3級スルホニウム塩型樹脂溶液B−3(固形分60%):910gを得た。
【0077】
<硬化剤(C)ブロックポリイソシアネートの製造>
<<製造例14>>
窒素雰囲気下、攪拌装置、温度計、冷却器を備えた3L4つ口フラスコに、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート「スミジュール44V20」(住化バイエルウレタン社製、イソシアネート基含有率31.5%):798g(イソシアネート基換算6.0mol)を仕込み、攪拌しながら内温95℃まで加熱した。加熱を停止し、攪拌しながら、ブチルセルソルブ:1063g(9.0mol)を内温95〜120℃の範囲で2時間かけて滴下した。その後、加熱して内温115〜120℃の範囲で5時間攪拌した。その後、加熱を停止し、サンプリングしてIRスペクトルでイソシアネート基の吸収(2241cm−1)の消失を確認した。攪拌しながら、ブチルセルソルブ:290gを15分間かけて滴下し、そのまま50℃まで攪拌しながら放冷し、ブチルセルソルブでブロック化したポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートブチルセルソルブ溶液(固形分70%):2150gを得た。計算による本溶液中のブロックイソシアネート基含量は、2.79mmol/gであった。
【0078】
<エマルション溶液の製造>
<<製造例15>>
製造例11で得たジエタノールアミン付加エポキシ樹脂ブチルセルソルブ溶液B―1(固形分60%):100g、製造例14で得たポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートブチルセルソルブ溶液(固形分70%):128g、ブチルセルソルブ:21gを良く混合し、基体樹脂(B)及び硬化剤(C)の固形分60%ブチルセルソルブ溶液を調製した。
TKホモミキサーMARKII 2.5型(プライミクス社製)を備えた3Lビーカーに、イオン交換水:880g、酢酸:3.6g、ブチルセルソルブ:13gを仕込み、1000rpmで攪拌混合した。ホモミキサー回転数を12000rpmとし、内温を15〜20℃に保ちながら、上記基体樹脂(B)及び硬化剤(C)のブチルセルソルブ溶液を6時間かけて滴下し、そのまま、同温度範囲で6時間攪拌し、固形分13%のエマルション溶液:1145gを得た。
【0079】
<金属化合物(D)の製造>
<<製造例16:チタン化合物D1>>
WO2013/125562の製造例3記載の方法で1−フェニル−1,3−ブタンジオンから調製した配位子を有するチタン化合物D1を得た。
【0080】
<<製造例17:チタン化合物D2>>
WO2013/125562の製造例5記載の方法で1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオンから調製した配位子を有するチタン化合物D2を得た。
【0081】
<<製造例18:亜鉛化合物D3>>
窒素雰囲気下、攪拌装置、温度計、冷却器を備えた300mL4つ口丸底フラスコに、1−フェニル−1,3−ブタンジオン:23.8g(0.15mol)を仕込み、THF45gを添加し攪拌して溶解した。予め調製した水酸化ナトリウム:5.9g(0.15mol)をメタノール50gに溶解した溶液を、内温15〜20℃の範囲で30分かけて滴下し、同温度範囲でそのまま30分間攪拌した。その後、予め調製した塩化亜鉛:10.0g(0.07mol)をイオン交換水25gに溶解した溶液の約1/2を20〜25℃の範囲で5分間かけて滴下した。次いで、メタノール25g、THF10gを添加し、残りの塩化亜鉛水溶液を同温度範囲で5分間かけて滴下し、そのまま1時間攪拌した。得られたスラリー溶液を吸引濾過し、濾過物をイオン交換水100gで3回洗浄し湿固体を得、80℃の湯浴で加熱しながら減圧乾燥(減圧度10〜20mmHg)4時間することにより、1−フェニル−1,3−ブタンジオンから調製した配位子を有する亜鉛化合物D3:24.7gを得た。
【0082】
<顔料触媒分散ペーストの製造>
製造例12で得た顔料触媒分散用4級アンモニウム塩型樹脂溶液B−2(固形分60%):250g、イオン交換水:594g、「ノニオンK−220」(日油社製、界面活性剤):6gを良く混合し顔料触媒分散ペースト用溶液B−2:850g(固形分17.6%)を調製した。
製造例13で得た顔料触媒分散用3級スルホニウム塩型樹脂溶液B−3(固形分60%):250g、イオン交換水:594g、「ノニオンK−220」(日油社製、界面活性剤):6gを良く混合し顔料触媒分散ペースト用溶液B−3:850g(固形分17.6%)を調製した。
【0083】
【表2】
【0084】
<<製造例P1>>
攪拌機を備えた100mlフラスコに、前記顔料分散ペースト用溶液B−2:28.4g、製造例1で得たビスマス化合物(A)B1:5.0gを仕込み、10分間攪拌混合した。そこへガラスビーズ(粒子径2.5mm〜3.5mm):60gを加え、そのまま2時間攪拌し、ガラスビーズを濾別し、顔料触媒分散ペーストP1を得た。
【0085】
<<製造例P2〜P23>>
前記顔料触媒分散ペースト用溶液、ビスマス化合物(A)、及び金属化合物(D)を表2に示すように配合し、製造例P1と同様の方法で顔料触媒分散ペーストP2〜P23を得た。
【0086】
<<比較製造例RP1>>
本発明のビスマス化合物の代わりに、比較製造例1で合成したビスマス化合物RB1:5.0gを使用して製造例P1と同様の方法で顔料触媒分散ペーストRP1を得た。
【0087】
<<比較製造例RP2〜RP8>>
前記顔料触媒分散ペースト用溶液、比較製造例で合成したビスマス化合物、比較ビスマス化合物、比較有機スズ化合物の種類及び量を表2に示すように変更し、製造例P1と同様の方法で顔料触媒分散ペーストRP2〜RP8を得た。
【0088】
<顔料触媒分散ペースト貯蔵安定性試験サンプルの調製>
製造例P1〜P23、比較製造例RP1〜RP8で得た顔料触媒分散ペーストをガラス製サンプル瓶に入れ密栓し35℃30日間恒温槽で保存した。保存ペーストを撹拌し再分散可能か確認し、電着塗料組成物の製造、硬化試験に供した。
【0089】
<電着塗料組成物の製造>
<<実施例1〜23及び比較例1〜8>>
表3に示すエマルション溶液、顔料触媒分散ペーストを、表3に示す割合(質量部)で配合し、混合分散することにより電着塗料組成物を製造した。
【0090】
【表3】
【0091】
なお、表3において、「ビスマス化合物含有%」は、電着塗料組成物中の基体樹脂(B)及び硬化剤(C)ブロックイソシアネートの合計固形分に対するビスマス化合物(A)及び比較ビスマス化合物の質量%を示す。また、「有機スズ化合物含有%」は、電着塗料組成物中の基体樹脂(B)及び硬化剤(C)ブロックイソシアネートの合計固形分に対する有機スズ化合物の重量%を示す。
【0092】
<電着塗装、硬化性確認試験>
「パルボンドL3080」(日本パーカライジング社製、リン酸亜鉛処理剤)で化成処理した0.8x70x150mmの冷間圧延鋼板(日本テストパネル社製標準試験板、(社)日本防錆技術協会認定品)を予め秤量し、実施例1〜23及び比較例1〜8で得られた電着塗料組成物中に浸漬し、これを陰極として電着塗装を各々4枚の試験板で行った。電着条件は、電圧300V、15秒通電、電着槽内塗料温度20〜30℃で実施した。電着塗装した塗膜はイオン交換水で水洗し6時間風乾した。その後、該試験板をギヤーオーブン(エスペック製、GPHH−202型)にて加熱焼き付けを行った。焼き付け条件は、170℃/20分、160℃/20分、各条件該試験板2枚ずつで実施した。各試験板を秤量して電着塗装硬化塗膜重量を算出した。その後、各試験板を20℃、16時間アセトン浴に浸漬し、風乾後、100℃1時間加熱乾燥した。各試験板を秤量しアセトン浸漬後の残存乾燥塗膜の重量を算出した。下式に従い、ゲル分率を算出し、以下の基準で塗膜の硬化性を評価した。その結果を表3に示す。
ゲル分率(%)=100×(アセトン浸漬後の残存塗膜重量(g))/(アセトン浸漬前の塗膜重量(g))
【0093】
◎:90%以上
○:80%以上90%未満
X:80%未満
【0094】
表3に示すように、化学式(1)中の2つのRの炭素数の合計が4以上である種々のβジケトンを用いて製造したビスマス化合物(A)(B1〜B10)を使用した実施例1〜23では、硬化試験において優れた結果が得られた。一方、化学式(1)中の2つのRの炭素数の合計が2であるβジケトンを用いて製造したビスマス化合物RB1〜RB2を使用した比較例1〜4では、硬化試験の結果が実施例1〜23よりも劣っていた。また、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、酢酸酸化ビスマスを使用した比較例5〜7でも、硬化試験の結果が実施例1〜23よりも劣っていた。
以上の結果から、本発明のビスマス化合物(A)が優れた触媒活性及び水系媒体中の安定性を示すことが実証された。