特許第6019235号(P6019235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6019235-光硬化性インク組成物 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019235
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】光硬化性インク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/101 20140101AFI20161020BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20161020BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20161020BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   C09D11/101
   C09D11/30
   B41J2/01 127
   B41J2/01 501
   B41M5/00 E
   B41M5/00 A
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-529184(P2015-529184)
(86)(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公表番号】特表2015-533873(P2015-533873A)
(43)【公表日】2015年11月26日
(86)【国際出願番号】IB2013058113
(87)【国際公開番号】WO2014033656
(87)【国際公開日】20140306
【審査請求日】2015年2月26日
(31)【優先権主張番号】12182590.5
(32)【優先日】2012年8月31日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506231272
【氏名又は名称】ヒューレット−パッカード インダストリアル プリンティング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】コーエン,エイタン
(72)【発明者】
【氏名】ブランドスタイン,オー
(72)【発明者】
【氏名】リシトシン,ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】トルブニコフ,アレックス
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0106017(US,A1)
【文献】 特表2003−518545(JP,A)
【文献】 再公表特許第01/057145(JP,A1)
【文献】 特開2008−100493(JP,A)
【文献】 特開2005−280346(JP,A)
【文献】 特開2009−132151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00−13/00
B05D 1/00− 7/26
B41J 2/01
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤、水、光開始剤、UV硬化性ポリウレタン分散物、疎水性の放射線硬化性モノマー、ならびに水溶性の放射線硬化性モノマーもしくは水混和性の放射線硬化性モノマーを含む光硬化性インク組成物であって、
インク組成物の全重量に基づいて20重量%までの着色剤を含み、
インク組成物の全重量に基づいて20〜90重量%の水を含み、
インク組成物の全重量に基づいて1〜15重量%の疎水性の放射線硬化性モノマーを含み、
水溶性の放射線硬化性モノマーもしくは水混和性の放射線硬化性モノマーが、アクリル酸もしくはメタクリル酸のポリエチレングリコールとのエステル、またはアクリル酸もしくはメタクリル酸のモノ−価、ジ−価、トリ−価もしくはテトラ−価のアルコールとのエステルであって、分子量200未満のモノ−価、ジ−価、トリ−価もしくはテトラ−価の脂肪族アルコールとエチレンオキシドとのエトキシ化に由来するものを含む、
光硬化性インク組成物
【請求項2】
水溶性の放射線硬化性モノマーもしくは水混和性の放射線硬化性モノマーが、組成物の全重量に基づいて1〜15重量%の範囲の量でインク組成物中に存在する、請求項1に記載の光硬化性インク組成物。
【請求項3】
着色剤が顔料である、請求項1又は2に記載の光硬化性インク組成物。
【請求項4】
水溶性の放射線硬化性モノマーもしくは水混和性の放射線硬化性モノマーが、200〜1500の分子量を持つポリエチレングリコールから得られるポリエチレングリコールのアクリラートエステル、又は9〜30のエトキシラート残基を持つエトキシル化トリメチロールプロパンのアクリル酸エステルである、請求項1〜3の何れか1項記載の光硬化性インク組成物。
【請求項5】
水溶性の放射線硬化性モノマーもしくは水混和性の放射線硬化性モノマーが、エトキシ化トリメチロールプロパン−トリアクリラートである、請求項1〜4の何れか1項に記載の光硬化性インク組成物。
【請求項6】
水溶性の放射線硬化性モノマーもしくは水混和性の放射線硬化性モノマーが、アクリルアミドモノマーである、請求項1〜3の何れか1項に記載の光硬化性インク組成物。
【請求項7】
UV硬化性ポリウレタン分散物が、組成物の全重量に基づいて1重量%〜25重量%を表す量で存在する、請求項1〜6の何れか1項に記載の光硬化性インク組成物。
【請求項8】
疎水性の放射線硬化性モノマーがアクリラートモノマーもしくはビニルモノマーである、請求項1〜7の何れか1項に記載の光硬化性インク組成物。
【請求項9】
疎水性の放射線硬化性モノマーが、ビニルカプロラクタム、ヘキサンジオールジアクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラートおよびプロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリラートからなる群より選択される、請求項1〜8の何れか1項に記載の光硬化性インク組成物。
【請求項10】
印刷物を形成する方法であって、
a)着色剤、水、光開始剤、UV硬化性ポリウレタン分散物、疎水性の放射線硬化性モノマーならびに水溶性の放射線硬化性モノマーもしくは水混和性の放射線硬化性モノマーを含む、請求項1〜9の何れか1項記載の光硬化性インク組成物を提供するステップ、
b)媒体基材を提供するステップ、
c)前記光硬化性インク組成物の滴の流れを媒体基材上に投下するステップ、
d)媒体基材上に印刷された前記インク組成物を固定するステップ、
e)前記インク組成物を乾燥するステップ、ならびに
f)インク組成物に対して光エネルギーを適用するステップであって、ここで前記光エネルギーが光硬化性インク組成物を硬化するのに好適な波長とエネルギーレベルとを持つステップ、
を含む、印刷物を形成する方法。
【請求項11】
媒体基材へのインク組成物の滴の流れの投下が、圧電プリントヘッドによって実行される、請求項10に記載の印刷物を形成する方法。
【請求項12】
インクジェット印刷システムであって、
a)媒体基材、
b)着色剤、水、光開始剤、UV硬化性ポリウレタン分散物、疎水性の放射線硬化性モノマーならびに水溶性の放射線硬化性モノマーもしくは水混和性の放射線硬化性モノマーを含む少なくとも一つの、請求項1〜9の何れか1項記載の光硬化性インク組成物、ならびに
c)基材上にいったん印刷されたインク組成物へと光エネルギーを適用するよう構成される光エネルギー源であって、前記光エネルギーが光硬化性インク組成物を固定し、乾燥し、そして硬化するのに好適な波長およびエネルギーレベルを持つ、光エネルギー源、
を含む、インクジェット印刷システム。
【請求項13】
光エネルギー源がUV光源である、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
請求項1〜9の何れか1項記載の光硬化性インク組成物を調製するための方法であって、
a)着色剤、水、光開始剤、UV硬化性ポリウレタン分散物、疎水性放射線硬化性モノマーならびに水溶性の放射線硬化性モノマーもしくは水混和性の放射線硬化性モノマーの混合物を提供するステップ、
b)インク組成物が実質的に均一になるような条件に混合物を供するステップ、ならびに
c)混合物をろ過に供するステップ
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
インクジェット技術は経済的で高品質な多色印刷を作製する能力のために、その用途を家庭用や事務用に加えて、高速の、業務用印刷および産業用印刷にまで拡張してきた。この技術は、広範な基材に堆積可能なインクの滴もしくはインクの流れを、電気信号が制御して方向付けるノンインパクト印刷方法である。そのような技術において使用されるインクは、液体分産物、液体もしくはエマルションであってよく、油性インク、非水溶媒系インク、水性インクおよび固形インクを含み得る。現在のインクジェット印刷技術は、インク滴を、小さなノズルを通して、熱吐出、圧電圧力又は振動によって媒体の表面へと付着させることを含む。堆積されたインク滴は、その後、例えば熱もしくは強制換気を用いて乾燥させられるか、または周囲条件下で乾燥する。
【背景技術】
【0002】
最近、放射線、およびとくに紫外線(UV)硬化が普及してきた。これらの場合、特別なインクが使用され、画像は放射線源へと曝露されて硬化される。そのような放射線硬化性(もしくは光硬化性)インクの使用および、硬化プロセスは、急速に、確立された従来の乾燥プロセスに対する代替物となりつつある。
【0003】
インクジェット印刷産業は、油性インク、溶媒系(非水性)インク、水性インク、および固形インク(分配の準備において溶解される)のような、異なる型の記録流体を使用する。溶媒系インクは、急速に乾燥し、そして結果として産業印刷において広く使用される。結合剤および他の成分を含む溶媒系インクが基材上へと噴射されると、溶媒は部分的にもしくはすべて、インクから蒸発し、結合剤および顔料のような他の成分を印刷された基材上に乾燥フィルムの形状で残す。乾燥プロセスにおいて、しばしば揮発性有機化合物である溶媒は蒸気を放出し、そしてそれゆえに環境を汚染し得る。大量のインクが基材上へと堆積するようなより早い印刷速度もしくは大判の印刷にとって、環境汚染問題はより重要になる。
【0004】
このこと、および他の懸念の結果、環境にやさしいインクの調製に関する努力が、水性インクの方向へといくつかの研究を動かしてきた。しかしながら、放射線硬化性(もしくは光硬化性)の水性インク組成物は、その特徴的な性質のために、利用可能な選択肢の中で著しく制限されている。したがって、印刷されると、例えば噴射性能ならびに向上した接着のような特別な優れた印刷性能を示す放射線硬化性インク組成物を開発する研究が続けられてきた。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図面は本方法の実施態様を例示し、本明細書の一部である。
図1図1は、本開示のある実施態様による印刷物を作成するための方法を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示の特定の実施態様を開示する前に、本開示は本明細書に開示されるプロセスもしくは物質を限定するものではないことは理解されるべきである。本明細書において使用される技術は、具体的な実施態様を記載するためのみに使用されるものであり、限定を意図するものではなく、保護される範囲は請求項およびその均等物によって定義されるべきであることもまた理解されるべきである。組成物および方法を記載する場合およびそれらを請求項に記載する場合において、以下の用語が使用されるであろう。単数形である「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに他のものを記述しているのでなければ、複数の意味を含む。例えば、「a pigment(顔料)」と示すことは、一つもしくはそれ以上のそのような物質を示すことを含む。本明細書において、濃度、量および他の数値は範囲の形式で示され得る。そのような範囲の形式は単に利便性と簡潔さのためにのみ使用されるものであって、範囲の臨界点として明示的に示される数値を含むだけでなく、あたかもそれぞれの数値範囲とサブ範囲とが明示的に示されているように、その範囲内に包含される数値もしくはサブ範囲(sub−range)をもまた含むものであると柔軟に解釈されるべきである。例えば、「約1重量%から約20重量%」という数値範囲は、明示的に示された約1重量%から約20重量%という範囲のみを含むのではなく、2重量%、3重量%、4重量%のような個々の値と5重量%〜15重量%、10重量%〜20重量%などのようなサブ範囲とをも含むと解釈されるべきである。他に示されない限り、すべてのパーセントは重量パーセントである。
【0007】
本開示は、着色剤、水、光開始剤、UV硬化性ポリウレタン分散物、疎水性の放射線硬化性モノマーならびに水溶性の放射線硬化性モノマーもしくは水混和性の放射線硬化性モノマーを含む光硬化性インク組成物を対象とする。
【0008】
前記光硬化性インク組成物により印刷物を作製するための方法、ならびに前記光硬化性インク組成物を含むインクジェット印刷システムもまた開示される。本開示はまた、着色剤、水、光開始剤、UV硬化性ポリウレタン分散物、疎水性の放射線硬化性モノマーならびに水溶性の放射線硬化性モノマーもしくは水混和性の放射線硬化性モノマーを含む光硬化性インク組成物を調製する方法もまた示す。
【0009】
本明細書に記載される光硬化性インク組成物は、未処理のプラスチック、紙、ダンボール、発泡ボード、および布地のような柔軟性および剛性の、多孔質基材を含む幅広い範囲の基材上に印刷でき、前記多様な基材に対し良好な接着性を持つ。光硬化性インク組成物は、良好な印刷品質を可能にし、かつインクジェット用途に好適なインクを配合できるようにし得る良好な粘性を持つ。本開示の光硬化性インク組成物は高速印刷を可能にし、かつデジタルインクジェット印刷における使用に非常に好適である。
【0010】
基材上に印刷され、硬化されると、前記インク組成物は非極性表面に対し向上した接着を持つ。組成物はまた、良好な耐擦傷性および耐候性を持つ。それゆえ、水性光硬化性インク組成物は、信頼できる噴射、高速乾燥および硬化を可能にし、さまざまな媒体基材上への印刷を可能にし、一方で優れた印刷品質および接着を持つ。
【0011】
インク組成物は光硬化性(またはUV硬化性もしくは放射線硬化性)インク組成物である。前記組成物は、噴射可能なインク組成物を意図し、それゆえインクはインクジェット印刷装置と共に使用できる。本開示での使用のとき、用語「硬化」は例えば紫外線(UV)照射のような光照射のような化学線への曝露によってインクのような液体を固体に転換することを指す。しかしながら、例えば紫外線(UV)光、電子ビームエネルギーなどのような好適な硬化エネルギー源への曝露の際、架橋ポリマーネットワークが形成される。そのようなインク組成物は一般的に「エネルギー硬化性」インクと呼ばれ、「溶媒系」インクとは区別される。
【0012】
インク組成物は、水性光硬化性インク組成物を意図し、それゆえそれは、溶媒として特定量の水を含む。インク組成物中の水の量は、例えばインク組成物の他の成分の量による。インク組成物中の水の量は、懸濁液およびインク組成物の他の成分中の水の量に加えて添加される水の量を含む。ある例において、インク組成物中の水の量は、インク組成物の全量の約10〜約90重量%の範囲であり、他の例においてインク組成物の全量の約20〜約80重量%の範囲であり、さらに他の例において約30〜約70重量%である。
【0013】
ある例において、インク組成物は、25℃において約70cps(センチポアズ)より大きくない粘度、約50cpsより大きくない粘度、もしくは30cpsより大きくない粘度を持つ。ある他の例において、約20℃〜約55℃の噴射温度において、インク組成物の粘度は、約2cps〜約20cpsの範囲である。インク組成物は、25℃において約40ダイン/cmより大きくない静的表面張力を、または約20cps〜約40ダイン/cmの範囲の静的表面張力を持ち得る。
【0014】
UV硬化性ポリウレタン分散物
本開示によるインク組成物は、UV硬化性ポリウレタン分散物、すなわちUV−PUDを含む。ポリウレタン分散物によって、本明細書においては、液体ベヒクル中に分散したポリウレタン粒子を意味する。いずれの理論にもとらわれず、このようなUV硬化性ポリウレタン分散物は、インクが塗布される媒体上に改善されたインクフィルム性能をもたらす。乾燥とUV−PUDの架橋とによって形成されるそのようなフィルムは光沢を持ち、そして柔軟性を保ちつつ硬い。
【0015】
ある例において、ポリウレタン分散物(PUD)は、水中で安定なポリウレタンポリマー粒子の分散物であり、ポリウレタンポリマー粒子の粒径は約20nm〜約200nmの範囲である。ポリウレタン分散物は、約1,000〜100,000の範囲のMw、または約5,000〜約50,000の範囲のMwを持ち得る。ポリウレタンポリマー粒子は、ある例において、インク組成物の全量の約1重量%〜約25重量%の量、または約5重量%〜約20重量%の範囲の量で存在し得る。
【0016】
ポリウレタンポリマー粒子は、分岐した内部コアを持つコア−シェル構造を持ち得、ここでコアが約0.1重量%〜約1重量%のアミン架橋剤を含み、シェルが約0.5重量%〜約2重量%の量でポリオール架橋剤を含む。
【0017】
分岐した内部コア構造は、環状ジイソシアナートであり得る分岐したジイソシアナートによって提供され得る。分岐した内部コア構造は、分岐したジオールもしくは環状ジオールによってもまた提供され得る。ポリウレタン粒子は、さらにポリオール、分岐したジイソシアナート、および酸性ポリオールを含む重合化したモノマーを含有し得る。ポリウレタンポリマー粒子は、(ジイソシアナートを含む)ハードセグメント、およびソフトセグメントを含み得、そして鎖伸長剤をも含み得る。鎖伸長剤は、鎖伸長剤がポリウレタンのハードセグメント中になるように、ジイソシアナートと重合化できる任意の成分であってよい。
【0018】
ポリウレタンポリマー粒子は、ポリウレタン粒子のハードセグメント中で重合化するジオールとして存在し得るさまざまなポリオールを含む。ある例において、ポリオールは、環状ジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、脂肪族ポリカーボナートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(エチレンオキシド)ポリマー、ポリ(プロピレンオキシド)ポリマー、ポリ(テトラメチレンオキシド)ポリマー、ジオールを含む多価化合物から誘導される末端ヒドロキシル基を持つそれらのコポリマーならびにそれらの組み合わせからなる群より選択し得る。ある態様において、ジオールは環状ジオールであってよい。他の態様において、ジオールは脂肪族環状ジオールであってよい。さらに他の態様において、ジオールは1,4−シクロヘキサンジメタノールであってよい。ジイソシアナートは、脂環式ジイソシアナート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、メチレンジフェニルジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、p−テトラメチルキシレンジイソシアナート、m−テトラメチルキシレンジイソシアナート、ビトリレンジジイソシアナート、トルエンジイソシアナート、メチレン−ビス(4−シクロヘキシル)ジイソシアナート、p−フェニレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアナート、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択し得る。ある態様において、ジイソシアナートは、脂環式ジイソシアナートであってよい。酸ポリオールは、構造HO−(CH(CR(CH−OHを持ち得、式中RおよびRは独立してH、ヒドロキシル、アルキル基もしくは酸基であり、nは0〜20の範囲であり、pは0〜20の範囲であり、mは1〜20の範囲であり、RおよびRの少なくとも一つは酸基である。
【0019】
ポリウレタンポリマー粒子は、さまざまな濃度のポリオール(ハードセグメントおよびソフトセグメントの両方において)、酸ポリオールおよびジイソシアナートを持ち得る。ジイソシアナートは、ポリウレタン粒子中に約10重量%〜約70重量%で存在し得る。酸ポリオールは、ポリウレタン粒子中に約1重量%〜約40重量%で存在し得る。さらにジオールは約1重量%〜約3重量%で存在し得る。
【0020】
ある例において、UV−PUDは、水分散性アクリル官能性ポリウレタン分散物である。他の例において、UV−PUDは、水分散性(メタ)アクリル化ポリウレタン分散物である。本明細書において、水分散性(メタ)アクリル化ポリウレタンは、水と混合されるときに水に分散した小粒子の二相系を形成し得るポリマーを意味する。
【0021】
そのようなポリウレタン分散物は、少なくとも一つのポリイソシアナート化合物(任意選択で少なくとも一つのポリオール)、イソシアナト基と反応し得る少なくとも一つの反応基を含有し、かつ直接的に、または塩をもたらす中和剤との反応の後に水性媒体中にポリウレタンを分散可能にできる、少なくとも一つの親水性化合物、ならびにイソシアナト基と反応し得る少なくとも一つの反応基を含有する少なくとも一つの(メタ)アクリル化化合物の反応により得ることができる。
【0022】
水分散性(メタ)アクリル化ポリウレタンは、例えば、Cytecより入手可能なUcecoat(登録商標)6558、Ucecoat(登録商標)6559、Ebecryl(登録商標)2002およびEbecryl(登録商標)2003の名称で市販される化合物のような水分散性樹脂であってよい。そのような水分散性樹脂は、例えば10重量%の水と90重量%のポリマーとを含有する溶液のように適当な水との溶解率において混合されるとき、水溶液を形成し得る。
【0023】
ある実施態様において、UV硬化性ポリウレタン分散物(UV−PUD)は、水分散性(メタ)アクリル化ポリウレタンであり、NeoResins(Avecia)によりNeoRad(登録商標)R441の商品名で販売される。UV−PUDの、他の代表的かつ非限定的な例は、Ucecoat(登録商標)7710、Ucecoat(登録商標)7655(Cytecより入手可能)、Neorad(登録商標)R440、Neorad(登録商標)R441、Neorad(登録商標)R447、Neorad(登録商用)R448(DSM NeoResinsより入手可能)、Bayhydrol(登録商標)UV2317、Bayhydrol(登録商標)UV VP LS2348(Bayerより入手可能)、Lux(登録商標)430、Lux(登録商標)399、Lux(登録商標)484(Alberdingk Boleyより入手可能)、Laromer(登録商標)LR8949、Laromer(登録商標)LR8983、Laromer(登録商標)PE22WN、Laromer(登録商標)PE55WN、Laromer(登録商標)UA9060(BASFより入手可能)を含む。
【0024】
疎水性の放射線硬化性モノマー
本明細書に記載される光硬化性インク組成物は一つもしくはそれ以上の疎水性の放射線硬化性モノマーを含み得る。所望の性能基準を受けて、十分な加水分解安定性を持つ任意の疎水性の放射線硬化性モノマーもしくはそれらの組み合わせを、本明細書に記載されるインク組成物へと混合し得る。従って、インク組成物は、任意のそのような性能が満たされる限り、さまざまな態様における特定の種類の疎水性の放射線硬化性モノマーへと限定されない。
【0025】
疎水性の放射線硬化性モノマーは、モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−であってよく、または、放射線硬化性部分の観点で多官能性であってよい。ある例において、UV硬化性ポリウレタン分散物および疎水性モノマーは、インク組成物中に非水性相を形成し、それはインク組成物中の全重量の約20重量%〜約50重量%を表し得る。
【0026】
疎水性の放射線硬化性モノマーは、光開始剤の溶媒として、粘性調整剤として、硬化する際の結合剤として、および/もしくは架橋剤として機能し得る。インク中に混合されるそのような疎水性の放射線硬化性モノマーの量は、生じる組成物の位置される使用に応じて広い範囲で変化し得る。疎水性のモノマーは、インク組成物の全重量に基づいて約1〜約15重量%の濃度で存在し得る。ある例において、疎水性のモノマーは、インク組成物の全重量に基づいて約3〜約8重量%を表す量で存在する。疎水性のモノマーは、インク組成物中で乳化され得る。
【0027】
ある例において、疎水性の放射線硬化性モノマーは、疎水性の単官能の放射線硬化性モノマーである。他の例において、疎水性の放射線硬化性モノマーは、アクリラートモノマーもしくはビニルモノマーである。
【0028】
単官能の疎水性の放射線硬化性モノマーは、アクリラートモノマーであってよい。アクリラートモノマーは、2−フェノキシエチルアクリラート、イソホリルアクリラート、イソデシルアクリラート、トリデシルアクリラート、ラウリルアクリラート、2−(2−エトキシ−エトキシ)エチルアクリラート、テトラヒドロフルフリルアクリラート、イソボルニルアクリラート、プロポキシル化アクリラート、テトラヒドロフルフリルメタクリラート、2−フェノキシエチルメタクリラート、イソボルニルメタクリラート、ならびにそれらの二つもしくはそれ以上の組み合わせからなる群より選択できる。
【0029】
単官能の疎水性の放射線硬化性モノマーはビニルモノマーであってよい。ビニルモノマーは、ビニルカプロラクタム、ビニルエーテルおよびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択できる。ある例において、本明細書において使用される疎水性の放射線硬化性モノマーは、Xi、または、例えばSartomerよりSR339Cの商品名で入手可能な2−フェノキシ−エチルアクリラートのような他の危険なシンボルによる標識を必要としない。
【0030】
ある実施態様において、疎水性の放射線硬化性モノマーは、ビニルカプロラクタム、ヘキサンジオールジアクリラート、トリメチルプロパントリアクリラートおよびプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリラートからなる群より選択される。他の例において、疎水性の放射線硬化性モノマーはビニルカプロラクタムである。
【0031】
疎水性の放射線硬化性モノマーは、疎水性の多官能の放射線硬化性モノマーであってよい。そのうなより高い官能性の、放射線硬化性モノマーの例は、ヘキサンジオール時アクリラート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートトリアクリラート、それらの組み合わせなどを含む。ある例において、本明細書において使用される多官能性の放射線硬化性モノマーは、Xi、または、例えばSartomerよりSR9003の商品名で入手可能なプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリラートのような他の危険なシンボルによる標識を必要としない。
【0032】
水溶性の放射線硬化性モノマーもしくは水混和性の放射線硬化性モノマー
本開示によるインク組成物は、一つもしくはそれ以上の水溶性の放射線硬化性モノマーもしくは水混和性の放射線硬化性モノマーを包含する。本明細書において、水溶性の放射線硬化性モノマーもしくは水混和性の放射線硬化性モノマーは、十分な水溶性および加水分解安定性を持つ任意の放射線硬化性モノマーを意味する。そのようなモノマーは、放射線によって重合可能であるべきであり、かつ水溶性もしくは水混和性であるべきである。
【0033】
水溶性の放射線硬化性モノマーもしくは水混和性の放射線硬化性モノマーは、モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−であってよく、または、放射線硬化性部分の観点で多官能性であってよい。ある例において、水溶性のモノマーもしくは水混和性のモノマーは、後述する印刷方法の印刷段階において所望のポリマーネットワーク形成を達成するための架橋剤として機能する。水溶性の放射線硬化性モノマーもしくは水混和性の放射線硬化性モノマーは、インク組成物の全重量の約1〜約15重量%、もしくは約2〜10重量%、もしくは3〜8重量%の範囲の量で存在し得る。
【0034】
好適な水溶性モノマーの例は、アクリル酸もしくはメタクリル酸のポリエチレングリコールとのエステル、またはアクリル酸もしくはメタクリル酸のモノ−価、ジ−価、トリ−価もしくはテトラ−価のアルコールとのエステルであって、分子量200未満のモノ−価、ジ−価、トリ−価もしくはテトラ−価の脂肪族アルコールとエチレンオキシドとのエトキシ化に由来するものを含む。
【0035】
エチレン性不飽和化合物の例は、約200〜約1500、もしくは約400〜約800の分子量を持つポリエチレングリコールから得られるポリエチレングリコールのアクリラートエステル;また、9〜30のエトキシラート残基、もしくは10〜20のエトキシラート残基を持つエトキシル化トリメチロールプロパンのアクリル酸エステルである。エチレン性不飽和化合物の他の例は、約200〜約1500の分子量を持つポリエチレングリコールから得られるポリエチレングリコールのアクリラートエステル、及び9〜30エトキシラート残基を持つエトキシ化トリメチロールプロパンのアクリル酸エステルである。
【0036】
水溶性のモノマーもしくは水混和性のモノマーの代表的かつ非限定的な例は、ポリエチレングリコール(600)ジアクリラート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリラート、メトキシポリエチレングリコール(550)モノ−アクリラート、ポリエチレングリコール(6)モノ−アクリラート、30エトキシ化ビスフェノール−Aジアクリラート、エトキシ化(20)トリメチロールプロパン−トリアクリラート、(15)エトキシ化トリメチロールプロパン−トリアクリラート、トリス−トリルフェノール18EOアクリラート、グリセロール12EOトリアクリラートを含む。他の例において、水溶性の放射線硬化性モノマーは、エトキシル化トリ−メチルプロパントリアクリラートである。
【0037】
好適な市販の物質は、Sartomerより入手可能なSR415(登録商標)(エトキシ化(20)トリメチロールプロパン−トリアクリラート)、CN435(登録商標)もしくはSR9015(登録商標)のようなUV硬化性物質を含む。他の例の市販の水溶性モノマーもしくは水分散性モノマーは、Sartomerより入手可能なCD550(登録商標)(メトキシポリエチレングリコール(350)モノ−メタクリラート)、CD552(登録商標)(メトキシポリエチレングリコール(550)モノ−メタクリラート)、SR259(登録商標)(ポリエチレングリコール(200)ジアクリラート)、SR344(登録商標)(ポリエチレングリコール(400)ジアクリラート)、SR603(登録商標)(ポリエチレングリコール(400)ジ−メタクリラート)、SR610(登録商標)(ポリエチレングリコール(600)ジアクリラート)、SR252(登録商標)(ポリエチレングリコール(600)ジ−メタクリラート)、SR604(登録商標)(ポリプロピレングリコールモノ−メタクリラートSR356(登録商標)(2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリラート)、SR9035(エトキシ化(15)トリメチロールプロパントリアクリラート)、UCBより入手可能なEbecryl(登録商標)11(ポリエチレングリコールジアクリラート)およびEbecryl(登録商標)12(ポリエーテルトリアクリラート)、Rahnより入手可能なGenomer(登録商標1251)(ポリエチレングリコール400ジアクリラート)、Genomer(登録商標)1343(エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリラート)、Genomer(登録商標)1348(グリセロール−プロポキシトリアクリラート)、Genomer(登録商標)1456(ポリエーテルポリオールテトラ−アクリラート)、および希釈剤02−645(エトキシエチルアクリラート)を含む。
【0038】
ある例において、水溶性放射線硬化性モノマーはアクリルアミドモノマーである。アクリルアミド水溶性モノマーもしくはアクリルアミド水分散性モノマーの代表的で非限定的な例は、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N,N’−メチレンビス−アクリルアミドおよび/もしくはN−イソプロピルアクリルアミドを含む。市販の水溶性モノマーもしくは水分散性モノマーは、例えば、SNF FLOERGER(フランス)より入手可能なFlocryl(登録商標)MBA、Jarchem(USA、NJ)より入手可能なJarchem(登録商標)HEAAもしくはJarchem(登録商標)NIPAMを含む。
【0039】
光開始剤
本明細書に記載される光硬化性インク組成物は、光開始剤を含む。光開始剤、もしくはUV開始剤は、所望の波長のUV光に曝露されると反応を開始して、インク受容物質もしくはインク受容基材へと塗布された後の本明細書に記載されるようなインク組成物を硬化する剤である。ある例において、光開始材は、ラジカル光開始剤である。光開始剤は、単一の化合物であってもよいし、二つもしくはそれ以上の化合物の混合物であってもよい。それは、塗布されたインク組成物を硬化するのに十分な量でインク組成物中に存在できる。ある例において、光開始剤は、インク組成物の全重量に基づいて約0.01〜約10重量%を表す量、もしくは約1〜約5重量%を表す量で存在する。
【0040】
光開始剤は、水溶性光開始剤もしくは水分散性光開始剤であってよく、インク組成物の水相に組み込まれ得る。ある例において、光開始剤は疎水性光開始剤であり、疎水性放射線硬化性モノマーへと組み込まれる。疎水性モノマーは乳化によって、合成中にUV−PUDへと組み込まれ得、および/もしくはインクへと組み込まれ得る。他の例において、光開始剤は疎水性放射線硬化性モノマー中に溶解する。光開始剤は、異なる波長で吸収するいくつかの光開始剤の混合物であってよい。
【0041】
ラジカル光開始剤の例は、限定ではなく例示として、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾ−フェノン、4−メチルベンゾフェノン、ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、ベンジル−ジメチルケタル、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、もしくはそれらの二つもしくはそれ以上の組み合わせを含む。例えば、エチル−4−ジメチルアミノベンゾアート、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾアートのようなアミン相乗剤もまた使用できる。
【0042】
光硬化性インク組成物は、UV安定剤、すなわちフリーラジカルを捕捉するのを助ける剤を含み得る。UV安定剤の例は、限定ではなく例示として、キニーネメチド(BASF CoroporationからのIrgastab(登録商標))およびGenorad(登録商標)16(Rahn USA Corporation)ならびにそれらの組み合わせを含む。
【0043】
ある例において、光増感剤も、インク組成物の全重量に基づいて約0.01〜約10重量%の範囲の量、もしくは約1〜約5重量%の範囲の量で光開始剤と共に使用できる。光増感剤はエネルギーを吸収し、そして通常は光開始剤であるような他の分子にそれを転送する。光増感剤はしばしば、システムの光吸収の性質を変換するために添加される。好適な光増感剤の例は、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンおよび4−イソプロピルチオキサントンを含むがそれらには限定されない。
【0044】
着色剤
本明細書に記載される光硬化性インク組成物は、着色剤として顔料もしくは染料を含み得る。ある例において、インク組成物は、着色剤として一つもしくはそれ以上の顔料を含む。不溶性の顔料の着色剤は、より良い画像性能を達成する助けとなし得る。顔料は、自己分散型顔料、ポリマーコート顔料、もしくは例えば粉砕顔料のような一般的な顔料であってよい。別の分散剤もまたインク組成物中の顔料の適切な懸濁を可能にするために使用できる。粒子状の顔料は無機であっても有機であってもよい。顔料は、ブラック、ブルー、ブラウン、シアン、グリーン、ホワイト、バイオレット、マゼンタ、レッド、オレンジおよびイエロー、ならびにそれらの混合より得られるスポットカラーを含むがそれらに限定されない任意の色であってよい。
【0045】
光硬化性インク組成物中に存在し得る有機顔料の例は、限定ではなく例示として、ペリレン、フタロシアニン顔料(例えば、フタログリーン、フタロブルー)、シアニン顔料(Cy3、Cy5およびCy7)、ナフタロシアニン顔料、ニトロソ顔料、モノアゾ顔料、ジアゾ顔料、ジアゾ縮合顔料、塩基性染料顔料、アルカリブルー顔料、ブルーレーキ顔料、フロキシン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、カルバゾールジオキサジンバイオレット顔料、アリザリンレーキ顔料、フタロキシアミン顔料、カーマインレーキ顔料、テトラクロロイソインドリノン顔料、ペリノン顔料、チオインジコ顔料、アントラキノン顔料およびキノフタロン顔料、ならびにそれらの二つもしくはそれ以上の混合物、ならびにそれらの誘導体を含む。インク組成物において存在し得る無機顔料は、例えば、金属酸化物(例えば、二酸化チタン、導電性二酸化チタン、酸化鉄(例えば、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄及び透明酸化鉄)、酸化アルミニウム、酸化ケイ素)、カーボンブラック顔料(例えば、ファーネスブラック)、金属硫化物、金属塩化物、ならびにそれらの二つもしくはそれ以上の混合物を含む。
【0046】
使用し得る顔料着色剤の例は、限定ではなく例示として、色指数PY83、PY151、PY150、PY155、PY139、PY120、PY180、PY129およびPY154、PY213を持つイエロー顔料を含む。マゼンタ顔料は、色指数PR202、PR254、PR122、PR149、PR185、PR225、PR146を持つレッド顔料からなり、色指数PV19、PV12,PV37およびPV29を持つバイオレット顔料もまた使用できる。色指数PB15:3、PB15:4、PB15:2およびPB15:1を持つブルー顔料、ならびに色指数PBLブラック7を持つブラック顔料もまた使用できる。TiO型のホワイト顔料のような無機顔料もまた使用できる。色指数PO46、PO64、PO34を持つ有機顔料および色指数PG7を持つグリーン顔料もまた使用できる。
【0047】
顔料成分は、例えば、商標Paliotol(登録商標)、Heliogen(登録商標)、Chromophtal(登録商標)、Irgalite(登録商標)、Cinquasia(登録商標)(BASFより入手可能)、Hostaperm(登録商標)、Novoperm(登録商標)(Clariantより入手可能)、Sunfast(登録商標)、Quindo(登録商標)(SunChemicalより入手可能)、Special Black(Degussaより入手可能)、Kronos(登録商標)(Kronosより入手可能)、Kemira(登録商標)(Kemira Pigmentより入手可能)として入手可能な顔料のような分散性顔料であってよい。
【0048】
光硬化性インク組成物中の顔料の量は、例えば顔料の性質、インク組成物の用途の性質、インクのための噴射機構の性質、および添加剤の性質のようないくつもの要素に依存する。インク組成物は20重量%までの顔料を含み得る。ある例において、光硬化性インク組成物中の顔料の量は、約0.1〜約20重量%、もしくは約1〜約15重量%、もしくは約5〜約10重量%である。
【0049】
溶媒
本明細書に記載される光硬化性インク組成物は、有機溶媒を含み得る。有機溶媒は水に可溶(水溶性)もしくは水に混和性(水混和性)であり得る。このような水溶性溶媒もしくは水混和性溶媒は、顔料分散、発色および安定性を最適化するために顔料濃縮物を製粉する間にインク組成物へと添加できる。インク組成物中の有機溶媒の量は、例えばフィルム形成プロセス、噴射信頼性およびインク組成物の低VOC含量を維持することのようないくつもの要素に依存する。
【0050】
有機溶媒が存在するとき、インク組成物中の有機溶媒の量は、インク組成物の全重量に基づいて約0.1重量%〜約5重量%である。有機溶媒の性質は、例えば、有機溶媒の蒸発量もしくは有機溶媒の揮発性に依存する。単一の有機溶媒も使用できるし、二つもしくはそれ以上の有機溶媒の混合物も使用できる。ある例において、有機溶媒は、炭素原子およびヘテロ原子を持つ極性有機溶媒である。例えば、有機溶媒は約2〜約50の炭素原子、もしくは約10〜約30の炭素原子を持ち得る。ヘテロ原子は、例えばアルコール部分、エーテル部分、ケトン部分、アルデヒド部分、アミン部分およびアミド部分の一つもしくはそれ以上の形態であってよい。有機溶媒は、例えば約170℃〜約250℃の沸点、もしくは約190℃〜約220℃の沸点を持ち得る。
【0051】
有機溶媒は、限定ではなく例示として、アルコール、多価アルコール、例えばエーテルもしくはエステルのようなグリコール誘導体、アミン、アミド、および例えばジメチル−スルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミジゾリジノンのような他の有機溶媒であってよい。上述の有機溶媒は二つもしくはそれ以上の混合物として使用できる。ある例において、有機溶媒は、グリコール、グリコールエーテル、アルコールもしくはヘテロ環ケトン、またはそれらの二つもしくはそれ以上の混合物である。具体的な有機溶媒のいくつかの例は、限定ではなく例示として、例えばトリ−プロピレングリコールモノメチルエーテル(Dowanol(登録商標)TPM)、ジプロピレングリコールエーテル(Dowanol(登録商標)DPG)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(Proglyde(登録商標)DMM)(すべてDow Chemical Company、ミッドランド MIから入手可能)のようなグリコールエーテル溶媒を含む。
【0052】
他の成分および添加剤も、インクの性質および性能を向上させるために光硬化性インク組成物中に存在し得る。添加剤は、一つもしくはそれ以上の界面活性剤、分散剤、レオロジー調整剤、殺生物剤、消泡剤、およびUV安定剤を含むがそれらに限定されない。ある例において、本開示による光硬化性インク組成物は、界面活性剤、分散剤、UV安定剤、消泡剤、レオロジー調整剤および殺生物剤の一つもしくはそれ以上の添加剤をさらに含む。インク組成物中の添加剤の重量の全量は、例えば約0.1〜約1重量%、もしくは約0.2〜約0.5重量%である。
【0053】
界面活性剤は、例えば、商標WET(登録商標)およびGLIDE(登録商標)(Evonik Tego Chemie GmbH、エッセン、ドイツより)、BYK(登録商標)(BYK Chemie GmbH、ウェーゼル、ドイツより)、Dynax(登録商標)(Dynax Corp.、ポンドリッジ、NYより)、3M Novec(登録商標)(3M Energy and Advanced Materials、セントポール、MNより)、およびFSO(DuPont de Nemours Company、ウィルミントン DEより)によって市販されるものを含む。
【0054】
消泡剤の例は、商標Foamex(登録商標)およびTwin(登録商標)(Evonik Tego Chemie Service GmbHより)、BYK(登録商標)(BYK Chemie GmbHより)、およびSurfynol(登録商標)(Air Products and Chemicals、 Inc.より)によって市販されるものである。
【0055】
分散剤の例は、含量と親和性を持つ基を備える高分子量コポリマーを含む。分散物の具体例は、商標BYK(登録商標)でBYK Chemie GmbHより市販されるものを含む。
【0056】
レオロジー調整剤の例は、商品名Acrysol(登録商標)(Rohm & Haasより)、Borchigel(登録商標)(OMG Borchers GmbH、ランゲンフェルト、ドイツより)、BYK(登録商標)(BYK Chemie GmbHより)、およびDSX(登録商標)(Cognis GmbH、モーンハイム・アム・ライン、ドイツより)で市販されるものを含む。
【0057】
印刷物形成のための方法および印刷システム
ある実施態様において、印刷物を形成する方法は、着色剤、UV硬化性ポリウレタン分散物、水、光開始剤、疎水性の放射線硬化性モノマーならびに水溶性の放射線硬化性モノマーもしくは水混和性の放射線硬化性モノマーを含む光硬化性インク組成物を提供するステップ、媒体基材を提供するステップ、前記光硬化性インク組成物の滴の流れを媒体基材上に投下(もしくは噴射)するステップ、媒体基材上に塗布された前記インクを固定して乾燥するステップ、ならびにインク組成物に対して光エネルギーを適用するステップを含み、ここで前記光エネルギーは、光硬化性インク組成物を硬化するのに好適な波長とエネルギーレベルとを持つ。
【0058】
図1は、本開示のいくつかの実施態様による印刷物を作製するための方法を例示する。図1に例示されるように、UV硬化性ポリウレタン分散物(UV−PUD)、水、光開始剤、着色剤、疎水性放射線硬化性モノマーならびに水溶性放射線硬化性モノマーもしくは水分散性放射線硬化性モノマーを含む光硬化性インク組成物がインク滴の流れの投下によって印刷可能媒体へと塗布される(110)。印刷可能媒体上へのインク組成物の滴の流れの投下は、インクジェット印刷技術によってなされ得る。本開示による印刷物を作製するための方法は、固定プロセス(120)、乾燥プロセス(130)および硬化プロセス(140)を含む。
【0059】
ある例において、媒体基材上へのインク組成物の滴の流れの投下(110)は、インクジェット印刷可能技術によってなされる。インク組成物は任意の好適な印刷技術によって物質上に構成され得、そのような印刷技術はサーマルインクジェット印刷、音響連続インクジェット印刷、および圧電インクジェット印刷を含む。インクジェット印刷装置において、液体インク滴は、制御された方法によって、インクジェット印刷装置もしくはインクジェットプリンターのプリンタヘッド中の複数のノズル、もしくはオリフィスからインク滴を噴射することによりインク受容基材、もしくは媒体基材へと塗布される。ドロップオンデマンドシステムにおいて、インク滴は、デジタルデータ信号により制御される例えば圧電装置、音響装置もしくはサーマルプロセスによって生み出される圧力によってインク受容基材もしくは媒体基材の表面の位置へと直接的にオリフィスから噴射される。インクジェット印刷のために、インク組成物は、基材表面へとインク組成物を噴射する前に、適切な分注温度にまで加熱されるか、または冷却されるかされ得る。ある例においてインク組成物の滴の流れの媒体基材への投下は圧電印刷ヘッドによってなされ得る。
【0060】
ある例において、光硬化性インク組成物は、約5℃から約15℃の噴射温度で媒体基材へと塗布/噴射され得る。インクの温度を制御することによって、インクの作業点の周囲環境への依存性を減少させるかまたは消失させる。システムはより安定になり、より使いやすくなる。いずれかの理論にとらわれることなく、インク組成物が大量の水を含むので、インクの温度を15℃もしくはそれ未満に減少させることによって、噴射信頼性が十分に増加し、インク組成物がよりユーザーフレンドリーになると考えられている。本明細書に記載されるそのようなインク組成物の例は、25℃で機能する他の水系インクと比較して噴射信頼性を持ち得る一方で、さらにより速い基材上での乾燥速度を持ち、最小の添加溶媒(VOC)を可能にする
【0061】
インクジェット印刷のために、インク組成物は、基材表面へとインク組成物を噴射する前に、例えば、上述の分注温度のような適切な分注温度にまで加熱されるかまたは冷やされる。インク組成物の特定の温度および粘度は、例えば、インクジェット印刷を実施する特定の方法および装置に依存する。インク組成物の温度及び粘度に関する判断は、例えば液滴のサイズおよび液滴の噴射速度に関連する。ある例において、温度は比較的一定に保たれ、これは、温度変化が、例えば±1℃、もしくは±0.5℃、もしくは±0.2℃、もしくは±0.1℃を超える変化が存在しないように制御されていることを意味する。温度の制御は例えば適切な温度センサによって達成される。
【0062】
インク組成物が媒体基材上にいったん塗布されると、それは、固定プロセス(120)および乾燥プロセス(130)へと供される。
【0063】
ある実施態様において、噴射された後、インク組成物は媒体表面へと定着化(もしくは固定化)される(120)。固定プロセスは、例えばLEDによって供給されるような、低光エネルギーもしくは低エネルギーUV照射を適用することによって実施できる。ある例において、「低レベル」エネルギーは、約1〜約3W/cmの範囲のエネルギーを指す。UV LEDは、インク滴を噴射後すぐに固定するためにインク固定放射線源として利用でき、一方で基体上での制御された広がりを可能にする。水はこの段階ではまだ蒸発しないので、インクは完全には架橋せず、インク滴の粘度は上昇し、滴は完全には定着せず、滴の更なる広がりは可能であると信じられている。
【0064】
印刷されるか、または噴射されたインク組成物が、インクの水分の蒸発を考慮して媒体基体上であらかじめ決められたパターンにおいて、乾燥プロセスで乾燥される。乾燥ステージは、限定ではなく例示として、温風、電気ヒーターもしくは光照射(例えばIRランプ)によって、またはそのような乾燥方法の組み合わせによって、実施され得る。目的とする性能レベルを達成するために、基材に許容される最大温度でインクを乾燥させることが望ましく、それにより基材の変形なしに良好な画質を可能にする。乾燥に用いられる温度は、さまざまなプラスチック基材物質が、高温で折れ曲がったり変形したりする傾向があるという事実を考慮に入れて選択されるべきである。結果的に、乾燥中に基材の変形温度を超えるべきではない。乾燥中の温度の例は、例えば約40℃〜約150℃、もしくは約40℃〜約70℃を含む。本明細書の原理によるインク組成物は、硬いプラスチック材料を印刷することも可能であり、例えば約40℃〜約70℃、もしくは約50℃〜約60℃の比較的低い温度における乾燥をする一方で、素早い乾燥時間と良好な画質を達成する。
【0065】
乾燥プロセス(130)において、乾燥温風システムもしくはIR放射システムまたはその両者の組み合わせを、インク組成物に存在する残余の水を蒸発させる目的で印刷媒体とともに使用できる。ある例において、そのような乾燥段階は、プラスチック基体上に印刷するときの媒体の変形を避けるために60℃未満の温度において起こる。
【0066】
ある実施態様において、印刷されるかまたは噴射されたインク組成物は、インク組成物に光エネルギーを適用することによって硬化され(140)、ここで前記光エネルギーはインク組成物を硬化するのに好適な波長とエネルギーレベルとを持つ。ある硬化ステップにおいて、水銀もしくはその類似のランプが、インク組成物を完全に硬化して媒体基材へと完全に架橋させるために使用され得る。光エネルギーを適用するために、媒体基材上の光硬化性インク組成物が、本明細書に記載される原理によるインク組成物を硬化するために好適な光源へと供され得る。紫外線(UV)照射が上述のインク組成物を硬化するのに使用され得る。硬化照射は、例えばUVランプ、ブルーレーザー、UVレーザーもしくは紫外線LEDによって照射されるUV照射であり得る。硬化照射は、連続モードの紫外線照射源の操作によって供給され得る。硬化照射はまた、フラッシュモードもしくはパルスモードの紫外線源の操作によっても提供され得る。ある例では、硬化プロセス(140)において、インク組成物は、インクを完全に硬化し、架橋するために、例えば幅広いアーク水銀ランプを用いて硬化される。
【0067】
本明細書に記載される原理によると、光硬化性インク組成物は、インクジェットプリンターのためのインクジェットインクとしての用途を見出した。ある例において、光硬化性インク組成物は、インクジェット技術およびその装置を用いて広範囲の基材表面へと分注され得る。本方法による好適なインクジェットプリンターは、印刷、固定、乾燥およびインク硬化のプロセスを実施するよう構成される装置である。プリンターは、シングルパスインクジェットプリンターもしくはマルチパスインクジェットプリンターであってよい。プリンターは、インク噴射温度の範囲の維持を確かにするのに有効な温度維持モジュールを含み得る。
【0068】
ある例において、光硬化性インク組成物は、前処理された媒体表面へと塗布される。インクジェット受容層は、要求される画質を得るために、画像を噴射する前の前処理ステージにおいて特定の基材上に塗布され得る。インク受容層は、前処理段階において、圧電プリントヘッドによってインク受容層を適用することによってデジタルに適用され得るか、またはインク受容層は、前処理段階において、例えばスプレーガンもしくはローラーコーターのようなアナログの方法によって適用され得る。インク受容層は、部分的には基材状のインク滴の動きを阻止し、基材表面に分注されたインク組成物のための固定剤として機能し、ここではそのような動きは画質に負の影響をもたらし得る。
【0069】
上述のように、光硬化性インク組成物は媒体基材上に噴射される。媒体基材は、平面であり、滑らかであるかまたは荒いものであってよく、または、用いられる特定の目的に好適である任意の他の形態を持っていてもよい。媒体基材は、約0.1mm〜約10mmの範囲の厚さ、もしくは約1mm〜約5mmの範囲の厚さを持ち得る。媒体基材は、例えば、多孔質もしくは非多孔質であってよく、剛性、半剛性もしくは可撓性であってよい。平面の媒体基材は、限定ではなく例示として、例えば、フィルム、プレート、ボードもしくはシートの形態であってよい。
【0070】
媒体基材の例は、プラスチック基材(例えばポリエチレンフタラート、ポリエチレン、ポリスチレンポリプロピレン、ポリカーボナート、およびアクリル)、紙、プラスチック(例えばポリエチレン、ポリプロピレンもしくはポリスチレン)でラミネートされた紙、カードボード、ペーパーボード、フォームボード、および布地を含むがそれらに限定されない。媒体はまた、剛性PVC(剛性ポリビニルクロリド基材)もしくはPETG(ポリエチレンテレフタラートグリコール変性)であってもよい。ある例において、媒体基材は、非多孔質であり、低表面張力である。非限定的な例は、プラスチック、PVC、バナー紙、およびポリプロピレン、ならびにYupo(登録商標)合成紙のような合成紙を含む。バーナー紙はバナー印刷に特異的に構成され、滑らかな表面を持ち、しばしばカラー印刷のために設計される。用語「非多孔質」は、比較的貧弱な水透過性、水吸収および/または水吸着を持ち得る表面を含む。ビニルおよび他のプラスチックシートもしくはフィルム、金属、コートされたオフセット媒体、ガラス、ならびに他の類似の基材は、非多孔質であると考えられる。ある実施態様において、媒体基材はプラスチック基材であり得る。他の実施態様において、媒体基材は、合成のプラスチック基材である。ある例において、媒体基材はポリプロピレン、ポリビニルクロリド(PVC)、アクリルもしくはポリカーボナートの基材である。他の例において、媒体基材は、ポリビニルクロリド(PVC)、もしくはポリカーボナートの基材である。媒体基材は、非膨潤性であってよく、ならびに/または非極性である。本明細書において、非膨潤性は、基材表面がインクの任意の成分によっても膨潤せず、インクと基材との間に化学結合がまったく形成されないことを意味する。本明細書において、非極性は、基材表面が電荷的に中性であることによりそれへの接着が達成困難であることを意味する。
【0071】
ある実施態様において、本開示は、媒体基材、UV硬化性ポリウレタン分散物(UV−PUD)、水、光開始剤、着色剤、疎水性放射線硬化性モノマーならびに水溶性の放射線硬化性モノマーもしくは水混和性の放射線硬化性モノマーを含む少なくとも一つの光硬化性インク組成物、基材上にいったん印刷されたインク組成物へと光エネルギーを適用するよう構成された光エネルギー源を含むインクジェット印刷システムに言及し、ここで光エネルギーは、インク組成物を固定し、乾燥し、および硬化するために好適な波長およびエネルギーレベルを持つ。
【0072】
ある他の実施態様において、本開示は上述の光硬化性インク組成物を調製する方法に言及する。方法は、UV硬化性ポリウレタン分散物(UV−PUD)、水、光開始剤、着色剤、疎水性放射線硬化性モノマーならびに水溶性の放射線硬化性モノマーもしくは水混和性の放射線硬化性モノマーを含むインク組成物を混合して提供するステップ、混合物を、インク組成物が実質的に均一になり、かつ噴射に好適な粘度および表面張力を持つようになるような条件に供するステップ、ならびに混合物をろ過に供するステップを含む。
【0073】
ある例において、インク組成物を実質的に均一な分散物とする条件は、例えば、混合、攪拌、振とう、ホモジナイズ、超音波処理、超音波処理、マイクロ流動化、ビーズミル、ブレンディング、もしくはそれらの組み合わせの一つもしくはそれ以上を含む。ある例において、上述の手順における温度は、例えば、約10℃〜約40℃、もしくは約20℃〜約30℃であってよい。ある例において、温度は周囲温度である。用語「実質的に均一」は、可視の相分離がないこと、ならびに、引きおろされて塗布されたインク組成物が、例えば脱湿潤、塊形成、もしくは気泡のような欠陥のない均一のフィルムを生じることを意味する。インク組成物は、信頼できる噴射を不可能にし得るような大きな粒子を除去するためにろ過され得る。ろ過は、限定ではなく例示として、例えばメンブレンろ過、表面ろ過、デプス濾過、スクリーンろ過、ろ過助剤の一つもしくはそれ以上を用いて実施され得る。
【実施例】
【0074】
成分表
【表1】
【0075】
インク組成物の配合
インク組成物Iは、二つの異なるパート、パートA(疎水性層)およびパートB(水層)を混合して調製された。パートAは、N−ビニルカプロラクタム、Irgacure(登録商標)819およびOmnirad(登録商標)ITXを含む。パートAは、均一の溶液が得られれるまでDispermat(登録商標)ミキサー(Bykより入手可能)によって約30分間混合される。パートBは、Neorad(登録商標)R441、SR(登録商標)415および水を含む。そののち、パートAはパートBと、均一の分散物が得られるまでDispermat(登録商標)ミキサーによって約1時間混合され、そののちに、顔料調製物と界面活性剤とがインクへと添加され、さらに15分間混合された。インクはそれから、1.2ミクロン(マイクロメートル)のアブソリュートメンブレンフィルターを通してろ過された。Haake(登録商標)RS−600レオメーター(Thermo Electron、ニューイントン、NH)がインクの粘度を測定するのに使用され、それは20℃で約4cpsであった。Lauda(登録商標)張力計(LAUDA Brinkmann LP、デルラン、NJ)によって測定されるインクの表面張力は、室温で約30ダイン/cmであった。
【0076】
インク組成物IIは、比較のインク配合物であり、水溶性モノマーをまったく含まない。インク組成物IIは、パートA(疎水性層A)および水層Bの二つの部分で調製された。パートAは、N−ビニルカプロラクタム、Irgacure(登録商標)819およびOmnirad(登録商標)ITXを含む。パートAは、均一の溶液が得られれるまでDispermat(登録商標)ミキサーによって約30分間混合される。パートBは、Neorad(登録商標)R441および水を含む。パートAはパートBと、均一の分散物が得られるまで約1時間混合され、そののちに、顔料と界面活性剤とがインクへと添加され、さらに15分間混合された。インクはそれから、1.2ミクロン(マイクロメートル)のアブソリュートメンブレンフィルターを通してろ過された。Haake(登録商標)RS−600レオメーターがインクの粘度を測定するのに使用され、それは20℃で約3.3cpsであった。Lauda(登録商標)張力計によって測定されるインクの表面張力は、室温で約30ダイン/cmであった。
【0077】
インク組成物IおよびIIは、下のテーブル(b)に示される。すべてのパーセントは全組成物の重量パーセントで表される。
【表2】
【0078】
インク組成物の性能
固定化能試験方法:多孔質の媒体基材(ダンボール)は、それぞれ100dpiで4回のパスによりインチ当たり400ドットのベタ画像で印刷される。媒体は、XY印刷試験ベッド上で、印刷方法Aもしくは印刷方法Bを用いて印刷される。インク組成物は、シングルのHP Scitex X2 Piezoプリントヘッドによって噴射される。固定ステップは低エネルギー光源(395nm LEDモデルRX Starfire(登録商標) AC(Phoseon Techより))によって実施された。乾燥ステップは、ヘアドライヤー、(モデルSilencio(登録商標)1100W(Braunより))を用いて実施された。硬化ステップは、水銀UVランプ(モデルUV−SK 1.6kW、160W/cm、Dr.Honle AGより)を用いて実施された。
【0079】
方法(A)において、媒体基材は、乾燥ステップと硬化ステップのみを含む方法によって印刷された。そのような方法Aは、固定ステップをまったく包含しない。媒体基材は、インク組成物Iおよびインク組成物IIによって印刷され、約40℃の温風下での1分間の乾燥があとに続く。乾燥のすぐ後に、印刷された画像を広範囲のUVランプに約0.5m/sの速度で一度通すことによって印刷された画像を硬化する。
【0080】
方法(B)において、媒体基材は、組成物Iおよび組成物IIを用いて、固定ステップ、乾燥ステップおよび硬化ステップを含む方法によって印刷される。インクは、LED光へと曝露することによって固定される。LEDの強度は0〜100%で変化する。LEDは印刷方向でプリントヘッドのすぐ後に配置され、インクを印刷したすぐ後にLEDに暴露するようになっている。印刷は一方向のモードで作成され、プリントヘッドが次のパスを開始するためにもとの場所に移動するときに、LEDは消灯された。この固定ステップにおいて、画像は、それぞれの印刷パスに対応して合計で4回LEDに曝露される。第二のステップにおいて、印刷された画像は、約40℃の温度で約1分間温風で乾燥される。第三の最後のステップにおいて、画像を広範囲のUVランプに約0.5m/sの速度で一度通すことによって印刷された画像を硬化する。
【0081】
AとBの両方の方法において、生じる印刷物に対する光学濃度と光沢度とが評価される。光学濃度は、X−Rite SpectroEyeの方法によって測定される。75°での光沢度は、Byk−Gardnerからの光沢計によって測定される。結果は下の表(c)に示される。
【表3】
【0082】
この結果は、固定プロセス、乾燥プロセスおよび硬化プロセスを包含する印刷方法において本開示によるインク組成物Iを用いるとき、生じる印刷物は、固定プロセスを一切含まない印刷方法において同一のインク組成物を用いるときと比較してより高い光沢と、より高い光学濃度とを持つことを証明する。この結果はまた、両方の印刷方法AおよびBにおいてインク組成物IIを用いるとき、生じる印刷物は良好な光沢および良好な光学濃度をもたらさないことを証明する。
図1