特許第6019242号(P6019242)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019242
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】自動変速機の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/12 20100101AFI20161020BHJP
   F16H 59/78 20060101ALI20161020BHJP
   F16H 61/02 20060101ALI20161020BHJP
   F16H 59/04 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   F16H61/12
   F16H59/78
   F16H61/02
   F16H59/04
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-536547(P2015-536547)
(86)(22)【出願日】2014年9月4日
(86)【国際出願番号】JP2014073277
(87)【国際公開番号】WO2015037503
(87)【国際公開日】20150319
【審査請求日】2015年11月12日
(31)【優先権主張番号】特願2013-191098(P2013-191098)
(32)【優先日】2013年9月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】宮石 広宣
【審査官】 西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−133248(JP,A)
【文献】 特開平08−312774(JP,A)
【文献】 特開平09−264414(JP,A)
【文献】 特開2001−099310(JP,A)
【文献】 特開平10−089126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/12
F16H 59/78
F16H 61/02
F16H 59/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スーパーチャージャを備えたエンジンに接続され、複数の固定変速比のうちから手動操作で所望の変速比を選択可能なマニュアルモードを有する自動変速機の制御装置において、
前記自動変速機がマニュアルモード設定状態であることを検出するマニュアルモード検出手段と、
前記スーパーチャージャの温度を検出する温度検出手段と、
該温度検出手段で検出した前記スーパーチャージャの温度が所定値以上になることを判定する温度判定手段と、
前記マニュアルモード検出手段でマニュアルモード設定状態を検出し、かつ前記温度判定手段で前記スーパーチャージャの温度が所定値以上になることを判定した場合に、変速比をハイ側の固定変速比に変更してエンジンの回転数を低下させる変速比変更手段と、
を備えた自動変速機の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動変速機の制御装置において、
前記温度検出手段は、前記スーパーチャージャの出口での吸気温度を検出して前記スーパーチャージャの温度とする、
自動変速機の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の意思により固定変速比を選択するマニュアルモードを有する自動変速機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マニュアルモードを有する自動変速機の場合、オートモードの場合と異なって自動変速することがないので、エンジンの過回転(オーバーレブ)を防止する仕組みが必要である。このようなこのような仕組みを備えた自動変速機の制御装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
この特許文献1に記載の自動変速機の制御装置にあっては、オーバーレブ防止用のシフトパターン(強制アップシフト線)を設定しておき、車速とスロットル開度とから求めた車両の運転状態が上記強制アップシフト線を越えて許容レベル以上の負荷が発生したと判定された場合には、強制的にアップシフトする制御を実行する。
また、許容レベルの僅か手前の負荷であって上記判定がなされない場合であっても、その状態で連続一定走行が行われると、駆動系への過負荷となって軸受等の摺動部の摩擦熱によりエンジンや自動変速機の耐久性が悪化するので、これを防ぐため、高負荷運転状態およびこの高負荷運転の連続時間を検出し、高負荷運転状態の連続時間が所定値以上のときに自動変速機を強制的にアップシフトするようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−312774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の自動変速機の制御装置にあっては、以下のような問題がある。
すなわち、上記オーバーレブ防止制御にあっては、高負荷運転状態の検出は、スロットル開度およびエンジンの回転数に基づいて行われる。ところが、スーパーチャージャを備えたエンジンを使用する場合、エンジンは高負荷運転状態になっていなくても、スーパーチャージャが高温状態となってしまうことがある。
この場合、上記従来の自動変速機の制御装置では、高負荷運転状態と判定されないので上記オーバーレブ防止制御は実行されず、この結果、高温によりスーパーチャージャの耐久性が劣化してしまうといった問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、マニュアルモードでの走行時にスーパーチャージャが高温となってその耐久性が劣化するのを防止することができる自動変速機の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため本発明による自動変速機の制御装置は、
スーパーチャージャを備えたエンジンに接続され、複数の固定変速比のうちから手動操作で所望の変速比を選択可能なマニュアルモードを有する自動変速機の制御装置において、
自動変速機がマニュアルモード設定状態であることを検出するマニュアルモード検出手段と、
スーパーチャージャの温度を検出する温度検出手段と、
この温度検出手段で検出したスーパーチャージャの温度が所定値以上になることを判定する温度判定手段と、
マニュアルモード検出手段でマニュアルモード設定状態を検出し、かつ温度判定手段でスーパーチャージャの温度が所定値以上になることを判定した場合に、変速比をハイ側の固定変速比に変更してエンジンの回転数を低下させる変速比変更手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
好ましくは、所定値は、スーパーチャージャの回転数が、この温度に加え、エンジンの油温および自動変速機の油温を考慮してこれらの油温にそれぞれ対応する自動変速機の制限目標入力回転数を算出し、これら制限目標入力回転数のうち低い値に基づいて設定するようにする。
【0009】
好ましくは、温度検出手段が、スーパーチャージャの出口での吸気温度を検出してスーパーチャージャの温度とするようにする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の自動変速機の制御装置にあっては、マニュアルモード設定状態でスーパーチャージャが高温になったことを検知した場合には、たとえ、エンジンが高負荷運転状態になくとも、その時設定していた変速比をハイ側の変速比に変更することでエンジンの回転数を下げ、これによりスーパーチャージャの温度を低下させることでその耐久性が劣化するのを防止することができる。
【0011】
スーパーチャージャの出口での吸気温度を検出してスーパーチャージャの温度とすることにより、吸気温度センサを兼用することができ、安価になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る実施例1の制御装置を有する自動変速機が接続されるエンジンと過給機との構成を示す図である。
図2】実施例1の制御装置の構成を示す図である。
図3】実施例1の制御装置を構成するCVTコントローラにおけるマニュアルモード上限規制機能を得るための構成を示すブロック図である。
図4】実施例1の制御装置を構成するCVTコントローラにおけるキックダウン時のダウンシフト制限機能を得るための構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
実施例1では、制御装置は、エンジンと電気モータとで車両を駆動可能なハイブリッド車(HEV)に用いられる。
エンジンは本実施例ではガソリンエンジンであり、過給を行うためのスーパーチャージャを備えている。エンジンからの出力は、自動変速機としての無段変速機(CVT)を介して駆動輪を駆動可能である。
無段変速機は、たとえば入力側のプライマリプーリと出力側のセカンダリプーリとの間に金属製のベルトを架け渡し、両プーリの溝幅を変更することで無段変速可能とする周知のものであって、自動で無段変速するオートモードに加えて、運転者の意思で複数の固定変速段のうちから一つの変速段を手動で選択するマニュアルモードでも運転することが可能である。
また、モータは、インバータからの電力の供給で駆動輪を駆動し、車両の制動時にはジェネレータとして機能し、制動エネルギの一部を交流電流に変えて回収し、インバータで直流電流に変えてバッテリに蓄積可能する回生機能を発揮可能である。
【0015】
まず、無段変速機が接続されるエンジン、エンジンに備え付けられたスーパーチャージャ、およびこれら周辺部品の全体構成を、図1に示す。
同図において、エンジン1は、このインテークマニホールド11に、スーパーチャージャ2で圧縮された吸入空気が、インタークーラ3で冷却されてから供給される。スーパーチャージャ2は、ここでは四つ歯を有する2つのロータが互いに噛み合いながら回転するルーツ型の圧縮機で構成されている。
【0016】
また、スーパーチャージャ2をバイパスしてその上流および下流を連結するバイパス通路中にバイパスバルブ4が設けられて過給圧を制御可能としてある。なお、バイパスバルブ4の下流にはリリーフバルブ23が設けられて過給圧が異常に高くなるのを防止するようにしている。
スーパーチャージャ2の上流側は、エアフィルタ6を介して大気に開放され、ここから空気を吸い込み可能とされている。スーパーチャージャ2とエアフィルタ6との間の通路には、エアフローメータ(空気温度センサも取り付けられている)7が設けられ、吸入空気量および吸い込み口での吸気温度を計測してエンジンコントローラ30(ECM:図2を参照)へその検出信号を送っている。
スーパーチャージャ2の下流側の吸気通路は、エンジンコントローラ30により制御されてエンジン1に供給する空気量を制御するエンジン1の電子式制御スロットル8を介して、インタークーラ3に接続されている。
【0017】
インタークーラ3は、サブラジエータ5に接続されており、ここで冷却された冷却水が水ポンプ9で送られて来て、この冷却水によりスーパーチャージャ2で圧縮されて高温になった吸入空気を冷却する。なお、この冷却水は、モータのインバータ10をも冷却するようにしている。
インタークーラ3の下流は、エンジン1のインテークマニホールド11の他、チェックバルブ24を介してブレーキ装置であるマスターシリンダ12aに連結された倍力装置12bに、またチェックバルブ24およびパージコントロールバルブ13を介して図示しないキャニスタにそれぞれ接続されている。なお、倍力装置には、圧力センサ25が設けられてVDC(ビークルダイナミックコントロール)装置の制御に利用される。
インテークマニホールド11のエンジン1の吸入ポート近くには、フュエルインジェクタ14が設けられ、アクセル開度等に応じて制御された量の燃料を吸入空気中に吹き込み可能にしてある。
【0018】
一方、エンジン1のエキゾーストポートには、エキゾーストマニホールド15が接続され、この集合部の下流に三元触媒16が設けられる。また、この下流のエキゾーストパイプ17の途中で車体床下位置にもメイン触媒18が設けられて、ここでさらに浄化された排気は下流側のエキゾーストパイプ17から図示しないマフラーを介してテールパイプから大気中へと放出される。
なお、エキゾーストマニホールド15の集合部には、上流側酸素センサ19が、またメイン触媒18のすぐ上流には下流側酸素センサ20がそれぞれ設けられて、酸素濃度を検出し、それらの情報をエンジンコントローラ30へ送る。
【0019】
また、スーパーチャージャ2の出口位置、すなわちスーパーチャージャ2の下流で電子式制御スロットル8の上流側の位置に、この位置における過給空気の圧力および温度を計測する第1圧力・温度センサ21(本発明の温度検出手段に相当)が設けられるとともに、インタークーラ3の出口位置に、この位置におけるインタークーラ3により冷却された吸入空気の圧力および温度を計測する第2圧力・温度センサ22が設けられて、これらで計測された圧力情報および温度情報のそれぞれの信号がエンジンコントローラ30に入力される。
【0020】
一方、無段変速機は、周知の構成のもの(たとえば、本出願人の出願に係る特開2002−243031号公報に記載のものなど)を用いるので、ここではその図示および詳細な説明は省略し、本発明に関係する部分のみ説明する。
【0021】
無段変速機は、上述のようにオートモードとマニュアルモードで運転可能であるが、これらのモードによる変速制御は、本実施例では、オートモードの変速制御は図2に示す変速機コントローラ35にて、またマニュアルモードはCVTコントローラ36により実行される。もちろん、これらの変速制御は、変速機コントローラ35とCVTコントローラ36とを統合した1個のコントローラで行うようにしてもよい。
【0022】
図2に、エンジンコントローラ30と、変速機コントローラ35と、CVTコントローラ36の関係を示す。
エンジンコントローラ30は、図1の各種センサやアクセル開度センサ等からの信号を受けて、フュエルインジェクタ14や電子式制御スロットル8などを制御して、エンジンの始動、最適な稼働、停止などを行う。これらの制御はよく知られているので、ここでは省略する。
その他、エンジンコントローラ30は、本発明のスーパーチャージャ保護機能を行うため、スーパーチャージャ出口温度制御部31(本発明の温度判定手段に相当)と、エンジン高油温保護制御部32と、マージ部33とを備えている。
【0023】
スーパーチャージャ出口温度制御部31は、エンジン回転数信号、エンジントルク信号、第1圧力・温度センサ21から入力されたスーパーチャージャ出口における吸気温度信号、アクセル開度信号が入力されて、スーパーチャージャ出口における吸気温度が所定吸気温度値以上とならない第1エンジン上限回転数を算出し、この回転数信号をマージ部33に入力する。ここで、所定吸気温度は、スーパーチャージャ2の耐久性が劣化し始める温度、あるいはこの下方近傍とする。
【0024】
一方、エンジン高油温保護制御部32は、エンジン油温信号が入力されて、この油温が所定油温値以上とならない第2エンジン上限回転数を算出し、この回転数信号をマージ部33に入力する。ここで、所定油温値は、エンジン油が劣化し始める温度、あるいはこの下方近傍とする。
【0025】
マージ部33は、スーパーチャージャ出口温度上昇対応とエンジン油温上昇対応の要件をマージするもので、ここでマージした制限回転数を許可上限エンジン回転数として出力する。マージのやり方は、ここではスーパーチャージャ出口温度制御部31から入力された第1エンジン上限回転数と、エンジン高油温保護制御部32から入力された第2エンジン上限回転数とを比較して、値が低い方を選択する。
【0026】
この許可上限エンジン回転数信号は、CAN34を通じて、変速機コントローラ35とCVTコントローラ36とにそれぞれ送られる。
図外のセレクトスイッチ(本発明のマニュアルモード検出手段に相当)によりセレクトポジションがオートモード(DポジションやLポジション)であると判定された場合には、変速機コントローラ35にてプライマリプーリの目標回転数が許可上限エンジン回転数以下の回転数に低下するように、変速比がハイ側となる方向へ変速比制御を行う。
一方、セレクトスイッチによりマニュアルモードにセレクトされていることが検出された場合には、CVTコントローラ36にて目標回転数が許可上限エンジン回転数以下の回転数となるような上限規制を越えないようにオートアップを行う。
【0027】
以下、CVTコントローラ36で実行されるマニュアルモード選択時におけるスーパーチャージャ高熱化対策は、アクセル開度がパーシャル領域にある場合と、キックダウン領域にある場合とで異なるので、それらについて以下に説明する。
まず、アクセル開度がパーシャル領域にある場合には、図3に示すように、CVTコントローラ36では、図示しない油温センサからのCVT油温信号が入力されて回転制限部40にてCVT油温(横軸にとる)と制限回転数(縦軸にとる)との関係のテーブルを用いてCVT油温による制限回転数を決定し、この信号をレートリミッタ41で所定の範囲(上限および下限)に制限してセレクトロー部42に入力する。
【0028】
セレクトロー部42は、CVT油温による制限回転数信号と、エンジンコントローラ30からの上記許可上限エンジン回転数信号とが入力されて、これらのうち小さい方を選択して上限規制回転数信号としてマニュアルモード上限規制部43(本発明の変速比変更手段に相当)に入力する。
【0029】
マニュアルモード上限規制部43は、マニュアルモード時目標回転数信号とセレクトロー部42からの上限エンジン回転数信号とが入力されて、上限規制回転数(本発明の所定値に相当)を越えると判定した場合にはオートアップする。すなわち、図3のニュアルモード上限規制部43に吹き出しで示されるように、車速(横軸で示す)と目標回転数(縦軸にとる)との関係で、マニュアルモードがたとえば5つの変速段である(変速線を直線M1〜M5で示す)とすると、選択中のマニュアルモードの変速線上での目標回転数が上限規制線(各変速段の上限規制回転数結んだ線で同図中、破線で示す)より上に算定された場合には、そのときの変速線と上限規制線との交点から一つ真下側の別の変速線へとオートアップシフトさせる(たとえば、M1からM2、あるいはM2からM3、あるいはM3からM4、あるいはM4からM5)ことで目標回転数を低下させ、この新しい変速線上で変速制御を行う。
これにより、エンジン油温はもとより、CVT油温の過度の温度上昇およびスーパーチャージャ2の高温化による耐久性劣化を防ぐことができる。
【0030】
また、マニュアルモード選択時にアクセルペダルをキックダウン領域まで踏み込んだ場合の制御を、図4に基づいて説明する。
CVTコントローラ36には、図3と同様に、セレクトロー部42に、CVT油温による制限回転数信号と、エンジンコントローラ30からの上記許可上限エンジン回転数信号と、が入力されるのに加えて、ダウンシフト制限部44からダウンシフト制限回転数信号が入力される。
ここで、ダウンシフト制限部44では、アクセル開度センサからのアクセル開度信号がキックダウン領域にあることを判定したら、車速(横軸にとる)とダウンシフト制限回転数(縦軸にとる)との関係のテーブルを用いてそのときのダウンシフト制限回転数を決定する。
【0031】
セレクトロー部42では、CVT油温による制限回転数信号と、エンジンコントローラ30からの許可上限エンジン回転数信号と、ダウンシフト制限回転数とのうちから最も小さい値となるキックダウン時制限回転数を決定して、このキックダウン時制限回転数信号をキックダウン時ダウンシフト制限部45(本発明の変速比変更手段に相当)に入力する。
【0032】
キックダウン時ダウンシフト制限部45では、吹き出しに示されるように、図3の場合と同様にM1〜M5で示す変速線の5つの変速段の変速線間で、キックダウンが検出されたら図4中で少なくとも1つ上の変速線へオートダウンシフトする(図4中上の変速線へシフトする)ようにする。
ただし、このダウンシフト先の目標の変速線における目標回転数が上限規制線を越えると判定された場合には、その目標の変速線よりハイ側の固定変速比となる変速段の変速線へ変更する。
【0033】
すなわち、その現在の変速線(たとえばM5)のEの位置からオートダウンシフトしようとする目標の変速線が2つ以上ダウン側の変速線(たとえばM2)で、かつその場合の目標回転数Emが上限規制線を越えると判定された場合には、その変速線(この場合、M2)から1つハイ側の変速線(この場合にはM3)にオートアップシフトさせる。この場合、実際には、変速機は変速線M5からの目標ダウンシフトとなる変速線M2を変速線M3へとオートアップシフトして目標回転数Emとすることで、結果としてキックダウンによるダウンシフトを行う。
【0034】
1つ先のアップシフトでも上限規制線を越える場合にはさらにもう一つハイ側の変速線へアップシフトする。このアップシフト先がキックダウン前の変速段と同じ変速線である場合には、変速線のシフトは禁止する。
【0035】
したがって、実施例1の自動変速機の制御装置は、以下の効果を得ることができる。
スーパーチャージャ2付きエンジン1に接続されたマニュアルモードを有する無段変速機を備えた車両にあって、マニュアルモード運転中にエンジン高負荷状態が検出されなくても、スーパーチャージャ2の出口吸気温を測定してこれが所定値以上となる場合に、ハイ側の固定変速比に変更するようにしたので、スーパーチャージャ2を耐久性劣化から守ることができる。
【0036】
スーパーチャージャ2の温度は、この出口における吸気温を測定するようにしたので、もともとエンジン1の制御に利用可能な温度センサを兼用することができ、安価になる。
【0037】
マージ部33にて、スーパーチャージャ2の出口温抑制制御とエンジン高油温保護制御をマージするようにしたので、エンジン油温およびスーパーチャージャ2の過熱の両方を防ぐことが可能となる。
【0038】
マニュアルモード運転時におけるキックダウン時にあっても、キックダウンによるダウンシフト先の変速線での目標回転数が上限規制の回転数を超えるときは、ダウンシフト先の変速線をオートアップさせてハイ側の変速線にシフトするようにしたので、スーパーチャージャ2等の劣化を防ぐことができる。
【0039】
以上、本発明を上記各実施例に基づき説明してきたが、本発明はこれらの実施例に限られず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更等があった場合でも、本発明に含まれる。
【0040】
たとえば、スーパーチャージャ2の温度は、上記実施例では、スーパーチャージャ2の出口における吸気温を測定してこの温度を用いるようにしたが、スーパーチャージャ2の温度を直接計測する温度センサを用いるようにしてもよい。
【0041】
また、上記実施例では、自動変速機にベルト式無段変速機を用いたが、これ以外の無段変速機はもちろん多段式自動変速機を用いるようにしてもよい。
図1
図2
図3
図4