(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ハウジングの内部に形成され、該ハウジング内の油路を介して内部にブレーキ液を貯留可能な有底円筒状のシリンダと、該シリンダの内部に摺動自在に設けられ、シリンダ内を空気室とブレーキ液を貯留する液圧室とに隔成するピストンと、該ピストンを前記液圧室の容積が減少する方向へ付勢する第1付勢部材と、を備えたリザーバタンクを有すると共に、
前記油路と液圧室とを連通する連通孔が形成されていると共に、該連通孔の一端開口縁に弁座が形成されたシート部材と、
前記弁座に離着座することによって前記連通孔を開閉する弁体と、
該弁体を前記弁座方向へ付勢する第2付勢部材と、
前記ピストンによって前記シート部材方向へ押し出されることによって前記連通孔を介して前記弁体を前記第2付勢部材の付勢力に抗して弁座から離間させて前記連通孔の一端開口を開放するプッシュロッドと、を備え、
前記プッシュロッドは、前記弁体に当接する一端部と、前記ピストンの上面部と当接する他端部とを有し、前記他端部の先端面の面積が前記一端部の先端面の面積以上に形成されている一方、
前記シート部材は、前記一端開口と反対側の位置に前記液圧室に向かって開口する凹部が形成され、該凹部の開口端側には、中央に前記プッシュロッドの前記他端部を摺動自在に支持する摺動用孔を有するリテーナが固定されていると共に、少なくとも前記プッシュロッドとリテーナのいずれか一方に、前記凹部と液圧室とを連通する通路部が形成され、
前記プッシュロッドの外周に、該プッシュロッドの前記ピストン方向への最大摺動位置を規制するストッパ部が設けられていると共に、前記ピストンが所定以上下降した際に、前記ストッパ部が前記リテーナの前記凹部側に位置する前記摺動用孔の孔縁に当接して前記プッシュロッドのそれ以上の下降移動を規制することを特徴とするブレーキ装置。
【背景技術】
【0002】
従来のブレーキ装置としては、以下の特許文献1に記載されたものが知られている。概略を説明すると、ブレーキ装置は、マスタシリンダから圧送されたブレーキ液を通流させる油路が内部に形成されたハウジングと、該ハウジング内に設けられたリザーバタンクからブレーキ液を吸引する電動ポンプと、前記ハウジングに取り付けられ、車輪の各ホイールシリンダへのブレーキ液を制御する増圧、減圧電磁弁と、該各増、減圧電磁弁や前記電動式ポンプの作動を制御する制御機構と、を備えている。
【0003】
前記リザーバタンクは、ハウジングの内部に形成され、一端側が前記減圧電磁弁を介して各ホイールシリンダに接続されたブレーキ液通路の他端側が接続されていると共に、前記マスタシリンダとも接続されたシリンダと、該シリンダの内部に摺動自在に設けられて、コイルばねによってシリンダの容積を減少させる方向に付勢する合成樹脂製のピストンと、シリンダの上部側に設けられて、前記マスタシリンダと前記シリンダの液圧室と間のブレーキ液を制御するチェック弁機構と、を備えている。
【0004】
このチェック弁機構は、前記マスタシリンダと連通するブレーキ液圧の油路と前記シリンダとを連通する連通孔が形成されたシート部材と、該シート部材に有する弁座に離着座することによって前記連通孔の一端開口を開閉するボール弁体と、該ボール弁体を弁座方向へ付勢するバルブスプリングと、前記ピストンが前記コイルばねのばね力によって上方向へ所定以上の摺動した際に、ピストンにより押し上げられることによって前記連通孔を介して前記ボール弁体を前記バルブスプリングのばね力に抗して弁座から離間させて前記連通孔の一端開口部を開放する金属製のプッシュロッドと、を備えている。
【0005】
前記電動ポンプが駆動されて前記シリンダ内のブレーキ液圧が排出されると、前記ピストンがシリンダ内をコイルばねのばね力で上昇移動して、前記プッシュロッドを押し上げて前記ボール弁体を弁座から離間させて開放し、前記連通孔を介して前記ブレーキ液圧通路からマスタシリンダのブレーキ液圧をシリンダ内に導入する。一方、前記減圧電磁弁を介してホイールシリンダからブレーキ液圧がシリンダ内に導入されると、ピストンがコイルばねのばね力に抗して下降移動して、プッシュロッドも押し上げが解除されることにより、前記ボール弁体がバルブスプリングのばね力によって弁座に着座して連通孔の一端開口を閉止するようになっている。
【0006】
ところで、前記ブレーキ装置は、チェック弁機構の構造上、前記シート部材の前記連通孔の内径がボール弁体側で大径に形成され、ピストン側で小径に形成されていることから、前記各構成部品を組み付けるに際しては、前記プッシュロッドを前記連通孔の上方から、つまりボール弁体側からピストン方向(シリンダ方向)へ挿通させるようになっている。このため、前記プッシュロッドの外径は、ボール弁体側の一端部が大径に形成され、ピストン側の他端部が小径に形成されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るブレーキ装置の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、車両の通常の制動制御やアンチロックブレーキ制御(ABS)などの制御装置に適用したものである。
〔第1実施形態〕
このブレーキ装置は、
図1の液圧回路に示すように、ブレーキペダル02の踏み込み量に応じた高さのブレーキ圧を発生させるマスタシリンダ1と各ホイールシリンダ2との間に設けられた液圧制御ユニット01内に形成されている。尚、マスタシリンダ1の余剰ブレーキ液を貯留するマスタリザーバ18が接続されている。この液圧制御ユニット01は、アルミニウム合金ブロックによって形成されたほぼ直方体のハウジング3を有し、このハウジング3内に、前記マスタシリンダ1と前輪左右(FR、FL)側及び後輪左右(RR、RL)側の各ホイールシリンダ2とを連通させる一対のメイン通路4,4と、該各メイン通路4、4に設けられて、マスタシリンダ1から各ホイールシリンダ2へのブレーキ液圧を制御する常開ソレノイド型の増圧弁6、6及び常閉ソレノイド型の減圧弁7、7と、前記各ホイールシリンダ2内から排出されたブレーキ液を、前記減圧弁7、7を介して貯留する2つのリザーバタンク10、10と、各メイン通路4、4から分岐されたサブ通路8、8に設けられて、各ホイールシリンダ2(W/C)にブレーキ液圧を吐出すると共に、前記リザーバタンク10、10内に貯留されたブレーキ液をマスタシリンダ1へ吐出する一対のプランジャポンプ9、9と、前記各プランジャポンプ9、9を作動させる一つのポンプモータ11と、を備えている。
【0014】
前記各増圧弁6と各ホイールシリンダ2とは、前記ハウジング3の上面に穿設された各ホイールシリンダポート12によって接続されている。
【0015】
前記マスタシリンダ1と液圧制御ユニット01は、ハウジング3のポート接続面に穿設されたマスターシリンダポート4a、4aを介してメイン通路4、4に接続されている。また、前記マスタシリンダ1と前記各リザーバタンク10は、前記メイン通路4,4から分岐した油路である分岐通路13a、13aによって接続され、この各リザーバタンク10と前記各プランジャポンプ9の吸入側は、油路である各液圧通路13b、13bを介して連通している。前記各リザーバタンク10と前記各減圧弁7は、油路である液圧通路17、17を介して連通している。
【0016】
各プランジャポンプ9との吐出側と各ホイールシリンダ2は、前記各サブ通路8によって接続され、この各サブ通路8上には、各ホイールシリンダ2に対応する前記各増圧弁6が設けられている。なお、前記プランジャポンプ9には、吐出口から各増圧弁6方向へのみブレーキ液の流れを許容するチェック弁14、14が設けられている。
【0017】
前記メイン通路4の各増圧弁6の上流側には、ゲートアウト弁15、15が設けられており、この各ゲートアウト弁15は、常開ソレノイド型の電磁開閉弁であって、通常制動時及びABS作動時に開弁され、挙動制御時は閉弁されるようになっている。
【0018】
前記各ゲートアウト弁15には、各プランジャポンプ9からのブレーキ液の流れを阻止するチェック弁16,16がそれぞれ設けられた液圧通路4b、4bを有する。つまり、この各チェック弁16は、前記マスタシリンダ1から各ホイールシリンダ2へ向かう方向へのブレーキ液圧の流れのみを許容して、その反対方向の流れを阻止するようになっている。
【0019】
前記各増圧弁6は、通常ブレーキ操作時においてマスタシリンダ1からのブレーキ液圧を各ホイールシリンダ2に供給可能に制御する一方、各減圧弁7は、車輪にスリップが発生した車両の挙動が乱れた際に開弁して、前記各ホイールシリンダ2内のブレーキ液を各リザーバタンク10内に戻し一時的に貯留するようになっている。この各増圧、減圧弁6、7は、図外のコントロールユニットから出力された制御電流によって開閉作動され、これによって、各ホイールシリンダ2内のブレーキ液圧を増圧、減圧、保持制御するようになっている。
【0020】
また、前記各リザーバタンク10に一時的に貯留されたブレーキ液は、前記ポンプモータ11によって各プランジャポンプ9が作動することにより、液圧通路13bから前記各ゲートアウト弁15を通って前記マスタシリンダ1にリターンされるようになっている。
【0021】
この車両の挙動制御時は、前記各プランジャポンプ9がポンプモータ11によって作動すると共に、コントロールユニットによって前記各ゲートアウト弁15が閉弁されると共に、前記液圧を掛けたい前記各ホイールシリンダ2側の増圧弁6が開弁される。したがって、各プランジャポンプ9から吐出されたブレーキ液圧は、前記サブ通路8を通って各増圧弁6を介して所定のホイールシリンダ2に圧送されて、該各ホイールシリンダ2の内圧を制御するようになっている。
【0022】
前記各リザーバタンク10は、
図2及び
図3に示すように、前記ハウジング3の下端部内に形成された有底円筒状のシリンダ20と、該シリンダ20内に上下摺動自在に設けられ、シリンダ20内を空気室20aとブレーキ液を一時的に貯留する液圧室20bとに隔成するピストン21と、前記空気室20a内に弾装されて、ピストン21を前記液圧室20bの容積が減少する方向、つまり図中上方向へ付勢する第1付勢部材であるコイルばね22と、を備えている。
【0023】
前記シリンダ20は、下端の底部開口が蓋部材23によって閉塞されていると共に、上端部に一端部が前記マスタシリンダ1に接続された前記分岐通路13aの他端部が接続されていると共に、一端部が前記各プランジャポンプ9に接続された各液圧通路13bの他端部が接続されている。また該各液圧通路13bの側部には、一端部が各減圧弁7の接続された前記液圧通路17の他端部が接続されている。
【0024】
前記蓋部材23は、金属材によって横断面カップ状に形成され、外周のフランジ部23aが前記シリンダ20の下端開口縁にかしめによって固定されていると共に、底部内面に前記コイルばね22の下端部22aが弾持されて、スプリングリテーナとして機能している。また、中央には、前記空気室20aと連通してピストン21の良好な摺動性を確保するための空気抜き孔23bが貫通形成されている。
【0025】
前記ピストン21は、合成樹脂材によって一体に形成され、前記液圧室20bに臨む上面21aの外周側に円環状凸部21bが一体に形成されていると共に、上部外周面に形成された嵌着溝21c内に前記シリンダ20の内周面に摺接して前記液圧室20bをシールするオイルシール24が嵌着固定されている。また、ピストン21の下部内部には凹溝21dが形成されており、この凹溝21dの底面には、前記コイルばね22の上端部22bが弾持されていると共に、底面のほぼ中央位置には前記コイルばね22の上端部を案内支持する円筒状のガイド部21eが一体に設けられている。
【0026】
また、前記シリンダ20の前記液圧室20bに臨む位置、つまり各分岐通路13a側の位置には、調圧弁としてのチェック弁機構25設けられている。
【0027】
この各チェック弁機構25は、
図2〜
図5に示すように、シリンダ20の上方位置に形成された円柱状の弁孔26と、該弁孔26の下端開口付近にかしめ固定された円筒状の金属製シート部材27と、該シート部材27の上部に圧入固定されたフィルタ部材28と、該フィルタ部材28の内部に収容配置されたボール弁体29と、前記フィルタ部材28内に設けられて、前記ボール弁体29をシート部材27方向へ付勢する第2付勢部材であるバルブスプリング30と、前記シート部材27の下部に圧入固定されて、中央に後述する摺動用孔31cが貫通形成された金属製のリテーナ31と、該リテーナ31の前記摺動用孔31c内に摺動自在に支持されて、前記ピストン21の上下移動によって前記ボール弁体29を開閉作動させるプッシュロッド32と、を備えている。
【0028】
前記シート部材27は、ほぼ中央に前記分岐通路13aの他端部と前記液圧室20bとを連通する連通孔27aが貫通形成されていると共に、該連通孔27aの上端開口縁に前記ボール弁体29が離着座する円環テーパ状の弁座27bが形成されている。また、このシート部材27は、外周側に前記弁孔26の下端開口付近にかしめ固定される前記円盤状の固定用フランジ27cが一体に形成されていると共に、該固定用フランジ27cの下部には薄肉円筒状のリテーナ固定部27dが一体に形成され、この下部内側にはほぼ截頭円錐状の凹部27eが形成されている。
【0029】
前記フィルタ部材28は、
図7にも示すように、合成樹脂材によって有蓋円筒状に形成され、周壁28aの下端開口部周囲に形成された段差部28bが前記シート部材27の前記連通孔27aを形成する筒状上端部27fの外周に圧入固定されていると共に、周壁28aの円周方向4箇所にメッシュ部28cが一体に形成されている。この各メッシュ部28cによって分岐通路13aから液圧室20bに流入するブレーキ液を濾過するようになっている。
【0030】
また、このフィルタ部材28の上壁28dの上面には、直方体状の4つの突部28eが一体に設けられている。この各突起28eは、前記上壁28d上面の外周側に設けられて、フィルタ部材28が前記シート部材27の筒状上端部27fから不用意に離脱してしまった場合に、前記上壁28dの上面と弁孔26の上壁面との間に隙間を形成してこの隙間を利用して通路を形成するようになっている。
【0031】
前記ボール弁体29は、金属材によって形成されて、前記バルブスプリング30のばね力によってシート部材27の弁座27bに着座する方向、つまり連通孔27aを閉方向に付勢されていると共に、前記ピストン21の所定以上の上昇移動に伴い前記バルブスプリング30のばね力に抗して前記プッシュロッド32を介して押し上げられて弁座27bから離間することにより連通孔27aの一端開口を開放するようになっている。
【0032】
前記リテーナ31は、
図5及び
図6にも示すように、段差円筒状に形成されて、前記シート部材27のリテーナ固定部27dの内周面に圧入固定される上側の大径筒部31aと、該大径筒部31aの下部中央に一体に形成されて、前記シリンダ21の液圧室20bに臨む小径筒部31bとを有している。この小径筒部31bは、内周面が後述するプッシュロッド32の大径ロッド部32bが摺動する前記摺動用孔31cが形成されている。
【0033】
また、前記大径筒部31aと小径筒部31bとの間の段差部には平坦な円環部31dが形成されており、この円環部31dには、前記シート部材27の凹部27eと液圧室20dとを連通する通路部である4つの通路孔31eが貫通形成されている。この各通路孔31eは、円環部31cの円周方向に沿って長孔状に形成され、円周方向へ等間隔に配置されている。
【0034】
前記プッシュロッド32は、
図4及び
図5に示すように、金属によって段差軸状に形成されて、平坦な上端面(先端面)32cが前記シート部材27の連通孔27aを介してボール弁体29に離接する一端部側の第1の部位である小径ロッド部32aと、小径ロッド部32aの下端縁(他端部側)に一体に設けられ、下端面(先端面)32dが前記ピストン21の上面21aに離接する第2部位である大径ロッド32bと、を備えている。
【0035】
前記小径ロッド部32aは、外径が前記シート部材27の連通孔27aの内径よりも十分に小さく形成されて常時前記連通孔27a内に配置され、外周面と連通孔27aの内周面との間に筒状通路27gが形成されるようになっている。
【0036】
前記大径ロッド部32bは、軸方向の長さが小径ロッド部32aとほぼ同じ長さに形成されていると共に、外径が前記小径ロッド部32aよりも十分に大きく形成され、したがって、下端面32dの面積が小径ロッド部32aの上端面32cよりも十分に大きく形成されている。また、大径ロッド部32bは、前記リテーナ31の摺動用孔31cに摺動自在に案内支持されている。
【0037】
前記小径ロッド部32aと大径ロッド部32bとの間に形成された段差部には、プッシュロッド32のピストン21方向への最大移動位置を規制するストッパ部33が圧入固定されている。
【0038】
このストッパ部33は、金属材または合成樹脂材によって一体に形成され、中央の円筒部33aと、該円筒部33aの下端縁から径方向へ延設されたフランジ状のストッパ片33bと、から構成されている。前記円筒部33aは、内径が前記プッシュロッド32の段差部の外径よりも僅かに小さく形成されて、該小径ロッド部32a側の段差部に圧入されている。前記ストッパ片33bは、その外径が前記リテーナ31の小径筒部31bの外径よりも僅かに大きく形成され、前記シリンダ20の液圧室20bに多くのブレーキ液が導入されてピストン21が所定以上に大きく下降移動した際、前記円環部31dの上面に当接してプッシュロッド32の最大下降移動位置を規制する、つまり下方への脱落を阻止するようになっている。
〔本実施形態の作用〕
まず、前記各チェック弁機構25の各構成部品の一つの組み付け手順を、分解図である
図5に基づいて説明する。内部に前記バルブスプリング30とボール弁体29を収容したフィルタ部材28を、前記シート部材27の筒状上端部27fに前記筒状段差部28bを介して圧入固定する。このとき、ボール弁体29は、バルブスプリング30のばね力によって前記シート部材7の弁座27bに着座した状態になっている。
【0039】
一方、前記プッシュロッド32を、前記リテーナ31の上方から組み付ける。すなわち、予めプッシュロッド32の小径ロッド部32aにストッパ部33の円筒部33aを圧入固定しておき、この状態で前記プッシュロッド32の大径ロッド部32bを、リテーナ31の小径筒部31bの摺動用孔31c内に上方から挿入して、前記ストッパ片33bをリテーナ31の円環部31dの上端面に当接させてプッシュロッド32の組み付け位置を保持する。
【0040】
次に、前記プッシュロッド32が組み付けられたリテーナ31を、前記シート部材27に下方から圧入する。つまり、リテーナ31を持ちながら前記プッシュロッド32の小径ロッド部32aを前記シート部材27の凹部27eを介して連通孔27a内に挿通しつつリテーナ31の大径筒部31aの外周面をリテーナ固定部27dの内周面に圧入固定する。
【0041】
続いて、このチェック弁機構25のユニットを、前記弁孔26の内部に位置決めすると共に、前記シート部材27の固定用フランジ27cを介して弁孔26の下端開口の周壁をかしめ加工する。これによって、
図4に示すように、前記チェック弁機構25ユニットのハウジング3に対する組み付けが完了する。
【0042】
その後、前記シリンダ20内にピストン21を収容すると共に、蓋部材23を介してコイルばね22をピストン21の下部に位置決めしつつフランジ部23aをシリンダ20の下端開口に位置決め保持する。続いて、シリンダ20の下端開口の周壁をかしめ加工すれば、前記蓋部材23のフランジ部23aが固定されて、リザーバタンク10の各構成部品の組み付けが完了する。
【0043】
この状態では、
図2及び
図4に示すように、前記ピストン21がコイルばね22のばね力によって上方位置に付勢されて、ピストン21の上端外周部がシリンダ20の上端周壁に当接してそれ以上の上方移動が規制される。同時に、ピストン上面21aがプッシュロッド32の大径ロッド部32bの下面32dに当接しつつ該プッシュロッド32を押し上げることから、ボール弁体29は、弁座27bから離間して連通孔27aの上端開口を開放した状態になる。
【0044】
そして、車両の走行中やブレーキ操作などによって、前記ブレーキ液が各減圧弁7を介してシリンダ20の液圧室20b内に導入され、あるいはプランジャポンプ9の駆動によって液圧室29bからマスタシリンダ1方向へ導出されることにより、ピストン21がシリンダ20内を上下摺動して、ピストン21の上面21aに対して前記大径ロッド部32bの下面32dが接離する。
【0045】
すなわち、前記液圧室20b内のブレーキ液圧が高くなると、
図3に示すように、前記ピストン21がコイルばね22のばね力に抗してシリンダ20内を所定以上下降移動し、プッシュロッド32もバルブスプリング30のばね力によりボール弁体29を介して摺動用孔31c内を下方へ移動する。これによって、ボール弁体29が、弁座27bに着座して連通孔27aの上端開口を閉止することから、前記分岐通路13aからマスタシリンダ1のブレーキ液の液圧室20b内への導入が阻止される。
【0046】
一方、前記液圧室20b内のブレーキ液が減少してピストン21がコイルばね22のばね力により上昇移動すると、
図2及び
図4に示すように、ピストン上面21aがプッシュロッド32を押し上げてボール弁体29をバルブスプリング30のばね力に抗して上方へ移動させる。これによって、ボール弁体29が弁座27bから離間して連通孔27aの上端開口を開放することから、液圧室20b内のブレーキ液が分岐通路13aを介してマスタシリンダ1へ供給させることができる。
【0047】
そして、本実施形態では、ピストン21の上面21aに対してプッシュロッド32の大径ロッド部32bの比較的大きな面積の下面32dが当接することから、ピストン上面21aに対する面圧が十分に小さくなる。このため、ピストン21全体を合成樹脂材に形成しても経時的に上面21aに凹みなどの発生を抑制できる。したがって、前記従来技術のように、ピストン21全体を金属で形成したり、ピストン21の上面に金属プレートをインサート成形する必要がなくなることから、ピストン21の軽量化が図れると共に、成形コストの上昇を抑制することができる。
【0048】
換言すれば、本実施形態では、チェック弁機構25の構造を改良して、組付時におけるプッシュロッド32の大径ロッド部32bを一旦、リテーナ31の小径筒部31bの摺動用孔31c内に上方から挿入して、ストッパ片33bをリテーナ31の円環部31dの上端面に当接させてプッシュロッド32の組み付け位置を保持した上で、リテーナ31を、前記シート部材27に下方から圧入し、プッシュロッド32をシート部材27内に挿通することができるため、ピストン21の上面21aに当接する前記プッシュロッド32の大径ロッド部32bの外径を可及的に大きくすることができる。これによって、ピストン上面21bとの当接時の面圧を小さくすることが可能になったのである。この結果、ピストン上面21aの凹みの発生が抑制されて耐久性の向上が図れる。
【0049】
また、本実施形態では、単にリテーナ31を介在させるだけであるから、構造の簡素化が図れて、製造作業や組み付け作業の煩雑化を抑制できる。この点でも、コストの上昇を抑えることができる。
【0050】
しかも、前述のように、大径ロッド部32bの大径化と共に、プッシュロッド32が当接するピストン21の上面21aも合成樹脂材であることから、金属製のプッシュロッド32との大きな振動打音の発生を抑制することができる。この結果、乗員の不快感を解消することが可能になる。なお、前述したように、コスト面や軽量化、振動打音抑制の観点から、ピストン21の材質は合成樹脂材が最良であるが、ピストン21を金属製としてもよく、その場合でも本実施形態によりピストン21とプッシュロッド32とで生じる面圧を抑制することができる。
〔第2実施形態〕
図8は本発明の第2実施形態を示し、プッシュロッド32の構造を変更したものである。具体的には、プッシュロッド32全体の外径を前記小径ロッド部32aの外径と同じく形成して下端ロッド部32eの外周面に縦断面ほぼU字形状の嵌挿部34が下方から圧入固定されている。この嵌挿部34は、その外径が第1実施形態の大径ロッド部32bとほぼ同じ大きさに形成され、したがって、下端面34aの面積も大径ロッド部32bの下端面32dとほぼ同じ大きさに形成されている。また、この嵌挿部34の上端縁には、前記ストッパ部33を兼ねたフランジ状のストッパ片34bが一体に形成されている。
【0051】
他の構成は、第1実施形態と同じであるから同一の作用効果が得られるが、特に、この実施形態では嵌挿部34がプッシュロッド32の拡径機能とストッパ機能を有していることから、第1実施形態のように、段差径状のプッシュロッド32の他にストッパ部33を設ける場合に比較して、プッシュロッド32全体の製造作業が容易になり、コストの低減化が図れる。
〔第3実施形態〕
図9は第3実施形態を示し、プッシュロッド32を第1実施形態のものと同じ構造とし、大径ロッド部32bの外周面に、第2実施形態で用いられた嵌挿部よりさらに外径が大きな嵌挿部35が下側から圧入固定されている。この嵌挿部35は、下端面35aの面積がさらに大きくなっていると共に、上端縁にフランジ状のストッパ片35bが一体に形成されている。なお、前記嵌挿部34の大径化に伴って前記リテーナ31の小径筒部31bの内径、つまり、嵌挿部34が摺動する摺動用孔31cの内径もそれに応じて大きく形成されている。
【0052】
したがって、この実施形態によれば、嵌挿部35によってピストン上面21aとの接触面圧がさらに小さくなるので、ピストン上面21aの凹みの発生や振動打音の発生をさらに抑制することが可能になる。
〔第4実施形態〕
図10は第4実施形態を示し、第1実施形態におけるプッシュロッド32の大径ロッド部32bの外径をさらに大きく形成すると共に、小径ロッド部32aとの間の段差部の位置にフランジ状のストッパ部33を合成樹脂材によって一体に形成したものである。なお、大径ロッド部32bの大径化に伴って前記リテーナ31の摺動用孔31cの内径もそれに応じて大きく形成されている。
【0053】
したがって、この実施形態も大径ロッド部32bのさらなる大径化によって下端面32dの面積がさらに大きくなることから、第3実施形態などと同じくピストン1の上面21aとの面圧が一層小さくなって、ピストン上面21aの凹みの発生や振動打音の発生をさらに抑制することが可能になる。
【0054】
また、ストッパ部33をプッシュロッド32と一体化したことによって組み付け作業を簡素化することができる。
〔第5実施形態〕
図11は第5実施形態を示し、プッシュロッド32の大径ロッド部の構造を変更したものである。プッシュロッド32は、
図12A、Bに示すように、小径ロッド部32aは第1実施形態のものと同じ構造であるが、大径ロッド部36が中心軸部36aと、該中心軸部36aから径方向に延びた横断面ほぼ十字形状の4つの突起部36bから構成されている。また、前記各突起部36b間には、円弧状の溝部36cが形成されて、この各溝部36cがブレーキ液の通路溝になっている。
【0055】
また、前記小径ロッド部32aと大径ロッド部36の間の段差部には、フランジ状のストッパ部33が一体に設けられている。
【0056】
したがって、この実施形態によれば、大径ロッド部36の底面、つまり中心軸部36aと各突起部36bの下面全体が比較的大きな面積となることから、ピストン21の上面21aとの接触面圧を十分に小さくすることが可能になる。特に、各突起部36bによってピストン上面21aへの当接時の面圧が大きく分散されることから、該面圧のさらなる低減化が図れる。この結果、ピストン1の上面21aとの面圧が一層小さくなって、ピストン上面21aの凹みの発生や振動打音の発生をさらに抑制することが可能になる。
【0057】
しかも、リテーナ31の各通路孔31eの他に、各溝部36cが通路溝として機能することから、ボール弁体29が開弁した際の、前記液圧室20bから凹部27eや分岐通路13bを介してマスタシリンダ1へのブレーキ液の流動性が向上する。
【0058】
また、ストッパ片33をプッシュロッド32と一体化したことによって組み付け作業性が良好になることは、第4実施形態と同様である。
【0059】
なお、前記大径ロッド部36に各溝部36cを形成したことによって、前記リテーナ31の各通路孔31eを廃止することも可能である。
〔第6〜第10実施形態〕
図13〜
図17は第6〜第10実施形態を示し、基本的には、前記第1〜第5実施形態に対応したもので、異なるところは各実施形態のリテーナ31の大径筒部31aの外径を第1〜第5実施形態のものよりも大きく形成して、前記シート部材27のリテーナ固定部27dの外周面に前記大径筒部31aの内周面を圧入固定したものである。
【0060】
他の構成は、対応する第1〜第5実施形態と同様であるから、これらと同様の作用効果が得られることは勿論のこと、とりわけ、リテーナ固定部27dの外側に大径筒部31aを圧入したことから、シート部材27に対するリテーナ31の位置決め作業と圧入作業が容易になる。
〔第11実施形態〕
図18及び
図19は第11実施形態を示し、基本的には、前記
図16に示す第9実施形態に記載された構造と類似したもので、異なるところは、前記フィルタ部材28が軸方向に長く形成されていると共に、前記シート部材27の連通孔27aの内径がプッシュロッド32の大径ロッド部32bの外径よりも小さく形成されている。
【0061】
すなわち、前記フィルタ部材28は、周壁28aが軸方向に沿って延長形成されていると共に、これにしたがってメッシュ部28cの全体の面積も軸方向へ長く拡大形成されている。また、上壁28dの下端面中央位置には、規制軸部28fが一体に垂設されており、この規制軸部28fは、前記周壁28を軸方向に延長形成したことに伴い前記ボール弁体29の上方向への過度な移動を先端面28gで規制するようになっている。またこの規制軸部28fは、外周側に配置されたバルブスプリング30の内周側を案内保持するようになっており、該バルブスプリング30の伸縮変形時の横方向への撓み変形も規制するようになっている。
【0062】
前記連通孔27aは、内径d全体がプッシュロッド32の大径ロッド部32bの外径d1よりも僅かに小さく形成されている。
【0063】
したがって、前述したような、各構成部品に組付時に、誤って前記プッシュロッド32の大径ロッド部32b側を連通孔27a側に組み付けようとした場合は、外径の大きな大径ロッド部32bが小径な連通孔27aの下部孔縁に突き当たって挿通されないことから、誤組付を未然に防止することができる。
【0064】
また、前記規制軸部28fによって、ボール弁体29の過度な上方移動が規制され、また、バルブスプリング30の横方向への撓み変形も抑制できるので、前記ボール弁体29とバルブスプリング30の挙動の安定化が図れる。
【0065】
他の構成は、前記他の実施形態と同様であるから、これらと同様の作用効果が得られる
なお、前記各実施形態では、液圧室20b内のブレーキ液圧が高くなりピストン21が所定以上下降した場合、ストッパ部33、またはストッパ片34b,35bが円環部31dの上面に当接してプッシュロッド32の最大下降移動位置を規制しているが、ストッパ部33、またはストッパ片34b,35bを省略することもできる。この場合、プッシュロッド32はピストン21の上面21aに対し、常時接地するため、打音を抑制することができると共に、コストを抑制することができる。
【0066】
本発明は、前記各実施形態の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で構成を変更することも可能である。
【0067】
前記実施形態から把握される前記請求項以外の発明の技術的思想について以下に説明する。
〔請求項a〕請求項1〜5のいずれか一項に記載のブレーキ装置において、
前記シート部材の凹部の軸方向の長さは、前記プッシュロッドがピストンによって最大まで押圧されるストローク量よりも大きいことを特徴とするブレーキ装置。