(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
人の目は部屋の照明の色温度が異なっても、色の変化をあまり感じないようになっており、一般的にこの特性は色順応と呼ばれている。例えば、色温度が高いため青っぽく見える蛍光灯照明の部屋から、色温度が低いため黄色っぽく見える白熱灯照明の部屋に入ると、部屋の白い壁が最初は黄色っぽく見えるが、しばらく経つと、黄色っぽく見えていた壁が白く見えるようになる。このように人間の視覚に色順応という特性があるために、部屋の照明の色が異なると、テレビが同じ画像を表示していても、その画像は異なった色に見えることになる。
【0003】
近年、液晶テレビの高画質化に伴い、部屋の照明の種類によって画像の色味を微調整することにより、部屋の照明の色温度が変化しても、自然な画像に見えるようにする機能に対する要望が高まってきている。そのため、部屋の色温度を検出して、目の色順応に対応するように画像の色味を自動的にコントロールすることができるように、部屋の色温度を検出するカラーセンサの液晶テレビへの搭載が進んでいる。また、スマートフォンやタブレットPC(パソコン)等のように持ち運びが可能な機器に搭載される液晶画面の場合、周囲の照明が視聴場所によって刻々と変化するため、カラーセンサのように自動的に色温度を検出するセンサはより重要となっている。
【0004】
このカラーセンサは、環境光から可視光領域における三原色であるR(赤)、G(緑)、B(青)の分光を別々センシングすることにより構成される。(以下、カラーセンサをRGBセンサと言う。)
【0005】
このRGBセンサでは、環境光をセンシングするために、複数の光電変換素子が用いられ、この光電変換素子となるデバイスは一般にフォトダイオードにより構成されている。このフォトダイオード自体は色を識別することができず、光の強さ(光量)しか検出することができない。そこで、画像を電気信号に変換する場合、色を識別するために、各フォトダイオード上にカラーフィルタを被せて、各フォトダイオードで光の3原色であるR(赤)、G(緑)、B(青)の光の光量を検出することで、フォトダイオードから色信号を取得する。
【0006】
従来、RGBセンサにおいては、環境光をR(赤)、G(緑)、B(青)の三原色の光に分けるために、金属材料の吸収による遮光もしくは光の干渉により特定の波長のみを透過または反射させるカラーフィルタを用いる方法が一般的である。
【0007】
一方、デジタルスチルカメラやビデオカメラ等、被写体を2次元固体撮像素子から成る光電変換素子にて撮影して画像化する2次元固体撮像装置も増加してきている。そして、現在主流の固体撮像素子であるCCD(電荷結合素子:Charge Coupled Device)撮像素子やCMOS(相補形金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ:Complementary Metal Oxide Semiconductor)撮像素子の各画素上にもオンチップフィルタとしてR(赤)、G(緑)、B(青)のカラーフィルタが搭載され、これらカラーフィルタでは除去できない赤外光を除去するため、パッケージに赤外カットフィルタが搭載されている。
【0008】
しかしながら、上記従来のRGBセンサにおいては、RGBの三原色の光を振り分けるカラーフィルタを形成するために、3種類のフォトマスクが必要であり、この3種類のフォトマスクが必要であることが、製造工程において時間とコストを引き上げる要因となっている。
【0009】
これらの時間とコストを引き下げるために、上述のカラーフィルタに代わる光波長選択性フィルタとして、金属薄膜にナノスケールの微細加工を施して周期的な構造を形成し、この構造に光りを入射することによって、励起される表面プラズモン共鳴による光の異常透過現象を用いることが提案されている。
【0010】
この表面プラズモン共鳴を用いた波長選択性フィルタ(以下、プラズモニックフィルタと記載)については、特許文献1に詳しく説明されている。この異常透過現象を発生させる手段として様々な方法があるが、例えば、
図9に示すように、50〜200nm程度の薄い金属膜501を形成し、この金属膜501に透過波長ごとに決まった周期で微細なホールアレイ502,502,502,…をパターニングして、光学フィルタ層500を形成する方法がある。この光学フィルタ層500に光が入射した時に透過する分光波形が
図10に示されている。但し、表面プラズモン共鳴は、ある導電材料膜と誘電体膜との界面で生じる表面プラズモンと、入射光により生じる近接場光との共鳴で生じるため、表面プラズモン共鳴を効率よく発生させるためには、導電材料膜や誘電体膜は単一構造(材料、屈折率などの物性の均一性、ホール周期や形状の均一性)とすることが望ましく、誘電体膜は、無分散な光学特性であることが望ましい。上記導電材料膜とは、単体で導体であり、任意の波長帯域で70%以上の反射率を有し、常温では固体である金属元素からなるもの、および、それらの合金または酸化物を指す(非特許文献1を参照)。
【0011】
例えば、金属材料としては、アルミニウム、銅、銀、金、窒化チタン、窒化ジルコニウム、ニッケル、コバルト、または、これらの合金からなる群から選択される材料が用いられている。
【0012】
特に、アルミニウムと、アルミニウムと銅との合金は、
(i)プラズマ周波数が紫外線波長であるために、可視光よりも長い波長領域で共鳴現象が生じる
(ii)通常の半導体プロセスで使用される材料であり、プロセスインテグレーションの点でも特殊な装置や材料が不要である
(iii)材料が安価である
(iv)作製プロセスが単純であり、それぞれの波長に対応した光学フィルタを一括して形成可能である
等の利点があり、採用される場合が多い。
【0013】
また、上記金属よりもプラズマ周波数が低いが、可視光下で透明なことから、可視光〜近赤外線にプラズマ周波数をもつ、ITO(Sn:In
2O
3)が代表的なIn
2O
3系、AZO(Al:ZnO)、GZO(Ga:ZnO)、BZO(B:ZnO)、IZO(In:ZnO)が代表的なZnO系、IGZO系の金属酸化物透明導電材料も、表面プラズモニックフィルタの材料に用いられる。
【0014】
上記のようなプラズモニックフィルタを用いたRGBセンサを形成するためには、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色を透過させるように設計した周期的な構造を互いに隣接して配置する必要がある。
【0015】
非特許文献2によれば、金属材料としてAlを使用して膜厚150nmで形成した円形ホールアレイの周期構造を有するフィルタの場合、
図11に示すようにB(青、波長450nm)、G(緑、波長550nm)、R(赤、波長650nm)の光を透過させるには、ホール間周期aをそれぞれ260nm、340nm、420nmとする必要がある。また、透過させる光の波長λとホール間周期(格子定数)aには
図12に示す通り線形の関係がある。但し、上記ホール間周期aは、金属材料やその周辺の絶縁膜材料により変化する。
【0016】
また、CCD撮像素子等の高画素数化に伴い、各画素サイズは小さくなり、隣接する画素までの距離も小さくなるが、特許文献2に記載の通り、各領域別に所望の波長の光が透過するように異なる周期のフィルタを分離して形成しなければならない。もし、それらのフィルタを重ねて配置すると、複数種類の波長の光が透過して波長選択性が低下することや、ある波長での透過率が低下すること等の問題が生じる。
【0017】
また、それらのフィルタを分離して配置しても、その距離を適正にしなければ以下の問題が生じる。
図13に配置の一例を示して説明する。R(赤)、G(緑)、B(青)の異なる3波長の光を透過するプラズモニックフィルタ102,103,101を
図13に示すように配置する。プラズモニックフィルタ101の中は均一なホール間周期P1で各ホールが配置されており、同様にプラズモニックフィルタ102の中は均一なホール間周期P2、プラズモニックフィルタ103の中は均一なホール間周期P3で各ホールが配置されている。
【0018】
これらのプラズモニックフィルタ101,102,103が単独で存在する場合には、各色の光が透過するホール間周期のみとなっているため、波長選択性のよい透過分光波形が得られる。しかし、
図13のように配置した場合、プラズモニックフィルタ101とプラズモニックフィルタ102の間において、プラズモニックフィルタ101を構成するホールとプラズモニックフィルタ102を構成するホールとの間隔aが上記周期P1やP2と異なる周期aとなっており、この周期aに対応する波長の光が多少透過してしまうことになる。プラズモニックフィルタ102とプラズモニックフィルタ103との間におけるホールの周期bについても同様である。
【0019】
この課題を解決する先行技術の一つが特許文献3に提案されている。この特許文献3では、できるだけ周期aとプラズモニックフィルタ101の周期P1やプラズモニックフィルタ102の周期P2とを近くして、意図せず透過してしまう光の波長を所望の波長と近づけるようにしている。具体的には、周期aを周期P1、P2のそれぞれ0.75〜1.25倍(1.00±0.25)と規定されている。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を図示の実施形態により詳細に説明する。
【0028】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による光電変換装置について
図1および
図2を用いて具体的に説明する。
【0029】
図1は、本発明の第1実施形態による光電変換装置の断面を示している。この光電変換装置は、P型シリコン半導体基板1に、第1および第2の光電変換素子A,Bを設けている。この第1および第2の光電変換素子A,Bは、それぞれ、シリコンフォトダイオードA,Bからなる。このシリコンフォトダイオードA,Bは、P型シリコン半導体基板1と、そのP型シリコン半導体基板1上のN型半導体拡散層2,2と、シリコン酸化膜3とからなるPN接合フォトダイオードA,Bである。このN型半導体拡散層2,2は、P型シリコン半導体基板1上にリンやヒ素などをイオン注入等の方法で導入し、1100℃程度のアニールを加えることにより形成される。
【0030】
なお、上記半導体基板1および半導体拡散層2のPN極性はもちろん逆でも問題ない(つまりN型シリコン半導体基板上に形成されたP型半導体拡散層の構成)。
【0031】
上記N型半導体拡散層2,2およびP型シリコン半導体基板1の上に、絶縁膜としてのシリコン酸化膜3をCVD(化学的気相成長:Chemical Vapor Deposition)法などの一般的な方法で形成する。そして、このシリコンフォトダイオードA,Bとコンタクトをとるために、シリコン酸化膜3に開口して、スパッタ等の方法でAlやAlCu等で電極4を形成する。その後、上記シリコン酸化膜3および電極4上に、絶縁膜としてのシリコン酸化膜5をCVD等の方法で形成する。
【0032】
このシリコン酸化膜5を成膜した後、CMP(化学機械研磨:Chemical Mechanical Polishing)等で十分に平坦化する。このシリコン酸化膜5の上に形成する第1および第2の光学フィルタ、つまり、第1および第2の表面プラズモニックフィルタとなる後述する導電材料膜の一例としての第1および第2の金属膜6a,6bは、200nm以下の微細加工が必要となるため、シリコン酸化膜5の平坦化は重要である。
【0033】
上記第1および第2の光学フィルタとしての第1および第2の金属膜6a,6bは、プラズモニックフィルタ6a,6bであり、夫々、所望の波長の光が透過する周期的な構造の一例としての周期的な開口11,12を有する。具体的には、この第1および第2の金属膜6a,6bは、平坦化されたシリコン酸化膜5上に、スパッタによりAlを150nmの厚さで成膜し、その上にレジスト塗布した後、フォトリソグラフィで周期的な異なる開口11,12を形成する。この開口11,12は、夫々、一定周期で複数の円形のホール(貫通穴)11,12からなって、開口パターンを形成する。なお、開口は、ホール(貫通穴)に代えて、凹部であってもよい。
【0034】
最後に、この第1および第2の金属膜6a,6bおよびシリコン酸化膜5の上にパッシベーション膜として機能する誘電体膜であるシリコン酸化膜7を形成する。この際、前工程にて形成された第1および第2の金属膜6a,6bの複数の開口としてのホール11,12を、シリコン酸化膜7で埋める必要があるため、このシリコン酸化膜7を高密度プラズマCVD法で形成する。
【0035】
最後に、
図1では省略しているが、パッド領域を開口する。
【0036】
上記光電変換素子A,Bは、フォトダイオード以外でも、CCD撮像素子やCMOS撮像素子を用いてよい。
【0037】
次に、
図2は、
図1に示した本発明の第1実施形態による光電変換装置の上からの平面図を示している。例えば、上記第1の金属膜6aは青色(λ=420nm)の光を透過させる第1の光学フィルタとしての表面プラズモニックフィルタであり、第2の金属膜6bは赤色(λ=630nm)の光を透過させる第2の光学フィルタとしての表面プラズモニックフィルタである。この第1の金属膜6aの開口11の周期P1および第2の金属膜6bの開口12の周期P2は、第1および第2の光学フィルタとなる第1および第2の金属膜6a,6bの金属材料やその周りの誘電体膜7,5の屈折率により決まる。また逆に、表面プラズモニックフィルタの特徴として、表面プラズモニックフィルタの導電材料、その周りの誘電体膜、周期的な構造が決まれば、透過する光の波長が原理的には一意に決まる。本発明の第1実施形態の場合、上記導電材料はAl、誘電体膜はSiO
2からなる表面プラズモニックフィルタであり、開口11,12の周期P1,P2はそれぞれ260nm、420nmである。つまり、
図2では、P1=260nm、P2=420nmである。
【0038】
図3に、
図2の第1および第2の光学フィルタとしての第1および第2の金属膜6a,6bの開口パターンにおける周期と透過波長と誘電体材料依存の関係を示す。導電材料膜にはAlを用い、誘電体膜にはそれぞれ屈折率が異なる材料(SiO
2、Al
2O
4、Si
3N
4、TiO
2)を用いた結果を示す。開口パターンの周期を長くすると透過最大波長が線形の関係で長くなる。
図4に、
図3から求められる最大透過波長と誘電体膜の屈折率との関係を示す。同最大透過波長において、誘電体膜の屈折率が大きくなれば、パターン周期が小さくなることが分かる。つまり、誘電体膜の屈折率が高くなると、隣接の光学フィルタ間の間隔が狭くなることを示す。
【0039】
図5に、誘電体材料の屈折率の波長依存性を示す。
図5に記載の誘電体材料は、表面プラズモニックフィルタの誘電体膜の材料として想定される材料の一例であり、図示の波長領域において、おおよそ無分散な材料である。これより、表面プラズモニックフィルタの誘電体膜の屈折率は、1.0以上3.0以下の範囲に存在することがわかる。
【0040】
したがって、
図2に示す表面プラズモニックフィルタ6a,6bを隣接配置すると、第1の金属膜6aの開口としてのホール11と、第2の金属膜6bの開口としてのホール12との間隔a、つまり、第1の光学フィルタ6aの周期的な複数の開口11の第1のパターンと第2の光学フィルタ6bの周期的な複数の開口12の第2のパターンとの間隔aが小さく、例えば340nmしかなければ、この周期では緑色(λ=550nm)の光が表面プラズモン共鳴により透過するため、本来、第1の金属膜6aの領域では青色のみ、第2の金属膜6bの領域では赤色のみが透過するはずが、境界部より緑色が透過することになる。この現象が生じると、各領域での色の認識がずれるため、例えばRGBセンサ等で色温度をセンシングしようとしても、正しく検出できず、間違った補正をかけてしまうことになる。
【0041】
これに対して、この第1実施形態では、光電変換素子A,BとしてシリコンフォトダイオードA,Bを用いており、シリコンの物性上、1200nm程度までの光しか吸収できないことに着目し、第1の金属膜6aと第2の金属膜6bとの境界部のホール11,12間周期aによって透過する光の波長が上記1200nm以上となる寸法に設定している。具体的には、第1の光学フィルタ6aの開口11の第1のパターンと第2の光学フィルタ6bの開口12の第2のパターンとの間隔a、つまり、ホール11とホール12との間隔aを周期P1およびP2よりも長い約600nm以上離して配置することにより、境界部のホール11,12による表面プラズモン共鳴で透過する光の波長は1200nmよりも長いため、シリコンフォトダイオードA,Bから成る光電変換素子A,Bでは感知できず、例えば色温度がずれることはない。
【0042】
したがって、この第1実施形態によれば、精度の高い波長選択性を確保することができる。
【0043】
また、この第1実施形態によれば、上述の如く、例えば、ホール11とホール12とを約600nm以上離すだけでよいから、異なる周期的な構造11,12を有する第1および第2の光学フィルタ、つまり、表面プラズモニックフィルタ6a,6bを配置するのに大きな制約を受けることがなくて、任意に配置することができる。
【0044】
(第2実施形態)
この第2実施形態の光電変換装置は、光電変換素子の材料および第1および第2の光学フィルタ、つまり、第1および第2の金属膜の導電材料のみが異なる。したがって、この第2実施形態の説明に、第1実施形態の
図2を援用する。
【0045】
上記の通り、本発明の第1実施形態では、光電変換素子A,BにシリコンフォトダイオードA,Bを用いたが、当然ながら他の材料を用いることも可能である。その場合は、下記の表1に示す各材料の物性(バンドギャップ)により各材料が吸収しうる光の最大波長λmax、および、その光を透過させないホール間周期が異なり、凡そ下記の(式2)で求められる。
【0047】
(式2) λmax[nm]≒1240/Ea
ここで、Ea:バンドギャップ[eV]
したがって、Siでは境界部のホール11,12間周期aを600nm以上離して配置すればよいが、表1の材料の中で例えばバンドギャップの狭いGeでは最大透過波長が1770nmと長いため、周期aを1350nm以上離して配置する必要がある。一方、バンドギャップが広いGaAsやGaNはそれぞれ境界部のホール11,12間周期aを400nm、80nmまで近づけることができる。上記寸法以上離して配置すれば、特性上問題はないが、離しすぎると光学フィルタの間隔が広がり、カラーセンサ全体のサイズが大きくなり、コストアップや小型化が困難であるという問題が生じる。その場合は、例えばSiであればほぼ適正なホール間周期の最小値である600nmで配置するのが望ましいと考えられる。
【0048】
例えば、別材料としてGaAsを光電変換素子に用いる場合、GaAsはIII−V属の半導体であるため、N型半導体層をGaAsに6価のセレン等を添加して形成し、P型半導体をGaAsに2価の亜鉛等を添加して形成して、GaAsのPN接合を形成して光電変換層を形成する。
【0049】
その上に、第1実施形態と同じAlを使用したホールアレイ型のプラズモニックフィルタ6a,6bを形成する場合、その境界のホール11,12間周期aは400nm程度にすることが望ましい。
【0050】
これにより、第1実施形態と同様にそれぞれ独立した波長の光を透過させ、境界部で透過する光が光電変換素子A,Bで吸収されることがないため、精度の高い波長選択性を確保でき、かつ、複数の異なる波長を透過させることができ、かつ、プラズモニックフィルタ6a,6bを配置するのに大きな制約を受けることがない光電変換装置を得ることができる。
【0051】
本第2実施形態の光学フィルタ、つまり、表面プラズモニックフィルタ6a,6bの導電材料は、アルミニウム、銅、銀、金、窒化チタン、窒化ジルコニウム、ニッケル、コバルトまたはこれらの合金からなる群から選択される材料であるが、可視光では透明かつ赤外で高反射特性(プラズマ周波数が380THz以下)を示すITO(Sn:In
2O
3)が代表的なIn
2O
3系、AZO(Al:ZnO)、GZO(Ga:ZnO)、BZO(B:ZnO)、IZO(In:ZnO)が代表的なZnO系、IGZO系の金属酸化物透明導電材料から選択される材料で構成されることが望ましい。
【0052】
(第3実施形態)
本発明の第1および第2実施形態では、プラズモニックフィルタの材料をAlとし、光学フィルタのパターン周囲の誘電体膜をシリコン酸化膜とし、かつ、円形ホールアレイの場合を具体的に説明したが、フィルタ材料はAl以外でもAu、Ag、Cuやその他金属でも使用可能であるし、誘電体膜についてシリコン窒化膜をはじめとして他の材料でも問題がない。この第3実施形態の光電変換装置につて、材料、寸法の相違を除いて、第1実施形態の
図1および2を援用する。
【0053】
本発明の第3実施形態では、プラズモニックフィルタ6a,6bの材料として、Al以外のAuを用いた場合について説明する。Al系材料をプラズモニックフィルタに採用するメリットについては既に述べたが、Al系材料の欠点は数umの波長の長い光でのプラズモン共鳴効果が弱いことである。表面プラズモン共鳴の効果は光学フィルタに用いる金属材料の誘電関数(金属のため、複素誘電関数)に大きく影響される。特に、誘電関数の実部の絶対値が大きく、誘電関数の虚部の絶対値が小さいほど望ましい。特に、誘電関数の虚部の絶対値が重要である。しかし、
図6および
図7にAl、Auの誘電関数を示すが、Au、Ag、Cu等に比べてAl系材料は数umの長波長領域での誘電関数の虚部の絶対値が大きいことが分かる。誘電関数の虚部の絶対値が大きいと、表面プラズモン共鳴効果が起こりにくいことが分かっており、数um程度の長波長領域では、Al系材料よりAuやAgを用いる方が望ましい。隣接する独立したプラズモニックフィルタ6a,6bの間隔については本発明の第1実施形態で説明した通り、Auで形成されたプラズモニックフィルタ6a,6bを透過する光の波長が、その下に形成された光電変換素子A,Bの材料で吸収できない波長となる間隔で配置すれば、本発明の第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0054】
(第4実施形態)
図8は、第4実施形態の光電変換装置の断面図である。
図8において、第1実施形態の
図1と同一構成要素については、同一参照番号付して、詳しい説明は省略し、異なる構成要素について、以下に説明する。
【0055】
図8において、
図1に示す第2の光電変換素子Bおよび第2の金属膜6bを図示していないが、これらは、
図8において、第1の光電変換素子Aおよび第1の金属膜6aよりも紙面の奥方向に配置されている。
【0056】
図8に示すように、P型シリコン半導体基板1上に、第1および第2の光電変換素子A,Bからの出力を信号処理して例えば環境光の色味を判定する回路部50を設け、この回路部50に配線層51を電気接続している。このように、光電変換素子A,Bからの出力を信号処理する回路部50を光電変換素子A,Bと一体に設けることによって、低ノイズ化や小型化を達成している。
【0057】
なお、上記回路部50は、静電保護素子50aを含んでいる。
【0058】
また、上記第1の金属膜6aと同一層に、シールドメタル部52を設け、このシールドメタル部52で、回路部50と、この回路部50と第1の光電変換素子Aとの間の領域とを覆っている。これにより、迷光が第1および第2の光電変換素子A,Bや回路部50に侵入するのを防止して、偽信号の発生を防止して、誤作動の防止、耐久性の向上をしている。
【0059】
また、
図8に示すように、上記第1の金属膜6aからなるプラズモニックフィルタ6aとシールドメタル部52とは連続して、エッチング時のデポ物の発生量を少なくしている。尤も、図示しないが、プラズモニックフィルタ6aとシールドメタル部52とは連続していなくて、分離していてもよい。
【0060】
また、上記第1および第2金属膜6a,6bおよびシールドメタル部52は、図示しない配線を介して、接地されていて、接地電位とされている。これにより、第1および第2の金属膜6a,6bおよびシールドメタル部52は、光の遮断だけでなく、電気的なノイズに対してもシールド効果を有する。例えば、電気的ノイズが第1および第2の金属膜6a,6bあるいはシールドメタル部52に飛来した場合、この電気的ノイズは接地された電位に逃げることができるため、第1および第2の金属膜6a,6bおよびシールドメタル部52よりも下の回路部50、静電保護素子50aに電気的ノイズが悪影響することがない。つまり、シールドメタル部52は、光の侵入を防ぐ光学的シールドと、電気的ノイズから回路部50等を守る電気的シールドとして機能する。
【0061】
上記第1および第2実施形態では、光学フィルタとしての第1および第2の金属膜6a,6bに設ける周期的な構造を円形のホール11,12のアレイとしているが、円形のホールのアレイの他に、四角形や三角形などのホールのアレイ、ラインおよびスペースの構造や、局在プラズモンを利用した凸型の周期的な構造でも表面プラズモン共鳴現象は生じうる。しかし、それぞれの材料、構造ごとに共鳴が生じる波長は異なるため、各パラメータに応じて使用している光電変換素子の物性(λmax)を考慮して隣接する光学フィルタの周期的な構造の配置を最適化する必要がある。
【0062】
また、上記第1および第2実施形態では、第1および第2光電変換素子A,Bを半導体基板1に設けているが、第1および第2光電変換素子A,B、第1および第2の金属膜6a,6bに加えて、図示しない第3の光電変換素子と、この第3の光電変換素子の上方に絶縁膜を介して第3の光学フィルタとしての第3の金属膜を設けて、R(赤)、G(緑)、B(青)の三原色の光または上記三原色の補色の光に、上記第1、第2および第3の光学フィルタを透過させて、光の三原色または上記三原色の補色の光を検出するようにしてもよい。
【0063】
(第5実施形態)
図14は本発明の第5実施形態の光電変換装置の平面図である。
【0064】
この第5実施形態の周期構造は、今までの第1〜第4の実施形態で説明してきた丸穴のホールアレイの構造ではなく、スリット構造である。
【0065】
この第5実施形態の光電変換装置は、
図14の平面図に示すように、第1の光学フィルタとしての導電材料膜である第1の金属膜301と、第2の光学フィルタとしての導電材料膜である第2の金属膜302とを隣接して配置し、この第1および第2の金属膜301,302の下側に、図示しない絶縁層を挟んで、導電材料膜である第3の金属膜400を設けている。
【0066】
上記第3の金属膜400よりも下側の構造は、
図1に示す第1実施形態のシリコン窒化膜5等からなる構造と同じ構造であるので、これらの構造については、
図1を援用し、詳しい説明は省略する。
【0067】
図14に示すように、上記第1の光学フィルタとしての第1の金属膜301に、第1のパターンを形成する複数の開口の一例としての複数のスリット311,311,311…を設けている。この複数のスリット311,311,311…は、一定間隔つまり一定周期(ピッチ)P1で、横方向に並んでおり、幅S1を有する。また、このスリット311の両側の格子312,312,312…も一定周期(ピッチ)P1を有し、幅G1を有する。
【0068】
また、上記第2の光学フィルタとしての第2の金属膜302に、第2のパターンを形成する複数の開口の一例としての複数の321,321,321…を設けている。この複数のスリット321,321,321…は、一定間隔つまり一定周期(ピッチ)P2で、横方向に並んでおり、幅S2を有する。また、このスリット321の両側の格子322,322,322…も一定周期(ピッチ)P2を有し、幅G2を有する。
【0069】
この第1および第2の光学フィルタとしての第1および第2の金属膜301,302は、プラズモニックフィルタである。
【0070】
また、上記第1の光学フィルタとしての第1の金属膜301の右端のスリット311aと、第2の光学フィルタとしての第2の金属膜302の左端のスリット321aとの間隔(スリット311aの中心線とスリット321aの中心線との間の距離)aは、上記周期P1およびP2よりも長くして、境界部のスリット311a,321aによる表面プラズモン共鳴で透過する光の波長が、
図1に示すシリコンフォトダイオードA,Bから成る光電変換素子A,Bでは感知できない波長になって、色温度がずれることがないようにしている。
【0071】
したがって、この第5実施形態によれば、精度の高い波長選択性を確保することができる。
【0072】
また、上記第1および第2の金属膜301,302の下側に、図示しない絶縁層を介して設けられた上記第3の金属膜400は、大略、2つの矩形の開口を有する矩形の外周の輪郭を有して、第1の金属膜301の両端のスリット311a,311aの全ての領域と、第2の金属膜301の両端のスリット321a,321aの全ての領域と、第1の金属膜301と第2の金属膜302との間の領域と、第1および第2の金属膜301,302の両端以外の複数のスリット311,321…の各々の長手方向の両端部311b,321b…を覆っている。すなわち、上記第3の金属膜400は、第1および第2の金属膜301,302の複数のスリット311,321,…の最外周に位置する部分を覆っている。
【0073】
このように、上記第3の金属膜400は、第1および第2の金属膜301,302の複数のスリット311,321,…の最外周に位置する部分を覆っているので、露光時の隣接開口部からの干渉光の影響やエッチング時のマイクロローディング効果により形状が不均一になりやすい両端のスリット311a,321aやスリット311,321…の各々の長手方向の両端部311b,321b…からの透過光を第3の金属膜400で遮断することができて、スリット構造でも、所望の波長選択性を確保したプラズモニックフィルタを形成することができる。
【0074】
したがって、この第5実施形態の光電変換装置によれば、本来透過しない波長の光の異常透過を防ぐことができて、分光波形の半値幅を小さくすることができる。
【0075】
また、上記第1および第2の金属膜301,302は、図示しない配線によって、接地していて、接地電位にしている。
【0076】
このように、上記第1および第2の金属膜301,302は、接地電位となっているので、プラズモニックフィルタ領域を構成する第1および第2の金属膜301,302の電位が安定して、電子の挙動が安定して、波長選択性が良好になる。もし、仮に、プラズモニックフィルタ領域の第1および第2の金属膜301,302の電位が変動すると、波長選択性に悪影響がでるのである。
【0077】
上記構成の光電変換装置によれば、スリット構造でも、適切な周期(ピッチ)P1,P2とスリット幅S1,S2と間隔aを選択することにより、プラズモニック効果による波長選択効果が第1〜第4実施形態と同様に観測された。
【0078】
図15はスリット型MIM(Metal-Insulator-Metal)構造、具体的には、40nm厚のAl膜、100nm厚の絶縁膜、40nm厚のAl膜を用い、スリット幅Sを100nmに固定した場合の実験例を示している。
【0079】
この
図15から、同じスリットの幅S(100nm)でも、格子の幅Gを変えて、ピッチPを変えることによって、最大透過光の波長が異なることが分かる。これは同じ金属材料や絶縁材料を用いたプラズモニックフィルタであっても、複数のプラズモニックフィルタを隣接配置した場合に、この隣接する複数のプラズモニックフィルタが互いに干渉しない、両プラズモニックフィルタのスリット間の距離a(
図14を参照)が変わることを意味する。
【0080】
より具体的には、光電変換装置は、一般的に半導体で使用されるシリコン材料を主に用い、通常の手法である、リソグラフィやイオン注入等により入射光を電気信号に変換するための光電変換素子をシリコン基板上に形成し、SiO
2の層間膜を形成した後、CMP等の方法で十分に平坦化する。その後フィルタ膜として非特許文献3(NATURE COMMUNICATIONS | DOI: 10.1038/ncomms1058)に示される構造であるAlからなる40nmの厚さの膜、ZnSeからなる厚さ100nmの絶縁膜、Alの40nmの厚さの膜の積層構造を参考に、上記絶縁膜をZnSeから一般的に半導体プロセスで使用されるSiNからなる膜に変更した。
図15には2種類の屈折率(n=1.95、 n=2.7)でのプラズモニックフィルタの透過波長の格子幅Gに対する依存性を示しているが、例えば屈折率nが2.7の場合、RGBセンサ用に格子幅Gをそれぞれ100nm、150nm、200nm(ピッチPでは、スリット幅Sが100nm共通であるため、200nm、250nm、300nm)のスリット構造を形成することで青(B)、緑(G)、赤(R)用のフィルタを形成することができる。
【0081】
また、これらのプラズモニックフィルタを隣接して配置する際には、シリコンが吸収しうる光の最大波長λmaxである1100nmの波長の光を透過するフィルタピッチである450nm以上離して配置することにより、既に述べた丸穴のホールアレイ型のフィルタと同様に隣接の境界でシリコンが吸収してノイズとなる余分な光が透過することがなく、すぐれた色分離性を備えた任意の波長を透過するカラーフィルタを隣接して配置することができる。
【0082】
上記ではAl、SiN、Alの積層構造を持つスリット型のフィルタについて説明したが、積層構造や周期構造は他の構造のものでも、ピッチや最小分離距離は変わるが同様のことが言える。本質的なことは、各材料や平面的な周期構造で決まる所望の光を透過させるピッチは変わるが、採用した光電変換材料の最大透過波長の光が透過するピッチよりも離して複数の異なる周期構造のフィルタを配置することにある。
【0083】
上記第5実施形態の構成要素と、第1〜第4実施形態の構成要素とは、適宜、組み合わせてもよい。
【0084】
本発明および実施形態を纏めると、次のようになる。
【0085】
本発明の光電変換装置は、
第1の光電変換素子Aと、
第2の光電変換素子Bと、
複数の構造11,311を周期的に有する第1のパターンを有すると共に、上記第1の光電変換素子Aの上に絶縁膜5を介して配置された導電材料膜からなる第1の光学フィルタ6a,301と、
複数の構造12,321を周期的に有する第2のパターンを有すると共に、上記第2の光電変換素子Bの上に絶縁膜5を介して配置された導電材料膜からなる第2の光学フィルタ6b,302と
を備え、
互いに隣接する上記第1のパターンと第2のパターンとの間隔aは、
上記第1のパターンの構造11,311の周期P1および上記第2のパターンの構造12,321の周期P2よりも長い
ことを特徴としている。
【0086】
なお、上記第1のパターンと第2のパターンとの間隔aは、特に上限がなく、長くても問題がないが、2つの光電変換素子A、Bの少なくとも一方が吸収しうる波長範囲の光では実質的に透過しない間隔であって、かつ集積化の観点から上記条件に当てはまる間隔の最小値とすることが望ましい。例えば誘電体の屈折率により上記寸法は変わるが、
図4より想定される誘電体の屈折率1.0〜3.0であれば、上記間隔aは、600〜5000nm程度の範囲となる。
【0087】
上記構成の光電変換装置によれば、上記第1の光学フィルタ6aの構造11,311の第1のパターンと上記第2の光学フィルタ6bの構造12,321の第2のパターンとの間の間隔aが、上記第1のパターンの構造11,311の周期P1および上記第2のパターンの構造12,321の周期P2よりも長いから、上記第1および第2の光電変換素子A,Bの少なくとも一方が吸収しうる波長範囲内の光は、第1の光学フィルタ6a,301の構造11,311と第2の光学フィルタ6b,302の構造12,321との間で表面プラズモン共鳴して透過することがなくて、第1および第2の光電変換素子A,Bに入射することがなく、一方、第1の光学フィルタ6a,301の構造11,311と第2の光学フィルタ6b,302の構造12,321との間でプラズモン共鳴して透過する波長範囲内の光は、上記第1および第2の光電変換素子A,Bに吸収されない。
【0088】
このように、上記第1の光学フィルタ6a,301および第2の光学フィルタ6b,302の境界部を透過する波長範囲内の光は、第1および第2の光電変換素子A,Bに吸収されなくて、第1および第2の光電変換素子A,Bで検知されないから、センサの特性としては影響がない。
【0089】
したがって、上記第1および第2の光学フィルタ6a,301,6b,302、つまり、第1および第2のプラズモニックフィルタ6a,301,6b,302によって、透過する光の波長を任意に選択しながらも、互いに隣接するプラズモニックフィルタ6a,301,6b,302の境界部で生じる構造11,311,12,321間の周期で透過する波長の光の影響を受けることなく、精度の高い波長選択性を確保することができる。
【0090】
換言すると、複数種類のプラズモニックフィルタ6a,301,6b,302を隣接配置する場合において、境界部の周期的な構造11,311,12,321間の間隔を、複数の光電変換素子A,Bが吸収しうる最も長い波長の光が表面プラズモン共鳴して透過しない寸法以上とすることにより、個々のプラズモニックフィルタ6a,301,6b,302を透過する波長を任意に選択しながらも、隣接プラズモニックフィルタ6a,301,6b,302の境界部で生じる周期で透過する波長の光の影響を複数の光電変換素子A,Bが受けることがなくて、波長選択性の精度を確保した複数のプラズモニックフィルタ6a,301,6b,302を搭載した光電変換装置を得ることができる。
【0091】
また、本発明によれば、異なる周期構造11,311,12,321を有する第1および第2の光学フィルタ6a,301,6b,302を配置するのに大きな制約を受けることがなくて、任意に配置できる。
【0092】
上記第1および第2の光電変換素子A,Bの材料は、同じであっても、異なっていてもよいが、製造上、同じであるのが好ましい。また、上記第1および第2の光学フィルタ6a,301,6b,302の材料も、同じであっても、異なっていてもよいが、製造上、同じであるのが好ましい。
【0093】
なお、この発明の光電変換装置は、上記第1および第2の光電変換素子A,B、並びに、上記第1および第2の光学フィルタ6a,301,6b,302を備えているが、それらの第1および第2の光電変換素子A,B、第1および第2の光学フィルタ6a,301,6b,302を備えている限り、第3の光電変換素子および第3の光学フィルタを備えていても、この発明の技術範囲に含まれることは勿論である。
【0094】
1実施形態では、
上記第1および第2の光電変換素子A,Bは、少なくともシリコンおよびシリコン酸化膜3を含む。
【0095】
上記実施形態によれば、上記第1および第2の光電変換素子A,Bは、半導体装置でよく使用される材料であるシリコンおよびシリコン酸化膜3を含むから、通常の半導体プロセスでの取り扱いが容易であり、かつ、可視光(380nm〜750nm)を含むRGBセンサへも適用できるという利点を有する。
【0096】
1実施形態では、
上記第1および第2の光学フィルタ6a,301,6b,302の導電材料膜は、AlまたはAl合金(AlCuやAlSi等)からなる。
【0097】
上記実施形態は、上記第1および第2の光学フィルタ6a,301,6b,302が、AlまたはAl合金からなるため、400nm程度の短波長での表面プラズモン共鳴が生じて、RGBセンサへの適用が可能である。
【0098】
また、上記AlまたはAl合金は、通常の半導体プロセスで使用される材料であるため、プロセスインテグレーションの点で有利であり、また、安価であり、また、作製プロセスが単純であり、それぞれの波長に対応したプラズモニックフィルタを一括して形成可能である。
【0099】
1実施形態は、さらに、
第3の光電変換素子と、
複数の構造を周期的に有する第3のパターンを有すると共に、上記第3の光電変換素子の上に絶縁膜を介して配置された導電材料膜からなる第3の光学フィルタと
を備えて、
上記第1、第2および第3の光学フィルタは、光の三原色または上記三原色の補色の光を透過する。
【0100】
上記実施形態によれば、RGBセンサを形成することができる。
【0101】
1実施形態では、
上記第1および第2の光電変換素子A,Bと、この第1および第2の光電変換素子A,Bからの出力を信号処理する回路部50とを同一基板1上に形成している。
【0102】
上記実施形態によれば、上記第1および第2の光電変換素子A,Bと、上記回路部50とを同一基板1上に形成して一体化しているので、低ノイズ化や小型化が可能である。
【0103】
1実施形態では、
上記第1の光学フィルタ6aおよび第2の光学フィルタ6bと同一層に、シールドメタル部52を設け、このシールドメタル部52で、上記回路部50と、この回路部50と第1の光電変換素子Aとの間の領域とを覆っている。
【0104】
上記実施形態によれば、上記第1の光学フィルタ6aと同一層に、シールドメタル部52を設け、このシールドメタル部52で、上記回路部50と、この回路部50と第1の光電変換素子Aとの間の領域とを覆っているので、迷光が第1光電変換素子Aや回路部50に侵入するのを防止して、偽信号の発生を防止でき、誤作動の防止、耐久性の向上をすることができる。
【0105】
1実施形態では、
上記第1および第2の光電変換素子A,Bは、少なくともシリコンおよびシリコン酸化膜3を含み、
上記第1および第2の光学フィルタ6a,6bの導電材料膜は、AlまたはAl合金(AlCuやAlSi等)からなり、
上記第1および第2のパターンの上記構造11,12は、円形の開口11,12であり、
上記第1のパターンと上記第2のパターンとの間隔aは、少なくとも600nmである。
【0106】
上記実施形態では、上記第1および第2の光電変換素子A,Bは、少なくともシリコンおよびシリコン酸化膜3を含み、上記第1のパターンと上記第2のパターンとの間隔aは、少なくとも600nmである。一方、シリコンの光吸収波長は300〜1200nm程度である。
【0107】
したがって、上記実施形態によれば、上記第1の光学フィルタ6aの円形の開口11と上記第2の光学フィルタ6bの円形の開口12との間隔は、少なくとも600nmであるため、上記第1の光学フィルタ6aの円形の開口11と上記第2の光学フィルタ12の円形の開口12との間で表面プラズモン共鳴して透過する波長範囲内の光は、光吸収波長が300〜1200nm程度であるシリコンおよびシリコン酸化膜を含む第1および第2の光電変換素子に吸収されなくて、第1および第2の光電変換素子A,Bで検知されないから、センサの特性としては影響がない。
【0108】
したがって、この実施形態によれば、上記第1および第2の光学フィルタ6a,6b、つまり、第1および第2のプラズモニックフィルタ6a,6bによって、透過する光の波長を任意に選択しながらも、互いに隣接するプラズモニックフィルタ6a,6bの境界部で生じる開口11,12間の周期aで透過する波長の光の影響を受けることがなく、精度の高い波長選択性を確保することができる。
【0109】
また、上記実施形態では、上記第1および第2の光電変換素子A,Bは、少なくともシリコンおよびシリコン酸化膜3を含むから、通常の半導体プロセスでの取り扱いが容易であり、かつ、可視光(380nm〜750nm)を含むRGBセンサへも適用でき、また、上記第1および第2の光学フィルタ6a,6bは、AlまたはAl合金(AlCuやAlSi等)であるから、プロセスインテグレーションの点で有利であり、また、安価であり、また、作製プロセスが単純であり、それぞれの波長に対応した光学フィルタ6a,6bを一括して形成可能である。
【0110】
1実施形態では、
上記第1および第2のパターンの上記構造は、スリット311,321である。
【0111】
上記実施形態によれば、スリット構造でも、適切な周期(ピッチ)P1,P2とスリット幅S1,S2を選択することにより、プラズモニック効果による波長選択効果が得られる。
【0112】
1実施形態では、
上記第1および第2の光学フィルタ6a,301,6b,302は接地されている。
【0113】
上記実施形態によれば、上記第1および第2の光学フィルタ6a,301,6b,302が接地されて、プラズモニックフィルタ領域を構成する第1および第2の光学フィルタ6a,301,6b,302の電位が安定して、電子の挙動が安定して、波長選択性が良好になる。もし、仮に、プラズモニックフィルタ領域を構成する第1および第2の光学フィルタ6a,301,6b,302の電位が変動すると、波長選択性に悪影響がでるのである。
【0114】
1実施形態では、
上記第1および第2のパターンの複数のスリット311,321の最外周に位置する部分を覆う導電材料膜400を備える。
【0115】
上記実施形態によれば、上記導電材料膜400が第1および第2のパターンの複数のスリット311,321の最外周に位置する部分を覆っているので、露光時の隣接開口部からの干渉光の影響やエッチング時のマイクロローディング効果により形状が不均一になりやすい両端のスリット311a,321aやスリット311,321…の各々の長手方向の両端部311b,321b…からの透過光を導電材料膜400で遮断することができて、スリット構造でも、所望の波長選択性を確保したプラズモニックフィルタを形成することができる。
【0116】
第1〜第5実施形態および変形例で述べた構成要素は、適宜、組み合わせてもよく、また、適宜、選択、置換、あるいは、削除してもよいのは、勿論である。