特許第6019248号(P6019248)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6019248-電流遮断装置とそれを用いた蓄電装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019248
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】電流遮断装置とそれを用いた蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/34 20060101AFI20161020BHJP
   H01M 2/06 20060101ALI20161020BHJP
   H01M 2/26 20060101ALI20161020BHJP
   H01G 11/14 20130101ALI20161020BHJP
   H01G 9/12 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   H01M2/34 A
   H01M2/06 A
   H01M2/26 A
   H01G11/14
   H01G9/12 Z
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-542548(P2015-542548)
(86)(22)【出願日】2014年9月16日
(86)【国際出願番号】JP2014074434
(87)【国際公開番号】WO2015056511
(87)【国際公開日】20150423
【審査請求日】2016年4月8日
(31)【優先権主張番号】特願2013-215804(P2013-215804)
(32)【優先日】2013年10月16日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】弘瀬 貴之
(72)【発明者】
【氏名】奥田 元章
(72)【発明者】
【氏名】西原 寛恭
(72)【発明者】
【氏名】岩 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】小川 義博
(72)【発明者】
【氏名】光安 淳
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 騎慎
【審査官】 山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−153536(JP,A)
【文献】 特開2013−175428(JP,A)
【文献】 特開2001−084880(JP,A)
【文献】 特開2011−258561(JP,A)
【文献】 特開平08−293301(JP,A)
【文献】 特開2010−212034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/34
H01G 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置のケース内の圧力が所定値を超えたときに電極端子と電極の間の導通を遮断する電流遮断装置であって、
前記ケースに固定されており、前記電極端子と電気的に接続している第1通電部材と、
前記第1通電部材に対向する位置に配置されており、前記電極と電気的に接続している第2通電部材と、
導電性を有しており、前記第1通電部材と前記第2通電部材の間に配置されているとともに前記第1通電部材と電気的に接続しており、前記ケース内の圧力が所定値以下のときは前記第2通電部材に接触して前記電極端子と前記電極を導通させており、前記ケース内の圧力が所定値を超えたときに前記第2通電部材と非接触になり前記電極端子と前記電極の導通を遮断する第1変形部材と、
前記第2通電部材に対して前記第1変形部材とは反対側に配置されているとともに、前記第2通電部材の中央部に向かって突出した形状の突起が設けられており、前記ケース内の圧力が所定値以下のときは中央部が前記第2通電部材から離れる方向に突出しており、前記ケース内の圧力が所定値を超えたときに前記中央部が前記第2通電部材に向けて移動して前記突起が前記第2通電部材に接触して前記第2通電部材を破断し、前記第1変形部材と前記第2通電部材を非導通にする第2変形部材と、を備えており、
前記第2通電部材の前記第1変形部材側とは反対側に、窪みが設けられており
前記第2変形部材の端部が前記窪み内に位置しており、
前記第2変形部材の外周縁が窪みの側面に接し、前記第2変形部材の移動が規制されている電流遮断装置。
【請求項2】
前記第2変形部材の端部が、前記第2通電部材に溶接されている請求項1に記載の電流遮断装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電流遮断装置を備える蓄電装置。
【請求項4】
前記蓄電装置は、二次電池である請求項3に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2013年10月16日に出願された日本国特許出願第2013−215804号に基づく優先権を主張する。その出願の全ての内容は、この明細書中に参照により援用されている。本明細書は、電流遮断装置及びそれを用いた蓄電装置に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
蓄電装置が過充電されたり、内部で短絡が発生したときに、電極端子間(正極端子と負極端子)に流れる電流を遮断する電流遮断装置の開発が進められている。電流遮断装置は、電極端子と電極の間(正極端子と正極の間又は負極端子と負極の間)に配置される。特開2012−38529号公報には、ケースに第1通電部材(カシメ部品)を固定し、第1通電部材に対向する位置に第2通電部材(集電端子)を配置する電流遮断装置が開示されている。以下、特開2012−38529号公報を、特許文献1と称する。第1通電部材には変形部材の端部が固定されている。変形部材の中央部は、第2通電部材に接している。変形部材の端部は、絶縁体(内部下ガスケット)を介して第2通電部材に接している。変形部材の中央部が第2通電部材に接しているときは第1通電部材と第2通電部材が導通しており、変形部材の中央部が第2通電部材から離反すると第1通電部材と第2通電部材が非導通になる。特許文献1の電流遮断装置は、蓄電装置内の圧力が所定値を超えると、変形部材の中央部が第2通電部材から離反し、第1通電部材と第2通電部材を非導通にすることによって電極端子と電極の間の導通を遮断する。
【発明の概要】
【0003】
電流遮断装置が確実に作動するためには、蓄電装置内の圧力が所定値を超えたときに、変形部材が第2通電部材からスムーズに離反することが必要である。第1通電部材に対する変形部材の位置が設計値からずれると、第2通電部材に対する変形部材の位置も設計値からずれることが起こり得る。その結果、電流遮断装置の動作が安定しないことが起こり得る。本明細書では、信頼性の高い電流遮断装置を実現する技術を提供する。
【0004】
本明細書で開示する電流遮断装置は、蓄電装置のケース内の圧力が所定値を超えたときに電極端子と電極の間の導通を遮断する。その電流遮断装置は、第1通電部材と、第2通電部材と、第1変形部材と、第2変形部材を備えている。上記第1通電部材は、上記ケースに固定されている。上記第2通電部材は、上記第1通電部材に対向する位置に配置されている。上記第1変形部材は、上記第1通電部材と上記第2通電部材の間に配置されている。上記第1変形部材は、上記ケース内の圧力が所定値以下のときは上記第2通電部材に接触しており、上記ケース内の圧力が所定値を超えたときに上記第2通電部材と非接触になる。上記第2変形部材は、前記第2通電部材に対して前記第1変形部材とは反対側に配置されている。上記第2変形部材には、上記第2通電部材の中央部に向かって突出した形状の突起が設けられている。上記ケース内の圧力が所定値以下のときは上記中央部が上記第2通電部材から離れる方向に突出しており、上記ケース内の圧力が所定値を超えたときに上記中央部が上記第2通電部材に向けて移動して上記突起が上記第2通電部材に接触する。
【0005】
本明細書では、上記第1通電部材の上記第2通電部材側に、上記第1変形部材の移動を規制する規制構造が設けられている電流遮断装置を開示する。本明細書ではさらに、上記第2通電部材の上記第1変形部材側とは反対側に、上記第2変形部材の移動を規制する規制構造が設けられている電流遮断装置をも開示する。
【0006】
上記の電流遮断装置は、変形部材(第1変形部材,第2変形部材)の移動が規制されるので、通電部材(第1通電部材,第2通電部材)に対する変形部材の位置が設計値からずれることを抑制することができる。ケース内の圧力変化に対して、電流遮断装置の動作、すなわち、変形部材の動作を安定させることができる。
【0007】
本明細書で開示される技術によると、信頼性の高い電流遮断装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施例の蓄電装置の断面図を示す。
図2】第1実施例の蓄電装置で用いられている電流遮断装置の拡大断面図を示す。
図3】第2実施例の蓄電装置で用いられている電流遮断装置の拡大断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本明細書で開示する蓄電装置の技術的特徴の幾つかを記す。なお、以下に記す事項は、各々単独で技術的な有用性を有している。
【0010】
蓄電装置は、ケースと、電極組立体と、電極端子と、電流遮断装置を備えている。電極組立体は、ケース内に収容されており、正極及び負極を備えていてよい。電極端子は、ケースの内外を通じていてよい。すなわち、電極端子の一部がケースの外部に位置しており、電極端子の他の一部がケースの内部に位置していてよい。電流遮断装置は、負極端子と負極に接続されていてもよい。この場合、電流遮断装置は、負極端子と負極の通電経路上に配置され、ケースの内圧が所定値を超えたときに、負極端子と負極を導通状態から非導通状態に切換える。電流遮断装置は、正極端子と正極に接続されていてもよい。この場合、電流遮断装置は、正極端子と正極の通電経路上に配置され、ケースの内圧が所定値を超えたときに、正極端子と正極を導通状態から非導通状態に切換える。
【0011】
電流遮断装置は、第1通電部材と、第2通電部材と、第1変形部材と、第2変形部材を備えていてよい。第1通電部材は、蓄電装置のケースに固定されていてよい。第1導電部材は、正極端子の一部、又は、負極端子の一部であってもよい。
【0012】
第2通電部材は、第1通電部材と間隔を有して第1通電部材に対向する位置に配置されていてよい。すなわち、第1通電部材と第2通電部材は、直接接触していなくてよい。第2通電部材の中央部の厚みは、端部の厚みより薄くてよい。さらに、第2通電部材の中央部に、ケース内の圧力が所定値を超えたときに破断の起点となる破断溝が設けられていてもよい。破断溝は、第2通電部材の中央部において、連続的又は断続的に一巡していてもよい。第1通電部材が電極端子(正極端子又は負極端子)の一部の場合、第2通電部材は、電極端子に対向していてよい。第1通電部材が電極端子の一部ではない場合、第2通電部材は、電極端子に対向していなくてもよい。
【0013】
絶縁部材が、第1通電部材と第2通電部材の間に配置されていてよい。また、その絶縁部材によって、第1通電部材と第2通電部材の間隔が維持されていてもよい。すなわち、絶縁部材が設けられている範囲外では、第1通電部材と第2通電部材の間に隙間が設けられていてよい。
【0014】
絶縁性のシール部材が、第1通電部材と第2通電部材の間に配置されていてよい。シール部材は、シール部材,第1通電部材及び第2通電部材で囲まれる空間を、電流遮断装置の外部空間から隔離する。シール部材は、上記した絶縁部材の外側で第1通電部材と第2通電部材をシールしていてよい。シール部材は、絶縁部材と非接触の状態で第1通電部材と第2通電部材の間に配置されていてよい。
【0015】
第1通電部材の第2通電部材側、及び/又は、第2通電部材の第1通電部材側に溝が設けられており、上記した絶縁部材が、その溝内に位置していてよい。絶縁部材の位置ずれを防止することができる。絶縁部材が第1変形部材に接触することを防止することができるとともに、絶縁部材がシール部材に接触することも防止することができる。
【0016】
第1変形部材は、第1通電部材と第2通電部材の間に配置されていてよい。第1変形部材は、絶縁部材の内側で第1通電部材に固定されていてよい。第1変形部材は、絶縁部材と非接触の状態で第1通電部材に固定されていてよい。第1変形部材は、ケース内の圧力が所定値以下のときは第2通電部材に接触していてよい。第1変形部材の端部が第2通電部材から離れており、第1変形部材の中央部が第2通電部材の中央部に接触していてよい。また、第1変形部材の中央部は、破断溝に囲まれた位置で第2通電部材に固定されていてもよい。第1変形部材は、ケース内の圧力が所定値を超えたときに第2通電部材と非接触になってもよい。第1変形部材は、ケース内の圧力が所定値を超えたときに第2通電部材から離れるように反転してもよい。ケース内の圧力が所定値を超えたときに第2通電部材の中央部が破断し、第1変形部材が第2通電部材から離れてもよい。
【0017】
第1通電部材の第2通電部材側に、第1変形部材の移動を規制する規制構造が設けられていてよい。また、規制構造は、第1通電部材の第2通電部材側に設けられている窪みであってよい。この場合、第1変形部材の外周縁が窪みの側面に接していてよい。第1通電部材に対する第1変形部材の位置ずれを防止することができる。
【0018】
第2変形部材は、第2通電部材に対して第1変形部材とは反対側に配置されていてよい。すなわち、第2通電部材が、第1変形部材と第2変形部材の間に設けられていてよい。第2変形部材は、第2通電部材と電極組立体の間に設けられていてよい。第2変形部材は、第2通電部材に固定されていてよい。第2変形部材の第2通電部材側の中央部に、第2通電部材に向かって突出した形状の突起が設けられていてよい。突起が、通電部材から離れた状態で、第1通電部材の破断溝に囲まれた部分に対向していてもよい。突起は、絶縁性であってもよい。
【0019】
第2変形部材は、ケース内の圧力が所定値以下のときは中央部が第2通電部材から離れる方向に突出しており、ケース内の圧力が所定値を超えたときに中央部が第2通電部材に向けて移動して上記突起が第2通電部材に接触してもよい。すなわち、第2変形部材は、ケースの内圧が所定値以下のときは中央部が第2通電部材から離れる方向に突出している第1位置に存在しており、ケースの内圧が所定値を超えたときに中央部が第2通電部材に向けて突出している第2位置に存在していてよい。
【0020】
第2通電部材の第1通電部材側とは反対側に、第2変形部材の移動を規制する規制構造が設けられていてよい。また、規制構造は、第2通電部材の第1通電部材側とは反対側に設けられている窪みであってよい。この場合、第2変形部材の外周縁が窪みの側面に接していてよい。第2通電部材に対する第2変形部材の位置ずれを防止することができる。
【0021】
第1変形部材と第2通電部材の双方は、電極端子と電極の通電経路上に設けられていてよい。電極端子と電極の一方に第1変形部材が接続されており、電極端子と電極の他方に第2通電部材が接続されており、第1変形部材と第2通電部材の導通が遮断されたときに上記電極端子と電極の他方が第1変形部材と絶縁されているとともに、上記電極端子と電極の一方が第2通電部材と絶縁されていてもよい。
【0022】
本明細書で開示する蓄電装置の一例として、二次電池、キャパシタ等が挙げられる。二次電池の電極組立体の一例として、セパレータを介して対向する電極対(負極及び正極)を有するセルが複数積層された積層タイプの電極組立体、セパレータを介して対向する電極対を有するシート状のセルが渦巻状に加工された捲回型の電極組立体が挙げられる。また、本明細書で開示する蓄電装置は、例えば車両に搭載され、モータに電力を供給することができる。以下、蓄電装置の構造について説明する。
【0023】
なお、以下の説明では、正極端子と負極端子の双方がケースの一方向に露出している蓄電装置について説明する。しかしながら、本明細書で開示する技術は、円筒型の電池のように、ケースが一方の極性(例えば正極)の電極端子として機能し、他方の極性(例えば負極)の電極端子がケースから絶縁された状態でケースに固定されているタイプの蓄電装置等にも適用することができる。また、以下の説明では、電流遮断装置が負極端子と負極に接続されている蓄電装置について説明する。本明細書で開示する技術は、電流遮断装置が正極端子と正極に接続されている蓄電装置に適用することもできる。
【実施例】
【0024】
(第1実施例)
図1を参照し、蓄電装置100の構造を説明する。蓄電装置100は、ケース18と、電極組立体52と、正極端子2と、負極端子30と、電流遮断装置50を備えている。ケース18は、金属製であり、略直方体形状である。ケース18は、蓋部18aと本体部18bを備えている。ケース18の内部には、電極組立体52と電流遮断装置50が収容されている。電極組立体52は、正極と負極を備えている(図示省略)。正極タブ16が正極に固定されており、負極タブ20が負極に固定されている。ケース18の内部は、電解液が収容されており、大気が除去されている。
【0025】
正極端子2と負極端子30が、ケース18の内外を通じている。正極端子2と負極端子30は、ケース18の一方向(図1の紙面上方)に配置されている。すなわち、正極端子2と負極端子30の双方が、電極組立体52に対して同じ方向(蓋部18aが設けられている方向)に配置されている。正極端子2は、ボルト部8を備えている。正極端子2は、ボルト部8にナット10を係合することにより、ケース18に固定されている。正極端子2の一端はケース18の外部に位置しており、他端はケース18の内部に位置している。同様に、負極端子30は、ボルト部36を備えている。負極端子30は、ボルト部36にナット38を係合することにより、ケース18に固定されている。負極端子30の一端はケース18の外部に位置しており、他端はケース18の内部に位置している。
【0026】
正極端子2に、正極リード14が接続されている。正極リード14は、正極タブ16に接続されている。正極端子2は、正極リード14を介して、正極タブ16に電気的に接続されている。すなわち、正極端子2は、電極組立体52の正極に電気的に接続されている。正極リード14は、絶縁部材よってケース18から絶縁されている。絶縁部材としては、例えば絶縁シート12が用いられる。正極端子2及びナット10は、絶縁部材58によってケース18から絶縁されている。正極端子2とケース18の間に絶縁性のシール部材56が配置されている。正極端子2とケース18の隙間は、シール部材56によってシールされている。なお、バスバー4が、バスバーボルト6によって、正極端子2に固定されている。
【0027】
負極端子30は、電流遮断装置50に接続されている。電流遮断装置50の詳細は後述する。電流遮断装置50は、金属製の接続部材26を介して、負極リード24に接続されている。なお、接続部材26と負極リード24は、一体に形成された1つの部材であってもよい。負極端子30は、負極リード24を介して、負極タブ20に電気的に接続されている。すなわち、負極端子30は、電極組立体52の負極に電気的に接続されている。負極リード24は、絶縁部材によってケース18から絶縁されている。絶縁部材としては、例えば絶縁シート22が用いられる。負極端子30及びナット38は、絶縁部材28によってケース18から絶縁されている。負極端子30とケース18の間に絶縁性のシール部材42が配置されている。負極端子30とケース18の隙間は、シール部材42によってシールされている。なお、バスバー32が、バスバーボルト34によって、負極端子30に固定されている。
【0028】
蓄電装置100では、ケース18内の圧力が所定値以下のときは、負極端子30と負極タブ20が、電流遮断装置50を介して電気的に接続している。すなわち、負極端子30と負極の間が導通している。ケース18内の圧力が所定値を超えると、電流遮断装置50が、負極端子30と負極タブ20の導通を遮断し、蓄電装置100に電流が流れることを防止する。
【0029】
図2を参照し、電流遮断装置50について説明する。電流遮断装置50は、負極端子30の拡径部37と、金属製の破断板88と、金属製の第1変形部材80と、金属製の第2変形部材93を備えている。上記したように、拡径部37(負極端子30)は、ケース18に固定されている。負極端子30は、第1通電部材の一例である。破断板88は、拡径部37と間隔を有して拡径部37に対向する位置に配置されている。破断板88は、第2通電部材の一例である。電極組立体52(図1も参照)とケース18の間において、電極組立体52の上方に、第2変形部材93,破断板88,第1変形部材80,拡径部37の順に配置されている。拡径部37の破断板88側の面には、溝92と窪み86が設けられている。窪み86は、第1変形部材80の移動を規制する規制構造の一例である。窪み86は、溝92よりも内側に設けられている。窪み86は、溝92を画定している一方の側壁によって形成されている。
【0030】
拡径部37の破断板88に対向する対向面35は、中央に向かって窪んでいる。換言すると、対向面35は、端部から中央に向かうに従って、破断板88から離れるように傾斜している。対向面35とは、拡径部37の破断板88に対向する面のうち、第1変形部材80が固定されていない面のことを意味する。なお、「溝」は、2つの側壁に囲まれた底面を有する形態のことを意味する。また「窪み」は、単に周囲よりも高さが低い形態であり、段差を有する形態のことを意味する。
【0031】
破断板88の拡径部37側に、溝96が設けられている。溝96は、溝92に対向する位置に形成されている。破断板88には、接続部材26が固定されている。破断板88は、接続部材26,負極リード24を介して、負極タブ20と導通している(図1も参照)。なお、破断板88と接続部材26は、一体に形成された1つの部材であってもよい。上述の通り、接続部材26と負極リード24は一体の部材であってもよい。そのため、破断板88、接続部材26、及び負極リード24の全てが一体の部材であってもよい。破断板88の中央部88aの厚みは、端部88bの厚みより薄い。また、中央部88aの周りには、破断溝90が設けられている。破断溝90は、中央部88aで連続的に一巡している。破断板88の拡径部37とは反対側に、窪み89が設けられている。窪み89は、破断板88の端部88bに設けられている。
【0032】
支持部材78が、負極端子30の拡径部37と破断板88を支持している。支持部材78は、金属製の外側部72と、絶縁性の第1内側部74と、絶縁性の第2内側部75を備えている。第1内側部74は、外側部72の内側に配置されており、第2内側部75の上方(ケース18側)に配置されている。第2内側部75は、外側部72の内側に配置されており、第2内側部75の下方(電極組立体52側)に配置されている。外側部72によって、拡径部37と破断板88が位置決めされている。具体的には、第1内側部74と第2内側部75を所定の位置に配置した後、外側部72をかしめることによって、破断板88を拡径部37に固定している。なお、内側部74,75は、拡径部37と破断板88を絶縁している。
【0033】
絶縁部材94が、拡径部37(負極端子30)と破断板88の間に配置されている。絶縁部材94は、拡径部37と破断板88の間隔を維持している。すなわち、絶縁部材94は、拡径部37と破断板88が直接接することを防止している。絶縁部材94は、後述する第1変形部材80の中央部80aと破断板88の中央部88a以外の箇所で、拡径部37と破断板88とが直接導通することを防止している。絶縁部材94の一部が、溝92,96内に位置している。絶縁部材94は、第1変形部材80に向けて移動することが規制されている。
【0034】
第1変形部材80は、金属性のダイアフラムである。第1変形部材80は、拡径部37と破断板88の間に配置されている。第1変形部材80の端部80bは、拡径部37に固定されている。より具体的には、第1変形部材80の外周縁が拡径部37の窪み86の側壁に当接した状態で、第1変形部材80の端部80bが拡径部37に溶接されている。窪み86の側壁は、第1変形部材80の外周縁が当接する当接面である。窪み86は、第1変形部材80の移動を規制する。第1変形部材80の外周縁を窪み86の側壁に当接させることにより、拡径部37に対する第1変形部材80の位置ずれを防止することができる。
【0035】
第1変形部材80の中央部80aが、拡径部37から離れるように突出している。換言すると、第1変形部材80は、端部80bから中央部80aに向かうに従って、破断板88に近づいている。第1変形部材80の中央部80aは、破断溝90の内側で、破断板88に固定されている。より具体的には、電流遮断装置50を平面視すると(図2の上から見ると)、中央部80aが、破断溝90に囲まれた範囲で、破断板88に溶接されている。
【0036】
第2変形部材93は、金属製のダイアフラムである。第2変形部材93は、破断板88に対して、第1変形部材80とは反対側に配置されている。すなわち、破断板88は、第1変形部材80と第2変形部材93の間に配置されている。第2変形部材93の端部93bが、破断板88に固定されている。より具体的には、第2変形部材93の外周縁が破断板88の窪み89の側壁に当接した状態で、第2変形部材93の端部93bが破断板88に溶接されている。窪み89の側壁は、第2変形部材93の外周縁が当接する当接面である。窪み89は、第2変形部材93の移動を規制する。第2変形部材93の外周縁を窪み89の側壁に当接させることにより、破断板88に対する第2変形部材93の位置ずれを防止することができる。
【0037】
第2変形部材93の破断板88側には、絶縁性の突起95が設けられている。突起95は、第2変形部材93の中央部93aに配置されており、破断板88に向かって突出している形状である。突起95は、破断板88の中央部88aに対向している。より具体的には、電流遮断装置50を平面視(図2の上下方向から観察)したときに、突起95が、破断溝90で囲まれた範囲内に位置している。第2変形部材93は、端部93bから中央部93aに向かうに従って、破断板88から離れるように突出している。
【0038】
シール部材84が、拡径部37と破断板88の間に配置されている。シール部材84は、絶縁性のOリングである。シール部材84は、絶縁部材94の外側に配置されている。シール部材84は、拡径部37と破断板88を絶縁するとともに、電流遮断装置50の内部を気密に保っている。すなわち、シール部材84は、拡径部37と破断板88をシールして、電流遮断装置50の内部の空間を、電流遮断装置50の外部の空間(ケース18内の空間)と遮断している。なお、上記したように、絶縁部材94の一部が、溝92,96内に位置している。そのため、絶縁部材94は、シール部材84に向けて移動することが規制されている。
【0039】
ケース18の内圧が所定値以下のときは、負極端子30は、第1変形部材80,破断板88,接続部材26,負極リード24,負極タブ20を介して、負極と導通している。ケース18の内圧が所定値以下のときは、突起95と破断板88の間には隙間が設けられている。
【0040】
例えば、蓄電装置100が過充電状態になったり、過昇温状態になると、ケース18の内圧が上昇し、所定値を超える。ケース18の内圧が所定値を超えると、第2変形部材93が、破断板88に向かって変形する。すなわち、中央部93aが、破断板88の中央部88aに向けて移動する。換言すると、第2変形部材93が、端部93bを支点として反転する。より具体的には、ケース18の内圧が所定値以下のときは第2変形部材93の中央部93aは破断板88から離れる方向に突出している第1位置に存在しており、ケース18の内圧が所定値を超えたときは第2変形部材93の中央部93aは破断板88に向けて突出している第2位置に存在している。突起95が破断板88に接触し、破断板88が破断溝90を起点として破断する。第1変形部材80と破断板88が分離し、破断板88と第1変形部材80が非導通となる。負極端子30と負極が非導通になるので、正極端子2と負極端子30(図1も参照)の間に電流が流れることを防止することができる。
【0041】
なお、破断板88が破断すると、第1変形部材80の中央部80aが、破断板88側から拡径部37側に向けて移動する。換言すると、第1変形部材80が反転する。なお、上記したように、拡径部37の対向面35が窪んでいるので、第1変形部材80の反転が拡径部37(負極端子30)に妨げられることはない。破断板88が破断した後に、第1変形部材80と破断板88が再導通することを防止することができる。すなわち、ケース18内の圧力が上昇して電流遮断装置50が作動した後に、正極端子2と負極端子30の間に再度電流が流れることを防止することができる。
【0042】
また、第2変形部材93が反転すると、突起95の一部が、破断板88の上方に位置する。換言すると、突起95が、破断板88の中央部分を通過する。突起95は、第1変形部材80が下方(破断板88側)に移動することを規制する。そのため、第1変形部材80と破断板88が再導通することをより確実に防止することができる。
【0043】
蓄電装置100の利点を説明する。上記したように、拡径部37(負極端子30)に第1変形部材80の移動を規制する規制構造(窪み86)が設けられている。第1変形部材80の外周縁を窪み86の側壁に当接させた状態で、拡径部37に第1変形部材80を固定することができる。すなわち、拡径部37に対して第1変形部材80が位置ずれしない状態で、第1変形部材80を拡径部37に固定することができる。第1変形部材80の反転がスムーズになり、第1変形部材80を破断板88から確実に離反させることができる。同様に、破断板88に第2変形部材93の移動を規制する規制構造(窪み89)が設けられている。第2変形部材93の外周縁を窪み89の側壁に当接させた状態で、破断板88に第2変形部材93を固定することができる。すなわち、破断板88に対して第2変形部材93が位置ずれしない状態で、第2変形部材93を破断板88に固定することができる。第2変形部材93の反転がスムーズになり、破断板88を確実に破断することができる。第1変形部材80及び第2変形部材93移動を規制する規制構造を設けることにより、電流遮断装置50が動作不良を起こすことを防止することができる。
【0044】
上記したように、絶縁部材94は、第1変形部材80及びシール部材84に向けて移動することが規制されている。そのため、絶縁部材94が第1変形部材80に接触し、第1変形部材80の可動範囲を狭くすること防止することができる。また、絶縁部材94が第1変形部材80に接触し、ケース18内の圧力が上昇する前に第1変形部材80の形状が変形することを防止することができる。なお、第1変形部材80の外周縁は拡径部37の窪み86の側壁に当接しているので、第1変形部材80が絶縁部材94に向けて移動することも規制されている。さらに、絶縁部材94がシール部材84に接触し、シール部材84の存在空間を狭くすることを防止することができる。シール部材84の存在空間を狭くなると、シール部材84の充填率が増大し、シール部材84が破損する等の不具合が起こり得る。
【0045】
電流遮断装置50では、第2変形部材93が、電流遮断装置50の内部と外部を隔てている。そのため、第2変形部材93には、ケース18の内圧変化が直接作用する。ケース18の内圧に応じて反転する第2変形部材93を用いることによって、ケース18の内圧が所定値を超えたときに、破断板88を確実に破断することができる。また、第2変形部材93を用いることによって、破断板88を電流遮断装置50の外部(ケース18の内部)から遮断することができる。破断板88が破断したときにアークが発生しても、アークがケース18内のガス(例えば水素)と接することを防止することができる。
【0046】
(第2実施例)
図3を参照し、蓄電装置200について説明する。蓄電装置200は、蓄電装置100の変形例であり、電流遮断装置250の構造が蓄電装置100の電流遮断装置50と異なる。蓄電装置200について、蓄電装置100と同じ部品は、蓄電装置100と同じ参照番号を付すことにより、説明を省略することがある。
【0047】
電流遮断装置250は、第2変形部材93の移動を規制する規制構造の形態が電流遮断装置50と異なる。電流遮断装置250では、破断板88の端部88bに挿入孔289が設けられている。第2変形部材93の端部93bを挿入孔289に挿入することにより、第2変形部材93の外周縁が、挿入孔289の底面に当接する。これにより、破断板88に対する第2変形部材93の位置ずれを防止することができる。
【0048】
上記した電流遮断装置50,250では、第1変形部材80の端部80bを固定する第1通電部材が、負極端子30の一部(拡径部37)である。第1通電部材は、それ自体が外部配線等を接続する外部端子の一部であってもよいし、第1通電部材とは別に外部配線等を接続する外部端子を設け、第1通電部材とその外部端子を導電性のリード等で接続してもよい。また、第1通電部材に第1変形部材を直接固定しないで、第1通電部材に導電性のリードを接続し、そのリードに第1変形部材を接続してもよい。また、第1通電部材が電極端子とは別部品の場合、第1通電部材と電極(正極又は負極)を接続し、破断板(第2通電部材)と電極端子を接続してもよい。なお、第2変形部材93は金属製でなくてもよい。
【0049】
電流遮断装置250では、第1変形部材80の移動を規制する規制構造が窪み86であり、第2変形部材93の移動を規制する規制構造が挿入孔289である。第1変形部材80の移動を規制する規制構造、及び、第2変形部材93の移動を規制する規制構造の双方が挿入孔であってもよい。あるいは、第1変形部材80の移動を規制する規制構造が挿入孔であり、第2変形部材93の移動を規制する規制構造が窪みであってもよい。なお、拡径部37(第1通電部材)にのみ第1変形部材80の移動を規制する規制構造を設けられており、破断板88には第2変形部材93の移動を規制する規制構造が設けられていなくてもよい。あるいは、拡径部37(第1通電部材)には第1変形部材80の移動を規制する規制構造を設けられておらず、破断板88にのみ第2変形部材93の移動を規制する規制構造が設けられていてもよい。
【0050】
上記した蓄電装置は、第1通電部材と第1通電部材の間に配置する絶縁部材の移動を規制するために、第1通電部材と第1通電部材の少なくとも一方に溝が形成されていればよい。そのため、電流遮断装置の構造、及び、蓄電装置を構成する部品の材料は様々なものを使用することができる。以下に、蓄電装置の一例であるリチウムイオン二次電池について、蓄電装置を構成する部品の材料を例示する。
【0051】
電極組立体について説明する。電極組立体は、正極と、負極と、正極と負極の間の位置に介在しているセパレータを備えている。正極は、正極用金属箔と、正極用金属箔上に形成されている正極活物質層を有する。正極タブは、正極活物質層が塗布されていない正極用金属箔に相当する。負極は、負極用金属箔と、負極用金属箔上に形成されている負極活物質層を有する。負極タブは、負極活物質層が塗布されていない負極用金属箔に相当する。なお、活物質層に含まれる材料(活物質、バインダ、導電助剤等)には特に制限がなく、公知の蓄電装置等の電極に用いられる材料を用いることができる。
【0052】
正極用金属箔として、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、ステンレス鋼又はそれらの複合材料を用いることができる。特に、アルミニウム又はアルミニウムを含む複合材料であることが好ましい。また、正極リードの材料として、正極用金属箔と同様の材料を用いることができる。
【0053】
正極活物質は、リチウムイオンが侵入及び脱離可能な材料であればよく、LiMnO、Li(NiCoMn)0.33、Li(NiMn)0.5、LiMn、LiMnO、LiNiO、LiCoO、LiNi0.8Co0.15Al0.05、LiMnO、LiMn等を使用することができる。また、正極活物質としてリチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、あるいは、硫黄などを用いることもできる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。正極活物質は、必要に応じて導電材,結着剤等とともに正極用金属箔に塗布される。
【0054】
負極用金属箔として、アルミニウム、ニッケル、銅(Cu)等、又はそれらの複合材料等を使用することができる。特に、銅又は銅を含む複合材料であることが好ましい。また、負極リードの材料として、負極用金属箔と同様の材料を用いることができる。
【0055】
負極活物質として、リチウムイオンが侵入及び脱離可能な材料を用いる。リチウム(Li)、ナトリウム(Na)等のアルカリ金属、アルカリ金属を含む遷移金属酸化物、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、高配向性グラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料、シリコン単体又はシリコン含有合金又はシリコン含有酸化物を使用することができる。なお、負極活物質は、電池容量を向上させるため、リチウム(Li)を含まない材料であることが特に好ましい。負極活物質は、必要に応じて導電材,結着剤等とともに負極用金属箔に塗布される。
【0056】
セパレータは、絶縁性を有する多孔質を用いる。セパレータとして、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、あるいは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布または不織布を使用することができる。
【0057】
電解液は、非水系の溶媒に支持塩(電解質)を溶解させた非水電解液であることが好ましい。非水系の溶媒として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の鎖状エステルを含んでいる溶媒、酢酸エチル、プロピロン酸メチルなどの溶媒、又はこれらの混合液を使用することができる。また、支持塩(電解質)として、例えば、LiPF、LiBF、LiAsF等を使用することができる。
【0058】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
図1
図2
図3