【実施例】
【0047】
以下に、本発明の水系素地調整剤組成物について、実施例
、参考例及び比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例
、参考例及び比較例に限定されるものではない。なお、実施例、
参考例及び比較例における「部」、「%」はとくに断らない限り質量を基準とする。
【0048】
[実施例1
、3〜10、12〜13、16〜18、20〜27及び29〜37
、参考例2、11、14、15、19及び28、並びに比較例1〜9]
先ず、表1〜3に示す配合のように、主剤(A)及び硬化剤(B)をそれぞれ準備した。主剤(A)及び硬化剤(B)のそれぞれについて、後述の方法で粘度を測定した。
【0049】
[試験方法、評価]
キシレンで脱脂、洗浄した寸法150×70×1.6mmの磨き軟鋼板に対しその片面半分(75×70mm)に、JIS K5621(一般さび止めペイント)2種[「グリーンボーセイ建築用」〔大日本塗料(株)製商品名〕]を2回塗りし、次いで、JIS K5516(合成樹脂調合ペイント)2種中塗り用[「タイコーマリン中塗」〔大日本塗料(株)製商品名〕]を1回塗りし、最後に、JIS K5516(合成樹脂調合ペイント)2種上塗り用[「タイコーマリン上塗」〔大日本塗料(株)製商品名〕]を1回塗りして、試験用塗板を得た。このようにして形成された塗膜を、以下「旧塗膜」という。
【0050】
得られた試験用塗板を屋外に12ケ月間曝露し、発錆させた。なお、曝露6ケ月間経過後に食塩をCl量に換算して500mg/m
2となるよう塗布した。このようにして得られた発錆塗板の表面を、以下の塗装仕様で塗布した。
【0051】
<前処理>
発錆塗板表面の付着物、脆弱錆のみをスコッチブライト(スリーエム社製商品名)により除去した。
【0052】
<水系素地調整剤組成物の塗布>
準備した主剤(A)及び硬化剤(B)をそれぞれ表1〜3の組成の通り混合して実施例1
、3〜10、12〜13、16〜18、20〜27及び29〜37
、参考例2、11、14、15、19及び28、並びに比較例1〜9に係る水系素地調整剤組成物とし、これを前記前処理後の発錆塗板の表面に、それぞれ塗布量0.10kg/m
2となるように刷毛で塗布し、温度23℃の環境下で1日間自然乾燥させた。なお、実施例1
、3〜10、12〜13、16〜18、20〜27及び29〜37
、並びに参考例2、11、14、15、19及び28に係る水系素地調整剤組成物の塗装時の粘度は、いずれも5,000mPa・s以下であった。
臭気、塗装作業性、錆への浸透性、乾燥性、耐水性を後述方法によりそれぞれ評価した。
【0053】
<下塗塗料塗布>
前記の通りに水系素地調整剤組成物を塗布した後、下塗塗料として変性エポキシ樹脂塗料弱溶剤型[「エポオールスマイル」〔大日本塗料(株)製商品名〕]を、それぞれ塗布量0.22kg/m
2となるようにエアスプレーで塗布し、温度23℃の環境下で1日間自然乾燥させた。
【0054】
<中塗塗料塗布>
前記下塗塗料の塗布後、中塗塗料としてふっ素樹脂塗料用中塗塗料[「Vフロン100#スマイル中塗」〔大日本塗料(株)製商品名〕]を、それぞれ塗布量0.16kg/m
2となるようにエアスプレーで塗布し、温度23℃の環境下で1日間自然乾燥させた。
【0055】
<上塗塗料塗布>
前記中塗塗料の塗布後、ふっ素樹脂塗料用上塗塗料[「Vフロン100#スマイル上塗」〔大日本塗料(株)製商品名〕]を、それぞれ塗布量0.15kg/m
2となるようにエアスプレーで塗布し、温度23℃の環境下で1日間自然乾燥させた。
【0056】
次いで、前記上塗塗料の塗布後の塗板を、20℃、50%RHの条件下で7日間養生した。このようにして得られた複数の試験塗板について、後述の方法により防食性を評価した。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
表1中における、注1)〜注12)は以下の通りである。
<(A−1)成分>
注1):バイヒドロールA145;住化バイエルウレタン(株)製、水酸基含有アクリルディスパージョン、不揮発分45%、OH基含有率3.3%、水酸基価109mgKOH/g(樹脂換算)、酸価10mgKOH/g、Mn=3900、Mw=13000、粘度(23℃)950mPa・s(分散媒:水)、平均粒子径(D50)=150nm
注2):バイヒドロールA2601;住化バイエルウレタン(株)製、水酸基含有アクリルディスパージョン、不揮発分45%、OH基含有率3.9%、水酸基価129mgKOH/g(樹脂換算)、粘度(23℃)2200mPa・s(分散媒:水)
注3):ルミフロンFE4200:旭硝子(株)製、水酸基含有ふっ素樹脂エマルション、不揮発分50%、OH基含有率1.6%、水酸基価54mgKOH/g(樹脂換算)、粘度(23℃)500mPa・s(分散媒:水)、平均粒子径(D50)=100〜200nm
注4):プラスコートZ−730:互応化学工業(株)製、カルボキシル基含有水溶性ポリエステル樹脂、不揮発分25%、カルボキシル基含有率4.0%、酸価40〜60mgKOH/g(樹脂換算)、粘度(23℃)10mPa・s(分散媒:水)
注5):ボンコート40−418EF;DIC(株)、アクリル系エマルション、不揮発分55%、OH基含有率0%(固形分として)、粘度(23℃)1000mPa・s(分散媒:水)、平均粒子径(D50)=250nm
注6):ボンコート5400EF;DIC(株)、アクリル−スチレン系エマルション、不揮発分55%、OH基含有率0%(固形分として)、粘度(23℃)3000mPa・s(分散媒:水)、平均粒子径(D50)=200nm
【0061】
<(A−2)成分>
注7):Kホワイト#94;テイカ(株)製、リン酸アルミニウム系防錆顔料
【0062】
<(A−3)成分>
注8):ソルカットC;日本化学工業(株)製、腐食性イオン固定化剤
【0063】
<(A−4)成分>
注9):KBM403;信越シリコーン(株)製、シランカップリング剤
【0064】
<(B)硬化剤>
注10):タケネートWD−725;三井化学(株)製、水分散性ポリイソシアネート樹脂(親水基を有する水分散性ポリイソシアネート)、不揮発分100%、NCO含有率16%、Mw=2000、粘度(23℃)800mPa・s
注11):バーノックDNW−6000; DIC(株)製、水分散性ポリイソシアネート樹脂(親水基を有する水分散性ポリイソシアネート)、不揮発分100%、NCO含有率16%、Mw=6000、粘度(23℃)2300mPa・s
注12):デュラネートTUL−100; 旭化成ケミカルズ(株)製、溶剤系用ポリイソシアネート樹脂、不揮発分100%、NCO含有率23%、Mw=2000、粘度(23℃)300mPa・s
【0065】
各評価方法は、以下に示す通りである。
<粘度>
B型粘度計〔東京計器(株)製〕を用いて測定した。測定条件を以下に示す。
・温度:23℃
・ローター:No.3
・回転数:12rpm
【0066】
<臭気>
塗装時の臭気を、塗装作業者が感じた溶剤臭の有無、不快感から定性評価した。
◎:臭気を感じず、塗装時の不快感がない。
○:臭気を感じるが、塗装時の不快感はない。
△:臭気があり、塗装時に少しばかり不快を感じる。
×:臭気が強く、塗装時に大きな不快を感じる。
【0067】
<塗装作業性>
塗装時の塗装作業性を、以下の評価基準より定性評価した。
◎:素地調整剤組成物の伸びが非常に良く、塗装が容易にできる。
○:素地調整剤組成物の伸びが良く、問題なく塗装できる。
△:素地調整剤組成物の伸びがやや悪く、塗装時に時折刷毛がひっかかることがある。
×:素地調整剤組成物の伸びが非常に悪く、塗装時に刷毛がひっかかって塗装に困難を感じる。
【0068】
<さびへの浸透性>
素地調整剤組成物を塗装した塗板断面の元素(炭素と鉄)分布の状態を電子線マイクロアナライザー〔(株)島津製作所製EPMA−1720〕で測定し、さび層(層厚み:100μm)への浸透深さを測定して以下の評価基準で評価した。
◎:さびへの浸透性が非常に高く、塗装した素地調整剤組成物がさび層の表面から100μm程度浸透する。
○:さびへの浸透性が高く、塗装した素地調整剤組成物がさび層の表面から50μm程度浸透する。
△:さびに浸透するが、塗装した素地調整剤組成物がさび層の表面から20μm程度浸透する。
×:さびへの浸透性が悪く、素地調整剤組成物の大部分がさび層の表面で硬化する。
【0069】
<乾燥性>
乾燥性については、塗装後の硬化過程における半硬化乾燥の程度で判定した。
◎:半硬化乾燥12時間半以内
○:半硬化乾燥16時間以内
△:半硬化乾燥24時間以内
×:半硬化乾24時間超過
【0070】
<耐水性>
水系素地調整剤組成物を塗装し、24時間経過した塗板を没水し72時間後の塗膜の状態で判定した
◎:フクレなし
○:塗膜表面に5%以下のフクレあり
△:塗膜表面に5%超過10%以下のフクレあり
×:塗膜表面に10%超過のフクレあり
【0071】
<防食性>
JIS K5674のサイクル腐食性に基づいて防食性を評価した。
◎:フクレ、錆発生なし
○:クロスカット部に幅2mm以内のフクレ、錆発生あり
クロスカット部以外にフクレ、錆発生数点あり
△:クロスカット部に幅2〜5mmのフクレ、錆発生あり
クロスカット部以外に10%以下のフクレ、錆発生あり
×:クロスカット部に幅5mmを超えるフクレ、錆発生あり
クロスカット部以外に10%を超えるフクレ、錆発生あり
【0072】
<さび顔料への浸透性>
調製した本発明の素地調整剤組成物のさびへの浸透性を確認するため、実施例18及び比較例9の素地調整剤組成物を用いて以下の評価を行った。
(試験方法)
OHPシート上に内径3.5cmのアルミニウム製のリングを置き、このリングの中に鉄さび顔料〔ケミライト工業(株)製〕5gを入れ、MP−35〔島津(株)製〕を用いて圧力:10t/cm
2、時間:30秒の条件で押し固めてペレット状にした。このペレットの表面に、実施例18又は比較例9の素地調整剤組成物を、それぞれ0.7g塗布した。その後、室温で24時間乾燥させた後、リングを持ち上げることにより、ペレット内部への浸透性を評価した。結果を
図1に示した。
それぞれ、塗布直後の状態、24時間乾燥後にリングを持ち上げた後のリングに付着した部分(浸透部分)、OHPシート上に残存した部分(非浸透部分)を示す。
【0073】
(結果)
実施例18:
24時間乾燥後にリングを持ち上げると、リングには鉄さび顔料及び素地調整組成物が共に付着し、残ったOHPシートには、鉄さび顔料が少し付着している程度であった。すなわち、実施例18の素地調整組成物が、鉄さび顔料のペレット中に十分に浸透して、鉄さび顔料と共に固化していることが分かる。
比較例9:
24時間乾燥後にリングを持ち上げると、リングに付着していたのは殆どが比較例9の素地調整組成物であり、OHPシートには、鉄さび顔料の殆どが付着したままであった。すなわち、比較例9の素地調整組成物は、鉄さび顔料のペレット中には殆ど浸透できず、鉄さび顔料のペレット表層で固化してしまうことが分かる。
すなわち上記の結果より、実施例18の素地調整剤組成物は鉄さびペレットの内部まで浸透し、さびを固化可能だが、比較例9の素地調整剤組成物は鉄さびペレットの表層のみで固化し、さびを殆ど固化できないことが分かる。