(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6019268
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】3次元積層造形装置、3次元積層造形装置の制御方法および3次元積層造形装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B29C 67/00 20060101AFI20161020BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20161020BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20161020BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20161020BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20161020BHJP
B22F 3/16 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
B29C67/00
B33Y30/00
B33Y10/00
B33Y50/00
B22F3/105
B22F3/16
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-510878(P2016-510878)
(86)(22)【出願日】2015年11月13日
(86)【国際出願番号】JP2015081971
【審査請求日】2016年2月29日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度 経済産業省「産業技術研究開発(三次元造形技術を核としたものづくり革命プログラム(次世代型産業用3Dプリンタ技術開発及び超精密三次元造形システム技術開発))」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】514227988
【氏名又は名称】技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓士
(74)【代理人】
【識別番号】100198960
【弁理士】
【氏名又は名称】奥住 忍
(72)【発明者】
【氏名】古川 哲義
【審査官】
田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−196265(JP,A)
【文献】
特開2006−248231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 67/00
B22F 3/105
B22F 3/16
B33Y 10/00
B33Y 30/00
B33Y 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元積層造形物が造形される造形室と、
前記造形室に搬送される粉末を貯蔵する粉末貯蔵手段と、
前記造形室と前記粉末貯蔵手段との間に設けられ、第1バルブを介して前記造形室と接続され、第2バルブを介して前記粉末貯蔵手段と接続され、前記粉末を一時的に貯蔵する中間粉末貯蔵手段と、
前記第1バルブおよび前記第2バルブの開閉を制御するバルブ制御手段と、
前記中間粉末貯蔵手段の内部の雰囲気と、前記造形室の内部の雰囲気とを制御する雰囲気制御手段と、
を備えた3次元積層造形装置。
【請求項2】
前記雰囲気制御手段は、前記中間粉末貯蔵手段の内部の雰囲気と、前記造形室の内部の雰囲気とを同じ雰囲気にする請求項1に記載の3次元積層造形装置。
【請求項3】
前記中間粉末貯蔵手段は、前記造形室の上方に配置されている請求項1または2に記載の3次元積層造形装置。
【請求項4】
前記中間粉末貯蔵手段は、前記第1バルブと前記第2バルブとの間に第3バルブをさらに備え、
前記バルブ制御手段は、前記第1バルブおよび前記第3バルブを制御して、前記中間粉末貯蔵手段から前記造形室へ、前記粉末を供給する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の3次元積層造形装置。
【請求項5】
前記バルブ制御手段は、
前記中間粉末貯蔵手段への前記粉末の供給が終了したタイミングで、前記第2バルブを閉じ、
前記中間粉末貯蔵手段の雰囲気制御が終了したタイミングで、前記第1バルブおよび前記第3バルブを開く請求項4に記載の3次元積層造形装置。
【請求項6】
前記中間粉末貯蔵手段は、前記粉末の重量を測定する重量測定手段をさらに備え、
前記バルブ制御手段は、前記重量測定手段が所定の重量変化を検出した場合に、前記第1バルブを閉鎖する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の3次元積層造形装置。
【請求項7】
前記中間粉末貯蔵手段は、加熱手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の3次元積層造形装置。
【請求項8】
前記粉末貯蔵手段から前記中間粉末貯蔵手段へ前記粉末を搬送する粉末搬送手段をさらに備えた請求項1乃至7のいずれか1項に記載の3次元積層造形装置。
【請求項9】
前記粉末搬送手段は、前記粉末を撹拌する撹拌手段を備えた請求項1乃至8のいずれか1項に記載の3次元積層造形装置。
【請求項10】
前記造形室は、
前記粉末を散布する粉末散布手段と、
前記粉末散布手段へ前記粉末を供給する粉末供給手段と、をさらに備え、
前記粉末供給手段は、前記粉末の供給量を検知する供給量検知手段を有し、
前記供給量検知手段によって所定量の粉末の供給を検知した場合に、前記中間粉末貯蔵手段から前記粉末供給手段へ前記粉末を補充する請求項1乃至9のいずれか1項に記載の3次元積層造形装置。
【請求項11】
前記雰囲気制御手段は、前記中間粉末貯蔵手段を真空に排気する請求項1乃至10のいずれか1項に記載の3次元積層造形装置。
【請求項12】
前記真空は、6.7Pa以下の真空度である請求項11に記載の3次元積層造形装置。
【請求項13】
前記雰囲気制御手段は、前記中間粉末貯蔵手段に所定の気体を充填する請求項1乃至10のいずれか1項に記載の次元積層造形装置。
【請求項14】
前記所定の気体は、ヘリウム、アルゴンまたは窒素である請求項13に記載の3次元積層造形装置。
【請求項15】
前記所定の気体の濃度は、95%以上である請求項14に記載の3次元積層造形装置。
【請求項16】
請求項1に記載の3次元積層造形装置の制御方法であって、
前記中間粉末貯蔵手段に対して、前記粉末貯蔵手段から前記粉末を送出する送出ステップと、
前記粉末貯蔵手段から送出された前記粉末を前記中間粉末貯蔵手段で一時的に貯蔵する中間粉末貯蔵ステップと、
前記中間粉末貯蔵手段の内部の雰囲気と、前記造形室の内部の雰囲気とを制御する雰囲気制御ステップと、
を含む3次元積層造形装置の制御方法。
【請求項17】
請求項1に記載の3次元積層造形装置の制御プログラムであって、
前記中間粉末貯蔵手段に対して、前記粉末貯蔵手段から前記粉末を送出する送出ステップと、
前記粉末貯蔵手段から送出された前記粉末を前記中間粉末貯蔵手段で一時的に貯蔵する中間粉末貯蔵ステップと、
前記中間粉末貯蔵手段の内部の雰囲気と、前記造形室の内部の雰囲気とを制御する雰囲気制御ステップと、
をコンピュータに実行させる3次元積層造形装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末を積層することにより3次元積層造形物を製造する製造装置において、造形室へ粉末を供給する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、造形物の製造に必要な量の粉末を、造形室に設けられた粉末供給容器にあらかじめ貯蔵しておく技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2006−509914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献に記載の技術では、3次元積層造形物の造形処理を中断することなく、造形室に粉末を供給することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る装置は、
3次元積層造形物が造形される造形室と、
前記造形室に搬送される粉末を貯蔵する粉末貯蔵手段と、
前記造形室と前記粉末貯蔵手段との間に設けられ、第1バルブを介して前記造形室と接続され、第2バルブを介して前記粉末貯蔵手段と接続され、前記粉末を一時的に貯蔵する中間粉末貯蔵手段と、
前記第1バルブおよび前記第2バルブの開閉を制御するバルブ制御手段と、
前記中間粉末貯蔵手段の内部の雰囲気と、前記造形室の内部の雰囲気とを制御する雰囲気制御手段と、
を備えた3次元積層造形装置である。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る3次元積層造形装置の制御方法は、
上記3次元積層造形装置の制御方法であって、
前記中間粉末貯蔵手段に対して、前記粉末貯蔵手段から前記粉末を送出する送出ステップと、
前記粉末貯蔵手段から送出された前記粉末を前記中間粉末貯蔵手段で一時的に貯蔵する中間粉末貯蔵ステップと、
前記中間粉末貯蔵手段の内部の雰囲気と、前記造形室の内部の雰囲気とを制御する雰囲気制御ステップと、
を含む。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る3次元積層造形装置の制御プログラムは、
請求項1に記載の3次元積層造形装置の制御プログラムであって、
前記中間粉末貯蔵手段に対して、前記粉末貯蔵手段から前記粉末を送出する送出ステップと、
前記粉末貯蔵手段から送出された前記粉末を前記中間粉末貯蔵手段で一時的に貯蔵する中間粉末貯蔵ステップと、
前記中間粉末貯蔵手段の内部の雰囲気と、前記造形室の内部の雰囲気とを制御する雰囲気制御ステップと、
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、3次元積層造形物の造形処理を中断することなく、造形室に粉末を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る3次元積層造形装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る3次元積層造形装置の構成を示す図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る3次元積層造形装置の備えるロードロック室の構成を説明する図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る3次元積層造形装置の備えるロードロック室からプロセスチャンバへの粉末供給の概要を説明する図である。
【
図5A】本発明の第2実施形態に係る3次元積層造形装置の粉末供給処理手順を説明するフローチャートである。
【
図5B】本発明の第2実施形態に係る3次元積層造形装置の粉末供給処理手順を説明するフローチャートである。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る3次元積層造形装置の構成を示す図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る3次元積層造形装置の備えるロードロック室からプロセスチャンバへの粉末供給の概要を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して、例示的に詳しく説明記載する。ただし、以下の実施の形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0011】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としての3次元積層造形装置100について、
図1を用いて説明する。3次元積層造形装置100は、粉末を積層して、硬化させることにより3次元積層造形物111を製造する装置である。
図1に示すように、3次元積層造形装置100は、造形室101と、粉末貯蔵部102と、中間粉末貯蔵部103と、バルブ制御部104と、雰囲気制御部105とを含む。
【0012】
造形室101は、3次元積層造形物111が造形される。粉末貯蔵部102は、造形室101に搬送される粉末121を貯蔵する。中間粉末貯蔵部103は、造形室101と粉末貯蔵部102との間に設けられ、2つのバルブ131、132を備え、第1バルブ131を介して造形室101と接続され、第2バルブ132を介して粉末貯蔵部102と接続され、粉末121を一時的に貯蔵する。バルブ制御部104は、第1バルブ131および第2バルブ132の開閉を制御する。雰囲気制御部105は、中間粉末貯蔵部103の内部の雰囲気と、造形室101の内部の雰囲気とを制御する。
【0013】
本実施形態によれば、3次元積層造形物の造形処理を中断することなく、造形室に粉末を供給することができる。
【0014】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態に係る3次元積層造形装置について、
図2を用いて説明する。
図2は、本実施形態に係る3次元積層造形装置200の構成を説明するための図である。3次元積層造形装置200は、プロセスチャンバ201と、粉末タンク202と、ロードロック室203と、バルブ制御部204と、雰囲気制御部205と、ビーム照射部206とを備える。
【0015】
≪プロセスチャンバ(造形室)≫
プロセスチャンバ201は、3次元積層造形物214の造形室であり、粉末供給容器211と、リコータ212と、ワーク213とを備える。粉末供給容器211は、リコータ212に粉末221を供給する。リコータ212は、ワーク213上を左右に移動しながら、供給された粉末221をワーク213上に散布して、粉末221をワーク213上に敷き詰める。そして、ワーク213上に敷き詰められた粉末221に、ビーム照射部206からレーザビームや電子ビームなどのビーム261が照射され、ビーム261が照射された部分の粉末221が硬化し、1層分の断面形状が形成される。
【0016】
1層分の断面形状の形成が完了すると、ワーク213が下降して、1層分の粉末221が敷き詰められるスペースができるので、リコータ212から1層分の粉末221が散布される。そして、散布された粉末221にビーム261が照射され、ビーム261が照射された部分の粉末が硬化し、さらに1層分の断面形状が形成される。以上の処理を所定の回数繰り返すと、所望の3次元積層造形物214が造形される。
【0017】
≪粉末タンク(粉末貯蔵部)≫
粉末タンク202は、プロセスチャンバ201に供給する粉末221を貯蔵するタンクである。粉末タンク202には、粉末搬送路222が接続されており、粉末タンク202から送出された粉末221が、この粉末搬送路222を通って、最終的にプロセスチャンバ201に供給される。粉末搬送路222の先には、粉末搬送ポンプ223が設けられており、この粉末搬送ポンプ223により粉末タンク202から粉末221が吸い上げられて、最終的にプロセスチャンバ201に搬送される仕組みとなっている。
【0018】
なお、粉末221を搬送する仕組みはこれには限定されず、例えば、粉末タンク202にコンプレッサーなどを設けて、圧送により粉末221を搬送してもよい。また、粉末搬送ポンプ223に、粉末221を撹拌したり、混合したりできる、例えば、棒状、板状、プロペラ状などの撹拌子を設けてもよい。この撹拌子により粉末221を撹拌や混合すれば、粉末221がロードロック室203に落下するときに、粉末221の偏析を防止できる。なお、粉末221の撹拌は、撹拌子を用いる撹拌には限定されず、例えば、粉末221をポンプなどで加圧して、勢いよく吹き込んでもよい。また、粉末搬送ポンプ223において、3次元積層造形物214の造形条件や使用用途などに合わせて、粉末221を選り分けたり、分級したりしてもよい。さらに、粉末搬送ポンプ223に対して、ユーザの手で粉末221を投入してもよい。
【0019】
≪ロードロック室(中間粉末貯蔵部)≫
ロードロック室203は、プロセスチャンバ201の上方に配置されており、粉末タンク202とプロセスチャンバ201との間に設けられている。ロードロック室203は、粉末タンク202から搬送される粉末221がプロセスチャンバ201に供給される前に、一時的に粉末221を貯蔵する。粉末221は、粉末タンク202から粉末搬送路222を介してロードロック室203へ供給される。
【0020】
ロードロック室203には、2つのバルブが設けられており、プロセスチャンバ201側にゲートバルブ231が、粉末タンク202側に材料供給バルブ232がそれぞれ設けられている。バルブ制御部204は、ゲートバルブ231および材料供給バルブ232の開閉を制御する。材料供給バルブ232が開くと、粉末タンク202とロードロック室203とが粉末搬送路222を介して繋がり、粉末221が粉末タンク202からロードロック室203へ供給される。そして、材料供給バルブ232が閉じると、粉末タンク202からロードロック室203への粉末221の供給が遮断される。
【0021】
同様に、ゲートバルブ231が開くと、プロセスチャンバ201とロードロック室203とが繋がり、粉末221がロードロック室203から粉末供給容器211へ供給される。そして、材料供給バルブ232が閉じると、ロードロック室203からプロセスチャンバ201への粉末221の供給が遮断される。
【0022】
そして、ロードロック室203に一定量の粉末221が貯まると、バルブ制御部204により、材料供給バルブ232が閉じられ、粉末221の供給が停止する。この状態では、ゲートバルブ231および材料供給バルブ232は閉じられており、ロードロック室203は、粉末221供給系のいずれの装置とも繋がっていない。
【0023】
雰囲気制御部205は、ロードロック室203の内部の雰囲気を制御して、例えば、ロードロック室203内部の雰囲気とプロセスチャンバ201の内部の雰囲気とを同じ雰囲気とする。具体的には、雰囲気制御部205は、例えば、プロセスチャンバ201が真空に排気されていれば、ロードロック室203の内部を真空排気し、プロセスチャンバ201の内部の真空度と同じ真空度にする。ロードロック室203の容積は、プロセスチャンバ201の容積と比較して十分に小さいので、このような小さな空間で真空排気すると、粉末221からガスなどが抜けるので、粉末221を供給した際に、粉末221が舞ったりすることがない。粒径の小さい粉末221は、粉末221が舞い易く取り扱いが難しいので、このように真空排気しておくと、粉末221の取り扱いが容易になる。
【0024】
このように、ロードロック室203の内部の真空度とプロセスチャンバ201の内部の真空度とを同じ真空度にすることで、ゲートバルブ231を開放しても、プロセスチャンバ201の内部の雰囲気、つまり真空度は一切変化しない。したがって、プロセスチャンバ201の真空を破って、粉末221を補充して、粉末221の補充後、プロセスチャンバ201を再度真空排気するという処理が不要となるので、造形プロセスが中断することがなく、連続して粉末221を供給できる。
【0025】
ロードロック室203の内部の真空度は、6.7Pa以下の真空度とするのがよいが、真空度はこれには限定されず、3次元積層造形物214の造形条件に応じて適宜選択することができ、より高真空にしてもよいし、低真空にしてもよい。そして、ロードロック室203の真空排気が完了して、ロードロック室203とプロセスチャンバ201との真空度が同じになった後に、ゲートバルブ231を開けば、粉末221は、自重により落下する。したがって、バルブ制御部204により、ゲートバルブ231を開放するように制御すれば、粉末供給容器211に粉末221を自動的に供給することができる。
【0026】
また、雰囲気制御部205は、ロードロック室203の雰囲気を真空に制御するだけではなく、所定の気体の雰囲気になるように制御してもよく、例えば、ヘリウム(He)やアルゴン(Ar)、窒素(N)などの所定の気体の雰囲気に制御してもよい。
【0027】
例えば、粉末221の搬送時には、粉末221同士の摩擦などにより静電気が発生することがあり、発火する恐れがある。この場合、粉末221を通常の空気雰囲気で搬送していると、空気中に含まれる酸素(О
2)により、粉末221の燃焼が促進され、非常に危険である。金属粉末のように反応性が高く、発火の可能性が高い粉末221の場合、粉末221の搬送経路を空気雰囲気ではなく、その粉末221にふさわしい雰囲気で搬送するとよく、例えば、窒素雰囲気などにしておけば粉末221の燃焼を未然に防止できる。また、窒素雰囲気中では窒化してしまう粉末221であれば、例えば、ヘリウム雰囲気やアルゴン雰囲気にすればよい。また、粉末タンク202側に、気体の回収タンクを設けて、気体を循環させて再利用すれば、気体を無駄にすることがない。
【0028】
ここで、所定の気体は、ここに例示した気体には限定されず、3次元積層造形物の造形条件に応じて適宜選択してもよい。この場合の気体濃度は、95%以上とするのがよいが、気体濃度はこれには限定されず、3次元積層造形物214の造形条件に応じて適宜選択することができ、95%未満の気体濃度であってもよい。
【0029】
なお、プロセスチャンバ201の雰囲気制御は、雰囲気制御部205により行ってもよいし、プロセスチャンバ201用の雰囲気制御装置により行ってもよい。雰囲気制御部205によりプロセスチャンバ201の雰囲気制御をする場合は、プロセスチャンバ201およびロードロック室203の雰囲気制御が連動するようにしてもよいし、それぞれ別個に制御してもよい。
【0030】
次に、ロードロック室203に粉末221を予備加熱するためのヒータを設けてもよい。粉末221をあらかじめ加熱しておけば、プロセスチャンバ201内で、予備加熱用のビーム261を照射して粉末221を予備加熱する必要がなくなるか、または、予備加熱に要する時間を短縮できる。これにより、造形速度を低下させずに3次元積層造形物214の造形を行うことが可能となる。ヒータによる予備加熱は、300℃位まで加熱するのが望ましいが、これには限定されない。なお、ここでは、予備加熱用のヒータをロードロック室203に設ける例で説明したが、ヒータを設ける場所はこれには限定されず、例えば、プロセスチャンバ201内の粉末供給容器211に設けてもよい。ただし、粉末供給容器に211にヒータを設けると、粉末供給容器211が大型化するので、プロセスチャンバ201も大型化し、ひいては、3次元積層造形装置200も大型化する。よって、プロセスチャンバ201の大型化を回避するためには、ロードロック室203にヒータを設けるのが好ましい。
【0031】
図3は、本実施形態に係る3次元積層造形装置の備えるロードロック室の構成を説明する図である。ロードロック室203は、さらに、粉末貯蔵容器301と、粉末供給バルブ311と、重量センサ312とを備える。
【0032】
粉末貯蔵容器301は、粉末221を一時的に貯蔵する。粉末供給バルブ311を開閉することにより、粉末貯蔵容器301に貯蔵された粉末221の供給を調整できる。重量センサ312は、粉末221などの重量を測定可能なセンサであり、ロードセルなどが代表的であるが、重量測定が可能な装置であれば、これには限定されない。また、粉末供給バルブ311は、粉末貯蔵容器301に貯蔵される粉末221の重量に耐え得るものであればよいので、ゲートバルブ231と比較すると、ゲートバルブ231よりも厚みなどが薄いバルブとなっている。
【0033】
そして、粉末タンク202から所定量の粉末221がロードロック室203の粉末貯蔵容器301に供給されると、バルブ制御部204により、材料供給バルブ232が閉じられ、雰囲気制御部205による、雰囲気制御が実行される。その後、雰囲気制御が完了すると、バルブ制御部204により、ゲートバルブ231および粉末供給バルブ311が開放され、粉末221が自重で落下することにより、ロードロック室203からプロセスチャンバ201へ粉末221が供給される。
【0034】
重量センサ312が、所定の重量変化、例えば、粉末221の重量があらかじめ設定した量だけ減少したことを検出すると、バルブ制御部204は、ゲートバルブ231および粉末供給バルブ311を閉じて、粉末221のプロセスチャンバ201への供給を停止する。このように、重量センサ312を用いて、粉末221の供給量を検知すれば、3次元積層造形物の造形に必要な分量の粉末221を正確に供給できるので、粉末221を無駄に供給することがなく、粉末221を無駄に消費することもない。また、重量センサ312で粉末221の重量を測定しているので、粉末貯蔵容器301が空になったか否かを確実に把握することができる。さらに、3次元積層造形物の造形に使われなかった粉末221を回収するなどの手間も省くことができる。
【0035】
図4は、本実施形態に係る3次元積層造形装置の備えるロードロック室からプロセスチャンバへの粉末供給の概要を説明する図である。
【0036】
バルブ制御部204は、ロードロック室203への粉末221の供給が終了したタイミングで、材料供給バルブ232を閉じる。そして、雰囲気制御部205によるロードロック室203の雰囲気制御が終了したタイミングでゲートバルブ231および粉末供給バルブ311を開く。以下、具体的に説明する。
【0037】
まず、バルブ制御部204により、材料供給バルブ232が開かれ、粉末タンク202から粉末搬送路222を通過して搬送された粉末221が、ロードロック室203に搬送され、粉末貯蔵容器301に貯蔵される。
【0038】
そして、粉末貯蔵容器301に所定量の粉末221が貯蔵されると、バルブ制御部204により材料供給バルブ232が閉じられて、ロードロック室203が密閉される。
【0039】
次に、ロードロック室203が密閉されると、雰囲気制御部205により、ロードロック室203の内部の雰囲気を、例えば、真空に排気する。ロードロック室203内が、所定の真空度に達すると、雰囲気制御部205は、雰囲気制御を停止する。
【0040】
そして、バルブ制御部204は、ゲートバルブ231を開放し、それに続いて粉末供給バルブ311を開放する。粉末供給バルブ311が開放されると、粉末221は、自重により自動的に落下し、粉末供給容器211へ粉末221が供給される。所定量の粉末221が、粉末供給容器211へ供給されると、バルブ制御部204は、ゲートバルブ231および粉末供給バルブ311を閉鎖して、ロードロック室203からプロセスチャンバ201への粉末221の供給を停止する。
【0041】
図5Aおよび
図5Bは、本実施形態に係る3次元積層造形装置の粉末供給処理手順を説明するフローチャートである。
【0042】
まず、3次元積層造形装置200は、造形開始時には、粉末供給容器211が粉末221で満タンになっており、ゲートバルブ231は閉じられている。そして、プロセスチャンバ201の内部を、例えば、真空に排気し、排気が完了すると、3次元積層造形装置200は、3次元積層造形物214の造形をスタートする。なお、粉末供給容器211に粉末221を充填した状態でプロセスチャンバ201を真空排気すると、粉末221が、プロセスチャンバ201内に飛び散る可能性があるので、粉末供給容器211に粉末221を充填しない状態で真空排気してもよい。
【0043】
ステップS501において、3次元積層造形装置200は、粉末供給容器211に粉末221の供給が必要か否かを判定し、粉末221の供給が必要ない場合は(ステップS501のNO)、粉末221の供給が必要になるまで待機する。
【0044】
粉末221の供給が必要であると判定した場合(ステップS501のYES)、ステップS503において、3次元積層造形装置200は、粉末タンク202からロードロック室203まで、粉末221を粉末搬送路222を通じて搬送する。
【0045】
ステップS505において、バルブ制御部204は、材料供給バルブ232を開放して、粉末221がロードロック室203へ搬送されるようにする。そして、ステップS507において、3次元積層造形装置200は、所定量の粉末221がロードロック室203へ供給されたか否かを判定する。所定量の粉末221が供給されていない場合(ステップS507のNO)、3次元積層造形装置200は、所定量の粉末221が供給されるまで待機する。
【0046】
所定量の粉末221がロードロック室203へ供給された場合(ステップS507のYES)、バルブ制御部204は、材料供給バルブ232を閉じて、粉末221の供給を停止し、ロードロック室203を密閉する。
【0047】
そして、ステップS511において、雰囲気制御部205は、ロードロック室203内の雰囲気を、例えば、真空排気するように制御する。そして、ロードロック室203が所定の真空度、例えば、プロセスチャンバ201の真空度と同じ真空度に達したら、雰囲気制御部205は、ロードロック室203の雰囲気制御を停止する。なお、雰囲気制御部205による雰囲気制御が真空排気の場合、所定の真空度に達した場合でも、排気を継続したままにしてもよい。
【0048】
ステップS513において、雰囲気制御部205は、ロードロック室203内の雰囲気が所定の雰囲気に到達したか否かを判定する。所定の雰囲気に到達していない場合(ステップS513のNO)、雰囲気制御部205は、ロードロック室203内の雰囲気が所定の雰囲気に到達するまで待機する。
【0049】
ロードロック室203内の雰囲気が所定の雰囲気に到達した場合(ステップS513のYES)、ステップS515において、雰囲気制御部205は、ロードロック室203の雰囲気制御を停止する。
【0050】
ステップS517において、バルブ制御部204は、ゲートバルブ231を開いて、粉末221が、ロードロック室203からプロセスチャンバ201内の粉末供給容器211へ供給されるようにする。
【0051】
そして、ステップS519において、バルブ制御部204は、所定量の粉末221がプロセスチャンバ201の粉末供給容器211へ供給されたか否かを判定する。所定量の粉末221が、プロセスチャンバ201の粉末供給容器211へ供給されていない場合(ステップS519のNO)、バルブ制御部204は、所定量の粉末221が供給されるまで待機する。
【0052】
所定量の粉末221が、プロセスチャンバ201の粉末供給容器211へ供給された場合(ステップS519のYES)、ステップS521において、バルブ制御部204は、ゲートバルブ231を閉じて、粉末221の供給を停止する。
【0053】
なお、本実施形態の説明では、ロードロック室203が粉末供給容器211の上方に配置された例で説明をしたが、両者の配置はこれには限られない。例えば、ロードロック室203と粉末供給容器211とが、横位置に配置されてもよい。この場合、粉末221は自重によりロードロック室203から粉末供給容器211へは落下できないので、粉末221を粉末供給容器211へ供給する機構をロードロック室203に設けてもよい。
【0054】
本実施形態によれば、プロセスチャンバ201内部の雰囲気と、ロードロック室203内部の雰囲気とが同じ雰囲気となるように、雰囲気制御を行うので、3次元積層造形物の造形処理を中断することなく、造形室に粉末を供給することができる。また、3次元積層造形物の造形処理が中断させずに、連続的に粉末を供給可能なので、3次元積層造形物の造形処理を高速化することができる。
【0055】
[第3実施形態]
次に本発明の第3実施形態に係る3次元積層造形装置600について、
図6および
図7を用いて説明する。
図6は、本実施形態に係る3次元積層造形装置600の構成を説明するための図である。本実施形態に係る3次元積層造形装置600は、上記第2実施形態と比べると、粉末供給容器を有しない点で異なる。その他の構成および動作は、第2実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0056】
3次元積層造形装置600は、プロセスチャンバ201と、粉末タンク202と、ロードロック室203とを備える。プロセスチャンバ201は、3次元積層造形物214の造形室であり、リコータ212と、ワーク213とを備える。
【0057】
粉末タンク202から粉末221が搬送され、粉末221を貯蔵したロードロック室203は、雰囲気制御部205による雰囲気制御、例えば、真空排気により、プロセスチャンバ201と同じ真空度となるまで排気される。そして、ロードロック室203とプロセスチャンバ201との真空度が同じ真空度になると、バルブ制御部204によりゲートバルブ231が開放され、粉末221が自重により落下し、リコータ212に粉末221が直接補充される。粉末221を補充されたリコータ212は、ワーク213上に粉末221を散布する。
【0058】
図7は、本実施形態に係る3次元積層造形装置の備えるロードロック室からプロセスチャンバへの粉末供給の概要を説明する図である。粉末221は、ゲートバルブ231および粉末供給バルブ311が開くと、自重により落下する。そして、落下した粉末221は、ロードロック室203からプロセスチャンバ201内のリコータ212に直接供給される。
【0059】
本実施形態によれば、粉末供給容器211を省いて、リコータ212に対して粉末221を直接供給できるようにしたので、3次元積層造形物の造形処理をさらに高速化することができる。
【0060】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
【0061】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に直接あるいは遠隔から供給される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、本発明の範疇に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の範疇に含まれる。
【要約】
3次元積層造形物の造形処理を中断することなく、造形室に粉末を供給する。3次元積層造形装置であって、3次元積層造形物が造形される造形室と、前記造形室に搬送される粉末を貯蔵する粉末貯蔵手段と、前記造形室と前記粉末貯蔵手段との間に設けられ、第1バルブを介して前記造形室と接続され、第2バルブを介して前記粉末貯蔵手段と接続され、前記粉末を一時的に貯蔵する中間粉末貯蔵手段と、前記第1バルブおよび前記第2バルブの開閉を制御するバルブ制御手段と、前記中間粉末貯蔵手段の内部の雰囲気と、前記造形室の内部の雰囲気とを制御する雰囲気制御手段と、を備えた。