特許第6019269号(P6019269)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6019269コバルト酸リチウム配向焼結板の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019269
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】コバルト酸リチウム配向焼結板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/622 20060101AFI20161020BHJP
   C04B 35/00 20060101ALI20161020BHJP
   H01M 4/1391 20100101ALI20161020BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20161020BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   C04B35/00 E
   C04B35/00 J
   H01M4/1391
   H01M4/525
   H01M4/62 Z
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-515563(P2016-515563)
(86)(22)【出願日】2015年9月15日
(86)【国際出願番号】JP2015076163
(87)【国際公開番号】WO2016052176
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2016年3月18日
(31)【優先権主張番号】特願2014-201643(P2014-201643)
(32)【優先日】2014年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-54908(P2015-54908)
(32)【優先日】2015年3月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(74)【代理人】
【識別番号】100202511
【弁理士】
【氏名又は名称】武石 卓
(72)【発明者】
【氏名】由良 幸信
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸行
【審査官】 佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−217582(JP,A)
【文献】 特開2004−196604(JP,A)
【文献】 特表2014−523383(JP,A)
【文献】 特開2008−258133(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/074304(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/622
C04B 35/01
H01M 4/1391
H01M 4/525
H01M 4/62
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LiCoOの(104)面及び(101)面の少なくともいずれか一方が板面と平行に配向してなるコバルト酸リチウム配向焼結板の製造方法であって、
(a)Co粒子を含んでなる、厚さ100μm以下のグリーンシートを用意する工程と、
(b)前記グリーンシートを900〜1450℃で焼成して、(h00)面をシート面と平行に配向させたCo配向焼結板を得る工程と、
(c)前記Co配向焼結板をリチウム源の共存下で焼成してリチウムを導入し、それによりLiCoOからなるコバルト酸リチウム配向焼結板を形成する工程と、
を含んでなり、前記(c)工程に先立ち前記Co配向焼結板にMg含有化合物を付着させる工程(d1)、又は前記(c)工程後に前記コバルト酸リチウム配向焼結板にMg含有化合物を付着させ、該Mg含有化合物が付着された前記コバルト酸リチウム配向焼結板を焼成する工程(d2)をさらに含んでなる、方法。
【請求項2】
前記Mg含有化合物が焼成によりMgOを与えうる化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Mg含有化合物が、酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、及びマグネシウムジエトキシドからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記Mg含有化合物が、Mg含有化合物を含む溶液又はスラリー、Mg含有化合物を含むシート、及びMg含有化合物の粉末からなる群から選択される少なくとも1種の形態で供される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記Mg含有化合物が、Mg含有化合物を含む水溶液の形態で供される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記Mg含有化合物が酢酸マグネシウムである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(d2)における焼成が、400〜950℃の焼成温度で行われる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記原料粉末がビスマス酸化物をさらに含んでなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記(c)工程における焼成が600〜980℃で行われる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記工程(b)における焼成が900〜1350℃で行われる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コバルト酸リチウム配向焼結板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池(リチウムイオン二次電池と称されることもある)における正極活物質として、層状岩塩構造を有するリチウム複合酸化物(リチウム遷移金属酸化物)を用いたものが広く知られている。この種の正極活物質においては、その内部でのリチウムイオン(Li)の拡散が(003)面の面内方向(すなわち(003)面と平行な平面内の任意の方向)で行われる一方、(003)面以外の結晶面(例えば(101)面や(104)面)でリチウムイオンの出入りが生じることが知られている。
【0003】
そこで、この種の正極活物質において、リチウムイオンの出入りが良好に行われる結晶面((003)面以外の面、例えば(101)面や(104)面))をより多く電解質と接触する表面に露出させることで、リチウム二次電池の電池特性を向上させる試みがなされている。例えば、特許文献1(国際公開第2010/074304号)には、Coを含むグリーンシートを焼成して(h00)面がシート面と平行に配向したCo粒子を含むシートを形成し、その後Liを導入することにより、(104)面がシート面と平行に配向したLiCoOセラミックスシート(正極活物質膜)を製造することが開示されている。また、Coを含むグリーンシートに粒成長促進材としてBiをさらに添加することもこの文献には記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/074304号
【発明の概要】
【0005】
ところで、(104)面が板面と平行に配向してなるLiCoO配向焼結板の製造を実際に試みると、板厚方向に多結晶構造になりやすい。例えば、板厚方向に2つ以上の結晶粒子が、(104)面の方向を揃えながらも、(104)面に垂直な方向を軸として回転して結合した構造となりやすい。この場合、板厚方向に粒界が介在する(すなわち板厚方向に見た場合に粒界が横切る)ことになるため、板厚方向のリチウムイオン伝導性が低下しうる。
【0006】
本発明者らは、今般、LiCoO配向焼結板又はその前駆体であるCo配向焼結板にMg含有化合物を付着させて焼成等を施すことで、板厚方向に介在する粒界が有意に低減されたLiCoO配向焼結板を提供できるとの知見を得た。また、そのようなLiCoO配向焼結板を正極活物質としてリチウム二次電池に用いることで、電池性能(特にレート特性)を向上できるとの知見も得た。
【0007】
したがって、本発明の目的は、板厚方向に介在する粒界が有意に低減され、かつ、正極活物質としてリチウム二次電池に用いた場合に電池性能(特にレート特性)の向上を実現可能なコバルト酸リチウム配向焼結板を製造することにある。
【0008】
本発明の一態様によれば、LiCoOの(104)面及び(101)面の少なくともいずれか一方が板面と平行に配向してなるコバルト酸リチウム配向焼結板の製造方法であって、
(a)Co粒子を含んでなる、厚さ100μm以下のグリーンシートを用意する工程と、
(b)前記グリーンシートを900〜150℃で焼成して、(h00)面をシート面と平行に配向させたCo配向焼結板を得る工程と、
(c)前記Co配向焼結板をリチウム源の共存下で焼成してリチウムを導入し、それによりLiCoOからなるコバルト酸リチウム配向焼結板を形成する工程と、
を含んでなり、前記(c)工程に先立ち前記Co配向焼結板にMg含有化合物を付着させる工程(d1)、又は前記(c)工程後に前記コバルト酸リチウム配向焼結板にMg含有化合物を付着させ、該Mg含有化合物が付着された前記コバルト酸リチウム配向焼結板を焼成する工程(d2)をさらに含んでなる、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】例1(比較)で作製したLiCoO配向焼結板の表面のSEM画像である。
図1B】例1(比較)で作製したLiCoO配向焼結板の破断面のSEM画像である。
図2A】例2においてMg被覆処理されたLiCoO配向焼結板の表面のSEM画像である。
図2B】例2においてMg被覆処理されたLiCoO配向焼結板の破断面のSEM画像である。
図3A】例3においてMg被覆処理されたLiCoO配向焼結板の表面のSEM画像である。
図3B】例3においてMg被覆処理されたLiCoO配向焼結板の破断面のSEM画像である。
図4A】例4においてMg被覆処理されたLiCoO配向焼結板の表面のSEM画像である。
図4B】例4においてMg被覆処理されたLiCoO配向焼結板の破断面のSEM画像である。
図5A】例5においてMg被覆処理されたLiCoO配向焼結板の表面のSEM画像である。
図5B】例5においてMg被覆処理されたLiCoO配向焼結板の破断面のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
コバルト酸リチウム配向焼結板の製造方法
本発明は、コバルト酸リチウム配向焼結板の製造方法に関する。本発明により製造される配向焼結板はLiCoOからなるものである。LiCoOは層状岩塩構造を有するものであるが、本発明のコバルト酸リチウム配向焼結板は、LiCoOの(104)面が板面と平行に配向してなるものである。もっとも、コバルト酸リチウム配向焼結板は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、Mg,Al,Si,Ca,Ti,V,Cr,Fe,Cu,Zn,Ga,Ge,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Ag,Sn,Sb,Te,Ba,Bi,Ni,Mn,W等の元素が1種以上更にドーピング又はそれに準ずる形態(例えば結晶粒子の表層への部分的な固溶、偏析、コーティング、又は付着)で微量含んでいてもよい。
【0011】
本発明によるコバルト酸リチウム配向焼結板の製造方法は、(a)Co粒子を含んでなるグリーンシートを用意し、(b)このグリーンシートを焼成してCo配向焼結板とし、(c)このCo配向焼結板にリチウムを導入してコバルト酸リチウム配向焼結板を形成することを含む。そして、上記(c)工程に先立ちCo配向焼結板にMg含有化合物を付着させる工程(d1)が行われるか、又は上記(c)工程後にコバルト酸リチウム配向焼結板にMg含有化合物を付着させ、該Mg含有化合物が付着された前記コバルト酸リチウム配向焼結板を焼成する工程(d2)が行われる。このように、LiCoO配向焼結板又はその前駆体であるCo配向焼結板(以下、両者をまとめて「配向正極板」ということがある)にMg含有化合物を付着させて焼成等を施すことで、板厚方向に介在する粒界が有意に低減されたLiCoO配向焼結板を提供することができる。すなわち、配向焼結板にMg含有化合物を付着させて焼成することで、結晶成長が、整合性の高いドメイン間の粒界が移動するような形で起こり、板厚方向に単結晶化するか又はそれに近い結晶構造が実現される。こうして板厚方向に介在する粒界を有意に低減する(望ましくはそのような粒界を無くす)ことができる。前述のとおり、板厚方向に粒界が介在すると板厚方向のリチウムイオン伝導性が低下しうるが、そのような粒界が有意に低減されることで板厚方向のリチウムイオン伝導性が向上する。したがって、そのようなLiCoO配向焼結板を正極活物質としてリチウム二次電池に用いることで、電池性能(特にレート特性)を向上することができる。
【0012】
以下、本発明の製造方法の各工程の詳細について説明する。
【0013】
(a)グリーンシートの用意
この工程(a)では、Co粒子を含んでなる、厚さ100μm以下のグリーンシートを用意する。グリーンシートは粒成長促進材としてビスマス酸化物(典型的にはBi粒子)をさらに含んでなるのが好ましい。グリーンシートは、Co粒子及び所望によりビスマス酸化物(典型的にはBi粒子)を含む原料をシート状に成形することにより作製すればよい。Bi粒子の添加量は特に限定されないが、Co粒子及びBi粒子の全体量に対して、0.1〜30重量%とするのが好ましく、より好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは3〜10重量%である。また、Co粒子の体積基準D50粒径は、0.1〜2.0μmであるのが好ましく、より好ましくは0.3〜1.2μmである。Bi粒子の体積基準D50粒径は、0.1〜1.0μmであるのが好ましく、より好ましくは0.2〜0.5μmである。また、グリーンシートの厚さは100μm以下であり、好ましくは1〜60μm、より好ましくは5〜40μmである。なお、グリーンシートは、Co粒子の全部又は一部に代えて、CoO粒子及び/又はCo(OH)粒子を含んでなるものであってもよく、この場合においても、工程(b)の焼成に付することで、(h00)面をシート面と平行に配向したCoO系焼成中間体ないしCo配向焼結板とすることができ、その結果、Co粒子を含んでなるグリーンシートを用いる場合と同様にコバルト酸リチウム配向焼結板を製造することができる。
【0014】
グリーンシートを形成する方法の例としては、(i)原料粒子を含むスラリーを用いたドクターブレード法、(ii)熱したドラム上へ原料を含むスラリーを塗布し、乾燥させたものをスクレイパーで掻きとる、ドラムドライヤーを用いた手法、(iii)熱した円板面へスラリーを塗布し、これを乾燥させてスクレイパーで掻きとる、ディスクドライヤーを用いた手法、(iv)スプレードライヤーの条件を適宜設定することで中空の造粒体を、曲率をもったシート状成形体として得る手法、(v)原料粒子を含む坏土を用いた押出成形法等が挙げられる。特に好ましいシート形成方法はドクターブレード法である。ドクターブレード法を用いる場合、可撓性を有する板(例えばPETフィルム等の有機ポリマー板)にスラリーを塗布し、塗布したスラリーを乾燥固化して成形体とし、この成形体と板とを剥離することにより、グリーンシートを作製すればよい。成形前にスラリーや坏土を調製するときには、無機粒子を分散媒に分散させ、バインダーや可塑剤等を適宜加えてもよい。また、スラリーは、粘度が500〜4000cPとなるように調製するのが好ましく、減圧下で脱泡するのが好ましい。グリーンシートの形状としては、焼成収縮による皺が入りにくくする観点から、円形としてもよい。
【0015】
(b)Co配向焼結板の作製
この工程(b)では、グリーンシートを900〜1450℃で焼成して、(h00)面をシート面と平行に配向させたCo配向焼結板を得る。すなわち、焼成前のCo粒子は等方的な形態を有し、それ故グリーンシートは配向性を当初は有しないが、焼成によりCo粒子がCoOに相変態して粒成長する段階で配向が生じる(以下、CoOの配向粒成長という)。その際、Co粒子が、(h00)面(hは任意の整数、例えばh=2である)をシート面と平行に配向したCoOに変化した焼成中間体を一時的に経ることとなる。すなわち、Coの酸化物は、900℃以上(例えば920℃以上)では、室温におけるCoで表されるスピネル構造からCoOの岩塩構造に相変態する。この焼成によりCoが還元されてCoOに相変態するとともに、シートが緻密化される。そして、焼成後に焼成中間体の温度が下がる過程でCoOがCoに酸化される。その際、CoOの配向方位がCoに引き継がれることで、(h00)面がシート面と平行となるように配向された多数のCo粒子からなる配向焼結板が形成される。特に、ビスマス酸化物(典型的にはBi)の共存下ではCoOの配向粒成長が促進される。もっとも、グリーンシートがビスマス酸化物を含む場合には、この焼成時にビスマスは揮発してシートから除去される。グリーンシートの焼成温度は900〜1450℃(例えば900〜1350℃)であり、好ましくは1000〜1400℃(例えば1000〜1300℃)、より好ましくは1100〜1400℃(例えば1100〜1300℃)である。グリーンシートは上記焼成温度で1〜20時間焼成されるのが好ましく、より好ましくは2〜10時間である。例えば、焼成後の降温速度は、好ましくは10〜200℃/hであり、より好ましくは20〜100℃/hである。
【0016】
CoOの配向粒成長には、100μm以下というグリーンシートの厚さが寄与している。すなわち、厚さ100μm以下のグリーンシートにおいては、シート面内方向(厚さ方向と直交する方向)に比べて、厚さ方向に存在する材料の量が極めて少ない。このため、厚さ方向に複数個の粒子がある初期段階には、ランダムな方向に粒成長する。一方、粒成長が進行して厚さ方向の材料が消費されると、粒成長方向はシート面内の二次元方向(以下、面方向という)に制限されることになる。これにより、面方向への粒成長が確実に促進される。特に、グリーンシートを可能な限り薄く形成したり(例えば数μm以下)、あるいはグリーンシートが比較的厚め(最大で100μm程度、例えば20μm程度)の場合であっても粒成長を可能な限り大きく促進したりすることで、面方向への粒成長を確実に促進させることができる。いずれにしても、焼成の際、表面エネルギーの最も低い結晶面をグリーンシートの面内に持つ粒子のみが選択的に面方向へ扁平状(板状)に粒成長することになる。その結果、グリーンシートの焼成により、アスペクト比が大きく、(h00)面が粒子の板面と平行となるように配向したCoO板状結晶粒子を、その(h00)面をシート面と平行し、粒界部にて二次元的に結合してなる焼成中間体が得られる。その後、焼成中間体の温度が下がる過程でCoOがCoに配向方位を引き継ぎながら酸化され、(h00)面がシート面と平行となるように配向された多数のCo粒子からなる配向焼結板が形成されるのは、前述したとおりである。ただし、CoO粒子は基本的に板厚方向に単結晶であるが、Coに酸化する際、多結晶構造になりやすい。例えば、板厚方向に2つ以上の結晶粒子が、(h00)面の方向を揃えながらも、(h00)面に垂直な方向を軸として回転して結合した構造となりやすい。また、CoOの粒成長にはCoの初期原料粒径(D50)が大きく寄与する。Coの初期原料の体積基準D50粒径は0.05μm〜5.0μmが好ましく、より好ましくは0.1μm〜2.0μm、より好ましくは0.2μm〜1.0μm、さらに好ましくは0.2μm〜0.5μmである。粒径が小さいほど粒成長が進行しやすい、一方で、粒径が細かすぎると初期のテープ密度が下がり、粒成長しにくくなる。Coの粒径は粉砕により整えてもよい。そのような粉砕は、汚染物が混入しにくい手法で行うのが好ましく、例えばジェットミル粉砕等が挙げられる。
【0017】
ところで、多数のCo粒子からなる配向焼結板は、独立した板状のシートである。「独立した」シートとは、焼成後に他の支持体から独立して単体で取り扱い可能なシートのことをいう。すなわち、「独立した」シートには、焼成により他の支持体(基板等)に固着されて当該支持体と一体化された(分離不能あるいは分離困難となった)ものは含まれない。こうして(h00)面が粒子の板面と平行となるように配向した多数の粒子が結合した自立した配向焼結板が得られる。この自立板は、上述のような多数の粒子が隙間なく結合した、緻密なセラミックスシートとなり得る。
【0018】
(c)リチウムの導入
この工程(c)では、Co配向焼結板をリチウム源の共存下で焼成してリチウムを導入し、それによりLiCoOからなるコバルト酸リチウム配向焼結板を形成する。リチウム導入は、Co配向焼結板をリチウム化合物と反応させることにより行われるのが好ましい。リチウム導入のためのリチウム化合物の例としては、(i)水酸化リチウム、(ii)炭酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、塩化リチウム、シュウ酸リチウム、クエン酸リチウム等の各種リチウム塩、(iii)リチウムメトキシド、リチウムエトキシド等の各種リチウムアルコキシド等が挙げられ、特に好ましくは水酸化リチウムもしくは炭酸リチウムもしくはその混合物である。リチウム導入する際の条件、例えば、混合比、加熱温度、加熱時間、雰囲気等は、リチウム源として用いる材料の融点や分解温度、反応性等を考慮して適宜設定すればよく、特に限定されない。例えば、Co配向焼結板に、LiOH粉末の分散したスラリーを所定量塗布して乾燥させた後、加熱することにより、Co粒子にリチウムを導入することができる。他の方法としては、(h00)配向したCo配向焼結板上に所定量の炭酸リチウムを載置し、加熱することにより、Co粒子にリチウムを導入することができる。炭酸リチウムの載置は、炭酸リチウムを含んでなるリチウム含有シートの形態で成形体シート上に載置することにより行われてもよいが、Co配向焼結板を上下からリチウム含有シートで挟み込むことにより行ってもよい。このときの加熱温度は600〜980℃(例えば600〜880℃)が好ましく、この範囲内の温度で2〜20時間加熱を行うのが好ましい。加熱時の雰囲気は、酸素雰囲気や大気雰囲気といった酸化雰囲気が好ましい。特に、900℃以上で熱処理を行なう場合は、大気よりも酸素濃度が高い方が好ましい。また、Co配向焼結板に付着させるリチウム化合物の量はLi/Co比で1.0以上とするのが好ましく、より好ましくは1.0〜1.5である。Liが多すぎる場合であっても余剰分のLiは加熱に伴い揮発して消失するため問題は無い。コバルト酸リチウム配向焼結板の平坦性を上げる(例えば、板面の凹凸の度合いを小さく抑える)ために、Co配向焼成板を加重をかけた状態で加熱してもよい。合成に必要な酸素をCo配向焼成板の板面に十分に供給するため、多孔質のセッターや、穴の開いたセッター(例えばハニカム状のセッター)で加重してもよい。コバルト酸リチウム配向焼結板が比較的厚い場合(例えば厚さ30μm以上)、付着させるLi原料が嵩高くなり、加熱中に溶融したLi原料の一部が、合成に使われずに流れ出してしまい、合成不良になりやすい。また、リチウムの導入を複数回行なってもよい。リチウム導入工程を複数回行なうことで、上記合成不良を回避でき、且つ/又は、一次粒子サイズが大きくなり結晶性が良くなる等の効果がある。
【0019】
こうして得られるコバルト酸リチウム配向焼結板は、LiCoOの(104)面が板面と平行に配向してなるものである。したがって、リチウムイオンの出入りが良好に行われる(104)面が配向焼結板の板面と平行となるように配向する。このため、この配向焼結板を正極活物質として用いて電池を構成した場合に、電解質に対する当該面の露出(接触)がより多くなるとともに、当該粒子や板の表面における(003)面(リチウムイオンの出入りに適さない面)の露出割合が極めて低くなる。したがって、例えば、コバルト酸リチウム配向焼結板を固体型リチウム二次電池の正極材料として用いた場合に、高容量と高レート特性とを同時に達成することができる。コバルト酸リチウム配向焼結板の厚さは、好ましくは5〜75μmであり、より好ましくは10〜60μmであり、特に好ましくは20〜50μmである。また、コバルト酸リチウム配向焼結板のサイズは、好ましくは5mm×5mm平方以上、より好ましくは10mm×10mm〜100mm×100mm平方であり、さらに好ましくは10mm×10mm〜50mm×50mm平方であり、別の表現をすれば、好ましくは25mm以上、より好ましくは100〜10000mmであり、さらに好ましくは100〜2500mmである。
【0020】
また、配向板の合成には、先に得られたコバルト酸リチウム配向焼結板をテンプレートとして用い、このテンプレートを基点にコバルト酸リチウムを成長させる手法を用いてもよい。このテンプレートを用いた手法によれば粒界数の少ないコバルト酸リチウム配向焼結板を製造することができる。例えば、上記手法にて合成したサイズが30μm×30μm×5μmのコバルト酸リチウム配向焼結体板と粒径0.5μmの無配向コバルト酸リチウム粒子を重量比10:90程度に混合してテープ成形し焼成することでコバルト酸リチウム配向焼結板を得ることができる。また、コバルト酸リチウム配向焼結板の代わりにCo配向焼結板をテンプレートとして用いても上記同様にしてコバルト酸リチウム配向焼結板を得ることができる。
【0021】
(d)Mg被覆処理
この工程(d)(すなわち工程(d1)及び(d2))は、配向焼結板にMg含有化合物を付着させ、必要に応じて焼成する工程であり、(c)工程に先立ち行われる工程(d1)としてもよいし、(c)工程の後に行われる工程(d2)としてもよい。具体的には、(c)工程に先立ちMg含有化合物の付着を行った場合には、その後の焼成は(c)工程の焼成により行うことができる。一方、(c)工程後にMg含有化合物の付着を行った場合には、その後に焼成を別途行うことになる。すなわち、工程(d)は、(c)工程に先立ちCo配向焼結板にMg含有化合物を付着させる工程(d1)、又は(c)工程後にコバルト酸リチウム配向焼結板にMg含有化合物を付着させ、該Mg含有化合物が付着された前記コバルト酸リチウム配向焼結板を焼成する工程(d2)のいずれにより行えばよい。
【0022】
Mg含有化合物は、焼成によりMgOを与えうる化合物であるのが好ましい。Mg含有化合物の好ましい例としては、酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、及びマグネシウムジエトキシド、及びこれらの任意の組合せが挙げられ、特に好ましくは酢酸マグネシウムである。
【0023】
Mg含有化合物は、Mg含有化合物を含む溶液又はスラリー、Mg含有化合物を含むシート、及びMg含有化合物の粉末からなる群から選択される少なくとも1種の形態で供されるのが好ましく、より好ましくはMg含有化合物を含む水溶液(例えば酢酸マグネシウム水溶液)の形態である。したがって、Mg含有化合物の配向焼結板への付着は、Mg含有化合物の供給形態に応じた公知の手法で適宜行えばよい。例えば、溶液又はスラリーの形態の場合には、Mg含有化合物を含む溶液又はスラリーへの配向焼結体の浸漬及びその後の乾燥、あるいはそのような溶液又はスラリーの配向焼結体への塗布及びその後の乾燥により行えばよい。この場合、Mg含有化合物を含む水溶液(例えば酢酸マグネシウム水溶液)の濃度は特に限定されないが、好ましくは0.01〜2mol/L、より好ましくは0.05〜1mol/Lである。シートの形態の場合には、Mg含有化合物を含むシートを配向焼結体に載置すればよい。粉末形態の場合には、Mg含有化合物の粉末をそのまま又はペースト化して配向焼結体に載置すればよい。いずれの手法にしても、配向焼結体に対するMg含有化合物の付着量は特に限定されないが、例えば、配向焼結体を構成するLiCoOの基本組成を損なうことなく所望の効果が得られる程度の微小量とするのが好ましく、例えばLiCoOに対して0.01〜5mol%とするのが好ましく、より好ましくは0.05〜2mol%である。また、Mg含有化合物を加える際に同時にその他の化合物を同時に添加してもよく、例えばLiを同時に加えると効果がより促進される。Liの存在形態は特に限定されないが、例えば、水酸化リチウムや炭酸リチウムを水溶液、粉末、又はテープ形状のいずれかの形態で供することが挙げられる。
【0024】
工程(d2)における焼成は、400〜950℃の焼成温度で行われるのが好ましく、好ましくは500〜950℃、より好ましくは500〜900℃、さらに好ましくは600〜900℃である。この焼成は上記焼成温度で1〜20時間行われるのが好ましく、より好ましくは2〜10時間である。この焼成雰囲気は特に限定されないが、大気雰囲気等の酸化雰囲気で行えばよい。
【0025】
上述したように、コバルト酸リチウム配向焼結板は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、Mg,Al,Si,Ca,Ti,V,Cr,Fe,Cu,Zn,Ga,Ge,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Ag,Sn,Sb,Te,Ba,Bi、Ni、Mn、W等の元素が1種以上含まれていてもよく、そのような元素の添加は上述した工程(a)〜(d)のいずれか(典型的には工程(a)又は工程(c))において行えばよい。添加元素を板の表面のみに偏析させたり、付着のみさせるような場合は、例えば工程(c)又は工程(d2)の後に、さらに添加元素を被覆し、熱処理するようにして行えばよい。
【0026】
また、配向板の合成には、先に得られたMgOを添加したコバルト酸リチウム配向焼結板をテンプレートとして用い、このテンプレートを基点にコバルト酸リチウムを成長させる手法を用いてもよい。このテンプレートを用いた手法によれば粒界数の少ないコバルト酸リチウム配向焼結板を製造することができる。例えば、上記手法にて合成したサイズが30μm×30μm×5μmのMgOを添加したコバルト酸リチウム配向焼結体板と粒径0.5μmの無配向コバルト酸リチウム粒子を重量比10:90程度に混合してテープ成形し焼成することでコバルト酸リチウム配向焼結板を得ることができる。
【実施例】
【0027】
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
【0028】
例1(比較)
(1)LiCoO配向焼結板の作製
比較例として、以下の手順により、Mg含有化合物の付着を行うことなく、LiCoO配向焼結板を作製した。
【0029】
(1a)グリーンシートの作製
Co原料粉末(体積基準D50粒径0.3μm、正同化学工業株式会社製)に10wt%の割合でBi(体積基準D50粒径0.3μm、太陽鉱工株式会社製)を添加して混合粉末を得た。この混合粉末100重量部と、分散媒(トルエン:イソプロパノール=1:1)100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)10重量部と、可塑剤(DOP:Di(2−ethylhexyl)phthalate、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(製品名レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部とを混合した。この混合物を、減圧下で撹拌することで脱泡するとともに、4000cPの粘度に調製した。なお、粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。上記のようにして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルムの上に、乾燥後の厚さが24μmとなるように、シート状に成形してグリーンシートを得た。
【0030】
(1b)配向焼結板の作製
PETフィルムから剥がしたグリーンシートを、カッターで50mm角に切り出し、突起の大きさが300μmのエンボス加工を施したジルコニア製セッター(寸法90mm角、高さ1mm)の中央に載置し、1300℃で5時間焼成後、降温速度50℃/hにて降温し、セッターに溶着していない部分をCo配向焼結板として取り出した。
【0031】
(1c)リチウムの導入
LiOH・HO粉末(和光純薬工業株式会社製)をジェットミルで1μm以下に粉砕し、エタノールに分散したスラリーを作製した。このスラリーをCo配向焼結板にLi/Co=1.3になるように塗布し、乾燥した。その後、大気中にて840℃で10時間加熱処理してLiCoO配向焼結板を得た。
【0032】
(2)各種評価
こうして作製されたLiCoO配向焼結板について以下の評価を行った。
【0033】
(2a)XRD測定による配向性の確認
LiCoO配向焼結板において(104)面が板面に平行に配向していることを確認すべく、XRD(X線回折)測定を行った。具体的には、XRD装置(株式会社リガク製、ガイガーフレックスRAD−IB)を用い、焼結板の表面に対してX線を照射したときのXRDプロファイルを測定した。このXRDプロファイルから(104)面による回折強度(ピーク高さ)に対する(003)面による回折強度(ピーク高さ)の比率I[003]/I[104]を求めたところ、0.3であった。一方、同じ板を乳鉢で十分に粉砕して粉末状にしたうえで、粉末XRDのプロファイルを測定したところ、I[003]/I[104]は1.6であった。このことから、(104)面が板面に平行に多数存在している、すなわち配向していることを確認した。また、XRDのプロファイルをパターンフィッテングすることで(104)面のピーク半値幅を求めた。
【0034】
(2b)SEM観察
LiCoO配向焼結板の表面及び破断面を走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−6610LV、JEOL社製)を用いて10〜20kVの加速電圧で観察した。得られた表面のSEM画像を図1Aに、破断面のSEM画像を図1Bに示す。
【0035】
(2c)電池の作製及び評価
LiCoO配向焼結板を、導電性カーボンを分散させたエポキシ系の導電接着剤でステンレス集電板に固定して正極を作製した。作製した正極、Li金属板からなる負極、及びセパレータを、正極−セパレータ−負極の順に配置し、この集積体を電解液で満たすことでコインセルを作製した。電解液は、エチレンカーボネート(EC)及びジエチルカーボネート(DEC)を等体積比で混合した有機溶媒に、LiPFを1mol/Lの濃度となるように溶解することで調製した。
【0036】
上述のようにして作製した電池(コインセル)を用いて、電池容量(放電容量)及びレート容量維持率の評価を行った。(i)0.1Cレートの電流値で電池電圧が4.2Vとなるまで定電流充電し、その後(ii)電池電圧を4.2Vに維持する電流条件で、その電流値が1/20に低下するまで定電圧充電した後10分間休止し、続いて(iii)0.1Cレートの電流値で電池電圧が3.0Vになるまで定電流放電した後10分間休止した。再度、放電レートを1Cレートとしたこと以外は上記(i)〜(iii)と同じ充放電を繰り返した。この一連の操作を1サイクルとし、25℃の条件下で合計3サイクル繰り返した。3サイクル目の1C放電容量を、同じく3サイクル目の0.1C放電容量で除した値をレート容量維持率とした。結果は表1に示されるとおりであった。
【0037】
例2
例1で作製されたLiCoO配向焼結板を、0.5mol/Lの酢酸マグネシウム水溶液に浸漬させた後、乾燥させた。こうして酢酸マグネシウムが付着されたLiCoO配向焼結板を大気中にて500℃で5時間加熱処理して、Mg被覆処理されたLiCoO配向焼結板を得た。このLiCoO配向焼結板についても例1と同様の評価を行った。その結果、例1と概ね同様のXRDプロファイルが得られ、(104)面が板面に平行に多数存在している、すなわち配向していることが確認された。また、Mg被覆処理されたLiCoO配向焼結板のSEM画像は図2Aに、破断面のSEM画像は図2Bにそれぞれ示されるとおりであった。これらのSEM画像から、Mg被覆処理されたLiCoO配向焼結板においては例1のLiCoO配向焼結板と比べて粒界が格段に低減されていることが分かる。また、レート容量維持率も表1に示されるとおり、例1のLiCoO配向焼結板と比べて格段に向上していることが分かる。また、(104)ピーク半値幅も例1と比べて向上している、すなわち結晶性が向上していることが分かる。
【0038】
例3
例1で作製されたLiCoO配向焼結板を、0.5mol/Lの酢酸マグネシウム水溶液に浸漬させた後、乾燥させた。こうして酢酸マグネシウムが付着されたLiCoO配向焼結板を大気中にて700℃で5時間加熱処理して、Mg被覆処理されたLiCoO配向焼結板を得た。このLiCoO配向焼結板についても例1と同様の評価を行った。その結果、例1と概ね同様のXRDプロファイルが得られ、(104)面が板面に平行に多数存在している、すなわち配向していることが確認された。また、Mg被覆処理されたLiCoO配向焼結板のSEM画像は図3Aに、破断面のSEM画像は図3Bにそれぞれ示されるとおりであった。これらのSEM画像から、Mg被覆処理されたLiCoO配向焼結板においては例1のLiCoO配向焼結板と比べて粒界が格段に低減されていることが分かる。また、レート容量維持率も表1に示されるとおり、例1のLiCoO配向焼結板と比べて格段に向上していることが分かる。また、(104)ピーク半値幅も例1と比べて向上している、すなわち結晶性が向上していることが分かる。
【0039】
例4
例1で作製されたLiCoO配向焼結板を、0.5mol/Lの酢酸マグネシウム水溶液に浸漬させた後、乾燥させた。こうして酢酸マグネシウムが付着されたLiCoO配向焼結板を大気中にて900℃で5時間加熱処理して、Mg被覆処理されたLiCoO配向焼結板を得た。このLiCoO配向焼結板についても例1と同様の評価を行った。その結果、例1と概ね同様のXRDプロファイルが得られ、(104)面が板面に平行に多数存在している、すなわち配向していることが確認された。また、Mg被覆処理されたLiCoO配向焼結板のSEM画像は図4Aに、破断面のSEM画像は図4Bにそれぞれ示されるとおりであった。これらのSEM画像から、Mg被覆処理されたLiCoO配向焼結板においては例1のLiCoO配向焼結板と比べて粒界が格段に低減されていることが分かる。特に、レート容量維持率にあっては表1に示されるとおり、例1のLiCoO配向焼結板のみならず例2及び3のLiCoO配向焼結板と比べても格段に向上していることが分かる。また、(104)ピーク半値幅も例1のみならず例2及び3と比べても向上している、すなわち結晶性が向上していることが分かる。
【0040】
例5
(a)グリーンシートの作製
例1と同様にして作製したグリーンシート作製用スラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルムの上に、乾燥後の厚さが55μmとなるように、シート状に成形してグリーンシートを得た。
【0041】
(b)配向焼結板の作製
PETフィルムから剥がしたグリーンシートを、カッターで50mm角に切り出し、突起の大きさが300μmのエンボス加工を施したジルコニア製セッター(寸法90mm角、高さ1mm)の中央に載置し、1400℃で5時間焼成後、降温速度50℃/hにて降温し、セッターに溶着していない部分をCo配向焼結板として取り出した。
【0042】
(c)リチウムの導入
LiOH・HO粉末(和光純薬工業株式会社製)をジェットミルで1μm以下に粉砕し、エタノールに分散したスラリーを作製した。このスラリーをCo配向焼結板にLi/Co=1.3になるように塗布し、乾燥した。その後、酸素雰囲気中にて900℃で10時間加熱処理し、この処理を更に2回繰り返すことで、LiCoO配向焼結板を得た。
【0043】
(d)Mg被覆処理
得られたLiCoO配向焼結板に例4と同じ処理を施して、Mg被覆処理されたLiCoO配向焼結板を得た。このLiCoO配向焼結板について例1と同様の評価を行った。その結果、例1と概ね同様のXRDプロファイルが得られ、(104)面が板面に平行に多数存在している、すなわち配向していることが確認された。また、Mg被覆処理されたLiCoO配向焼結板のSEM画像は図5Aに、破断面のSEM画像は図5Bにそれぞれ示されるとおりであった。これらのSEM画像から、Mg被覆処理されたLiCoO配向焼結板においては例1のLiCoO配向焼結板と比べて粒界が格段に低減されていることが分かる。特に、レート容量維持率にあっては表1に示されるとおり、例1のLiCoO配向焼結板のみならず例2及び3のLiCoO配向焼結板と比べても格段に向上していることが分かる。また、(104)ピーク半値幅も例1のみならず例2及び3と比べても向上している、すなわち結晶性が向上していることが分かる。
【0044】
【表1】
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B