(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、浴槽など排水が大量に発生する浴室において、生じた排水を処理するため、浴槽や浴室の防水パンの底面等に排水口を設け、この排水口に排水器を接続することで、排水を、排水口から下水側に排出する方法が知られている。一例として、
図4に特許文献1に記載の浴室の排水配管を示す。
【0003】
図4に図示した従来例の浴室の排水配管は、以下に記載した槽体としての浴槽、浴槽パン、洗い場パン、浴槽パン排水器、洗い場パントラップ、浴槽排水栓、フトコロ管、より構成されてなる。尚、特許文献1においては、浴槽及び浴槽排水栓は省略されている。
浴槽は、上方に開口した直方体形状の槽体であって、底面に浴槽内部に生じた排水を排出する浴槽排水口を備えてなる。
浴槽パンは、上記浴槽を載置する防水パンであって、底面に浴槽パン上に生じた排水を排出する浴槽パン排水口を備えてなる。
洗い場パンは、上記浴槽パンに隣接して設けられる、浴室の使用者が身体を洗う等する際に利用する防水パンであって、底面に洗い場パン上に生じた排水を排出する洗い場パン排水口を備えてなる。
浴槽パン排水器は、浴槽パンの下方に備えられる排水器であって、浴槽排水口及び浴槽パン排水口からの排水が流入すると共に、内部の排水を、洗い場パントラップに流入させる。
洗い場パントラップは、洗い場パンの下方に取り付けられる排水トラップである。
排水トラップとは、下水など下流側から、臭気や害虫類が屋内など上流側に逆流することを防ぐ機能を備えた排水器(排水装置)であって、この下流側から臭気や害虫類が上流側に逆流することを防ぐ機能を「トラップ機能」と呼ぶ。
本従来例の洗い場パントラップは、洗い場パン排水口からの排水が流入すると共に、配管を介して浴槽パン排水器からの排水が流入するように構成されてなる。特に、本従来例においては、浴槽パン排水器と洗い場パントラップとを接続する排水配管(後述する「フトコロ管」)は2本設けられ、浴槽排水器と洗い場パントラップとの間の排水性能を向上するように構成されてなる。
また、上記洗い場パントラップには、内部の排水を下水側に排出する排出口を備えてなる。
浴槽排水栓は、浴槽排水口と浴槽パン排水器とを接続する配管である。
フトコロ管は、浴槽パン排水器と、洗い場パントラップとを接続する排水配管である。
【0004】
上記のように構成された本発明の従来例は、以下のようにして浴室に施工される。
まず、浴槽パン排水器と洗い場パントラップとを、2本のフトコロ管を介して並列に接続する。
次に、洗い場パントラップの排出口に下水側の排水配管を接続した上で、浴槽パン排水口に連通するようにして浴槽パン排水器を浴槽パンに、また洗い場パン排水口に連通するようにして洗い場パントラップを洗い場パンに、それぞれ接続する。
最後に、浴槽を浴槽パン上に載置しつつ、浴槽排水口と浴槽パン排水器とを接続して、従来例の排水配管の接続が完了する。
【0005】
上記のように構成された本従来例の浴室の排水配管において、浴槽内に排水が生じると、排水は、浴槽排水口から、浴槽配管、防水パン排水器、フトコロ管、を介し、最終的に洗い場パントラップの排出口から排水配管を通じて下水側に排出される。
特に本従来例では、フトコロ管は2本並列に備えられてなり、大量に排出される浴槽排水を、浴槽パン排水器から洗い場パントラップまで効率よく迅速に排出することができる。
また、浴槽パン内に排水が生じると、排水は、浴槽パン排水口から、浴槽パン排水器、フトコロ管、を介し、最終的に洗い場パントラップの排出口から排水配管を通じて下水側に排出される。
また、洗い場パン上に排水が生じると、排水は、洗い場パン排水口から、洗い場パントラップを通じ、洗い場パントラップの排出口から排水配管を通じて下水側に排出される。
また、上記浴室の排水配管では、浴槽排水口、浴槽パン排水口、及び洗い場パン排水口が、いずれも洗い場パントラップの上流に設けられている。このため、洗い場パントラップのトラップ機能によって、臭気や害虫類が、下水側から、浴槽排水口又は洗い場パン排水口を介し屋内側に逆流乃至侵入することを防止することができる。
【0006】
【特許文献1】特開2004−132172号
【実施例】
【0018】
以下に、本発明の第一実施例について、図面を参照しつつ説明する。
図1乃至
図3に図示した第一実施例の浴室の排水配管は、以下に記載した浴槽UB、浴槽パンP2、洗い場パンP1、浴槽排水栓11、浴槽パン排水器6、洗い場パントラップ4、バイパス管トラップ、排水合流管20、フトコロ管、エプロン部材21、及び配管用管体等より構成されてなる。
浴槽UBは、上方に開口した直方体形状の槽体であって、底面に浴槽取付口8を備えてなる。
浴槽パンP2は、上記浴槽UBを載置する防水パンであって、底面に浴槽パン取付口9を備えてなる。また、浴槽パンP2上であって、後述する洗い場パンP1側に隣接する側に、清掃口7を設けてなる。尚、この清掃口7は普段は着脱自在な蓋部材12によって水密的に閉塞されてなる。
洗い場パンP1は、上記浴槽パンP2に隣接して設けられる、浴室の使用者が身体を洗う等する防水パンであって、底面に洗い場パン取付口10を備えてなる(本実施例では、浴槽パンP2と洗い場パンP1は一体に成型され、境界部分の立ち上がり壁22にて浴槽パンP2と洗い場パンP1とを区画してなる)。
浴槽排水栓11は、略円筒状の管体であって、上端は浴槽取付口8に取り付けられると共に、下端は浴槽パン排水器6に接続される。上記のように、浴槽取付口8に取り付けられることで、浴槽排水栓11の上端内部が、浴槽排水口1となる。このように構成されることから、この浴槽排水栓11は浴槽配管の一部、詳細には浴槽配管の内、浴槽排水口1から分岐部分までの浴槽配管を形成する。
浴槽パン排水器6は、上方が開放した略椀状の排水器であって、浴槽パンP2の下方に備えられ、上端は浴槽パン取付口9に取り付けられる。また、上方の開口には、浴槽パンP2上の排水が流入する、フロート弁13aを備えた浴槽パン排水口3と、浴槽排水栓11の下端を接続する接続筒13bと、を設けたカバー部材13を備えてなる。
また、浴槽パン排水器6の側面には、内部に流入した排水を下流側に排出するための接続部を2つ備えてなる。この2つの接続部の内、後述する第一の浴槽配管BP1に接続される接続部を第一の接続部14b、同じく第二の浴槽配管BP2に接続される接続部を第二の接続部15bとする。
施工完了時、浴槽排水口1は、カバー部材13の接続筒13b直上位置に配置される。
そして、
図2に示したように、浴槽排水栓11は、浴槽排水口1から垂下されるように配管され、その下端が浴槽パン排水器6内部に配置される。
また、浴槽パン排水器6の内部に設けられ、第一の接続部14bに連通している第一の取水口14aは、平面視においては、浴槽排水栓11からずれた位置に併置されている。また、側面視においては、第一の取水口14aは、浴槽パン排水器6の底面に掛かる位置に、水平方向を向いて設けられてなる。
また、浴槽パン排水器6の内部に設けられ、第二の接続部15bに連通している第二の取水口15aは、平面視においては、浴槽排水栓11に対して同心円状に配置されている。また、第二の取水口15a自体も浴槽排水栓11の下端よりも大径に構成されている。また、側面視においては、第二の取水口15aは、第一の取水口14aよりも高い位置に(同時に、浴槽パン排水器6の底面よりも高い位置に)配置されている。また、第二の取水口15aは、浴槽パン排水器6の内部で、上方、即ち分岐前浴槽配管の下端を向いて設けられてなる。
また、第二の取水口15aの開口面積は、第一の取水口14aの開口面積よりも大きくなるように設けられてなる。
このように構成したため、浴槽配管は、この浴槽パン排水器6にて、洗い場パントラップ4に向かって流れる第一の浴槽配管BP1と、バイパス用トラップ5に向かって流れる第二の浴槽配管BP2とに分岐する。即ち、浴槽パン排水器6は、浴槽配管上に設けられてなり、且つ第一の浴槽配管BP1と第二の浴槽配管BP2とを分岐する分岐箇所である。
洗い場パントラップ4は、一般的には逆ワントラップと呼ばれる排水トラップであって、具体的には、以下に記載したトラップ本体16、及び防臭筒17から構成されてなる。
トラップ本体16は、上方に開口した有底筒状のオワン部分16aと、該オワン部分16aの周囲を包囲するように設けた、内部にオワン部分16aを溢れた排水が流れる外周部16bと、該外周部16bの上端に設けた洗い場パン排水口2と、を備えた部材であって、洗い場パンP1の下方に備えられ、上端は洗い場パン取付口10に取り付けられる。
またトラップ本体16の外周部16b側面には、オワン部から溢れ、外周部16b内部を通過した排水を下水側に排出する排出口16cを備えてなり、またオワン部の下方には、フトコロ管を介して第一の接続部14bと接続される枝管部16dを備えてなる。
防臭筒17は、上端に外周方向に突出した鍔部17aを備えた円筒状の部材であって、施工完了時、鍔部17aの端部は洗い場パン排水口2に水密的に接続され、下端はオワン部内部に配置される(施工完了時において、防臭筒17下端は、オワン部材の上端よりも下方に配置される)。
バイパス用トラップ5は、管体の一部を略V字形状に屈曲させた管トラップと呼ばれる部材であって、上流側の端部は第二の接続部15bに、下流側の端部はフトコロ管に、それぞれ接続される。また、略V字の下流側に、後述する清掃管18を接続する清掃管接続部19を備えてなる。
フトコロ管は、軸方向には剛性を、側面方向には若干の可撓性を備えた可撓管であって、配管施工時の若干の位置ずれを吸収して調整することができる。
合流管20は、平面視略Y字形状を成す管体であって、上流側の二つの端部(Y字の上方にある二つの端部)には、洗い場パントラップ4の排出口16c、及びバイパス用トラップ5に接続されたフトコロ管がそれぞれ接続される。また、下流側の一つの端部には、下水側の床下配管が接続される。
このように構成したため、第一の浴槽配管BP1と第二の浴槽配管BP2とは、この合流管20にて合流する。即ち、合流管20は、第一の浴槽配管BP1と第二の浴槽配管BP2とを合流させる合流箇所である。
清掃管18は清掃口7から清掃口7接続管の間を接続するホース管であって、可撓性を備えてなる。
エプロン部材21は、浴槽UBの洗い場側側面に着脱自在に配置され、浴槽UBの外側面や浴槽パンP2の上面を覆い隠す板状の部材であって、上端は浴槽UBの上端に、下端は浴槽パンP2と洗い場パンP1の境界部分に、側面は浴室の内側面に、それぞれ当接するように配置される。
上記各部材は、フトコロ管、清掃管18、及び水密性を確保するためのパッキングなどを除き、硬質樹脂にて構成されてなる。
【0019】
以上のように構成した本発明の浴室の排水配管は、以下のようにして槽体である浴槽UBに施工・取り付けされる。尚詳述はしないが、部材同士の接続箇所において、水密性が必要とされる部分にはパッキングを介しての接続又は接着剤による接着等により、水密的な接続・固定が行われる。
施工の際、施工現場において、浴槽パンP2と浴室パンを接続した上で、これを底面として浴室の側壁及び天面が事前に組み立てられてなるものとする。
本発明を用いた浴室の排水配管を施工する場合、まず、浴槽パン排水器6の、第一の接続部14bにフトコロ管の一端を接続し、更に該フトコロ管の他端に洗い場パントラップ4のトラップ本体16の枝管部16dを接続する(以下、この第一の接続部14bに接続されたフトコロ管を「第一のフトコロ管14c」と呼ぶ)。
また、浴槽パン排水器6の、第二の接続部15bにバイパス用トラップ5の上流側端部を接続し、更に該バイパス用トラップ5の下流側端部にフトコロ管を接続する(以下、このバイパス用トラップ5に接続されたフトコロ管を「第二のフトコロ管15c」と呼ぶ)。
次に、合流管20の、2つある上流側端部の一方の端部に管体を介してトラップ本体16の排出口16cを、他方の端部に第二のフトコロ管15cの下流側端部を、それぞれ接続する。
この状態より、合流管20の下流側端部を下水側の配管に接続した上で、浴槽パン排水器6の上端を浴槽パンP2の浴槽パン取付口9に、洗い場パントラップ4の上端を浴槽パンP2の浴槽パン取付口9に、それぞれ水密的に取付固定する。この時、洗い場パン取付口10及び浴槽パン取付口9に対して、洗い場パン排水口2及び浴槽パン排水口3に若干の位置ずれが生じていても、洗い場排水口を備えた洗い場パントラップ4と、浴槽パン排水口3を備えた浴槽パン排水器6の間は、可撓性を備えた第一のフトコロ管14c及び第二のフトコロ管15cで接続されているため、フトコロ管の可撓性を利用して位置ずれを吸収することができ、施工を容易且つ良好に行うことができる。
また、浴槽パン排水器6の開口にカバー部材13を取り付ける。これによって、浴槽パンP2の底面に浴槽パン排水口3が、また洗い場パンP1の底面に洗い場パン排水口2が、それぞれ設けられる。
更に、清掃口7と清掃管接続部19とを、清掃管18を介して接続し、清掃口7を蓋部材12によって閉塞する。
次いで、浴槽取付口8に浴槽排水栓11を取付固定した上で、浴槽UBを浴槽パンP2上に載置する。この時、浴槽排水栓11の下端が、カバー部材13の接続筒13bに接続されるようにしつつ載置する。また、当然ながら、浴槽UBが清掃口7の直上に配置され、清掃口7への作業が行えなくなるような事がないように注意する。
最後に、トラップ本体16に防臭筒17を接続し、浴槽UB側面にエプロン部材21を配置して、本発明を採用した浴室の排水配管の施工が完了する。
【0020】
上記のように取り付けられた本発明の浴室の排水配管は、以下のようにして、浴室内に生じた排水を下水側に排出することができる。
(1).浴槽UBからの排水について 浴槽UB内に排水が生じた場合、浴槽UB内の排水は、次の第一の浴槽配管BP1、または第二の浴槽配管BP2、のいずれかの浴槽UB配管の流路を通過し、下水側に排出される。
第一の浴槽配管BP1:浴槽排水口1から、浴槽排水栓11、浴槽パン排水器6内部を通過し、浴槽パン排水器6内部で第一の取水口14aに分岐して、第一の取水口14aから、第一の接続部14b、第一のフトコロ管14c、枝管部16d、オワン部、外周部16b内部、排出口16c、を通過し、合流管20にて第二の浴槽配管BP2と合流し、下水側に排出される。
第二の浴槽配管BP2:浴槽排水口1から、浴槽排水栓11、浴槽パン排水器6内部を通過し、浴槽パン排水器6内部で第二の取水口15aに分岐して、第二の取水口15aから、第二の接続部15b、バイパス用トラップ5、第二のフトコロ管15c、を通過し、合流管20にて第一の浴槽配管BP1と合流し、下水側に排出される。
尚、浴槽パン排水口3にはフロート弁13aが組み込まれてなり、浴槽パン排水器6内部が満水状体になっても、このフロート弁13aの作用により、排水が浴槽パンP2上に逆流することは無い。
(2).浴槽パンP2からの排水について 浴室パン上に排水が生じた場合、浴槽パンP2上の排水は、次の第一の浴槽配管BP1、または第二の浴槽配管BP2、のいずれかの浴槽配管の流路を通過し、下水側に排出される。
第一の浴槽配管BP1:浴槽パン排水口3から、浴槽パン排水器6内部を通過し、浴槽パン排水器6内部で第一の取水口14aに分岐して、第一の取水口14aから、第一の接続部14b、第一のフトコロ管14c、枝管部16d、オワン部、外周部16b内部、排出口16c、を通過し、合流管20にて第二の浴槽配管BP2と合流し、下水側に排出される。
第二の浴槽配管BP2:浴槽パン排水口3から、浴槽パン排水器6内部を通過し、浴槽パン排水器6内部で第二の取水口15aに分岐して、第二の取水口15aから、第二の接続部15b、バイパス用トラップ5、第二のフトコロ管15c、を通過し、合流管20にて第一の浴槽配管BP1と合流し、下水側に排出される。
(3).洗い場パンP1からの排水について 洗い場パンP1上に排水が生じた場合、洗い場パンP1上の排水は、洗い場パン排水口2から、防臭筒17、枝管部16d、オワン部、外周部16b内部、排出口16c、を通過し、合流管20から下水側に排出される。
上記(1).又は(2).に記載した排水の際には、排水の流路を、トラップも含め複数設けたため、単純に従来例と比較すると、トラップ部分での排水の排出速度が倍増し、その分排水の排出がスムーズに行うことができるようになった、という効果を奏する。
また、分岐した浴槽配管の内、洗い場パントラップ4に連通している配管は、上記実施例では第一の浴槽配管BP1、第二の浴槽配管BP2、の二つある流路の内の、第一の浴槽配管BP1の一つだけの為、第二の浴槽配管BP2に流れ込んだ排水は洗い場パン排水口2に逆流しないので、洗い場パン排水口2への排水の逆流は生じ難くなった、という効果を奏する。
【0021】
上記(1).乃至(3).に記載した排水の際に、浴槽UB内、浴槽パンP2上、又は洗い場パンP1上に排水が生じると、第一の浴槽配管BP1を通過する排水は、洗い場パン排水口2から防臭筒17を介して、又は浴槽排水口1/浴槽パン排水口3から枝管部16dを介して、洗い場パントラップ4のオワン部内に流入し、オワン部上端にまで達する。この時、枝管部16d側では、枝管部16dと第一のフトコロ管14cを通じて、浴槽パン排水器6内を、オワン部上端の高さ位置まで排水が溜まる(浴槽パン排水器6から洗い場パントラップ4側に排水が流れるか、あるいは洗い場パントラップ4から浴槽パン排水器6側に排水が流れるかは、いずれの排水口から排水が流入するかによる)。
このようにして、オワン部の内側であって防臭筒17の内周面から外周面に至る流路、または第一の流入口からオワン部の上端までに至る流路が、排水により満水状体となる。この満水部分によって、臭気や害虫類が下水側の配管から、満水部分よりも上流側に逆流することを防止している。
また、上記(1).又は(2).に記載した排水の際に、浴槽UB内、又は浴槽パンP2上に排水が生じると、第二の浴槽配管BP2を通過する排水は、浴槽排水口1/浴槽パン排水口3から第二の流入口を介して、バイパス用トラップ5内に流入し、第二フトコロ管、合流管20をを介して下水側に排出される。この時、
図2に示したバイパス用トラップ5の、略V字形状に屈曲された部分の一部が、排水により満水状体となる。この満水部分によって、臭気や害虫類が下水側の配管から、満水部分よりも上流側に逆流することを防止している。
このように、第一の浴槽配管BP1、また第二の浴槽配管BP2において、浴槽配管の流路上に排水により満水となる部分が生じ、この満水部分によって臭気や害虫類の逆流を防止する部分が形成される。この、臭気や害虫類の逆流を防止する部分を封水と呼び、この封水を形成する部分を封水部23と呼ぶ。
本実施例では、第一の浴槽配管BP1、第二の浴槽配管BP2のそれぞれに封水部23が形成され、封水が溜まるため、下水側から屋内側に臭気や害虫類が侵入することが防止される。
【0022】
上記本実施例において、浴槽UB内に排水が生じ、排水を行う場合、浴槽UBからの排水は浴槽排水栓11を通じて浴槽パンP2内に排出される。この時、浴槽排水栓11に対して、第二の取水口15aは浴槽排水栓11の直下位置に、浴槽排水栓11を向いて構成されているため、浴槽排水栓11からずれた位置で、浴槽排水栓11に対して90度曲がった方向を向いている第一の取水口14aよりも優先的に排水が流れ込む。また取水口自体も第二の取水口15aの方が、第一の取水口14aよりも開口面積が大きくなるように設けられてなる。このため、浴槽UB排水時においては、第一の浴槽配管BP1よりも第二の浴槽配管BP2の方に大量に浴槽UBからの排水が流入するように構成されてなる、と言える(排水時に浴槽パン排水器6内部が満水状態になっても、第二の取水口15aの方が、第一の取水口14aよりも開口面積が大きくなるように設けられてなるため、第二の取水口15aに流れ込む排水の方が量が多くなる)。
ここで、洗い場パントラップ4と、バイパス用トラップ5の、浴槽UB排水の際の排水性能について以下に比較する。浴槽UB排水は大量の排水が一気に排出されるため、洗い場パントラップ4またバイパス用トラップ5の流路は、排水の開始直後及び終了直前を除き、浴槽UBからの排水中はほぼ常時満水状体なる。このような場合において、排水性能を決める要素としては、次の(a).、(b).が上げられる。
(a).排水が通過する排水流路の開口面積がどれほど大きいか。
(b).排水が通過する部分において排水の流れが乱される事無くスムーズに流れるか。
(a).の、排水が通過する排水流路の開口面積の大小について、洗い場パントラップ4とバイパス用トラップ5を比較すると、洗い場パントラップ4においては、枝管部16d、防臭筒17、排出口16cなど、全ての排水が必ず通過しなければならない流路部分(枝管部16dと防臭筒17については、いずれか一方を必ず通過しなければならない)の開口面積が、バイパス用トラップ5の流路の開口面積と殆ど同じ程度しか無いように形成されてなる。この流路の面積の小さい部分がボトルネックとなるため、洗い場パントラップ4の排水流路の他の部分の面積に、バイパス用トラップ5の流路の面積より圧倒的に大きな部分があったとしても、実質上バイパス用トラップ5と同じ程度の排水流路の開口面積しか備えていないこととなる。このため、排水流路の開口面積については、洗い場パントラップ4と、バイパス用トラップ5のいずれか一方の排水トラップに優位が生じることは無いと言える。
(b).の排水の流れが乱される事無くスムーズに流れるかについて、洗い場パントラップ4とバイパス用トラップ5を比較すると、洗い場パントラップ4においては、例えば
図1の矢印Rにて示した部分では、排水は排出口16cとはほぼ逆方向に向かって流れていることになる。排水の流れの中で、必ず通過しなければならない排出口16cとはほぼ逆方向に向かう排水の流れが有ることから、排水において無駄な流れが生じていることは明らかである。他にも、枝管部16dや防臭筒17の端部からオワン部内に排水が流れ込んだ時点で排水は拡がるように拡散して乱流を生じ、再度排出口16cで集合する際にも流れに乱れが生じる。このように、洗い場パントラップ4の内部では、排水の流れには明かな乱れが生じる。
一方、バイパス用トラップ5は、管体を屈曲させた管トラップであり、平面視では一直線状に排水は流れ、また排水が拡がるように拡散して流れる部分も存在しないため、平面視においてはバイパス用トラップ5の方が極めてスムーズに排水が流れる、と言うことができる。側面視において考えると、バイパス用トラップ5は、上下方向に折れ曲がりを生じるものの、この排水の上下方向の折れ曲がる流れは、洗い場パントラップ4、バイパス用トラップ5とも生じており、洗い場パントラップ4では上下方向には180度の折り返しであるのに対し、バイパス用トラップ5では、
図2に示したように、折り返し角度は120度程度であって、この点でもバイパス用トラップ5の方が乱流が生じにくい構成であると言える(バイパス用トラップ5には、清掃管18の配管が備えられ、この部分においては乱流が生じる可能性があるが、この清掃管18は排水用の配管ではなく、一端が閉塞されて排水の流れが生じないように構成されているため、排水の流れについては大きな影響は生じない)。
従って、排水の流れが乱される事無くスムーズに流れるかどうか、という点においては、バイパス用トラップ5の方が、洗い場パントラップ4よりもスムーズに排水できる、と言うことができる。
よって、乱流が起こりにくい分、バイパス用トラップ5の排水性能の方が、洗い場パントラップ4の排水性能よりも高いと言うことができる。
前述のように、浴槽UB排水時においては、第一の取水口14aよりも第二の取水口15aの方に大量の排水が流れるように構成されてなり、この第二の取水口15aに連通されてなる第二の浴槽配管BP2の方が、排水性能が高い事から、「排水性能の高い第二の浴槽配管BP2に大量の浴槽排水が流れ、排水性能の低い第一の浴槽配管BP1に少量の浴槽排水が流れる、全体として効率良く排水を処理できる浴室の排水配管」という効果を奏する。
【0023】
また、排水は浴室の使用者が身体を洗うなどした後の汚染水であるため、その中には毛髪や砂粒など塵芥が混入している。これらの塵芥によって配管内部に管詰まりが生じる場合がある。しかしながら、以下のように操作することで、この管詰まりなどを解消することができる。
第一の浴槽配管BP1上に管詰まりが生じた場合、洗い場パン排水口2から防臭筒17を取り外し、洗い場パン排水口2から枝管部16dや排出口16cを介して清掃の為の高圧洗浄用ホースを挿通し、管詰まりを押し流して管詰まりを解消することができる。
第二の浴槽配管BP2上に管詰まりが生じた場合、まずエプロン部材21を取り外し、浴槽パンP2上の清掃口7と、該清掃口7を閉塞する蓋部材12を、洗い場パンP1に対して露出させる。次に蓋部材12を取り外し、清掃口7から清掃管18を介して清掃の為の高圧洗浄用ホースを挿通し、管詰まりを押し流して管詰まりを解消することができる。尚、本実施例の場合、浴槽パンP2上の清掃口7は、エプロン部材21を外すことで、「浴室の使用者が居住空間である洗い場パンP1上から操作を加えることができる部分」に設けられてなるため、浴槽パンP2上の清掃口7は、浴室の表側に設けられてなる、と言うことができる。
【0024】
清掃の容易さについて検討すると、第一の浴槽配管BP1を清掃する場合、上記のように小さな防臭筒17を取り出すことで清掃を実施することが可能になる上に、洗い場パントラップ4内に直接清掃作業者の手を入れることが可能である。一方、第二の浴槽配管BP2を清掃する場合、大きなエプロン部材21を取り外す必要がある上、清掃口7から直接清掃作業者の手を入れることも不可能であり、第一の浴槽配管BP1の清掃の方が、第二の浴槽配管BP2の清掃よりも明らかに容易である。この点を考慮して、本実施例では、分岐部分である浴槽パン排水器6内部において、第一の浴槽配管BP1と第二の浴槽配管BP2の流入位置に高低差を設け、第二の浴槽配管BP2に、第一の浴槽配管BP1よりも高い位置の排水が流入するように構成してなる。上記構成がもたらす効果について、以下に説明する。
管詰まりの原因となる排水中の塵芥の内、特に管詰まりの原因になりやすい塵芥は、比重が1以上の塵芥である。なぜならば、比重が1よりも小さい塵芥は、排水の流れに沿って、排水中を浮かび、必要であれば上下動しつつ下流側に排出されるのに対し、比重が1よりも大きい塵芥は、封水部23など排水の流れが上昇に向かう部分においては、排水の流れに沿って上昇することが困難であり、この排水の流れが上昇する部分に堆積して管詰まりを生じる為である。
本実施例では、浴槽UB内、及び浴槽パンP2上からの排水を行う際に、比重が1よりも大きい塵芥は、当然ながら、浴槽パン排水器6の底に溜まった上で、下流側に向かって流れる場合が多い。このため、比重が1以上の塵芥を含んだ排水は、浴槽パン排水器6の底面に掛かる位置に設けられた、第一の取水口14aに優先的に流れ込み、洗い場パントラップ4を通過して下水側に排出される。第一の取水口14aからオワン部までの排水の流れはほぼ水平方向に向かう流れであり、比重が1以上の塵芥でも容易に流れてゆくことができる。オワン部に到達した、比重が1以上の塵芥は、オワン部内を上昇することが困難であり、オワン部内に堆積することとなるが、このオワン部内に対しては、浴室の清掃者が直接手を入れて清掃することが容易であり、堆積した塵芥の除去を含む、清掃作業が極めて容易に行うことができる。
一方、比重が1よりも軽い塵芥を含んだ排水は、第一の取水口14a及び浴槽パン排水器6の底面よりも高い位置に設けられた、第二の取水口15aに優先的に流れ込み、バイパス用トラップ5を通過して下水側に排出される。段落0022に記載したように、バイパス用トラップ5の排水の流れは極めてスムーズなため、排水中の比重が1よりも軽い塵芥は、排水の勢いに押し流され、配管内に堆積や付着などを生じることがなく、当然管詰まりを生じることも無い。浴槽排水口1の直下に第二の取水口15aを配置しているため、浴槽UB内に生じた、比重が1以上の塵芥は、第二の取水口15aからそのままバイパス用トラップ5内に流れ込む場合が考えられるが、通常浴槽UB内では「汚れを落とす作業」自体がほとんど無く、当然塵芥の量それ自体も少ないこと、また、バイパス用トラップ5の排水の流れは極めてスムーズなため、排水中の比重が1以上の塵芥であっても、排水の勢いに押し流される場合も多く、第二の浴槽配管BP2においては管詰まりは生じ難い。
【0025】
本発明の実施例は以上のようであるが本発明は上記実施例に限定される物ではなく、主旨を変更しない範囲において自由に変更が可能である。
例えば、上記実施例では、浴槽配管を、第一の浴槽配管BP1及び第二の浴槽配管BP2の2つに分岐した浴槽配管より構成してなるが、本発明はこれに限定される物ではなく、例えば、第二の浴槽配管BP2と同じ構成の浴槽配管を更に浴室の排水配管に追加し、分岐箇所にて3つに分岐する浴槽配管を備えた、浴室の排水配管として構成しても構わない。
また、上記実施例においては、バイパス用トラップ5の略V字の下流側に清掃管接続部19を備えてなるが、本発明は上記実施例に限定されることなく、略V字の上流側と下流側の両方に清掃管接続部19を設け、これに対応する清掃口7、清掃管18も複数設けて、バイパス用トラップ5の略V字の両端からそれぞれ清掃を行うように構成しても構わない。