(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段による処理は、前記スイッチ素子をオンにする処理の後に、前記発電ユニットの出力電圧が一定以上であるか否かを判定する処理を含み、一定以上の場合に前記所定の条件を満たすものとして次の処理を行う請求項1記載の発電装置。
前記制御手段による処理は、前記複数の発電ユニットの全てに対して、前記発電ユニットの出力電圧が一定以上であるか否かを判定する処理を繰り返すものである請求項2に記載の発電装置。
前記制御手段による処理は、前記スイッチ素子をオンにする処理と、前記発電ユニットの出力電圧が一定以上であるか否かを判定する処理との間に、所定の時間待機する処理を含む請求項2〜3のいずれか1項に記載の発電装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<発電装置の構成および制御>
本発明の発電装置は、
図1に示すように、燃料ガスを発生させる燃料供給手段31と、前記燃料供給手段31から供給された燃料ガスで発電を行なう発電セルで構成され、各々が直列接続されている複数の発電ユニット32a〜32dとを備えている。燃料供給手段31は、水素等の燃料ガスを発生させて、発電ユニット32a〜32dに供給するものである。本実施形態では、発電ユニット32a〜32dが、燃料ガスの供給経路に対して直列に接続されており、各々の発電ユニット32a〜32dに対して、順次、燃料ガスの供給・排出が行なわれる例を示す。燃料供給手段31の詳細については後述する。
【0018】
発電ユニット32a〜32dは、単数又は複数の発電セルで構成されており、複数の発電セルで構成される場合、各々の単位セルが、直列接続、並列接続、又はその組み合わせで電気的に接続される。発電ユニット32a〜32dは、直列接続された複数の発電セルを、複数のユニットに分けたものであり、活性化の際の全体の電圧低下を抑制する観点から、全体を2〜10分割したものが好ましく、3〜5分割したものがより好ましい。発電セルの詳細については後述する。
【0019】
複数の発電ユニット32a〜32dには、各々の出力部に対して、スイッチ素子34a〜34dを介して負荷手段33a〜33dが、各々電気的に接続されている。スイッチ素子34a〜34dとしては、操作信号により通電可能なものであればよく、各種の電力用半導体、リレー等が使用可能であるが、パワーFETや静電誘導トランジスタ(SIT)などの高速スイッチング素子が好ましく使用される。
【0020】
負荷手段33a〜33dとしては、発電ユニット32a〜32dから出力される電力を消費又は蓄電できるものであればよいが、出力電圧の検出精度を高める観点から、抵抗器、FET素子等が好ましい。
【0021】
負荷手段33a〜33dの抵抗値は、より適切な活性化を行なう観点から、純水素を供給して発電ユニット32a〜32dが最大電力を出力できる場合の電流に対して、1.2〜0.5倍になる抵抗値に設定することが好ましく、0.6〜1倍に設定することがより好ましい。
【0022】
また、本発明の発電装置は、
図1に示すように、スイッチ素子34a〜34dを制御する制御手段35と、制御手段35を動作させるための電力を制御手段35に供給する電源回路36とを備えている。
【0023】
制御手段35は、複数の入力・出力の系統を有し、これらを制御するプログラムの書き込み等および実行等が可能なマイコンユニット、マイコンチップなどで構成することができる。
【0024】
電源回路36には、発電ユニット32a〜32dの少なくとも一部から電力が供給されるが、発電ユニット32a〜32dの全体から電源回路36に電力が供給されることが好ましい。また、最初に活性化される発電ユニット(例えば発電ユニット32a)を避けて、その他の発電ユニット(例えば発電ユニット32b〜32d)から電力が供給されるようにしてもよい。
【0025】
次ぎに、
図2に基づいて、本発明における制御について説明する。制御手段35は、燃料供給手段31で燃料ガスの発生を開始する起動の際に、複数の発電ユニット32a〜32dの何れかに対してスイッチ素子(例えば34a)をオンにし、所定の条件を満たした後に、スイッチ素子(例えば34a)をオフにしてから、別の前記発電ユニット(例えば32b)に対して前記スイッチ素子(例えば34b)をオンにする処理を含む制御を行う。本実施形態では、発電ユニット32a〜発電ユニット32dの順で当該処理を行なう場合の例を示す。
【0026】
ステップS1では、燃料供給手段31において、水素ガス等の燃料ガスの発生を開始する。これにより発電が開始することで、制御手段35による制御が可能になる。
【0027】
但し、ステップS2では、4つの発電ユニット32a〜32dの電圧が3.0V以上になるまで、待機する処理を行なっている。このように、最初にスイッチ素子34aをオンにする処理の前に、単数又は複数の発電ユニット32a〜32dの出力電圧が一定以上になるまで待機することにより、制御に必要な最低限の発電状態を実現してから、活性化のための処理を行なうことができる。この処理は、一定時間だけ待機する処理に代えることも可能である。
【0028】
ステップS3では、複数の発電ユニット32a〜32dのうち、発電ユニット32aに対してスイッチ素子34aをオンにすることで、負荷手段33aである抵抗器に接続を行なう処理を実行する。この処理は、活性化のためのトータルの処理時間を短縮する観点から、複数の発電ユニット32a〜32dのうち、水素を供給する経路の最も上流側の発電ユニット32aに対して行なうことが好ましい。
【0029】
ステップS4では、10秒間の待機処理を実行する。このように、スイッチ素子スイッチ素子34aをオンにする処理と、発電ユニット32aの出力電圧が一定以上であるか否かを判定する処理との間に、所定の時間待機する処理を含むことにより、一定時間以上の活性化を常に行なうことができ、より確実に個々の発電ユニット32a〜32dの活性化を行うことができる。
【0030】
ステップS5では、所定の条件を満たすかを判定する処理として、発電ユニット32aの出力電圧が一定以上(例えば408mV以上)であるか否かを判定する処理を実行する。所定の条件を満たす場合には、判定ループを抜けて、発電ユニット32aに対してスイッチ素子34aがオフされる。この時点で、発電ユニット32aの活性化が完了する。
【0031】
上記の判定の出力電圧の閾値としては、より適切な活性化を行なう観点から、純水素を供給して発電ユニット32aが最大電力を出力できる場合の電圧に対して、100〜50%に設定することが好ましく、90〜60%に設定することがより好ましい。
【0032】
ステップS6では、ステップS5の判定で所定の条件を満たさない時間が、一定時間(例えば20秒)以上になった場合に、ステップS5の判定ループを抜ける判定処理を行なう。この判定ループを抜けると、発電ユニット32aに対してスイッチ素子34aがオフされ、ステップS7の処理を実行する。ステップS6で設定する時間としては、発電ユニット32a〜32dを活性化するのに必要な時間の1〜10倍に設定することが好ましい。
【0033】
ステップS7では、発電ユニット32aの全体又は一部の発電セルが不良品であることを出力する処理である。具体的には、例えばLEDなどによる表示が行なわれる。ステップS6〜S7処理によって、発電ユニット32aの全体又は一部の発電セルが不良品であることを検出できる。この処理を実行した後、次のステップS8を継続することで、他の発電ユニット32b〜32dについても、活性化のための処理又は発電セル等の良品判定処理を実行できる。
【0034】
ステップS8〜S12では、2番目の発電ユニット32bに対して、ステップS3〜S7と同じ処理を行なう。待機時間および判定電圧などは、1番目の発電ユニット32aと同じにしてもよく、異なるようにしてもよい。通常は、同じ条件が設定される。
【0035】
ステップS13〜S14では、3〜4番目の発電ユニット32c〜32dに対して、ステップS3〜S7と同じ処理を行なう。待機時間および判定電圧などの条件は、1番目の発電ユニット32aと同じにしてもよく、異なるようにしてもよい。通常は、同じ条件が設定される。
【0036】
このようにして、複数の発電ユニット32a〜32dの全てに対して、発電ユニット32a〜32dの出力電圧が一定以上であるか否かを判定する処理を繰り返すものであることにより、全ての発電ユニット32a〜32dの活性化を確認することができ、全ての発電ユニットの活性化を自動的に行うことができる。
【0037】
活性化が完了すると、発電装置による通常の発電が行なわれる。制御手段31は、通常の発電を行なう際の出力制御、安全確保のための出力制御などを、上記の制御に引き続き、又は並列して行なうことも可能である。
【0038】
<発電装置の構造>
本発明の発電装置は、例えば
図3〜
図4に示す構造の装置として構成することができる。図示した例では、発電装置が、燃料電池本体10と燃料供給カートリッジ20とを含むものである。燃料供給カートリッジ20が燃料供給手段31に相当し、燃料電池本体10に発電ユニット32a〜32d、制御手段35等が組み込まれている。
図3は燃料供給カートリッジ20が燃料電池本体10に装着される前の状態を示しており、
図4のように、発電装置は、燃料供給カートリッジ20が燃料電池本体10に装着された状態で使用される。
【0039】
燃料電池本体10は、一方の表面から燃料ガスが供給され、他方の表面から酸素が供給されることで発電を行う発電セル11と、その発電セル11を一方の表面を内部に向けて保持することで、発電セル11と共に内部空間を形成するセル保持体12と、その内部空間に接続されガスの排出のみを許容する逆止弁13と、内部空間に連通する燃料ガス供給口14と、連通路15によって相互に連通する第1開口部15a及び第2開口部15bと、を備えている。
【0040】
一方、燃料供給カートリッジ20は、反応液21aを収容する反応液収容部21と、反応液21aと反応して燃料ガスを発生させる燃料ガス発生剤22aを収容する燃料発生部22と、反応液収容部21から反応液を外部に排出するための反応液排出口23と、燃料発生部22に反応液21aを外部から供給するための反応液供給口24と、燃料発生部22から燃料ガスを外部に排出するための燃料排出口25と、を備えている。
【0041】
本実施形態の発電装置は、燃料電池本体10に燃料供給カートリッジ20を装着した状態では、反応液排出口23及び反応液供給口24は第1開口部15a及び第2開口部15bに各々接続され、燃料排出口25は燃料ガス供給口14に接続される。
【0042】
この発電装置は、反応液収容部21を加圧するための加圧機構26を有することが好ましい。本実施形態では、燃料電池本体10が燃料供給カートリッジ20を装着するカートリッジ収容部18を有し、燃料供給カートリッジ20は、カートリッジ収容部18に装着する際に、カートリッジ収容部18の形状に従って変形することで、反応液収容部21の内部圧力を増加させる加圧機構26を有している例を示す。
【0043】
反応液排出口23と反応液供給口24と燃料排出口25とは、燃料電池本体10に燃料供給カートリッジ20を装着する前には外部に連通していないことが好ましい。本実施形態では、封止材27を燃料供給カートリッジ20に設けておき、装着時に反応液排出口23と反応液供給口24と燃料排出口25とが、第1開口部15aと第2開口部15bと燃料ガス供給口14とに各々連通する例を示す。
【0044】
また、
図1に示すように、燃料電池本体10が発電セル11で構成される発電ユニット32a〜32dからの出力を制御する出力回路37と、出力回路37からの出力を外部に接続するためのコネクター40とを備える例を示す。以下、各部の詳細について説明する。
【0045】
<発電セル>
発電セル11は、単数又は複数の単位セルを備え、複数の単位セルを備える場合、いずれかの単位セルと他の単位セルの導電層同士を、接続部により電気的に接続している。電気的な接続は、直列接続、並列接続、又はその組み合わせが可能である。なお、接続する単位セルの数としては、要求される電圧又は電流に応じて、設定することが可能である。
【0046】
本発明における各々の単位セルは、
図4に示すように、固体高分子電解質層1と、この固体高分子電解質層1の両側に設けられた第1電極層2及び第2電極層3と、これら電極層2,3の更に外側に各々配置された第1導電層及び第2導電層とを有する。本実施形態では、第1導電層及び第2導電層が、第1電極層2及び第2電極層3を部分的に露出させる露出部を有する第1金属層4及び第2金属層5とからなる例を示す。
【0047】
なお、導電層の材質としては、金属、導電性高分子、導電性ゴム、導電性繊維、導電性ペースト、導電性塗料などが挙げられる。
【0048】
固体高分子電解質層1としては、従来の固体高分子膜型の燃料電池に用いられるものであれば何れでもよいが、化学的安定性及び導電性の点から、超強酸であるスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなる陽イオン交換膜が好適に用いられる。このような陽イオン交換膜としては、ナフィオン(登録商標)が好適に用いられる。その他、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂からなる多孔質膜に上記ナフィオンや他のイオン伝導性物質を含浸させたものや、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂からなる多孔質膜や不織布に上記ナフィオンや他のイオン伝導性物質を担持させたものでもよい。
【0049】
固体高分子電解質層1の厚みは、薄くするほど全体の薄型化に有効であるが、イオン伝導機能、強度、ハンドリング性などを考慮すると、10〜300μmが使用可能であるが、15〜50μmが好ましい。
【0050】
電極層2,3は、固体高分子電解質層1の表面付近でアノード側およびカソード側の電極反応を生じさせるものであれば何れでもよい。なかでも、ガス拡散層としての機能を発揮して、燃料ガス、燃料液、酸化ガス及び水蒸気の供給・排出を行なうと同時に、集電の機能を発揮するものが好適に使用できる。電極層2,3としては、同一又は異なるものが使用でき、その基材には電極触媒作用を有する触媒を担持させることが好ましい。触媒は、固体高分子電解質層1と接する内面側に少なくとも担持させるのが好ましい。
【0051】
電極層2,3の電極基材としては、例えば、カーボンペーパー、カーボン繊維不織布などの繊維質カーボン、導電性高分子繊維の集合体などの電導性多孔質材が使用できる。また、固体高分子電解質層1に触媒を直接付着させたり、カーボンブラックなどの導電性粒子に担持させて固体高分子電解質層1に付着させた電極層2,3を用いることも可能である。
【0052】
一般に、電極層2,3は、このような電導性多孔質材にフッ素樹脂等の撥水性物質を添加して作製されるものであって、触媒を担持させる場合、白金微粒子などの触媒とフッ素樹脂等の撥水性物質とを混合し、これに溶媒を混合して、ペースト状或いはインク状とした後、これを固体高分子電解質膜と対向すべき電極基材の片面に塗布して形成される。
【0053】
一般に、電極層2,3や固体高分子電解質層1は、燃料電池に供給される還元ガスと酸化ガスに応じた設計がなされる。本発明では、酸化ガスとして空気が用いられると共に、還元ガスとして水素ガスを用いるのが好ましい。なお、還元ガスの代わりにメタノール等の燃料液を使用することも可能である。
【0054】
例えば、水素ガスと空気を使用する場合、空気が自然供給される側のカソード側の第2電極層3(本明細書では、アノード側を第1電極層、カソード側を第2電極層と仮定する)では、酸素と水素イオンの反応が生じて水が生成するため、かかる電極反応に応じた設計をするのが好ましい。特に、低作動温度、高電流密度及び高ガス利用率の運転条件では、特に水が生成する空気極において水蒸気の凝縮による電極多孔体の閉塞(フラッディング)現象が起こりやすい。したがって、長期にわたって燃料電池の安定な特性を得るためには、フラッディング現象が起こらないように電極の撥水性を確保することが有効である。
【0055】
触媒としては、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、銀、ニッケル、鉄、銅、コバルト及びモリブデンから選ばれる少なくとも1種の金属か、又はその酸化物が使用でき、これらの触媒をカーボンブラック等に予め担持させたものも使用できる。
【0056】
電極層2,3の厚みは、薄くするほど全体の薄型化に有効であるが、電極反応、強度、ハンドリング性などを考慮すると、1〜500μmが好ましく、100〜300μmがより好ましい。電極層2,3と固体高分子電解質層1とは、予め接着、融着、又は塗布形成等を行って積層一体化しておいてもよいが、単に積層配置されているだけでもよい。このような積層体は、膜/電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)として入手することもでき、これを使用してもよい。
【0057】
アノード側電極層2の表面にはアノード側の第1金属層4が配置され、カソード側電極層3の表面にはカソード側の第2金属層5が配置される(本明細書では、アノード側を第1金属層、カソード側を第2金属層と仮定する)。第1金属層4は、第1電極層2を部分的に露出させる露出部を有する。
【0058】
第1金属層4の露出部は、アノード側電極層2が露出可能であれば、その個数、形状、大きさ、形成位置などは何れでもよい。アノード側金属層4の開孔は、例えば、規則的又はランダムに複数の円孔やスリット等を設けたり、または金属メッシュによって開孔を設けたり、第1金属層4を櫛形電極のような形状にしてアノード側電極層2を露出させてもよい。開孔部分の面積が占める割合(開孔率)は、電極との接触面積とガスの供給面積のバランスなどの観点から、10〜50%が好ましく、15〜30%がより好ましい。
【0059】
また、カソード側の第2金属層5は、第2電極層3を部分的に露出させる露出部を有するが、本実施形態では、カソード側金属層5には、空気中の酸素を供給(自然吸気)するための多数の開孔が設けられている例を示す。開孔は、カソード側電極層3が露出可能であれば、その個数、形状、大きさ、形成位置などは何れでもよい。カソード側金属層5の開孔は、例えば、規則的又はランダムに複数の円孔やスリット等を設けたり、または金属メッシュによって開孔を設けたり、第2金属層5を櫛形電極のような形状にしてカソード側電極層3を露出させてもよい。開孔部分の面積が締める割合(開孔率)は、電極との接触面積とガスの供給面積のバランスなどの観点から、10〜50%が好ましく、15〜30%がより好ましい。
【0060】
金属層4,5としては、電極反応に悪影響がないものであれば何れの金属も使用でき、例えばステンレス板、ニッケル、銅、銅合金などが挙げられる。但し、導電性、コスト、形状付与性、加圧のための強度などの観点から、銅、銅合金、ステンレス板などが好ましい。また、上記の金属に金メッキなどの金属メッキを施したものでもよい。
【0061】
なお、金属層4,5の厚みは、薄くするほど全体の薄型化に有効であるが、導電性、コスト、重量、形状付与性、加圧のための強度などを考慮すると、10〜1000μmが好ましく、50〜200μmがより好ましい。
【0062】
金属層4及び金属層5は、少なくとも一部が樹脂から露出することにより、その部分を電極として電気を外部に取り出すことができる。このため、樹脂成形体6に対して、金属層4及び金属層5を一部露出させた端子部を設けてもよいが、本発明では、直列接続の場合には、その両端の単位セルの金属層4又は金属層5が、単位セルの電極となる突出部を備え、これが樹脂成形体6から外部に出ていることが好ましい。この突出部は、インサート成形を行う際に、金属層4,5等を成形型内に保持するためにも利用できる。
【0063】
金属層4及び金属層5の形成や開孔の形成は、プレス加工(プレス打ち抜き加工)を利用して行うことができる。また、金属層4及び金属層5の突出部には、樹脂の流動や密着性を良好にする目的で、インサート成形される部分に貫通孔を設けてもよい。
【0064】
以上のような単位セル及び接続部をインサート成形により一体化した樹脂成形体6を備えている。樹脂成形体6は、第1電極層2及び第2電極層3に気体又は液体を供給するための供給部を有することが好ましく、この供給部は、第1金属層4又は第2金属層5の露出部に対応する位置に設けられた開孔6aであることが好ましい。
【0065】
本実施形態では、第1電極層2及び第2電極層3が開孔6aから露出するように、第1金属層4及び第2金属層5を両側から加圧した状態で、樹脂成形体6によりインサート成形して一体化してある例を示す。
【0066】
本発明では、金属層4,5の露出部に相当する開孔の大きさが、樹脂成形体6の開孔6aの大きさより、大きくてもよく、同じ大きさでもよく、小さくてもよい。
【0067】
樹脂成形体6の材質としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、耐熱性樹脂などが挙げられるが、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が好ましい。なお、熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、液晶ポリマー、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリアミドなどが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、または熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。なかでも、成形型内での樹脂の流動性、強度、溶融温度などの観点から、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリル樹脂が好ましく、これらはアプリケーションによって選択することが可能である。
【0068】
樹脂成形体6の全体の厚みとしては、樹脂による一体化の強度や、金属層を加圧する圧力、薄型化などの観点から、0.3〜4mmが好ましく0.5〜2mmがより好ましい。特に、金属層を覆う部分の樹脂成形体6の厚みとしては、金属層を加圧する圧力の観点から、0.2〜1.5mmが好ましく、0.3〜1.0mmがより好ましい。
【0069】
樹脂成形体6は、平板形状のものを予めインサート成形しておきセル保持体12を構成する他の壁面と接合すること、または、セル保持体12を構成する他の壁面と共にインサート成形することで、セル保持体12と一体化することができる。
【0071】
燃料電池本体10は、発電セル11を一方の表面を内部に向けて保持することで、発電セルと共に内部空間を形成するセル保持体12を備えている。本実施形態では、セル保持体12が箱状に形成され、箱状の予備空間形成部19と、筒状のカートリッジ収容部18と一体的に形成されている例を示す。
【0072】
セル保持体12には、その内部空間に接続され、ガスの排出のみを許容する逆止弁13を備えている。セル保持体12の内部空間は、逆止弁13および燃料ガス供給口14以外の部分は、密閉状態となっている。
【0073】
逆止弁13としては、小型軽量のものが好ましく、例えば、ダックビルタイプ、アンブレラタイプ、ボールとゴム板の併用、ボールとスプリングの併用、フート弁等の逆止弁を使用することができる。逆止弁13は、内部空間が大気圧を超えると、ガスを放出し、内部空間が大気圧未満になるときでも、大気を内部交換に流入をさせないという機能を有する。逆止弁13の開弁圧は、ゲージ圧力で10kPa以内に設定されることが好ましく、5kPa以内に設定されることがより好ましい。
【0074】
予備空間形成部19には、燃料ガス供給口14を形成するパイプが設けられ、これにより燃料ガス供給口14から内部空間へと連通する。また、予備空間形成部19には、内部空間から独立した連通路15が設けられており、これによって第1開口部15a及び第2開口部15bが相互に連通している。
【0075】
連通路15は、燃料発生部22が大気圧未満となったときにも、反応液収容部21から反応液が燃料発生部22に過剰に供給されないように、流量を調節する役割を有する。本実施形態では、流量を調整するために、連通路15が内径の細いパイプ15cを有している例を示す。
【0076】
本発明では、燃料発生部22で発生した水素ガス等から、不純物であるアンモニアを除去するために、内部空間、予備空間、又は燃料発生部22にアンモニア除去剤を設けてもよい。具体的には、シート状のアンモニア除去剤を内部空間の壁面、燃料発生部22の壁面などに配置することができる。また、予備空間内において、燃料ガス供給口14から内部空間へと連通する流路空間を設けて、その内部にアンモニア除去剤を設けてもよい。このようなアンモニア除去剤は、シート状に形成されたものが市販されているが、粒状の吸着剤等を通気性の袋に収容したものを使用することも可能である。
【0077】
アンモニア除去剤としては、例えば、水素中のアンモニアを吸着除去する吸着剤(吸着・分解や反応吸着などの化学吸着を含む)、アンモニアを溶解除去する吸収剤、アンモニアを反応により除去する反応剤、アンモニアを分解(加熱分解・触媒反応分解等)により除去する分解手段、などが挙げられるが、アンモニアを物理吸着又は化学吸着により除去する吸着剤を備えることが好ましい。
【0078】
中でも吸着剤が、物理吸着又は化学吸着によりアンモニアを除去するものであることがより好ましく、固体酸、活性炭(固体酸に相当するものを除く)、ゼオライト(固体酸に相当するものを除く)、及びモレキュラーシーブからなる群から選ばれる1種以上であることが更に好ましい。中でも、アンモニアの吸着除去能力やより高温で吸着可能な観点から、固体酸を用いることが好ましい。
【0079】
予備空間形成部19の予備空間内には、回路基板が設けられている。回路基板には、負荷手段33a〜33d、スイッチ素子34a〜34d、制御手段35、電源回路36、出力回路37が設けられている。出力回路37は、DC−DCコンバータ37a(昇圧回路に相当)、コンパレータ37b、可変抵抗器37c、電流検出用の抵抗器37d、電圧増幅器37eで構成されている。参照電圧Refは、内部に蓄電池を設けて、これを利用することも可能であるが、電源回路36として設けられた、固定電圧出力型のDC−DCコンバータからの出力電圧を利用することが好ましい。
【0080】
発電ユニット32a〜32dの出力電圧は、DC−DCコンバータ37a(昇圧回路に相当)により所定の電圧にまで昇圧するのが好ましい。DC−DCコンバータ37aは、可変電圧出力型であるのが好ましく、可変抵抗器37cにより、電圧の設定が可能である。参照電圧Refを利用して、可変抵抗器37cにより所定の電圧が設定される。この設定電圧と、電流検出用の抵抗器37dで検出し、電圧増幅器37eで増幅した電圧とが、コンパレータ37bで比較されて、その差電圧による信号が出力される。DC−DCコンバータ37aのFB端子からこの信号が入力され、この信号に基づいて、DC−DCコンバータ37aが、差電圧が一定になるように、出力電圧を制御することで、コネクター40(電源供給端子)から出力される電流が、一定に制御される。
【0081】
制御手段35は、DC−DCコンバータ37aのEN端子に接続されており、発電ユニット32a〜32dの活性化を行なう制御の際には、DC−DCコンバータ37aからの出力を停止することが可能となる。また、制御手段35は、抵抗器37dとコンパレータ37bとに接続されており、電流を一定に制御する際の設定値を、出力回路37に対して変更する制御を行なうことができる。この制御は、例えば、発電ユニット32a〜32dの出力電圧に応じて、コネクター40からの電流を変更する制御であり、コンパレータ37bに入力される電圧を制御手段35が制御することで、コネクター40からの電流を変更する制御を行なうことが可能となる。
コネクター40には、携帯電話、携帯ゲーム、タブレット型パソコンなどの携帯機器が接続され、充電等のために電力供給がなされる。
【0083】
燃料供給カートリッジ20は、反応液21aを収容する反応液収容部21と、反応液21aと反応して燃料ガスを発生させる燃料ガス発生剤22aを収容する燃料発生部22とを備えている。反応液収容部21と燃料発生部22とは、万が一の場合でも、反応液21aが燃料ガス発生剤22aに到達しにくいように、燃料供給カートリッジ20内において、隔壁28で隔絶されていることが好ましい。内部空間を有効利用するために隔壁28を可動型とし、燃料ガス発生剤22aの反応後の膨張に合わせ反応液21aの体積の減少とバランスを取れるようにすることが好ましい。
【0084】
図示した例では、反応液収容部21は、密閉され変形可能な袋状容器により形成されている。収納される反応液21aとしては、燃料ガス発生剤22aと反応して燃料ガスを発生させる液体が使用される。具体的には、燃料ガス発生剤22aの種類に応じて、水、または酸水溶液、アルカリ水溶液などが使用される。
【0085】
反応液収容部21には、そこから反応液21aを外部に排出するための反応液排出口23を備えている。図示した例では、反応液排出口23から反応液収容部21の底面付近まで延びるパイプが設けられている。このパイプに、燃料電池本体10の第1開口部15aを形成するパイプが連結される。両者のパイプの連結部分には、気密性を維持するためのシール部材を設けることが好ましい。
【0086】
反応液収容部21には、水等の収容位置を調整して、どのような向きに設置したときでも排出を容易にする目的で、吸水シートなどの吸水体を設けてもよい。吸水体としては、水を含浸可能なものであれば何れでもよいが、吸水性樹脂、脱脂綿、吸水性不織布、吸水紙などが好ましい。
【0087】
図示した燃料供給カートリッジ20は、カートリッジ収容部18に装着する際に、カートリッジ収容部18の形状に従って揺動する側壁を有しており、これが内側に変形して袋状容器を押圧することで、反応液収容部21の内部圧力を増加させる加圧機構26を有している。揺動可能な側壁は、ヒンジ部によって構成することができるが、可とう性の材料で側壁を形成することで同様の変形が可能となる。
【0088】
燃料発生部22に収容される燃料ガス発生剤22aとしては、反応液と反応して、水素ガスなどの燃料ガスを発生させるものが使用される。例えば、水等の反応液と反応して水素ガスを発生する水素発生剤または高反応性の水素発生剤を樹脂に包埋したものが使用できる。なかでも、反応性を制御できる観点から、高反応性の水素発生剤を樹脂に包埋したものが好ましい。
【0089】
このような高反応性の水素発生剤としては、水素化カルシウム、水素化リチウム、水素化カリウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化リチウムアルミニウム、水素化アルミニウムナトリウム、又は水素化マグネシウムなどの水素化金属化合物を含有するものが挙げられる。
【0090】
また、上記化合物以外の水素発生剤として、アルミニウム、鉄、マグネシウム、カルシウム等の金属、上記以外の金属水素錯化合物などを含有してもよい。水素化金属化合物、金属、金属水素錯化合物は、何れかを複数組み合わせて使用することもでき、また、それぞれを組み合わせて使用することも可能である。
【0091】
水素発生剤を樹脂に包埋する場合、粒状の水素発生剤の平均粒径は、樹脂中への分散性や反応性を制御する観点から、1〜100μmが好ましく、6〜30μmがより好ましく、8〜10μmが更に好ましい。
【0092】
水素発生剤の含有量は、適度な反応性とある程度の水素発生量を確保する観点から、樹脂中、10〜85重量%が好ましく、30〜80重量%が好ましい。
【0093】
用いられる樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、耐熱性樹脂などが挙げられるが、熱硬化性樹脂が好ましい。なお、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリアミドなどが挙げられる。また、耐熱性樹脂としては、芳香族系のポリイミド、ポリアミド、ポリエステルなどが挙げられる。
【0094】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、または熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。なかでも、水素発生反応中に多孔質構造を適度に維持できる観点から、エポキシ樹脂が好ましい。
【0095】
燃料ガス発生剤22aには、上記の成分以外の任意成分として、触媒、充填材、発泡剤などのその他の成分を含有してもよい。触媒としては、水素発生剤用の金属触媒の他、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ化合物も有効である。
【0096】
燃料発生部22には、反応液21aを外部から供給するための反応液供給口24と、燃料ガスを外部に排出するための燃料排出口25とを備えている。図示した例では、反応液供給口24と燃料排出口25とが各々パイプで形成されており、これらのパイプに、燃料電池本体10の第2開口部15bと燃料ガス供給口14とを形成するパイプが連結される。両者のパイプの連結部分には、気密性を維持するためのシール部材を設けることが好ましい。
【0097】
本実施形態では、燃料供給カートリッジ20の反応液排出口23と反応液供給口24と燃料排出口25とに対して、封止材27を設けている。封止材27としては、樹脂フィルム、ゴムシート、金属箔などが使用でき、接着剤、粘着剤、熱融着フィルムなどで、反応液排出口23等の形成面に貼り付けられる。封止材27は、使用の直前に剥離する方法で使用してもよいが、装着時にパイプにより封止材27が穿孔されることで、反応液排出口23と反応液供給口24と燃料排出口25とが、第1開口部15aと第2開口部15bと燃料ガス供給口14とに各々連通するように、封止材27の厚みと材質を選択することが好ましい。
【0098】
<動作説明>
図3は燃料供給カートリッジ20が燃料電池本体10に装着される前の状態を示しており、
図4のように、燃料供給カートリッジ20が燃料電池本体10に装着される。装着により、反応液排出口23及び反応液供給口24は、第1開口部15a及び第2開口部15bに各々接続され、燃料排出口25は燃料ガス供給口14に接続される。その際、燃料供給カートリッジ20が、燃料電池本体10のカートリッジ収容部18の内部形状に従って変形することで、反応液収容部21の内部圧力を増加させるため、連通路15を経て燃料発生部22に反応液21aが供給される。ついで供給された反応液21aが燃料ガス発生剤22aと反応し、発生した燃料ガスが燃料ガス供給口14を経て、セル保持体12の内部空間に導入され、発電セル11による発電が行われる。
【0099】
カートリッジの装着により発電装置が起動する際には、初期に発生した燃料ガスによる圧力で、内部空間内のガス(主に空気中の窒素ガス)が逆止弁13を経て排出されて、内部空間の燃料ガス濃度が上昇する。これが発電により消費されて大気圧未満のときには、逆止弁13は閉じているため、内部空間とともに燃料発生部22の圧力が低下する。これにより、反応液収容部21に収容された反応液21aが減圧により吸引され、連通路15を経て燃料発生部22に供給されるようになる。定常動作時には、消費される電力に応じて燃料ガスが消費されるため、消費電力に応じて反応液21aが吸引供給され、その結果、消費電力に応じて燃料ガスの発生量を自動調整することが可能となる。
【0100】
起動の際には、前述したような制御が制御手段35により行なわれ、発電ユニット32a〜32dの活性化が行なわれる。活性化が完了した後には、可変電圧出力型のDC−DCコンバータ37aによって、出力電圧が昇圧され、コネクター40(電源供給端子)からの出力が、所定の電圧に制御される。
【0101】
[別の実施形態]
(1)前述の実施形態では、発電ユニット32a〜32dが、燃料ガスの供給経路に対して直列に接続されている場合の例を示したが、本発明では、燃料ガスの供給経路を各々の発電ユニット32a〜32dに並列に接続してもよい。また、発電ユニットを複数の群に分けて、各々に燃料ガスの供給経路を接続し、各群では、燃料ガスの供給経路に対して発電ユニットを直列に接続してもよい。
【0102】
(2)前述の実施形態では、所定の条件を満たすかを判定する処理として、発電ユニットの出力電圧が一定以上であるか否かを判定する処理を実行する場合の例を示したが、その他の条件を満たすか否かを判定することも可能である。
【0103】
その他の条件としては、出力電流などの発電ユニットの出力状態を基準とする他、予め活性化のために適当な時間(例えば10秒)を決めておき、所定時間の経過を条件として判定処理を実行するようにしてもよい。
【0104】
(3)前述の実施形態では、発電ユニットの出力電圧が一定以上であるか否かを判定する際に、個々の発電ユニットの全体の出力電圧を検出する場合の例を示したが、発電ユニットを構成する発電セルが直列に接続されている場合など、一部の発電セルの出力電圧が一定以上であるか否かを判定することも可能である。
【0105】
(4)前述の実施形態では、最終段の発電ユニット32dから燃料ガスが逆止弁13を介して放出される例を示したが、燃料ガスの排出口に電磁弁等を使用して、燃料ガスの排出を制御することも可能である。その場合、排出ガスの不純物ガスの濃度に応じて、排出ガスの排出量を制御することが好ましい。