特許第6019309号(P6019309)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019309
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】インクリボンカセット
(51)【国際特許分類】
   B41J 17/32 20060101AFI20161020BHJP
   B41J 32/00 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   B41J17/32 A
   B41J32/00
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-258224(P2012-258224)
(22)【出願日】2012年11月27日
(65)【公開番号】特開2014-104638(P2014-104638A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237237
【氏名又は名称】フジコピアン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金田 富夫
【審査官】 小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−36510(JP,A)
【文献】 特開平5−24291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 17/32
B41J 32/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の筐体内部に、少なくともインクリボンをパンケーキ状に巻き取ってある繰出コアと、前記繰出コアから繰り出されたインクリボンを巻き取る巻取コアとをそれぞれ回転自在に設けてあるインクリボンカセットであって、次の(ア)〜(エ)の特徴を有するインクリボンカセット。
(ア)前記筐体は1個のケースと2個のカバーで構成される。
(イ)前記筐体は、1個のケースの両側にカバーを係合固定することによって構成されている。
(ウ)前記ケースと前記2個のカバーの係合固定手段は、前記2個のカバーの表裏両面と前記ケースの表裏両面に設けられている。
(エ)前記カバーの表面を前記ケースへ係合固定した場合と、前記カバーの裏面を前記ケースへ係合固定した場合とで、インクリボンカセットのカセット内高が異なる。
【請求項2】
前記2個のカバーが、同一の形状であることを特徴とする請求項1に記載のインクリボンカセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンターに取付けられて使用される、パンケーキ状のインクリボンを収納したインクリボンカセットの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来のインクリボンカセット100Eは、図5のような構成になっている。すなわちカバー1Eとケ−ス2Eで構成された中空の筐体の内部には、インクリボン5Eをパンケーキ状に巻き取ってある繰出コア3Eと繰出コア3Eから繰り出されたインクリボン5Eを巻き取る巻取コア4Eが回転自在に設けられている。また、インクリボンカセット100Eには、プリンターに装着されたときにプリンターの印字ヘッド(図示せず)が入り込む空間10Eが形成されている。プリンターでの印字時には、インクリボン5Eは、繰出コア3Eから繰出されて空間10Eに引き出され、印字ヘッドによってインクリボン5E上のインクが被転写体に転写された後、巻取コア4Eに巻き取られる。
【0003】
この種のインクリボンカセットにおいて、同じ外形形状のインクリボンカセットであ
って、広いリボン幅のインクリボンを収納したインクリボンカセットと、狭いリボン幅のインクリボンを収納したインクリボンカセットの両方の提供を要求されることがあった。
ここで同じ外形形状とは、図5に示すX1、X2、Y1、Y2、Z1、Z2の6方向から見たインクリボンカセットの外形形状が同じであることを示す。したがって、例えば前記6方向の1方向から見た場合に、インクリボンカセットの外形形状に影響しない部分に凹形状があるインクリボンカセットと、凹形状が無いインクリボンカセットがあったとしても、前記6方向から見た外形形状がすべて同じであれば、これら2つのインクリボンカセットは、同じ外形形状である。
【0004】
従来、同じ外形形状のインクリボンカセットであっても、異なるリボン幅のインクリボンを使用する場合には、それぞれのリボン幅に合わせて、ケース、カバー等のすべての部品を専用に設けたインクリボンカセットを各別に製作するか、或いは、大きな方のリボン幅に合わせたケース、カバーを設け、内部部品のみをリボン幅毎に専用に設けたインクリボンカセットを製作していた。
【0005】
しかし、同じ外形形状でリボン幅の異なる2種類のインクリボンカセットを製作する手段として前者を採用すると、リボン幅毎にケース、カバーを含むすべての部品の金型を製作しなければならず、ケース、カバーの製作に手間と費用が非常に掛かっていた。
【0006】
一方、同じ外形形状でリボン幅の異なる2種類のインクリボンカセットを製作する手段として後者を採用した場合、プリンターでの印字によるインクリボンの走行不良を防止することが困難であった。
【0007】
同じ外形形状でリボン幅の異なる2種類のインクリボンカセットを製作する手段として後者を採用した場合のインクリボンカセット100Fは、図6のような構成となる。インクリボンカセット100Fは、インクリボンカセットに収納できる最も大きな幅のインクリボンではなく、それよりも小さな幅のインクリボンを収納したものである。インクリボンカセット100Fはインクリボンカセット100Eと同じカバー1Eとケース2Eで構成された中空の筐体の内部に、インクリボン5Fをパンケーキ状に巻き取ってある繰出コア3Fと繰出コア3Fから繰り出されたインクリボン5Fを巻き取る巻取コア4Fが回転自在に設けられている。インクリボンカセット100Fではインクリボンカセット100Eに比べリボン幅の小さいインクリボン5Fを収納しているので、繰出コア3Fと巻取コア4Fには、インクリボンの幅より少し広い間隔を開けて、それぞれ2枚のフランジ33Fと44Fが設けられている。
【0008】
しかしながら、インクリボンカセット100Fでは、インクリボン5Fの幅に対して、
インクリボンカセットの内高が非常に大きい。このため、繰出コア3Fから繰出されたインクリボン5Fは、巻取コア4Fに巻き取られるまでの間、リボン幅方向の一方向に斜行したとしても、フランジ33Fと44F以外には一切接触するものがない状態で走行する。よって、プリンターの印字ヘッドなどの作用により、インクリボン5Fがリボン幅方向の一方に斜行すると、この斜行を止めるものが無い。斜行を止めるものがないため、インクリボン5Fは大きく斜行し、インクリボンが折れたり、切れたりするなどの走行不良が発生しやすくなっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明の課題は、同じ外形形状のインクリボンカセットであって、広いリボン幅のインクリボンを収納したインクリボンカセットと、狭いリボン幅のインクリボンを収納したインクリボンカセットの両方を提供する場合に、過大なインクリボンカセットの製作費用を掛けることなく、インクリボンの斜行による走行不良を防止することができるインクリボンカセットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明は、中空の筐体内部に、少なくともインクリボンをパンケーキ状に巻き取ってある繰出コアと、前記繰出コアから繰り出されたインクリボンを巻き取る巻取コアとをそれぞれ回転自在に設けてあるインクリボンカセットであって、次の(ア)〜(エ)の特徴を有するインクリボンカセットである。
前記筐体は1個のケースと2個のカバーで構成される。
前記筐体は、1個のケースの両側にカバーを係合固定することによって構成されている。
前記ケースと前記2個のカバーの係合固定手段は、前記2個のカバーの表裏両面と前記ケースの表裏両面に設けられている。
(エ)前記カバーの表面を前記ケースへ係合固定した場合と、前記カバーの裏面を前記ケースへ係合固定した場合とで、インクリボンカセットのカセット内高が異なる。
【0011】
第2発明は、前記2個のカバーが、同一の形状であることを特徴とする第1発明のインクリボンカセットである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ケースと2個のカバーの係合固定手段が、2個のカバーの表裏両面とケースの表裏両面に設けられており、カバーの表面をケースへ係合固定した場合と、カバーの裏面をケースへ係合固定した場合とで、インクリボンカセットのカセット内高を変更することができる。また、カセット内高の変更が、2個のカバーのケースへの形合固定方向の変更だけでできるので、インクリボンカセットの外形形状を変えることなく、カセット内高を変更することができる。
【0013】
よって、リボン幅毎にケース、カバーを製作することなく、1個のケースと2個のカバーの組み合わせで、同じ外形形状で2種類のカセット内高のインクリボンカセットを提供することができる。
【0014】
また、カセット内高を2種類のインクリボンのリボン幅それぞれに合った寸法とするこ
とができるので、2種類のリボン幅のインクリボンカセットの両方で、インクリボンの斜
行による走行不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一実施形態に係るインクリボンカセットの一方のカバーから見た平面図、その平面図のA−A断面図、B−B断面図、並びに、両方のカバーを開放した状態の外観斜視図である。
図2】本発明の第一実施形態に係るインクリボンカセットであって、ケースと係合固定されるカバーの面を図1の反対側の面としたインクリボンカセットの一方のカバーから見た平面図、その平面図のA−A断面図、B−B断面図、並びに、両方のカバーを開放した状態の外観斜視図である。
図3】本発明の第ニ実施形態に係るインクリボンカセットの一方のカバーから見た平面図、その平面図のA−A断面図、並びに、両方のカバーを開放した状態の外観斜視図である。
図4】本発明の第ニ実施形態に係るインクリボンカセットであって、ケースと係合固定されるカバーの面を図3の反対側の面としたインクリボンカセットの一方のカバーから見た平面図、その平面図のA−A断面図、並びに、両方のカバーを開放した状態の外観斜視図である。
図5】従来のインクリボンカセットのケース側から見た平面図、その平面図のA−A断面図、B−B断面図、並びに、カバーを開放した状態の外観斜視図である。
図6図5のインクリボンカセットに比べ狭いリボン幅のインクリボンを収納した従来のインクリボンカセットのケース側から見た平面図、その平面図のA−A断面図、B−B断面図、並びに、カバーを開放した状態の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に基づき本発明の実施形態を説明するが、本発明は下記形態に限定されるものではない。図1は、本発明の第一実施形態に係るインクリボンカセットの一方のカバーから見た平面図、その平面図のA−A断面図、B−B断面図、並びに、両方のカバーを開放した状態の外観斜視図である。
【0017】
図1のインクリボンカセット100Aは、1個のケース2Aと、2個のカバー1A、1AAで構成された中空の筐体の内部に、インクリボン5Aをパンケーキ状に巻き取ってある繰出コア3Aと繰出コア3Aから繰り出されたインクリボン5Aを巻き取る巻取コア4Aが回転自在に設けられている。また、インクリボンカセット100Aには、プリンターに装着されたときにプリンターの印字ヘッド(図示せず)が入り込む空間10Aが形成されている。
【0018】
ケース2Aのカバー1A、及びカバー1AAと係合固定される両方の面には、複数の嵌合ピン6Aが設けられている。カバ−1A及びカバー1AAには、ケース2Aの嵌合ピン6Aと対応する位置に複数の嵌合穴7Aが設けられている。嵌合ピン6Aの外径寸法と嵌合穴7Aの内径寸法は、嵌合ピン6Aの嵌合穴7Aへの挿入が圧入となるように設定される。よって、嵌合ピン6Aを対応する嵌合穴7Aへ圧入することによって、ケース2Aと、カバー1A及びカバー1AAは係合固定される。
【0019】
図1のA−A断面図に示すように、ケース2Aの両側にカバー1Aとカバー1AAを係合固定すると、カセット内高は、インクリボン5Aのリボン幅よりも少し広い寸法となる。このため、インクリボン5Aが幅方向に斜行しても、インクリボン5Aはすぐにカセット内面と接触する。よって、プリンターの印字ヘッドなどの作用により、インクリボン5Aがリボン幅方向の一方に斜行しても、すぐに斜行は止められ、インクリボンの走行不良が発生することはない。カセット内高とリボン幅の差は、2〜6mmが好ましく、2〜4mmがより好ましい。
【0020】
図1に示すように、カバー1Aには図1でケース2Aと係合する面の反対側の面にも、ケース2Aの嵌合ピン6Aと対応する位置に、嵌合穴7Aが設けられている。また、カバー1AAにも図1でケース2Aと係合する面の反対側の面にも、ケース2Aの嵌合ピン6Aと対応する位置に、嵌合穴7Aが設けられている。
【0021】
したがって、図2に示すように、ケース2Aを挟んで、カバー1Aとカバー1AAを入れ替えても、ケース2Aとカバー1A、及びケース2Aとカバー1AAをそれぞれ係合固定することができる。
【0022】
図2に示すように、図2のインクリボンカセット100Bでは、図1のインクリボンカセット100Aで外部に露出していたカセットカバー1Aと1AAの表面がインクリボンカセットの裏面となる。図2に示すようにインクリボンカセット100Bでは、インクリボンカセット100Aに比べて、カセット内高が小さくなるように設定される。この内高は、インクリボンカセット100Bに使用されるインクリボン5Bのリボン幅に合わせて設定される寸法であり、カセット内高は、インクリボン5Bのリボン幅よりも、少しだけ大きく設定される。カセット内高とリボン幅の差は、2〜6mmが好ましく、2〜4mmがより好ましい。
【0023】
したがって、インクリボン5Bが斜行しても、インクリボン5Bはすぐにカセット内面と接触する。よって、プリンターの印字ヘッドなどの作用により、インクリボン5Bがリボン幅方向の一方に斜行しても、すぐに斜行は止められ、インクリボンの走行不良が発生することはない。
【0024】
また、インクリボンカセット100Aと100Bは、カバー1Aとカバー1AAのケースへの係合方向を入れ替えたものなので、インクリボンカセット100Aと100Bは同じ外形形状となる。
【0025】
図3は、本発明の第ニ実施形態に係るインクリボンカセットの一方のカバーから見た平面図、その平面図のA−A断面図、並びに、両方のカバーを開放した状態の外観斜視図である。
【0026】
図3のインクリボンカセット100Cは、ケース2Cと、2個のカバー1C及び1CCとの係合固定方法を、図1の嵌合穴7Aと嵌合ピン6Aの組み合わせから、係合フック8Cと係合突起9Cの組み合わせに変更した以外は、図1のインクリボンカセット100Aと同様の形状である。
【0027】
図3のケース2Cの側面には、複数の係号フック8Cが設けられている。また、カバ−1C及びカバー1CCの側面には、ケース2Cの係合フック8Cと対応する位置に複数の係合突起9Cが設けられている。係合突起9Cと係合フック8Cが係合することによって、ケース2Cとカバー1C及びカバー1CCは係合固定される。
【0028】
インクリボンカセット100Cでは、ケース、カバーの係合固定方法は、フックと突起の組み合わせのみとしたが、ケースとカバーの組付け時の位置決めを容易にするため、インクリボンカセット100Aに設けた嵌合ピンと嵌合穴を併用しても良い。但し、嵌合ピンの嵌合穴への挿入を圧入とする必要はなく、嵌合穴内径寸法は嵌合ピン外径寸法よりも大きくても良い。
【0029】
図4のインクリボンカセット100Dは、図3のインクリボンカセット100Cのカバ−1Cとカバー1CCをケース2Cを挟んで入れ替えたものである。カバー1Cと1CCに設けられた係合突起9Cは、カバー1Cと1CCをケース2Cを挟んで入れ替えても、係合フック8Cと係合する。よって、図4に示すように、図3の状態からケース2Cを挟んで、カバー1Cと1CCを入れ替えても、ケース2Cとカバー1C及びカバー1CCは係合固定される。
【0030】
図4のインクリボンカセット100Dは、ケース2Cと、2個のカバー1C及び1CCとの係合固定方法を、図2の嵌合穴7Aと嵌合ピン6Aの組み合わせから、係合フック8Cと係合突起9Cの組み合わせに変更した以外は、図2のインクリボンカセット100Bと同様の形状である。
【0031】
インクリボンカセット100C、100Dともに、収納するインクリボンのリボン幅に応じたカセット内高とすることができるので、インクリボンがリボン幅方向の一方に斜行しても、すぐにインクリボンの斜行がカセット内面で止められ、インクリボンの走行不良が発生することがないことも、インクリボンカセット100A及び100Bと同様である。
【0032】
また、インクリボンカセット100Cと100Dは、カバー1Cとカバー1CCのケースへの係合方向を入れ替えたものなので、インクリボンカセット100Cと100Dは同じ外形形状となる。
【0033】
インクリボンカセット100A、100Bにおいてカバー1Aと1AAを、同一形状としても良い。また、インクリボンカセット100C、及び100Dにおいてカバー1Cと1CCを、同一形状としても良い。これらを同一形状とすると、カバーを成形する金型は1種類のみとなるので、カバーの製作の手間と費用をより削減することができる。
【0034】
以上の本発明の実施形態では、インクリボンカセットは、インクリボン、ケース、カバー、繰出コア、及び、巻取コアの5部品で構成したが、必要に応じて、これら以外の部品を適宜設けても良い。
【0035】
例えば、インクリボンの走行抵抗を低減するために、インクリボンと接してインクリボンの走行に伴って回転するローラーや、インクリボンに接してインクリボンの張力を付与する弾性部材等を、インクリボンカセット内に設けても良い。
【実施例】
【0036】
本発明の第一実施形態を図1及び図2に示す。また、本発明の第二実施形態を図3及び図4に示す。
【符号の説明】
【0037】
1A,1AA,1C,1CC,1E:カバー
2A,2C,2E:ケース
3A,3B,3E,3F:繰出コア
4A,4B,4E,4F:巻取コア
5A,5B,5E,5F:インクリボン
6A:嵌合ピン
7A:嵌合穴
8C:係合フック
9C:係合突起
10A,10B,10C,10D,10E,10F:(プリンターの印字ヘッドが入り込む)空間
33F:繰出コアのフランジ
44F:巻取コアのフランジ
100A,100B,100C,100D,100E,100F: インクリボンカセット
図1
図2
図3
図4
図5
図6