(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6019310
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】蒸着装置及び蒸着装置による成膜工程を含む製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20161020BHJP
C23C 14/50 20060101ALI20161020BHJP
F16H 21/34 20060101ALI20161020BHJP
F16H 7/06 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
C23C14/24 J
C23C14/50 H
F16H21/34
F16H7/06
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-84205(P2015-84205)
(22)【出願日】2015年4月16日
【審査請求日】2015年7月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597073645
【氏名又は名称】ナルックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105393
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 直哉
(72)【発明者】
【氏名】樋口 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】上野 博
(72)【発明者】
【氏名】木村 仁
【審査官】
塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−138276(JP,A)
【文献】
特開2009−084638(JP,A)
【文献】
特許第5793737(JP,B1)
【文献】
特開昭62−270768(JP,A)
【文献】
特開平04−329869(JP,A)
【文献】
特開平09−143717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
F16H 7/06
F16H 21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸の周りに回転するように構成されたドームと、
該中心軸を囲んで該ドーム上に配置される環状のチェーンと、
該ドームの回転運動を伝達する伝達軸と、
該ドームの回転運動を該伝達軸の回転運動に変換する第1のギヤ部と、
チェーン駆動スプロケットを備え、該伝達軸の回転運動を該チェーン駆動スプロケットの回転運動に変換する第2のギヤ部と、
該ドーム上に該環状のチェーンに沿って配置され、該ドームに固定される固定部と、該固定部に回転可能に支えられた第1の内部伝達軸と、該固定部に回転可能に支えられた揺動軸に固定され、揺動するように構成された揺動部と、該第1の内部伝達軸にユニバーサルジョイントで結合され、該揺動部に回転可能に支えられた第2の内部伝達軸と、該第2の内部伝達軸によって支えられ、トレイを保持するように構成された回転部とを備えたトレイ保持具と、を備えた蒸着装置であって、
該ドームの回転によって、該チェーン駆動スプロケットを回転させて該環状のチェーンを駆動し、該環状のチェーンの運動によって該トレイ保持具の該第1の内部伝達軸を回転させ、該第1の内部伝達軸の回転によって、該回転部が、該第2の内部伝達軸とともに回転し、該揺動部とともに揺動するように構成された蒸着装置。
【請求項2】
複数の環状のチェーンと、該複数の環状のチェーンのそれぞれに対応する複数の伝達軸と、を備えた請求項1に記載の蒸着装置。
【請求項3】
該トレイ保持具は、クランク回転板とクランクロッドを含むクランク機構を備え、該クランク回転板は、該第1の内部伝達軸の回転によって回転するように構成され、該クランクロッドは、該クランク回転板と該揺動部を結合し、該第1の内部伝達軸の回転によって該揺動部を揺動させるように構成された請求項1に記載の蒸着装置。
【請求項4】
該トレイ保持具は、揺動による、基準位置からのトレイの面の傾き角度の最大値を変えることができるように、該クランクロッドの、該クランク回転板への結合位置の該クランク回転板の中心位置からの距離を変更することができるように構成された請求項3に記載の蒸着装置。
【請求項5】
中心軸の周りに回転するように構成されたドームと、
該中心軸を囲んで該ドーム上に配置された環状のチェーンと、
該ドームの回転運動を伝達する伝達軸と、
該ドームの回転運動を該伝達軸の回転運動に変換する第1のギヤ部と、
チェーン駆動スプロケットを備え、該伝達軸の回転運動を該チェーン駆動スプロケットの回転運動に変換する第2のギヤ部と、
該ドーム上に該環状のチェーンに沿って配置され、蒸着装置のドームに固定される固定部と、該固定部に回転可能に支えられた第1の内部伝達軸と、該固定部に回転可能に支えられた揺動軸に固定され、揺動するように構成された揺動部と、該第1の内部伝達軸にユニバーサルジョイントで結合され、該揺動部に回転可能に支えられた第2の内部伝達軸と、該第2の内部伝達軸によって支えられ、トレイを保持するように構成された回転部とを備えたトレイ保持具と、を備えた蒸着装置による成膜工程を含む製造方法であって、
該ドームの回転によって、該チェーン駆動スプロケットを回転させて該環状のチェーンを駆動し、該環状のチェーンの運動によって該トレイ保持具の該第1の内部伝達軸を回転させ、該第1の内部伝達軸の回転によって、該回転部が、該第2の内部伝達軸とともに回転し、該揺動部とともに揺動するようにしながら、該トレイ保持具に保持されたトレイに取り付けられたワークに蒸着によって膜を生成する、蒸着装置による成膜工程を含む製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着装置及び
蒸着装置による成膜工程を含む製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸着装置は、一例として、レンズや回折格子などの光学素子の表面に膜を形成するために使用される。蒸着装置は、膜を形成する物質を放出するための蒸着源と、蒸着源を覆い中心軸の周りに回転可能なドームと、を含む。ドームにはトレイ保持具によって複数のトレイが取り付けられ、それぞれのトレイには、複数のワーク、たとえば、レンズや回折格子が取り付けられる。
【0003】
ワークへの均一な蒸着量を実現するために、蒸着源の周りにトレイを回転させる(公転)とともに、トレイ自体を自身の中心軸の周りに回転させる(自転)蒸着装置が既に開発されている(たとえば、特許文献1及び特許文献2)。
【0004】
しかし、ドームに設置された多数のトレイを確実に自転させるには、上記の従来技術の蒸着装置の機構は十分ではない。また、立体的な形状を有するワークのそれぞれの面の蒸着量のばらつきを小さくにするには、上述の公転及び自転動作だけでは十分ではない。他方、製造及び維持コストの観点から、蒸着装置の構造はできるだけ簡単であるのが好ましい。
【0005】
このように、ドームに設置された多数のトレイを確実に自転させることができ、立体的な形状を有するワークのそれぞれの面の蒸着量のばらつきを小さくすることのできる蒸着装置及びトレイ保持具は開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−270768号公報
【特許文献2】特開平4−329869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、ドームに設置された多数のトレイを確実に自転させることができ、立体的な形状を有するワークのそれぞれの面の蒸着量のばらつきを小さくすることのできる蒸着装置及びトレイ保持具に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様のトレイ保持具は、蒸着装置のドームに固定される固定部と、該固定部に回転可能に支えられた第1の内部伝達軸と、該固定部に回転可能に支えられた揺動軸に固定され、揺動するように構成された揺動部と、該第1の内部伝達軸にユニバーサルジョイントで結合され、該揺動部に回転可能に支えられた第2の内部伝達軸と、該第2の内部伝達軸によって支えられ、トレイを保持するように構成された回転部と、を備え、該第1の内部伝達軸が外部から回転されると、該回転部が、該第2の内部伝達軸とともに回転し、該揺動部とともに揺動するように構成されている。
【0009】
本態様のトレイ保持具に保持されたトレイは、該第1の内部伝達軸が回転されると、該回転部とともに回転し、該回転部は、該揺動部とともに揺動する。このように、トレイを回転(自転)させ揺動させることにより、トレイに取り付けられた立体的な形状を有するワークのそれぞれの面の蒸着量のばらつきを小さくすることができる。
【0010】
本発明の第1の態様の第1の実施形態のトレイ保持具は、クランク回転板とクランクロッドを含むクランク機構を備え、該クランク回転板は、該第1の内部伝達軸の回転によって回転するように構成され、該クランクロッドは、該クランク回転板と該揺動部を結合し、該1の内部伝達軸の回転によって該揺動部を揺動させるように構成されている。
【0011】
本実施形態のトレイ保持具においては、クランク機構により、該第1の内部伝達軸の回転運動から該揺動部の揺動を生じさせることができる。
【0012】
本発明の第1の態様の第2の実施形態のトレイ保持具は、前記第1の実施形態のトレイ保持具であって、揺動による、基準位置からのトレイの面の傾き角度の最大値を変えることができるように、該クランクロッドの、該クランク回転板への結合位置の該クランク回転板の中心位置からの距離を変更することができるように構成されている。
【0013】
本実施形態のトレイ保持具においては、該クランクロッドの、該クランク回転板への結合位置の該クランク回転板の中心位置からの距離を変更することによって、揺動による、基準位置からのトレイの面の傾き角度の最大値を容易に変えることができる。
【0014】
本発明の第2の態様の蒸着装置は、中心軸の周りに回転するように構成されたドームと、該中心軸を囲んで該ドーム上に配置される環状のチェーンと、該ドームの回転運動を伝達する伝達軸と、該ドームの回転運動を該伝達軸の回転運動に変換する第1のギヤ部と、チェーン駆動スプロケットを備え、該伝達軸の回転運動を該チェーン駆動スプロケットの回転運動に変換する第2のギヤ部と、該ドーム上に該環状のチェーンに沿って配置された、上記第1の態様のトレイ保持具と、を備えている。本蒸着装置は、該ドームの回転によって、該チェーン駆動スプロケットを回転させて該環状のチェーンを駆動し、該環状のチェーンの運動によって該トレイ保持具の該第1の内部伝達軸を回転させるように構成されている。
【0015】
本態様の蒸着装置は、ドームの回転によって、該ドーム上に配置される該環状のチェーンを駆動し、該ドーム上に該環状のチェーンに沿って配置されたトレイの該第1の内部伝達軸を回転させる。したがって、該ドーム上に該環状のチェーンに沿って配置されたトレイを回転(自転)させ揺動させることにより、トレイに取り付けられた立体的な形状を有するワークのそれぞれの面の蒸着量のばらつきを小さくすることができる。
【0016】
本発明の第2の態様の第1の実施形態の蒸着装置は、複数の環状のチェーンと、該複数の環状のチェーンのそれぞれに対応する複数の伝達軸と、を備えている。
【0017】
本態様の蒸着装置によれば、複数の環状のチェーンに沿って配置された多数のトレイを回転(自転)させ揺動させることにより、該多数のトレイに取り付けられた立体的な形状を有するワークのそれぞれの面の蒸着量のばらつきを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】本発明の蒸着装置のドームの中心軸を含む断面図である。
【
図8】トレイ保持具の固定部及び揺動部の内部の機構を説明するための図である。
【
図9】トレイ上のワークの位置の、蒸着装置によるワークへの蒸着量への影響を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の蒸着装置300の構成を示す図である。蒸着装置300は、蒸着源320と、ドーム310と、これらを取り囲むチャンバー330とを含む。チャンバー330は、排気口335を使用して排気することにより所定の真空度に保持される。ドーム310は、その内面にワーク400を取り付けられるように構成され、蒸着源320を覆うように設置される。ワーク400は、一例として回折格子などの光学素子であり、ドーム310の内面に図示しないトレイ保持具によって保持された、図示しないトレイに取り付けられる。蒸着源320から放出された物質は、蒸着源320を覆うドーム310の内面に取り付けられたワーク400に到達し、その表面に蒸着される。ドーム310の内面に取り付けられた複数のワーク400に一様に物質が蒸着されるように、蒸着プロセス中にドーム310は、図示しない駆動部によってその中心軸の周りに回転させられる。上記の記述は、本発明の蒸着装置300及び従来の蒸着装置に共通にあてはまるものである。本発明の蒸着装置300の特徴的な構成については、以下に説明する。
【0020】
図2は、本発明の蒸着装置300のドーム310の平面図である。本発明の蒸着装置300は、ドーム310の回転運動によって、ドーム310上に設置されたトレイ保持具1000の一部を回転させることによってトレイ保持具1000に取り付けられたトレイを回転させるように構成されている。
【0021】
ドーム310の回転運動をトレイ保持具1000に伝達するために、蒸着装置300は、ドーム310上に、第1のギヤ部150と、第2のギヤ部160A及び160Bと、回転伝達軸155A及び155Bを備える。第1のギヤ部150は、ドーム310の回転軸軸受部に取り付けられた固定ギヤ3101と係合し、ドーム310が回転すると、回転伝達軸155Aの回転運動を生じさせる。第2のギヤ部160Aは、回転伝達軸155Aの回転運動をスプロケットの回転運動に変換し、スプロケットの回転運動によって環状チェーン205を駆動する。その結果、環状チェーン205に連結された、複数のトレイ保持具1000の回転部分が回転する。さらに、回転伝達軸155Aの回転運動は、回転伝達軸155Bに伝えられる。第2のギヤ部160Bは、回転伝達軸155Bの回転運動をスプロケットの回転運動に変換し、スプロケットの回転運動によって環状チェーン210を駆動する。その結果、環状チェーン210に連結された、複数のトレイ保持具1000の回転部分が回転する。
【0022】
図3は、本発明の蒸着装置300のドーム310の中心軸を含む断面図である。ドーム310は、チャンバー330の天井から吊り下げられ、図示しない駆動装置によって中心軸の周りに回転するように構成されている。ドーム310の回転数は、たとえば、1分間に10回転から20回転の範囲で調整することができるように構成してもよい。ドーム310が、中心軸の周りに回転すると、上述のように、第1のギヤ部150は、ドーム310の回転運動によって回転伝達軸155Aの回転運動を生じさせる。第2のギヤ部160Aは、回転伝達軸155Aの回転運動によって、スプロケットの回転運動を生じさせるとともに、回転伝達軸155Bの回転運動を生じさせる。第2のギヤ部160Bは、回転伝達軸155Bの回転運動をスプロケットの回転運動に変換する。
【0023】
トレイ保持具1000は固定部1100と揺動部1200とを含む。固定部1100の回転部分が、環状チェーン205または210によって回転させられる。トレイ保持具1000については後で詳細に説明する。
【0024】
図4は第1のギヤ部150を説明するための図である。
図4(a)は、第1のギヤ部150及びドーム310の回転軸軸受部に取り付けられた固定ギヤ3101の平面図である。
図4(b)は、第1のギヤ部150の側面図である。
図4(c)は、第1のギヤ部150及びドーム310の回転軸軸受部に取り付けられた固定ギヤ3101の側面図である。
図4(a)及び
図4(c)に示すように、第1のギヤ部150のアイドラーギヤ1501は、一方でドーム310の回転軸軸受部に取り付けられた固定ギヤ3101に係合し、他方で第1のギヤ部150の駆動ギヤ1503に係合している。第1のギヤ部150はドーム310上に固定されているので、ドーム310が中心軸の周りに回転すると、固定ギヤ3101に係合したアイドラーギヤ1501が回転させられる。さらに、アイドラーギヤ1501が回転すると、アイドラーギヤ1501に係合した駆動ギヤ1503が回転させられる。駆動ギヤ1503の回転運動は、スパイラルギヤ1505によって回転伝達軸155Aの回転運動に変換される。このように、第1のギヤ部150は、ドーム310の回転運動から、回転伝達軸155Aの回転運動を生じさせる。
【0025】
図5は第2のギヤ部160Aを説明するための図である。
図5(a)は、第2のギヤ部160A及び回転伝達軸155Aの平面図である。
図5(b)は、第2のギヤ部160Aの側面図である。
図5(c)は、第2のギヤ部160A、及び回転伝達軸155Bの側面図である。
【0026】
図5(a)に示すように、回転伝達軸155Aの回転運動は、ユニバーサルジョイント157A2を介して第2のギヤ部160Aに伝達される。
【0027】
図5(b)及び
図5(c)に示すように、ユニバーサルジョイント157A2を介して第2のギヤ部160Aに伝達された回転伝達軸155Aの回転運動は、ヘリカルギヤ1601Aによってスプロケット1603Aの回転運動に変換される。スプロケット1603A及び1605Aには環状チェーン205が係合され、スプロケット1603Aの回転運動によって環状チェーン205が駆動される。スプロケット1603Aの他にスプロケット1605Aを設けた理由は、スプロケット1603Aと環状チェーン205との係合を強化するためである。このように、第2のギヤ部160Aは、回転伝達軸155Aの回転運動によって環状チェーン205を駆動させる。
【0028】
図5(c)に示すように、回転伝達軸155Aの回転運動は、ユニバーサルジョイント157A2及びユニバーサルジョイント157B1を介して回転伝達軸155Bにさらに伝達される。
【0029】
図6は第2のギヤ部160Bを説明するための図である。
図6(a)は、第2のギヤ部160B及び回転伝達軸155Bの平面図である。
図6(b)は、第2のギヤ部160Bの側面図である。
図6(c)は、第2のギヤ部160B、及び回転伝達軸155Bの側面図である。
【0030】
図6(a)に示すように、回転伝達軸155Bの回転運動は、ユニバーサルジョイント157B2を介して第2のギヤ部160Bに伝達される。
【0031】
図6(b)及び
図6(c)に示すように、ユニバーサルジョイント157B2を介して第2のギヤ部160Bに伝達された回転伝達軸155Bの回転運動は、ヘリカルギヤ1601Bによってスプロケット1603Bの回転運動に変換される。スプロケット1603B及び1605Bには環状チェーン210が係合され、スプロケット1603Bの回転運動によって環状チェーン210が駆動される。スプロケット1603Bの他にスプロケット1605Bを設けた理由は、スプロケット1603Bと環状チェーン210との係合を強化するためである。このように、第2のギヤ部160Bは、回転伝達軸155Bの回転運動によってスプロケット1603Bの回転運動を生じさせ、環状チェーン210を駆動させる。
【0032】
図7は、トレイ保持具1000を説明するための図である。
図7(a)は、ドーム310に設置されたトレイ保持具1000の、ドーム310の径方向の側面図である。
図7(b)は、
図7(a)の側面と直交する側面の側面図である。トレイ保持具1000は、固定部1100と揺動部1200と回転部1300とを含む。固定部1100は、ドーム310の面に固定される。その際、固定部1100は、固定部1100の中心軸がドーム310の中心軸と平行となるように固定される。揺動部1200の揺動中心軸1109は、固定部1100に回転可能に取り付けられる。揺動中心軸1109と固定部1100の中心軸とのなす角度が直角であるように構成してもよい。さらに、揺動中心軸1109は、ドーム310の中心軸及び固定部1100の中心軸を含む平面に直交するように構成してもよい。
【0033】
回転部1300は、チャックによってトレイ1400A、またはトレイ1400Bを保持するように構成されている。チャックは、サイズの異なるトレイ1400A、及びトレイ1400Bのサイズに合わせて、移動させることができるように構成されている。
【0034】
図8は、トレイ保持具1000の固定部1100及び揺動部1200の内部の機構を説明するための図である。
図8(a)は、
図7(a)に対応する図であり、
図8(b)は、
図7(b)に対応する図である。
【0035】
固定部1100の内部には第1の回転軸1121が備わる。第1の回転軸1121の一方の端部にはスプロケット1101が結合され、第1の回転軸1121は、スプロケット1101が環状チェーン210によって回転すると、回転するように構成されている。揺動部1200の内部には第2の回転軸1125が備わる。第2の回転軸1125は、ユニバーサルジョイント1123によって第1の回転軸1121の他方の端部に結合され、第1の回転軸1121が回転すると回転するように構成されている。第2の回転軸1125は、回転部1300に結合されている。したがって、環状チェーン210によってスプロケット1101が回転すると、第1の回転軸1121及び第2の回転軸1125が回転し、トレイを保持した回転部1300が回転する。
【0036】
このように、ドーム310が回転し、チェーンが駆動されてスプロケット1101が回転させられると、トレイを保持した回転部1300が回転する。たとえば、ドーム310の1回転の間に回転部1300が10回転するようにギヤ比を設定する。
【0037】
図7(a)に示すように、固定部1100は、クランク回転板1103を備える。クランク回転板1103の中心からdの位置に第1のロッド1105の第1の端部が結合される。第1のロッド1105の第2の端部は第2のロッド1107の第1の端部に結合される。第2のロッド1107の第2の端部は揺動部1200に結合される。
図8(a)に示すように、第1の回転軸1121にはウォーム1127が取り付けられている。ウォーム1127はウォームホイール1129と係合し、ウォームホイール1129の回転軸にはクランク回転板1103が取り付けられている。したがって、第1の回転軸1121が回転すると、ウォーム1127及びウォームホイール1129が回転し、さらにクランク回転板1103が回転する。クランク回転板1103が回転すると、第1のロッド1105及び第2のロッド1107の運動により、揺動部1200が揺動中心軸1109の周りに揺動する。回転部1300の保持するトレイの面が、固定部1100の中心軸の位置におけるドーム310の接平面に平行な状態を基準として、ドーム310の径方向の断面におけるトレイの面の傾きの最大値を振り角度と呼称する。すなわち、振り角度とは、揺動による、基準位置からのトレイの面の傾き角度の最大値であり、
図7(a)においてθで示される角度である。第1のロッド1105の第1の端部の、クランク回転板1103における固定値の中心からの距離dを変更することにより振り角度θを変更することができる。距離dを大きくするほど振り角度θは大きくなる。振り角度θが、たとえば、±10度となるように距離dを設定する。
【0038】
このように、ドーム310が回転し、チェーンが駆動されてスプロケット1101が回転させられると、揺動部1200の揺動が行われる。たとえば、ドーム310の1回転で揺動の1周期が実施されるようにギヤ比を設定する。
【0039】
上述のように、ドーム310の回転中に、回転部1300が第2の回転軸1125によって回転する。さらに、第2の回転軸1125は、揺動部1200の内部に支持されているので、揺動部1200が揺動中心軸1109の周りに揺動されると、第2の回転軸1125に結合された回転部1300も同様に揺動される。このようにして、回転部1300に保持されたトレイは、回転及び揺動を受ける。
【0040】
図9は、トレイ上のワークの位置の、蒸着装置によるワークへの蒸着量への影響を説明するための図である。ここで、トレイは、ドームに固定されているものとする。ドーム310が球状であり、球の中心に蒸着源が配置されているとする。
図9において、ワーク400aは、トレイ1400の左側に配置され、ワーク400bは、トレイ1400の中央に配置され、ワーク400cは、トレイ1400の右側に配置されている。この場合に、ワークには、ワークの位置におけるドーム310の面の法線に沿って、蒸着物質が飛来する。
図9は、ドームの球の中心及び上記の法線を含む断面図である。トレイ1400に垂直でワークの中心を通るワークの中心軸に対して、蒸着物が飛来する方向である法線のなす角度を成膜角度と呼称する。成膜角度は、
図9において一点鎖線で示すワークの中心軸を基準として時計回りに測定する。
図9において、ワーク400aの成膜角度をωとすると、ワーク400cの成膜角度は、−ωである。また、ワーク400b成膜角度は0である。ドーム310が回転しても上記の成膜角度は変わらない。この結果、ワーク400aでは、右側の側面の蒸着量が、左側の側面の成膜量よりも大きくなる。また、ワーク400cでは、左側の側面の蒸着量が、右側の側面の成膜量よりも大きくなる。
【0041】
そこで、トレイ1400の中心軸、すなわちワーク400bの中心軸の周りにトレイ1400を回転させると、この回転によってワーク400a及びワーク400cの成膜角度が変化し、それぞれのワークの各部の成膜量のばらつきが減少する。
【0042】
さらに、トレイ1400の揺動動作を実施することにより、トレイ1400に設置されたワークが立体的な形状をしている場合にも、ワークの各部の成膜量のばらつきを減少させることができる。
【0043】
単位時間当たりのドームの回転数に対する、単位時間当たりのトレイの回転(自転)数の比、及び単位時間当たりのドームの回転数に対する、揺動の周期を決定する単位時間当たりのクランク回転板1103の回転数の比は、ギヤ比を変えることによって望ましい値に設定することができる。また、上述のように、第1のロッド1105の第1の端部の、クランク回転板1103における固定値の中心からの距離dを変更することにより振り角度θを変更することができる。このように、ワークの仕様に合わせてトレイの自転の周期、揺動の周期及び振り角度を適切に調整することができる。
【要約】
【課題】立体的な形状を有するワークのそれぞれの面の蒸着量のばらつきを小さくすることのできるトレイ保持具を提供する。
【解決手段】トレイ保持具は、蒸着装置のドームに固定される固定部(1100)と、該固定部に回転可能に支えられた第1の内部伝達軸(1121)と、該固定部に回転可能に支えられた揺動軸(1109)に固定され、揺動するように構成された揺動部(1200)と、該第1の内部伝達軸にユニバーサルジョイント(1123)で結合され、該揺動部に回転可能に支えられた第2の内部伝達軸(1125)と、該第2の内部伝達軸によって支えられ、トレイを保持するように構成された回転部(1300)と、を備え、該第1の内部伝達軸が外部から回転されると、該回転部が、該第2の内部伝達軸とともに回転し、該揺動部とともに揺動するように構成されている。
【選択図】
図7