特許第6019318号(P6019318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019318
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】蓄電装置温度測定方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20161020BHJP
   G01R 31/36 20060101ALI20161020BHJP
   G01K 7/00 20060101ALI20161020BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   H01M10/48 301
   H01M10/48 PZHV
   G01R31/36 A
   G01K7/00 381L
   H02J7/00 Q
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-556219(P2014-556219)
(86)(22)【出願日】2013年12月24日
(86)【国際出願番号】JP2013007545
(87)【国際公開番号】WO2014108971
(87)【国際公開日】20140717
【審査請求日】2015年6月16日
(31)【優先権主張番号】特願2013-3500(P2013-3500)
(32)【優先日】2013年1月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】310014322
【氏名又は名称】アルプス・グリーンデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】蛇口 広行
【審査官】 猪瀬 隆広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−243481(JP,A)
【文献】 特開2011−018532(JP,A)
【文献】 特開2012−135168(JP,A)
【文献】 特表2013−543237(JP,A)
【文献】 蛇口 広行 HEBIGUCHI,Hiroyuki,電池内部温度計測方法の検討 Measurement method of Li-ion battery internal temperature,第53回電池討論会 講演要旨集 THE 53RD BATTERY SYMPOSIUM IN JAPAN,日本,電気化学会 電池技術委員会 THE COMMITTEE OF BATTERY TECHNOLOGY, THE ELECTROCHEMICAL SOCIETY OF JAPAN,2012年11月13日,53rd,第20頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42−10/48
G01K 7/00
G01R 31/36
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置の残容量(SOC:State Of Charge)に応じて前記蓄電装置の内部インピーダンスの実部が変化しない周波数帯域を含む交流信号を用いて前記蓄電装置の内部インピーダンスの実部を測定し、当該内部インピーダンスの実部の測定値から前記蓄電装置の内部温度を算出することを特徴とする蓄電装置温度測定方法。
【請求項2】
100KHz以上1MHz以下の周波数帯域の交流信号を用いて蓄電装置の内部インピーダンスの実部を測定し、当該内部インピーダンスの実部の測定値から前記蓄電装置の内部温度を算出することを特徴とする請求項1記載の蓄電装置温度測定方法。
【請求項3】
300KHzの周波数の交流信号を用いて蓄電装置の内部インピーダンスの実部を測定し、当該内部インピーダンスの実部に測定値から前記蓄電装置の内部温度を算出することを特徴とする請求項1記載の蓄電装置温度測定方法。
【請求項4】
蓄電装置の残容量(SOC:State Of Charge)に応じて前記蓄電装置の内部インピーダンスが変化しない周波数帯域を含む交流信号を用いて前記蓄電装置の内部インピーダンスを測定し、当該内部インピーダンスの測定値から前記蓄電装置の内部温度を算出することを特徴とする蓄電装置温度測定方法。
【請求項5】
10KHz以上100KHz以下の周波数帯域の交流信号を用いて蓄電装置の内部インピーダンスを測定し、当該内部インピーダンスの測定値から前記蓄電装置の内部温度を算出することを特徴とする請求項4記載の蓄電装置温度測定方法。
【請求項6】
30KHzの周波数の交流信号を用いて蓄電装置の内部インピーダンスを測定し、当該内部インピーダンスの測定値から前記蓄電装置の内部温度を算出することを特徴とする請求項1記載の蓄電装置温度測定方法。
【請求項7】
前記蓄電装置の充電又は放電に用いられる直流電流に前記交流信号を重畳させたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の蓄電装置温度測定方法。
【請求項8】
前記蓄電装置には、前記交流信号を検出するための電流検出部及び電圧検出部が備えられ、
前記電流検出部及び前記電圧検出部の少なくとも一方を、前記蓄電装置の残容量の演算に用いることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の蓄電装置温度測定方法。
【請求項9】
複数の前記蓄電装置が直列に接続され、
単一の前記電流検出部が前記複数の蓄電装置と直列に設けられる一方、前記電圧検出部が前記蓄電装置毎に設けられることを特徴とする請求項8記載の蓄電装置温度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置の温度を測定する方法に関し、特に、蓄電装置の内部温度を正確に測定するための蓄電装置温度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタ等の蓄電装置は様々な用途に利用され、例えば、携帯電話の電池パックやPCのバッテリ、或いは自動車のバッテリ等に広く適用されている。その際に、蓄電装置の状態、例えば劣化状態(SOH:State Of Healthという)や残容量(SOC:State Of Chargeという)を検知するのは大変重要な事項となっている。特に、自動車において、アイドリングストップを行う省エネ自動車やハイブリッド自動車、電気自動車等における蓄電装置の状態を検知することは、自動車の走行に深く関連しており、極めて重要なこととして注目されている。
【0003】
この蓄電装置の状態を検知するために、一般的に良く知られているのが、蓄電装置の電圧、電流及び温度を測定し、その測定結果に基づいて蓄電装置における劣化状態(SOH)や残容量(SOC)等を算出する方法である。この中でも蓄電装置の温度は、蓄電装置の劣化に大きな影響を与えるため、重要な測定パラメータを構成する。
【0004】
蓄電装置の温度の測定方法の従来技術として、温度検出素子を蓄電装置に当て、或いは、繋いで直接測定する方法が一般的に知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の方法では、温度検出素子にツェナーダイオ−ドを用い、ツェナーダイオ−ドを蓄電装置のプラス端子に接続し、蓄電装置のプラス端子から伝わる温度を正確に測定できるとしている。しかしながら、特許文献1の測定方法では、蓄電装置の内部抵抗の自己発熱等により、温度検出素子の温度検出点(特許文献1では蓄電装置のプラス端子)の温度と蓄電装置の内部の温度とに大きな差が生じる場合があり、蓄電装置の正確な温度を把握できないという問題があった。
【0005】
一方、蓄電装置における内部抵抗(内部インピーダンス)と残容量(SOC)と温度との関係を示す特性マップを予め求めておき、温度検出時に測定される蓄電装置の残容量(SOC)及び内部抵抗(内部インピーダンス)をこの特性マップに適用して蓄電装置における温度を導出する温度検出方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−260215号公報
【特許文献2】特開2001−85071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の温度検出方法においては、蓄電装置内を流れる電流を積算することにより蓄電装置における残容量(SOC)を独立して演算する。その上で演算した残容量(SOC)と、上述した特性マップに定められた内部抵抗とに基づいて蓄電装置の温度を導出することから、蓄電装置の温度を導出するまで処理が煩雑化するという問題がある。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、煩雑な演算処理を必要とすることなく、蓄電装置の内部温度を正確に測定することができる蓄電装置温度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の蓄電装置温度測定方法は、蓄電装置の残容量(SOC:State Of Charge)に応じて前記蓄電装置の内部インピーダンスの実部が変化しない周波数帯域を含む交流信号を用いて前記蓄電装置の内部インピーダンスの実部を測定し、当該内部インピーダンスの実部の測定値から前記蓄電装置の内部温度を算出することを特徴とする。
【0010】
この方法によれば、蓄電装置の内部インピーダンスの実部が変化しない周波数帯域を含む交流信号を用いて蓄電装置の内部インピーダンスの実部が測定されることから、蓄電装置の内部温度のみに依存し易い蓄電装置の内部インピーダンスの実部を測定でき、蓄電装置の内部温度を正確に測定できる。一方、蓄電装置の内部インピーダンスの実部が変化しない周波数の交流信号を用いて蓄電装置の内部インピーダンスの実部が測定されることから、独立して蓄電装置の残容量を演算する必要がない。この結果、煩雑な演算処理を必要とすることなく、蓄電装置の内部温度を正確に測定することが可能となる。
【0011】
上記蓄電装置温度測定方法においては、100kHz以上1MHz以下の周波数帯域の交流信号を用いて蓄電装置の内部インピーダンスの実部を測定し、当該内部インピーダンスの実部の測定値から前記蓄電装置の内部温度を算出することが好ましい。このように100kHz以上1MHz以下の周波数帯域の交流信号を用いて蓄電装置の内部インピーダンスの実部を測定することにより、蓄電装置の内部温度のみに依存し易い蓄電装置の内部インピーダンスの実部を効果的に測定することが可能となる。
【0012】
特に、上記蓄電装置温度測定方法においては、300kHzの周波数の交流信号を用いて蓄電装置の内部インピーダンスの実部を測定し、当該内部インピーダンスの実部の測定値から前記蓄電装置の内部温度を算出することが好ましい。このように300kHzの周波数の交流信号を用いて蓄電装置の内部インピーダンスの実部を測定することにより、蓄電装置の内部温度のみに依存する蓄電装置の内部インピーダンスの実部を的確に測定することが可能となる。
【0013】
本発明の蓄電装置温度測定方法は、蓄電装置の残容量(SOC:State Of Charge)に応じて前記蓄電装置の内部インピーダンスが変化しない周波数帯域を含む交流信号を用いて前記蓄電装置の内部インピーダンスを測定し、当該内部インピーダンスの測定値から前記蓄電装置の内部温度を算出することを特徴とする。
【0014】
この方法によれば、蓄電装置の内部インピーダンスが変化しない周波数帯域を含む交流信号を用いて蓄電装置の内部インピーダンスが測定されることから、蓄電装置の内部温度のみに依存し易い蓄電装置の内部インピーダンスを測定でき、蓄電装置の内部温度を正確に測定できる。一方、蓄電装置の内部インピーダンスが変化しない周波数の交流信号を用いて蓄電装置の内部インピーダンスが測定されることから、独立して蓄電装置の残容量を演算する必要がない。この結果、煩雑な演算処理を必要とすることなく、蓄電装置の内部温度を正確に測定することが可能となる。
【0015】
上記蓄電装置温度測定方法においては、10kHz以上100kHz以下の周波数帯域の交流信号を用いて蓄電装置の内部インピーダンスを測定し、当該内部インピーダンスの測定値から前記蓄電装置の内部温度を算出することが好ましい。このように10kHz以上100kHz以下の周波数帯域の交流信号を用いて蓄電装置の内部インピーダンスを測定することにより、蓄電装置の内部温度のみに依存し易い蓄電装置の内部インピーダンスを効果的に測定することが可能となる。
【0016】
特に、上記蓄電装置温度測定方法においては、30kHzの周波数の交流信号を用いて蓄電装置の内部インピーダンスを測定し、当該内部インピーダンスの測定値から前記蓄電装置の内部温度を算出することが好ましい。このように30kHzの周波数の交流信号を用いて蓄電装置の内部インピーダンスを測定することにより、蓄電装置の内部温度のみに依存する蓄電装置の内部インピーダンスを的確に測定することが可能となる。
【0017】
また、上記蓄電装置温度測定方法においては、前記蓄電装置の充電又は放電に用いられる直流電流に前記交流信号を重畳させることが好ましい。この場合には、蓄電装置の内部温度の測定に利用される交流信号が、蓄電装置の充電又は放電に用いられる直流電流に重畳されることから、蓄電装置を充電又は放電しながら、上記交流信号を用いて蓄電装置の内部インピーダンス又はその実部を測定することが可能となる。
【0018】
さらに、上記蓄電装置温度測定方法において、前記蓄電装置には、前記交流信号を検出するための電流検出部及び電圧検出部が備えられ、前記電流検出部及び前記電圧検出部の少なくとも一方を、前記蓄電装置の残容量の演算に用いることが好ましい。この場合には、蓄電装置の内部温度の測定に利用される交流信号を検出するための電流検出部及び電圧検出部の少なくとも一方が蓄電装置の残容量の演算に用いられることから、蓄電装置の残容量の演算に用いる構成(電流検出部又は電圧検出部)を蓄電装置の内部温度の測定に兼用できるので、蓄電装置の内部温度を測定するための構成要素数を削減しつつ、蓄電装置の内部温度を正確に測定することが可能となる。
【0019】
さらに、上記蓄電装置温度測定方法においては、複数の前記蓄電装置が直列に接続され、単一の前記電流検出部が前記複数の蓄電装置と直列に設けられる一方、前記電圧検出部が前記蓄電装置毎に設けられることが好ましい。この場合には、直列接続された複数の蓄電装置に単一の電流検出部が直列に接続されることから、複数の蓄電装置に対応する電流検出部を共用できるので、蓄電装置の内部温度を測定するための構成要素数を削減しつつ、蓄電装置の内部温度を正確に測定することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、煩雑な演算処理を必要とすることなく、蓄電装置の内部温度を正確に測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施の形態に係る蓄電装置温度測定方法が適用される測定システムの構成例を示す模式図である。
図2】上記実施の形態に係る測定システムの蓄電装置を構成するリチウムイオン二次電池の構造模式図である。
図3】上記実施の形態に係る測定システム内の蓄電装置の内部インピーダンスの実部における温度依存性を表すグラフの一例である。
図4】上記実施の形態に係る測定システム内の蓄電装置の内部インピーダンスの実部における残容量(SOC)依存性を表すグラフの一例である。
図5】上記実施の形態に係る測定システム内の蓄電装置の内部インピーダンスの実部に対する温度及び残容量(SOC)の影響を表すグラフの一例である。
図6】上記実施の形態の変形例に係る測定システム内の蓄電装置の内部インピーダンスにおける温度依存性を表すグラフの一例である。
図7】上記実施の形態の変形例に係る測定システム内の蓄電装置の内部インピーダンスにおける残容量(SOC)依存性を表すグラフの一例である。
図8】上記実施の形態の変形例に係る測定システム内の蓄電装置の内部インピーダンスに対する温度及び残容量(SOC)の影響を表すグラフの一例である。
図9】上記実施の形態に係る蓄電装置温度測定方法が適用される測定システムの好適な構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の一実施の形態に係る蓄電装置温度測定方法が適用される測定システムの構成例を示す模式図である。図2は、上記実施の形態に係る測定システムの蓄電装置を構成するリチウムイオン二次電池の構造模式図である。なお、本実施の形態に係る蓄電装置温度測定方法は、例えば、図1に示す蓄電装置101の内部温度を測定するための測定システム100を用いて行われる方法である。
【0023】
図1に示すように、測定システム100は、蓄電装置101に所定の周波数帯域の交流信号を供給するための交流信号源部102と、その所定の周波数帯域の交流信号に対して応答する電流及び電圧を検出する電流検出部103及び電圧検出部104と、入力された所定の周波数帯域の交流信号と、検出された電流及び電圧とを使用して蓄電装置101における内部温度を算出する内部温度算出部105とを含んで構成される。
【0024】
蓄電装置101は、例えば、リチウムイオン二次電池等の充電可能な化学電池で構成されるが、電気二重層キャパシタのようにイオンを利用して電気エネルギーを蓄積できる装置も含まれる。一般的に、蓄電装置101は、主に正極集電体A1、負極集電体C1、電解質E1及びセパレータS1とから構成される。例えば、リチウムイオン二次電池L1の場合、蓄電装置101は、図2に示すように、上述した構成要素の他に、正極集電体A1側の電気を貯める物質である正極活物質A51、負極集電体C1側の電気を溜める物質である負極活物質C51、電気の流れを良くするために加える導電助材D51、バインダーである結着材等を有している。
【0025】
リチウムイオン二次電池L1の場合、正極集電体A1としてアルミニウム(Al)、負極集電体C1として銅(Cu)、電解質E1として有機系の溶媒(C4H6O3等)とリチウム塩(LiPF6等)の溶質とから構成される溶液、正極活物質A51としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)、負極活物質C51として炭素(C)が最も使用されている。正極活物質A51としては、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)などで構成することもできる。負極活物質C51の炭素(C)には、層状に形成された黒鉛の結晶を用いており、層と層の間にリチウムがイオンの状態で蓄えられているのが特徴である。負極活物質C51としては、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)、一酸化珪素(SiO)、Sn合金やSi合金などで構成することもできる。
【0026】
交流信号源部102は、蓄電装置101の残容量(SOC:State Of Charge)に応じて蓄電装置101の内部インピーダンスの実部が変化しない周波数帯域を含む交流信号を発生させるためのものである。例えば、交流信号源部102は、100kHz以上1MHz以下の周波数帯域の交流信号を発生させることが好ましい。より好ましくは、交流信号源部102は、300kHzの周波数の交流信号を発生させる。なお、交流信号源部102が発生させる交流信号の周波数帯域については後述する。
【0027】
電流検出部103は、蓄電装置101が接続され、負荷106がかかっている回路の間に接続されている。電流検出部103は、電流を検出するための電流センサと、この電流センサの制御回路とから主に構成され、回路を流れる電流を検出する。電流センサとして、例えば、磁気抵抗素子を用いた小型電流センサを利用できる。電圧検出部104は、電圧を検出するための電圧センサと、この電圧センサの制御回路から主に構成され、蓄電装置101の電圧を検出する。
【0028】
内部温度算出部105は、交流信号源部102から入力された所定の周波数帯域の交流信号と、電流検出部103及び電圧検出部104で検出された電流及び電圧とを使用して、蓄電装置101における内部インピーダンスの実部(内部抵抗)を測定する。そして、内部温度算出部105は、この内部インピーダンスの実部の測定値から蓄電装置101における内部温度を算出する。負荷106は、例えば、蓄電装置101の直流電力を交流電力に変換するインバータやDC−DCコンバータなどの電力変換器で構成される。
【0029】
このような蓄電装置101における内部インピーダンスには、蓄電装置101における内部温度及び残容量(SOC)が影響することが知られている。以下、蓄電装置101における内部インピーダンスにおける温度依存性及びSOC依存性について説明する。なお、以下においては、適宜、蓄電装置101における内部インピーダンスの実部を、蓄電装置101における内部抵抗と呼ぶものとする。
【0030】
図3は、本実施の形態に係る測定システム100内の蓄電装置101の内部インピーダンスの実部における温度依存性を表すグラフの一例である。図4は、本実施の形態に係る測定システム100内の蓄電装置101の内部インピーダンスの実部におけるSOC依存性を表すグラフの一例である。図3及び図4においては、横軸に蓄電装置101に供給される交流信号の周波数を示し、縦軸に蓄電装置101における内部抵抗を示している。
【0031】
図3においては、蓄電装置101における内部抵抗に対する内部温度の影響を示す係数(温度係数)を示している。図3に示すように、温度係数は、10kHz以上3MHz以下の周波数帯域(図3に示す帯域a)の交流信号において、高温になるほど内部抵抗が大きくなり、それ以外の周波数帯域(10kHzより低い周波数帯域(図3に示す帯域b)と、3MHzより高い周波数帯域(図3に示す帯域c))の交流信号において、高温になるほど内部抵抗が小さくなる。すなわち、前者の周波数帯域においては、温度依存性が正となる一方、後者の周波数帯域においては、温度依存性が負となる。
【0032】
一方、図4においては、蓄電装置101における内部抵抗に対するSOCの影響を示す係数(SOC係数)を示している。図4に示すように、SOC係数は、300kHzより低い周波数帯域(図4に示す帯域a)の交流信号において、SOCが大きいほど内部抵抗が大きくなり、300kHzより高い周波数帯域(図4に示す帯域b)の交流信号において、SOCが大きいほど内部抵抗が小さくなる。すなわち、前者の周波数帯域においては、SOC依存性が正となる一方、後者の周波数帯域においては、SOC依存性が負となる。この場合、SOC係数は、300kHz付近の周波数の交流信号において、SOC依存性が正から負に切り替わる。言い換えると、300kHz付近の周波数の交流信号においては、蓄電装置101における内部抵抗に対するSOCの影響がない状態に近づく。
【0033】
図5は、本実施の形態に係る測定システム100内の蓄電装置101の内部インピーダンスの実部に対する蓄電装置101における内部温度及び残容量(SOC)の影響を表すグラフの一例である。図5においては、横軸に蓄電装置101に供給される交流信号の周波数を示し、縦軸に蓄電装置101における内部温度の影響をSOCの影響で除した値(内部温度/SOC)を示している。
【0034】
図5においては、蓄電装置101における内部抵抗に対する内部温度及び残容量(SOC)の影響を示す係数(温度/SOC係数)を示している。図5に示すように、温度/SOC係数は、100kHz以上1MHz以下の周波数帯域(図5に示す帯域a)の交流信号において、他の周波数帯域と比べて高い値を示し、特に、300kHzの周波数の交流信号において、最も高い値を示す。これは、図4に示したように、300kHz付近の周波数の交流信号において、蓄電装置101における内部抵抗に対するSOCの影響がない状態に近づくことに起因する。このことは、100kHz以上1MHz以下の周波数帯域の交流信号(特に、300kHz付近の周波数の交流信号)においては、SOCの影響を大きく受けることなく蓄電装置101の内部温度を測定できることを意味する。
【0035】
本実施の形態に係る蓄電装置温度測定方法においては、このように蓄電装置101における内部抵抗に対するSOCの影響がない状態に近づく周波数帯域の交流信号を、蓄電装置101のSOCに応じて蓄電装置101の内部インピーダンスの実部が変化しない周波数帯域を含む交流信号と定義する。そして、このような周波数帯域の交流信号を用いて蓄電装置101の内部インピーダンスの実部を測定し、当該内部インピーダンスの実部の測定値から蓄電装置101の内部温度を算出する。
【0036】
このように本実施の形態に係る蓄電装置温度測定方法においては、蓄電装置101の内部インピーダンスの実部が変化しない周波数帯域を含む交流信号を用いて蓄電装置101の内部インピーダンスの実部が測定される。これにより、蓄電装置101の内部温度のみに依存し易い蓄電装置101の内部インピーダンスの実部を測定できるので、蓄電装置101の内部温度を正確に測定できる。一方、蓄電装置101の内部インピーダンスの実部が変化しない周波数の交流信号を用いて蓄電装置101の内部インピーダンスの実部が測定されることから、独立して蓄電装置101の残容量を演算する必要がない。この結果、煩雑な演算処理を必要とすることなく、蓄電装置101の内部温度を正確に測定することが可能となる。
【0037】
より具体的には、本実施の形態に係る蓄電装置温度測定方法においては、100kHz以上1MHz以下の周波数帯域の交流信号を用いて蓄電装置101の内部インピーダンスの実部を測定し、当該内部インピーダンスの実部の測定値から蓄電装置101の内部温度を算出する。このように100kHz以上1MHz以下の周波数帯域の交流信号を用いて蓄電装置101の内部インピーダンスの実部を測定することにより、蓄電装置101の内部温度のみに依存し易い蓄電装置101の内部インピーダンスの実部を効果的に測定することが可能となる。
【0038】
特に、本実施の形態に係る蓄電装置温度測定方法においては、300kHzの周波数の交流信号を用いて蓄電装置101の内部インピーダンスの実部を測定し、当該内部インピーダンスの実部の測定値から蓄電装置101の内部温度を算出する。このように300kHzの周波数の交流信号を用いて蓄電装置101の内部インピーダンスの実部を測定することにより、蓄電装置101の内部温度のみに依存する蓄電装置101の内部インピーダンスの実部を的確に測定することが可能となる。
【0039】
なお、上記実施の形態に係る蓄電装置温度測定方法においては、蓄電装置101のSOCに応じて蓄電装置101の内部インピーダンスの実部が変化しない周波数帯域を含む交流信号を用いて蓄電装置101の内部インピーダンスの実部を測定し、当該内部インピーダンスの実部の測定値から蓄電装置101の内部温度を算出する場合について説明している。しかしながら、本発明に係る蓄電装置温度測定方法においては、内部インピーダンスの実部の代わりに、内部インピーダンス自体を測定対象とすることも可能である。
【0040】
以下、内部インピーダンス自体を測定対象とする場合の変形例について説明する。本実施の形態の変形例に係る蓄電装置温度測定方法においては、蓄電装置101のSOCに応じて蓄電装置101の内部インピーダンスが変化しない周波数帯域を含む交流信号を用いて蓄電装置101の内部インピーダンスを測定し、当該内部インピーダンスの測定値から蓄電装置101の内部温度を算出する。なお、この変形例に係る蓄電装置温度測定方法では、図1に示す測定システム100が適用できる。
【0041】
図6は、本実施の形態の変形例に係る測定システム100内の蓄電装置101の内部インピーダンスにおける温度依存性を表すグラフの一例である。図7は、本実施の形態の変形例に係る測定システム100内の蓄電装置101の内部インピーダンスにおけるSOC依存性を表すグラフの一例である。図6及び図7においては、横軸に蓄電装置101に供給される交流信号の周波数を示し、縦軸に蓄電装置101における内部インピーダンスを示している。
【0042】
図6においては、蓄電装置101における内部インピーダンスに対する内部温度の影響を示す係数(温度係数)を示している。図6に示すように温度係数は、3kHz以上500kHz以下の周波数帯域(図6に示す帯域a)の交流信号において、高温になるほど内部インピーダンスが大きくなり、それ以外の周波数帯域(3kHzより低い周波数帯域(図6に示す帯域b)と、500kHzより高い周波数帯域(図6に示す帯域c))の交流信号において、高温になるほど内部インピーダンスが小さくなる。すなわち、前者の周波数帯域においては、温度依存性が正となる一方、後者の周波数帯域においては、温度依存性が負となる。
【0043】
一方、図7においては、蓄電装置101における内部インピーダンスに対するSOCの影響を示す係数(SOC係数)を示している。図7に示すように、SOC係数は、30kHzより低い周波数帯域(図7に示す帯域a)の交流信号において、SOCが大きいほど内部インピーダンスが大きくなり、30kHzより高い周波数帯域(図7に示す帯域b)の交流信号において、SOCが大きいほど内部インピーダンスが小さくなる。すなわち、前者の周波数帯域においては、SOC依存性が正となる一方、後者の周波数帯域においては、SOC依存性が負となる。この場合、SOC係数は、30kHz付近の周波数の交流信号において、SOC依存性が正から負に切り替わる。言い換えると、30kHz付近の周波数の交流信号において、蓄電装置101における内部インピーダンスに対するSOCの影響がない状態に近づく。
【0044】
図8は、本実施の形態の変形例に係る測定システム100内の蓄電装置101の内部インピーダンスに対する蓄電装置101における内部温度及び残容量(SOC)の影響を表すグラフの一例である。図8においては、横軸に蓄電装置101に供給される交流信号の周波数を示し、縦軸に蓄電装置101における内部温度の影響をSOCの影響で除した値(内部温度/SOC)を示している。
【0045】
図8においては、蓄電装置101における内部インピーダンスに対する内部温度及び残容量(SOC)の影響を示す係数(温度/SOC係数)を示している。図8に示すように、温度/SOC係数は、10kHz以上100kHzの周波数帯域(図8に示す帯域a)の交流信号において、他の周波数帯域と比べて高い値を示し、特に、30kHzの周波数の交流信号において、最も高い値を示す。これは、図7に示したように、30kHz付近の周波数の交流信号において、蓄電装置101における内部インピーダンスに対するSOCの影響がない状態に近づくことに起因する。このことは、10kHz以上100kHz以下の周波数帯域の交流信号(特に、30kHz付近の周波数の交流信号)においては、SOCの影響を大きく受けることなく蓄電装置101の内部温度を測定できることを意味する。
【0046】
本実施の形態の変形例に係る蓄電装置温度測定方法においては、このように蓄電装置101における内部インピーダンスに対するSOCの影響がない状態に近づく周波数帯域の交流信号を、蓄電装置101のSOCに応じて蓄電装置101の内部インピーダンスが変化しない周波数帯域を含む交流信号と定義する。そして、このような周波数帯域の交流信号を用いて蓄電装置101の内部インピーダンスを測定し、当該内部インピーダンスの測定値から蓄電装置101の内部温度を算出する。
【0047】
このように本実施の形態の変形例に係る蓄電装置温度測定方法においては、上記実施の形態と同様に、蓄電装置101の内部インピーダンスが変化しない周波数帯域を含む交流信号を用いて蓄電装置101の内部インピーダンスが測定される。これにより、蓄電装置101の内部温度のみに依存し易い蓄電装置101の内部インピーダンスを測定できるので、蓄電装置101の内部温度を正確に測定できる。一方、蓄電装置101の内部インピーダンスが変化しない周波数の交流信号を用いて蓄電装置101の内部インピーダンスが測定されることから、独立して蓄電装置101の残容量を演算する必要がない。この結果、煩雑な演算処理を必要とすることなく、蓄電装置101の内部温度を正確に測定することが可能となる。
【0048】
より具体的には、本実施の形態の変形例に係る蓄電装置温度測定方法においては、10kHz以上100kHz以下の周波数帯域の交流信号を用いて蓄電装置101の内部インピーダンスを測定し、当該内部インピーダンスの測定値から蓄電装置101の内部温度を算出する。このように10kHz以上100kHz以下の周波数帯域の交流信号を用いて蓄電装置101の内部インピーダンスを測定することにより、蓄電装置101の内部温度のみに依存し易い蓄電装置101の内部インピーダンスを効果的に測定することが可能となる。
【0049】
特に、本実施の形態の変形例に係る蓄電装置温度測定方法においては、30kHzの周波数の交流信号を用いて蓄電装置101の内部インピーダンスを測定し、当該内部インピーダンスの測定値から蓄電装置101の内部温度を算出する。このように30kHzの周波数の交流信号を用いて蓄電装置101の内部インピーダンスを測定することにより、蓄電装置101の内部温度のみに依存する蓄電装置101の内部インピーダンスを的確に測定することが可能となる。
【0050】
以下、本実施の形態に係る蓄電装置温度測定方法が適用される測定システムの好適な構成例について説明する。図9は、本実施の形態に係る蓄電装置温度測定方法が適用される測定システム200の好適な構成例を示す模式図である。なお、図9において、図1と共通する構成については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。また、図9においては、図1に示す電流検出部103を「A」と示し、電圧検出部104を「V」と示している。さらに、図9においては、図1に示す内部温度算出部105を省略している。
【0051】
図9に示すように、測定システム200においては、複数(図9に示す例では4つ)の蓄電装置101a〜101dが直列に接続されている。そして、これらの蓄電装置101a〜101dに電流検出部(電流センサ)Aが直列に接続されている。それぞれの蓄電装置101a〜101dには、電圧検出部(電圧センサ)V1〜V4が接続されている。また、測定システム200においては、交流信号源部102がキャパシタを介して負荷106に並列に接続されている。
【0052】
電流検出部Aは、回路に流れる電流を検出する。電圧検出部V1〜V4は、蓄電装置101a〜101d毎の電圧を検出する。この場合において、これらの電流検出部A及び電圧検出部V1〜V4は、交流信号源部102から発生する交流信号の検出に用いられる。また、電流検出部A及び電圧検出部V(V1〜V4)の少なくとも一方は、蓄電装置101a〜101dの残容量の演算に用いられる。
【0053】
図9に示す測定システム200を適用した蓄電装置温度測定方法において、交流信号源部102から発生する交流信号は、蓄電装置101a〜101dの充電又は放電に用いられる直流電流に重畳される。これにより、蓄電装置101a〜101dの内部温度の測定に利用される交流信号が、蓄電装置101a〜101dの充電又は放電に用いられる直流電流に重畳されることから、蓄電装置101a〜101dを充電又は放電しながら、上記交流信号を用いて蓄電装置101a〜101dの内部インピーダンスを測定することが可能となる。
【0054】
また、測定システム200を適用した蓄電装置温度測定方法においては、蓄電装置101a〜101dの内部温度の測定に利用される交流信号を検出するための電流検出部A及び電圧検出部V(V1〜V4)の少なくとも一方が蓄電装置101a〜101dの残容量(SOC)の演算に用いられる。これにより、蓄電装置101a〜101dの残容量の演算に用いる構成(電流検出部A又は電圧検出部V(V1〜V4))を蓄電装置101a〜101dの内部温度の測定に兼用できるので、蓄電装置101a〜101d内の部品点数を削減しつつ、蓄電装置101a〜101dの内部温度を正確に測定することが可能となる。
【0055】
さらに、測定システム200を適用した蓄電装置温度測定方法においては、直列接続された複数の蓄電装置101a〜101dに単一の電流検出部Aが直列に接続されている。これにより、複数の蓄電装置101a〜101dに対応する電流検出部Aを共用できるので、蓄電装置101a〜101d内の部品点数を削減しつつ、蓄電装置101a〜101dの内部温度を正確に測定することが可能となる。
【0056】
図9に示す測定システム200においては、上記実施の形態の変形例に示すように、蓄電装置101a〜101dにおける内部インピーダンスを測定する態様に適用する場合について説明している。しかしながら、図9に示す測定システム200が適用される態様については、これに限定されるものではなく、上記実施の形態のように、蓄電装置101a〜101dにおける内部インピーダンスの実部を測定する態様に適用することもできる。たとえば、図示しないがロックイン検波回路やロックインアンプなどを追加することにより、位相を正確に捉えたり、微弱な信号を正確に測定することができ、さらに高精度な内部温度測定が可能となる。
【0057】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することができる。例えば、上記実施の形態における各素子の接続関係、大きさなどは、発明の趣旨を変更しない限りにおいて適宜変更することが可能である。また、上記実施の形態に示す構成、方法などは、適宜組み合わせて実施することが可能である。その他、本発明は、本発明の範囲を逸脱しないで適宜変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の蓄電装置温度測定方法は、蓄電装置の劣化状態(SOH)や残容量(SOC)を求める際に有用である。
【符号の説明】
【0059】
100、200 測定システム
101、101a〜101d 蓄電装置
102 交流信号源部
103、A 電流検出部
104、V1〜V4 電圧検出部
105 内部温度算出部
106 負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9