【実施例】
【0041】
『防蟻シートの調整例(I)』
まず、この調製例(I)では、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と高圧法により重合させた低密度ポリエチレン(HPLDPE)とを、以下の表1の配合割合(重量比)で混合し、これを押出成形して実施例A、実施例B及び比較例Cのフィルム(厚み100μm)を調製した。
【表1】
【0042】
なお、本調製例(I)では、上記直鎖状低密度ポリエチレンに、メタロセン触媒を用いて重合させたプライムポリマー社のエボリュー(登録商標)SPを使用すると共に、高圧法により重合させた低密度ポリエチレンには、旭化成工業社のサンテック(登録商標)LDを使用した。
【0043】
また、上記実施例Aのシート材と、比較例Cのシート材の硬さ(デュロメータ硬さ)及び引張弾性率を以下の方法で測定した。まず硬さについては、JIS-K-7215(プラスチックのデュロメータ硬さ試験方法)を参考にして、デュロメータD硬さを求めた。また、試験は厚さ100μmのフィルムを重ねて厚さ約8mmにした状態で行った。試験機は、ゴム・プラスチック硬度計アスカーD型およびゴム硬度計用定圧加重器CL-150(高分子機器(株)製)を使用した。一方、引張弾性率については、引張圧縮試験機(ミネベアTECHNO GRAPH AL-50kNB)を用いて試験を行った。
【0044】
その結果、硬さ(デュロメータ硬さ)は、実施例A(LLDPE)のシート材がHDD40、実施例C(HDLDPE)のシート材がHDD35であった。また、引張弾性率は、実施例A(LLDPE)のシート材が平均値156MPa(5回測定の各値,159,166,154,150,150(MPa))、実施例C(HDLDPE)のシート材が平均値227MPa(5回測定の各値,266,213,185,192,277(MPa))であった。
【0045】
「シロアリに対する防蟻効果の確認試験[1]」
この確認試験[1]では、上記調製例(I)で製造した各シートを、縦15cm、横20cmに切り取って木の枠に挟み込み、これをシロアリの巣の中に3ヶ月間放置して、食害の結果を観察した。その結果、以下の表2に示すように、実施例A及びBの防蟻シートは、比較例Cと比較して優れた防蟻効果を有していることが確認できた。
【表2】
【0046】
『防蟻シートの調製例(II)』
次に、この調製例(II)では、以下の態様で実施例1〜5及び比較例1〜4の防蟻シートを調製した。なお、本調製例においても、直鎖状低密度ポリエチレンには、プライムポリマー社のエボリュー(登録商標)SP(密度0.925g/cm
3)を使用し、また高圧法により重合させた低密度ポリエチレンには、旭化成工業社のサンテック(登録商標)LD(密度0.921g/cm
3)を使用した。また、念のため付言しておくと、本発明の防蟻性シートは以下の調製例に限定されない。
【0047】
「実施例1」
メタロセン触媒を用いて重合させた直鎖状低密度ポリエチレンを押出し成形(成形温度180℃)して得られた厚み100μmの防蟻性フィルム。
「実施例2」
上記実施例1で使用した直鎖状低密度ポリエチレンと高圧法により重合させた低密度ポリエチレンを同量配合し、押出し成形(成形温度175℃)して得られた厚み100μmの防蟻性フィルム。
「実施例3」
上記実施例1で使用した直鎖状低密度ポリエチレン100重量部にイミダクロプリドを0.05重童部配合し、押出し成形(成形温度180℃)して得られた厚み100μmの防蟻性フィルム。
「実施例4」
上記実施例1で使用した直鎖状低密度ポリエチレン100重量部にイミダクロプリドを0.03重量部配合し、押出し成形(成形温度180℃)して得られた厚み100μmの防蟻性フィルム。
「実施例5」
上記実施例1で使用した直鎖状低密度ポリエチレン100重量部にエトフェンプロックスを0.08重量部配合し、押出し成形(成形温度180℃)して得られた厚み100μmの防蟻性フィルム。
【0048】
「比較例1」
高圧法により重合させた低密度ポリエチレンを押出し成形(成形温度160℃)して得られた厚み100μmのフィルム。
「比較例2」
上記比較例1で使用した低密度ポリエチレン100重量部にイミダクロプリドを0.05重量部配合し、押出し成形(成形温度160℃)して得られた厚み100μmの防蟻性フィルム。
「比較例3」
エチレンビニルアセテート(酢酸ビニル10重量%含有)を押出し成形して得られた厚み200μmのフィルム(密度1.00g/cm
3)。
「比較例4」
上記比較例3で使用したエチレンビニルアセテート100重量部にイミダクロプリド0.05重量部とシラフルオフェン0.05重量部とを配合し、押出し成形して得られた厚み200μmの防蟻性フィルム。
【0049】
「シロアリに対する防蟻効果の確認試験[2]」
この確認試験[2]では、上記調製例(II)で調製した各シートの防蟻効果を、以下の試験方法により確認した。
【0050】
<試験方法>
まず、各シートを円形状に切り取ってシート片を各種5枚ずつ用意する。そして、全てのシート片を60℃の恒温槽に一旦保存し、保存期間が1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月を経過するごとにシート片を1枚ずつ取り出して、これらを下記試験に用いる。なお、60℃での保存期間6ヶ月は、常温(25℃)で保存した場合の10年間、60℃での保存期間12ヶ月は、常温(25℃)で保存した場合の20 年間に相当する。
【0051】
次に、試験に用いる器具について説明する。縦向きの2本のガラス管(内径約50mm、長さ約120mmの円筒管)を、横向きのガラス管(内径約20mm、長さ約30mmの円筒管)で連通状態に連結して成るU字状の容器に対して、予め乾燥殺菌した砂壌土を一方の縦管に底辺から40mmの高さまで詰め、更に水を散布し含水率25%の土壌とする。
【0052】
また、もう一方の縦向きのガラス管にも、砂壌土を底辺から20mmの高さまで詰め、同様に含水率25%となるように水を散布する。そしてまた、横向きガラス管にも同様の含水率に調整した砂壌土を詰め、U字状ガラス容器の下側部分が全て砂壌土で充填された状態となるようにする。
【0053】
そして、上記40mmの高さまで詰めた一方の縦管の砂壌土の上に、シート片をピッタリと円筒内壁との間に隙間が生じないように設置する。その後、設置したシート片の上に砂壌土を更に20mmの高さまで詰め、詰め終わった砂壌土の上にアカマツ木片(一辺が約30mmの立方体状のもの)を載置する。
【0054】
また更に、上記砂壌土を20mmの高さまで詰めたもう一方の縦管には、イエシロアリ(Coptotermes fo mosanous SHIRAKI)の職蟻300頭と兵蟻30頭を投入する。またここには餌用としてろ紙を細かく裁断したものも投入する。最後に、両縦管の開口部をアルミ箔で軽く閉じて(密封しない)、試験容器を28℃±2℃、相対湿度60%以上の恒温槽(暗所)に21日間静置し、白蟻の貫通状態を観察する。
【0055】
そして上記試験の結果、以下の表3に示すように、実施例1〜5の方が比較例1〜4よりも防蟻剤の量が少ないにもかかわらず、優れた防蟻効果を有していることが分かった。特に、防蟻剤の有無または配合量の条件が同じ実施例1と比較例1、実施例3と比較例2を比べれば、防蟻効果の持続性が大きく向上しているのが分かる。
【表3】