(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吐出装置が、動力を受けて偏心回転する雄ねじ型のロータと、内周面が雌ねじ型に形成されたステータとを有する一軸偏心ねじポンプを備えたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の吐出システム。
【発明を実施するための形態】
【0021】
≪吐出システム10の装置構成について≫
以下、本発明の一実施形態に係る吐出システム10について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に示すように、吐出システム10は、吐出装置20と、補充装置100と、流動体供給装置160と、制御装置170とを主要な構成として備えている。吐出システム10は、吐出装置20を補充装置100に対して接続することにより、流動体供給装置160から供給されてきた流動体を吐出装置20に対して補充可能とされている。また、吐出システム10は、吐出装置20を補充装置100から分離させた状態で作動させることにより、補充されている流動体を塗布等のために吐出可能とされている。すなわち、吐出システム10は、吐出装置20に対して流動体供給用の配管あるいはホース等を非接続の状態において、補充装置100や流動体供給装置160に対して独立的に吐出装置20を作動させ、流動体を塗布等することができるシステム構成とされている。
【0022】
図2に示すように、吐出装置20は、吐出側緩衝部22(緩衝装置)と、吐出部24と、吐出側脱着部26とを具備している。吐出側緩衝部22は、吐出用の流動体を吐出部24に補充するために吐出装置20と補充装置100とを接続あるいは分離することに伴う吐出装置20の内圧変動を緩衝するために設けられたものである。吐出側緩衝部22は、タンク等の容器によって構成することが可能であるが、本実施形態では、本実施形態では吐出側緩衝部22として
図3に示すようなシリンダ機構30を備えたものが採用されている。
【0023】
具体的には、
図3(b)に示すように、吐出側緩衝部22は、いわゆるエアシリンダによって構成されたシリンダ機構30を備えている。シリンダ機構30は、ケーシング32と、ピストン34とを備えている。
図3(c)に示すように、吐出側緩衝部22は、駆動源たる空気供給源から圧縮空気を供給可能とされている。
【0024】
図3(b)に示すように、ケーシング32は、下側ケーシング38と、上側ケーシング40との組み合わせによって構成される容器である。下側ケーシング38と上側ケーシング40との接続部分には、それぞれ雌ネジ38a及び雄ネジ40aが形成されており、両者を螺合させることによりケーシング32が組み立てられている。また、下側ケーシング38の下端部(雌ネジ38aとは反対側)には、接続部38bが設けられている。
【0025】
ピストン34は、ケーシング32の内部において、ケーシング32の軸線方向に自由にスライド可能とされている。ピストン34は、ピストン本体34aに対してピストンアダプタ34bを介してピストンロッド34cを接続した構成とされている。ピストン34は、ケーシング32内の空間を上側ケーシング40側の第一室42と、下側ケーシング38側の第二室44とに区画している。第一室42は、駆動源たる空気供給源から供給された圧縮空気がケーシング32に設けられたポート46を介して導入される区画であり、第二室44は、流動体が流出入する区画である。シリンダ機構30は、駆動源を作動させることにより、第二室44の容積を変動させうる。第二室44は、接続部38bと連通しており、接続部38bを介して第二室44に対して流動体を流出入させることができる。
【0026】
また、吐出側緩衝部22には、ピストン34の位置により補充量を検出するための補充量検出手段(図示せず)が設けられている。補充量検出手段は、いかなるものによって構成されていても良い。具体的には、ピストン34に設けられたマグネット(図示せず)が検知範囲内に出入りすることにより接点がオン状態、及びオフ状態に切り替わるオートスイッチを補充量検出手段として採用し、ピストン34の可動範囲の上限位置及び下限位置に設けた構成とすることができる。また、吐出側緩衝部22の内圧を検知可能な圧力センサを補充量検出手段として採用することができる。この場合、内圧の上限値及び下限値を予め規定しておくことにより、内圧が上限値に達することでピストン34が上限位置に到達したものと判断し、内圧が下限値に達することでピストン34が上限位置に到達したものと判断することができる。
【0027】
吐出部24は、回転容積式のポンプによって構成されている。本実施形態において、吐出部24は、いわゆる一軸偏心ねじポンプによって構成されている。吐出部24は、ケーシング50の内部に、ロータ52、ステータ54、及び動力伝達機構56等を収容した構成とされている。ケーシング50は、金属製で筒状の部材であり、長手方向一端側に第一開口部60が設けられている。また、ケーシング50の外周部分には、第二開口部62が設けられている。第二開口部62は、ケーシング50の長手方向中間部分に位置する中間部64においてケーシング50の内部空間に連通している。
【0028】
第一開口部60及び第二開口部62は、それぞれ吐出部24をなす一軸偏心ねじポンプの吸込口及び吐出口として機能する部分である。吐出部24は、ロータ52を正方向に回転させることにより、第一開口部60を吐出口、第二開口部62を吸込口として機能させることができる。また、メンテナンス等のためにロータ52を逆方向に回転させることにより、第一開口部60を吸込口、第二開口部62を吐出口として機能させ、ケーシング50の内部空間等の洗浄等を行うことができる。
【0029】
ステータ54は、ゴム等の弾性体、又は樹脂等によって形成された略円筒形の外観形状を有する部材である。ステータ54の内周壁66は、n条で単段あるいは多段の雌ネジ形状とされている。本実施形態においては、ステータ54は、2条で多段の雌ねじ形状とされている。また、ステータ54の貫通孔68は、ステータ54の長手方向のいずれの位置において断面視しても、その断面形状(開口形状)が略長円形となるように形成されている。
【0030】
ロータ52は、金属製の軸体であり、n−1条で単段あるいは多段の雄ねじ形状とされている。本実施形態においては、ロータ52は、1条で偏心した雄ねじ形状とされている。ロータ52は、長手方向のいずれの位置で断面視しても、その断面形状が略真円形となるように形成されている。ロータ52は、上述したステータ54に形成された貫通孔68に挿通され、貫通孔68の内部において自由に偏心回転可能とされている。
【0031】
ロータ52をステータ54に対して挿通すると、ロータ52の外周壁70とステータ54の内周壁66とが両者の接線で密接した状態になり、ステータ54の内周壁66とロータ52の外周壁70との間に流体搬送路72(キャビティ)が形成される。流体搬送路72は、ステータ54やロータ52の長手方向に向けて螺旋状に伸びている。
【0032】
流体搬送路72は、ロータ52をステータ54の貫通孔68内において回転させると、ステータ54内を回転しながらステータ54の長手方向に進む。そのため、ロータ52を回転させると、ステータ54の一端側から流体搬送路72内に流体を吸い込むと共に、この流体を流体搬送路72内に閉じこめた状態でステータ54の他端側に向けて移送し、ステータ54の他端側において吐出させることが可能である。
【0033】
動力伝達機構56は、駆動機74から上述したロータ52に対して動力を伝達するためのものである。動力伝達機構56は、動力伝達部76と偏心回転部78とを有する。動力伝達部76は、ケーシング50の長手方向の一端側に設けられている。また、偏心回転部78は、中間部64に設けられている。偏心回転部78は、動力伝達部76とロータ52とを動力伝達可能なように接続する部分である。偏心回転部78は、従来公知のカップリングロッドや、スクリューロッドなどによって構成された連結軸98を備えている。そのため、偏心回転部78は、駆動機74を作動させることにより発生した回転動力をロータ52に伝達させ、ロータ52を偏心回転させることが可能である。
【0034】
図2に示すように、吐出側脱着部26は、上述した吐出部24をなすケーシング50に対して接続されている。
図2(c),(d)に示すように、吐出側脱着部26は、吐出側脱着部本体80に対し、吐出側接続具82とピン84とを取り付けた構成とされている。吐出側脱着部本体80は、円筒状の筒部80aの基端部に矩形状の接続部80bを設けた構成とされている。筒部80aの先端側には、吐出側接続具82を嵌め込むための嵌込部80cが設けられている。また、筒部80aの内部には、嵌込部80cから接続部80bに亘って貫通するように連通路80dが形成されている。吐出側脱着部本体80は、連通路80dと、吐出部24に設けられた第二開口部62とが連通した状態になるように位置決めされた状態でケーシング50に対して取り付けられている。また、筒部80aの先端側の外周部には、Oリング等のシール部材86が取り付けられている。
【0035】
吐出側接続具82は、後に詳述するように、補充装置100に設けられた補充側接続具134との組み合わせにより、吐出装置20と補充装置100とを接続するための接続装置140を構成するものである。吐出側接続具82は、補充側接続具134に差し込まれる雄型のプラグである。吐出側接続具82は、吐出側脱着部本体80の筒部80aに設けられた嵌込部80cに嵌め込まれ、連通路80dと連通している。
【0036】
さらに詳細には、吐出側接続具82は、
図17に示すようにシリンダ部82aの内部に軸線方向に摺動可能なピストン部82b(動作部)を有する。シリンダ部82aは、断面形状が軸線方向先端側に向けて凸形状となるように形成されており、先端側に挿入部82fを有する。シリンダ部82aの内周側には、ピストン部82bの外周面との間に流路82cを構成する凹部82dが形成されている。流路82cは、連通路80dと連通している。ピストン部82bは、バネ82eによってシリンダ部82aの軸線方向先端側に向けて付勢されている。ピストン部82bは、バネ82eによる付勢方向とは逆方向に押圧力を作用させることにより、軸線方向基端側に向けて摺動させ、流路82cを開閉することができる。また、ピストン部82bは、通路82c内で動作するのではなく、通路82cを外れた位置において動作する。従って、流路82cの開閉に際してピストン部82bが軸線方向に摺動したとしても、流路82cの容積は変化しない。
【0037】
ピン84は、後に詳述するように、補充装置100側に設けられた鉤溝144との組み合わせにより離反防止機構150を構成するものであり、吐出装置20と補充装置100とを接続する際に両者を位置決めし、吐出装置20と補充装置100との離反を抑制するために使用される。ピン84は、筒部80aの基端側(接続部80b側)の位置において、筒部80aの外周面に対して略垂直方向に突出するように設けられている。ピン84は、筒部80aに対して2本、周方向に略180度の間隔を開けて設けられている。
【0038】
図1に示すように、吐出装置20は、いわゆる多関節ロボット等のように複数軸の自由度を有するマニピュレータ90に対して取り付けられている。そのため、吐出装置20をマニピュレータ90により移動させつつ、吐出装置20から流動体を吐出させることにより、予め規定されている流動体の塗布パターンに則って流動体を各種部品等に塗布することができる。また、
図9〜
図12に示す順でマニピュレータ90により吐出装置20を移動等させ、吐出側接続具82と後に詳述する補充側接続具134とを位置合わせした状態で近接させることにより、吐出装置20と補充装置100とを接続することができる。またこれとは逆の動作をさせることにより、吐出装置20と補充装置100とを分離させることができる。
【0039】
補充装置100は、吐出装置20に対して流動体を補充するための補充ステーションとして機能するものである。
図1及び
図5に示すように、補充装置100は、補充側緩衝部102(緩衝装置)と、補充側脱着部104と、バルブ106とを備えている。補充側緩衝部102は、吐出部24に対する流動体の補充のために吐出装置20及び補充装置100を接続及び分離することに伴う補充装置100内の内圧変動を緩衝するために設けられたものである。補充側緩衝部102は、タンク等の容器、あるいは上述した吐出側緩衝部22と同様にシリンダ機構30を備えたものとすることが可能であるが、本実施形態では
図6(d)に示すようなアブソーバ機構110を備えたものとされている。
【0040】
具体的には、アブソーバ機構110は、ケーシング112と、ピストン114と、スプリング116とを備えており、スプリング116の弾性力を利用して作動させうる構成とされている。ケーシング112は、円筒状の筒体であり、軸線方向一端側に接続部118を有する。また、ピストン114は、ケーシング112の内部において軸線方向に自由にスライド可能とされている。ピストン114は、ピストン本体114aに対してピストンロッド114bを接続した構成とされている。ケーシング112の内部空間は、ピストン本体114aを介して一方側の第一室
122と、他方側において接続部118と連通した第二室
120とに区画されている。スプリング116は、
第一室122内に設けられている。これにより、ピストン本体114aが
第二室120側に付勢されている。接続部118を介して流動体が流入すると、スプリング116の付勢力に反してピストン本体114aが
第一室122側に押し戻され、
第二室120が拡張する。
【0041】
図5に示すように、補充側脱着部104は、補充側脱着部本体130に対して密閉空間形成体132を接続して一体化した構成とされている。図
6(d)に示すように、補充側脱着部本体130は、中空の嵌込部130aを有すると共に、嵌込部130aと連続し天面側に突出するように形成された接続部130bとを備えている。嵌込部130aには、後に詳述する補充側接続具134が嵌め込まれ、一体化されている。また、接続部130bの外周部には、Oリング等のシール部材136が装着されている。
【0042】
また、補充側脱着部本体130は、嵌込部130aと連通するように形成された連通路130cを備えている。さらに、連通路130cの両端には、接続用ポート130d,130eが設けられている。接続用ポート130dには、補充側緩衝部102の接続部118が配管接続されている。また、接続用ポート130eには、バルブ106が配管接続されている。
【0043】
補充側接続具134は、吐出装置20側に設けられた吐出側接続具82との組み合わせにより吐出装置20と補充装置100とを接続するための接続装置140を構成するものである。補充側接続具134は、吐出側接続具82が差し込まれる雌型のソケットである。補充側接続具134には、例えばストップバルブ機構等のバルブ機構(図示せず)が内蔵されたものを使用することができる。補充側接続具134は、補充側脱着部本体130の嵌込部130aに嵌め込まれて一体化され、補充側脱着部本体130内に形成された連通路130cと連通している。
【0044】
本実施形態では、補充側接続具134として、
図17に示すようなソケットが採用されている。さらに詳細には、補充側接続具134は、シリンダ部134aと、流路構成部134bと、軸線方向に摺動可能なピストン部134c(動作部)とを備えている。シリンダ部134aは、筒状の部材であり、上述した吐出側接続具82の挿入部82fを挿入可能な開口径を有する。流路構成部134bは、シリンダ部134aと略同心となるように配置されている。流路構成部134bの内部には、流路134dが形成されている。補充側接続具134を嵌込部130aに嵌め込んだ状態において、流路134dは、連通路130cと連通した状態になる。流路134dの末端部(連通路130cとの接続側とは反対側の端部)は、流路構成部134bの外面において開口している。
【0045】
ピストン部134cは、シリンダ部134a及び流路構成部134bと略同心となるように配置されている。ピストン部134cは、流路構成部134bの表面に沿って摺動可能とされている。ピストン部134cは、バネ134eによってシリンダ部134a及び流路構成部134bの軸線方向先端側に向けて付勢されている。これにより、常時は、流路構成部134bに形成された流路134dの末端開口部分がピストン部の内周面によって閉塞されている。一方、ピストン部134cは、バネ134eによる付勢方向とは逆方向に押圧力を作用させることにより、軸線方向基端側に向けて摺動させることができる。
【0046】
補充側接続具134は、バネ134eによる付勢力に反してピストン部134cを流路134dの末端開口部分よりも基端側に移動させることで流路134dを開いた状態とすることができる。また、付勢力によって先端側にピストン部134cが先端側に移動した状態においては、流路134dが閉じた状態になる。ピストン部134cは、通路134d内ではなく、通路134dを外れた位置において動作する。従って、流路134dの開閉のためにピストン部134cが軸線方向に摺動しても、流路134dの容積変化は生じない。
【0047】
補充側接続具134は、吐出側接続具82を差し込むことで両者を接続状態とし、流路82c,134dを連通させることができる。具体的には、補充側接続具134に対して吐出側接続具82を接続する場合には、吐出側接続具82の挿入部82fが補充側接続具134のシリンダ部134aに差し込まれる。この際、
図17(b)に示すように、補充側接続具134側のピストン部134cが、挿入部82fによって押し込まれる。これに伴い、ピストン部134cは、バネ134eによる付勢方向とは逆向きに摺動する。一方、吐出側接続具82側に設けられたピストン部82bは、補充側接続具134側の流路構成部134bの先端部分によって軸線方向に押圧される。これにより、ピストン部82bが、バネ82eの付勢方向とは逆向きに摺動する。
【0048】
上述したようにして吐出側接続具82の挿入部82fを補充側接続具134のシリンダ部134a内に差し込む動作を継続すると、やがて
図17(c)に示すように、ピストン部82b,134cによって閉塞されていた流路82c,134dの末端開口部分が開き、互いに連通した状態になる。このようにして吐出側接続具82及び補充側接続具134を接続する過程において、ピストン部82b,134cが動作するが、このとき流路82c,134dの容積変動が生じない。また、吐出側接続具82及び補充側接続具134を離反(接続解除)させる場合についても、上述したのとは逆の動作を行うだけであり、流路82c,134dの容積変動が生じない。そのため、吐出側接続具82及び補充側接続具134を接続・離反させても、流路82c,134dの容積変動に伴う流動体の圧力変動等が生じない。そのため、吐出側接続具82及び補充側接続具134の接続動作及び離反動作の際に流動体が高圧になって漏洩したり、あるいは、流動体が負圧になって気泡が発生するなどの不具合を防止することができる。
【0049】
なお、本実施形態では、吐出側接続具82を雄型のソケットとし、補充側接続具134を雌型のソケットとした例を示したが、本発明はこれに限定される訳ではなく、ソケットの雌雄を入れ替えても良い。吐出側接続具82を雌型、補充側接続具134を雄型とした場合には、流動体の補充作業に伴い吐出側接続具82に付着する流動体の付着量を最小限に抑制でき、吐出側接続具82からワーク等に対して予期せず流動体が落下する等の不具合を抑制できる。
【0050】
図5に示すように、密閉空間形成体132は、上述した補充側脱着部本体130の天面側に着脱可能なように接続される筒状の部材である。具体的には、密閉空間形成体132は、周方向に複数(本実施形態では4つ)、軸線方向に延びるように設けられたボルト挿通孔132aにボルト138を挿通し、補充側脱着部本体130の天面に設けられているネジ孔130fに各ボルト138を締結させることにより、補充側脱着部本体130と一体化されている。補充側脱着部本体130及び密閉空間形成体132の一体化に際し、密閉空間形成体132の底面(補充側脱着部本体130側)に設けられたピン孔(図示せず)、及び補充側脱着部本体130の天面側に設けられたピン孔130gに亘って位置決ピン142が装着される。これにより、補充側脱着部本体130及び密閉空間形成体132が周方向に一定の位置関係となるように位置決めされた状態で接続されている。また、接続部130bの外周部に装着されているシール部材136により、補充側脱着部本体130及び密閉空間形成体132の間がシールされている。
【0051】
密閉空間形成体132をなす筒体の上端部(補充側脱着部本体130とは反対側の端部)には、鉤溝144が形成されている。鉤溝144は、吐出装置20側に設けられているピン84との組み合わせにより、離反防止機構150を構成するものである。離反防止機構150は、補充装置100から吐出装置20に向けて流動体を補充する際に作用する力により、吐出装置20と補充装置100とが離反しないように保持するための機構である。具体的には、鉤溝144は、正面視が略「L」字型の溝であり、密閉空間形成体132の上端部に向けて解放された溝部分と、密閉空間形成体132の周方向に延びるように形成された溝部分とが連続したものである。従って、吐出装置20の吐出側脱着部26に設けられたピン84と鉤溝144とを位置合わせした状態において、吐出側脱着部26を密閉空間形成体132内に差し込んで周方向に回転させることにより、ピン84が鉤溝144から抜けないように係合させることができる。
【0052】
密閉空間形成体132の外周部には、排気ポート(図示せず)が設けられている。排気ポートは、密閉空間形成体132の内外を連通するように接続されている。
図1に示すように、密閉空間形成体132は、排気ポートを介して真空ポンプ等の減圧装置148に対して接続されている。
【0053】
流動体供給装置160は、流動体が貯留された貯留槽162から流動体を汲み上げ、補充装置100に圧送することができる。流動体供給装置160は、補充装置100に設けられたバルブ106に対して配管接続されている。そのため、バルブ106を適宜開閉することにより、補充装置100に対する流動体の供給制御を実施できる。
【0054】
制御装置170は、吐出システム10を構成する吐出装置20、マニピュレータ90、補充装置100、流動体供給装置160等、各部の動作制御を実施するためのものである。制御装置170は、吐出装置20による流動体の吐出動作、マニピュレータ90の動作、吐出装置20及び補充装置100を中心として実施される流動体の補充動作等について、動作制御することができる。
【0055】
≪吐出システム10の動作について≫
以下、
図7に示すフローチャート、及び
図8に示すタイミングチャートを参照しつつ、上述した吐出システム10の動作について吐出装置20に対する流動体の補充動作を中心に説明する。吐出システム10は、ステップ1において吐出装置20が作動し、流動体の吐出動作が実施される。吐出装置20の作動後、ステップ2(補充要求検出工程)において流動体を吐出装置20に対して補充すべきであるとの要求が出力されたとの判断が制御装置170によってなされた場合には、制御フローがステップ3に移行する。ここで、吐出装置20への流動体の補充要求の有無についての判断は種々の判断基準に基づいて実施することが可能であるが、例えば吐出装置20に設けられた吐出側緩衝部22の内圧を検知可能とされた圧力センサ(図示せず)が所定の圧力以下になることを条件として、吐出側緩衝部22内においてピストン34が下限位置に到達し、流動体の補充要求がオン状態になったものと判断することが可能である。また、ピストン34の位置に応じてオンオフするオートスイッチを補充量検出手段として採用した場合には、このオートスイッチの検知結果に基づきピストン34が下限位置に到達したとの判断がなされた場合に、流動体の補充要求がオン状態になったものと判断することができる。
【0056】
ステップ2において流動体補充要求が有るものと判断され、制御フローがステップ3に移行すると、
図9に示すようにマニピュレータ90により吐出装置20が補充装置100側に移動される。その後、
図10に示すように、吐出装置20側に設けられた吐出側脱着部本体80の筒部80aが、補充装置100側に設けられた筒状の密閉空間形成体132の上端部から差し込まれる。本段階(ステップ3)においては、
図10(b)に示すように吐出装置20側の吐出側接続具82と補充側接続具134とが未接続の状態とされる。この状態においては、密閉空間形成体132の上端側において、筒部80aの外周に装着されているシール部材86によって筒部80aの外周面と密閉空間形成体132の内周面との隙間がシールされた状態になる。一方、密閉空間形成体132の下端側においては、接続部130bの外周に装着されているシール部材136によって、接続部130bの外周面と密閉空間形成体132の内周面との隙間がシールされた状態になる。従って、ステップ3の状態においては、密閉空間形成体132の内側に密閉空間135が形成され、この密閉空間135内において吐出側接続具82及び補充側接続具134が非接続状態で配置された状態とされる。
【0057】
上述したようにして密閉空間形成体132内に密閉空間135が形成されると、制御フローがステップ4に移行する。ステップ4においては、密閉空間135を略真空状態とすべく、密閉空間形成体132の排気ポート146に配管接続された減圧装置148を作動させ、真空引きを開始する。なお、真空引きの開始の契機となる、筒部80aと密閉空間形成体132との接続状態の検知は、種々の方法により実施することが可能である。具体的には、筒部80aが密閉空間形成体132内に挿入されたことを検出するための真空リミットスイッチ172を
図13に示すように補充装置100に隣接する位置に設けておき、この真空リミットスイッチ172から出力される信号に基づいて制御装置170が筒部80aが密閉空間形成体132に挿入され、密閉空間135が形成されたものと判断するようにすることができる。
【0058】
ステップ4における真空引きの開始後、ステップ5において密閉空間135の真空度を検知するための真空センサ(図示せず)により目標とする真空度に到達したことが確認されると、制御フローがステップ6(接続工程)に移行する。ステップ6においては、制御装置170によるマニピュレータ90の動作制御により、吐出装置20が吐出側接続具82の軸線方向に移動し、補充装置100に近接する。この際、制御装置170からマニピュレータ90には、補充装置100に対して吐出装置20を所定の速度V1で近接するように動作速度を制御する信号(動作速度制御信号)が出力される。これにより、
図11に示すように、密閉空間135内において、吐出側接続具82及び補充側接続具134が速度V1で近接し、両接続具82,134(接続装置140)が接続状態とされる。
【0059】
接続装置140が接続状態とされると、ステップ7において離反防止機構150がロック状態とされる。具体的には、ステップ6において吐出側接続具82と補充側接続具134とが接続される際には、
図12(c)に示すように吐出側脱着部本体80の外周部に設けられたピン84についても密閉空間形成体132の軸線方向に進行し、密閉空間形成体132に設けられた鉤溝144に進入した状態になる。ステップ7においては、
図12(a)において矢印で示すようにマニピュレータ90によって吐出装置20を密閉空間形成体132の周方向に旋回させることにより、
図12(b)に示すように吐出装置20が回転すると共に、
図12(d)に示すように鉤溝144内に沿ってピン84が移動して係合した状態になる。これにより、離反防止機構150がロック状態になり、吐出装置20と補充装置100とが接続された状態になる。ピン84が鉤溝144の終端部近傍に到達して離反防止機構150がロック状態になったことの検知は、種々の方法によって実施することが可能である。具体的には、ピン84が鉤溝144の終端部近傍に到達する位置まで吐出装置20が回動したことを検出するためのドッキング完了リミットスイッチ174(接続状態検知手段)を
図13に示すように補充装置100に隣接する位置に設けておき、このドッキング完了リミットスイッチ174から出力される信号に基づいて吐出装置20と補充装置100とが接続され、離反防止機構150がロック状態になったのか否かを検出できる。
【0060】
上述したようにして接続装置140の接続が完了し、離反防止機構150がロック状態とされると、ステップ8において減圧装置148が停止され、真空引きが終了される。その後、制御フローがステップ9(圧送許容工程)に進み、補充装置100から吐出装置20への流動体の補充が開始される。具体的には、ステップ9においては、補充装置100に設けられたバルブ106が開状態とされ、流動体供給装置160から圧送されてきた流動体が吐出側接続具80及び補充側接続具134からなる接続装置140を介して吐出装置20側に圧送される。すなわち、本実施形態では、上述したステップ7において吐出装置20及び補充装置の接続がドッキング完了リミットスイッチによって検知されることを条件の一つとしつつ、さらにステップ8の真空引きが完了することを条件として、バルブ106が開状態とされる。吐出装置20側に圧送された流動体は、吐出側脱着部26を介して吐出部24のケーシング50内に補充される。ここで、上述したように、吐出装置20及び補充装置100には吐出側緩衝部22及び補充側緩衝部102が設けられている。これにより、補充装置100から吐出装置20への流動体の補充に伴う内圧変動が緩衝され、吐出装置20及び補充装置100の内圧が大気圧近傍の低圧に維持される。
【0061】
上述したようにして流動体の補充が開始されると、制御フローがステップ10に進み、流動体が満状態になるまで吐出装置20側に補充されたか否かの確認が制御装置170によってなされる。ここで、吐出装置20に流動体が十分補充されたことを検出する方法等については、種々のものとすることができる。具体的には、吐出装置20の吐出側緩衝部22の内圧検知用の圧力センサ(図示せず)が所定の圧力以上を検出することを条件として流動体が十分に補充され、補充要求がオフ状態になったものと判断することが可能である。また、ピストン34の位置に応じてオンオフするオートスイッチを補充量検出手段として採用した場合には、ピストン34が上限位置に設けられたオートスイッチの検知領域に到達し、上限位置のオートスイッチがオン状態になった場合に、流動体の補充要求がオフ状態になったものと判断することができる。
【0062】
ステップ10において、吐出装置20に対して流動体が満状態になるまで補充されたことが確認されると、制御フローがステップ11(圧送阻止工程)に進められ、バルブ106が閉止状態とされる。これにより、補充装置100から吐出装置20への流動体の補充が完了する。このようにして流動体の補充が完了すると、制御フローがステップ12に進められ、離反防止機構150が解除状態とされる。具体的には、マニピュレータ90を作動させることにより、ステップ7において離反防止機構150をロック状態とした場合とは逆方向に向けて吐出装置20を旋回させた後、吐出装置20を補充装置100から軸線方向に離反させる。このようにして、なすピン84が鉤溝144から抜けた状態になると、離反防止機構150のロックが解除された状態になる。
【0063】
離反防止機構150のロック解除が完了すると、制御フローがステップ13に進む。ステップ13においては、さらに吐出装置20が補充装置100から軸線方向に離反する方向に移動する。この際、制御装置170からマニピュレータ90には、補充装置100から吐出装置20を所定の速度V2で離反させるように動作速度を制御する信号(動作速度制御信号)が出力される。この離反速度V2は、上述したステップ6における接続速度V1以下(|V1|≧|V2|)とされる。これにより、吐出側接続具82及び補充側接続具134が接続動作時以下の速度V2で離反し、吐出側接続具82が補充側接続具134から抜けて接続解除された状態になる。以上により、一連の動作フローが完了する。
【0064】
上述したように、本実施形態の吐出システム10においては、接続状態検知手段により吐出装置20及び補充装置100の接続が検知されることを条件として、流動体供給装置160による流動体の供給が許容されるようにバルブ106を開状態とする制御(流動体の供給制御)がなされる。これにより、吐出装置20及び補充装置100の接続時に、流動体供給装置160側から作用する圧力の影響により流動体が漏れ出すことを抑制できる。
【0065】
また、上述した実施形態では、補充装置100に補充側脱着部104と、バルブ106とを備えると共に、補充側脱着部104が、補充側接続具134に連通した連通路130cを有し、バルブ106が、連通路130cに接続された構成とされている。そのため、バルブ106の開閉制御を実施することにより、補充側接続部104が高圧状態になることを回避できる。なお、本実施形態では、補充装置100にバルブ106を内蔵させた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、補充装置100と流動体供給装置160とを繋ぐ管路の中途等、補充側接続具134よりも流動体の流れ方向上流側の位置にバルブ106を配しても良い。
【0066】
上述した吐出システム10では、吐出装置20に対する流動体の補充量が所定量以上に達したことが検知されることを条件として、流動体供給装置160による流動体の供給が阻止されるようにバルブ106が閉止状態とされる。これにより、吐出装置20に対する流動体の補充後、吐出装置20を補充装置100から切り離す際にも、流動体が予期せず漏洩することを防止できる。
【0067】
上述したように、本実施形態の吐出システム10においては、流動体を補充するために吐出装置20側の吐出側接続具82と補充装置100側の補充側接続具134とを接続する接続動作が、減圧装置148により負圧状態とされた密閉空間135内において実施される。これにより、接続動作に伴って空気が吐出装置20内及び補充装置100内に進入する可能性を低減できる。従って、吐出システム10によれば、空気混入に伴う流動体の吐出不良を最小限に抑制しうる。なお、本実施形態の吐出システム10は、減圧装置148により密閉空間135を負圧状態とすることができる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、空気混入に伴う流動体の吐出不良等を考慮する必要がない場合には、密閉空間150を構成するための密閉空間形成体132や減圧装置148等の構成を省略することができる。またこの場合には、上述したステップ9においてバルブ106を開状態として流動体の圧送を開始するための条件から真空引きの完了に関する条件(ステップ8)を省略し、吐出装置20及び補充装置の接続が検知されること(ステップ7)の条件を満足することをもってバルブ106を開状態とするようにしても良い。
【0068】
上述した本実施形態の吐出システム10は、吐出装置20及び補充装置100に、吐出装置20及び補充装置100の接続及び分離に伴う内部圧力の変動を緩衝するための緩衝装置として、吐出側緩衝部22及び補充側緩衝部102が設けられている。これにより、吐出装置20と補充装置100との接続分離作業に際し、吐出装置20内及び補充装置100内が負圧になることを抑制し、両装置20,100内への空気の進入に伴う流動体の吐出不良をより一層確実に抑制しうる。
【0069】
また、吐出システム10においては、シリンダ機構を備えた吐出側緩衝部22が、吐出装置20側の緩衝装置として設けられている。吐出側緩衝部22においては、補充作業時に第二室44に流動体が流入するに連れてピストン34が上昇し、第二室44の容積が拡大する。吐出側緩衝部22をこのように作動させることにより、吐出装置20内が負圧になることを回避し、吐出装置20内への空気の進入を抑制することができる。これにより、流動体の吐出不良をより一層確実に抑制しうる。
【0070】
また、本実施形態の吐出システム10においては、スプリング116の付勢力を利用して作動するアブソーバ機構を備えた補充側緩衝部102が、補充装置100側の緩衝装置として設けられている。これにより、吐出装置20を補充装置100に対して接続及び分離することにに伴い、補充装置100内が負圧になることを抑制することが可能となり、補充装置100内への空気の進入を抑制できる。
【0071】
本実施形態においては、シリンダ機構を備えた緩衝装置を吐出装置20側の吐出側緩衝部22として採用し、アブソーバ機構を備えた緩衝装置を補充装置100側の補充側緩衝部102として設けた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、吐出装置20側に設ける緩衝装置として、アブソーバ機構を備えた補充側緩衝部102に相当するものを設けても良い。同様に、補充装置100側に設ける緩衝装置として、シリンダ機構を備えた吐出側緩衝部22に相当するものを設けても良い。
【0072】
本実施形態においては、吐出側緩衝部22をなす緩衝装置、及び補充側緩衝部102をなす緩衝装置を、それぞれ吐出装置20及び補充装置100に対して一基ずつ設けた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、
図14に示すように、吐出装置20は、吐出側緩衝部22をなす緩衝装置を2基以上備えた構成であっても良い。
【0073】
本実施形態においては、吐出装置20及び補充装置100に設ける緩衝装置の例として、シリンダ機構を備えた吐出側緩衝部22及びアブソーバ機構を備えた吐出側緩衝部22を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく他の形式のアキュムレータ、あるいは流動体を流出入させることが可能なタンクによって緩衝装置を構成しても良い。このような構成とすることによっても、接続分離作業に伴って吐出装置20や補充装置100の内部が負圧になることを抑制し、空気の混入に伴う流動体の吐出不良を回避しうる。
【0074】
なお、本実施形態では、吐出側緩衝部22及び補充側緩衝部102を設けた構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、吐出装置20及び補充装置100との接続分離作業に伴う空気の進入を考慮する必要がない場合等には、吐出側緩衝部22及び補充側緩衝部102のいずれか一方又は双方を省略することが可能である。
【0075】
本実施形態の吐出システム10は、位置決めピン142及び鉤溝144からなる離反防止機構150を備えている。これにより、補充装置100に対して流動体の補充のために接続された状態において、吐出装置20が補充装置100から離反することを確実に阻止することができる。なお、本実施形態で例示した離反防止機構150は一例に過ぎず、従来公知のボールキャッチをはじめとするキャッチや、フック、ファスナー等を離反防止機構150として用いることも可能である。また、吐出装置20への流動体の補充に際して、吐出装置20が補充装置100から離反する等の問題が生じない場合には、離反防止機構150を設けなくても良い。
【0076】
上述した吐出システム10は、吐出装置20の吐出部24に一軸偏心ねじポンプを採用したものである。そのため、補充装置100から吐出装置20に補充された流動体を脈動等させることなく、定量的かつ安定的に吐出させることができる。また、吐出システム10においては、空気の混入に伴う流動体の吐出不良が殆ど生じない。従って、吐出システム10は、流動体の吐出性能が極めて高く、自動車組立工場等においてシール剤や接着剤等の流動体を各種部品に塗布する等の用途に好適に利用することができる。
【0077】
上述した吐出システム10においては、吐出装置20の吐出側脱着部26に設けられた吐出側接続具82の軸線方向が、吐出部24の軸線方向に対して交差(略直交)している。そのため、床などに設置された補充装置100に対して吐出装置20を接続する際には、吐出部24が略水平となる姿勢にした上で、吐出装置20を補充装置100側に下降させることにより吐出側接続具82を補充側接続具134に押し込むこととなる。従って、吐出装置20を上述したような構成とした場合に、マニピュレータ90の複雑な動作を伴うことなく吐出側接続具82を補充側接続具134に対して確実に押し込み可能とするためには、マニピュレータ90のアームを吐出部24において吐出側接続具82の軸線上の位置に取り付けることが望ましい。
【0078】
これに対し、マニピュレータ90のアームを吐出部24の上端部等、吐出部24の軸線上に取り付けた場合には、
図15に示すように吐出側接続具82の軸線方向が吐出部24の軸線方向に沿う(図示状態では略並行)となるように配置することが望ましい。かかる構成とした場合には、
図16(a)〜(i)に示すように、吐出部24を略垂直となる姿勢にした上で、吐出装置20を補充装置100側に下降させることにより、マニピュレータ90の複雑な動作を伴うことなく吐出側接続具82を補充側接続具134に押し込み、両者を接続した状態とし、流動体の補充作業を実施することができる。
【0079】
また、本実施形態の吐出システム10においては、補充装置100側において、ボルト138を取り外すことにより、密閉空間形成体132を補充側脱着部本体130から取り外して補充側接続具134の清掃等のメンテナンスを行うことができる。なお、本実施形態においては、密閉空間形成体132を着脱可能とした例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、補充側着脱部本体130と密閉空間形成体132とが一体的に形成されたものであっても良い。
【0080】
なお、本実施形態の吐出システム10においては、流動体の補充のために吐出装置20と補充装置100との接続動作及び離反動作を実行する際に、離反動作時の動作速度が接続動作時の動作速度よりも高速であると、接続装置140において流動体を掻き取れずに外部に漏洩し、付着してしまうとの知見に基づき、吐出装置20と補充装置100との離反速度V2を接続速度V1以下(|V1|≧|V2|)となるように制御する例を示したが、必ずしもかかる制御を実行する必要はない。すなわち、接続装置140における流動体の外部漏洩等を考慮する必要がない場合、あるいは流動体の漏洩に対して他の方策を講じる場合には、吐出装置20と補充装置100との離反速度V2を接続速度V1よりも高速にする等しても良い。
【0081】
≪接続状態検知手段の変形例、及び吐出システム10の動作の変形例について≫
本実施形態では、吐出装置20と補充装置100との接続をドッキング完了リミットスイッチ174により検知し、これにより吐出装置20と補充装置100との接続が検知されることを条件として補充装置100側から吐出装置20側に流動体が補充される例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、上記実施形態は、離反防止機構150を設けた構成である。そのため、上記実施形態では、吐出側接続具82と補充側接続具134とが接続されるだけでなく、吐出装置20及び補充装置100が離反防止機構150によりロック状態になる位置関係になることを吐出装置20に対する流動体の補充開始条件とした。しかしながら、離反防止機構150によるロックが完了する前に流動体の補充を開始しても液漏れ等の問題が生じない場合や、離反防止機構150を設けない構成とした場合には、吐出側接続具82と補充側接続具134とが接続された時点で流動体の補充を開始しても良い。従って、離反防止機構150によるロックが流動体の補充開始に際して必須でない場合や、離反防止機構150を設けない場合には、ドッキング完了リミットスイッチ174に代えて吐出側接続具82及び補充側接続具134の接続を検知するための接続状態検知手段を設け、これにより接続が検知されることを流動体の補充開始条件としても良い。また、ドッキング完了リミットスイッチ174に代えてマニピュレータ90の位置(移動座標)を検出可能とし、検出された位置(移動座標)を指標として吐出側接続具82及び補充側接続具134の接続を検出しても良い。
【0082】
具体的には、離反防止機構150を設けない場合には、
図18に示すフローチャートのように制御装置170によって動作制御することが可能である。すなわち、
図18のステップ101においては、吐出装置20が作動し、流動体の吐出動作が実施される。
【0083】
吐出装置20の作動後、ステップ102(補充要求検出工程)において流動体を吐出装置20に対して補充すべきであるとの要求が出力されたとの判断が制御装置170によってなされた場合には、制御フローがステップ103に移行する。ここで、ステップ102における補充要求の有無は、上述した
図7に示す制御フローのステップ2と同様とすることができる。すなわち、吐出装置20に設けられた吐出側緩衝部22の内圧を検知可能とされた圧力センサ(図示せず)が所定の圧力以下になること等、種々の条件を基準として、補充要求の有無を判断することができる。ステップ102において流動体補充要求が有るものと判断された場合には、ステップ103にフローが進行する。
【0084】
ステップ103では、吐出装置20が補充装置100側の所定位置まで移動するよう、制御装置170によりマニピュレータ90の動作制御がなされる。吐出装置20が所定位置に到達すると、ステップ104(接続工程)において、接続方向(本実施形態では、補充側接続具134の軸線方向下方側)に向けて吐出側接続具82を移動させる動作制御が、制御装置170によって実行される。これにより、補充側接続具134に対する吐出側接続具82の接続が開始される。吐出装置20の接続方向への移動は、ステップ105において、接続状態検知手段(図示せず)により補充側接続具134に対する吐出側接続具82の接続が確認されるまで継続される。
【0085】
ステップ105において補充側接続具134に対する吐出側接続具82の接続が確認されると、制御フローがステップ106(圧送許容工程)に進められ、バルブ106が開状態とされる。その後、ステップ107において、流動体供給装置160から補充装置100側への流動体の供給が開始される。その後、ステップ108において補充量検出手段により満状態になったことが確認されるまで、吐出装置20に対する流動体の補充が継続される。ここで、ステップ108において流動体の補充状況を検知するための補充量検出手段は、上述した
図7のステップ10と同様に種々のものとすることができる。
【0086】
吐出装置20が満状態になるまで流動体が補充された状態になると、制御フローがステップ109(圧送阻止工程)に進む。ステップ109においては、バルブ106が閉状態とされる。その後、ステップ110において、流動体供給装置160から補充装置100側への流動体の供給が停止される。
【0087】
また、ステップ111において、離反方向(本実施形態では、補充側接続具134の軸線方向上方側)に向けて吐出側接続具82を移動させる動作制御が、制御装置170によって実行される。これにより、吐出側接続具82及び補充側接続具134の接続を解除する動作が開始される。吐出装置20の接続解除方向への移動は、ステップ112において接続状態検知手段(図示せず)がオフ状態になるまで継続される。ステップ112において接続状態検知手段がオフ状態になると、ステップ113において吐出装置20を所定位置まで移動させる動作制御が、制御装置170によって実行される。これにより、
図18に示した流動体の補充動作が完了する。
【0088】
≪吐出側接続具82及び補充側接続具134のクリアランスについて≫
吐出側接続具82及び補充側接続具134のクリアランスについては、両接続具の摩耗を最小限に抑制可能なように設定されることが望ましい。また、吐出システム10において取り扱う流動体の性質に応じて、クリアランスの適正化を図ることが望ましい。
【0089】
具体的には、
図19(a)に示すように、補充側接続具134の内径をa、吐出側接続具82の先端部に取り付けられたOリング等のシール部材82xの外径をb、吐出側接続具82の外径をc、吐出側接続具82と補充側接続具134との間に形成されるクリアランスをdとした場合、c<aの関係、及び(a−c)=2dの関係が成立する。また、シール部材82xが正常にシール性を発揮するためには、b>aの関係が成立する必要がある。吐出側接続具82及び補充側接続具134の摩耗を抑制するためには、少なくともクリアランスの大きさdが正の値(d>0)である必要がある。
【0090】
ここで、吐出システム10において取り扱う流動体が粒子状の物質を含むものである場合には、この粒子状物質がクリアランス内に挟まり込むことが想定される。そのため、粒子状物質の中にクリアランスの大きさdよりも大きなものが多数含まれている場合には、吐出側接続具82及び補充側接続具134の摩耗が生じやすくなる懸念がある。
【0091】
上述した懸念を解消するためには、粒子状物質の粒度分布に基づいてクリアランスdの大きさを調整することが望ましい。具体的には、クリアランスdの大きさを中央値C以上とすることにより、吐出側接続具82及び補充側接続具134の摩耗を抑制できる(
図19(b)参照)。
【0092】
また、粒子状物質の粒度分布に基づいてクリアランスdの大きさを調整するための指標として、上述した中央値Cに代えて、
図19(b)に示すモード径M、メジアン径d50、あるいは
図19(c)に示す平均径Avを指標として採用し、クリアランスdを指標とされる値(径)以上の大きさに設定することも可能である。さらに、粒子状物質の粒度分布に基づいてクリアランスdの大きさを調整するための指標として、中央値C、モード径M、メジアン径d50、及び平均径Avのうち最も大きなものを指標として採用し、クリアランスdを指標とされる値(径)以上の大きさに設定することも可能である。これにより、粒度分布を中央値C、モード径M、メジアン径d50、及び平均径Avの観点から総合的に評価し、クリアランスdの最適化を図り、吐出側接続具82及び補充側接続具134の摩耗をより一層確実に低減させることが可能となる。
【0093】
また、流動体の粒度分布における標準偏差をσとした場合において、クリアランスの大きさdを標準偏差σの所定倍に相当するn・σ以上と設定することとしても良い。さらに具体的には、クリアランスの大きさdを+6σに相当する粒度以上の大きさとすることにより、前述したような摩耗を解消しうる。また、流動体の粒度分布は多くの場合において正規分布とならない。そのため、中央値C及びn・σに相当する粒度を比較し、大きい方の粒度以上の大きさにクリアランスの大きさdを設定することで、より一層確実に前述した摩耗を抑制しうる。
【0094】
また、吐出側接続具82及び補充側接続具134の摩耗を抑制するための方策として、吐出側接続具82及び補充側接続具134のいずれか一方、又は双方の表面であって、接続及び離反に際して摺動する部分(図示例の摺動部82y,134yに相当)の硬度を、粒子状物質の硬度以上としても良い。また、粒子状物質の粒度分布を考慮してクリアランスの大きさdを規定しつつ、粒子状物質の硬度を考慮して摺動部82y,134yの硬度を規定することで、前述した摩耗をさらに確実に防止しうる。
【0095】
≪吐出側接続具82及び補充側接続具134について≫
本実施形態では、吐出側接続具82を雄型のプラグ、補充側接続具134を雌型のプラグとした例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、吐出側接続具82を雌型のプラグ、補充側接続具134を雄型のプラグとし、流動体補充のための接続時に吐出側接続具82に対して補充側接続具134を差し込むようにしても良い。
【0096】
ここで、雄型のプラグ及び雌型のプラグについて、流動体の補充作業に伴う流動体の付着量を比較した場合、雌型のプラグへの付着量が相対的に少ない。そのため、上述したように、塗布対象物であるワークに近接する位置において動作する吐出装置20側の吐出側接続具82を雌型のプラグとすることにより、吐出側接続具82への流動体の付着を最小限とし、吐出装置20の動作時に吐出側接続具82に付着している流動体が不意にワークに落下等することを回避できる。
【0097】
また、吐出側接続具82を雌型のプラグとした場合は、雄型のプラグからなる補充側接続具134の外周部にOリング等のシール部材を装着することが望ましい。このようにすることで、吐出側接続具82の内周面に流動体が付着したとしても、吐出側接続具82と補充側接続具134とを接続あるいは離反させる際に、シール部材によって流動体を吐出側接続具82の内周面から掻き取る効果が期待できる。そのため、シール部材を補充側接続具134をなす雄型のプラグに設けることが望ましい。なお、シール部材はいなかる場所に取り付けられても良いが、前述した掻き取り効果を高めるべく、補充側接続具134をなす雄型のプラグの基端側よりも先端側に取り付けることが望ましい。