(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本発明の一態様の概要]
本発明の一態様に係る発光素子は、反射電極と、前記反射電極に対向して配された透光性電極と、前記反射電極と前記透光性電極との間に配された青色光を出射する発光層と、前記反射電極と前記発光層との間に配された機能層と、を備え、前記機能層の光学膜厚が、428.9nm以上449.3nm以下である。
【0012】
また、前記機能層の物理膜厚が、204nm以上300nm以下、且つ、屈折率が1.5以上2.1以下であることとしてもよい。
【0013】
また、さらに、前記透光性電極を挟んで前記発光層とは反対側に配されたカラーフィルタを備えることとしてもよい。
【0014】
本発明の別の態様に係る発光素子は、反射電極と、前記反射電極に対向して配された透光性電極と、前記反射電極と前記透光性電極との間に配された青色光を出射する発光層と、前記反射電極と前記発光層との間に配された機能層と、を備え、カラーフィルタを配さない場合における発光効率をE1とし、カラーフィルタを配した場合における発光効率をE2としたとき、前記機能層の光学膜厚が、発光効率E1が極値となる光学膜厚において色度が目標値になるようにカラーフィルタの特性を調整したときの発光効率E2を分母とし、ある光学膜厚において色度が目標値になるようにカラーフィルタの特性を調整したときの発光効率E2を分子とする効率比を求めたときに、効率比が0.85以上となる第1の条件と、ある光学膜厚において色度が目標値になるようにカラーフィルタの特性を調整し、カラーフィルタの特性を維持したままで光学膜厚を変化させた場合において、発光効率E2の変化が±10%以内であり、色度の変化が±0.015以内であり、かつ、これらを満たす光学膜厚の範囲が20nmよりも広くなる第2の条件と、を満たす。
【0015】
本発明の一態様に係る表示装置は、青色光を出射する発光素子と、緑色光を出射する発光素子と、赤色光を出射する発光素子とを備える表示装置であって、前記青色光を出射する発光素子が、上記の発光素子である。
【0016】
[実施の形態]
<1> 構成
本発明を実施するための形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、実施の形態に係る表示装置の画素構造を模式的に示す断面図である。
【0018】
表示装置では、青色、緑色および赤色の画素が行方向及び列方向に規則的に配置されている。各画素は、電界発光現象を利用した発光素子で構成されている。本実施の形態では、発光素子として、発光材料が有機材料である有機EL素子を例に挙げて説明する。
【0019】
青色の有機EL素子は、基板1、反射電極2、透明導電層3、正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6b、電子輸送層7、透光性電極8、薄膜封止層9、樹脂封止層10、基板11およびカラーフィルタ13bを備える。以下、反射電極2と発光層6bとの間に配された層(本実施の形態では、透明導電層3、正孔注入層4および正孔輸送層5)を「第1機能層」と称し、発光層6bと透光性電極8との間に配された層(本実施の形態では、電子輸送層7)を「第2機能層」と称することがある。
【0020】
緑色の有機EL素子は、発光層6gおよびカラーフィルタ13gを除き、青色の有機EL素子と同様の構成を有する。赤色の有機EL素子も、発光層6rおよびカラーフィルタ13rを除き、青色の有機EL素子と同様の構成を有する。この例では、青色、緑色および赤色の有機EL素子において、基板1、電子輸送層7、透光性電極8、薄膜封止層9、樹脂封止層10および基板11が共通に設けられている。一方、反射電極2、透明導電層3、正孔注入層4、正孔輸送層5および発光層6b、6g、6rは、有機EL素子毎に設けられている。これらの反射電極2、透明導電層3、正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6b、6g、6rは有機EL素子毎にバンク12で区分されている。また、カラーフィルタ13b、13g、13rは有機EL素子毎にブラックマトリクス13brで区分されている。
【0021】
各色の有機EL素子では、反射電極2の存在により光の干渉効果を利用した共振器構造が実現されている。
図2に青色の有機EL素子における共振器構造を例示する。有機EL素子には、第1光路C1と第2光路C2とが形成される。第1光路C1では、発光層6bから出射された光の一部が、第1機能層を通じて反射電極2側に進行し、反射電極2により反射された後、第1機能層、発光層6b、第2機能層および透光性電極8を通じて外部に出射される。第2光路C2では、発光層6bから出射された光の残りの一部が、反射電極2側に進行することなく、第2機能層を通じて透光性電極8に進行し、透光性電極8を通じて外部に出射される。第1機能層の光学膜厚を適切に設定することにより、第1光路C1を通過する光と第2光路C2を通過する光とが干渉効果によって強め合い、発光効率を高めることができる。
【0022】
本実施の形態では、青色の有機EL素子の第1機能層の光学膜厚は、428.9nm以上449.3nm以下である。これにより、青色の有機EL素子の発光効率を高め、且つ、製造誤差の許容量を広げることができる。以下、詳細に説明する。
【0023】
<2> シミュレーション
<2−1> 第1段階
発明者らは、第1機能層の光学膜厚を変化させたときの発光効率の変化および色度の変化をシミュレーションにより求めた。
図3、
図4にシミュレーションに用いる有機EL素子の各パラメータを示す。
【0024】
図3は、青色の有機EL素子の各層の物理膜厚等を列挙したテーブルである。同図の屈折率の欄には、460nmの波長での屈折率が記入されている。
【0025】
図4は、青色の有機EL素子に用いられる発光材料のPL(Photo Luminescence)スペクトルである。この発光材料のCIE色度図における座標位置は(0.153、0.139)である。
【0026】
図5は、
図3、
図4の各パラメータを前提とする有機EL素子において、透明導電層3の物理膜厚と発光効率との関係を示すグラフである。
【0027】
本シミュレーションでは、第1機能層の光学膜厚を変化させるために、透明導電層3の物理膜厚を変化させている。透明導電層3以外の層の物理膜厚は固定であり、各層の屈折率は固定である。従って、以下の説明における「透明導電層3の物理膜厚」は、「第1機能層の光学膜厚」に置き換えて解釈することができる。なお、数値に関しては、相対値であればそのまま置き換え可能であるが、絶対値であれば換算が必要である。以下の説明では、数値が絶対値の場合は、必要に応じて換算値を併記する。
【0028】
図5中の破線は、有機EL素子にカラーフィルタ(CF)を配さない場合における発光効率を示す。以下、カラーフィルタを配さない場合の発光効率をE1と表記する。これは、透明導電層3の物理膜厚を5nm単位で変化させ、それぞれの物理膜厚での発光効率E1を算出することにより得られている。
図5に示す通り、透明導電層3の物理膜厚を変化させると、光の干渉効果により発光効率E1が変化する。そして、透明導電層3の物理膜厚が20nmおよび150nmで発光効率E1が極小値となり、透明導電層3の物理膜厚が80nmで発光効率E1が極大値となる。
【0029】
図5中の実線は、有機EL素子にカラーフィルタを配した場合における発光効率を示す。以下、カラーフィルタを配した場合の発光効率をE2と表記する。これは、透明導電層3の物理膜厚を5nm単位で変化させ、それぞれの物理膜厚においてカラーフィルタの特性を適切に設定した上で発光効率E2を算出することにより得られている。本シミュレーションでは、カラーフィルタの特性は、有機EL素子の発光色の色度(CIE色度のy値)が目標値0.06になるように設定している。以下、CIE色度のy値をCIEyと表記する。
【0030】
なお、発明者らの研究により、第1機能層の光学膜厚を変化させると、発光効率E1だけでなく、色度CIEyも変化することが判明している。
図6は、
図5と同じ条件の有機EL素子において、透明導電層3の物理膜厚と色度との関係を示すグラフである。
【0031】
図6中の破線は、有機EL素子にカラーフィルタを配さない場合における色度を示す。
図6に示す通り、透明導電層3の物理膜厚を変化させると、色度CIEyが変化する。一般に、青色の有機EL素子では、色度CIEyの目標値としては0.06から0.08程度に設定される場合が多い。これは、0.06がEBU規格の目標値であり、0.08がNTSC規格の目標値だからである。色度CIEyの目標値を0.06とすると、物理膜厚が30nmおよび155nmの場合に色度CIEyが目標値に最も近くなる。また、物理膜厚が100nmの場合に色度CIEyが目標値から最も遠くなる。このように、透明導電層3の物理膜厚が変化すると色度CIEyが変化する。そのため、色度CIEyを目標値0.06とするようなカラーフィルタの特性は、透明導電層3の物理膜厚ごとに異なる。ひいては、色度CIEyを目標値0.06とするようなカラーフィルタの特性は、第1機能層の光学膜厚ごとに異なる。
【0032】
図6中の実線は、有機EL素子にカラーフィルタを配し、カラーフィルタの特性を物理膜厚ごとに適切に調整した場合の色度を示す。当然ながら、何れの物理膜厚においても色度CIEyが目標値0.06に保たれている。
【0033】
このように、第1機能層の光学膜厚を変化させると、発光効率E1だけでなく、色度CIEyも変化する。また、
図5の破線および
図6の破線から分かる通り、ある特定の光学膜厚で発光効率E1が極大値となっても、その光学膜厚で必ずしも色度CIEyが目標値に近いとは限らない。色度CIEyが目標値から遠いと、その分だけカラーフィルタでの色度の補正を強くする必要があるので、カラーフィルタを配した場合における発光効率E2が低下してしまう。その結果、カラーフィルタを配さない場合における発光効率E1が極大値となる光学膜厚と、カラーフィルタを配した場合における発光効率E2が極大値となる光学膜厚とが異なることになる。
図5に示す通り、発光効率E2は、透明導電層3の物理膜厚が45nmおよび155nm付近の場合に極大値となる。
【0034】
さて、有機EL素子の製造過程では、各層の物理膜厚に製造誤差が発生することは避けられない。そのため、各層の物理膜厚が設計値からずれたとしても、有機EL素子の特性が設計値からずれにくい(即ち、製造誤差の許容量が広い)ことが望ましい。また、有機EL素子では、カラーフィルタを配した場合における発光効率E2が高いことが望ましい。発明者らは、第1機能層の光学膜厚を設計するに当たり、これらを両立するにはどのようにすればよいかを検討した。
【0035】
まず、発光効率E1が極値の付近では、物理膜厚の変化に対する発光効率E1の変化が小さいので、製造誤差の許容量が広いと考えられる。
図5を参照すると、透明導電層3の物理膜厚が20nm付近、80nm付近および150nm付近が候補となる。この中では、透明導電層3の物理膜厚が150nm付近のときに発光効率E2が最も高い。従って、物理膜厚を150nm付近(第1機能層の光学膜厚に換算すると443.2nm付近)とすることで発光効率を高め、且つ、製造誤差の許容量を広くすることができると考えられる。
【0036】
<2−2> 第2段階
上記の第1段階では、透明導電層3の物理膜厚が150nm付近(第1機能層の光学膜厚に換算すると、443.2nm付近)であることが望ましいことが判明した。
【0037】
発明者らは、次に、透明導電層3の物理膜厚が150nm付近において効果的な物理膜厚の範囲を詳細に検討した。具体的には、以下の条件1、2の両方を満たす物理膜厚の範囲を探索した。
【0038】
(条件1)
発光効率E1が極値となる物理膜厚150nmにおいて色度CIEyが目標値0.06になるようにカラーフィルタの特性を調整したときの発光効率E2を分母とし、ある物理膜厚において色度CIEyが目標値0.06になるようにカラーフィルタの特性を調整したときの発光効率E2を分子とする効率比を求めたときに、効率比が0.85以上となる。
【0039】
(条件2)
ある物理膜厚において色度CIyが目標値0.06になるようにカラーフィルタの特性を調整し、カラーフィルタの特性を維持したままで物理膜厚を変化させた場合において、発光効率E2の変化が±10%以内であり、色度CIEyの変化が±0.015以内であり、かつ、これらを満たす物理膜厚の範囲が10nm(第1機能層の光学膜厚に換算すると20nm)よりも広い。
【0040】
条件1を満たす範囲は、
図5の実線を用いて探索することができる。
【0041】
即ち、透明導電層3の物理膜厚150nmのときの発光効率E2を分母とし、任意の物理膜厚のときの発光効率E2を分子とする効率比を求めて、効率比が0.85以上となる範囲を求めればよい。
図11にシミュレーションにより得られた結果を示す。同図の効率比を見ると、透明導電層3の物理膜厚が143nm以上(第1機能層の光学膜厚に換算すると428.9nm以上)であれば、条件1を満たすことが分かる。
【0042】
条件2を満たす範囲は、以下の要領で探索することができる。
【0043】
図7は、透明導電層の物理膜厚の設計値を150nmとした場合において、製造誤差により物理膜厚が設計値の150nmからずれたときの発光効率の変化を示すグラフである。
【0044】
まず透明導電層3の物理膜厚を150nmとした場合に色度CIEyが目標値0.06になるようにカラーフィルタの特性を調整する。そして、そのカラーフィルタの特性を維持したままで物理膜厚を1nm単位で変化させ、それぞれの物理膜厚での発光効率E2を算出する。これをプロットすることで
図7中の実線が得られる。また、それぞれの物理膜厚での発光効率E2について、物理膜厚が150nmの場合の発光効率E2に対する変化率ΔEffを算出する。これをプロットすることで
図7中の破線が得られる。なお、
図7ではカラーフィルタの特性を維持したままで物理膜厚を変化させている。これに対し、
図5ではそれぞれの物理膜厚においてカラーフィルタの特性を適切に調整しつつ物理膜厚を変化させている。従って、当然ながら、
図7の曲線の形状と
図5の曲線の形状が互いに異なることになる。
【0045】
図7に示す通り、透明導電層3の物理膜厚が135nm以上154nm以下の範囲が、発光効率E2の変化率ΔEffが±10%以内に収まる範囲であることが分かる。以下、この条件を満たす透明導電層3の物理膜厚の範囲を、発光効率許容範囲と称する。
【0046】
図8は、
図7と同じ条件で、製造誤差により物理膜厚が設計値の150nmからずれたときの色度の変化を示すグラフである。
【0047】
まず透明導電層3の物理膜厚を150nmとした場合に色度CIEyが目標値0.06になるようにカラーフィルタの特性を調整する。そして、そのカラーフィルタの特性を維持したままで物理膜厚を1nm単位で変化させ、それぞれの物理膜厚での色度CIEyを算出する。これをプロットすることで
図8中の実線が得られる。また、それぞれの物理膜厚での色度CIEyについて、物理膜厚が150nmの場合の色度CIEyに対する変化率Δyを算出する。これをプロットすることで
図8中の破線が得られる。
【0048】
図8に示す通り、透明導電層3の物理膜厚が141nm以上165nm以下の範囲が、色度CIEyの変化率Δyが±0.015以内に収まる範囲であることが分かる。以下、この条件を満たす透明導電層3の物理膜厚の範囲を、色度許容範囲と称する。
【0049】
図7から得られた発光効率許容範囲は、135nm以上154nm以下の範囲である。また、
図8から得られた色度許容範囲は、141nm以上165nm以下の範囲である。そして、これらの許容範囲の両方を満たす範囲は、141nm以上154nm以下の範囲であり、この範囲の幅は、13nmである。以下、これら両方の条件を満たす範囲の幅を、膜厚許容幅と称する。このように、透明導電層3の物理膜厚の設計値を150nmとした場合には、膜厚許容幅が13nmとなり、上記の条件2を満たすことが分かる。
【0050】
同様の処理を、透明導電層3の物理膜厚の設計値を1nm単位で変化させながら実施すると、上記の条件2を満たす物理膜厚の範囲を特定することができる。参考のため、透明導電層3の物理膜厚の設計値を20nmとした場合について
図9および
図10を用いて説明する。
【0051】
図9は、透明導電層の物理膜厚の設計値を20nmとした場合において、製造誤差により物理膜厚が設計値の20nmからずれたときの発光効率の変化を示すグラフである。
図9に示す通り、物理膜厚の設計値が20nmの場合、発光効率許容範囲は、11nm以上23nm以下の範囲である。
【0052】
図10は、
図9と同じ条件で、製造誤差により物理膜厚が設計値の20nmからずれたときの色度の変化を示すグラフである。
図10に示す通り、物理膜厚の設計値が20nmの場合、色度許容範囲は、16nm以上40nm超の値以下の範囲である。
図10には、40nm超の範囲が示されていないので上限値が不明である。しかしながら、上限値が40nm超であることは明らかである。
【0053】
そして、これら両方を満たす範囲は、16nm以上23nm以下の範囲であり、従って、膜厚許容幅は7nmである。このように、透明導電層3の物理膜厚の設計値を20nmとした場合には、膜厚許容幅が7nmとなり上記の条件2を満たさない。
【0054】
図11にシミュレーションにより得られた結果を示す。同図の膜厚許容幅を見ると、透明導電層3の物理膜厚が153nm以下(第1機能層の光学膜厚に換算すると449.3nm以下)であれば、条件2を満たすことが分かる。
【0055】
そして、同図から、条件1、2の両方を満たす物理膜厚の範囲は、透明導電層3の物理膜厚が143nm以上153nm以下(第1機能層の光学膜厚に換算すると428.9nm以上449.3nm以下)であることが分かる。
【0056】
<3> 効果
上記の通り、透明導電層3の物理膜厚が143nm以上153nm以下であれば、条件1、2の両方を満たすことができる。以下に条件1、2のそれぞれの技術的意義について説明する。
【0057】
第1段階では、透明導電層3の物理膜厚が150nmの場合に、発光効率E1が極値をとり、且つ、発光効率E2が比較的高いことが判明した。条件1は、透明導電層3の物理膜厚が150nmの場合の発光効率E2を基準としたとき、効率比が0.85以上となることを要求している。条件1を満たすことにより、高い発光効率を確保することができる。
【0058】
また、一般に、カラーフィルタの特性は設計段階で適切に設定されており、製造段階ではカラーフィルタの特性は調整されない。従って、製造段階で透明導電層3の物理膜厚が設計値からずれたとしても、既に用意されたカラーフィルタをそのまま用いることになる。
図7および
図8は、このような状況を想定して得られたものである。条件2は、このような状況において、発光効率および色度の設計値からのずれが許容範囲に収まるような物理膜厚の膜厚許容幅が10nm超であること(第1機能層の光学膜厚に換算すると、20nm超)を要求する。条件2を満たすことにより、物理膜厚の製造誤差の許容量を10nm超という広い範囲で確保することができる。
【0059】
従って、条件1、2の両方を満たすことにより、高い発光効率を確保しつつ広い製造誤差の許容量を確保することができる。
【0060】
なお、シミュレーションでは、透明導電層3の物理膜厚を143nm以上153nm以下とし、正孔注入層4の物理膜厚を40nmとし、正孔輸送層5の物理膜厚を40nmとしている。その結果、第1機能層の光学膜厚の範囲が、428.9nm以上449.3nm以下となる。しかしながら、共振器構造で重要なのは各層の物理膜厚ではなく、第1機能層の光学膜厚である。従って、第1機能層の光学膜厚が428.9nm以上449.3nm以下であれば、各層の物理膜厚および屈折率がどのようなものであっても同様の効果を得ることができる。
【0061】
発明者らは、さらに、透明導電層3の膜厚許容幅を求める手法と同じ手法を用いて、発光層6bの膜厚許容幅を求めた。
図12は、透明導電層の膜厚許容幅と発光層の膜厚許容幅を示すテーブルである。これによると、透明導電層3の物理膜厚が150nmの場合は、20nm、45nm、80nmの場合に比べて、透明導電層3の膜厚許容幅のみならず、発光層6bの膜厚許容幅も広いことが分かる。従って、透明導電層3の物理膜厚を143nm以上153nm以下とすることで、発光層6bの製造誤差の許容量を広く確保することができる。
【0062】
<4> 各層の材料
<4−1> 基板1
基板1は、例えば、TFT(Thin Film Transistor)基板である。基板1の材料は、例えば、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラスなどのガラス板及び石英板、並びに、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコーン系樹脂などのプラスチック板又はプラスチックフィルム、並びに、アルミナなどの金属板又は金属ホイルなどである。
【0063】
<4−2> 反射電極2
反射電極2は、基板1に配されたTFTに電気的に接続されており、有機EL素子の正極として機能すると共に、発光層6b、6g、6rから反射電極2に向けて出射された光を反射する機能を有する。反射機能は、反射電極2の構成材料により発揮されるものでもよいし、反射電極2の表面部分に反射コーティングを施すことにより発揮されるものでもよい。反射電極2は、例えば、Ag(銀)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)、ACL(アルミニウム、コバルト、ランタンの合金)等で形成されている。
【0064】
<4−3> 透明導電層3
透明導電層3は、製造過程において反射電極2が自然酸化するのを防止する保護層として機能する。透明導電層3の材料は、発光層6b、6g、6rで発生した光に対して十分な透光性を有する導電性材料により形成されればよく、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などが適用できる。
【0065】
<4−4> 正孔注入層4
正孔注入層4は、正孔を発光層6b、6g、6rに注入する機能を有する。例えば、酸化タングステン(WO
x)、酸化モリブデン(MoO
x)、酸化モリブデンタングステン(Mo
xW
yO
z)などの遷移金属の酸化物で形成される。遷移金属の酸化物で形成することで、電圧電流密度特性を向上させ、また、電流密度を高めて発光強度を高めることができる。なお、これ以外に、遷移金属の窒化物などの金属化合物も適用できる。
【0066】
<4−5> 正孔輸送層5
正孔輸送層5の材料は、例えば、特開平5−163488号に記載のトリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポリフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、ブタジエン化合物、ポリスチレン誘導体、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、テトラフェニルベンジン誘導体である。特に好ましくは、ポリフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物である。
【0067】
<4−6> 発光層6b、6g、6r
発光層6b、6g、6rの材料は、例えば、特開平5−163488号公報に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属鎖体、2−ビピリジン化合物の金属鎖体、シッフ塩とIII族金属との鎖体、オキシン金属鎖体、希土類鎖体等の蛍光物質である。
【0068】
<4−7> 電子輸送層7
電子輸送層7の材料は、例えば、特開平5−163488号公報のニトロ置換フルオレノン誘導体、チオピランジオキサイド誘導体、ジフェキノン誘導体、ペリレンテトラカルボキシル誘導体、アントラキノジメタン誘導体、フレオレニリデンメタン誘導体、アントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリノン誘導体、キノリン錯体誘導体である。
【0069】
なお、電子注入性を更に向上させる点から、上記電子輸送層を構成する材料に、Na,Ba,Caなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属をドーピングしてもよい。
【0070】
<4−8> 透光性電極8
透光性電極8は、有機EL素子の負極として機能する。透光性電極8の材料は、発光層6b、6g、6rで発生した光に対して十分な透光性を有する導電性材料により形成されればよく、例えば、ITOやIZOなどが適用できる。
【0071】
<4−9> 薄膜封止層9
薄膜封止層9は、水分や酸素の侵入を防止する機能を有する。薄膜封止層9の材料としては、例えば、窒化シリコン(SiN
x)、酸窒化シリコン(SiO
xN
y)、酸化アルミニウム(AlO
x)などが適用できる。
【0072】
<4−10> 樹脂封止層10
樹脂封止層10は、基板1から薄膜封止層9までの各層からなる背面パネルと、基板11とカラーフィルタ13b、13g、13rからなる前面パネルとを貼り合わせるとともに、各層が水分や酸素に晒されることを防止する機能を有する。樹脂封止層10の材料は、例えば、樹脂接着剤等である。
【0073】
<4−11> 基板11
基板11の材料は、例えば、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラスなどのガラス板及び石英板、並びに、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコーン系樹脂などのプラスチック板又はプラスチックフィルムである。
【0074】
<4−12> バンク12
バンク12は、絶縁性材料により形成されていれば良く、有機溶剤耐性を有することがよいと考えられる。また、バンク12はエッチング処理、ベーク処理などされることがあるので、それらの処理に対する耐性の高い材料で形成されることがよいと考えられる。バンク12の材料は、樹脂などの有機材料であっても、ガラスなどの無機材料であっても良い。有機材料として、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂などを使用することができ、無機材料として、酸化シリコン(SiO
x)、窒化シリコン(SiN
x)などを使用することができる。
【0075】
<4−13> カラーフィルタ13b、13g、13r
カラーフィルタ13b、13g、13rは、それぞれ発光層6b、6g、6rから出射された光の色度を補正する機能を有する。
【0076】
<5> 表示装置の全体構成および外観
図13は、実施の形態に係る表示装置の機能ブロックを示す図である。
図14は、実施の形態に係る表示装置の外観を例示する図である。表示装置20は、有機ELパネル21と、これに電気的に接続された駆動制御部22とを備える。有機ELパネル21は、
図1に示す画素構造を有するものである。駆動制御部22は、各有機EL素子の反射電極2と透光性電極8との間に電圧を印加する駆動回路23と、駆動回路23の動作を制御する制御回路24とを備える。
【0077】
<6> 製造方法
図15および
図16は、実施の形態に係る表示装置の製造方法を説明するための図である。
【0078】
まず、基板1上に反射電極2を形成する(
図15(a))。次に、反射電極2上に、透明導電層3を形成する(
図15(b))。このとき、例えば、透明導電層3の物理膜厚を143nm以上153nm以下とする。透明導電層3は、例えば、スパッタリング法を用いて基板1の全面に形成し、その後、画素毎にパターニングすることにより得られる。
【0079】
次に、透明導電層3上に、例えば、正孔注入層4、バンク12、正孔輸送層5を形成する(
図15(c))。このとき、例えば、正孔注入層4の物理膜厚を40nmとし、正孔輸送層5の物理膜厚を40nmとする。これにより、第1機能層の光学膜厚を428.9nm以上449.3nm以下とする。なお、緑色および赤色の有機EL素子では、第1機能層の光学膜厚をこれ以外に設定してもよい。
【0080】
次に、正孔輸送層5上に、例えば、インクジェット法などの印刷法により発光層6b、6g、6rを形成する(
図15(d))。
【0081】
次に、発光層6b、6g、6r上に電子輸送層7を形成する(
図16(a))。
【0082】
次に、電子輸送層7上に、蒸着法やスパッタリング法により透光性電極8を形成する(
図16(b))。
【0083】
次に、透光性電極8上に蒸着法やスパッタリング法により薄膜封止層9を形成し、カラーフィルタ13b、13g、13rとブラックマトリクス13brが形成された基板11を、樹脂封止層10を用いて貼り合わせる(
図16(c))。
【0084】
以上の工程により、表示装置を製造することができる。
【0085】
<7> 変形例
(1)第1機能層の物理膜厚と屈折率
上記実施の形態では、第1機能層の光学膜厚の範囲を428.9nm以上449.3nm以下としている。これを実現するために、第1機能層の物理膜厚が、204nm以上300nm以下、且つ、屈折率が1.5以上2.1以下であることとしてもよい。
図3に示す通り、第1機能層の各層の屈折率は、概ね、1.5以上2.1以下である。光学膜厚の上限値449.3nmを屈折率の下限値1.5で割ると、物理膜厚300nmが得られる。光学膜厚の下限値428.9nmを屈折率の上限値2.1で割ると、光学膜厚204nmが得られる。
【0086】
(2)第1および第2機能層の構成
上記実施の形態では、第1機能層が3層構造となっているが、単層構造、2層構造、あるいは4層以上の多層構造でも構わない。
【0087】
同様に、上記実施の形態では、第2機能層が単層構造となっているが、2層以上の多層構造でも構わない。
【0088】
(3)発光層
上記実施の形態では、発光層の材料に有機材料を用いた有機EL素子を挙げているが、これに限らない。例えば、発光層の材料に無機材料を用いた無機EL素子でも構わない。