【実施例】
【0032】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに何ら限定されるものではない。
【0033】
実施例1
(1)インディルビンの製造
【0034】
【化3】
【0035】
酢酸インドキシル(1.75g,10mmol)及びイサチン(1.47g,10mmol)の脱水メタノール(20mL)懸濁液にアルゴンガスを5分間吹き込んだ。反応液に炭酸ナトリウム(2.12g,20mmol)を加え、室温にて18時間撹拌した後、反応液を水(1L)に注いだ。析出した粗結晶を吸引ろ取し、粗結晶を得た。この粗結晶を1,4−ジオキサン/ヘキサンから再結晶し、インディルビン(1.81g,69%)を紫色針状晶として得た。
【0036】
1H NMR(DMSO−d
6):δ 6.91(1H,d,J=7.3Hz,7−H),7.02(2H,m,5−H and 5’−H),7.26(1H,dt,J=7.3,1.2Hz,6−H),7.42(1H,d,J=8.1Hz,7’−H),7.58(1H,dt,J=8.1,1.2Hz,6’−H),7.66(1H,dd,J=7.1,1.2Hz,4’−H),8.77(1H,dd,J=7.8,1.2Hz,4−H),10.90(1H,s,1−H),11.02(1H,s,1’−H).
LRMS(EI):262([M]
+).HRMScalcd for C
16H
10N
2O
2:262.0742,found:262.0740.
【0037】
(2)インディルビン−3’−オキシムの製造
【0038】
【化4】
【0039】
インディルビン(0.64g,2.4mmol)を脱水ピリジン(25mL)に溶解し、塩化ヒドロキシルアンモニウム(1.67g,24mmol)を加えた。反応液を2.5時間加熱還流した後、室温に戻した。反応液を水(100mL)に注ぎ、析出した粗結晶を吸引ろ取した。得られた粗結晶をメタノール/水から再結晶し、インディルビン3’−オキシム(0.60g,89%)を赤色針状晶として得た。
【0040】
1H NMR(DMSO−d
6):δ 6.89(1H,d,J=7.8Hz,7−H),6.95(1H,dt,J=7.8,0.9Hz,5−H),7.03(1H,m,5’−H),7.13(1H,dt,J=7.8,0.9Hz,6−H),7.40(2H,m,6’− and 7’−H),8.24(1H,d,J=6.9Hz,4’−H),8.65(1H,d,J=7.8Hz,4−H),10.71(1H,s,1−H),11.75(1H,s,1’−H),13,48(1H,s,NOH).
LRMS(EI):277([M]
+).HRMS calcd for C
16H
11N
3O
2:277.0851,found:277.0848.
【0041】
(3)インディルビン3’−(O−オキシラン−2−イルメチル)オキシム(HS−2)の製造
【0042】
【化5】
【0043】
インディルビン3’−オキシム(100mg,0.36mmol)を脱水DMF(5mL)に溶解し、トリエチルアミン(0.1mL)及びエピブロモヒドリン(0.5g,3.6mmol)を順次加えた。室温にて24時間撹拌し、水(50mL)に注ぎ、吸引ろ取することで標題化合物(HS−2)(95mg,79%)を得た。本品はTLC,NMRにおいて純品である。
【0044】
1H NMR(DMSO−d
6):δ 2.84(1H,dd,J=4.9,2.6Hz,one of CH(O)CH
2),2.98(1H,t,J=4.9Hz,one of CH(O)CH
2),3.52(1H,m,CH(O)CH
2),4.55(1H,dd,J=12.4,6.1Hz,one of NOCH
2CH),4.82(1H,dd,J=12.4,3.5Hz,one of NOCH
2CH),6.97(1H,d,J=7.2Hz,7−H),7.01(1H,d,J=7.8Hz,7’−H),7.03(1H,t,J=7.8Hz,5−H),7.09(1H,dt,J=7.8,1.2Hz,5’−H),7.20(1H,dt,J=7.8,1.2Hz,6−H),7.39(1H,dt,J=7.8,1.2Hz,6’−H),7.70(1H,s,1−H),8.23(1H,d,J=7.7Hz,4’−H),8.69(1H,d,J=7.8Hz,4−H),11.56(1H,s,1’−H).
LRMS(EI):333([M]
+).HRMS calcd for C
19H
15N
3O
3:333.1113,found:333.1113.
【0045】
実施例2(抗腫瘍活性(1))
抗腫瘍活性は、MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム ブロミド)法により測定した。
96−wellプレートにRPMI 1640培地に懸濁した腫瘍細胞(1×10
4cells/well)を100μL播き、24時間培養(5%CO
2,37℃,飽湿条件下)した。その後、被験化合物(終濃度1×10
-5〜1×10
-8M)及びコントロールとしてDMSOを0.2μLずつそれぞれ添加し、48時間腫瘍細胞に作用させた。次に、0.5%MTT液を10μL加え、3時間後に反応停止液(0.04N HCl/イソプロパノール)を100μL加え反応を停止させた。よくピペッティングをした後、マイクロプレートリーダーにより570nm(top)及び655nm(bottom)における 吸光度を測定した。各検体の各濃度における細胞生存率は、コントロール群に対する百分率により求め、そこからEC
50値を算出した。腫瘍細胞としては、ヒト神経芽腫細胞であるIMR−32、SK−N−SH、LA−N−1、NB−39ならびにヒト肝がん細胞HepG−2を用いた。また、非腫瘍細胞であるヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)、ヒト膵帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用いた。
【0046】
本発明化合物(HS−2)の抗腫瘍活性を
図1及び表1に示す。
図1及び表1より、本発明化合物は、強力な抗腫瘍活性を有し、その抗腫瘍活性はシスプラチン(CDDP)の50〜100倍強いことが判明した。
【0047】
【表1】
【0048】
実施例3(抗腫瘍活性(2))
(1)培養液
Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM,Sigma社)にウシ胎児血清(FBS)を終濃度10%となるように加え、さらにPenicillin−Streptomycin溶液(GIBCO)を0.1mg/mLとなるように加えた。
(2)試薬
Alamar Blue液は和光純薬工業製を用いた。
(3)操作
ヒト肝癌細胞株HepG2細胞をDMEM培地に懸濁し(1.0×10
5個/mL)、96well culture plateに100μLずつ分注した。37℃、5%CO
2飽湿条件下にて培養してplateに付着させた。24時間培養後培地を吸引除去し、被験化合物を含む培地(1%DMSO含有)100μLを添加し、37℃、5%CO
2飽湿条件下にて培養した。24時間培養後培地を吸引除去し、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline:PBS)で洗浄した。培地で10倍希釈したAlamar Blue試液(100μL)を各wellに添加して先と同様の条件下にて培養した。1時間後、励起波長577nm、検出波長612nmの蛍光強度を測定した。なお細胞生存率はvehicle(1%DMSO含有)添加wellの値を100%として算出した。
【0049】
(4)結果
ヒト肝癌細胞株HepG2に対する細胞傷害活性(IC
50:50%傷害濃度)は、HS−2が1.0μMであり、シスプラチン(CDDP)が10μMであった。
【0050】
実施例4(アポトーシス誘導能:Hoechst33342染色法)
アポトーシス誘導能は、Hoechst33342染色法で核染色することにより試験した。
6−WellプレートにRPMI 1640培地に懸濁した細胞(IMR−32:1×10
5cells/well)を2mL播き、24時間培養(5%CO
2,37℃、飽湿条件下)した。その後、被験化合物(終濃度1×10
-5M〜1×10
-7M)及びコントロールとしてDMSOを4μLずつそれぞれに添加し、24時間細胞に作用させた。次に、0.02%Hoechst 33342溶液を100μL加え、15分後に蛍光顕微鏡にて位相差像及び蛍光像を撮影し、細胞の形態変化を観察した。その結果、
図2に示すように、本発明化合物(HS−2)は、0.1μMで、核の凝集化及び断片化が認められることから、IMR−32細胞に対する細胞傷害活性はアポトーシス誘導によるものであることが判明した。
【0051】
実施例5(アポトーシス誘導能:フローサイトメトリー法)
本発明化合物(HS−2)について、ヒト神経芽腫細胞であるIMR−32細胞に対するアポトーシス誘導能をフローサイトメトリーにより検出した。すなわち、6−WellプレートにRPMI 1640培地に懸濁した細胞(IMR−32:1×10
6cells/well)を2mL播き、24時間培養(5%CO
2,37℃、飽湿条件下)した。その後、化合物(HS−2)を終濃度1×10
-5M〜1×10
-7Mとなるように加え、37℃、5%CO
2条件下で24時間インキュベーションした。細胞をトリプシンで剥離してPBSで洗浄した後、アネキシンV−FITC及びヨウ化プロピジウム(PI)を加え、フローサイトメトリーを行った。この方法によれば、アポトーシスの初期段階の細胞はアネキシンV−FITCの蛍光のみが観察され、アポトーシスの後期段階の細胞はアネキシンVとPIの両方の蛍光が観察される。
その結果、化合物(HS−2)は濃度依存的なアポトーシス誘導能が認められ、10μMで顕著なアポトーシス誘導効果が示された。この結果を
図3に示す。
【0052】
その結果、本発明化合物は、10
-7Mという低い濃度から強力な抗腫瘍活性を有していた。正常細胞と比較して腫瘍細胞に活性の選択性が認められ(正常細胞におけるIC
50値は、HUVEC:1.75μM NHDF:61.4μM)、この機構にはアポトーシスが関与することが示された。