(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記2次元ベクトル磁気特性測定方法で用いられる2次元ベクトル磁気センサには、磁界を計測するためのHコイルが直交する2方向に向けて設けられている。この2方向に向けられた2つのHコイルの計測軸が成す角度が正確に直角であれば、精度良く2次元ベクトル磁気特性を測定することができる。
【0006】
しかしながら、2方向に向けられた2つのHコイルは、2次元ベクトル磁気センサの個体差によって、計測軸を正確に直交させることが困難である。
【0007】
そのため、製造された2次元ベクトル磁気センサについて、2方向に向けられた2つのHコイルの計測軸が成す角度を計測し、その角度に応じて2次元ベクトル磁気特性の測定時に補正を行うなどの処理が必要となる。
【0008】
本発明では、上記課題に鑑み、2つのHコイルの計測軸が成す角度を計測する2方向Hコイル間角度計測方法及びその計測方法を実行する2方向Hコイル間角度計測装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、請求項1に係る本発明では、2方向のHコイルを有する磁気センサの2つのHコイルの計測軸が成す角度を計測する2方向Hコイル間角度計測方法において、ソレノイドコイルの内部に磁気センサを回転可能に載置するとともに、ソレノイドコイルの外部から挿通させた2本の平行な非磁性・非導電性のロッドを磁気センサの回転に伴って進退可能とし、一方のHコイルを回転させてそのHコイルについてソレノイドコイルによる誘起電圧が最大となる角度を2本のロッドの変位差から求めた後に、他方のHコイルを回転させてそのHコイルについてソレノイドコイルによる誘起電圧が最大となる角度を2本のロッドの変位差から求めることで磁気センサの2つのHコイルの計測軸が成す角度を計測することにした。
【0010】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記一方のHコイルの角度を求めた後であって、前記他方のHコイルの角度を求める前に、前記磁気センサを所定角度
だけ強制的に回転させることにした。
【0011】
また、請求項3に係る本発明では、2方向のHコイルを有する磁気センサの2つのHコイルの計測軸が成す角度を計測する2方向Hコイル間角度計測装置において、ソレノイドコイルの内部に磁気センサ
が回転可能に載置
されるとともに、ソレノイドコイルの外部から2本の平行な非磁性・非導電性のロッド
が磁気センサの回転に伴って進退可能に挿通
されており、各Hコイルを回転させて各Hコイルについてソレノイドコイルによる誘起電圧が最大となる角度を
前記2本のロッドの変位差から求めることで磁気センサの2つのHコイルの計測軸が成す角度を計測
できるように構成することにした。
【発明の効果】
【0012】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0013】
すなわち、本発明では、ソレノイドコイルの内部に磁気センサを回転可能に載置するとともに、ソレノイドコイルの外部から2本の平行な非磁性・非導電性のロッドを磁気センサの回転に伴って進退可能に挿通し、各Hコイルを回転させて各Hコイルについてソレノイドコイルによる誘起電圧が最大となる角度を2本のロッドの変位差から求めることによって、磁気センサの2つのHコイルの計測軸が成す角度を計測しているために、磁気センサに設けられた2方向のHコイルの計測軸が成す角度を精度良く計測することができる。
【0014】
特に、各Hコイルの角度を求める間に(一方のHコイルの角度を求めた後であって、他方のHコイルの角度を求める前に)、磁気センサを所定角度強制的に回転させた場合には、計測に要する時間を短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る2方向Hコイル間角度計測装置及び同装置を用いた2方向Hコイル間角度計測方法の具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1に示すように、2方向Hコイル間角度計測装置(以下、計測装置1という。)は、2つの異なる方向に計測軸を向けたHコイル2,3を有する磁気センサ4を被測定対象物とし、磁気センサ4の2つのHコイル2,3の計測軸が成す角度αを計測する装置である。
【0018】
この計測装置1は、被測定対象物(磁気センサ4)に対して十分に長いソレノイドコイル5の内部(好ましくは中央部)に回転台6を配置するとともに、ソレノイドコイル5の外部から内部に2本のロッド7,8を挿通させている。
【0019】
被測定対象物となる磁気センサ4としては、たとえば株式会社ブライテック社製の2次元ベクトル磁気センサなどがある。磁気センサ4によっては、2つのHコイル2,3の計測軸が成す角度αを基準角度θ(たとえば、90度)と公差角度δθとでθ±δθと規定して製造・販売される。この磁気センサ4には、各Hコイル2,3に公知の電圧計が接続されており、各Hコイル2,3の誘起電圧を計測できるようになっている。なお、各Hコイル2,3は、それぞれの計測軸に沿って巻回されている。
【0020】
ソレノイドコイル5は、伸延方向(
図1の左右方向)を軸方向として巻回されており、通電によって発生する内部の磁束の方向を伸延方向と一致させている。このソレノイドコイル5には、通電回路9が接続されている。この通電回路9によってソレノイドコイル5に所定電圧、所定電流を通電させることができる。
【0021】
回転台6は、外周に垂直な平面状の基準面10〜13を形成している。なお、各基準面10〜13は、被測定対象物となる磁気センサ4が有する2つのHコイル2,3の計測軸が成す大凡の角度(たとえば、前記基準角度θ)で交差させている。この回転台6には、被測定対象物である磁気センサ4が載置される。また、回転台6には、駆動回路14が接続されている。この駆動回路14によって回転台6及び回転台6の上部に載置した磁気センサ4を所定角度単位で回転させることができる。
【0022】
2本のロッド7,8は、セラミックスや樹脂などの非磁性かつ非導電性を有する素材からなり、ソレノイドコイル5の内部において伸延方向に沿って進退移動可能な状態で平行に配置されている。2本のロッド7,8は、先鋭状の先端部を回転台6のいずれかの基準面10〜13に点接触状に当接させ、基端部に公知の接触式変位センサのセンシングロッド15,16を当接させている。これにより、2本のロッド7,8は、回転台6の回転に伴ってそれぞれ伸延方向に進退移動するようになっている。各ロッド7,8の進退移動量(伸延方向の変位)は、各ロッド7,8の進退移動に追従するセンシングロッド15,16によって接触式変位センサで計測することができる。
【0023】
一定のロッド間距離だけ離れて平行に配置された2本のロッド7,8の変位差が計測できれば、ロッド7,8が進退移動する前後における回転台6(基準面10〜13)及び回転台6に載置された磁気センサ4(Hコイル2,3)の回転角度を算出することができる。
【0024】
たとえば、
図2に示すように、回転台6を回転させた時に、ロッド7の変位量がS1、ロッド8の変位量がS2だとすると、ロッド間距離をLとすると、回転角度δは、
tanδ=(S1+S2)/L
で算出することができる。
【0025】
なお、
図2では、回転台6の回転によって回転中心がずれない場合について説明しているが、
図3に示すように、回転台6の回転によって回転中心がずれる場合であっても、そのずれが2本のロッド7,8の変位差で相殺され、上記式を用いて回転角度δを算出することができる。
【0026】
計測装置1は、以上に説明したように構成している。なお、上記電圧計や通電回路9や駆動回路14や接触式変位センサなどをコンピュータ等の制御装置に接続した構成としてもよい。
【0027】
次に、上記計測装置1を用いて磁気センサ4の2つのHコイル2,3の計測軸が成す角度を計測する方法(2方向Hコイル間角度計測方法)について説明する。
【0028】
まず、回転台6の上部に磁気センサ4を回転台6の回転に伴って回転するように載置(固定)する。
【0029】
その後、磁気センサ4の一方のHコイル2の計測軸がソレノイドコイル5の軸方向と概ね一致させた状態とし、回転台6の基準面10に2本のロッド7,8を当接させる。この時の回転台6の回転量を第1の基準角度(たとえば、0度)とし、各ロッド7,8の変位量を第1の基準値(たとえば、0)とする。
【0030】
その後、通電回路9によってソレノイドコイル5に通電し、Hコイル2に接続した電圧計でソレノイドコイル5によるHコイル2の誘起電圧を計測しながら、駆動回路14によって回転台6を所定の角度範囲(たとえば、±10度)で所定の単位角度毎に回転させる。その際には、回転台6の回転に伴って2本のロッド7,8が変位する。また、2本のロッド7,8がそれぞれ変位しても、2本のロッド7,8が非磁性・非導電性を有するために、ソレノイドコイル5の内部の磁束に影響を及ぼすことはない。
【0031】
そして、Hコイル2の誘起電圧が最大となる角度で回転台6を停止し、各ロッド7,8の変位量(第1の基準値との差)を計測する。なお、Hコイル2の誘起電圧が最大となる状態ではHコイル2の計測軸がソレノイドコイル5の軸方向と一致する。
【0032】
このようにして2本のロッド7,8の変位量が計測されると、その変位量の差(変位差)とロッド間距離から回転台6(磁気センサ4のHコイル2)の回転角度(第1の基準角度からの回転角度:第1の角度)を算出することができる。
【0033】
その後、駆動回路14によって回転台6を所定角度(たとえば、磁気センサ4の基準角度θ)だけ強制的に回転させる。これにより、磁気センサ4の他方のHコイル3の計測軸をソレノイドコイル5の軸方向と概ね一致させた状態とすることができ、計測に要する時間を短縮することができる。なお、上記所定角度は、予め正確に測定した回転台6の基準面10〜13の隣り合う角度(たとえば、基準面10と基準面11とが成す交差角度)としてもよい。
【0034】
その後、回転台6の基準面11に2本のロッド7,8を当接させる。この時の回転台6の回転量を第2の基準角度(強制的に回転させた所定角度、たとえばθ)とし、各ロッド7,8の変位量を第2の基準値(たとえば、0)とする。
【0035】
その後、通電回路9によってソレノイドコイル5に通電し、Hコイル3に接続した電圧計でソレノイドコイル5によるHコイル3の誘起電圧を計測しながら、駆動回路14によって回転台6を所定の角度範囲(たとえば、±10度)で所定の単位角度毎に回転させる。その際には、回転台6の回転に伴って2本のロッド7,8が変位する。また、2本のロッド7,8がそれぞれ変位しても、2本のロッド7,8が非磁性・非導電性を有するために、ソレノイドコイル5の内部の磁束に影響を及ぼすことはない。
【0036】
そして、Hコイル3の誘起電圧が最大となる角度で回転台6を停止し、各ロッド7,8の変位量(第2の基準値との差)を計測する。なお、Hコイル3の誘起電圧が最大となる状態ではHコイル3の計測軸がソレノイドコイル5の軸方向と一致する。
【0037】
このようにして2本のロッド7,8の変位量が計測されると、その変位量の差(変位差)とロッド間距離から回転台6(磁気センサ4のHコイル3)の回転角度(第2の基準角度からの回転角度:第2の角度)を算出することができる。
【0038】
一方のHコイル2の誘起電圧が最大となる角度(第1の角度)と他方のHコイル3の誘起電圧が最大となる角度(第2の角度)が算出されれば、第1及び第2の基準角度に基づいて、2つのHコイル2,3の計測軸が成す角度を算出することができる。
【0039】
以上に説明したように、上記2方向Hコイル間角度計測装置及び同装置を用いた2方向Hコイル間角度計測方法では、ソレノイドコイル5の内部に磁気センサ4を回転可能に載置するとともに、ソレノイドコイル5の外部から2本の平行な非磁性・非導電性のロッド7,8を磁気センサ4の回転に伴って進退可能に挿通し、各Hコイル2,3を回転させて各Hコイル2,3についてソレノイドコイル5による誘起電圧が最大となる角度を2本のロッド7,8の変位差から求めることによって、磁気センサ4の2つのHコイル2,3の計測軸が成す角度を計測している。これにより、磁気センサ4に設けられた2方向のHコイル2,3の計測軸が成す角度を精度良く計測することができる。