(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019464
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】内燃機関において用いられるダイナミック・レンジが改良された定速マルチ圧力燃料噴射システム
(51)【国際特許分類】
F02M 37/04 20060101AFI20161020BHJP
F02D 41/32 20060101ALI20161020BHJP
F02M 69/54 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
F02M37/04 B
F02D41/32 A
F02M69/54 Z
【請求項の数】26
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-139523(P2011-139523)
(22)【出願日】2011年6月23日
(62)【分割の表示】特願2004-503792(P2004-503792)の分割
【原出願日】2003年5月9日
(65)【公開番号】特開2011-231770(P2011-231770A)
(43)【公開日】2011年11月17日
【審査請求日】2011年6月23日
【審判番号】不服2014-20538(P2014-20538/J1)
【審判請求日】2014年10月10日
(31)【優先権主張番号】10/143,657
(32)【優先日】2002年5月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504407099
【氏名又は名称】ティーエムシー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】230101177
【弁護士】
【氏名又は名称】木下 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100180079
【弁理士】
【氏名又は名称】亀卦川 巧
(72)【発明者】
【氏名】ホウ、ショウ・エル
【合議体】
【審判長】
加藤 友也
【審判官】
松下 聡
【審判官】
梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平7−91342(JP,A)
【文献】
特開昭63−120848(JP,A)
【文献】
特開平11−287165(JP,A)
【文献】
特開平11−210597(JP,A)
【文献】
特開2002−4965(JP,A)
【文献】
実開昭59−21081(JP,U)
【文献】
特開平7−286568(JP,A)
【文献】
特開平8−82264(JP,A)
【文献】
特開平8−334076(JP,A)
【文献】
特開2001−221085(JP,A)
【文献】
特開平9−195872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M37/04
F02D41/32
F02M69/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに使用される、瞬時にマルチ圧力を作り出すことができる燃料噴射システムであって、
前記システム用の燃料タンクと、
入口と出口を有する燃料ポンプであって、前記入口が前記燃料タンクにつながり、予め定められた実質的に一定の速度で作動する燃料ポンプと、
少なくとも1つの燃料噴射器に流体連通している燃料レールと、
前記燃料ポンプの出口から前記燃料レールへの流体連結をもたらすメイン燃料ラインと、
前記メイン燃料ライン内の、前記燃料ポンプの出口を含み燃料レール及び燃料噴射器以外の或る位置から、前記燃料ポンプの入口を含む前記燃料タンクの或る位置に連通され、開通時に燃料圧PLで安定させる再循環経路を作り出す、燃料制限のための適当な直径を有する穴を有するダイヤフラム状のプレート、又はニードルバルブ装置である流量制限手段を有する燃料バイパス・ラインと、
前記燃料バイパス・ラインを開閉する燃料バイパス・ライン内の燃料バイパス・コントロールであって、前記開閉が前記システムの圧力を高圧状態PHと低圧状態PLを含む2つの状態の間で瞬時に変えることにより、2つの圧力状態間で前記メイン燃料ライン内の圧力及び前記少なくとも一つの燃料噴射器における1パルスにつき噴射される燃料量を瞬時に変える、ノーマリークローズドの燃料バイパス・コントロールとを有してなる、
燃料噴射システム。
【請求項2】
燃料のパルスを送込み、前記燃料噴射器をアクチュエートするようにプログラムされたコンピュータをさらに具え、
前記コンピュータが前記圧力状態を選択するために前記エンジンからのセンサ信号を受信し、選択された前記圧力状態において噴射され、必要に応じた燃料量をコントロールするために前記パルスの幅を設定し、
燃料噴射のダイナミック・レンジが前記圧力状態を切換えることによってその幅が広げられ、
前記コンピュータが、通常走行と運転開始時に高圧状態PH下でパルスを送込み、且つ、都市走行において低圧状態PL下でパルスを送込む、請求項1の燃料噴射システム。
【請求項3】
前記コンピュータが、エンジン温度、速度、トルク、燃料圧力、空気圧、及びペダル位置を検知する、請求項2の燃料噴射システム。
【請求項4】
前記コンピュータが、エンジンが十分に暖かく、要求されている1パルスごとの燃料量が低圧状態PL下において利用可能な燃料パルスによる最大量よりも少ないというエンジン管理コントロールからの信号に応答し、前記低圧状態PLを作り出す燃料の再循環を許容するために、前記燃料バイパス・コントロールを開く信号を送り、前記エンジン管理コントロールに対し、都市走行において、アクセルが解放されているときの燃料を節約するために、シングル圧力システムの最小の燃料パルスによるものよりも少ない燃料噴射量を許容させるプログラミングを含む、請求項2の燃料噴射システム。
【請求項5】
前記メイン燃料ライン内の、前記燃料ポンプの出口を含み燃料レール及び燃料噴射器以外の或る位置から、前記燃料ポンプの入口を含む前記燃料タンクの或る位置に連通され、ポンプ作動を安定化させるために燃料の再循環を許容する、安定した燃料圧PHを作り出す、燃料制限のための適当な直径を有する穴を有するダイヤフラム状のプレート、又はニードルバルブ装置である流量制限手段を有する燃料戻りラインを具えた、請求項1の燃料噴射システム。
【請求項6】
燃料噴射システムであって、
燃料タンクと、
少なくとも1つの燃料噴射器に流体連通している燃料レールと、
前記燃料タンクに接続され、予め定められた実質的に一定の速度で作動する燃料ポンプと、
前記燃料ポンプの出口から前記燃料レールへ接続するメイン燃料ラインと、
前記燃料ポンプの出口を含み燃料レール以外の前記メイン燃料ラインの或る位置から、前記燃料ポンプの入口を含む前記燃料タンクの或る位置を連通させ、前記燃料ポンプの作動を安定化させる燃料の再循環経路を作り、安定した燃料圧PHを作り出す、燃料制限のための適当な直径を有する穴を有するダイヤフラム状のプレート、又はニードルバルブ装置である流量制限手段を有する燃料戻りラインと、
前記燃料ポンプの出口を含み燃料レール以外の前記メイン燃料ラインの或る位置から、前記燃料ポンプの入口を含む前記燃料タンクの或る位置を連通させ、開通時に前記燃料ポンプの作動を安定化させる燃料の再循環経路を作る、安定した燃料圧PLを作り出す、燃料制限のための適当な直径を有する穴を有するダイヤフラム状のプレート、又はニードルバルブ装置である流量制限手段を有する燃料バイパス・ラインと、
エンジンの作動状態に応じて前記システム内の異なった圧力状態PH又はPLを瞬時に作り出すために前記燃料バイパス・ラインを開閉する燃料バイパス・コントロールとから構成される、
燃料噴射システム。
【請求項7】
前記燃料バイパス・コントロールが電子機械バルブ及び燃料の要求量と運転状況に応じて前記電子機械バルブを開閉する手段から構成されている、請求項6の燃料噴射システム。
【請求項8】
燃料噴射システムであって、
燃料タンクと、
少なくとも1つの燃料噴射器に流体連通している燃料レールと、
前記燃料タンクに接続され、予め定められた実質的に一定の速度で作動する燃料ポンプと、
前記燃料ポンプの出口から前記燃料レールへ接続するメイン燃料ラインと、
前記燃料ポンプの出口を含み燃料レール以外の前記メイン燃料ラインの或る位置から、前記燃料ポンプの入口を含む前記燃料タンクの或る位置へ連通する、燃料制限のための適当な直径を有する穴を有するダイヤフラム状のプレート、又はニードルバルブ装置である流量制限手段を有する燃料バイパス・ラインと、
エンジンの作動状態に応じて前記システム内の異なった燃料圧を瞬時に作り出すために前記燃料バイパス・ラインを開閉する燃料バイパス・コントロールとから構成され、
前記燃料ポンプが、前記エンジンの燃料の要求量が前記予め定められた実質的に一定の速度における燃料噴射ダイナミック・レンジの限度を超えた場合に燃料噴射ダイナミック・レンジをさらに広げるためにもう一つの予め定められた実質的に一定の速度を有する、
燃料噴射システム。
【請求項9】
燃料圧を安定させる再循環経路が使用され、燃料タンクからエンジンの燃料噴射器へ燃料を送る燃料噴射システムであって、
燃料タンクと、
少なくとも1つの燃料噴射器と流体連通している燃料レールと、
入口と出口を有し、前記入口が前記燃料タンクに連通され、予め定められた実質的に一定の速度で作動する燃料ポンプと、
前記燃料ポンプの出口から前記燃料レールへ接続するメイン燃料ラインと、
前記燃料ポンプの出口を含み燃料レール以外の前記メイン燃料ラインの或る位置から、前記燃料ポンプの入口を含む前記燃料タンクの或る位置へ連通し、燃料の再循環を許容し、前記メイン燃料ラインから燃料レールまでの安定した燃料圧PHを作り出す、燃料制限のための適当な直径を有する穴を有するダイヤフラム状のプレート、又はニードルバルブ装置である流量制限手段を有する燃料戻りラインとから構成される、
燃料噴射システム。
【請求項10】
前記燃料戻りラインを開閉し、前記システムの圧力を高圧状態PH2と低圧状態PHとを含む2つの圧力状態の間で瞬時に変え、前記メイン燃料ラインから燃料レールまでの2つの圧力状態間での燃料圧と、少なくとも1つの燃料噴射器において1パルスにつき噴射される燃料量を瞬時に変える、前記燃料戻りライン内に設けられるノーマリーオープンの燃料戻りコントロールをさらに具える、請求項9の燃料噴射システム。
【請求項11】
前記燃料ポンプの出口を含み燃料レール以外の前記メイン燃料ラインの或る位置から、前記燃料ポンプの入口を含む前記燃料タンクの或る位置へ連通し、開通時に、燃料の再循環を許容する、安定した燃料圧PLを作り出す、燃料制限のための適当な直径を有する穴を有するダイヤフラム状のプレート、又はニードルバルブ装置である流量制限手段を有する追加的な燃料バイパス・ラインと、
コンピュータからの信号又は手動によるアクチュエートで開閉がコントロールされ、燃料の要求量に応じて高圧状態PHと低圧状態PLの間で前記燃料噴射システムの圧力を瞬時に切換える、前記燃料バイパス・ラインを開閉する燃料バイパス・コントロールとをさらに具える、請求項9又は10の燃料噴射システム。
【請求項12】
燃料ポンプを予め定められた実質的に一定の速度に設定し、燃料を燃料タンクから燃料レール及びエンジン用の少なくとも1つの燃料噴射器へ送り込み、
前記燃料ポンプの出口を含み前記燃料レール及び燃料噴射器以外のメイン燃料ラインから、前記燃料タンクへ、燃料制限のための適当な直径を有する穴を有するダイヤフラム状のプレート、又はニードルバルブ装置である流量制限手段を有する、ノーマリークローズドの燃料バイパス・ラインを通じて一部の燃料を迂回させ、
要求に応じて前記燃料バイパス・ラインを開き、要求される最大パワーを作り出すのに最も近い高圧状態PHにおける燃料の圧力から、最低の圧力に最も近い、燃料が霧状に噴射され、エンジンを円滑に運転させる低圧状態PLに瞬時に変えることにより、アイドリング中及びアクセルが解放された際に都市走行中の燃料を節約するために燃料圧力及び前記少なくとも1つの燃料噴射器において噴射される燃料量を瞬時に削減する、
燃料噴射エンジン内における都市走行の燃料効率を向上させるための方法。
【請求項13】
前記各圧力状態における燃料量のさらなるコントロールが、パルスごとの燃料噴射量を変えるために各燃料噴射器の燃料噴射パルスの幅を変えることによって達成され、低圧状態PLにおける最小許容パルス幅が、都市走行に燃料を節約するために使用され、高圧状態PHにおける最大パルス幅がエンジンの最大パワーを生成するのに使用される、請求項12の方法。
【請求項14】
予め定められた実質的に一定の速度で作動し、燃料を燃料タンクからメイン燃料ラインを通じて燃料レール及びエンジン用の少なくとも1つの燃料噴射器へ送り込む燃料ポンプと、
燃料制限のための適当な直径を有する穴を有するダイヤフラム状のプレート、又はニードルバルブ装置である流量制限手段とノーマリークローズドの開閉バルブを具え、前記燃料レール以外の前記燃料ポンプの出口を含む前記メイン燃料ラインから、前記燃料タンクに戻るように接続されている燃料バイパス・ラインと、
燃料制限のための適当な直径を有する穴を有するダイヤフラム状のプレート、又はニードルバルブ装置である流量制限手段とノーマリーオープンの開閉バルブを具え、前記燃料レール以外の前記燃料ポンプの出口を含む前記メイン燃料ラインから、前記燃料タンクに戻るように接続されている燃料戻りラインとを具え、
3つの圧力状態間において実質的な時間の遅れなしに瞬時に燃料の流量圧力を変えるために前記バルブの両方又は一方を開閉し、それにより各圧力状態の少なくとも1つの燃料噴射器において、与えられたパルス幅によって噴射される燃料量を瞬時に変え、
前記各圧力状態における燃料量のさらなるコントロールが各燃料噴射器における燃料噴射パルスのパルス幅を変え、各パルスにおいて噴射される燃料量を変えることによりなされ、低圧状態PLにおける最低許容パルス幅が都市走行中のアクセルが解放された際に使用され、且つ、高圧状態PHにおける最大パルス幅が、エンジンの最大パワーを生成するのに使用され、
エンジンの最大出力を上回る高出力を瞬時に生成するために前記バルブの両方を閉じる、
燃料噴射エンジンの都市走行の燃料効率を向上させ、瞬間的な高出力を得る方法。
【請求項15】
予め定められた実質的に一定の速度で作動する燃料ポンプを有し、それぞれが、燃料制限のための適当な直径を有する穴を有するダイヤフラム状のプレート、又はニードルバルブ装置である流量制限手段と開閉バルブを具えた燃料バイパス・ライン及び燃料戻りラインを通じて燃料レールの上流のメイン燃料ラインから燃料タンクへ燃料を一部戻すシステムにおいて、冷えたエンジンの始動と加速のために瞬間的な超高出力とトルクを生み出す1パルス当たりで最大の燃料噴射を送込むために、瞬時に最高圧力を得る方法であって、
前記燃料バイパス・ライン及び燃料戻りラインを閉じる、
方法。
【請求項16】
燃料ポンプが予め定められた実質的に一定の速度に設定され、
エンジンの燃料の要求量と運転状況に対して適した圧力レベルを選択する開閉バルブを使用し、燃料レールの上流のメイン燃料ラインから燃料を一部戻し、燃料圧力を安定化させるための燃料の再循環経路である、燃料制限のための適当な直径を有する穴を有するダイヤフラム状のプレート、又はニードルバルブ装置である流量制限手段を具えた燃料バイパス・ラインを閉じることによって、前記予め定められた実質的に一定の速度下において、圧力レベルを瞬時に作り出すことができる燃料噴射システムにおいて、
エンジンの燃料の要求量が、設定された利用可能な全ての圧力状態の燃料噴射ダイナミック・レンジの限度を超えた場合に、燃料噴射ダイナミック・レンジをさらに広げる方法であって、
燃料ポンプにもう一つの予め定められた実質的に一定の速度を設定する、
方法。
【請求項17】
エンジンに使用される定速マルチ圧力燃料噴射システムにおける圧力を制御する方法であって、
(a)燃料ポンプをエンジン速度に関わらず実質的に一定の速度で作動させ、燃料タンクからメイン燃料ラインを通じて少なくとも1つの燃料噴射器と流体連通している燃料レールに加圧燃料を送り込み、それぞれが開閉バルブ及び流量を調整する、燃料制限のための適当な直径を有する穴を有するダイヤフラム状のプレート、又はニードルバルブ装置である流量制限手段を有する燃料バイパス・ライン及び燃料戻りラインによって、前記メイン燃料ライン内の安定した燃料圧力を作り出すために、加圧燃料を前記燃料レールの上流の位置から前記燃料タンク又は燃料ポンプの入口のいずれかに戻し、燃料の再循環経路を形成するステップと、
(b)アクセル・ペダル位置センサから信号を受信するステップと、
(c)前記信号と前記アクセル・ペダル位置センサの最大電子信号とを比較するステップと、
(d)前記ステップ(c)において、前記信号が前記最大電子信号と一致する場合に、前記燃料バイパス・ライン及び燃料戻りラインを閉じて燃料噴射システムにおける燃料圧力を高めるステップと、
(e)前記信号が前記最大電子信号と一致している間、前記燃料バイパス・ライン及び燃料戻りラインをクローズドの状態に維持するステップとからなる、
方法。
【請求項18】
前記ステップ(c)を、最大パワーの要求の有効性を確実にするために、予め定められた回数連続して行う、請求項17の方法。
【請求項19】
前記ステップ(d)において、前記信号が前記最大電子信号と一致する場合に、エンジン温度を測定し、エンジン温度が過熱していない場合にのみ前記燃料バイパス・ライン及び燃料戻りラインを閉じ、前記ステップ(e)において、前記信号が前記最大電子信号と一致し、エンジン温度が過熱していない間、前記燃料バイパス・ライン及び燃料戻りラインをクローズドの状態に維持する、請求項17の方法。
【請求項20】
前記ステップ(c)において、前記信号が前記最大電子信号と一致する場合に、前記ステップ(d)において、前記燃料バイパス・ライン及び燃料戻りラインが閉じられていた時間が予め定められた時間を超えていないかを判定し、前記燃料バイパス・ライン及び燃料戻りラインが閉じられていた時間が予め定められた時間を超えていなかった場合にのみ前記燃料バイパス・ライン及び燃料戻りラインを閉じ、前記ステップ(e)において、前記信号が前記最大電子信号と一致し、前記燃料バイパス・ライン及び燃料戻りラインが閉じられていた時間が予め定められた時間内である間、前記燃料バイパス・ライン及び燃料戻りラインをクローズドの状態に維持する、請求項17の方法。
【請求項21】
エンジンに使用される定速マルチ圧力燃料噴射システムにおける圧力を制御する方法であって、
(a)燃料ポンプをエンジン速度に関わらず実質的に一定の速度で作動させ、燃料タンクからメイン燃料ラインを通じて、少なくとも1つの燃料噴射器と流体連通している燃料レールに加圧燃料を送り込むステップと、
(b)前記メイン燃料ラインの前記燃料レール以外から前記燃料タンクまでを連通し、燃料の再循環経路を作り出し、開通時に前記システムを低圧状態PLで安定化させる、流量を調整する、燃料制限のための適当な直径を有する穴を有するダイヤフラム状のプレート、又はニードルバルブ装置である流量制限手段とノーマリークローズドの開閉バルブを具えた燃料バイパス・ラインを設けるステップと、
(c)燃料圧力を瞬時に下げるために前記ノーマリークローズドの開閉バルブをアクチュエートしオープンにすることができる、車両の運転者が利用可能な手動装置を設けるステップとからなる、
方法。
【請求項22】
燃料噴射内燃エンジンの標準的な燃料供給システムをコントロールする方法であって、
燃料ポンプを予め定められた実質的に一定の速度に設定し、
燃料制限のための適当な直径を有する穴を有するダイヤフラム状のプレート、又はニードルバルブ装置である流量制限手段を有する燃料戻りラインを、燃料レール以外の前記燃料ポンプの出口を含むメイン燃料ライン内の或る位置から、前記燃料ポンプの入口を含む燃料タンクに連結し、前記燃料ポンプの動作を安定化させる燃料の再循環経路を作り出す燃料戻りラインを通じて、前記燃料の一部をメイン燃料ラインから逸らし、
前記メイン燃料ラインから燃料レールまでの実質的に一定の圧力レベルPHを作り出す、
方法。
【請求項23】
前記燃料戻りラインが該燃料戻りラインを開閉するノーマリーオープンの燃料戻りコントロールを具え、
前記燃料戻りコントロールを開閉し、前記システムの前記メイン燃料ラインから燃料レールまでの圧力を高圧状態PH2と低圧状態PHとを含む2つの圧力状態の間で瞬時に変え、少なくとも1つの燃料噴射器において噴射される1パルス当たりの燃料量を瞬時に変える、請求項22の方法。
【請求項24】
燃料噴射のダイナミック・レンジが、燃料量対パルス幅の関係がqmin<q<qmaxの範囲における燃料噴射パルスのパルス幅のコントロールにより設定される、請求項22又は23の方法。
【請求項25】
車両が都市走行モードにあり、前記燃料ポンプに比較的低い電圧が適用され、もう1つの予め定められた実質的に一定の速度を割り当てられることにより、前記システムがもう1つの予め定められた圧力レベルPL(PL<PH)で安定化され、圧力レベルPL下の最小パルス幅における燃料噴射パルスがPHにおけるそれよりも小さいが、エンジンを円滑に動かすことができ、都市走行においてアイドリング中を含むアクセルが解放された際に燃料を節約する、請求項22又は23の方法。
【請求項26】
エンジンの燃料の要求量に応じた1パルスにつき噴射される燃料量qが、前記ポンプ速度の圧力PH下の最大パルス幅における最大燃料噴射量よりも多い場合に、前記燃料ポンプに比較的高い電圧が適用され、もう1つの予め定められた実質的に一定の速度を割り当てて、前記システムをもう1つの予め定められた圧力レベルPH2(PH2>PH)で安定化させ、追加的な最大パワーとトルクを得るために1パルスにつき噴射される燃料量をさらに増やす、請求項22又は23の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジン、特に、燃料噴射システムを利用してエンジンに使用される燃料システムに関する。
【0002】
自動車排気等のエンジン排気は、空気汚染を惹起こす最大の原因の1つである。これは、交通渋滞中の大都市圏や多数の飛行機が離陸前に平均20分から40分間副滑走路で待機する飛行場の周りにおいて最も見受けられる。エンジンが単に作動状態を維持する以外の目的なしに作動している場合、IC(内燃)エンジン内におけるアイドリングの減少が燃料を節約する。これはまたスモッグに変わる排ガスの排出を減らす。米国には1億近くの自動車やトラックがあり、これらの殆どは大都市圏に集中しているため、上記問題は大都市圏において最も深刻である。恐らく、汚染減少及びエネルギー改良のより有意義な方法は、如何なる車両が如何なる速度で走行した場合に、1マイルにつきどれくらいの燃料が消費されているかを計測することによりなる。この計測は、消費される燃料及び走行距離において発生する排ガスの量を示す。低速度(又はアイドリング)での燃費のより良い制御が、汚染防止、燃料節約及び都市走行燃費の改善により多くの影響を与えることは明らかである。
【0003】
低速での燃費制御の改善は、エンジンの性能に悪影響を及ぼしてはならない。例えば、走行車両の運動エネルギーがその質量(又は重量)に正比例することは、物理学において公知である。如何なる速度においても、より重い車両を維持するためには、同じ速度の、より軽い車両よりも多くのエネルギーを要する。一方、1ガロンのガソリンから得られるエネルギー量は定量である。その結果、幹線道路走行においてより重い車両を走らせるためには、より軽い車両よりもより多くの燃料が必要である。車両を直ちに加速するためにも、より多くの燃料が必要である。これらの考察に鑑み、特に、アイドリング中の燃費を減少させると同時に、負荷条件の全般に渡りエネルギー需要を満たすことが望ましい。
【0004】
エンジン・ピストンは、トルクTをフライホイールに伝える。これはアイドリング時において、エンジン摩擦や冷却フライホイール・ファン及びジェネレータ等の付属品によるドラグによりバランスされる。一次の近似として、平衡トルクは回転速度
ωに比例する。回転速度
ωでフライホイールのアイドリングを維持するために必要なパワーはT
ωである。これは毎秒噴射される燃料Qにより供給される。フライホイールの動力エネルギーは、機械的手段を通して走行中の車両に伝達される。
【0005】
エンジンに1秒当たりに伝えられるエネルギー〜Q〜T
ω エンジンによって生み出される馬力(パワー)であり、
そして、Q〜
ωqである。
故に、q〜T〜I
α〜M
ω(数式1)
そして、Q〜q
2 (数式2)
ここに、
ωはrps(又はrpm/60)のエンジン速度、Mはエンジン・フライホイールの有効質量、Tはトルク、
αは角加速度、Iはフライホイールの慣性(inertia)の角度モーメント、Qは1秒につき噴射される燃料の総量、及びq は1パルスにつき噴射される燃料量である。すなわち、1次の近似として、エンジンアイドリング速度
ωは1パルス当たり噴射される燃料量qと正比例し、燃料消費率の総量Qは1パルスにつき噴射される燃料量の2乗に比例する。1パルスにつき噴射される燃料の10%の削減は、アイドリング中における毎秒の燃料消費総量の約19%を節約する。
【0006】
燃料噴射器は、以前の燃料供給をキャブレタを通して置換えるべく、今日の自動車において一般に使用されている。燃料システムは一般に燃料タンク中に沈められているか又はタンクの外側に配置されている燃料ポンプを有しており、これは燃料を圧力下において燃料ラインを通し、燃料レール、燃料噴射器内へ供給する。適当なノズル・デザインの燃料噴射器はエンジン・ブロック内のシリンダのエア吸気マニホルドにおいて燃料ミストを噴霧する。適当な割合で空気と結合した燃料ミストは、吸気ストローク中にエンジン・シリンダへ吸込まれる。最適空気及び燃料の混合物は、デトネーション(爆発)をより容易にし、燃焼をより完全なものにする14.7対1の化学量論比率を有する。燃料噴射器は、高温でエンジン・シリンダの近く(又は内部)に配置されている。電気機械的に制御されるばね負荷されたボールバルブが、燃料噴射器のノズルを封止するために使用される。これは、作動中以外における加圧燃料のエンジン・ブロック内への漏れを防止する。加圧燃料は燃料ライン内の燃料蒸気(fuel vapor)を減らし、これはベーパロック(vapor lock)を最小限に抑える。なお、ベーパロックは高温エンジンのスタートアップに干渉する可能性があるものである。オペレータがアクセルペダルを押すと、ペダルの押しはマイクロプロセッサに送信される電気信号に変わる。様々なセンサからのエンジン作動情報と合わせて、マイクロプロセッサはそれから予め決められた量の燃料を燃料噴射プロセスを通してエンジン・シリンダへ送るために燃料噴射器を起動する。
【0007】
1パルスにつき噴射される燃料の量qは、送信された電気パルスのパルス幅にリニア(線形)に比例している。
q=k(t−C)(数式3)であり、
また、
k〜Pn(数式4)であり、
ここで、kは毎秒の連続噴射量を反映する定数であり、tは燃料噴射パルスのパルス幅であり、Cは修正定数であり、nは定数である。
【0008】
連続噴射率kは燃料圧Pの強い関数である。噴霧されたミストの質はまたノズルの形のデザインに左右される。1次の近似として、「n」は約1/2である。実測値は1/2から1/3の間で変動し、後の方の値がより高い圧力に近づく。すなわち、同一の運転条件下において燃料噴射量を2倍にするためには、燃料圧は少なくとも4倍増加されなければならない。車両の大量生産時において、線形性及び再現性は不規則なエンジン運転を避けるためにリニア運転レンジの1%以内に維持されなければならない。マイクロプロセッサは、エンジンの様々なセンサから情報を受信し、必要とされる燃料の量に基づいてパルス幅を決定する。
【0009】
一連のマルチ・ポート噴射において、燃料噴射器は与えられたエンジン・シリンダへの(又は直接シリンダ内への)燃料吸入ポートに取付けられている。
【0010】
最大燃料噴射が使用される全速力において、典型的なエンジンは約6000rpmで作動している。燃料吸入ストロークは通常、約5ミリ秒間だけ続く。一方、ばね負荷されたボール・バルブを単に物理的に「開閉」するのに、1ミリ秒以上かかる。これはアイドリング中における燃料噴射の最小パルス幅を、2ミリ秒間程に設定する。燃料噴射パルスは、故に、ばね負荷されたボール・バルブを作動するのに必要とされる時間により限定され、その結果、予測不可能な燃料噴射量を有してしまい、不規則なエンジン性能を生じてしまう。様々な異なるICエンジンの燃料噴射器を作動するための典型的なリニアレンジは2ミリ秒から10ミリ秒の間である。製造業者は、最大パルス幅において最大パワーを達するために、通常、与えられた燃料圧におけるノズルの直径を選ばなければならない。システムパラメータは有効なパルス幅で所望のパワーが得られるように選ばれなければならないため、これは燃料噴出システムの、いわゆる、ダイナミック・レンジを限定する。その結果、燃料噴射システムは、しばしばレンジの下端、すなわち、アイドリング中に最小パルス幅のあるところにおいて、余りに多くの燃料を有する。このように、燃料噴射のダイナミック・レンジには改善の余地がある。
【0011】
例えば、アール・イー・ウェーバーに付与された米国特許第5355859号では、変わり得る燃料圧を生成し維持すべく、燃料ポンプへ適用する電圧を変えている。ジェイ・ダブリュ・ホームズに付与された米国特許第5762046は燃料ポンプ・コイルと直列に抵抗器を使用している。マイクロプロセッサから制御信号につき直列抵抗器を選択的に通すことにより、燃料ポンプは燃料送出システムのための二重速度を生成するために異なる加電圧を有する。しかしながら、燃料ポンプは通常大きい誘導負荷を有するため、燃料ポンプへ適用される電圧の変動は通常、秒間の燃料圧を安定させない。この燃料ポンプ安定化の遅延は、次にエンジン反応の遅延を惹起こし、円滑な作動を維持するために抵抗器全体の電圧降下を補うための微調整を必要とする。さらに、アイドリング中においてエンジンの作動を維持するためにはごく微小の燃料しか必要ではないため、噴出が適当なリニアレンジ内で作動するのを確実にするため、燃料ポンプは通常非常に低速度で作動されなければならない。燃料ポンプのこのように非常な低速度を得るためには、ポンプに加えられる電圧も通常、これに対応して低くなければならない。このように対応した低い電圧において作動される場合、燃料ポンプはゆっくりと作動し、結果として望ましくない圧力変動が起こる。また、ポンプの寿命がより短くなることもあり、またこのような分散の関連する頻繁且つ突然の加速又は減速を伴う変量速度で走行する場合、信頼性が減少されることもある。
【0012】
燃料ポンプの速度を変えるために必要な応答時間は、燃料噴射工程に比べて容認し難い程遅い。燃料計測はどれくらいの燃料が燃料ポンプにより送られているのかに左右されるため、燃料噴射パルスが起こっている時点で、通常、望ましくない圧力変動が起こる。上記欠点を対処する技術の試みは、精々、混合した結果を出しただけである。燃料噴射中の圧力変動を最小限に抑えるために、過剰な燃料供給、圧力調整器及び圧力計がしばしば使用される。燃料レールにたまった過剰な燃料を燃料タンクに流出させて戻すために、圧力放出バルブ及び燃料レールからの超過燃料戻りラインもまた取付けられる。燃料タンクに戻った高温燃料は、長時間にわたる運転中、燃料タンク内において温度を上げる。また、燃料システム内の高温燃料蒸気を回復するための注意も必要である。
【発明の開示】
【0013】
定速マルチ圧力燃料噴射システムが開発されてきた。燃料システムは、一定の駆動(又は一定速度)で作動すると同時に、多数の圧力レベルが異なった手段により生成されるポンプを有する。これは、システムがより多くの燃料を送ることが可能になるまで安定するのを待つ替わりに、エンジンへオンデマンドへの燃料供給を即座に増加させる機能を提供する。同じシステムは、また、燃料を節約するために、アイドリング時のエンジンの運転を維持するために、より少ない燃料を送ることも可能である。
【0014】
本発明は、与えられた一定の燃料ポンプ速度において燃料流量を制限することにより、即座にマルチ圧力レベルへオンデマンドで生成することが可能な燃料噴射送出システムの構造及び方法を説明する。これは、燃料噴射のダイナミック・レンジを増やし、燃料圧力変動を最小限にする。故に、本発明を組込んだ同じエンジンは以下のことを可能にする:(1)より多くのパワーを最大負荷状態でオンデマンドで即座に送込む、これによって車両を数秒間で静止状態から毎時60マイルまで加速する;(2)エンジンを円滑に運転させながらアイドリング速度を落とし、これによって燃料を節約し、都市走行燃費を改善し、さらにアイドリング時の排ガスを減らす;(3)エンジンが運転している時間の長さに関係なく、燃料タンクの温度を変えない;及び(4)ポンプは一定の加速又は減速なしに一定速度で作動しているため、燃料ポンプの寿命を長くする。燃料節約及び排ガス制御は、たった1台の車両にとっては大したことではないように思われるが、この蓄積効果は交通渋滞の中や、多数の車両がエンジンを作動したままで徐行する如何なる場所においても見られる。本発明は、自動車、飛行機及びディーゼルエンジンに使用されるICエンジンに適用される。故に、より良い都市走行燃費を得るべく、燃料を節約する。長年運転された既存の車両をも、低いアイドリング速度を得て、また円滑に走行するために、最小限の労力で改良することが可能である。本発明が多数の車両に適用された場合、市民は大都市圏においてよりきれいな空気の蓄積効果を享受することができる。
【0015】
燃料流量の絞りを調整することにより、燃料噴射システムはさらに広いダイナミック・レンジ(1秒当たり噴射される燃料の最大量対最小量の比率として定義される)を有するため、たとえ非常に低速度(又はアイドリング)でもエンジンの円滑な運転を維持するために、1パルスにつき噴射されるごく微小量の燃料を送込むため、即座に非常に低いが一定している燃料圧をもたらすことができる。同じ燃料噴射システムはまた、オペレータが急に加速しなければならない時により多くのパワーを送るために、追加的燃料圧をオンデマンドで即座にもたらすことが可能である。これら全ての機能は、燃料ポンプが一定速度で安定して運転している間に達せられる。
【0016】
また燃料戻りラインは、予め決められた圧力で燃料システムを安定させるために、少量の燃料の流れの進路をポンプの流出口から(又はメイン・フィルタから)燃料タンクへ逸らす(divert)。すなわち、燃料戻りライン・システムはポンプ計測機能により燃料圧力変動を最小限に抑える。これはまた、燃料レールにおける圧力の蓄積を防ぐために、燃料レールにおける熱い燃料を流出させ、燃料タンクに戻らせる必要性をなくす。タンクに戻る高温燃料がなければ、燃料タンク内の温度は車両の運転時間の長さに関係なく変化しないままである。
【0017】
オペレータの要求及びこれらに限られてはいないが、エアフロー、エンジン速度、トルク及び温度等のエンジンからのセンサー・シグナル次第で、燃料システムは1つの定常状態から他の新たな圧力レベルにある定常状態へ燃料ポンプの駆動(又は速度)を変えることなくほぼ瞬時に切換えることが可能である。燃料圧力の安定化により、マイクロプロセッサが1パルスにつき所望の量の燃料を送込むための適当な燃料注入パルス幅を予測することが可能になる。これはまた、ディーゼルエンジンにおいて一般に使用されるスプリット注入方式において1パルスにつき提案された燃料量を送込むための推測過程を最小化する。
【0018】
本発明の重要な目的は、定速度でポンプを運転しながら、燃料圧力を1つの定常状態から他の状態へ瞬時及び正確に変える機能である。各状態における圧力は最小圧力変動により安定している。これはエンジンに送込まれる燃料量のより正確な推定値を確実にする。
【0019】
本発明のもう1つの目的は、ポンプが適切な電圧において定速度に運転しながら、アイドリング及び低速度での運転に必要な最小限のリップルで通常の運転燃料圧力から非常に低い安定した圧力に即座に変えることを可能にすることである。
【0020】
本発明のさらなる目的は、瞬時の加速のために、燃料ポンプに加えられた運転電圧を変えることなく、通常の運転圧力からより高い燃料圧力をオンデマンドに即座に切換えることである。
【0021】
本発明のまたさらなる目的は、一定の燃料圧力を維持し、燃料レールにおける過熱燃料や圧力蓄積を避けるために燃料を燃料戻りラインを通して常に循環させることである。従って、燃料レールからの高温燃料は燃料タンクに戻る必要がなくなり、またタンク内の温度は車両の運転時間の長さに関係なく変化しないままである。一定の燃料圧力はまた1パルスにつき注入される燃料のより予測可能な量を確実にする。
【0022】
これら上記の目的は、燃料ポンプが一定速度で運転している間(又は燃料ポンプに加えられる駆動電圧が燃料噴射器の適当なリニア作動レンジ内の一定値に設定されている間)に達成されることが可能である。燃料ポンプは頻繁且つ突然の加速又は減速を受けないため、ポンプの寿命は長くなり得る。
【0023】
後述する図面において、本発明の図面の全頁にわたり各同じ部分につけられた各同じ参照符号を有する1つ又はそれ以上の好ましい実施形態が例示されている。本発明はこの図面中に描かれた実施形態に限定されるものではなく、むしろこの明細書に添付されている請求の範囲及びそれと同等の構造により定められるものである。
【0024】
本明細書は本発明であるとみなされる要旨を特に示し明確に請求する請求の範囲で締めくくられるが、本発明は上記添付図面に関連している実施形態の以下の詳細な説明に基づいて、これからさらに説明される。
【0025】
本発明の燃料噴射システムの構造は
図1及び
図2に示されている。その操作及びその特性の図解は両方の図に関連している。これらの図には図示されてないが、マイクロエレクトロニクスの技術専門家には周知であるのは、このシステムを操作するために使用されるマイクロエレクトロニクスのセットアップである。埋込コントローラ、マイクロプロセッサ又はプログラム可能な論理回路を中枢部として使用することができる。これは独立型ユニット、又は車両のメインCPU(又はECU)のサブルーチンであってもよい。プログラムはROM、PROM、EPROM、又はハードディスク、CD−ROM、テープ・ドライブ等のようなその他の従来の記憶媒体に埋込まれることが可能である。プログラムはRAMを通してマイクロプロセッサによって実行される。シーケンス及び操作の論理は
図5及び
図6に示されている。
A.(デュアル(dual)圧力を瞬時に生成する基本的流体システム)
【0026】
図1は本発明の一実施形態である。本発明の燃料噴射流体システムは、燃料タンク10;燃料ポンプ11(燃料タンク内に沈められているか又はタンクの外側に取付けられていてもよい);メイン燃料フィルタ13;流体連通におけるシステムの様々な構成部分をつなぐ燃料供給ライン51、52、53、55;全ての燃料噴射器20が接続されている燃料レール17;燃料バイパス・コントロール30;及び燃料噴射プロセスにおける再利用のために、余分なバイパス燃料をメイン燃料ライン53から燃料タンク10へ、又はライン38を通って燃料吸入ライン51、そして、燃料ポンプ11へ供給する燃料バイパス・ライン35、37の部品からなる。燃料ポンプ11は、ポンプの適当な運転レンジ内で、一定の速度で作動する。
【0027】
燃料バイパス・コントロール30は望ましくは電気機械的にコントロールされたバルブ(その作動に応じてノーマリーオープン又はクローズド)を有する。ライン35、37及びバイパス・コントロール30は燃料の進路を部分的にメイン燃料ライン53から変えるバイパスからなる。燃料バイパス・コントロール30がノーマリクローズドの場合、燃料ポンプ11は燃料を燃料噴射器のみに供給する。バイパス・コントロール30が開いている場合、燃料ポンプ11はさらなる燃料を燃料ライン35、37を通して燃料タンク10へ(又はライン38を通り、燃料吸入ライン51そして燃料ポンプ11へ)通すように送込む。
【0028】
上述のバイパス燃料流量には適当な制限がされる。例えば、燃料バイパス・ライン35、37、38の大きさを選ぶことにより、適当な流量抵抗がもたらされたり、又は他の手段による制限が導入される。流体制御に精通しているものにとっては、この手段は、これらに限られてはいないが、ニードルバルブの使用又は燃料制限のための適当な直径を有する穴を有するダイヤフラム状のプレートの使用を含む。燃料バイパス・コントロール30の状態(開いているか又は閉じているか)に関係なく、燃料ポンプ11は一定の電圧駆動(又は一定速度)下において連続的に作動する。一定駆動下において燃料ポンプを通る燃料流量の変化は、燃料供給システムに異なる安定した燃料圧力状態を生成する。
【0029】
流体システムは電気回路と特定の類似点を有しており、ここで燃料ポンプは電源に相当し、また燃料流量は電気回路の電流に相当する。流体供給システムは全体的に定常状態インピーダンスを提供する。燃料バイパス・コントロールが閉じている(通常運転状態)場合、流体システムは与えられた流体流量F
1に圧力P
Hで静止状態に安定される(
図3)。燃料バイパス・コントロール30が追加的燃料F
2を燃料バイパス・ライン35、37を通して燃料タンクに流入させる場合、さらなる燃料が燃料ポンプを通って供給され、
図3に図示のように、より低い圧力P
Lで新たな静止状態を生成する。同様に、燃料バイパス・コントロールがノーマリーオープンの場合、燃料バイパス・コントロールを閉じることによりポンプを通って流れる燃料量が減る。これは燃料システムの圧力を静止圧力状態PLからより高い静止圧力状態P
Hに切換える。静止状態間での切換えは速く、新たな圧力はわずか数ミリ秒で達せられ、これは圧力波が燃料の音速でコントロール・バルブから燃料噴射器へ伝わる時間である。従って、1パルスにつき噴射される必要燃料量を得るための予測をより容易にする。
【0030】
本発明においては、より高い燃料圧力P
Hは運転開始及び通常運転に設定されており、また最大パルス幅(約10ミリ秒)は公称最大パワー(又は僅かに大きいパワー)に設定されている。車両がアイドリングで作動又は低速度で運転している場合、燃料バイパス・コントロールは開弁に切換えられる。これにより燃料ポンプが前と同じ速度で作動する一方、燃料システムをより低い圧力状態P
Lで作動することが可能になる。車両がアイドリングしている際、エンジン機能を維持する以外に多くの燃料を必要としないため、製造業者は燃料噴射パルス幅を最小レート(約2ミリ秒)に設定することができ、また最低の燃料圧力P
Lを得るために燃料バイパス・ラインに制約を設定することにより、正確な燃料噴射を達成しながらエンジンをそのまま円滑に運転することができる。噴射される燃料の量は非常に少なくてもよいため、エンジンを円滑に運転しながらエンジンの運転をかろうじて維持する。
【0031】
燃料バイパス・コントロールを開閉する動作は、コントロール・スイッチを入れたり切ったりすることにより手動でなされる。これはまた、制御回路を起動させるために電子信号が送られ、燃料バイパス・コントロール・スイッチのアクチュエータを起動する埋込コントローラを使用することによりコントロールされる。適切なプログラム論理がコントローラにより使われており、このステップは
図5及び
図6のフローチャートに図示されており、またこの操作は段落Dにおいて以下に説明されている。
【0032】
通常、与えられた静止燃料圧力P下において、そのリニアレンジ内(典型的パルス幅約2〜10ミリ秒)で作動する燃料噴射器は、図中の座標によって位置が決定される点によって
図4に図示されたダイナミック・レンジを有する。2つの異なる燃料圧下における2つのリニア作動レンジの重なりはダイナミック・レンジをさらに幅広くし(これも
図4に図示されている)、この場合、最低限可能なパルス幅でより高い圧力P
H下における1パルスにつき噴射される最少燃料(q
min)
Hは最大パルス幅でより低い燃料圧力P
L下における1パルスにつき噴射される最高燃料に等しいか、又は少なく、すなわち、(q
min)
H<(q
max)
Lである。結果として、デザイン・チームはより高い圧力P
Hを運転開始や通常運転に割当てることができ、圧力を選択することにより最大基準力が最長の可能パルス幅で成され、また、都市走行やアイドリングのためにより低い圧力P
Lも割当てることができる。圧力P
Lがアイドリングのために調整されているため、最短可能なパルス幅下において1パルスにつき噴射される最少燃料(q
min)
Lはエンジンを最低可能速度で運転しながらまた円滑な運転を可能にする。故に、アイドリング中の燃費を減らし燃料噴射のダイナミック・レンジを増やす。1パルスにつき噴射される燃料の所望の量qは重複範囲内、即ち(q
max)
L>q>(q
min)
H内にあり、与えられたqには2つのパルス幅の値が存在する。デザイン・チームは、予想される運転状態次第で、また圧力切換の移行中に粗さを感知せずに円滑な移行をするように、より高い圧力P
H及びより低い圧力P
Lの間で選択する。この最高水準の技術に精通している者にとっては、q、P
H、及びP
Lの値に、多くの変更及び組合わせをして異なった応用のために選択することができる。燃料ポンプに加えられた電圧はまた、圧力Pの異なった組合せを作るために変えられることができる。新たな燃料システム・デザイン及び加電圧の変動の組合せは、燃料噴射の観点からいうと、如何なる車両をも円滑に運転することができる十分な柔軟性を提供する。
【0033】
図4はデュアル圧力燃料噴射システムにおける1パルスにつき噴射される燃料量対パルス幅の間の典型的関係である。燃料噴射器製造業者による、2.0リットル排気量エンジン用の実際の燃料噴射計測と比較すると、デュアル燃料噴射システムは最大パルス幅(q
max)
Hで1パルスにつき噴射されるより多くの燃料を送出することが可能であり、また、システムは最小パルス幅(q
min)
Lで1パルスにつき噴射されるより少ない燃料を送出することができ、すなわち、(q
max)
H>q
max、(q
min)
L<q
min;及び(q
max)
H/(q
min)
L>q
max/q
min(数式5)である。
【0034】
デュアル圧力噴射システムの使用は、実際の単一(シングル)圧力噴射と比較した際、燃料を節約することができる。例えば、
図4はアイドリング時のマルチポイント連続噴射において1パルスにつき25%の燃料の節約を示している(噴射器製造業者からの実際のデータと比較)。これは、数式(2)によると、アイドリング速度における同じ車両は毎秒約40%少ない燃料を消費することを意味する。これはまた車両が40%少ない自動車排ガスを生成し、これにより都市走行燃費が改善されることを意味する。燃料節約及び排ガス減少は単一の車両にとっては大したことではないように思われるが、何百から何千という車両が徐行している混雑した幹線道路又は市街路における交通渋滞の間においての蓄積効果の影響は明らかである。これはドライバ、街路上の歩行者、また近所の住人に多大な快適さを提供する。
B.(燃料ポンプ安定化のための燃料戻りライン、燃料タンク内における温度の安定化、及び瞬時の余剰パワーのオンデマンド供給)
【0035】
前段落で説明した同じ原理を利用して、
図2に図示の追加的燃料戻りを加えることにより、さらに燃料噴射流体システムを改良することができる。燃料戻りライン31は、燃料ポンプ11の出口(又はフィルタ13の流出口)から(ノーマリーオープン)燃料戻りコントロール32、そして燃料タンク10へ戻るライン33へ(又はライン34を通って燃料ポンプの吸入ライン51へ)接続されている。ライン33は、またコスト削減のためにライン37に接続されてもよい。燃料戻りコントロール32は、手動又はマイクロプロセッサ又は埋込コントローラを使用して電気的にコントロールされる電子機械バルブであることができる。燃料戻りを通る燃料量は、2つのリニア・ラインが2つの異なる圧力を表している
図3に示すように、異なる圧力P
Hを得るために調整されてもよい。燃料戻りの流量が燃料噴射の流量よりも多い場合、この構造は燃料システムの圧力がほぼ一定になるように調整する。
【0036】
この構造は燃料噴射のための正確な燃料量をもたらすための燃料ポンプへの依存を最小化し、圧力の蓄積を防ぐために、未使用の過剰な燃料を燃料レール17(高温燃料)から燃料タンク10へ戻らせる必要性をなくす。この構造は、また、多数の高精度機械部品を含む燃料レギュレータへの危険な依存を減らす。故に、燃料戻りライン31、33を通る少量の燃料は圧力を安定化し、燃料ポンプの運転を安定させることができる。これは、燃料計測中の振動圧力スパイクを最小化する。如何なる高温燃料も燃料タンクに戻らないため、燃料タンク内の燃料温度は、車両の走行時間の長さに関係なく、不変である。
【0037】
燃料戻りライン33により加えられた流量制限は第1静止圧力P
Hの値を決定する。概して、燃料戻りラインを通流する燃料の量がより少ないほど、静止圧力P
Hがより高くなる。
図3は、異なる燃料戻りの量により作成された2つの異なる圧力P
Hを表す座標によって点が決定された2つのラインを有する。また、オペレータが余剰のパワーを急いで得たい場合、ECUは流量を電気機械的に燃料戻りライン31、33及び燃料バイパス・ライン35、37を通して切ることができ、その結果、短時間に燃料圧力が急激に増加し、急な加速のために追加的最大パワーをオンデマンドで瞬時に送出する。電子機械的「オフ又はオン」操作はマイクロプロセッサにより指示されるか又は手動で操作される。燃料圧力状態をコントロールし、噴射される燃料量を決定するために、様々なセンサから信号を取入れる方法の詳細は以下の段落Dにおいて説明され、
図6のフローチャートに図示されている。
C.(両方の発明の特色を取入れた燃料噴射システム)
【0038】
図2は、燃料バイパス・コントロール30(ノーマリークローズド)及び燃料戻りコントロール32(ノーマリーオープン)を使用している本発明の両方の特徴を取入れた完全な燃料噴射供給システムである。燃料戻りコントロール32がノーマリーオープンであることにより、燃料ポンプは安定し、また高温燃料を燃料タンクに戻す必要がない。ノーマリークローズドの燃料バイパス・コントロール30については、燃料噴射システムは、現存のシステムのより限定されたダイナミック・レンジを有する一般的なものよりも、より高い圧力P
Hで運転するように任意にデザインされている以外、現存の燃料噴射供給システムと同様である。標準設定下における作動は現存の車両と同様である。これは運転開始、通常走行、エンジン・ウォームアップ等に使用されるが、エンジンが暖まり車両が都市(都会)走行又はアイドリングに使用される際、燃料バイパス・コントロール30は電気的に開かれ、燃料圧力をより高い圧力P
Hからより低い圧力P
Lに切換える。車両は燃料節約モードで作動し、自動車排気ガスを減らす。上記のように、新システムはより幅広い燃料噴射ダイナミック・レンジを有しているため、同じエンジンがもう少し多いパワーを送出できるようにするためにP
Hを僅かに高く設定することができるが、同じエンジンは、それでもアイドリング時の燃費を減らし、都市走行燃費を改善し燃料排ガス削減を達することができる。
【0039】
オペレータやシステム・デザイナーが、即時の高出力をオンデマンドで強く要求している場合、システムは急な加速のために、燃料バイパス・コントロール30及び燃料戻りコントロール32の両方を閉じることにより応答するように構成される。このような操作はエンジンの最大出力を上回ることもある。故にシステムは、望ましくは、オペレータがこのような操作を緊急事態下及び短時間に出来るようにするか又はそう出来るようにデザインされなければならない。
D.(マイクロプロセッサでコントロールされた燃料噴射供給システムのフローチャート)
【0040】
図2に図示のような燃料噴射供給システムにおいては、様々なセンサからインプット情報を集めて、シーケンス操作の実行をするために、マイクロプロセッサが好ましくは使用される。マイクロプロセッサは、独立型ユニット又はより広い範囲の機能を実行するためのマルチプル埋込コントローラ・ユニットであるか、又は燃料噴射サブルーチンを実行するためにメインCPU(ECU又はECMユニット)と共同でもよい。マイクロプロセッ
サのI/Oポートの1セットは、エンジン温度、エンジン速度、エンジン力及びトルク、燃料圧、スロットル位置、エアフロー及び
空気圧等に関してセンサ信号を受信するように指定されている。I/Oポートのもう1つのセットはROM、PROM、EPROM、ハード・ディスケット、フロッピー・ディスケット、CD−ROM等の記憶装置につながれている。記憶媒体は、燃料噴射要求のチャート、エンジン作動パラメータ及び燃料噴射コントロール・プロセスを実行するための埋込プログラムを記憶するために用いられる。全ての処理及び計算は、マイクロプロセッサのI/Oポートの第3セットに同じく取付けられたRAMでなされる。I/Oポートの最後のセットは、コントロール信号出力として指定される。出力信号はバルブ機能コントロールのために作動回路を起動させるために使用される。
【0041】
図5は、燃料バイパス・コントロールがノーマリークローズドの
図1に図示の燃料システムのマイクロプロセッサ電子信号フローチャートである。マイクロプロセッサはエンジンの要求を感知し、
ステップ101においてエア・マニホルド(図示せず。)及び燃料レールの間の圧差を測定し、ステップ103にお
いてエンジンが必要とする燃料量Qを決定し、ステップ105において1パルスにつき噴射される必要な燃料量qを計算し、ステップ120において1パルスにつき噴射される燃料
量qのパルス幅を決定する。決定ブロック110において、算出されたqが、低燃料圧状態下において1パルスにつき噴射された燃料の最大量よりも少なく
(q<(qmax)L)、エンジンが暖かい場合、決定ブロック115によりマイクロプロセッサは燃料バイパス・コントロール・バルブが開弁するように起動させる制御回路を起動させる電子信号を送信する(ステップ119)。これは燃料システムをより低い燃料圧力状態P
Lに切換える。一方、q>(q
max)
L110又はエンジンが冷たい場合、燃料バイパス・コントロールは閉じられたままである。燃料圧は117
に示されるとおり、高圧状態P
Hで保たれる。いずれの圧力状態においても、マイクロプロセッサは新たな燃料圧を検知し、次の燃料噴射サイクルにおいて1パルスにつき噴射する燃料
量qのためのパルス幅を決定する(ステップ120)。
【0042】
当該パルス幅の電子パルスが、予め決められたパルス幅下において燃料噴射器バルブを起動させる制御回路(
図5に図示せず)に送信される。実際のエンジン性能のセンサ信号は集められ、予測されたオリジナル・データと比較するために用いられる。マイクロプロセッサは厳密な調整を行い、修正されたパルス幅を決定し、その後コントロール信号の次のラウンドを送信する。
【0043】
図6は、燃料バイパス・コントロールがノーマリークローズドで、燃料戻りコントロールがノーマリーオープンの
図2に図示の燃料システムの電子信号フローチャートである。燃料戻りは、燃料ポンプ運転を安定化させ、燃料システムの圧力変動を最小化するために設置される。燃料戻りコントロールはノーマリーオープンである。故に、燃料バイパスのコントロール・プロセスのフローチャートは
図5に図示のものと同様である。しかしながら、オペレータが即時に最大パワーを要求したいという強い願望がある場合
(ステップ150、151、152)、ペダル位置センサからの信号
とアクセル・ペダル位置センサからの最大電子信号
との比較V
gas=(V
gas)
maxがN回繰返され
(ステップ153)、この時Nは緊急に必要な場合の有効性を確実にするために30〜100の範囲内に予め設定される。154においてエンジンが過熱されていない場合、マイクロプロセッサは燃料噴射システムへの如何なる
コマンドも無効にする(override)ために
信号155
を送信し、燃料戻りコントロール及び燃料バイパス・コントロールを閉じ、エンジン温度センサ「暖/冷」を無効にし、最大パルス幅信号を燃料噴射器に送る。これは燃料戻りが閉弁するのに起動される唯一の時間であり、追加的な最大パワーのために1パルスごとの追加的燃料量を送出するための追加的燃料圧がシステムに加えられる。同時にマイクロプロセッサは吸入エアがその最大流量で全体に流れるようにスロットル・バルブが開くように作動する。
【0044】
エンジンが過熱すると、唯一の無効信号(overriding signal)が起こる。この場合、燃料戻りバルブは開かれたままであり、燃料バイパス・バルブは閉じられている。燃料システムはより高圧状態P
Hにとどまる。エンジンはその通常の最大出力を超えて作動するかもしれないため、
図6において説明したような作動は短時間、すなわち、t<t
allowedで作動されなければならない。デザイン・チームは可能時間t
allowedを予め設定することができ、この時間は10〜60秒の範囲であってよい。作動時間が予め設定された時間であるt>t
allowed163を超えると、コントローラは燃料戻り164を開ける。全てのプロセス165は、
図5に図示のフローチャートに続く。
E.(都市走行燃費の改善及び自動車排ガスの削減を目的とする、既存車両の改造)
【0045】
単一圧力燃料噴射システムを利用している既に使用されている如何なる車両も、本発明を導入するように簡単に改造することができ、そうすることによってその都市走行燃費を増加させ、燃料を節約し、自動車排ガスを削減することができる。改造は、
図1に図示のように、燃料フィルタ13の流出口(又は燃料ポンプ11の流出口)から燃料タンク10へ(又は燃料吸入ライン51そして燃料ポンプ11へ)連結している電気機械的燃料バイパス・コントロール30(ノーマリーオープン)及び流量
制限手段を具えた燃料バイパス・ライン35、37を加える。燃料レールからの高温燃料戻りラインを有する車両においては、より簡単な改造及び経費削減のために、燃料バイパス・ラインが燃料ポンプの出口から高温燃料戻りラインへ連結されてもよい。
【0046】
燃料バイパス・コントロール30はノーマリークローズドである。改造は既存の車両の正常運転には影響しない。車両が市街走行に使用されているか又はアイドリングしている場合、燃料バイパス・コントロールは開いている。燃料バイパス・ライン35、37は燃料ポンプを通して追加的燃料を追加し、結果として一定圧力P
Lを減らす。故に、同じパルス幅においてより少量の燃料が1パルスにつき噴射される。これは、エンジンのアイドリング速度を減少させ、燃料を節約し、都市走行燃費を改善し、自動車排ガスを減らす。改善は単純且つ安価である。多数の車両が運転されている大都市圏においては、これらの利点は特に重要である。
【0047】
本発明は一定の燃料ポンプ速度下において異なる燃料圧力レベルをもたらし、特定のICエンジンに関して説明されてきた。本発明は、しかしながら、如何なる数のICエンジン又は燃料噴射システムを利用している他のエンジンにも適用できる。このように、本発明は、燃料噴射プロセスを使用するディーゼル・エンジン及び航空機エンジンに適用可能である。当業者は、本発明を、容易に他の種のエンジンに適用できるはずである。
【0048】
追加的利点及び改造はこれらの当業者にとっては明らかであり、これらの改造に加えて技術又は想像力が提案する他のことも、添付の請求の範囲によって定められる発明と均等のものと合わせて、本発明の範囲内にあるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】本発明のデュアル圧力燃料噴射送出システムの概略図。
【
図2】燃料圧力を安定化するために燃料戻りラインが使用される、本発明のマルチ圧力燃料噴射送出システムの回路図。
【
図3】本発明の
図1及び
図2に図示のような燃料システムにおける燃料圧力対定速度で燃料ポンプを通る総燃料流量の典型的関係を示す図。
【
図4】異なる燃料圧力及び一定ポンプ速度下における1パルスにつき噴射される燃料及びパルス幅間の典型的な燃料噴射事象を示す図。
【
図5】本発明の二重圧力単一速度燃料噴射送出システムの運転を示すマイクロプロセッサ電子信号実行シーケンスのフローチャート。
【
図6】オペレータが即時の最大パワーをオンデマンドで要求する場合の本発明の作動を示すフローチャート。