特許第6019465号(P6019465)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019465
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】除塵機
(51)【国際特許分類】
   E02B 5/08 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
   E02B5/08 101B
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-148662(P2012-148662)
(22)【出願日】2012年7月2日
(65)【公開番号】特開2014-9553(P2014-9553A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014074
【氏名又は名称】前澤工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】397052642
【氏名又は名称】株式会社前澤エンジニアリングサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 能章
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100139516
【弁理士】
【氏名又は名称】藤浪 一郎
(73)【特許権者】
【識別番号】507313135
【氏名又は名称】都工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】小高 志郎
(72)【発明者】
【氏名】畑中 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 嘉之
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−144243(JP,A)
【文献】 特開2000−129653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
し渣を捕捉する複数のバーからなるスクリーンと、
前記スクリーンに沿って移動し、スクリーンが捕捉したし渣を掻き寄せる複数のレーキと、
を有する除塵機において、
前記レーキは、前記スクリーンの目開部に入ってし渣を掻き寄せるワイヤブラシを備え
前記レーキは、
レーキ本体と、
前記ワイヤブラシが植設されたブラシ基台と、
前記レーキ本体に前記ブラシ基台と共締めにより取り付けられ、前記ワイヤブラシの根元寄りをレーキ進行方向の前後から挟む前押さえ部材および後押さえ部材と、
を備えることを特徴とする除塵機。
【請求項2】
し渣を捕捉する複数のバーからなるスクリーンと、
前記スクリーンに沿って移動し、スクリーンが捕捉したし渣を掻き寄せる複数のレーキと、
を有する除塵機において、
前記レーキは、前記スクリーンの目開部に入ってし渣を掻き寄せるワイヤブラシを備え
前記目開部に入るワイヤブラシのレーキ進行方向の長さ寸法が、前記目開部の幅寸法よりも大きく設定されていることを特徴とする除塵機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理施設等に設置され、水路中の塵(以降、し渣という)を除去する除塵機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
し渣を捕捉する複数のバーからなるスクリーンと、スクリーンに沿って移動し歯がスクリーンの目開部に入いってし渣を掻き寄せるレーキと、を有する除塵機の従来例として特許文献1、2に記載のものが挙げられる。
【0003】
特許文献1、2の技術は目開部の幅が狭い細目スクリーンに関連した技術であり、特許文献1には、スクリーン通しボルトをもつバースクリ−ンを上流側バー群とし、該上流側バー群のバー間隙に、スクリーン通しボルトをもつ下流側バー群のバーを千鳥状で、かつ、前記上流側バー群の各バーの下流端と、下流側バー群の各バーの上流端とが水流方向に略重合しないように介在させて、これらの上流側バー群のバーの下流端角の近傍と下流側バー群のバーの上流端角の近傍との隙間により微細目の目幅を形成する技術が記載されている。
【0004】
特許文献2には、間隔をあけて配設した粗目バースクリーン及び該粗目バースクリーンの間に配設した細目バースクリーンからなるバースクリーンと、該バースクリーンにて捕捉されたごみを掻き揚げ排出するようにした粗目用レーキ及び細目用レーキからなるレーキとを備えたバースクリーン式除塵機において、粗目バースクリーンを構成する粗目用スクリーンバーと細目バースクリーンを構成する細目用スクリーンバーの板厚を同一に設定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−115434号公報
【特許文献2】特開2010−236185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
微細なし渣をスクリーンで捕捉しようとすると、スクリーンの目開部の幅(バーとバーの間隔)を狭くすることになるが、この目開部の幅に合わせてレーキの歯の幅も狭くすることになる。しかしながら、強度等の問題からレーキの歯を狭くするのにも限度があり、スクリーンの目開部にレーキの歯が入った状態でのクリアランス(隙間)も少なくなる。このようにスクリーンのバーとレーキの歯との間に隙間が少ないと、スクリーンに捕捉されたし渣を掻き揚げるレーキの歯がスクリーンの目開部を通過する際に、バーと歯との間にし渣の噛み込みが生じ、レーキ及びレーキを駆動する駆動原に負荷がかかるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するために創作されたものであり、微細なし渣を捕捉することができ、スクリーンに捕捉されたし渣をレーキで掻き揚げる際のし渣の噛み込みを防止して、レーキ等の負荷を低減し得る除塵機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、し渣を捕捉する複数のバーからなるスクリーンと、前記スクリーンに沿って移動し、スクリーンが捕捉したし渣を掻き寄せる複数のレーキと、を有する除塵機において、前記レーキは、前記スクリーンの目開部に入ってし渣を掻き寄せるワイヤブラシを備え、前記レーキは、レーキ本体と、前記ワイヤブラシが植設されたブラシ基台と、前記レーキ本体に前記ブラシ基台と共締めにより取り付けられ、前記ワイヤブラシの根元寄りをレーキ進行方向の前後から挟む前押さえ部材および後押さえ部材と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この除塵機によれば、ワイヤブラシが目開部に入り込んでし渣を掻き揚げる。ワイヤブラシは可撓性に富むため、ワイヤブラシとバーとの間にし渣が入り込んでも、ワイヤブラシが容易に撓んで弾性変形することによりし渣の噛み込みが防止される。これによりレーキ及びレーキの駆動源の負荷が軽減される。
【0011】
この除塵機によれば、前押さえ部材は、比較的大きなし渣を掻き揚げることによりワイヤブラシにかかるし渣の抵抗を軽減し、後押さえ部材は、ワイヤブラシの根元部を押さえることによりワイヤブラシの進行方向後側への過度の曲げを抑制する。
【0012】
また、本発明は、し渣を捕捉する複数のバーからなるスクリーンと、前記スクリーンに沿って移動し、スクリーンが捕捉したし渣を掻き寄せる複数のレーキと、を有する除塵機において、前記レーキは、前記スクリーンの目開部に入ってし渣を掻き寄せるワイヤブラシを備え、前記目開部に入るワイヤブラシのレーキ進行方向の長さ寸法が、前記目開部の幅寸法よりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0013】
この除塵機によれば、し渣からの抵抗力に対するワイヤブラシの剛性を高めることができ、ワイヤブラシの過度の曲げ変形を抑制できる。ワイヤブラシの過度の変形抑制用の部材を別途要することもなく、簡単な構造で経済的な除塵機となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の除塵機によれば、スクリーンに捕捉されたし渣をレーキで掻き揚げる際のし渣の噛み込みを防止でき、レーキ及びレーキの駆動源の負荷を軽減することができる。よって、スクリーンの目開部を狭くすることができ、微細なし渣を捕捉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明を適用した除塵機の全体説明図であり、(a)、(b)はそれぞれ側面図、正面図である。
図2】レーキの側面図である。
図3】レーキおよびスクリーンの平面図(スクリーンは断面図)であり、スクリーンのバーの断面形状を矩形状にした場合を示す。
図4】レーキおよびスクリーンの平面図(スクリーンは断面図)であり、(a)はスクリーンのバーの断面形状を菱形にした場合、(b)は雫形にした場合を示す。
図5】レーキおよびスクリーンの平面図(スクリーンは断面図)であり、(a)はスクリーンのバーの断面形状を菱形にした場合、(b)は雫形にした場合を示し、それぞれバーの前面にもワイヤブラシを対向配置させた例を示す。
図6】レーキの変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1(a)、(b)において、除塵機1は矩形断面を呈する水路に設置されている。除塵機1は、し渣を捕捉する複数のバー2Aからなるスクリーン2と、スクリーン2に沿って移動し、し渣を掻き寄せる複数のレーキ3とを有する。
【0017】
スクリーン2は、複数の縦引きのバー2Aが水路幅方向に細目(目開部2Bの幅寸法S(図3)が概ね数mm〜10数mm程度)の間隔で並設された構成からなる。図3ではバー2Aを矩形断面の部材とした場合を示しており、バー2Aの幅寸法Wmaxは一定である。各バー2Aは水路幅方向に延設された連結バー4に溶接等により互いに連結されている。バー2Aは鋼材等からなる。
【0018】
図1において、水路の天井には開口部5が設けられ、スクリーン2の上部は開口部5を貫通して天井上の区画まで延設されている。天井上の区画に設置された水路幅方向を軸方向とする一対の駆動スプロケット6と、スクリーン2の下部上流寄りに設置された水路幅方向を軸方向とする一対の従動スプロケット7との間には、側面視してスクリーン2の前面に沿う直線軌道を有するように無端のチェーン8が水路の両側においてトラック状に掛け回される。両チェーン8に掛け渡されるように、図示しないブラケットを介してレーキ3が所定のピッチで複数取り付けられ、チェーン8が図1(a)における反時計回りに循環移動することでレーキ3の後記するワイヤブラシ9がスクリーン2で捕捉したし渣を掻き揚げる。掻き揚げられたし渣は天井上の区画に配置されたホッパ(図示せず)等に排出される。
【0019】
レーキ3は、スクリーン2の目開部2Bに入ってし渣を掻き寄せるワイヤブラシ9を備える。本実施形態では、レーキ3は、図2に示すように、水路の両側に位置した各チェーン8(図1)に掛け渡されるように取り付けられたレーキ本体10と、ワイヤブラシ9が植設されたブラシ基台11と、ワイヤブラシ9を押さえる前押さえ部材12および後押さえ部材13とを備えた構成からなる。
【0020】
レーキ本体10は、水路幅方向に長手の板状部材であり、たとえば断面L字形状を呈している。レーキ本体10の一辺部には、ブラシ基台11、前押さえ部材12および後押さえ部材13がボルト14およびナット15により共締めされる。ブラシ基台11、前押さえ部材12、後押さえ部材13もそれぞれ水路幅方向に長手の板状部材であり、それぞれ長尺の平板形状を呈している。
【0021】
ブラシ基台11の一面(レーキ進行方向に沿う面)には、当該一面と直交するようにワイヤブラシ9が植設されている。つまり、ワイヤブラシ9の各ワイヤはレーキ進行方向と直交する方向に延設されることとなる。ワイヤブラシ9はたとえば鋼線等の金属製のワイヤにより構成される。前押さえ部材12および後押さえ部材13は、ワイヤブラシ9の根元寄りをレーキ進行方向の前後から挟む。ワイヤブラシ9よりもレーキ進行方向前側に位置する前押さえ部材12はたとえばゴム板材や樹脂板材により構成され、ワイヤブラシ9よりもレーキ進行方向後側に位置する後押さえ部材13はたとえば金属板材により構成される。
【0022】
ワイヤブラシ9の剛性が小さい場合やワイヤブラシ9の長さ寸法Lが長い場合等には、し渣掻き揚げ時の抵抗によりワイヤブラシ9が進行方向後側に曲がって塑性変形するおそれがある。前押さえ部材12は、比較的大きなし渣を掻き揚げることにより、ワイヤブラシ9にかかるし渣の抵抗を軽減する機能を担う。後押さえ部材13は、ワイヤブラシ9の根元部を押さえることにより、ワイヤブラシ9の進行方向後側への曲げを抑制する機能を担う。前押さえ部材12は図3に示すように、その一端がスクリーン2の前面に近接するように位置する。
【0023】
「作用」
例えば、スクリーン2が特にその目開部2Bの幅寸法Sが数mm程度の微細目のスクリーンである場合、そのスクリーン2の目開部2Bに従来のようにレーキの歯を通過させると、両者間の隙間は極く僅かであることからバーと歯との間にし渣の噛み込みが生じやすくなる。これに対し本発明では、剛性の高い歯ではなく、ワイヤブラシ9が目開部2Bに入り込んでし渣を掻き揚げる。ワイヤブラシ9は可撓性に富むため、ワイヤブラシ9とバー2Aとの間にし渣が入り込んでも、ワイヤブラシ9が容易に撓んで弾性変形することによりし渣の噛み込みが防止される。したがって、その分、レーキ3及びレーキ3の駆動源の負荷が軽減される。
【0024】
また、前押さえ部材12は、比較的大きなし渣を掻き揚げることにより、ワイヤブラシ9にかかるし渣の抵抗を軽減し、後押さえ部材13は、ワイヤブラシ9の根元部を押さえることにより、ワイヤブラシ9の進行方向後側への過度の曲げを抑制する。
【0025】
図4にバー2Aの断面形状の変形例を示す。図4(a)はバー2Aを菱形の断面形状とした場合であり、図4(b)はバー2Aを雫形状の断面とした場合である。図4(b)の場合、略半球形部を上流側に、略円錐形部を下流側に位置させて、略円錐形部の先端部を連結バー4に溶接等により固定してある。図4(a)、(b)共に、水流方向における中間部が最大幅Wmaxとなり、該中間部からそれぞれ上流側、下流側に向け漸次幅が狭くなるように配置されている。それぞれの前押さえ部材12は、その一端がスクリーン2の前面に近接した位置にあり、バー2Aと近接する部位はバー2Aの形状に合わせて図4(a)の場合は三角状に、図4(b)の場合は円弧状に切り欠き形成されている。
【0026】
なお、目開部2Bのみにワイヤブラシ9を通すのではなく、図5に示すように、各バー2Aの前面にもワイヤブラシ9を対向配置させてもよい。この場合、バー2Aの前面と過度に干渉しないように、目開部2Bに入るワイヤブラシ9の長さ寸法Lよりも短くカットされた長さとする。
【0027】
図6は、レーキ3の変形例を示す。図6のレーキ3は、目開部2B(図3)に入るワイヤブラシ9のレーキ進行方向の長さ寸法Hが、目開部2Bの幅寸法S(図3)よりも大きく設定されている。このように設定することにより、し渣からの抵抗力に対するワイヤブラシ9の剛性を高めることができ、ワイヤブラシ9の過度の曲げ変形を抑制できる。図6では図2と同様に前押さえ部材12および後押さえ部材13を設けた場合を示しているが、ワイヤブラシ9の剛性が十分に確保された場合には、前押さえ部材12や後押さえ部材13を省略することもできる。
【0028】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は図面に記載したものに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な設計変更が可能である。
説明した実施形態では、チェーン8がスクリーン2の上流側においてトラック状に配置されて、レーキ3の歯9がスクリーン2の前面を上方に掻き揚げる前面掻揚げ方式としたが、スクリーン2の前面を下方に掻き寄せる方式に適用してもよいし、さらに、スクリーン2の後面(背面)を上方に掻き揚げる背面掻揚げ方式やスクリーン2の背面を下方に掻き寄せる方式に適用してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 除塵機
2 スクリーン
2A バー
2B 目開部
3 レーキ
9 ワイヤブラシ
10 レーキ本体
11 ブラシ基台
12 前押さえ部材
13 後押さえ部材
14 ボルト
15 ナット
H ワイヤブラシのレーキ進行方向の長さ寸法
S 目開部の幅寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6