(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
今日の高度情報通信社会を支える高速大容量光ネットワークには、波長多重光通信技術が利用されている。光ネットワーク網の分岐点に相当する光ノードでは、再構成可能なアド、ドロップ機能を有するROADM(Reconfigurable Optical Add Drop Multiplexer)装置の導入が進められている。ROADM装置を実現するため、任意の波長の光を任意の方向に切り換える波長選択スイッチ(Wavelength Selective Switch、WSSともいう)が注目されている。波長選択スイッチでは、波長を選択し所望の出力ポートへ光ビームを偏向させる光ビーム偏向素子が用いられている。特許文献1,2,3ではLCOS素子(Liquid crystal on silicon)による回折現象を利用したものが提案されている。
【0003】
一方、近年の伝送容量需要に応えるべく、伝送レートの高速化、新規変調フォーマットが盛んに研究開発されており、光ネットワークも複雑化している。このような光ネットワークにおいては、各光信号の伝送レートや変調フォーマットに対し最適なフィルタリングを実現するため、従来の波長選択機能に加え、パスバンドの中心波長のシフト、及びパスバンドの拡大、縮小などの動的制御機能が求められている。
【0004】
この機能は、WDM信号の各チャンネル、即ち相異なる波長の光に複数の画素を割り当てる高精細なLCOS素子などを用い、光ビームの偏向にはマルチレベルの光フェーズドアレイを用いることで実現することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるにこのような波長選択光スイッチ装置を用いて複数の入力ポートから成る光を1つのポートにまとめるマルチプレクサとして用いた場合に、選択していないポートの光が出力ポートに漏れることがあるという問題点があった。例えば
図1(a)において波長選択光スイッチ101は複数の入力ポート102−1〜102−Nと1つの出力ポート103を有する光スイッチとする。この場合に例えば入力ポート102−1のある波長の光を選択していた場合であっても、他の入力ポート、例えば102−Nに加えられている信号の一部が出力ポート103に出力されてしまうという欠点があった。
【0007】
同様にして
図1(b)に示すように波長選択光スイッチ111は1つの入力ポート112と複数の出力ポート113−1〜113−Nを有する光スイッチとする。この場合に、例えば出力ポート113−1にある波長の光を選択していた場合であっても、選択していない出力ポート、例えば113−Nに入力の一部が漏れてしまうという問題点があった。これらの現象はポート間クロストークと呼ばれるが、できるだけ低いことが望まれる。光スイッチを光通信システムのノードに用いる場合には、ポート間クロストークは少なくとも30dB以上、好ましくは40dB以上にしておく必要がある。
【0008】
次にこのポート間クロストークの原因について説明する。マルチレベルの光フェースドアレイを用いた空間光位相変調器では、回折次数にかかわらず等間隔に高次回折光が現れる。例えば
図2に示すようにLCOS素子などの空間光位相変調器120に対する入射光の入射角をθ
inとすると、正反射する0次回折光L
0の出射角は−θ
inとなる。そして0次光からの1次回折光L
1の偏向角をθとすると、1次回折光には最大レベルの反射光が得られるが、これと等角度間隔のnθ(nは整数)の回折光、即ち2次、3次・・・の高次回折光L
2、L
3・・・及び−1次、−2次・・・の高次回折光L
-1、L
-2・・・が現れる。従ってこれらの回折光を受光する位置に受光用の光軸や光ファイバがあれば、ポート間クロストークが生じてしまうこととなる。
【0009】
又
図3はLCOS素子の断面を示す図であり、光が入射する面から入射面に垂直方向にAR層131,ガラス層132,透明共通電極133,液晶134,多数の背面反射電極135及びシリコン層136を積層して構成されている。ここでAR層131から入射角θ
inで入射した光は図示しない光路を経て液晶層134より反射層135に入射する。この角度をaθ
in(aは定数)とする。このとき各電極に印加される電圧に応じた回折角度で反射される。反射角をa(θ
in+θ)とすると、反射光はAR層131を通過して外部に出力される。この反射光の出射角度はθ
in+θとなる。しかし反射光の一部は共通電極層133の面で反射され、液晶層134を通って再び反射層135で反射され外部に出力される。この反射光の出射角度はθ
in+2θとなる。これが繰り返されるため高次の反射光が得られ、高次の反射光の角度差はθの整数倍となる。これをフレネル反射光という。
【0010】
即ち高次回折成分とフレネル反射光成分は同一角度で周期的に現れることとなる。これらの反射光がポート間クロストークの原因となっている。
【0011】
本発明はこのような問題点に着目してなされたものであって、高次回折成分とフレネル反射光成分によるクロストークの影響を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題を解決するために、本発明の波長選択光スイッチ装置は、多数の波長の光から成る信号光を入射する入力ポート及び選択された波長の光信号を出射する出力ポートを有する入出射部と、信号光をその波長に応じて空間的に分散させると共に、反射光を合波する波長分散素子と、前記波長分散素子によって分散された光を2次元平面上に集光する集光素子と、波長に応じて展開されたx軸方向と、これに垂直なy軸方向から成るxy平面に展開された入射光を受光する位置に配置され、xy平面に格子状に配列された多数の画素を有し、x軸上の各画素についてy軸方向に位相シフト量をのこぎり波状に周期的に変化させるマルチレベル光フェーズドアレイを用いた空間光位相変調器と、前記空間光位相変調器のxy方向に配列された各画素の電極を駆動し、各波長の光を夫々複数の方向に反射する空間光位相変調器駆動部と、を具備し、
前記入力ポートからの空間光位相変調器への入射光を正反射する0次回折光を基準として、ある1つの出力ポートに対する反射角をθNとし、0次回折光を基準として入射光の角度をθ0とすると、他の全ての出力ポートに入射する反射角は次式
θ0/2<θN<θ0
の範囲の反射光を受光するものである。
【0013】
この課題を解決するために、本発明の波長選択光スイッチ装置は、多数の波長の光から成る信号光を入射する入力ポート及び選択された波長の光信号を出射する出力ポートを有する入出射部と、信号光をその波長に応じて空間的に分散させると共に、反射光を合波する波長分散素子と、前記波長分散素子によって分散された光を2次元平面上に集光する集光素子と、波長に応じて展開されたx軸方向と、これに垂直なy軸方向から成るxy平面に展開された入射光を受光する位置に配置され、xy平面に格子状に配列された多数の画素を有し、x軸上の各画素についてy軸方向に位相シフト量をのこぎり波状に周期的に変化させるマルチレベル光フェーズドアレイを用いた空間光位相変調器と、前記空間光位相変調器のxy方向に配列された各画素の電極を駆動し、各波長の光を夫々複数の方向に反射する空間光位相変調器駆動部と、を具備し、前記入出射部は、前記ある1つの入力ポートからの空間光位相変調器への入射光を正反射する0次回折光を基準として、出力ポートに対する反射角をθNとし、0次回折光を基準として入射光の角度をθ0とすると、他の全ての入力ポートからその出力ポートに入射する反射角は次式
θ0/2<θN<θ0
の範囲の反射光を受光するものである。
【0014】
ここで前記入出射部の前記入力ポート及び出力ポートは、複数のマイクロレンズと夫々のマイクロレンズの中心軸に位置する光ファイバとを有するものであり、前記光ファイバとマイクロレンズの双方の間隔dを125μm以下としてもよい。
【0018】
ここで前記入力ポート及び出力ポートを平面光回路としてもよい。
【0019】
ここで前記入力ポートは複数のマイクロレンズと夫々のマイクロレンズの中心軸に位置する光ファイバとを有するものであり、前記マイクロレンズの有効径をφ、隣接するマイクロレンズの間隔をdとしたときにφ<dとなるようにレンズアレイを配置するようにしてもよい。
【0020】
ここで前記空間光位相変調器は、2次元に配列された多数の画素を有するLCOS素子であり、前記空間光位相変調器駆動部は、波長選択特性に応じて各画素に印加する電圧を制御するものとしてもよい。
【0021】
ここで前記空間光位相変調器は、2次元に配列された多数の画素を有する液晶素子であり、前記空間光位相変調器駆動部は、波長選択特性に応じて各画素に印加する電圧を制御するものとしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
このような特徴を有する本発明によれば、マルチレベルの光フェーズドアレイを用いて波長選択を行う光スイッチ装置において、ポート間のクロストークが生じにくい位置に出射用の出力ポートを設定できるようにしたものであり、出力ポートに生じるクロストークを大幅に低減することができる。従って光のスイッチングの品質を大幅に向上させることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は従来の波長選択光スイッチ装置を示す概略図である。
【
図3】
図3はLCOS素子内のフレネル反射の状態を示す図である。
【
図4A】
図4Aは本発明の第1の実施の形態による反射型の波長選択光スイッチ装置のx軸方向から見た光学的な配置を示す図である。
【
図4B】
図4Bは本発明の第1の実施の形態による反射型の波長選択光スイッチ装置のy軸方向からの光学的な配置を示す図である。
【
図5】
図5は本発明の第1の実施の形態による波長選択光スイッチ装置に用いられる2次元の空間光位相変調器を示す図である。
【
図6A】
図6Aは本発明の第1の実施の形態による波長選択光スイッチ装置の空間光位相変調器の構造と空間光位相変調器への光の入射を示す図である。
【
図6B】
図6Bはこの空間光位相変調器からの光の反射を示す図である。
【
図7】
図7は本実施の形態によるLCOS素子の入射位置と位相シフトの関係を示す図である。
【
図8】
図8は本発明の第1の実施の形態による波長選択光スイッチ装置の入射角と反射角の関係を示す図である。
【
図9】
図9は本発明の第2の実施の形態による波長選択光スイッチ装置のx軸方向から見た光学的な配置を示す図である。
【
図10】
図10は本発明の第3の実施の形態による波長選択光スイッチ装置の光ファイバアレイとマイクロレンズの関係を示す図である。
【
図11】
図11は偏向角度と回折効率の関係を示すグラフである。
【
図12】
図12は本発明の第4の実施の形態による波長選択光スイッチ装置の光ファイバアレイとマイクロレンズの関係を示す図である。
【
図13】
図13は第4の実施の形態によるマイクロレンズ間隔とクロストークとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施の形態)
図4Aは本発明の第1の実施の形態による反射型の波長選択光スイッチ装置の光学素子の構成を示すx軸方向から見た側面図、
図4Bはそのy軸方向から見た側面図である。入射光は波長λ
1〜λ
nの光信号が多重化されたWDM信号光である。WDM光は夫々光ファイバ11を介してコリメートレンズ12に出射される。コリメートレンズ12はx方向及びy方向に光を集束して出力するものであり、
図4Aではその中心線についても示している。又コリメートレンズ13−1〜13−mに入射した光は夫々光ファイバ11に平行に配置された光ファイバ14−1〜14−mより外部に出射される。ここでmは自然数である。ここで光ファイバ11及びコリメートレンズ12は入力ポートを構成しており、光ファイバ14−1〜14−m及びコリメートレンズ13−1〜13−mは複数の出力ポートを構成している。コリメートレンズ12から出射するWDM光は波長分散素子15に入射される。波長分散素子15は光を波長に応じてxz平面上で異なった方向に分散するものである。ここで波長分散素子15としては、回折格子であってもよく、又プリズム等を用いてもよい。又回折格子とプリズムを組み合わせた構成でもよい。こうして波長分散素子15で分散された光は集光素子であるレンズ16に与えられる。レンズ16は
図4Bに示すようにxz平面上で分散した光をz軸方向に平行に集光する集光素子であって、集光した光は回折格子として機能する空間光位相変調器17に入射される。
【0025】
尚ここでは
図4Bに最長波長λ
1及び最短波長λ
nの光を例示しているが、入射光はλ
1〜λ
nまでの間で多数のスペクトルを有するWDM信号光であるので、xz平面に沿って展開されたWDM信号光が帯状に空間光位相変調器17に加わる。空間光位相変調器17は入射光の波長毎に方向を異ならせ反射するものであり、その反射特性に応じて光フィルタの選択特性が決定されるが、詳細については後述する。空間光位相変調器17によって反射された光は、同一の経路を通ってレンズ16に加わり、再び波長分散素子15に加わる。波長分散素子15は反射光に対しては元の入射光と同一方向に集束し、z軸に平行な光に変換し、コリメートレンズ13−1〜13−mを介して夫々光ファイバ14−1〜14−mに出射する。ここで光ファイバ11,14―1〜14−mとコリメートレンズ12,13−1〜13−mは、WDM信号光を入射し、選択された光を出射する入力用及び出力用のポートを構成しており、合わせて入出射部となっている。この実施の形態では光ファイバ11、コリメートレンズ12を入力ポート、他を出力ポートとしているが、これらは適宜変更することが可能である。入力ポートを複数、出力ポートを1つとしてもよい。この場合は入力ポートに加わる光はWDM光のいずれかの波長成分の光を入力し、出力ポートでこれを合成するものであってもよい。
【0026】
(空間光位相変調器の構成)
次にここで第1の実施の形態による波長選択光スイッチ装置に用いられる空間光位相変調器17について説明する。第1の実施の形態において、入射光を波長に応じてxz平面上で分散させ、空間光位相変調器17に入射したとき、その入射領域は
図5に示す長方形状の領域Rであるとする。そして第1の実施の形態の波長選択光スイッチ装置では、波長毎に反射させる方向を選択することによって、任意の波長の光を選択することができる。空間光位相変調器17には設定部20がドライバ21を介して接続されている。設定部20はxy平面の光を反射又は透過する画素を選択波長に合わせて後述するように決定するものである。ドライバ21は入力されたデジタル信号を画素に印加する電圧に変換するD/A変換器を含んでいる。設定部20とドライバ21は空間光位相変調器17のxy方向に配列された各画素の電極を駆動することによってx軸及びy軸方向の所定の位置の画素の特性を制御する空間光位相変調器駆動部を構成している。
【0027】
次に空間光位相変調器17の詳細な構成について説明する。空間光位相変調器17としてはLCOS(Liquid Crystal On Silicon)の液晶素子を用いて実現することができる。LCOS素子17Aは各画素の背面に液晶変調ドライバを内蔵しているため、画素数を多くすることができ、例えば1920×1080の多数の格子状の画素から構成することができる。
図6AはLCOS素子17Aを示す概略図であり、光が入射する面からz軸に沿ってAR層31,ガラス層32,透明共通電極33,アライメント層34,液晶35,多数の背面反射電極37を含むアライメント層36及びシリコン層38を積層して構成されている。
【0028】
LCOS素子17Aでは波長毎に異なる位置に光ビームが入射する。即ち入射領域に加わる光はWDM光を波長帯λ
i(i=1〜n)に応じてxy平面に展開した光である。ここで波長分散方向を
図5に示すx軸方向とすると、夫々の波長に対してy軸方向に並んだ多数の画素が対応する。そのため、LCOS素子17Aのある波長の光λ
iが入射するy軸方向の多数の画素に周期的に異なった電圧を与えることによって、
図5に示すようにステップ状の位相シフト関数で示され、全体としてのこぎり形状となる屈折率の変化を実現することができる。
図7はこの位相シフト関数と光の入射位置との関係を示す図である。
図7では複数の画素、ここでは6画素によって位相シフト量を段階的に変化させ、この変化を周期的に繰り返すことによってブレーズ型の回折格子と同等の機能を実現するようにしている。尚、図中では直線状ののこぎり波はブレーズ型回折格子の場合であり、ステップ状の波形は多数のレベル数を有するLCOS素子の場合を示している。このように屈折率の変化によりマルチレベル光フェーズドアレイが実現でき、回折現象により例えば
図6Bに示すように反射方向を異ならせることができる。ここで位相シフト関数を適宜選択することによって入射光の屈折角度を夫々の波長毎に異なった方向に変化させることができるので、LCOS素子は特性可変型の回折格子として考えることができる。従って透明共通電極33と背面反射電極37との間に電圧を印加することによって各波長成分の回折角を独立に制御し、特定波長の入力光を所望の方向に反射させたり、他の波長成分の光を不要な光として回折させ、出射されない方向に光を反射させることができる。
【0029】
またこの空間光位相変調器17の第2の例として、LCOS構造ではない反射型の2次元電極アレイを有する液晶素子17Bについて説明する。LCOS素子の場合には画素の背面に液晶ドライバが内蔵されているが、2次元電極アレイ液晶素子17Bは液晶変調用のドライバが素子の外部に装備されている。その他の構成はLCOS素子と同様であり、前述したマルチレベルの光フェーズドアレイを実現することができる。
【0030】
さてマルチレベル光フェーズドアレイの回折角度は次式(1)で示される。
sinθ
in+sinθ
diff=m・λ/Λ ・・・(1)
ここで
q:マルチレベル数
m:回折次数
λ:波長
Λ:フェーズドアレイピッチ
θ
in:入射角度
θ
diff:回折角度
とする。
【0031】
ここで入力ポートと出力ポートの配置及び空間光位相変調器17への入出射角について更に説明する。この実施の形態では入力ポートに対して複数の出力ポートが設けられている。さて
図8に示すように入力ポートからの出力が空間光位相変調器17に入射される。
図8では入射光を中心の1本のラインL
inで示している。0次反射光L
0については入射角と出射角は同一である。そして空間光位相変調器17をマルチレベル光フェーズドアレイで制御し、0次反射光L
0の角度を基準としてある波長の光を1つの出力ポートに反射するよう制御したときの反射光までの角度をθ
Nとする。この1次反射光を受光する角度に位置する出力ポート、例えばコリメートレンズ13−i、光ファイバ14−iの出力ポートには、最大レベルの反射光L
iが得られる。ここで前述したようにフレネル反射の場合であっても高次回折光成分であっても、0次反射光と1次反射光との角度θ
Nの整数倍の位置にも一点鎖線で示す角度にその波長の反射光の一部が出力される。従って特定の1次反射光を受光する角度に設置されるポートを出力ポートとした場合には、残余の反射光が現れる位置には他の出力ポートを配置しないことによって、ポート間クロストークを効果的に低減することができる。即ち他の全ての出力ポートについては、0次反射光L
0を基準として他の出力ポートに入射する反射光の角度θ
Mはpを整数としてpθ
Nを中心として微小角度範囲±Δθ内に位置しないように割り当てる。即ち配置してもよい範囲は以下の式で示される。
p・θ
N+Δθ<θ
M<(p+1)θ
N−Δθ ・・・(2)
Δθは小さいほど好ましく0であれば最も良い。ここでレンズ16の焦点距離をfとし、全てのコリメートレンズ13−1〜13−mに入射するビームの直径をφとすると、Δθはφ/2f以下であることが好ましい。いずれの出力ポートについてもそれ以外の出力ポートとの間ではこの関係を満たすことができるように、夫々の出力ポートの角度を設定する。例えばコリメートレンズ13−1、光ファイバ14−1から成る出力ポートに入射する際に、0次反射光を基準としてその反射光のラインL
1との角度をθ
1とすると、それ以外の出力ポートへの反射角はpθ
1を中心として±Δθの範囲以外の値となる。こうすればポート間クロストークを効果的に防止することができる。
【0032】
次に第1の実施の形態の変形例として、入力ポートと出力ポートとを逆転させた場合について説明する。複数の入力ポートと1つの出力ポートによって波長選択光スイッチ装置を構成する場合には、ある1つの入力ポートからの空間光位相変調器への入射光を正反射する0次回折光を基準として、出力ポートに入射する反射角をθ
Nとすると、他の全ての入力ポートからその出力ポートに入射する反射角θ
Mは、pを整数、集束レンズ16の焦点距離をf、出力ポートによっての入射位置での光ビームのビーム直径をφとし、Δθをφ/2f以下として、pθ
Nを中心として微小角度範囲±Δθ内に位置しないように割り当てる。即ち配置してもよい範囲は前述した式(2)で示される。
【0033】
(第2の実施の形態)
さて第1の実施の形態の条件(2)を満たすことによってクロストークを防止することができるが、このような条件を満足する位置に出力ポートや入力ポートを設定することは容易でない場合がある。そこで第2の実施の形態による波長選択光スイッチ装置では、入出力ポートの配置を容易にすることができるようにしている。
図9は入力ポートと複数の出力ポートを示しており、ここでは入力ポートを光ファイバ41、コリメートレンズ42から成るものとし、反射光を受光する位置されたマイクロレンズアレイをコリメートレンズ43−1〜43−m、光ファイバ44−1〜44−mとする。その他の構成は第1の実施の形態と同様であるので詳細な説明を省略する。この場合も入力ポートから出射された光が空間位相変調器17に入射するとき、入射光のラインをL
inとし、その0次反射光をラインL
0で示す。0次反射光のラインL
0と入射光のラインL
inとの角度をθ
0とする。このラインL
0を基準にしてある1つの出力ポートに入射する1次反射光のラインL
1の角度をθ
Nとする。このとき2次回折光L
2、3次回折光L
3・・・は、2θ
N,3θ
N・・・の反射角度を持つ。又−1次回折光L
-1、−2次回折光L
-2・・・は−θ
N,−2θ
N・・・の反射角度を持つ。従って他の全ての出力ポートに入射する光のラインL
0に対する角度は以下の条件
θ
0/2<θ
N<θ
0 ・・・(3)
を満たすように配置する。この式(3)の条件に合うように他の出力ポートを配置することによって、全ての出力ポートについて第1の実施の形態の条件式(2)を考慮することなく、容易にポート間クロストークを回避するように配置することができる。この場合にはコリメートレンズや光ファイバを近接して配置することとなるため、配置が極めて容易となるという効果も得られる。
【0034】
次に第2の実施の形態の変形例として、入力ポートと出力ポートとを逆転させた場合について説明する。この場合にはある1つの入力ポートからの空間光位相変調器への入射光を正反射する0次回折光を基準として、出力ポートに対する反射角をθ
Nとし、0次回折光を基準として入射光の角度をθ
0とすると、他の全ての入力ポートからその出力ポートに入射する反射角は次式
θ
0/2<θ
N<θ
0
の範囲の反射光を受光するものとする。
【0035】
(第3の実施の形態)
次の本発明の第3の実施の形態について説明する。この実施の形態は第1の実施の形態と基本的には同一であり、入出力ポートの配置のみが異なっている。
図10はこの実施の形態による光ファイバアレイ51とマイクロレンズアレイ52の配置を示している。光ファイバには同一間隔で多数のファイバ51−1,51−2・・・を並列に一体化したファイバアレイを用いる。コリメートレンズは隣接する多数のレンズ52−1,52−2・・・を一体化したマイクロレンズアレイを用いる。そしてファイバとレンズの間隔と光軸を一致させるため、その間隔は同一に設定する。ここではその間隔をdとする。一般的にマイクロレンズアレイの間隔dは125μm又は250μmのものが用いられている。これは広く使用されている光ファイバの芯線の径である125μmや、光ファイバ粗線の径である250μmに合わせたものであるが、第3の実施の形態では、この間隔dを以下のように定める。
d<125μm
このように間隔dを定めると光ファイバアレイ51の各光ファイバ間隔及びマイクロレンズアレイ52のレンズの間隔をより密に配置することとなり、偏向角度を小さくすることができる。例えばクラッド径が80μmの光ファイバを用いてファイバアレイを構成してもよい。又平面光波回路PLCを用いて間隔dを125μm以下とし、入出力ポートをアレイ化してもよい。
【0036】
こうすれば狭い間隔で多数の入出力ポートを配置することができるため、ポート数を増やすことが可能となる。又
図11は偏向角度と回折効率との関係を示すグラフである。この図に示されるように、偏向角度が小さければ小さいほど回折効率は向上する。従ってこの実施の形態では狭い間隔で多数の入出力ポートを配置することができ、ポート数を増加させると共に回折効率を向上させることができるという効果が得られる。
【0037】
(第4の実施の形態)
次に本発明の第4の実施の形態について説明する。この実施の形態においても入出力ポートの部分のみを
図12に示しており、それ以降の構成については第1の実施の形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。この実施の形態では
図12に示すように隣接するマイクロレンズアレイとの間隔をdとする。各マイクロレンズの有効域直径φとすると、直径φよりもマイクロレンズ間隔dを大きくなるように(φ<d)設定する。
図13はマイクロレンズ間隔dとクロストークとの関係を示すグラフであり、この間隔dが大きくなるほどクロストークの低減量が大きくなる。即ち高次回折光やフレネル反射光の成分がなるべく光ファイバアレイに入射しないようにするために、これらの反射光がレンズの中間に入射するようにするときに、マイクロレンズアレイの各レンズの有効径をレンズ間隔より小さくすることでクロストーク性能を向上させることができる。