【文献】
増田智一、斉藤賢司、森田 泉、池田周之、槙井浩一、小川欽也,「一次元弾性波伝播理論に基づくSHB試験結果の妥当性の検証」,神戸製鋼技報,日本,2007年 8月,Vol. 57 No. 2,p. 86-89
【文献】
佐久間 淳,鳥居 直樹,水島 彬,少路 宏和,亜音速レベルの球圧子押込による生体軟組織の動的変形挙動の評価,第25回バイオエンジニアリング講演会講演論文集,2013年 1月 8日,p. 177-178
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第WO/2010/084840号パンフレット
【特許文献2】特開2011−137667号公報
【特許文献3】特開2011−257321号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】落錘衝撃試験機の概要、船舶技術研究所報告、12(7), pp130-134, 1976-02-20.
【非特許文献2】材料の衝撃変形強度・動的破壊開始じん性試験法 ホプキンソン棒法の応用、溶接学会誌、68(7), pp505-511, 1999-10-05.
【非特許文献3】T. Sawa, Practical Material Mechanics, (2007), pp.258-279, Nikkei Business Publications, Inc.(in Japanese)
【非特許文献4】M. Tani, A. Sakuma, M. Ogasawara, M. Shinomiya, Minimally Invasive Evaluation of Mechanical Behavior of Biological Soft Tissue using Indentation Testing, Proceedings of the 21th Bioengineering Conference, No.08-53, (2009), pp.183-184.
【非特許文献5】M. Tani and A. Sakuma, Evaluation of Thickness and Young's Modulus of Soft Materials by using Spherical Indentation Testing, Transactions of the Japan Society of Mechanical Engineers, Series A, Vol.75, No.755, (2009),pp.901-908.(in Japanese)
【非特許文献6】M. Tani, A. Sakuma, M. Ogasawara and T. Saito, Parameters Evaluation of Three-Element Solid Model for Viscoelastic Materials by Indentation Test, Journal of the Society of Materials Science, Japan, Vol.60 No.3, (2011), pp.224-228.(in Japanese)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、圧子の高速な押込みに関わる押込試験は、高速な押込みによって生じた試料中の応力応答を正確に分析する方法が未確立であった。このため、高速な押込みによって生じる試料の高速変形を評価する方法も未確立であった。
【0009】
上述したように、高速な圧子の押込みによって生じる試料の高速な変形挙動を評価するための押込試験方法および押込試験装置は、圧子の押込速度を変えれば広い速度範囲の変形挙動を観察できるが、高速な圧子の押込みによって試料中に生じた応力応答を分析することが困難な点が解決すべき課題となっている。
【0010】
そこで、押込試験方法および押込試験装置に対して、高速な圧子の押込みによって試料中に生じた応力応答を分析し、高速な押込み時に生じる試料の高速変形を評価可能な押込試験方法および押込試験装置の開発が望まれている。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、新規な押込試験方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記の押込試験方法を用いる、新規な押込試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の押込試験方法は、高速で圧子を試料に押込む押込試験方法において、
ロードセル端部の位置に配置する有限厚さの試料へ圧子を押し込み、
この押し込みにより生じた試料中の応力応答が伝わったロードセルへの応力波を計測し、
この計測した応力波の波形を波動方程式の解により分析し、
この応力波の分析によりロードセル端部の荷重変化を算出し、
この算出した荷重変化により試料の物性値を算出する
ことを特徴とする。
【0013】
本発明の押込試験装置は、試料に圧子を押込む押込試験装置において、
圧子を高速で押し込む圧子射出装置を有し、
押し込む試料への負荷による応力波を計測するロードセルを有し、
この計測したロードセルの応力波の波形を分析する応力波分析部を有し、
分析した応力波から得られる荷重変化から、試料と圧子が接触する
計測基準点および試料の柔さ係数を算出する基準点・係数算出部を有し、
算出した柔さ係数を用いて試料の物性値を算出する物性値算出部を有する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
【0015】
本発明の押込試験方法は、試料に圧子を押込む押込試験方法において、
ロードセル端部の位置に配置する有限厚さの試料へ圧子を押し込み、
この押し込みにより生じた試料中の応力応答が伝わったロードセルへの応力波を計測し、
この計測した応力波の波形を波動方程式の解により分析し、
この応力波の分析によりロードセル端部の荷重変化を算出し、
この算出した荷重変化により試料の物性値を算出する
ので、新規な押込試験方法を提供することができる。
【0016】
本発明の押込試験装置は、試料に圧子を押込む押込試験装置において、
圧子を高速で押し込む圧子射出装置を有し、
押し込む試料への負荷による応力波を計測するロードセルを有し、
この計測したロードセルの応力波の波形を分析する応力波分析部を有し、
分析した応力波から得られる荷重変化から、試料と圧子が接触する
計測基準点および試料の柔さ係数を算出する基準点・係数算出部を有し、
算出した柔さ係数を用いて試料の物性値を算出する物性値算出部を有する
ので、新規な押込試験装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、押込試験方法および押込試験装置にかかる発明を実施するための形態について説明する。
【0019】
押込試験方法は、ロードセル端部に位置する試料に圧子を押込む押込試験方法において、この試料への圧子の押し込みによって伝わるロードセルの応力波を分析し、この分析した結果により試料の物性値を算出する方法である。
【0020】
押込試験装置は、試料に圧子を押込む、押込試験装置において、圧子を高速で押し込む圧子射出装置を有し、押し込む試料への負荷による応力波を計測するロードセルを有し、この計測したロードセルの応力波の波形を分析する応力波分析部を有し、分析した応力波から得られる荷重変化から、試料と圧子が接触する
計測基準点および試料の柔さ係数を算出する基準点・係数算出部を有し、算出した柔さ係数を用いて試料の物性値を算出する物性値算出部を有する装置である。
【0021】
まず、
図1のように試料に圧子を押込み、
図2に示すようにロードセル3中を伝わる応力波の波形を分析する方法について説明する。
【0022】
応力波が伝わるロードセルの端部x=0へ荷重が与えられた場合を考えると、ロードセル中を伝わる応力波は、次の波動方程式を満足する。
【0024】
ただし、変数uは変位、変数xはロードセル中の位置、係数cは応力波の伝播速度である。
【0025】
ここで、速度vで十分に硬い球圧子を押し込んだことにより、有限厚さの試料中に生じた応力応答が荷重Fとしてロードセルの端部へ与えられた場合を考えると、このとき荷重Fは時刻tを用いた次式で表すことができる。
【数2】
【0026】
この式(数2)を端部x=0におけるロードセルの境界条件として考えるとき、ロードセルのヤング率Es、断面積Sを用いて、端部x=0における次の関係を定義できる。
【数3】
【0027】
ただし、係数Aは試料の柔さ係数、係数Bは試料の厚さ係数である。
【0028】
この式(数3)は、ロードセルの端部x=0におけるひずみ変化を表すことから、ロードセルのヤング率Esの移項により、ロードセルの端部x=0における応力変化σ(0,t)を次の関係により表すことができる。
【数4】
【0029】
ここで、波の関数として、ロードセル中の変位の分布変化u(x,t)を表す次式を考える。
【数5】
【0031】
この式(数5)は、波動方程式(数1)を満たすことから、波動方程式(数1)の解である。
【0032】
さらに、この式(数5)をロードセル中の位置xで偏微分すれば、次の2つの式を得ることができる。
【0035】
この式(数6)はロードセル中におけるひずみ分布の時間変化ε(x,t)を表し、ひずみ波の波形を表す。さらに、ロードセルのヤング率Esを用いるにより、ロードセル中における応力波の波形σ(x,t)を次の関係により表すことができる。
【数8】
【0036】
さらに、式(数7)を式(数2)と比較することにより、柔さ係数A、厚さ係数Bを次の関係で表すことができる。
【数9】
【0038】
この式(数10)から、係数bは厚さ係数Bを用いて次式によって置き換えることができる。
【数11】
【0039】
このとき、波を観察する計測基準点の位置x=x0を用いると、端部x=0におけるロードセルへの荷重Fを次式で表すことができる。ここで、計測基準点とは、ロードセルを伝わる波を、計測する位置を表現する値である。
【数12】
【0040】
ただし、係数A’は次の関係である。
【数13】
【0041】
さらに、試料やロードセルの自重等の影響を考慮するとき、ひずみ波は次式となる。
【数14】
また、応力波は次式となる。
【数15】
【0042】
ただし、ε0はひずみの基準点であり、σ0は応力の基準点であり、これらには次式の関係がある。ここで、ひずみの基準点とは、試料やロードセルの自重等の影響で生じる初期ひずみを表現する値である。また、応力の基準点とは、試料やロードセルの自重等の影響で生じる初期応力を表現する値である。
【数16】
【0043】
式(数12)〜式(数15)の関係を用いることによって、押込試験から得られる波形に合うようにa、b、x0、σ0を最小二乗法などで定めることにより、応力波を分析することができる。
【0044】
したがって、ロードセルを伝わる波を式(数12)により評価して得られる係数A’から、試料の柔さ係数Aを次の関係によって導出できる。
【数17】
【0045】
ここで得られた柔さ係数Aを用いると、Hertzの弾性接触理論から導かれるヤング率Eを次の関係式から算出することができる[1]。ここで、φ及びνは、それぞれ球圧子の直径及び試料のポアソン比である。
【数18】
あるいは、式(数18)のヤング率Eの関係に基づいて定義する次の関係式から変形抵抗率Dを算出することができる[2]。
【数19】
【0046】
以上に示したように、ロードセルを伝わる波から試料への荷重を求める方法は、高速な圧子の押込みによって試料中に生じた変形挙動を表現する物理量を算出することもできるので、高速な圧子の押込みによって生じる試料の高速変形を評価する方法として利用することができる。
【0047】
つぎに、本発明の押込試験装置の概要について説明する。まず、試験法と試験条件について説明する。本発明を応用した押込試験は、亜音速レベルで衝突する物質の変形特性を計測するためのもので、特に被計測試料へ球圧子として球形弾(ball bullet)を撃ち込んだ際に試料に生じる応力応答から物性値を同定するものである。
【0048】
図2に、本発明を応用した押込試験装置の模式図を示す。球圧子として球形弾を用い、球圧子の押込速度は亜音速レベルである。本試験法の球形弾の圧子射出装置1には市販のエアガンを用い、応力波については試料4の下に設置するロードセル3で観測する。ここで観測された応力波は動ひずみ計6およびADボードを用いたデータロガー7を介して押込試験システム(PC)8に取り込み、この取り込んだ押込試験システム(PC)8によって応力波の波形の分析や物性値の算出を実施する。
【0049】
つぎに、本発明の押込試験装置により試料の物性値を求めた実験例について説明する。まず、本発明の押込試験装置の例について説明する。たとえば
図3に示す押込試験機を用いると、本発明により試料の物性値を求めることができる。この押込試験機には、圧子射出装置(東京マルイ社製、M14 wood stock)1が取り付けられており、この圧子射出装置1から圧子(直径6mmの球形弾、材質:ポリスチレン樹脂)2が射出される。圧子2はロードセル3の端部に位置する試料4へ、押込速度は93m/sで撃ち込まれる。この撃ち込みによって試料4に生じた応力波は、同じくロードセル3を他端へ伝わっていく。このロードセル3の途中には、伝わる応力波を測るためのひずみゲージ5が取り付けられており、このひずみゲージ5で観測した波形は動ひずみ計(共和電業社製、CDV-700A)6により増幅された後、データロガー(インタフェース社製、ADボードLPC-320724)7を介してPCによる押込試験システム8により分析される。なお、ロードセル中の応力波の伝播速度cは4962m/sであり、ロードセルのヤング率Esは197GPaであり、ロードセルの断面積Sは4.52mm
2であり、計測基準点の位置x=x0は90mmである。
【0050】
つぎに、本発明による試験方法について説明する。試験方法は、試料へ球圧子を押し込み、この押し込んだ際に試料が置かれたロードセルに伝わる応力波を数理的に処理するものである。この押し込みによる試験装置としては、上述したように、圧子を試料へ押し込む射出機構と波を計測する部分、および演算する部分を備えたものを用いる(
図4)。
【0051】
この
図4に示すように、押込試験システム8は、押込試験機9のロードセル3に取り付けたひずみゲージ5から送られてきた波形から試料に生じた荷重Fを分析し、この分析結果から試料の物性値を算出するものである。このとき、送られてきた波形から応力波分析部10において荷重Fが算出される。この荷重Fの算出は式(数12)を用いて行う。この算出された荷重値Fからは
計測基準点と柔さ係数が基準点・係数算出部11において算出される。
計測基準点は、式(数12)〜式(数15)の関係を用いて最小二乗法などで算出する。柔さ係数は、式(数18)〜式(数19)の関係を用いて算出する。さらに、この算出された
計測基準点と柔さ係数を基に試料の物性値が物性値算出部12において算出されることとなる。ここで、算出される物性値としては、試料のヤング率、あるいは変形抵抗率を採用することができる。また物性値の算出方法は、式(数12)〜式(数15)の関係を用いてa、bを同定し、この同定したa、bから柔さ係数Aを式(数17)を用いて算出し、この算出した柔さ係数Aから式(数18)〜式(数19)の関係を用いて試料のヤング率、あるいは変形抵抗率を算出する。これらCPU部13で扱われたデータに関しては、全て記憶装置部14で記録される仕組みとなっている。
【0052】
つぎに、本発明によって実際に押込試験を実施した結果から試料の物性値を計測した結果を示す。ここで試料としては、まず安定した結果を得る目的で、ヤング率の異なる3種類のシート状のシリコーンゴム(ヤング率:408kPa,547kPa,1104kPa)を計測し、また生体組織の評価を行う目的で、鶏の深胸筋(ヤング率:7.89kPa)と浅胸筋(ヤング率:6.88kPa)を計測した。各試験回数は、物性が安定したシリコーンゴムは3回ずつ、精肉試料については5回ずつ実施した。これらの試験結果のうち、シリコーンゴムに関する結果を
図5に示す。
【0053】
この
図5に示すシリコーンゴムに関する結果では、3種類のシリコーンゴムをそれぞれ(a)、(b)、(c)として表しているが、球圧子が押し込まれた試料のあるロードセルの端部から離れた位置にあるひずみゲージで計測した応力波から算出された荷重応答Fに関するJ曲線が示されている。特にこのJ曲線は、ひずみゲージで計測したひずみ変化を式(数14)のひずみ波で表し、さらに式(数16)の応力波から式(数12)の荷重応答を算出したものである。また算出は、軟化挙動が観測されるまでの約8μsまでとしている。この
図5を観ると、Expと表された実験による結果では、ヤング率の値が大きい試料ほどJ曲線の傾きが大きくなり、種類の違いが荷重応答Fの違いとして観察できることが分かる。また実験から得られたa、b、x0、σ0を用いた近似曲線であるAppと表される荷重応答でも、これらの違いを表現できることが分かる。
【0054】
つぎに、精肉試料についての結果を
図6に示す。この
図6を観ると、
図5のシリコーンゴムよりも誤差は大きく出るものの、ヤング率の値が大きい浅胸筋の方が、ヤング率の値が小さい深胸筋よりJ曲線の傾きが大きくなることがExpと表された実験から分かる。また実験結果の分析から得られたa、b、x0、σ0を用いた近似曲線であるAppと表される荷重応答でも、これらの違いを表現できることが分かる。
【0055】
つぎに、シリコーンゴムについて、準静的な球圧子押込試験で得られた代表ヤング率Eの結果を併記しながら、実験のJ曲線から算出した変形抵抗率Dの結果を
図7に示す。ここで、代表ヤング率Eとは、押し込みにより計測した弾性率を称したもの[特許文献3]である。この代表ヤング率Eは、式(数18)により算出することができる。また、変形抵抗率Dは、式(数19)により算出することができる。ここで、種類(a)の変形抵抗率Dは20.9MPa、(b)は24.9MPa、(c)は33.1MPaである。この結果を見ると、併記した準静的な球圧子押込試験によって得られた代表ヤング率に応じて、本発明の試験法で得られた変形抵抗率Dも変化していることが分かる。このことから、シリコーンゴムでは、代表ヤング率Eが大きいほど変形抵抗率Dが大きくなっており、変形抵抗率Dが準静的試験で得られる代表ヤング率Eと相関のあることが分かる。
【0056】
つぎに、鶏の精肉試料の計測結果を
図8に示す。この結果では、浅胸筋の変形抵抗率Dは4.93MPa、深胸筋は6.12MPaとなっている。この結果を見ると、
図7のシリコーンゴムの結果と同様に準静的試験で得られる代表ヤング率に応じて本発明の試験法で得られる変形抵抗率Dの大きさも変化しているのに加えて、この変化の割合がシリコーンゴムの結果と比べて極めて大きいことが示されている。このことは、軟生体組織の変形が、その組織細胞内の液体の流動挙動に大きく依存し、この液体の粘性の効果等のため押込み速度の増大によって変形抵抗率Dが格段に大きくなる特性を呈することを示している。
【0057】
これらの実験結果から、本発明による押込試験を用いることで変形速度の違いによる試料の変形抵抗率Dの変化が求められ、特に種類の違いに依存した変形特性の違いを表現できる物性値の算出が可能であることが示された。
【0058】
なお、押込試験に用いる圧子は、十分に硬い圧子に限定されるものではない。このほか押込試験に用いる圧子としては、硬さが既知の軟い圧子などを採用することができる。
【0059】
また、押込試験に用いる圧子は、球圧子に限定されるものではない。このほか押込試験に用いる圧子としては、平端な圧子、円柱圧子などを採用することができる。
【0060】
球形あるいは円柱形の圧子の直径は1×10
-8 〜1 mの範囲内にあることが好ましい。直径が1×10
-8 m以上であると、試料を連続体として扱う分析ができるという利点がある。直径が1 m以下であると、小さな試験装置を開発できるという利点がある。
【0061】
また、押込試験によって求められる物性値は、変形抵抗率に限定されるものではない。このほか押込試験によって求められる物性値としては、ヤング率や粘性コンプライアンスを採用することができる。
【0062】
試料のヤング率または変形抵抗率は、10Pa〜100MPaの範囲内にあることが好ましい。試料のヤング率または変形抵抗率が10Pa以上であると、試料が押込みに伴って崩れたり破壊しないという利点がある。試料のヤング率または変形抵抗率が100MPa以下であると、軟らかめの圧子も利用できるという利点がある。
【0063】
また、計測する試料の形状は、表面が平坦な試料に限定されるものではない。このほか計測する試料の形状としては、球形状、円柱形状などを採用することができる。
【0064】
また、圧子とロードセルは独立していることが好ましい。圧子とロードセルが独立していると、軽量化した圧子を用いることができるので高速な押込試験ができるという利点がある。
【0065】
圧子は、ロードセルと反対側から試料へ押し込むことが好ましい。圧子をロードセルと反対側から試料へ押し込むと、圧子の射出装置を設計しやすいという利点がある。
【0066】
圧子の試料へ押し込む速度は、0.1m/s〜5000m/sの範囲内にあることが好ましい。また、押し込む速度は10〜350m/sの範囲内にあることがさらに好ましい。また、押し込む速度は50〜250m/sの範囲内にあることがまたさらに好ましい。
【0067】
押し込む速度が0.1m/s以上であると、変形抵抗率Dを求められるという利点がある。押し込む速度が10m/s以上であると、衝突による変形挙動を観察できるという利点がある。押し込む速度が50m/s以上であると、飛行機の離着陸時における鳥衝突の衝撃メカニクスを評価できるという利点がある。
【0068】
押し込む速度が5000m/s以下であると、固体中の応力波を用いた試験装置を開発できるという利点がある。押し込む速度が350m/s以下であると、エアガンを用いた試験装置を開発できるという利点がある。押し込む速度が250m/s以下であると、飛行機の離着陸時における鳥衝突の衝撃メカニクスを評価できるという利点がある。
【0069】
本発明の用途は、試料の物性値計測に限定されるものではない。このほか本発明の用途としては、試料の厚さや試料の内部構造の分布の評価などを採用することができる。
【0070】
本発明によれば、つぎのような効果が得られる。本発明の押込試験方法および押込試験装置は、より高速な圧子の押込みによって生じた試料中の応力応答を分析する方法を確立し、これにより高速な圧子の押込みによって生じる高速な変形挙動を観察・評価する押込試験を実施できる。この確立により、これまで実施されていなかった落錘衝撃試験とホプキンソン棒法試験との間の変形速度範囲を含め、負荷できる変形速度の範囲が広い試験を実現できる。
【0071】
なお、本発明は上述の発明を実施するための形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0072】
[参考文献]
[1] M. Tani and A. Sakuma, Evaluation of Thickness and Young's Modulus of Soft Materials by using Spherical Indentation Testing, Transactions of the Japan Society of Mechanical Engineers, Series A, Vol.75, No.755, (2009), pp.901-908.(in Japanese)
[2] 特開2011−137667号公報