特許第6019479号(P6019479)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019479
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】エンジンの凝縮水排出装置
(51)【国際特許分類】
   F02B 29/04 20060101AFI20161020BHJP
   F02D 9/02 20060101ALI20161020BHJP
   F02B 47/02 20060101ALI20161020BHJP
   F02M 25/025 20060101ALI20161020BHJP
   F02B 39/16 20060101ALI20161020BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20161020BHJP
   F02M 26/17 20160101ALI20161020BHJP
【FI】
   F02B29/04 P
   F02D9/02 Q
   F02D9/02 C
   F02B47/02
   F02M25/025 S
   F02B39/16 Z
   F02M35/10 301J
   F02M35/10 311C
   F02M26/17
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-221904(P2012-221904)
(22)【出願日】2012年10月4日
(65)【公開番号】特開2014-74357(P2014-74357A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】磯部 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】木村 洋之
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−164006(JP,A)
【文献】 特開2005−226476(JP,A)
【文献】 特開平08−100661(JP,A)
【文献】 特開2002−303146(JP,A)
【文献】 特開2012−087773(JP,A)
【文献】 特開2012−140868(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第03338273(DE,A1)
【文献】 国際公開第2009/045154(WO,A1)
【文献】 仏国特許出願公開第02957980(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 29/04
F02B 39/16
F02B 47/02
F02D 9/02
F02M 25/025
F02M 26/17
F02M 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気用通路において、インタークーラの下流側に設けられる凝縮水貯蔵タンクと、
前記凝縮水貯蔵タンクとインテークマニホールドの近傍とを連通するバイパス通路と、
前記バイパス通路の前記凝縮水貯蔵タンク側の端部に設けられた第1開閉弁と、
前記バイパス通路の前記インテークマニホールド側の端部に設けられた第2開閉弁と、
前記吸気用通路において、前記凝縮水貯蔵タンクよりも下流側に設けられているスロットルバルブと、
車両の加減速状態に応じて、前記第1開閉弁、前記第2開閉弁及び前記スロットルバルブの開閉状態を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記凝縮水貯蔵タンクの凝縮水を、前記バイパス通路を介して前記吸気用通路に排出するに先立って、車両減速時に、前記第1開閉弁を閉状態且つ前記第2開閉弁を開状態且つ前記スロットルバルブを閉状態とすることで、前記バイパス通路内を負圧とし、前記凝縮水に含まれる気泡を除去する
ことを特徴とするエンジンの凝縮水排出装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
記減速終了後、前記第1開閉弁を開状態且つ前記第2開閉弁を閉状態とすることで、前記凝縮水貯蔵タンクに溜まった凝縮水を前記バイパス通路内へ導入し、次の車両減速時に、前記第1開閉弁を開状態且つ前記第2開閉弁を開状態且つ前記スロットルバルブを閉状態とすることで、前記バイパス通路内の前記凝縮水を前記吸気用通路へ排出するよう制御する
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの凝縮水排出装置。
【請求項3】
前記吸気用通路のターボチャージャの上流側へ、排気用通路の当該ターボチャージャの下流側から、排ガスを送り込む排ガス再循環装置をさらに備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載のエンジンの凝縮水排出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの凝縮水排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低圧EGR(Exhaust Gas Recirculation:排ガス再循環装置)を備える内燃機関では、低圧EGRから出てきたEGRガスがインタークーラを通過する際、ガス中の水分が凝縮し、凝縮水が生成される。この凝縮水は吸気用通路の閉塞を引き起こす恐れがある。
【0003】
そのため、従来は凝縮水を車外へ排出していたが、凝縮水は排ガス由来であり、環境面への悪影響が懸念されていた。しかし、凝縮水を車外へ排出せずに長時間溜めておくと、部品が腐食する可能性が出てきてしまう。
【0004】
下記特許文献1,2には、エンジン運転中に、インタークーラに蓄積するオイルを、バイパス通路を用いてエンジン近傍の吸気用通路へ排出し、エンジン内で蒸発させる旨が記載されており、この技術を応用すれば凝縮水も同様に蒸発させることができ、上述のような問題を解決することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−100661号公報
【特許文献2】特開2005−226476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが上述の方法では、エンジンがインタークーラよりも上方にある場合、バイパス通路内の凝縮水は下方から上方に向けて流れなければならないため、バイパス通路に気泡が含まれていると、バイパス通路に差圧をかけても凝縮水が排出できない恐れがある。
【0007】
さらに上述の方法では、エンジンの運転状態に関わらず凝縮水が排出される場合も考えられ、例えば加速中にエンジンへ凝縮水が排出されると、エンジンの燃焼が不安定になるなど、悪影響を及ぼす可能性がある。
【0008】
そこで本発明では、バイパス通路の両端にECU(Electronic Controlled Unit:電子制御装置)で制御可能な開閉弁を設置し、開閉弁の開閉状態を制御することで車両の減速時に生じるエンジンへの負圧を利用してバイパス通路内の気泡を取り除きつつ、凝縮水を吸気用通路へ排出することが可能なエンジンの凝縮水排出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する第1の発明に係るエンジンの凝縮水排出装置は、
吸気用通路において、インタークーラの下流側に設けられる凝縮水貯蔵タンクと、
前記凝縮水貯蔵タンクとインテークマニホールドの近傍とを連通するバイパス通路と、
前記バイパス通路の前記凝縮水貯蔵タンク側の端部に設けられた第1開閉弁と、
前記バイパス通路の前記インテークマニホールド側の端部に設けられた第2開閉弁と、
前記吸気用通路において、前記凝縮水貯蔵タンクよりも下流側に設けられているスロットルバルブと、
車両の加減速状態に応じて、前記第1開閉弁、前記第2開閉弁及び前記スロットルバルブの開閉状態を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記凝縮水貯蔵タンクの凝縮水を、前記バイパス通路を介して前記吸気用通路に排出するに先立って、車両減速時に、前記第1開閉弁を閉状態且つ前記第2開閉弁を開状態且つ前記スロットルバルブを閉状態とすることで、前記バイパス通路内を負圧とし、前記凝縮水に含まれる気泡を除去する
ことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第2の発明に係るエンジンの凝縮水排出装置は、
上記第1の発明に係るエンジンの凝縮水排出装置において、
前記制御手段は、
記減速終了後、前記第1開閉弁を開状態且つ前記第2開閉弁を閉状態とすることで、前記凝縮水貯蔵タンクに溜まった凝縮水を前記バイパス通路内へ導入し、次の車両減速時に、前記第1開閉弁を開状態且つ前記第2開閉弁を開状態且つ前記スロットルバルブを閉状態とすることで、前記バイパス通路内の前記凝縮水を前記吸気用通路へ排出するよう制御する
ことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第3の発明に係るエンジンの凝縮水排出装置は、
上記第1または第2の発明に係るエンジンの凝縮水排出装置において、
前記吸気用通路のターボチャージャの上流側へ、排気用通路の当該ターボチャージャの下流側から、排ガスを送り込む排ガス再循環装置をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記第1,2の発明に係るエンジンの凝縮水排出装置によれば、バイパス通路の第1開閉弁、第2開閉弁およびスロットルバルブの開閉状態を車両の加減速状態に応じて適宜制御することができるので、車両の減速時に生じるエンジンの負圧を利用して凝縮水貯蔵タンクに溜まった凝縮水を、吸気用通路のインテークマニホールド近傍へ排出することができる。また、凝縮水は、車両の減速時に排出されるのでエンジンへの影響を抑制することができる。さらに、車両の減速時に、バイパス通路内を負圧状態とした後に、凝縮水貯蔵タンクに溜まった凝縮水をバイパス通路内に吸引することにより、凝縮水に含まれる気泡を事前に取り除くことができる。そして、凝縮水の気泡を取り除いた状態で、車両の減速時の負圧を利用して吸気用通路へ凝縮水を排出することができるので、凝縮水の排出をよりスムーズかつ確実に行うことができる。
【0014】
上記第3の発明に係るエンジンの凝縮水排出装置によれば、排ガス再循環装置を用いた場合、凝縮水は排ガス由来となるため、車外へ排出してしまうと環境面への悪影響が懸念される。しかし、凝縮水を車外へ排出せずに内燃機関内に長時間溜めておくと部品が腐食する可能性がある。ところが本装置においては、凝縮水をエンジン内で蒸発させるため、これらの問題は解決される。よって本装置の効果がより顕著に発揮されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例1に係るエンジンの凝縮水排出装置を備えた内燃機関の概略図である。
図2】本発明の実施例1に係るエンジンの凝縮水排出装置の作動を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るエンジンの凝縮水排出装置を実施例にて図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0017】
本発明の実施例1に係るエンジンの凝縮水排出装置について図1を用いて詳述する。図1はEGRを備えた内燃機関の概略図である。当該内燃機関は、吸気用通路12、排気用通路13、触媒14、エンジン15、ターボチャージャ21、インタークーラ22、凝縮水貯蔵タンク23、バイパス通路24、第1開閉弁25、第2開閉弁26、高圧EGR27、高圧スロットルバルブ28、低圧EGR30、低圧スロットルバルブ31、インテークマニホールド41及びECU42を備える。
【0018】
上述のターボチャージャ21は、吸気用通路12内の空気を圧縮し、充填効率を高めるものであり、吸気用通路12と排気用通路13とを跨ぐように設けられており、吸気用通路12側にはコンプレッサを、排気用通路13側にはタービンをそれぞれ有する(図示略)ものである。
【0019】
上述のインタークーラ22は、ターボチャージャ21から送られてきた吸気を冷却し、充填効率をさらに高めるためのものであり、吸気用通路12においてターボチャージャ21よりも下流側に設けられている。
【0020】
上述の凝縮水貯蔵タンク23は、吸気がインタークーラ22を通過することにより発生する凝縮水を貯蔵するものであり、吸気用通路12において、インタークーラ22の下流側に設けられている。尚、凝縮水は仮に低圧EGR30を備えなくとも発生するものであるが、特に低圧EGR30を備える場合に凝縮水は排ガス由来のものとなり、各部品に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0021】
上述のバイパス通路24は、凝縮水貯蔵タンク23から凝縮水を排出するための通路であり、凝縮水貯蔵タンク23と、インテークマニホールド41の近傍とを連通している。
【0022】
上述の第1開閉弁25は、バイパス通路24の凝縮水貯蔵タンク23側の端部に設けられた弁であり、ECU42により開閉自在となっている。
【0023】
上述の第2開閉弁26は、バイパス通路24の凝縮水貯蔵タンク23側の端部に設けられた弁であり、第1開閉弁25同様、ECU42により開閉自在となっている。
【0024】
上述の高圧EGR27は、吸気用通路12の、インタークーラ22とエンジン15との間へ、排気用通路13の、エンジン15とターボチャージャ21との間から、排ガスを送り込むEGRである。この高圧EGR27の、吸気用通路12との合流部分には、排ガス再循環量をコントロールする高圧EGRバルブ29が設けられており、この高圧EGRバルブ29が、吸気用通路12において、高圧スロットルバルブ28よりも下流側に位置するように配置されている。
【0025】
上述の高圧スロットルバルブ28は、吸気の吸い込み量を調節する絞り弁であり、吸気用通路12において、凝縮水貯蔵タンク23の下流側に設けられている。
【0026】
上述の低圧EGR30は、吸気用通路12のターボチャージャ21の上流側へ、排気用通路13のターボチャージャ21と触媒14の下流側から、排ガスを送り込むEGRである。尚、触媒14とは、排気用通路13に設けられた排ガス成分を清浄化するフィルタである。この低圧EGR30には、内部を通過する空気を冷却するEGRクーラ33が設けられ、吸気用通路12との合流部分に排ガス再循環量をコントロールする低圧EGRバルブ32が設けられている。
【0027】
上述の低圧スロットルバルブ31は、吸気の吸い込み量を調節する絞り弁であり、吸気用通路12において、低圧EGRバルブ32の上流側に設けられている。
【0028】
上述のECU42は、車両のアクセル開度から加減速状態を判断し、加減速状態に応じて、第1開閉弁25、第2開閉弁26及び高圧スロットルバルブ28の開閉を行い、凝縮水貯蔵タンク23に溜まった凝縮水が、インテークマニホールド41の近傍へ排出されるようにする。但し、システムの搭載レイアウト上、エンジン15側の方がインタークーラ22側よりも上方にある場合、バイパス通路24内の凝縮水は下方から上方に向けて流れなければならないため、バイパス通路24に気泡が含まれていると、バイパス通路24に差圧をかけても凝縮水が排出できない恐れがある。そこで、気泡を含んでいない凝縮水をバイパス通路24に導入する。尚、上述の加減速状態の判断については、アクセルOFF(全閉)を減速時、アクセルONを減速解除(終了)と判断するものとする。
【0029】
以下、ECU42の作動を、図2に示すフローチャートを用いて説明する。
【0030】
ステップS1では、第1開閉弁25及び第2開閉弁26が閉じた状態であることを確認する。当該開閉弁は、通常閉じた状態に維持されている。
【0031】
ステップS2では、アクセル開度からアクセルのON/OFFを検出し、アクセルOFFか否か、即ち車両が減速中であるか否かを判断する。アクセルOFFで車両が減速中であればステップS3へ移行し、減速中でなければ本ステップS2を繰り返す。
【0032】
ステップS3では、第2開閉弁26を開ける。その後、高圧スロットルバルブ28を閉じる。本ステップS3により、エンジン15の回転を利用して、バイパス通路24内を負圧にすることができる。
【0033】
ステップS4では、再び車両が減速中か否かを判断する。ここでは、車両の減速状態が終了したかどうか判断している。減速中でない、即ち減速状態が終了していれば、ステップS5へ移行し、まだ減速中であれば減速終了まで本ステップS4を繰り返す。
【0034】
ステップS5では、減速終了後、第2開閉弁26を閉じる。その後、高圧スロットルバルブ28が閉じた状態を解除する。
【0035】
ステップS6では、減速時間がt1秒以上であったか否かを判断する。t1秒以上であればステップS7へ移行し、t1秒未満であればステップS1へ移行する。尚、t1はキャリブレーションにより決定する。本ステップS6を行う理由は、減速時間が一定時間以上でないと、バイパス通路24の負圧が不十分となり、凝縮水中の気泡を十分に取り除くことができないためである。
【0036】
ステップS7では、凝縮水生成量が0より大きいか否かを判断する。0より大きければステップS8へ移行し、0であればステップS1へ移行する。尚、凝縮水生成量は予め備えられたマップ(データ)から積算するか、または専用センサを取り付け実測する。
【0037】
ステップS8では、第1開閉弁25を開ける。
【0038】
ステップS9では、ステップS8終了後、ECU42に内蔵されたタイマによる計測を行い、所定時間t2秒経過したか否かを判断する。経過していればステップS10へ移行し、経過していなければ本ステップS9を繰り返す。尚、所定時間t2は凝縮水を吸引するために十分な時間とし、キャリブレーションにより決定する。
【0039】
上記ステップS8,S9により、バイパス通路24が負圧になっているため、凝縮水貯蔵タンク23内の凝縮水がバイパス通路24内に吸引されると共に、気泡が取り除かれる。
【0040】
ステップS10では、第1開閉弁25を閉じる。
【0041】
ステップS11では、車両が減速中であるか否かを判断する。アクセルOFFで車両が減速中であればステップS12へ移行し、減速中でなければ本ステップS11を繰り返す。
【0042】
ステップS12では、第1開閉弁25及び第2開閉弁26を開ける。その後、高圧スロットルバルブ28を閉じる。本ステップS12により、バイパス通路24に発生した差圧によって、凝縮水がバイパス通路24から、インテークマニホールド41の近傍へ排出される。
【0043】
ステップS13では、車両の減速状態が終了したか否かを判断する。減速状態が終了していればステップS14へ移行し、まだ減速中であれば、減速終了まで本ステップS13を繰り返す。
【0044】
ステップS14では、高圧スロットルバルブ28の閉じた状態を解除する。また、ステップS7において凝縮水生成量のマップを用いて積算している場合は、積算された凝縮水生成量の値を0にリセットする。
【0045】
ステップS15では、第1開閉弁25及び第2開閉弁26を閉じる。その後、ステップS1へ戻る。
【0046】
即ち、ECU42は、バイパス通路24を負圧状態にした後、凝縮水貯蔵タンク23から凝縮水を吸引することにより、バイパス通路24に導入した凝縮水に含まれる気泡を取り除き、その後、高圧スロットルバルブ28を絞ることにより、バイパス通路24の凝縮水を吸気用通路12のインテークマニホールド41の近傍へ排出する制御を行うものである。排出された凝縮水はエンジン15内で加熱され、蒸発する。
【0047】
尚、上述では、実施例1に係るエンジンの凝縮水排出装置に高圧EGR27及び低圧EGR30を備えるものとしているが、高圧EGR27及び低圧EGR30は必須の構成要件ではない。即ち、先に述べたように、EGRを設けていない内燃機関においても凝縮水貯蔵タンク23に凝縮水が溜まることが考えられ、その場合も上述の本装置の作動の効果が発揮される。但し、低圧EGR30を設けている内燃機関においては、排ガスを再利用していることから凝縮水が酸性になる可能性が高く、本装置の効果がより顕著に発揮される。
【0048】
以上、実施例1に係るエンジンの凝縮水排出装置について詳述したが、換言すれば本装置は、吸気用通路12において、インタークーラ22の下流側に設けられる凝縮水貯蔵タンク23と、凝縮水貯蔵タンク23とインテークマニホールド41の近傍とを連通するバイパス通路24と、バイパス通路24の凝縮水貯蔵タンク23側の端部に設けられた第1開閉弁25と、バイパス通路23のインテークマニホールド41側の端部に設けられた第2開閉弁26と、吸気用通路12において、凝縮水貯蔵タンク23よりも下流側に設けられている高圧スロットルバルブ28と、車両の加減速状態に応じて、第1開閉弁25、第2開閉弁26及び高圧スロットルバルブ28の開閉状態を制御するECU42とを備え、ECU42は、車両減速時に、凝縮水貯蔵タンク23の凝縮水がバイパス通路24を介して吸気用通路12に排出されるよう第1開閉弁25、第2開閉弁26および高圧スロットルバルブ28を制御するものである。
【0049】
これにより、バイパス通路24の第1開閉弁25、第2開閉弁26および高圧スロットルバルブ28の開閉状態を車両の加減速状態に応じて適宜制御することができるので、車両の減速時に生じるエンジン15の負圧を利用して凝縮水貯蔵タンク23に溜まった凝縮水を、吸気用通路12のインテークマニホールド41近傍へ排出することができる。また、凝縮水は、車両の減速時に排出されるのでエンジン15への影響を抑制することができる。
【0050】
また、ECU42は、車両減速時に、第1開閉弁25を閉状態且つ第2開閉弁26を開状態且つ高圧スロットルバルブ28を閉状態とすることで、バイパス通路24内を負圧とし、減速終了後、第1開閉弁25を開状態且つ第2開閉弁26を閉状態とすることで、凝縮水貯蔵タンク23に溜まった凝縮水をバイパス通路24内へ導入し、次の車両減速時に、第1開閉弁25を開状態且つ第2開閉弁26を開状態且つ高圧スロットルバルブ28を閉状態とすることで、バイパス通路24内の凝縮水を吸気用通路12へ排出するよう制御するものである。
【0051】
これにより、車両の減速時に、バイパス通路24内を負圧状態とした後に、凝縮水貯蔵タンク23に溜まった凝縮水をバイパス通路24内に吸引することにより、凝縮水に含まれる気泡を事前に取り除くことができる。そして、凝縮水の気泡を取り除いた状態で、車両の減速時の負圧を利用して吸気用通路12へ凝縮水を排出することができるので、凝縮水の排出をよりスムーズかつ確実に行うことができる。
【0052】
さらに本装置は、吸気用通路12のターボチャージャ21の上流側へ、排気用通路13のターボチャージャ21の下流側から、排ガスを送り込む低圧EGR30を備えても良い。
【0053】
このように低圧EGR30を用いた場合、凝縮水は排ガス由来となるため、車外へ排出してしまうと環境面への悪影響が懸念される。しかし、凝縮水を車外へ排出せずに内燃機関内に長時間溜めておくと部品が腐食する可能性がある。ところが本装置においては、凝縮水をエンジン15内で蒸発させるため、これらの問題は解決される。よって本装置の効果がより顕著に発揮されることになる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、エンジンの凝縮水排出装置として好適である。
【符号の説明】
【0055】
12 吸気用通路
13 排気用通路
14 触媒(フィルタ)
15 エンジン
21 ターボチャージャ
22 インタークーラ
23 凝縮水貯蔵タンク
24 バイパス通路
25 第1開閉弁
26 第2開閉弁
27 高圧EGR
28 高圧スロットルバルブ
29 高圧EGRバルブ
30 低圧EGR
31 低圧スロットルバルブ
32 低圧EGRバルブ
33 EGRクーラ
41 インテークマニホールド
42 ECU
図1
図2