【実施例1】
【0017】
本発明の実施例1に係るエンジンの凝縮水排出装置について
図1を用いて詳述する。
図1はEGRを備えた内燃機関の概略図である。当該内燃機関は、吸気用通路12、排気用通路13、触媒14、エンジン15、ターボチャージャ21、インタークーラ22、凝縮水貯蔵タンク23、バイパス通路24、第1開閉弁25、第2開閉弁26、高圧EGR27、高圧スロットルバルブ28、低圧EGR30、低圧スロットルバルブ31、インテークマニホールド41及びECU42を備える。
【0018】
上述のターボチャージャ21は、吸気用通路12内の空気を圧縮し、充填効率を高めるものであり、吸気用通路12と排気用通路13とを跨ぐように設けられており、吸気用通路12側にはコンプレッサを、排気用通路13側にはタービンをそれぞれ有する(図示略)ものである。
【0019】
上述のインタークーラ22は、ターボチャージャ21から送られてきた吸気を冷却し、充填効率をさらに高めるためのものであり、吸気用通路12においてターボチャージャ21よりも下流側に設けられている。
【0020】
上述の凝縮水貯蔵タンク23は、吸気がインタークーラ22を通過することにより発生する凝縮水を貯蔵するものであり、吸気用通路12において、インタークーラ22の下流側に設けられている。尚、凝縮水は仮に低圧EGR30を備えなくとも発生するものであるが、特に低圧EGR30を備える場合に凝縮水は排ガス由来のものとなり、各部品に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0021】
上述のバイパス通路24は、凝縮水貯蔵タンク23から凝縮水を排出するための通路であり、凝縮水貯蔵タンク23と、インテークマニホールド41の近傍とを連通している。
【0022】
上述の第1開閉弁25は、バイパス通路24の凝縮水貯蔵タンク23側の端部に設けられた弁であり、ECU42により開閉自在となっている。
【0023】
上述の第2開閉弁26は、バイパス通路24の凝縮水貯蔵タンク23側の端部に設けられた弁であり、第1開閉弁25同様、ECU42により開閉自在となっている。
【0024】
上述の高圧EGR27は、吸気用通路12の、インタークーラ22とエンジン15との間へ、排気用通路13の、エンジン15とターボチャージャ21との間から、排ガスを送り込むEGRである。この高圧EGR27の、吸気用通路12との合流部分には、排ガス再循環量をコントロールする高圧EGRバルブ29が設けられており、この高圧EGRバルブ29が、吸気用通路12において、高圧スロットルバルブ28よりも下流側に位置するように配置されている。
【0025】
上述の高圧スロットルバルブ28は、吸気の吸い込み量を調節する絞り弁であり、吸気用通路12において、凝縮水貯蔵タンク23の下流側に設けられている。
【0026】
上述の低圧EGR30は、吸気用通路12のターボチャージャ21の上流側へ、排気用通路13のターボチャージャ21と触媒14の下流側から、排ガスを送り込むEGRである。尚、触媒14とは、排気用通路13に設けられた排ガス成分を清浄化するフィルタである。この低圧EGR30には、内部を通過する空気を冷却するEGRクーラ33が設けられ、吸気用通路12との合流部分に排ガス再循環量をコントロールする低圧EGRバルブ32が設けられている。
【0027】
上述の低圧スロットルバルブ31は、吸気の吸い込み量を調節する絞り弁であり、吸気用通路12において、低圧EGRバルブ32の上流側に設けられている。
【0028】
上述のECU42は、車両のアクセル開度から加減速状態を判断し、加減速状態に応じて、第1開閉弁25、第2開閉弁26及び高圧スロットルバルブ28の開閉を行い、凝縮水貯蔵タンク23に溜まった凝縮水が、インテークマニホールド41の近傍へ排出されるようにする。但し、システムの搭載レイアウト上、エンジン15側の方がインタークーラ22側よりも上方にある場合、バイパス通路24内の凝縮水は下方から上方に向けて流れなければならないため、バイパス通路24に気泡が含まれていると、バイパス通路24に差圧をかけても凝縮水が排出できない恐れがある。そこで、気泡を含んでいない凝縮水をバイパス通路24に導入する。尚、上述の加減速状態の判断については、アクセルOFF(全閉)を減速時、アクセルONを減速解除(終了)と判断するものとする。
【0029】
以下、ECU42の作動を、
図2に示すフローチャートを用いて説明する。
【0030】
ステップS1では、第1開閉弁25及び第2開閉弁26が閉じた状態であることを確認する。当該開閉弁は、通常閉じた状態に維持されている。
【0031】
ステップS2では、アクセル開度からアクセルのON/OFFを検出し、アクセルOFFか否か、即ち車両が減速中であるか否かを判断する。アクセルOFFで車両が減速中であればステップS3へ移行し、減速中でなければ本ステップS2を繰り返す。
【0032】
ステップS3では、第2開閉弁26を開ける。その後、高圧スロットルバルブ28を閉じる。本ステップS3により、エンジン15の回転を利用して、バイパス通路24内を負圧にすることができる。
【0033】
ステップS4では、再び車両が減速中か否かを判断する。ここでは、車両の減速状態が終了したかどうか判断している。減速中でない、即ち減速状態が終了していれば、ステップS5へ移行し、まだ減速中であれば減速終了まで本ステップS4を繰り返す。
【0034】
ステップS5では、減速終了後、第2開閉弁26を閉じる。その後、高圧スロットルバルブ28が閉じた状態を解除する。
【0035】
ステップS6では、減速時間がt
1秒以上であったか否かを判断する。t
1秒以上であればステップS7へ移行し、t
1秒未満であればステップS1へ移行する。尚、t
1はキャリブレーションにより決定する。本ステップS6を行う理由は、減速時間が一定時間以上でないと、バイパス通路24の負圧が不十分となり、凝縮水中の気泡を十分に取り除くことができないためである。
【0036】
ステップS7では、凝縮水生成量が0より大きいか否かを判断する。0より大きければステップS8へ移行し、0であればステップS1へ移行する。尚、凝縮水生成量は予め備えられたマップ(データ)から積算するか、または専用センサを取り付け実測する。
【0037】
ステップS8では、第1開閉弁25を開ける。
【0038】
ステップS9では、ステップS8終了後、ECU42に内蔵されたタイマによる計測を行い、所定時間t
2秒経過したか否かを判断する。経過していればステップS10へ移行し、経過していなければ本ステップS9を繰り返す。尚、所定時間t
2は凝縮水を吸引するために十分な時間とし、キャリブレーションにより決定する。
【0039】
上記ステップS8,S9により、バイパス通路24が負圧になっているため、凝縮水貯蔵タンク23内の凝縮水がバイパス通路24内に吸引されると共に、気泡が取り除かれる。
【0040】
ステップS10では、第1開閉弁25を閉じる。
【0041】
ステップS11では、車両が減速中であるか否かを判断する。アクセルOFFで車両が減速中であればステップS12へ移行し、減速中でなければ本ステップS11を繰り返す。
【0042】
ステップS12では、第1開閉弁25及び第2開閉弁26を開ける。その後、高圧スロットルバルブ28を閉じる。本ステップS12により、バイパス通路24に発生した差圧によって、凝縮水がバイパス通路24から、インテークマニホールド41の近傍へ排出される。
【0043】
ステップS13では、車両の減速状態が終了したか否かを判断する。減速状態が終了していればステップS14へ移行し、まだ減速中であれば、減速終了まで本ステップS13を繰り返す。
【0044】
ステップS14では、高圧スロットルバルブ28の閉じた状態を解除する。また、ステップS7において凝縮水生成量のマップを用いて積算している場合は、積算された凝縮水生成量の値を0にリセットする。
【0045】
ステップS15では、第1開閉弁25及び第2開閉弁26を閉じる。その後、ステップS1へ戻る。
【0046】
即ち、ECU42は、バイパス通路24を負圧状態にした後、凝縮水貯蔵タンク23から凝縮水を吸引することにより、バイパス通路24に導入した凝縮水に含まれる気泡を取り除き、その後、高圧スロットルバルブ28を絞ることにより、バイパス通路24の凝縮水を吸気用通路12のインテークマニホールド41の近傍へ排出する制御を行うものである。排出された凝縮水はエンジン15内で加熱され、蒸発する。
【0047】
尚、上述では、実施例1に係るエンジンの凝縮水排出装置に高圧EGR27及び低圧EGR30を備えるものとしているが、高圧EGR27及び低圧EGR30は必須の構成要件ではない。即ち、先に述べたように、EGRを設けていない内燃機関においても凝縮水貯蔵タンク23に凝縮水が溜まることが考えられ、その場合も上述の本装置の作動の効果が発揮される。但し、低圧EGR30を設けている内燃機関においては、排ガスを再利用していることから凝縮水が酸性になる可能性が高く、本装置の効果がより顕著に発揮される。
【0048】
以上、実施例1に係るエンジンの凝縮水排出装置について詳述したが、換言すれば本装置は、吸気用通路12において、インタークーラ22の下流側に設けられる凝縮水貯蔵タンク23と、凝縮水貯蔵タンク23とインテークマニホールド41の近傍とを連通するバイパス通路24と、バイパス通路24の凝縮水貯蔵タンク23側の端部に設けられた第1開閉弁25と、バイパス通路23のインテークマニホールド41側の端部に設けられた第2開閉弁26と、吸気用通路12において、凝縮水貯蔵タンク23よりも下流側に設けられている高圧スロットルバルブ28と、車両の加減速状態に応じて、第1開閉弁25、第2開閉弁26及び高圧スロットルバルブ28の開閉状態を制御するECU42とを備え、ECU42は、車両減速時に、凝縮水貯蔵タンク23の凝縮水がバイパス通路24を介して吸気用通路12に排出されるよう第1開閉弁25、第2開閉弁26および高圧スロットルバルブ28を制御するものである。
【0049】
これにより、バイパス通路24の第1開閉弁25、第2開閉弁26および高圧スロットルバルブ28の開閉状態を車両の加減速状態に応じて適宜制御することができるので、車両の減速時に生じるエンジン15の負圧を利用して凝縮水貯蔵タンク23に溜まった凝縮水を、吸気用通路12のインテークマニホールド41近傍へ排出することができる。また、凝縮水は、車両の減速時に排出されるのでエンジン15への影響を抑制することができる。
【0050】
また、ECU42は、車両減速時に、第1開閉弁25を閉状態且つ第2開閉弁26を開状態且つ高圧スロットルバルブ28を閉状態とすることで、バイパス通路24内を負圧とし、減速終了後、第1開閉弁25を開状態且つ第2開閉弁26を閉状態とすることで、凝縮水貯蔵タンク23に溜まった凝縮水をバイパス通路24内へ導入し、次の車両減速時に、第1開閉弁25を開状態且つ第2開閉弁26を開状態且つ高圧スロットルバルブ28を閉状態とすることで、バイパス通路24内の凝縮水を吸気用通路12へ排出するよう制御するものである。
【0051】
これにより、車両の減速時に、バイパス通路24内を負圧状態とした後に、凝縮水貯蔵タンク23に溜まった凝縮水をバイパス通路24内に吸引することにより、凝縮水に含まれる気泡を事前に取り除くことができる。そして、凝縮水の気泡を取り除いた状態で、車両の減速時の負圧を利用して吸気用通路12へ凝縮水を排出することができるので、凝縮水の排出をよりスムーズかつ確実に行うことができる。
【0052】
さらに本装置は、吸気用通路12のターボチャージャ21の上流側へ、排気用通路13のターボチャージャ21の下流側から、排ガスを送り込む低圧EGR30を備えても良い。
【0053】
このように低圧EGR30を用いた場合、凝縮水は排ガス由来となるため、車外へ排出してしまうと環境面への悪影響が懸念される。しかし、凝縮水を車外へ排出せずに内燃機関内に長時間溜めておくと部品が腐食する可能性がある。ところが本装置においては、凝縮水をエンジン15内で蒸発させるため、これらの問題は解決される。よって本装置の効果がより顕著に発揮されることになる。