(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019481
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】エンジンの凝縮水排出構造
(51)【国際特許分類】
F02M 35/10 20060101AFI20161020BHJP
F02M 35/104 20060101ALI20161020BHJP
F02M 26/00 20160101ALI20161020BHJP
F02M 26/14 20160101ALI20161020BHJP
F02D 21/08 20060101ALI20161020BHJP
F02D 23/00 20060101ALI20161020BHJP
F02B 29/04 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
F02M35/10 301J
F02M35/104 P
F02M26/00
F02M26/14
F02D21/08 311B
F02D23/00 J
F02B29/04 P
F02M35/10 311C
F02M35/10 311E
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-224031(P2012-224031)
(22)【出願日】2012年10月9日
(65)【公開番号】特開2014-77366(P2014-77366A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176811
【氏名又は名称】三菱自動車エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】磯部 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】木村 洋之
(72)【発明者】
【氏名】志和池 博史
【審査官】
北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−309168(JP,A)
【文献】
特開2002−339809(JP,A)
【文献】
特開2005−226476(JP,A)
【文献】
特開2006−241992(JP,A)
【文献】
特開2002−106429(JP,A)
【文献】
特開2012−087773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/10
F02B 29/04
F02D 21/08
F02D 23/00
F02M 26/00
F02M 26/14
F02M 35/104
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気がインタークーラを通過することにより発生する凝縮水を貯蔵する凝縮水貯蔵タンクと、
前記凝縮水貯蔵タンクとインテークマニホールドとを連通し、前記凝縮水を当該インテークマニホールド内に排出可能としたバイパス通路と、
吸気用通路のターボチャージャの上流側へ、排気用通路の当該ターボチャージャの下流側から、排ガスを送り込む排ガス再循環装置と
を備えるエンジンの凝縮水排出構造であって、
前記インテークマニホールドが、シリンダヘッドの吸気ポートに応じて設けられた複数の吸気ポート用開口部と、隣り合う当該吸気ポート用開口部の間に設けられ上流側に突起して吸気流れを分流する肉盛部とを有し、
前記シリンダヘッドが、隣り合う前記吸気ポートの間で前記肉盛部の位置に応じて設けられる窪み部を有し、
前記肉盛部は、当該肉盛部の内部で前記バイパス通路と連通して当該バイパス通路から送り込まれてきた凝縮水を前記窪み部へ導く内部通路と、当該肉盛部の前記窪み部側の壁面に前記窪み部と対向するよう形成され、両隣の前記吸気ポート用開口部に連通されて前記窪み部を経由した凝縮水を両隣の前記吸気ポートへ導く排出通路を形成する凹溝部とを有する
ことを特徴とするエンジンの凝縮水排出構造。
【請求項2】
前記肉盛部と前記窪み部との間には、前記内部通路の前記窪み部側出口に対応して開口された穴を有して前記窪み部の開口全体を覆い、前記凝縮水からオイル成分を分離するフィルタを備えることを特徴とする請求項1に記載のエンジンの凝縮水排出構造。
【請求項3】
前記内部通路の前記窪み部側出口と前記凹溝部が互いに交わるよう形成されて、前記窪み部の最上部に位置されることを特徴とする請求項2に記載のエンジンの凝縮水排出構造。
【請求項4】
前記凹溝部が前記窪み部の最上部に位置され、前記内部通路の前記窪み部側出口が前記凹溝部よりも下方に位置されることを特徴とする請求項2に記載のエンジンの凝縮水排出構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気用通路内に発生する凝縮水をインテークマニホールドに排出するエンジンの凝縮水排出構造に関する。
【背景技術】
【0002】
低圧EGR(Exhaust Gas Recirculation:排ガス再循環装置)を備える内燃機関の一例として、
図18には、吸気用通路12、排気用通路13、触媒(フィルタ)14、エンジン15、ターボチャージャ21、インタークーラ22、凝縮水貯蔵タンク23、バイパス通路24、高圧EGR27、高圧スロットルバルブ28、低圧EGR30及び低圧スロットルバルブ31を備えるシステムを示している。
【0003】
上述のターボチャージャ21は、吸気用通路12内の空気を圧縮し、充填効率を高めるものであり、吸気用通路12と排気用通路13とを跨ぐように設けられており、吸気用通路12側にはコンプレッサを、排気用通路13側にはタービンをそれぞれ有する(図示略)ものである。
【0004】
上述のインタークーラ22は、ターボチャージャ21から送られてきた吸気を冷却し、充填効率をさらに高めるためのものであり、吸気用通路12においてターボチャージャ21よりも下流側に設けられている。
【0005】
上述の凝縮水貯蔵タンク23は、吸気がインタークーラ22を通過することにより発生する凝縮水を貯蔵するものであり、吸気用通路12において、インタークーラ22の下流側に設けられている。
【0006】
上述のバイパス通路24は、凝縮水貯蔵タンク23から凝縮水を排出するための通路であり、凝縮水貯蔵タンク23と、インテークマニホールド(
図18中のaの指す位置)とを連通している。
【0007】
上述の高圧EGR27は、吸気用通路12の、インタークーラ22とエンジン15との間へ、排気用通路13の、エンジン15とターボチャージャ21との間から、排ガスを送り込むEGRである。この高圧EGR27の、吸気用通路12との合流部分には、排ガス再循環量をコントロールする高圧EGRバルブ29が設けられており、この高圧EGRバルブ29が、吸気用通路12において、高圧スロットルバルブ28よりも下流側に位置するように配置されている。
【0008】
上述の高圧スロットルバルブ28は、吸気の吸い込み量を調節する絞り弁であり、吸気用通路12において、凝縮水貯蔵タンク23の下流側に設けられている。
【0009】
上述の低圧EGR30は、吸気用通路12のターボチャージャ21の上流側へ、排気用通路13のターボチャージャ21と触媒14の下流側から、排ガスを送り込むEGRである。尚、触媒14とは、排気用通路13に設けられた排ガス成分を清浄化するフィルタである。この低圧EGR30には、内部を通過する空気を冷却するEGRクーラ33が設けられ、吸気用通路12との合流部分に排ガス再循環量をコントロールする低圧EGRバルブ32が設けられている。
【0010】
上述の低圧スロットルバルブ31は、吸気の吸い込み量を調節する絞り弁であり、吸気用通路12において、低圧EGRバルブ32の上流側に設けられている。
【0011】
上述のブリーザホース34は、吸気用通路12における低圧スロットルバルブ31の上流側(即ち、ターボチャージャ21の上流側)へ、エンジン15からブローバイガスを送り込むための通路である。
【0012】
以上説明したシステムを用いることによって、吸気側上流にて凝縮水等を溜め、インテークマニホールドに導くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−106429号公報
【特許文献2】特開2012−87773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記特許文献1には、EGRを備えるシステムにおいて、エンジン部分に備わるブローバイガス流通用通路とEGRとの、吸気用通路における位置関係を考慮することで、EGRガス中の水分による凍結を防止する技術が提案されている。
【0015】
上記特許文献2には、インテークマニホールドにおけるサージタンクの下部に溜まりこんだ凝縮水やオイルを、エンジンの気筒内に導く技術が提案されている。
【0016】
しかしながら、上述のような低圧EGRを用いるシステムでは、ブローバイガスに含まれるオイル成分と凝縮水が混合し、一部がエマルジョン化して水よりも粘度の高い物質(以下、エマルジョン組成物と記載)が生成されるという問題が発生する。
【0017】
さらに、上述のようにバイパス通路を設けた場合、エマルジョン組成物がバイパス通路を閉塞し、凝縮水の排出を困難にする懸念がある。
【0018】
そこで本発明では、バイパス通路の出口が設置されたインテークマニホールド及びシリンダヘッドにおいて、エマルジョン組成物を分離することで、凝縮水の排出機能を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決する第1の発明に係るエンジンの凝縮水排出構造は、
吸気がインタークーラを通過することにより発生する凝縮水を貯蔵する凝縮水貯蔵タンクと、
前記凝縮水貯蔵タンクとインテークマニホールドとを連通し、前記凝縮水を当該インテークマニホールド内に排出可能としたバイパス通路と、
吸気用通路のターボチャージャの上流側へ、排気用通路の当該ターボチャージャの下流側から、排ガスを送り込む排ガス再循環装置と
を備えるエンジンの凝縮水排出構造であって、
前記インテークマニホールドが、シリンダヘッドの吸気ポートに応じて設けられた複数の吸気ポート用開口部と、隣り合う当該吸気ポート用開口部の間に設けられ上流側に突起して吸気流れを分流する肉盛部とを有し、
前記シリンダヘッドが、隣り合う前記吸気ポートの間で前記肉盛部の位置に応じて設けられる窪み部を有し、
前記肉盛部は、当該肉盛部の内部で前記バイパス通路と連通して当該バイパス通路から送り込まれてきた凝縮水を前記窪み部へ導く内部通路と、当該肉盛部の前記窪み部側の壁面に前記窪み部と対向するよう形成され、両隣の前記吸気ポート用開口部に連通されて前記窪み部を経由した凝縮水を両隣の前記吸気ポートへ導く排出通路を形成する凹溝部とを有する
ことを特徴とする。
【0020】
上記課題を解決する第2の発明に係るエンジンの凝縮水排出構造は、
上記第1の発明に係るエンジンの凝縮水排出構造において、
前記肉盛部と前記窪み部との間には、前記内部通路の前記窪み部側出口に対応して開口された穴を有して前記窪み部の開口全体を覆い、前記凝縮水からオイル成分を分離するフィルタを備えることを特徴とする。
【0021】
上記課題を解決する第3の発明に係るエンジンの凝縮水排出構造は、
上記第2の発明に係るエンジンの凝縮水排出構造において、
前記内部通路の前記窪み部側出口と前記凹溝部が互いに交わるよう形成されて、前記窪み部の最上部に位置されることを特徴とする。
【0022】
上記課題を解決する第4の発明に係るエンジンの凝縮水排出構造は、
上記第2の発明に係るエンジンの凝縮水排出構造において、
前記凹溝部が前記窪み部の最上部に位置され、前記内部通路の前記窪み部側出口が前記凹溝部よりも下方に位置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
上記第
1の発明に係るエンジンの凝縮水排出構造によれば、凝縮水が肉盛部内の内部通路を通ってシリンダヘッドの窪み部に流れ込み、その後吸気用通路に連通される排出通路を形成する凹溝部を通って排出される。このとき、窪み部内に流れ込んだ凝縮水に混入しているエマルジョン組成物が窪み部の底に沈殿されるので、エマルジョン組成物を分離することができる。これにより、バイパス通路の閉塞を抑制し、凝縮水の排出機能を確保することができる。
【0025】
上記第
2の発明に係るエンジンの凝縮水排出構造によれば、フィルタを備えることでシリンダヘッドの窪み部において凝縮水からエマルジョン組成物を分離する働きがさらに向上し、バイパス通路の閉塞をより抑制することができる。
【0026】
上記第
3の発明に係るエンジンの凝縮水排出構造によれば、内部通路の窪み部側出口と凹溝部が窪み部の最上部に位置されるので、凝縮水に混合するエマルジョン組成物が窪み部の下部に沈殿しやすく、エマルジョン組成物をシリンダヘッドの窪み部でより確実に分離することができる。また、シリンダヘッドの窪み部内に溜まったエマルジョン組成物がフィルタに付着することを抑制でき、バイパス通路の圧損上昇を抑制することができる。
【0027】
上記第
4の発明に係るエンジンの凝縮水排出構造によれば、凹溝部が窪み部の最上部に位置し、内部通路の窪み部側出口が凹溝部よりも下方に位置することで、シリンダヘッドの窪み部に溜まったエマルジョン組成物がフィルタに付着することを抑制し、バイパス通路の圧損上昇を抑制することができ、また、凝縮水がシリンダヘッドの窪み部の下方から上方側に向かって流れるので、流れが円滑になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施例1に係るエンジンの凝縮水排出構造の斜視図である。
【
図2】本発明の実施例1に係るエンジンの凝縮水排出構造を分解した状態の斜視図である。
【
図3】本発明の実施例1〜4におけるインテークマニホールドの肉盛部付近の拡大斜視図である。
【
図4】本発明の実施例1における、
図1のA‐A断面図である。
【
図5】本発明の実施例1における、
図2のB‐B矢視図である。
【
図6】本発明の実施例2における、
図1のA‐A断面図である。
【
図7】本発明の実施例2における、
図2のB‐B矢視図である。
【
図8】本発明の実施例2における、
図2のC‐C矢視図である。
【
図9】本発明の実施例2における、
図8のD‐D断面図である。
【
図10】本発明の実施例3における、
図1のA‐A断面図である。
【
図11】本発明の実施例3における、
図2のB‐B矢視図である。
【
図12】本発明の実施例3における、
図2のC‐C矢視図である。
【
図13】本発明の実施例3における、
図12のD‐D断面図である。
【
図14】本発明の実施例4における、
図1のA‐A断面図である。
【
図15】本発明の実施例4における、
図2のB‐B矢視図である。
【
図16】本発明の実施例4における、
図2のC‐C矢視図である。
【
図17】本発明の実施例4における
図16のD‐D断面図である。
【
図18】低圧EGR及びバイパス通路を備えるシステムを説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、
図1に示すように、シリンダヘッド43に窪み部を設けることで、バイパス通路24を通過する凝縮水から、オイルが混ざったエマルジョン組成物を分離して貯蔵し、エマルジョン組成物が分離されて水分が主となった凝縮水を各吸気ポートに等量に排出できる構造を提案するものである。
【0030】
以下、本発明に係るエンジンの凝縮水排出構造を実施例にて図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0031】
本発明の実施例1に係るエンジンの凝縮水排出構造について
図2〜5を用いて説明する。本装置は、バイパス通路24、インテークマニホールド41、ガスケット42、シリンダヘッド43及び凝縮水貯蔵タンク23を備える(凝縮水貯蔵タンク23は
図18及び上述の説明を参照)。
【0032】
上述のバイパス通路24は、凝縮水貯蔵タンク23とインテークマニホールド41とを連通することで、凝縮水及び混合物を排出する通路であり、図示されてはいないが、インテークマニホールド側の出口が、複数に分岐している。
【0033】
上述のインテークマニホールド41は、吸気用通路12からの吸気を各シリンダ(図示略)へ配給する分岐管である。
図2は本装置を分解した状態の斜視図であるが、ここでは破線矢印にてインテークマニホールド41内の吸気の流れが示されている。
【0034】
図2に示すように、インテークマニホールド41には、シリンダヘッド43の吸気ポート52に応じて設けられた吸気ポート用開口54と、隣り合う吸気ポート用開口54同士の間に設けられ上流側に突起して吸気の流れを分流する肉盛部53とを有している。
【0035】
また、
図2には一部しか図示されていないが、バイパス通路24の複数に分岐した出口が、3つある肉盛部53のうち、中央の肉盛部53以外に接続されている。尚、
図2には直列4気筒エンジンに対応する形状が表されているが、本装置は直列4気筒エンジンに限定されるものではない。即ち、エンジン形状に関わらず、バイパス通路24の複数に分岐した出口が、全ての肉盛部53に対して1つおきに下側から接続されていれば良い。
【0036】
上述のガスケット42は、
図2に示すように、インテークマニホールド41とシリンダヘッド43との接合部に設けられ、密閉性を保持する。
【0037】
上述のシリンダヘッド43は、シリンダの上に被せる蓋であり、シリンダヘッドの各バルブから出ている吸気の通路である吸気ポート52と、インテークマニホールド41の肉盛部53の位置に応じ且つ隣り合う吸気ポート52同士の間に設けられる窪み部51とを有する。
【0038】
また、バイパス通路24が接続されるインテークマニホールド41の肉盛部53には、肉盛部53の内部に形成され、バイパス通路24から送り込まれてきた凝縮水をシリンダヘッド43の窪み部51へ導く凝縮水用内部通路65と、肉盛部53の窪み部51側の壁面に形成され、窪み部51を経由した凝縮水を吸気ポート52へ導く凝縮水排出用通路66とが設けられている。
【0039】
凝縮水排出通路66は、肉盛部53の窪み部51側の壁面に窪み部51と対向するよう形成され、肉盛部53の両隣の吸気ポート用開口54及び吸気ポート52に連通される凹溝部で構成されている。なお、凝縮水用内部通路65の出口と凝縮水排出用通路66である凹溝部とは交わるよう形成されている。
【0040】
図3は肉盛部53の拡大図であり、図中の一点鎖線矢印はバイパス通路24から送り込まれる凝縮水の流れを、破線矢印は吸気用通路12(
図18参照)からの吸気の流れをそれぞれ示している(他図も同様)。
図3に示すように、バイパス通路24から排出された凝縮水は、凝縮水用内部通路65を通過し、2方向の流れに分岐して凝縮水排出用通路66を通過した後、肉盛部53の両端にある凝縮水排出用通路出口67から出て、吸気用通路12からの吸気と合流し、肉盛部53の両隣の吸気ポート用開口54からシリンダヘッド43の吸気ポート52へ送られる。
【0041】
図3において、一点鎖線矢印が凝縮水用内部通路65から凝縮水排出用通路66に移動する際に外にはみ出しているように見えるが、これは、凝縮水の流れが一度シリンダヘッド43の窪み部51に入ることを表している。
【0042】
図4は
図1のA‐A断面図である。
図4に示すように、本装置では、バイパス通路24を流れる凝縮水が、凝縮水用内部通路65を経由してシリンダヘッド43に設けられた窪み部51に入り、凝縮水排出用通路66を経由して吸気ポート52に流れる。
【0043】
図4では、一点鎖線矢印が2つに分かれているが、これは、エマルジョン組成物70は水よりも粘度が高いため、流路が狭まる窪み部51から凝縮水排出用通路66へ流入しにくく、その結果、エマルジョン組成物70は窪み部51に貯蔵され、エマルジョン組成物70が分離されて水分が主となった凝縮水が凝縮水排出用通路66を経由して吸気ポート52へ排出される状態を表している。これによりバイパス通路24の閉塞が抑制される。
【0044】
図5は
図2のB‐B矢視図である。
図5に示すように、凝縮水用内部通路65を通過し、窪み部51を経てエマルジョン組成物70が分離されて水分が主となった凝縮水は、凝縮水排出用通路66を経由することで2方向の流れに分岐し、両隣の吸気ポート用開口54から等量にシリンダヘッド43の吸気ポート52へ送られる。
【0045】
以上、本発明の実施例1に係るエンジンの凝縮水排出構造によれば、凝縮水を窪み部51に導入した後、凝縮水排出用通路66から吸気ポート52へ凝縮水が排出されるので、窪み部51内でオイル成分との混合物であるエマルジョン組成物70を凝縮水から分離することができる。これにより、凝縮水の排出機能を確保することができる。
【実施例2】
【0046】
本発明の実施例2に係るエンジンの凝縮水排出構造は、実施例1に係るエンジンの凝縮水排出構造のうち、ガスケット42の形状を変更したものである。以下、本装置について
図6〜9を用いて説明する。
【0047】
図6は
図1のA‐A断面図に相当する図であり、
図7は
図2のB‐B矢視図に相当する図である。
図6に示すように、本装置は、実施例1に係るエンジンの凝縮水排出構造と同様、バイパス通路24、インテークマニホールド41、ガスケット42、シリンダヘッド43及び凝縮水貯蔵タンク23(
図18参照)を備え、凝縮水の流れも、
図7にも表されるように略同様である。バイパス通路24、インテークマニホールド41、シリンダヘッド43及び凝縮水貯蔵タンク23については説明を省略する。
【0048】
上述のガスケット42については、基本的な構造は実施例1に係るエンジンの凝縮水排出構造と同様であるが、
図6にも表されるように、本装置ではさらにオイル成分を分離するフィルタとなる不織布80を設ける。
【0049】
図8は
図2のC‐C矢視図に相当する図であり、
図9は
図8のD‐D断面図である。
図8,9を見ればわかるように、不織布80は、上端と下端がガスケット42に固定され、窪み部51の口全体を覆い、凝縮水用内部通路65を塞がないために凝縮水用内部通路65の出口に対応して形成された内部通路用穴81と、凝縮水排出用通路66全体を塞ぐための排出通路用突部82とが設けられているものである。但し、ガスケット42と不織布80とは一体でも別体でも良い。
【0050】
本装置では、ガスケット42に不織布80を設置することにより、実施例1に係るエンジンの凝縮水排出構造と比べて、窪み部51において凝縮水からエマルジョン組成物70を分離する働きがさらに向上し、バイパス通路24の閉塞をより抑制することができる。
【0051】
また、本装置では不織布を例に挙げて説明したが、実際は不織布に限定されるものではなく、フィルタの役割を果たすものであれば良い。以下の実施例においても同様である。
【実施例3】
【0052】
本発明の実施例3に係るエンジンの凝縮水排出構造は、実施例2に係るエンジンの凝縮水排出構造のうち、インテークマニホールド41における凝縮水用内部通路65の出口及び凝縮水排出用通路66を成す凹溝部の位置を変更したものである。以下、本装置について
図10〜13を用いて説明する。
【0053】
図10は
図1のA‐A断面図に相当する図である。
図10に示すように、本装置は、実施例2に係るエンジンの凝縮水排出構造と同様、バイパス通路24、インテークマニホールド41、ガスケット42、シリンダヘッド43及び凝縮水貯蔵タンク23(
図18参照)を備え、ガスケット42に不織布80が設けられる点も同様である。
【0054】
上述のインテークマニホールド41は、基本的な構造は実施例1,2に係るエンジンの凝縮水排出構造と同様であるが、本装置では、凝縮水用内部通路65の出口及び凝縮水排出用通路66が、窪み部51の最上部に位置するものとする。
図11は
図2のB‐B矢視図に相当する図であるが、これを見ても、凝縮水用内部通路65の出口及び凝縮水排出用通路66の位置が変更されていることがわかる。
【0055】
図12は
図2のC‐C矢視図に相当する図であり、
図13は
図12のD‐D矢視図である。
図12,13に示すように、上述の不織布80の、内部通路用穴81及び排出通路用突部82の位置は、凝縮水用内部通路65及び凝縮水排出用通路66の位置に合わせて変更する。これにより、窪み部51に溜まったエマルジョン組成物70が凝縮水排出用通路66周辺の不織布80に付着することを抑制することができる。
【0056】
本装置では、凝縮水用内部通路65及び凝縮水排出用通路66の位置を変更することにより、凝縮水に混合するエマルジョン組成物70が窪み部51の下部に沈殿しやすく、エマルジョン組成物70を窪み部51でより確実に分離することができる。また、窪み部51に溜まったエマルジョン組成物70が凝縮水排出用通路66周辺の不織布80に付着することを抑制することができ、実施例2に係るエンジンの凝縮水排出構造よりも、バイパス通路24の圧損上昇を抑制することができる。
【実施例4】
【0057】
本発明の実施例4に係るエンジンの凝縮水排出構造は、実施例3同様、実施例2に係るエンジンの凝縮水排出構造のうち、インテークマニホールド41における凝縮水用内部通路65の出口及び凝縮水排出用通路66を成す凹溝部の位置を変更したものである。以下、本装置について、
図14〜17を用いて説明する。
【0058】
図14は
図1のA‐A断面図に相当する図である。
図14に示すように、本装置は、実施例3に係るエンジンの凝縮水排出構造と同様、バイパス通路24、インテークマニホールド41、ガスケット42、シリンダヘッド43及び凝縮水貯蔵タンク23(
図18参照)を備え、ガスケット42に不織布80が設けられる点も同様である。
【0059】
上述のインテークマニホールド41は、基本的な構造は実施例1〜3に係るエンジンの凝縮水排出構造と同様であるが、本装置では、凝縮水排出用通路66が窪み部51の最上部に位置し、凝縮水用内部通路65の出口が凝縮水排出用通路66よりも下方に位置するものとする。
図15は
図2のB‐B矢視図に相当する図であるが、これを見ても、凝縮水用内部通路65の出口及び凝縮水排出用通路66の位置が変更されていることがわかる。
【0060】
図16は
図2のC‐C矢視図に相当する図であり、
図17は
図16のD‐D矢視図である。
図16,17に示すように、上述の不織布80の内部通路用穴81の位置は、凝縮水用内部通路65の位置に合わせて変更する。さらに、凝縮水用内部通路65の出口の位置と凝縮水排出用通路66の位置とが異なるため、実施例2,3に係るエンジンの凝縮水排出構造とは違い、不織布80の穴が窪み部51と凝縮水排出用通路66との間に無い。よって、実施例2,3に係るエンジンの凝縮水排出構造における排出通路用突部82は不要となる。これにより、窪み部51に溜まったエマルジョン組成物70が凝縮水排出用通路66の周辺の不織布80に付着することを抑制しつつ、凝縮水が凝縮水用内部通路65から窪み部51を経由して凝縮水排出用通路66に送り込まれるまでの流れが円滑になる。
【0061】
本装置では、凝縮水用内部通路65の位置を工夫することにより、窪み部51に溜まったエマルジョン組成物70が凝縮水排出用通路66の周辺の不織布80に付着することを抑制し、バイパス通路24の圧損上昇を抑制することができ、また、凝縮水が窪み部51の下方から上方側に向かって流れるので、凝縮水用内部通路65から窪み部51を経由して凝縮水排出用通路66に送り込まれるまでの流れが円滑になる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、エンジンの凝縮水排出構造として好適である。
【符号の説明】
【0063】
12 吸気用通路
13 排気用通路
14 触媒(フィルタ)
15 エンジン
21 ターボチャージャ
22 インタークーラ
23 凝縮水貯蔵タンク
24 バイパス通路
27 高圧EGR
28 高圧スロットルバルブ
29 高圧EGRバルブ
30 低圧EGR
31 低圧スロットルバルブ
32 低圧EGRバルブ
33 EGRクーラ
34 ブリーザホース
41 インテークマニホールド
42 ガスケット
43 シリンダヘッド
51 窪み部
52 吸気ポート
53 肉盛部
54 吸気ポート用開口
65 凝縮水用内部通路
66 凝縮水排出用通路(凹溝部)
67 凝縮水排出用通路出口
70 エマルジョン組成物
80 不織布(フィルタ)
81 内部通路用穴
82 排出通路用突部