(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数台のターボ冷凍機と、各ターボ冷凍機に対応する複数台の冷却塔とを備え、対応するターボ冷凍機と冷却塔との間で冷却水を循環させるとともに、冷房負荷に応じて前記ターボ冷凍機の運転台数を可変させる冷凍システムにおいて、
一部の前記ターボ冷凍機の停止時に、前記一部のターボ冷凍機に対応する冷却塔を、他のターボ冷凍機に対応する冷却塔に、直列に接続する直列接続経路を備え、
前記直列接続経路の各冷却塔で前記冷却水の温度を低め、前記他のターボ冷凍機に供給する運転を行うことを特徴とする冷凍システム。
前記一部のターボ冷凍機の停止時でも、前記一部のターボ冷凍機に対応する冷却塔を接続しない方が、前記直列接続経路によって前記冷却塔を接続した場合よりも前記他のターボ冷凍機のCOPが高くなるときは、前記冷却塔を接続せずに前記他のターボ冷凍機を運転することを特徴とする請求項1に記載の冷凍システム。
前記一部のターボ冷凍機の停止時でも、前記冷却水の温度に基づいて前記一部のターボ冷凍機に対応する冷却塔を接続しない方が、前記冷却塔を接続した場合よりも前記他のターボ冷凍機のCOPが高くなると判定するときは、前記冷却塔を接続せずに前記他のターボ冷凍機を運転することを特徴とする請求項2に記載の冷凍システム。
複数台のターボ冷凍機と、各ターボ冷凍機に対応する複数台の冷却塔とを備え、対応するターボ冷凍機と冷却塔との間で冷却水を循環させるとともに、冷房負荷に応じて前記ターボ冷凍機の運転台数を可変させる冷凍システムのコントローラにおいて、
前記冷凍システムが一部の前記ターボ冷凍機の停止時に、前記一部のターボ冷凍機に対応する冷却塔を、他のターボ冷凍機に対応する冷却塔に直列に接続する直列接続経路を備え、
前記直列接続経路の各冷却塔で前記冷却水の温度を低め、前記他のターボ冷凍機に供給する運転を行うことを特徴とするコントローラ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る冷凍システム1の構成を示した図である。
この冷凍システム1は、空調機11と、水冷式の熱源機である複数台(本構成では2台)のインバータターボ冷凍機12A,12Bと、空調機11とインバータターボ冷凍機12A,12Bとの間で冷水を循環する循環回路13と、冷凍システム1の各部の運転を制御するコントローラ21とを備えている。
空調機11は、冷水と冷房負荷である被空気調和室の空気とを熱交換することによって冷房を行う装置である。
【0022】
インバータターボ冷凍機12A,12Bは、インバータ式のターボ冷凍機、インバータ制御ターボ冷凍機、又はインバータ対応ターボ冷凍機とも称する冷凍機であり、循環回路13に並列に設けられ、コントローラ21の制御の下、冷房負荷に応じて冷水を冷却する。循環回路13には、インバータターボ冷凍機12A,12B毎に1次ポンプ14A,14Bが設けられるとともに、2次ポンプ15が設けられ、これらポンプ14A,14B,15の運転により冷水が循環する。なお、
図1中、符号16は往一次ヘッダ、符号17は往二次ヘッダ、符号18は還ヘッダであり、符号19はバイパス管であり,バイパス管19は、往一次ヘッダ16と還ヘッダ18を連結するように設けられる。
【0023】
コントローラ21は、制御プログラムなどの各種データを記憶するメモリや、制御プログラムを読み出して実行するCPUなどを備えたコンピュータ構成を具備し、制御プログラムに従って各種処理を行う。例えば、コントローラ21は、冷房負荷に応じて、インバータターボ冷凍機12A,12Bの運転台数や運転能力を制御する。また、コントローラ21は、インバータターボ冷凍機12A,12Bの運転状況などに応じて各ポンプ14A,14B,15の運転制御および冷却塔31A,31Bの単独運転、直列運転を切り替えるバルブ(制御弁41C)の制御も行う。
【0024】
図1に示すように、冷凍システム1には、各インバータターボ冷凍機12A,12Bに対応する複数台(本構成では2台)の冷却塔31A,31Bと、対応するインバータターボ冷凍機12A,12Bと冷却塔31A,31Bとの間で独立して冷却水を循環させる複数(本構成では2つ)の冷却水回路32A,32Bとが設けられる。
冷却塔31A,31Bは、充填材40(後述する
図9)を内部に備える冷却塔本体35A,35Bと、冷却塔本体35A,35Bの上部に設けられ、充填材40中に外気を通風させる送風機36A,36Bとを備え、冷却塔本体35A,35Bの上部より水を落とし、充填材40を介して大気と接触させて蒸発させることで水を冷却する開放型冷却塔に形成されている。なお、
図1中、符号37A,37Bは、冷却水回路32A,32Bにて加温された冷却水を充填材40に供給する上部水槽である。
【0025】
同
図1に示すように、1台のインバータターボ冷凍機12Aには、1台の冷却塔31Aが配管接続され、インバータターボ冷凍機12Aと冷却塔31Aとの間を冷却水が循環するように、冷却水回路32Aが形成される。また、他の1台のインバータターボ冷凍機12Bには、他の1台の冷却塔31Bが配管接続され、インバータターボ冷凍機12Bと冷却塔31Bとの間を冷却水が循環するように、冷却水回路32Bが形成される。
インバータターボ冷凍機12A,12Bと冷却塔31A,31Bとの間には、冷却水ポンプ33A,33Bが設けられ、これら冷却水ポンプ33A,33Bの運転により冷却水回路32A,32Bを冷却水がそれぞれ循環する。
【0026】
コントローラ21は、夏季などの冷房負荷が相対的に大きな時期には、インバータターボ冷凍機12A,12Bを全台運転する。このとき、冷却水ポンプ33A,33Bも運転し、各冷却水回路32A,32B毎に独立して冷却水を循環させる。一方、中間期、及び冬期などの冷房負荷が相対的に小さい時期には、コントローラ21は、インバータターボ冷凍機12A,12Bの全台運転を行わず、一方のインバータターボ冷凍機12Aの運転だけ、或いは、全てのインバータターボ冷凍機12A,12Bを運転せずに、いずれかの冷却塔31A,31Bのフリークーリングを行い、不図示の熱交換器を通じて冷水供給を行う。
【0027】
以下の説明において、インバータターボ冷凍機12A,12B、冷却塔31A,31B、冷却水回路32A,32B、冷却塔本体35A,35B、送風機36A,36B、及び上部水槽37A,37Bを特に区別して説明する必要がない場合は、インバータターボ冷凍機12、冷却塔31、冷却水回路32、冷却塔本体35、送風機36、及び上部水槽37と表記する。
また、ある冷却水回路32に設けられているインバータターボ冷凍機12を運転し、その冷却水回路32内の冷却水が、当該回路32に設けられている冷却塔31だけを循環している運転状態を「冷却塔31の単独運転」と言う。
【0028】
従来の冷凍システムでは、インバータターボ冷凍機を全台運転しない場合、運転しているインバータターボ冷凍機に対応する冷却塔の単独運転が行われ、運転していないインバータターボ冷凍機に対応する冷却塔は運転されない。
これに対し、本実施形態の冷凍システム1では、冷却塔31Aと冷却塔31Bとを直列に連結する直列接続経路41(直列接続用第1配管41A、直列接続用第2配管41B、制御弁41C)と、一方の冷却塔31Bから他方の冷却塔31Aへの移送ポンプ42とを備えている。そして、一方のインバータターボ冷凍機12Aの運転が行われ、他方のインバータターボ冷凍機12Bが運転停止される場合に、制御弁41Cを閉から開へと切り換え、移送ポンプ42を運転することにより、運転される一台のインバータターボ冷凍機12Aに対して複数の冷却塔31A,31Bを直列に接続し、冷却水ポンプ33Aから吐出された冷却水を冷凍機12B、冷却塔31B、冷却塔31Aの順で流す。
このように冷却塔31A,31Bを直列接続した運転状態を、「冷却塔31の直列運転」と言う。この場合、冷却水を冷却塔31A,31Bでそれぞれ冷却するため、実質的に、冷却塔31の冷却面積、及び冷却風量が大きくなり、冷却水温度が湿球温度近くまで下がることを期待できる。
【0029】
冷却水温度が下がることにより、インバータターボ冷凍機12AのCOP(Coefficient Of Performance、成績係数、効率とも言う)が向上し、インバータターボ冷凍機12Aのエネルギー消費量を削減することが可能になる。特に、インバータターボ冷凍機は、インバータターボ冷凍機以外の冷凍機(例えば、吸収式冷凍機)と比べて、冷却水の下限値温度が低く、また、冷却水温度の低下によるCOPの向上率も大きいことから、使用エネルギーである電力の削減量が大きくなり、省エネルギー化に有利である。例えば、吸収式冷凍機は、約20℃よりも低い温度範囲ではCOPがほぼ変わらない性能特性であり、インバータターボ冷凍機と比べて冷却水温度の低下によるCOPの向上率が小さい、と予想される。
移送ポンプ42は、冷却塔31A,31Bの直列運転を行うための補助動力であり、冷却水ポンプ33A,33Bよりも小さい能力のポンプが使用される。
【0030】
図2は、インバータターボ冷凍機12Aの性能特性の例を示した図である。この図に示すように、インバータターボ冷凍機12Aは、冷却水温度(冷却水入口温度に相当)が低いほど、高いCOPが期待でき、例えば冷却水温度が20℃程度まで下がると、値10以上のCOPが期待でき、12℃程度まで下がると、値20以上のCOPが期待できる。
また、COPはインバータターボ冷凍機12Aの負荷率によっても変動する。このインバータターボ冷凍機12Aは6.0GJ/hの冷凍能力を有しており、冷却水温度が12℃の場合、負荷率30%(冷水熱量1.8GJ/h)近傍にピークを有する性能特性となり、冷却水温度が20℃の場合、負荷率50%(冷水熱量3.0GJ/h)近傍にピークを有する性能特性となる。
【0031】
つまり、例示したインバータターボ冷凍機12Aは、冷却水が低くなるほど、COPのピークは、負荷率が低い側に変動する。なお、このインバータターボ冷凍機12Aには公知のインバータターボ冷凍機を用いることができ、性能特性が上記と異なっても良い。また、本実施形態では、複数のインバータターボ冷凍機12A、12Bが同じ仕様であり、複数の冷却塔31A,31Bについても同じ仕様である。但し、これに限らず、仕様を異ならせても良い。
【0032】
冷却水温度は、冷却塔31の性能(充填材40の特性、冷却水量、水量)と外気エンタルピ、及び冷却熱量から算出可能である。一方、冷却熱量からインバータターボ冷凍機12の負荷率も算出可能であることから、インバータターボ冷凍機12の部分負荷特性と冷却水温度から、最もインバータターボ冷凍機12のCOPが高くなる運転状態を計算によって求めることができる。
そこで、コントローラ21は、インバータターボ冷凍機12の性能特性(部分負荷特性と冷却水温度との関係)を示すデータとして、冷却水温度・負荷率・冷水製造温度・COPの対応関係を記述したデータD1(後述する
図3参照)をメモリに予め記憶し、所定の制御プログラムを実行することにより、上記「冷却塔31の直列運転」を制御する直列運転制御を行う。
【0033】
図3は、冷却塔31の直列運転制御のフローチャートを示している。
コントローラ21は、外気温度、及び湿度のデータを不図示のセンサを介して取得するとともに(ステップS11)、冷房負荷に対応する冷水需要データを取得する(ステップS12)。また、コントローラ21は、外気温度、及び湿度のデータと冷水需要データとから、「冷却塔31Aの単独運転」時の冷却水温度と、「冷却塔31A,31Bの直列運転」時の冷却水温度とを計算により求める(ステップS13)。なお、ステップS13で求める冷却水温度は、インバータターボ冷凍機12Aに供給される冷却水温度、つまり、冷却塔31Aの冷却水出口温度TAOに相当する温度である。
【0034】
コントローラ21は、冷水需要データに基づいて、インバータターボ冷凍機12の必要運転台数を算出し(ステップS14)、この算出結果に基づいて、「冷却塔31A,31Bの直列運転」が可能か否か判定し(ステップS15)、不可の場合に「冷却塔31Aの単独運転」を行う(ステップS16)。例えば、夏季に相当する冷房負荷(冷水需要)が高い時期の場合、インバータターボ冷凍機12A,12Bを全台運転するので、ステップS15では「冷却塔31の直列運転」が不可と判定される。
また、冬期に相当する冷房負荷(冷水需要)が極めて小さい時期の場合、「冷却塔31の直列運転」を行うと冷却水温度が過度に低くなってしまうため、ステップS15では「冷却塔31A,31Bの直列運転」が不可と判定される。
すなわち、中間期に相当する冷房負荷の場合に、「冷却塔31A,31Bの直列運転」が可能と判定される。この場合、ステップS17の処理に移行し、コントローラ21は、運転対象のインバータターボ冷凍機12Aの負荷率を算出する(ステップS17)。
【0035】
次いで、コントローラ21は、インバータターボ冷凍機12Aの性能特性から予め得た冷却水温度・負荷率・冷水製造温度・COPの対応関係を記述したデータD1を参照し、ステップS13,S17で求めた冷却水温度、及び負荷率に基づいて、「冷却塔31Aの単独運転」時のCOPと、「冷却塔31A,31Bの直列運転」時のCOPとを求める(ステップS18)。
ここで、上記データD1は、冷水製造温度別に冷却水温度・負荷率・COPの対応関係を記述した2次元のテーブルデータでも良いし、冷却水温度・負荷率・冷水製造温度・COPの対応関係を記述した4次元のテーブルデータも良い。また、テーブルデータに限らず、冷水製造温度、冷却水温度、及び負荷率から、COPを算出可能な予め定めた算出式のデータでも良い。また、上記のステップS13,S14などの各種算出処理は公知の処理を広く適用可能である。
【0036】
続いて、コントローラ21は、ステップS18で得たCOPの判定を行う(ステップS19)。この場合、コントローラ21は、両COPの大小を判定し、「冷却塔31Aの単独運転」時のCOPが、「冷却塔31A,31Bの直列運転」時のCOPよりも大の場合には、「冷却塔31Aの単独運転」を実施させる(ステップS20)。一方、小の場合、コントローラ21は、「冷却塔31A,31Bの直列運転」を実施させる(ステップS21)。つまりコントローラ21は、単独運転、及び直列運転のうち、COPが高い方を選択して運転を行う。
【0037】
なお、
図3中、ステップS22の処理は、冷却塔31が3台以上存在する場合に実行される処理である。このステップS22では、コントローラ21は、冷却塔31の直列運転の方が単独運転の場合よりもCOPが高くなる場合、直列運転する冷却塔31の運転台数が何台の場合に、最もCOPが高くなるか否かを求める処理を行う。そして、コントローラ21は、最もCOPが高くなる運転台数で冷却塔31を直列運転する。これによって、運転対象のインバータターボ冷凍機12のCOPを効率良く高めることができる。
【0038】
また、
図3に示す制御フローは、所定の割り込み周期で繰り返し実施される。このため、冷却塔31を直列運転した場合でも、その後に、ステップS19の判定で、「冷却塔31Aの単独運転」時のCOPが、「冷却塔31A,31Bの直列運転」時のCOPよりも大と判定されると、冷却塔31の単独運転に切り替えられる。これによって、冷房負荷に応じてインバータターボ冷凍機12の運転台数が制御されるとともに、COPが高くなるように冷却塔31の単独運転/直列運転が切り換え制御される。この結果、冷却塔の単独運転しか行わない従来構成と比べて、更に高い効率で運用可能になる。
【0039】
続いて、直列運転による冷却水温度を評価するための冷却塔31のシミュレーションの結果を説明する。
図4は冷却塔31の仕様を示し、
図5はシミュレーションの結果を示している。
図5中、符号TBIは、冷却塔31Bの冷却水入口温度を示し、符号TBOは、冷却塔31Bの冷却水出口温度を示し、符号TAIは、冷却塔31Aの冷却水入口温度を示し、符号TAOは、冷却塔31Aの冷却水出口温度を示している。
シミュレーションの結果、外気湿球温度27℃(外気温度32℃、相対湿度60%)、冷却熱量5GJ/h、初期冷却水温度37℃の条件では、1台運転時(単独運転時)の冷却水出口温度TAOは32℃であるが、直列運転時は32℃の冷却水を更に冷却することから冷却水出口温度TAOは27.3℃と、ほぼ湿球温度にまで下がる、という結果が得られた。
【0040】
直列運転時の実運転時期である中間期に相当する湿球温度18℃、冷却熱量3.3GJ/h、初期冷却水温度24℃の条件では、1台運転時の冷却水出口温度TAOは20.8℃であるが、直列運転時は19.4℃まで下がる、という結果が得られた。
ちなみに、冷却塔31を並列に運転した場合には、冷却水量が半分となるため、充填剤40への冷却水の流下を均一化させるのは困難であり、冷却効率が低下することが懸念される。
【0041】
さらに、冷却水温度の低減効果の検証を、2013年3月13日から2013年10月4日(4936時間/期間)において実施した。検証期間中においては外気比エンタルピが35kJ/kgDA以下の日はフリークーリングを実施しており、冷却塔31の直列運転を実施した日はフリークーリング実施期間以外の冷却塔31Aが一台運転となる4月〜6月を対象とした。実際に直列運転を行った期間は4月8日〜4月19日、4月21日〜4月29日、5月6日〜5月28日の合計764時間である。
【0042】
図6は、直列運転実施期間における冷却塔31Aの冷却水出口温度TAOを外気湿球温度とともに示した図である。また、
図7は、比較対象として直列運転が可能であるが直列運転を実施しなかった時期の冷却水出口温度TAOの時刻別計測値を外気湿球温度とともに示した図である。
直列運転を実施した場合(
図6)、冷却水温度(TAO)がほぼ外気湿球温度まで下がっており、直列運転を行わなかった場合(
図7)と比較しても直列運転による冷却水温度の低減効果が高いことが分かる。
【0043】
図8は、直列運転時の各冷却塔31の入口・出口温度TBI,TBO,TAI,TAOの温度推移を示した図である。なお、
図8は、5月16日18時の外気温度17.8℃、湿度100%、湿球温度17.8℃、冷却熱量3.3GJ/hの条件で実際に計測したものであり、その温度推移を図中「直列運転計測値」で示している。
図8に示すように、23.6℃の冷却水入口温度TBIは、冷却塔31Bにより21.4℃に冷却され、冷却塔31Aにより更に冷却され、冷却水出口温度TAOは20.1℃となっている。また、
図8には、シミュレーションで求めた各冷却塔31の入口・出口温度TBI,TBO,TAI,TAOの温度推移を「直列運転計算値」として併記している。この図に示すように、冷却水温度の推移はほぼシミュレーションと同じ結果が得られた。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によれば、冷凍システム1のコントローラ21は、一部のインバータターボ冷凍機12Bの停止時に、停止しているインバータターボ冷凍機12B(一部の冷凍機)に対応する冷却塔31Bを、運転対象のインバータターボ冷凍機12A(他の冷凍機)に対応する冷却塔31Aに接続して運転するので、運転するインバータターボ冷凍機12Aへの冷却水の温度を下げることができ、インバータターボ冷凍機12AのCOPを高めやすくなる。これにより、インバータターボ冷凍機12Aの消費電力を下げやすくなり、省エネルギー化に有利となる。
しかも、冷却塔31A,31Bを直列に接続するので、並列に接続する場合に生じる可能性がある、各冷却塔31A,31Bへの冷却水供給量のアンバランスを解消でき、冷却塔31A,31Bでの冷却効率の低下を抑えることができる。なお、冷却塔31を並列に接続しても、各冷却塔31での冷却効率の低下への悪影響が小さい場合には、並列に接続しても良い。
【0045】
なお、この冷凍システム1の冷凍機は、インバータターボ冷凍機12に限らず、通常のターボ冷凍機、吸収式冷凍機、スクリュウ式チラー、又は水熱源小型ヒートポンプユニットなどのインバータターボ冷凍機12以外の冷凍機でも良い。インバータターボ冷凍機12以外の冷凍機でも、冷却塔31の直列運転により冷却水温度を低下させることで、COPを向上させ、冷却塔31の単独運転しか行わない構成と比べて省エネルギー化を図ることができる場合があるからである。すなわち、省エネルギー化が可能な範囲で、冷凍システム1の冷凍機には公知の水冷式冷凍機を広く適用可能である。
【0046】
また、本実施形態では、インバータターボ冷凍機12Bの停止時でも、停止しているインバータターボ冷凍機12Bに対応する冷却塔31Bを接続しない方が、その冷却塔31Bを接続した場合よりも運転対象のインバータターボ冷凍機12AのCOPが高くなるときは、冷却塔31Bを接続せずに運転対象のインバータターボ冷凍機12Aを運転するので、冷却塔31Bを接続したにも係わらずCOPが低くなってしまう事態を避けることができ、省エネルギー化により有利となる。
しかも、冷却塔31Bを接続しないで運転したときのインバータターボ冷凍機12AのCOPと、冷却塔31Bを接続して運転した場合のインバータターボ冷凍機12AのCOPとを求め、COPが高い方で運転するので、確実にCOPが高い運転を選択できる。
【0047】
また、本実施形態では、冷凍システム1の冷凍機にインバータターボ冷凍機12Aを用いるため、吸収式冷凍機などのインバータターボ冷凍機以外の冷凍機を用いる場合と比べて、冷却水の下限値温度が低く、また、冷却水温度の低下によるCOPの向上率が大きくなり、その結果、省エネルギー化により有利である。
【0048】
これらにより、本実施形態では、インバータターボ冷凍機12などの冷凍機に、より高効率な機器や省エネの機器を適用することにより、冷却塔31を接続して冷凍機のCOPを高めた運転機会を増やし、冷凍システム1全体のより合理的な運用が可能になるとともに、効率良く省エネルギー化を図ることができる。
【0049】
さらに、本実施形態の冷凍システム1において、冷却塔31A,31Bを接続した場合に、互いに接続された冷却塔31A,31Bの冷却能力を、冷房負荷に合わせた冷却能力に調整して運転するようにしても良い。このようにすれば、冷房負荷と冷却塔31の冷却能力とをバランスさせることができる。冷却塔31の能力を調整する方法には、送風機36の回転数を調整して風量を増減させるなどの公知の方法を適用すれば良い。この調整により、冷却塔31A,31Bの冷却能力を十分に確保しながら、送風機36の回転数を下げて電力消費を低減することができる。
なお、インバータターボ冷凍機12などの冷凍機はモータなどからの発熱があるため、この発熱を考慮すれば、冷却塔31の冷却能力を、冷房負荷と冷凍機の発熱量との合計値に対応する能力に調整することが好ましい。
【0050】
また、本実施形態の冷凍システム1において、インバータターボ冷凍機12Bの停止時でも、冷却水の温度(例えば、インバータターボ冷凍機12Bの冷却水入口温度)に基づいて、インバータターボ冷凍機12Bに対応する冷却塔31Bを接続しない方が、冷却塔31Bを接続した場合よりも他のインバータターボ冷凍機12AのCOPが高くなると判定するときは、冷却塔31Bを接続せずに他のインバータターボ冷凍機12Aを運転するようにしても良い。
例えば、冷却塔31Bを接続しない方が冷却塔31Bを接続した場合よりも他のインバータターボ冷凍機12AのCOPが高くなるときの冷却水の温度範囲が所定の低い温度範囲に存在した場合に、その温度範囲の上限値を所定値として記憶し、冷却水温度が所定値以下のときに、冷却塔31Bを接続せずに他のインバータターボ冷凍機12Aを運転する。この構成によれば、冷却水温度に基づいてCOPが高い運転を選択することができ、また、上記所定値をインバータターボ冷凍機12Aの性能特性に応じて調整することで、様々な性能特性への対応自由度を確保できる。
【0051】
なお、本実施形態では、冷却塔31Bを接続しない場合のインバータターボ冷凍機12AのCOPと、冷却塔31Bを接続した場合のインバータターボ冷凍機12AのCOPとを直接求め、COPが高い方で運転する場合を説明したが、COPを直接求める方法に限定されず、要は、COPが高い運転を判別する判別処理を広く適用可能である。
例えば、冷却塔31の単独運転でも外気条件(外気温度、湿度)から、冷房負荷(冷水需要)に対応する低い冷却水温度が得られることが明らかな場合には、複数台のインバータターボ冷凍機12を運転して冷房負荷の分担を図ることによって負荷率を下げCOPの高い負荷率で運用した方が電力量を小さくすることを想定できる。このため、外気条件が、冷却塔31A,31Bの単独運転でも、インバータターボ冷凍機12A,12BのCOPが高い温度範囲(20℃以下、12℃以下など)の場合には、冷却塔31A,31B同士を接続せず、複数台のインバータターボ冷凍機12A,12BをCOPの高い負荷率でそれぞれ運転するようにし、上記温度範囲外の場合に冷却塔31A,31B同士を接続して直列運転するようにしても良い。
【0052】
次に、冷却塔31の構造を説明する。
この種の冷却塔31においては、運転中に自然蒸発とキャリーオーバによる水の損失が常に発生している。ここで、自然蒸発した水分は、飽和水蒸気に近い水蒸気となり、送風機26の通風によって放出される。また、キャリーオーバは、送風機36の通風によって運び去られる微少水滴のことであり、飛散水とも称する。
大気中の空気条件や冷却水温度に拘わらず、空気中に放出される蒸発量、及びキャリーオーバ量は具体的に把握されていないのが現状である。ある技術資料によれば、その数値は、循環水量の0.05%と示されたものがある。この循環水量の損失を低減できれば、冷却塔への補給水の低減を図ることができ、冷却水の濃縮や汚染による導電率の上昇を防止することなどが可能になる。
【0053】
循環水の損失を低減することを目的として、特開2003−172586号公報には、冷却塔の排気口から排気される空気は、筒状のミスト捕集ダクトの内面に向けて変流板に案内されて吹き付けられ、捕集ダクトの内面に結露を発生させ、結露水を回収する構成が開示されている。しかしながら、この構成は機外静圧が高くなり、風量が減少し冷却能力が低下する、といった制約が生じる。
そこで、本実施形態では、送風機36に対し側方に開放するスペースを空けて配置することで、機外静圧の上昇を抑えつつ循環水の損失を低減可能な冷却塔31の水回収装置51を設けるようにしている。
【0054】
図9は、冷却塔31を側方から見た図である。
冷却塔本体35は、内部が空洞の矩形箱形状に形成され、内部に上部水槽37(
図1)から流下した冷却水を外気と直接接触させることにより冷却する充填材40を備え、上部に上方に向けて開口する排気口53を備えている。
排気口53内には、送風機36が配置されており、この送風機36の駆動により、冷却塔本体35の側面に設けられた吸気口54から外気(
図9中、符号GKを付して示す)が導入され、内部に導入された外気GKが上方に向けて排気される。この排気された外気GKには、自然蒸発による水蒸気W1(
図9に黒丸で示す)とキャリーオーバによる水滴W3(
図9に、水蒸気W1よりも大きい黒丸で示す)とからなる水分が含まれている。
【0055】
この冷却塔本体35には、上記水回収装置51として、送風機36の上側に設けられた遮蔽部材55(アクティブスクリーン)と、排気口53に対して側方に設けられた補足部材60(ミストキャッチャー)とを備えている。
【0056】
(遮蔽部材55について)
遮蔽部材55は、
図9に示すように、送風機36との間に鉛直方向の隙間h1を空けて配置されることで、送風機36に対し側方に開放するスペースSPを空けて配置される。
この遮蔽部材55は、送風機36の上方を、隙間h1を空けて覆う板状部材で形成される。このため、排気口53から吹き上げられる水分中の水蒸気W1が遮蔽部材55に付着する。遮蔽部材55は外気で冷却されるため、遮蔽部材55に付着した水蒸気W1は結露し、水分同士が集合してある程度大きな塊の水滴W2(
図9に楕円の黒丸で示す)になると、自重により遮蔽部材55から落下する。この落下した水滴W2を冷却塔31内に戻すことで、冷却水を回収することができる。
【0057】
より具体的に説明すると、この遮蔽部材55は、送風機36の排気口53の上方領域AR1をその周囲領域AR2を含めて水平に配置される平板部55Aと、平板部55Aの外周縁から下方に突出するエッジ部55Bとを一体に備えており、ステンレスなどの金属製のパンチングメタルで形成される。
この構成によれば、遮蔽部材55が送風機36の上方領域AR1をその周囲領域AR2を含めて覆うので、送風機36の排気によって上方に吹き上げられた水蒸気W1を可及的に遮蔽部材55に付着させることができ、水滴化し易くなる。また、平板部55Aに付着した水分は外気GKの側方への流れによってエッジ部55Bへ向かって流れるので、エッジ部55Bで効率良く集合させ、エッジ部55Bから水滴W2を集中的に落下させることができる。
【0058】
エッジ部55Bの下方には、冷却水回路32A,32Bにて加温された冷却水が供給される上部水槽37が設けられている。このため、エッジ部55Bから落下した水滴W2は、上部水槽37を経由して充填材40に供給される。これにより、自然蒸発による水蒸気を効率良く回収することができる。また、上部水槽37を利用するので、遮蔽部材55専用の水分回収部を設けずに、冷却水を回収でき、部品点数の増大を抑えることもできる。
なお、キャリーオーバによる水滴W3も遮蔽部材55に付着した場合には、遮蔽部材55から落下することで回収可能である。
【0059】
遮蔽部材55と送風機36との間の隙間h1により、送風機36からの外気GKは最も吐出抵抗が低い側方(スペースSP)に向かって流れ、
図9に示すように、送風機36からの外気GKが冷却塔本体35の上方から左右に向けて円滑に流れる。これにより、送風機36の吐出抵抗となる機外静圧の上昇を抑制でき、冷却能力を下げずに所望の風量を確保できる。
【0060】
また、遮蔽部材55をパンチングメタルで形成したため、遮蔽部材55によって外気GKの干渉現象が発生して、冷却塔31の側面に設けられた吸気口54に気流が回り込み、いわゆるショートカットが発生してしまうことを抑制することができる。
なお、遮蔽部材55には、パンチングメタルに限らず、エキスパンドメタルなどの多孔を有する他の素材を適用しても良いし、また、気流の回り込みなどが問題とならない場合は孔無しの素材を適用しても良い。また、材質も金属材に限定されず、耐候性を有する樹脂などを適用しても良い。
【0061】
(遮蔽部材55の設置高さについて)
遮蔽部材55の設置高さ(隙間h1に相当)の候補として、雨水と、送風機36によって上方に吹き上げられる水蒸気W1などの水分(以下、水分W1と表記する)とが運動エネルギーで相殺される位置が好ましい。
図10に示すように、雨水にはMr・gの力が作用し、水分W1にはMw・αの力が作用する。ここで、値Mrは雨水の質量、値gは重力加速度、値Mwは水分W1の質量、値αは水分W1の推力加速度である。
遮蔽部材55の位置が、雨水と水分W1の圧力が均衡であると仮定し、重力加速度gと推力加速度αとが等しくなる位置を検討する。吐出風量を値uを二乗した値が推力加速度αに比例すると考え、g=αの式に、α=u2を代入することで、u=g0.5という条件が得られる。
gに9.8[m/sec2]を代入することで、u=3.13[m/sec2]が得られる。すなわち、排気口53からu=3.13[m/sec2]の近辺になるように設置高さ(隙間h1に相当)を設定することで、遮蔽部材55に作用する雨水、及び水分W1の影響を相殺できる。
【0062】
なお、遮蔽部材55の設置高さは、上記の高さに限定する必要はない。また、遮蔽部材55の設置高さを固定する構成に限らず、手動、若しくは自動で遮蔽部材55の高さを変更する高さ変更機構を設けるようにしても良い。
高さ変更機構を設けた構造にすれば、例えば、冷却水の回収率を向上させたい場合に、遮蔽部材55を送風機36に近づけた高さに調整し、機外静圧を下げて風量を増大させたい場合に、遮蔽部材55を送風機36から離れた高さに調整することができる。また、例えば、降雨時に、上述したu=3.13[m/sec2]の近辺になるように設置高さを調整する、といったことも可能である。
さらに、冷却塔31周囲の風速が予め定めた強風範囲のときは降雪時には、遮蔽部材55の高さを低くする、といったように、気候条件に応じた調整も可能である。
この高さ変更機構には、板材の高さを手動、若しくは自動で変更可能にする公知の機構を適用すれば良い。
【0063】
このように、送風機36の上側を覆う遮蔽部材55を設けたため、送風機36の排気を側方に抜くスペースSPを空けつつ、上方に吹き上げられる水分W1を回収することができる。従って、従来の送風機の排出側を塞ぐミスト捕集ダクトを用いた構成と比較して、機外静圧の上昇を抑え、排気抵抗を低減し、十分な風量を確保することができる。このようにして、機外静圧の上昇を抑え、且つ、循環水の損失を低減することができる。この結果、補給水の低減を図ることができ、節水や水資源の確保に寄与し、省エネルギー化に有利となる。
【0064】
また、遮蔽部材55を、パンチングメタルなどを用いて多孔を有する構造にすれば、送風機36の排気の干渉を発生させて冷却塔31の側面に気流が回り込むことを抑制することができる。
また、遮蔽部材55の高さ変更機構を設けるようにすれば、遮蔽部材55と送風機36との間の隙間h1を調整可能にでき、これによって、遮蔽部材55による回収率や機外静圧(風量)などを容易に調整することが可能になる。
【0065】
(補足部材60について)
補足部材60は、冷却塔本体35の長手方向(
図9における紙面左右方向)の両端に各々設置されることで、送風機36に対し側方に開放するスペースSPを空けて配置される。
この補足部材60は、排気された外気GKによって側方に運ばれた水分を補足する部材であり、各補足部材60は同一構造に形成されている。
【0066】
補足部材60は、送風機36の側方に間隔を空けて配置される補足本体部61と、補足本体部61の下部に連なり、補足本体部61内の水を冷却塔31内に戻す水戻し部62とを備えている。
補足本体部61は、送風機36から側方に離れる側に向かって斜め上方に延びる傾斜板部61Aと、傾斜板部61Aと一体となって上方に開口する箱体を形成する上方開口箱部61Bとを備えている。上方開口箱部61Bは、冷却塔本体35の長手方向両端に位置する上側角部に不図示の締結部材を用いて固定され、冷却塔本体35の短手方向(
図9における紙面奥行方向)に渡って連続する。なお、補足本体部61は、金属製の板材で形成されている。
【0067】
本実施形態では、冷却塔本体35の上面に、作業員などが把持する金属製の手摺り64が設けられ、この手摺り64と補足本体部61との間を架橋する架橋部材65が設けられている。この架橋部材65は、直角三角形状の金属プレートで形成され、金属プレートの一辺が手摺りに接合され、他の辺(下辺)が補足本体部61の上縁に接合される。この架橋部材65により、手摺り64と補足本体部61との連結強度を向上することができ、補足本体部61の支持強度を高めることができる。
【0068】
傾斜板部61Aは、冷却塔本体35の短手方向(
図9における紙面奥行方向)に渡って延在し、排気口53からの外気GKの流れによって、側方に流れる水分(主にキャリーオーバによる水滴W3であるが、上部水槽37に回収されなかった水分W1、水滴W2を含む)を、この傾斜板部61Aの傾斜に沿って下方へ案内する。この場合、傾斜板部61Aに接触した水分は、集合して大きな水滴となり、傾斜板部61Aの傾斜に沿って下方へ流れる。
この傾斜板部61Aの角度θ1(水平方向からの角度)は、側方に流れる水分を補足し易い角度に設定すれば良く、本実施形態では45°に設定しているが、これに限らない。上記水分のうち、特にキャリーオーバによる水滴W3は、外気GKの流れによって側方に流れるだけでなく、排気口53から離れる程、重力の影響により下方に流れやすくなるため、補足され易い。
【0069】
また、この傾斜板部61Aを含む上方開口箱部61Bは、遮蔽部材55、及び上部水槽37よりも側方外側に配置されている。このため、遮蔽部材55よりも側方外側の水分を回収することができる。これによって、上方開口箱部61Bは、上記遮蔽部材55を用いても回収できなかった水分を積極的に補足することができる。
なお、上方開口箱部61Bの開口位置(開口幅d1など)は、水分W3などの水分の実際の流れに合わせて、或いは、設定した目標回収率などに応じて適宜に選定すれば良い。
【0070】
また、
図9に示すように、傾斜板部61Aは、冷却塔本体35よりも側方に張り出すため、排気された外気GKが、冷却塔本体35側面の吸気口54に回り込むことを抑制することができる。つまり、傾斜板部61Aは、ショートカット抑制部材としても機能する。
しかも、傾斜板部61Aが上記のように傾斜することで、冷却塔本体35側面の吸気口54への吸気が妨げられず、補足本体部61を設けても吸気効率への影響を抑えることができる。
【0071】
また、傾斜板部61Aが上記のように傾斜することで、傾斜板部61Aに代えて水平の板部を配置した場合と比べて、回収率を同様にしつつ冷却塔31の幅の増大を抑え、コンパクト化を図ることができる。
【0072】
水戻し部62は、補足本体部61の下部から下方に延出する縦樋に形成され、補足本体部61の下部から落下する水を冷却塔本体35内に戻す。より具体的には、補足本体部61の下部には、内部の水を排出する排出部66が設けられており、水戻し部62は、上記排出部66から排出される水を、充填材40から落下した水が溜まる水溜まり部に排出する。
これにより、補足本体部61で補足された水を冷却水として回収することができる。なお、この水戻し部62は、ステンレス板などの金属材で形成しても良いし、ホースなどの配管部材で形成しても良い。また、降雨時には、雨水が上方開口箱部61B内に入るので、雨水も冷却水として回収することができる。
【0073】
このように、送風機36の側方にて排気と共に排出される水分を補足する補足部材60を設けたため、送風機36の排気を側方に抜くスペースSPを空けつつ、排気とともに排出される水分を効率良く回収することができる。従って、機外静圧の上昇を抑え、且つ、循環水の損失を低減することができる。この結果、補給水の低減を図ることができ、節水や水資源の確保に寄与し、省エネルギー化に有利となる。
しかも、この補足部材60により、上記遮蔽部材55を用いても回収できなかった水分(特にキャリーオーバによる水滴W3)を積極的に補足できるので、冷却水の回収率を効果的に向上させることができる。
【0074】
また、補足部材60は、送風機36から側方に離れる側に向かって斜め上方に延びる傾斜板部61Aを有するため、排気によって側方に流れる水分を回収可能にしつつ補足部材60のコンパクト化を図ることができる。
また、傾斜板部61Aに沿って下方へ案内された水分を、冷却塔31内に戻す水戻し部62を有するので、補足した水分を円滑に冷却塔31内に戻すことができる。
また、補足部材60を、冷却塔31に設けられる手摺り64に固定するため、補足部材60の支持強度を確保し易く、強風や積雪に対応し易くなる。
【0075】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
例えば、上述した実施形態では、水回収装置51として、遮蔽部材55と補足部材60の両方を設ける場合を説明したが、いずれか一方を設けるようにしても良い。また、上述した実施形態では、直列運転制御を行うための制御プログラムを、冷却塔31のコントローラ21に予め記憶しておく場合を説明したが、この制御プログラムを、磁気記録媒体、光記録媒体、半導体記録媒体などのコンピュータが読み取り可能な記録媒体に格納し、コンピュータが記録媒体からこの制御プログラムを読み取って実行しても良い。また、この制御プログラムを通信ネットワーク上の配信サーバーなどからダウンロードしても良い。
また、上述した実施形態では、
図1に示す冷凍システム1に本発明を適用する場合を説明したが、これに限らず、冷凍機の運転台数を可変させることによって運転されない冷却塔が現れる公知の冷凍システムに本発明を広く適用可能である。