【文献】
大隈一裕他,焙焼デキストリンからの難消化性デキストリンの調製,Journal of Applied Glycoscience,2003年,Vol.50,p.389−394
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
原料デキストリンの水溶液にマルトース生成アミラーゼ及びトランスグルコシダーゼを作用させて分岐デキストリンを製造する方法において、マルトース生成アミラーゼとトランスグルコシダーゼの酵素単位比を2:1〜44:1に調整して作用させることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の分岐デキストリンの製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この明細書において、「分岐デキストリン」とは、通常の澱粉を公知の方法で加水分解して得られる、いわゆる通常のデキストリンと比べて、α−1,6グルコシド結合からなる分岐構造の割合が高いデキストリンを指す。
本発明における「マルトース生成アミラーゼの酵素単位」とは、5質量%デキストリン(PDx#2(DE=11、数平均分子量=1700、平均重合度=10):松谷化学工業社製)水溶液を基質として、pH5.5、反応温度55℃の反応条件下において、1分間に1μmolのマルトースを生成する酵素力を1単位としたものである。また、「トランスグルコシダーゼの酵素単位」とは、1質量%メチル−α−D−グルコピラノシド水溶液を基質として、pH5.5、反応温度55℃の反応条件下において、1分間に1μmolのグルコースを生成する酵素力を1単位としたものである。
【0014】
本発明における浸透圧とは、Brix10%に調整した水溶液を氷点降下法により、浸透圧計測器(VOGEL OM802−D)を用いて測定した値である。本発明の分岐デキストリンの浸透圧は好ましくは90〜300mOSMOL/kg程度、より好ましくは100〜200mOSMOL/kgである。
この明細書において、DEとは、「〔(直接還元糖(ブドウ糖として表示)の質量)/(固形分の質量)〕×100」の式で表される値で、ウイルシュテッターシューデル法による分析値である。本発明の分岐デキストリンのDEは10−52、好ましくは10−40である。
【0015】
本発明の分岐デキストリンは、澱粉を公知の方法で加水分解して得たデキストリンにマルトース生成アミラーゼとα−グルコシダーゼの一種であるトランスグルコシダーゼを酵素単位比で2:1〜44:1程度、好ましくは10:1〜30:1になるよう調整したものを同時に添加して作用させることで調製することができる。酵素単位比が2:1〜44:1の範囲から外れると、消化を受けにくく、しかも浸透圧が低いという2つの性質を兼ね備えた分岐デキストリンを調製することが困難になる。
具体的には、まず、澱粉を公知の方法で加水分解してデキストリンを得る。原料となる澱粉は、例えば、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉などの地下澱粉、あるいはコーンスターチ、ワキシコーンスターチ、米澱粉、などの地上澱粉などを利用することができる。デキストリンのDEは好ましくは2〜20程度、さらに好ましくは5〜12程度がよい。DEが低すぎると溶液状態で保存した時に白濁する(老化する)要因となり、反対に高すぎると最終製品の浸透圧が高くなる要因となる。
澱粉の加水分解の方法としては、α−アミラーゼ等による酵素分解、酸分解及びそれらの組み合わせがあり、いずれの方法も使用できるが、工程の短縮化及び生成する分岐デキストリンの低粘度化という点で酸分解が好ましい。酸としては、シュウ酸、塩酸、等が使用できるが、シュウ酸が好ましい。例えば、タピオカ澱粉の30質量%水溶液に粉末シュウ酸を加えてpH1.8〜2.0に調整し、100〜130℃で40〜80分程度処理すれば良い。
【0016】
次に、デキストリン濃度を好ましくは20〜50質量%、より好ましくは20〜40質量%、pHを好ましくは4.0〜7.0、より好ましくは5.5程度に調整する。これに、マルトース生成アミラーゼとトランスグルコシダーゼの酵素単位比が2:1〜44:1程度、好ましくは10:1〜30:1になるよう調整したものを適量、例えば、デキストリン水溶液100質量部に対して好ましくは0.1〜1.0質量部程度添加し、好ましくは50〜60℃、さらに好ましくは55℃程度で酵素反応を好ましくは0.25〜44時間、さらに好ましくは0.5〜3.0時間行う。
次いで、反応混合物中の酵素の失活処理を行う。例えば、95℃で30分間処理するか、酸を用いてpHを3.5以下に調整してマルトース生成アミラーゼとトランスグルコシダーゼの酵素反応を終了させる。
【0017】
マルトース生成アミラーゼとしては市販品が使用でき、例えばビオザイムML(アマノエンザイム社製)やβ−アミラーゼ#1500S(ナガセケムテックス社製)はβ−マルトース生成アミラーゼ(β−アミラーゼ)であり、ビオザイムL(アマノエンザイム社製)はα−マルトース生成アミラーゼである。この内、ビオザイムLは老化安定性に優れた分岐デキストリンを生成するという点で好ましい。また、トランスグルコシダーゼとしては同様に市販品が使用でき、トランスグルコシダーゼL「アマノ」(アマノエンザイム社製)やトランスグルコシダーゼL−500(ジェネンコア協和社製)などがある。
以上の酵素反応では、必要に応じてα−アミラーゼを同時に添加して作用させてもよいし、反応終了後に作用させてもよい。また、これらの酵素反応は遊離の酵素であっても、固定化された酵素であってもよい。固定化酵素の場合、反応方法はバッチ式及び連続式のいずれでもよい。固定化方法としては、担体結合法、包括法あるいは架橋法など、公知の方法を利用することができる。
【0018】
最後に、活性炭処理、珪藻土ろ過、イオン交換樹脂等を用いた公知の方法で脱塩し、濃縮後噴霧乾燥により粉末品とするか、70質量%程度に濃縮して液状品とする。さらに、上記酵素反応液をクロマト分離装置や膜分離装置を用いて分画処理を行ない、浸透圧を上昇させる低分子成分を必要最小限になるまで分離除去してもよい。
【0019】
このようにして得られる分岐デキストリンは、分子内に分岐構造及び/又は直鎖構造を有する澱粉分解物(デキストリン)の非還元末端に、グルコース又はイソマルトオリゴ糖がα−1,6グルコシド結合で結合した構造を有し、且つDEが10−52である。そして、浸透圧が、好ましくは70〜300mOSMOL/kg程度、より好ましくは100〜200mOSMOL/kgである。
さらに、非還元末端にグルコース又はイソマルトオリゴ糖がα−1,6グルコシド結合で結合したグルコース、すなわち「→6)-Glcp-(1→」の割合が、好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上、特に好ましくは10〜30質量%であり、内部の分岐構造を有するグルコース、すなわち「→4,6)-Glcp-(1→」の割合が、好ましくは5〜13質量%、さらに好ましくは6〜10質量%である。
これらの結合の割合は、Hakomoriのメチル化法を改変したCiucanuらの方法(Carbohydr. Res., 1984, 131, 209-217)により、確認できる。
この分岐デキストリンは、消化吸収が緩やかで、従って低GIであり、しかも浸透圧が低いので、糖尿病対応栄養補給剤、ダイエット食品、エネルギー補給食品及び栄養補助食品の糖質源など、広範な医療食品及び食品分野への応用が期待できる。
本発明の分岐デキストリンは、そのままの形態で上記栄養補給剤、食品として使用できるが、好ましくは、経腸栄養剤、食事代替飲料、持続型エネルギー補給剤、ゼリー等に好ましくは10〜50質量%、さらに好ましくは20〜40質量%程度含有させることが適当である。
また、本発明の分岐デキストリンを経腸栄養剤、食事代替飲料、持続型エネルギー補給剤、ゼリー等の前記飲食品、栄養補給剤に使用する場合、他の機能性食品素材、例えば難消化性デキストリンと併用すれば、その効果を一層高めることが期待できる。
【0020】
以下に実施例及び試験例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
まず、β−アミラーゼとトランスグルコシダーゼの単位比が分岐デキストリンの性質、すなわち、消化を受けにくく、しかも浸透圧が低いという性質に及ぼす影響を調べるため、実施例1〜3及び比較例1〜4では、表1に示した酵素単位比で分岐デキストリンを調製した。
【0021】
【表1】
【0022】
実施例1(β−アミラーゼとトランスグルコシダーゼの単位比が分岐デキストリンの性質に及ぼす影響)
デキストリン(PDX#1:松谷化学工業社製/DE=8)150gを緩衝溶液(0.1Mリン酸緩衝液 (pH5.5))150gに溶解し、β−アミラーゼ(ビオザイムML:アマノエンザイム社製)95単位およびトランスグルコシダーゼ(トランスグルコシダーゼL「アマノ」:アマノエンザイム社製)45単位を同時に添加して酵素単位比が2:1の条件とし、55℃で反応を開始させた。反応開始から90分後及び180分後に一部をサンプリングし、それぞれ95℃で15分間保持して反応を停止させた。それぞれ珪藻土濾過及び両性イオン交換樹脂(オルガノ社製)を用いて脱塩し、浸透圧がそれぞれ108mOSMOL/kg及び181mOSMOL/kgの分岐デキストリンを得た(DEはそれぞれ15.3及び24.9)。
【0023】
試験例1(in vitro消化性試験)
得られた分岐デキストリンに対してin vitro消化性試験を行った。
本発明におけるin vitro消化性試験とは、生体内における糖質消化性の模擬試験であり、Englystら(European Journal of Clinical Nutrition、1992、46S33〜S50)の方法に基づいた変法で、糖質(本発明ではデキストリン)が酵素混合溶液(ブタ膵臓アミラーゼおよびラット小腸粘膜酵素)によって分解を受けて放出されるグルコース量を経時的に測定する試験である。
使用するブタ膵臓アミラーゼはRoche社製(19230U/ml)を用いた。また、ラット小腸粘膜酵素はSigma社製のラット小腸アセトンパウダーを以下の通りに調製して用いた。すなわち、ラット小腸アセトンパウダー1.2gを45mM Bis−Tris・Cl Buffer(pH6.6)/0.9mMCaCl
2 15mlで懸濁し、ホモジナイズした後、3000rpmで10分遠心分離し、その上清をラット小腸粘膜酵素の粗酵素液とした。粗酵素液の活性は26mMマルトース溶液において1分間に1mmolのマルトースを分解する活性を1Uとして算出した。
【0024】
被検物質を緩衝溶液(45mM Bis−Tris・Cl Buffer(pH6.6)/0.9mMCaCl
2)に溶解し、0.24質量%の被検物質溶液を調製した。被検物質は、コントロールとして一般的なデキストリン(TK−16:松谷化学工業社製/DE=18)と実施例1で得られた浸透圧が108mOSMOL/kgと181mOSMOL/kgの分岐デキストリンを使用した。これらの被検物質溶液2.5mlをそれぞれ試験管にとり、37℃の恒温槽で10分間加温したのち、酵素混合溶液(ブタ膵臓アミラーゼ(384.6U/ml)50μl+ラット小腸粘膜酵素(6.0U/ml)140μl+緩衝溶液310μl)0.5mlをそれぞれ添加し、よく混合して反応を開始した。反応開始後15秒、10分、30分、1時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、6時間後に反応溶液200μlと0.5M過塩素酸50μlをそれぞれ混合して反応を停止した。これらの反応停止溶液のグルコース濃度を、グルコースCIIテストワコー(和光純薬工業社製)を用いて定量した。
図1に示す結果から、実施例1で得られた分岐デキストリンは2品共にTK−16に比べ、ブタ膵臓アミラーゼとラット小腸粘膜酵素によって分解を受けにくく、ゆっくり消化されることが確認された。
【0025】
実施例2(β−アミラーゼとトランスグルコシダーゼの単位比が分岐デキストリンの性質に及ぼす影響)
デキストリン(PDX#1:松谷化学工業社製/DE=8)150gを緩衝溶液(0.1Mリン酸緩衝液 (pH5.5))150gに溶解し、β−アミラーゼ(ビオザイムML:アマノエンザイム社製)950単位およびトランスグルコシダーゼ(トランスグルコシダーゼL「アマノ」:アマノエンザイム社製)45単位を同時に添加して酵素単位比が21:1の条件とし、55℃で反応を開始させた。反応開始から30分後及び180分後に一部をサンプリングし、それぞれ95℃で15分間保持して反応を停止させた。それぞれ珪藻土濾過及び両性イオン交換樹脂(オルガノ社製)を用いて脱塩し、浸透圧がそれぞれ105mOSMOL/kg及び189mOSMOL/kgの分岐デキストリンを得た(DEはそれぞれ14.9及び26.9)。
得られた分岐デキストリンに対して試験例1と同様のin vitro消化性試験を行った。
図2に示す結果から、実施例2で得られた分岐デキストリンは2品共にTK−16に比べ、ブタ膵臓アミラーゼとラット小腸粘膜酵素によって分解を受けにくく、ゆっくり消化されることが確認された。
【0026】
実施例3(β−アミラーゼとトランスグルコシダーゼの単位比が分岐デキストリンの性質に及ぼす影響)
デキストリン(PDX#1:松谷化学工業社製/DE=8)150gを緩衝溶液(0.1Mリン酸緩衝液 (pH5.5))150gに溶解し、β−アミラーゼ(ビオザイムML:アマノエンザイム社製)1782単位およびトランスグルコシダーゼ(トランスグルコシダーゼL「アマノ」:アマノエンザイム社製)40.5単位を同時に添加して酵素単位比が44:1の条件とし、55℃で反応を開始させた。反応開始から15分後及び90分後に一部をサンプリングし、それぞれ95℃で15分間保持して反応を停止させた。それぞれ珪藻土濾過及び両性イオン交換樹脂(オルガノ社製)を用いて脱塩し、浸透圧がそれぞれ103mOSMOL/kg及び178mOSMOL/kgの分岐デキストリンを得た(DEはそれぞれ13.1及び23.8)。
得られた分岐デキストリンに対して試験例1と同様のin vitro消化性試験を行った。
図3に示す結果から、実施例3で反応90分後に得られた浸透圧178mOSMOL/kgの分岐デキストリンはTK−16に比べ、ブタ膵臓アミラーゼとラット小腸粘膜酵素によって分解を受けにくく、ゆっくり消化されることが確認された。一方、浸透圧103mOSMOL/kgの分岐デキストリンはコントロールであるTK−16とほぼ同様であった。
【0027】
比較例1(β−アミラーゼとトランスグルコシダーゼの単位比が分岐デキストリンの性質に及ぼす影響)
デキストリン(PDX#1:松谷化学工業社製/DE=8)150gを緩衝溶液(0.1Mリン酸緩衝液 (pH5.5))150gに溶解し、トランスグルコシダーゼ(トランスグルコシダーゼL「アマノ」:アマノエンザイム社製)のみを54単位添加し、55℃で反応を開始させた。反応開始から60分後及び480分後に一部をサンプリングし、それぞれ95℃で15分間保持して反応を停止させた。それぞれ珪藻土濾過及び両性イオン交換樹脂(オルガノ社製)を用いて脱塩し、浸透圧が106mOSMOL/kgと179mOSMOL/kgの分岐デキストリンを得た(DEはそれぞれ14.6及び26.8)。
得られた分岐デキストリンに対して試験例1と同様のin vitro消化性試験を行った。
図4に示す結果から、比較例1で得られた分岐デキストリンはコントロールであるTK−16とほぼ同様であることが確認された。
【0028】
比較例2(β−アミラーゼとトランスグルコシダーゼの単位比が分岐デキストリンの性質に及ぼす影響)
デキストリン(PDX#1:松谷化学工業社製/DE=8)150gを緩衝溶液(0.1Mリン酸緩衝液 (pH5.5))150gに溶解し、β−アミラーゼ(ビオザイムML:アマノエンザイム社製)2970単位およびトランスグルコシダーゼ(トランスグルコシダーゼL「アマノ」:アマノエンザイム社製)22.5単位を同時に添加して酵素単位比が132:1の条件とし、55℃で反応を開始させた。反応開始から15分後及び60分後に一部をサンプリングし、それぞれ95℃で15分間保持して反応を停止させた。それぞれ珪藻土濾過及び両性イオン交換樹脂(オルガノ社製)を用いて脱塩し、浸透圧がそれぞれ124mOSMOL/kg及び184mOSMOL/kgの分岐デキストリンを得た(DEはそれぞれ17.1及び26.1)。
得られた分岐デキストリンに対して試験例1と同様のin vitro消化性試験を行った。
図5に示す結果から、比較例2で得られた分岐デキストリンはコントロールであるTK−16とほぼ同様であることが確認された。
【0029】
比較例3(β−アミラーゼとトランスグルコシダーゼの単位比が分岐デキストリンの性質に及ぼす影響)
デキストリン(PDX#1:松谷化学工業社製/DE=8)150gを緩衝溶液(0.1Mリン酸緩衝液 (pH5.5))150gに溶解し、β−アミラーゼ(ビオザイムML:アマノエンザイム社製)2970単位およびトランスグルコシダーゼ(トランスグルコシダーゼL「アマノ」:アマノエンザイム社製)9単位を同時に添加して酵素単位比が330:1の条件とし、55℃で反応を開始させた。反応開始から15分後及び75分後に一部をサンプリングし、それぞれ95℃で15分間保持して反応を停止させた。それぞれ珪藻土濾過及び両性イオン交換樹脂(オルガノ社製)を用いて脱塩し、浸透圧がそれぞれ125mOSMOL/kg及び191mOSMOL/kgの分岐デキストリンを得た(DEはそれぞれ17.0及び27.4)。
得られた分岐デキストリンに対して試験例1と同様のin vitro消化性試験を行った。
図6に示す結果から、比較例3で得られた分岐デキストリンはコントロールであるTK−16とほぼ同様であることが確認された。
【0030】
比較例4(β−アミラーゼとトランスグルコシダーゼの単位比が分岐デキストリンの性質に及ぼす影響)
デキストリン(PDX#1:松谷化学工業社製/DE=8)150gを緩衝溶液(0.1Mリン酸緩衝液 (pH5.5))150gに溶解し、β−アミラーゼ(ビオザイムML:アマノエンザイム社製)4930.2単位およびトランスグルコシダーゼ(トランスグルコシダーゼL「アマノ」:アマノエンザイム社製)7.47単位を同時に添加して酵素単位比が660:1の条件とし、55℃で反応を開始させた。反応開始から15分後及び45分後に一部をサンプリングし、それぞれ95℃で15分間保持して反応を停止させた。それぞれ珪藻土濾過及び両性イオン交換樹脂(オルガノ社製)を用いて脱塩し、浸透圧がそれぞれ143mOSMOL/kg及び194mOSMOL/kgの分岐デキストリン液状品を得た(DEはそれぞれ19.9及び29.6)。
得られた分岐デキストリンに対して試験例1と同様のin vitro消化性試験を行った。
図7に示す結果から、比較例4で得られた分岐デキストリンはコントロールであるTK−16とほぼ同様であることが確認された。
以上の実施例1〜3及び比較例1〜4で得られた分岐デキストリンについて行ったin vitro消化性試験より得られた消化性の評価結果を表2にまとめた。
【0031】
【表2】
*:β−アミラーゼ **:トランスグルコシダーゼ
表2より、β−アミラーゼとトランスグルコシダーゼの酵素単位比が2:1〜44:1の範囲では、消化を受けにくく、しかも浸透圧が低いという2つの性質を兼ね備えた分岐デキストリンを得ることができるが、酵素単位比が2:1〜44:1の範囲外では同様の分岐デキストリンを得ることができないことが確認された。
【0032】
実施例4(基質濃度が分岐デキストリンの性質に及ぼす影響および反応効率に及ぼす影響)
基質となるデキストリン(PDX#1:松谷化学工業社製/DE=8)150gを、それぞれ基質濃度が20質量%、30質量%、40質量%、50質量%、60質量%になるように緩衝溶液(0.1Mリン酸緩衝液 (pH5.5))を用いて溶解し、それぞれにβ−アミラーゼ(ビオザイムML:アマノエンザイム社製)950単位およびトランスグルコシダーゼ(トランスグルコシダーゼL「アマノ」:アマノエンザイム社製)45単位を同時に添加して酵素単位比が21:1の条件とし、55℃で反応を開始した。各基質濃度における反応時間と得られた分岐デキストリンの浸透圧及びDEを表3に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
表3に示す条件で得られた分岐デキストリンに対して試験例1と同様のin vitro消化性試験を行った。
図8に示す結果から、得られた分岐デキストリンは何れの基質濃度条件であっても、TK−16に比べ、ブタ膵臓アミラーゼとラット小腸粘膜酵素によって分解を受けにくく、同じ程度にゆっくり消化されることが確認された。
表3と
図8の結果より、何れの基質濃度においても、消化を受けにくく、しかも浸透圧が低いという2つの性質を兼ね備えた分岐デキストリンを製造できることが確認された。また、基質濃度が低いほど、反応時間が短く、反応効率が良いことが確認された。
【0035】
実施例5(酵素添加量が分岐デキストリンの性質に及ぼす影響)
デキストリン(PDX#1:松谷化学工業社製/DE=8)125gを緩衝溶液(0.1Mリン酸緩衝液(pH5.5))125gに溶解し、表4の条件1、2に示した単位の酵素(β−アミラーゼとトランスグルコシダーゼの酵素単位比はいずれも21:1であるが添加量が違う)をそれぞれ同時に添加し、55℃で反応を開始させた。条件1は反応開始から44時間後及び条件2は反応開始から2.5時間後に一部をサンプリングし、それぞれ95℃で15分間保持して反応を停止させた。それぞれ珪藻土濾過及び両性イオン交換樹脂(オルガノ社製)を用いて脱塩し、浸透圧がそれぞれ188mOSMOL/kgと193mOSMOL/kgの分岐デキストリン液状品を得た(DEはそれぞれ27.6及び28.3)。
【0036】
【表4】
*:ビオザイムML:アマノエンザイム社製
**:トランスグルコシダーゼL「アマノ」:アマノエンザイム社製
【0037】
表4に示す反応条件で得られた分岐デキストリンに対して試験例1と同様のin vitro消化性試験を行った。
図9に示す結果から、得られた分岐デキストリンは何れの酵素添加量であっても、TK−16に比べ、ブタ膵臓アミラーゼとラット小腸粘膜酵素によって分解を受けにくく、同じ程度にゆっくり消化されることが確認された。
しかし、酵素単位比を同じにして酵素添加量を減らすと、所望の浸透圧の分岐デキストリンの生成に要する時間が増加することが確認された。
【0038】
実施例6(マルトース生成アミラーゼの種類が分岐デキストリンの性質に及ぼす影響)
デキストリン(PDX#1:松谷化学工業社製/DE=8)125gを緩衝溶液(0.1Mリン酸緩衝液 (pH5.5))125gに溶解し、表5の条件1、2に示した酵素(マルトース生成アミラーゼは950単位、トランスグルコシダーゼは45単位、すなわちそれぞれの単位比が21:1になるように)を同時に添加し、55℃で反応を開始させた。条件1、2共に反応開始から1.5時間後、それぞれ95℃で15分間保持して反応を停止させた。それぞれ珪藻土濾過及び両性イオン交換樹脂(オルガノ社製)を用いて脱塩し、浸透圧がそれぞれ143mOSMOL/kgと145mOSMOL/kgの分岐デキストリン液状品を得た(DEはそれぞれ21.2及び21.2)。
【0039】
【表5】
*ビオザイムML(アマノエンザイム社製)
**ビオザイムL(アマノエンザイム社製)
***トランスグルコシダーゼL「アマノ」(アマノエンザイム社製)
表5の反応条件で得られた分岐デキストリンに対して試験例1と同様のin vitro消化性試験を行った。
図10に示す結果から、得られた分岐デキストリンは何れの条件であっても、TK−16に比べ、ブタ膵臓アミラーゼとラット小腸粘膜酵素によって分解を受けにくく、同じ程度にゆっくり消化されることが確認された。
【0040】
(老化安定性試験)
次に、実施例6で得られた表5の分岐デキストリン溶液に対して「老化安定性試験」を行った。本発明における「老化安定性試験」とは、Brix50%に調整した溶液を−20度にて冷凍した後、室温で解凍し、Brix30に調整した後、分光光度計にて溶液の濁度(OD720nm、1cmセル換算)を測定する。この操作を、溶液の濁度が上昇するまで、あるいは5回繰り返して溶液の濁度を測定する方法である。この方法では、老化安定性が悪いデキストリンは5回繰り返す前に溶液の濁度が上昇するが、老化安定性が良いデキストリンは5回繰り返しても溶液の濁度は上昇しないことで評価される。老化安定性試験の結果を表6に示した。表6の結果より、条件2のα‐マルトース生成アミラーゼを作用させて得られた分岐デキストリンの方が老化安定性に優れていることが確認された。
【0041】
【表6】
【0042】
実施例7(原料となるデキストリンのDEが分岐デキストリンの性質に及ぼす影響)
タピオカ澱粉を表7に示す公知の分解方法で分解し、表7に示すDEまで分解したデキストリン125gを緩衝溶液(0.1Mリン酸緩衝液 (pH5.5))125gに溶解し、それぞれにα-マルトース生成アミラーゼ(ビオザイムL:アマノエンザイム社製)950単位およびトランスグルコシダーゼ(トランスグルコシダーゼL「アマノ」:アマノエンザイム社製)45単位、すなわち酵素単位比が21:1になるように調製したものを同時に添加し、表7に示した時間作用させ、95℃で15分間保持して反応を停止させた。それぞれ珪藻土濾過及び両性イオン交換樹脂(オルガノ社製)を用いて脱塩し、表7に示した浸透圧の分岐デキストリン液状品を得た。
【0043】
【表7】
【0044】
表7に示す条件で得られた分岐デキストリンに対して試験例1と同様のin vitro消化性試験を行った。
図11に示す結果から、得られた分岐デキストリンは何れの条件であっても、TK−16に比べ、ブタ膵臓アミラーゼとラット小腸粘膜酵素によって分解を受けにくく、同じ程度にゆっくり消化されることが確認された。
次に、得られた表7の分岐デキストリン溶液に対して実施例6と同様の老化安定性試験を行った。表8の結果より、いずれの条件であっても分岐デキストリンの老化安定性は良いことが確認された。
【0045】
【表8】
【0046】
(粘度測定)
実施例7で得られた表7の分岐デキストリン溶液に対して「粘度」を測定した。本発明における「粘度」とは、VISCOMETER MODEL BMにより以下の条件で測定する。濃度:30質量%、測定温度:30℃、回転数:60rpm、ホールド時間:30秒。
表9の結果より、条件4でDE11.9まで分解した原料を用いて得られた分岐デキストリンが最も粘度が低いことが確認された。
【0047】
【表9】
【0048】
実施例8(低DEの分岐デキストリンの調製及びその性質)
タピオカ澱粉を公知の分解方法で分解して得られたDE=5.2のデキストリン135gを緩衝溶液(0.1Mリン酸緩衝液 (pH5.5))265gに溶解し、α-マルトース生成アミラーゼ(ビオザイムL:アマノエンザイム社製)210単位およびトランスグルコシダーゼ(トランスグルコシダーゼL「アマノ」:アマノエンザイム社製)10単位、すなわち酵素単位比が21:1になるように調製したものを同時に添加して反応を開始させた。15、30、45、90及び135分後、それぞれ50gを採取して95℃で15分間保持して反応を停止させた。それぞれ珪藻土濾過及び両性イオン交換樹脂(オルガノ社製)を用いて脱塩し、浸透圧がそれぞれ53、61、73、101及び141mOSMOL/kgの分岐デキストリン液状品を得た(DEはそれぞれ8.3、9.5、10.9、14.4及び20.0)。
得られた分岐デキストリンに対して試験例1と同様のin vitro消化性試験を行った。
図12に示す結果から、DE=10.9以上の分岐デキストリンは、TK−16に比べ、ブタ膵臓アミラーゼとラット小腸粘膜酵素によって分解を受けにくく、ゆっくり消化されることが確認された。一方、DE=9.5以下の分岐デキストリンはコントロールであるTK−16とほぼ同様であることが確認された。
【0049】
実施例9(分岐デキストリンの分岐度分析)
本発明により製造したデキストリンの結合様式を測定するため、Ciucanuらの方法に従ってメチル化分析を行った。実施例7の条件4で調製した浸透圧が140mOSMOL/kgの分岐デキストリン(DE=20.7)、同条件で18時間反応させて調製した244mOSMOL/kgの分岐デキストリン(DE=37.2)、及びデキストリン(TK−16:松谷化学工業社製/DE=18)のメチル化分析の結果を表10に示す。この結果より、本発明の製造方法で調製された分岐デキストリンはデキストリンに対し、分岐構造である1→6結合を持つグルコース「→6)-Glcp-(1→」及び「→4,6)-Glcp-(1→」の内、「→4,6)-Glcp-(1→」の割合が増加していた。さらに、デキストリンには全く含まれない「→6)-Glcp-(1→」(非還元末端に1,6結合で結合したグルコース)が新たに形成されていた。
【0050】
【表10】
※例えば、「→4)-Glcp-(1→」は1,4位でグルコシド結合していたグルコースを示す。
【0051】
実施例10(分岐デキストリンのヒトにおける消化性試験)
健常成人男女11名(平均年齢34.3±1.1歳)には試験前日午後9時以降水以外の飲食を禁止した。実施例7の条件4で調製した浸透圧が140mOSMOL/kgの分岐デキストリン又はデキストリン(グリスターP:松谷化学工業社製/DE=15)各50gを水200mLに溶解して試料とし、試験当日午前9時に摂取させた。試料摂取前、摂取30、60、90、及び120分後にそれぞれ指先からヘマトクリット管へ採血し、血清グルコース濃度を測定した。
試料摂取前の血糖値を0として、摂取後の血糖値の上昇量を
図13に示し、その曲線下面積(AUC)を
図14に示した。分岐デキストリン摂取後の血糖値上昇量はデキストリンに比べて少ない傾向にあった。分岐デキストリンのAUCは、t検定においてデキストリンより有意に低く、デキストリンのAUCを100とした場合の分岐デキストリンのAUC、すなわちグリセミックインデックス(GI)は78であった。これより分岐デキストリンはデキストリンよりもヒトでの消化吸収が緩やかであることが明らかとなった。この結果より、分岐デキストリンは低GIが求められる食品(糖尿病患者の栄養補給剤、ダイエット食品、エネルギー補給飲料、栄養補助食品など)への利用が可能であると考えられた。また、消化吸収が緩やかであることから、エネルギー持続型食品(ダイエット食品、スポーツドリンクなど)への利用が可能であると考えられた。
【0052】
実施例11(腹持ち試験)
被験者は健常成人男女10名(平均年齢33.8±1.1歳)とし、試験前日午後9時以降水以外の飲食を禁止した。試験当日、被験者は朝食を摂らない状態で安静の保てる試験室に集合させた。実施例7の条件4で調製した浸透圧が140mOSMOL/kgの分岐デキストリンまたはデキストリン(グリスターP:松谷化学工業社製/DE=15)各50gを水200mLに溶解し、午前9時に被験者に摂取させた。摂取前、および摂取3時間後まで30分おきに空腹感を以下の5段階にて評価させた。
スコア5:空腹感を感じない
スコア4:少し空腹感を感じる
スコア3:空腹を感じる
スコア2:強く空腹を感じる
スコア1:空腹で耐えられない
空腹感の評価結果を
図15に示した。
図15より、分岐デキストリンはデキストリンよりも長い時間空腹感が少なく、腹持ちが良いという結果が得られた。これより、分岐デキストリンは腹持ち感やエネルギー持続が求められる食品(糖尿病患者の栄養補給剤、ダイエット食品、エネルギー補給飲料、栄養補助食品など)への利用が可能である。
【0053】
実施例12(経腸栄養剤の調製)
表11の処方に従って実施例2の浸透圧が105mOSMOL/kgの分岐デキストリンを含む経腸栄養剤を調製し、良好な製品を得た。
【0054】
【表11】
【0055】
実施例13(食事代替飲料の調製)
表12の処方に従って実施例2の浸透圧が105mOSMOL/kgの分岐デキストリンを含む食事代替用の飲料を調製し、良好な製品を得た。
【0056】
【表12】
*1 築野食品工業株式会社製
*2 旭化成株式会社製(アビセルCL‐611S)
*3 三菱化学フーズ株式会社製(シュガーエステルP‐1670)
*4 武田薬品工業株式会社製(新バイリッチWS‐7L)
*5 高田香料株式会社製(カスタードバニラエッセンスT‐484)
【0057】
実施例14(エネルギー飲料の調製)
表13の処方に従って実施例2の浸透圧が105mOSMOL/kgの分岐デキストリンを含むエネルギー飲料を調製し、良好な製品を得た。
【0058】
【表13】
* 高田香料株式会社製(グレープフルーツエッセンス#2261)
【0059】
実施例15(ゼリーの調製)
表14の処方に従って実施例2の浸透圧が105mOSMOL/kgの分岐デキストリンを含むゼリーを調製し、良好な製品を得た。
【0060】
【表14】
*1 大日本製薬株式会社製(ケルコゲル)
*2 雄山商事株式会社製
*3 高田香料株式会社製(マスカットエッセンス#50631)