【文献】
中野善之,“pH-CO2ハイブリッドセンサーの開発”,工業研究 [ENGINEERING MATERIALS],2013年 7月 1日,Volume 61, Number 7,Pages 77-80,ISSN:0452-2834
【文献】
YOSHIYUKI NAKANO et al.,Simultaneous Vertical Measurements of In Situ pH and CO2 in the Sea Using Spectrophotometric Profile,Journal of Oceanography,2006年 2月,Volume 62, Number 1,Pages 71-81
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
二酸化炭素分圧に応じて吸光度が変わる試薬溶液が流れる溶液流路及び二酸化炭素は透過するが溶液は通さないガス透過膜を備えて、前記試薬溶液と試料水との二酸化炭素分圧を平衡にする平衡器と、
前記溶液流路に前記試薬溶液を送液する送液用ポンプと、
前記平衡器の前記溶液流路から出た前記試薬溶液が流れる内部流路を本体部に備えたフローセルと、
前記内部流路に光を照射する光源を含む光源ユニットと、
前記内部流路を通過した前記光を受光する受光素子を含む受光素子ユニットと、
前記受光素子ユニットの出力に基づいて吸光度を求め、該吸光度から前記試料水中の二酸化炭素分圧を測定する二酸化炭素分圧測定部とを備えて水中に配置される二酸化炭素分圧測定装置であって、
前記フローセルの前記本体部は、前記内部流路が、第1の光学窓によって水密に塞がれる第1の開口部と該第1の開口部と対向する位置に設けられて第2の光学窓によって水密に塞がれる第2の開口部を備えた水密構造を有しており、
前記光源ユニットは、前記フローセルの前記本体部に対して水密に取り付けられた水密構造の第1の容器を備えて、前記第1の光学窓を通して前記光源からの前記光を前記内部流路に照射するように構成され、
前記受光素子ユニットは、前記フローセルの前記本体部に対して水密に取り付けられた水密構造の第2の容器を備えて、前記第2の光学窓を通して前記内部流路を通った前記光を前記受光素子で受光するように構成され、
前記フローセルの前記本体部には、前記光源ユニットと前記受光素子ユニットとの間の電気的接続に用いられるリード線等の電気的接続部材が通る電気的接続部材案内通路が形成されていることを特徴とする二酸化炭素分圧測定装置。
二酸化炭素分圧に応じて吸光度が変わる試薬溶液が流れる溶液流路を備えた平衡器の前記溶液流路から出た前記試薬溶液が流れる内部流路を本体部に備えた水密構造を有するフローセルと、
前記内部流路に光を照射する光源及び前記フローセルの前記本体部に対して水密に取り付けられた水密構造の第1の容器を有する光源ユニットと、
前記内部流路を通過した前記光を受光する受光素子及び前記フローセルの前記本体部に対して水密に取り付けられた水密構造の第2の容器を有する受光素子ユニットと、
前記受光素子ユニットの出力に基づいて吸光度を求め、該吸光度から前記試料水中の二酸化炭素分圧を測定する二酸化炭素分圧測定部とを備え、
前記フローセルの前記本体部は、第1の光学窓によって水密に塞がれる第1の開口部と該第1の開口部と対向する位置に設けられて第2の光学窓によって塞がれる第2の開口部を備えた水密構造を有し、
前記光源ユニットは、前記第1の光学窓を通して前記光源からの前記光を前記内部流路に照射するように構成され、
前記受光素子ユニットは、前記第2の光学窓を通して前記内部流路を通った前記光を前記受光素子で受光するように構成されており、
前記フローセルの前記本体部には、前記光源ユニットと前記受光素子ユニットとの間の電気的接続に用いられリード線等の電気的接続部材が通る電気的接続部材案内通路が形成されていることを特徴とする二酸化炭素分圧測定装置用セルユニット。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の二酸化炭素分圧測定装置の第1の実施の形態の構成を概略的に示す図である。
図1に示すように本実施の形態の二酸化炭素分圧測定装置1は、平衡器3と、内部に試薬溶液が充填される試薬用容器5と、内部に純水が充填される純水用容器7と、セルユニット9と、内部液送液用ポンプP1とを備えている。二酸化炭素分圧測定装置1は、海上に浮遊するブイを有する浮体構造体またはAUV(自律型無人潜水機)やROV(遠隔操作無人探査機)または有人潜水機等の移動体の内部に取り付られたり、調査船で採水器とともに曳航される等により、海水中に配置される。本実施の形態の二酸化炭素分圧測定装置1は、深海中を航行する図示しないAUVなどの潜水機とともに深海中を航行したり、調査船に曳航される。
【0016】
平衡器3は、多孔質のガス透過膜により構成された中空円筒状の管状部材3aを備えている。管状部材3aの中空部分により内部液流路3bが構成されている。本実施の形態のガス透過膜は、内径1mmのアモルファスフルオロポリマーにより構成されている。ガス透過膜は、ポリテトラフルオロエチレンやシリコンにより構成してもよい。ガス透過膜は、多数の極めて微細な孔が形成されている多孔質膜であり、液体を透過させることはないけれども、液体中に含有される二酸化炭素等の気体成分を透過させることのできる膜である。ガス透過膜により構成された管状部材3aは、可撓性を有しており、1000mmの長さに形成されている。本実施の形態の管状部材3aは、実際には、海水は流れるが、ガス透過膜を固定する固定治具に巻き付けられてコイル状に構成されている。管状部材3aの一方の端部3cは、二酸化炭素が測定される内部液を内部液流路3b内に供給するポリテトラフルオロエチレン製の第1の送液管路11を介して内部液送液用ポンプP1に接続されている。また管状部材3aの他方の端部3dは、内部液流路3b内から内部液を排出するポリテトラフルオロエチレン製の第2の送液管路13を介してセルユニット9に接続されている。本実施の形態の平衡器3は、海水中に直接配置されており、海流や、AUVの航行により、平衡器3の管状部材3aの周囲に海水の流れが形成される。
【0017】
試薬用容器5には、pH感応性の比色試薬でスルホンフタレイン系pH指示薬であるブロモクレゾールパープル(BCP)が試薬溶液として貯留されている。なお試薬溶液としては、ブロモフェノールブルー、メタクレゾールパープル、メチルレッド、フェノールレッド、チモールブルー等を用いることができる。BCPからなる試薬のpHは、5.5〜6.0となるように調整されている。試薬用容器5には、後述する第5の送液管路19と合流するポリテトラフルオロエチレン製の第3の送液管路15が接続されている。試薬用
容器5は、第3の送液管路15及び第5の送液管路19を介して内部液送液用ポンプP1に接続されている。試薬用
容器5に貯留された試薬は、第3の送液管路15に設けられたバルブV1が開いた状態で内部液送液用ポンプP1を駆動することにより、平衡器3及びセルユニット9に送液される。
【0018】
純水用容器7には、純水が貯留されている。純水用容器7には、第3の送液管路15と合流するポリテトラフルオロエチレン製の第4の送液管路17が接続されている。純水用容器7は、第4の送液管路17、第3の送液管路15及び第5の送液管路19を介して内部液送液用ポンプP1に接続されている。純水用容器7に貯留された純水は、第4の送液管路17に設けられたバルブV2が開いた状態で内部液送液用ポンプP1を駆動することにより、平衡器3及びセルユニット9に送液される。
【0019】
セルユニット9は、フローセル21と、光源ユニット27と、受光素子ユニット29と
図2(B)に示すリード線等の電気的接続部材からなる信号線31とを備えている。フローセル21には、内部流路23が形成されている。内部流路23の一方の端部23
Aには、第2の送液管路13が接続されている。内部流路23の他方の端部23
Bには、内部液送液用ポンプP1に接続された第5の送液管路19が接続されている。内部流路23に供給された内部液は、第5の送液管路19に設けられたバルブV3が開いた状態で内部液送液用ポンプP1を駆動することにより、平衡器3との間で循環される。そしてバルブ
V3が閉じられることにより、内部液の循環が停止される。
【0020】
第5の送液管路19には、第5の送液管路19から分岐する廃液用管路26が形成されている。内部流路23に供給された内部液は、バルブV3が閉じた状態で且つ廃液用管路26に設けられたバルブV4が開いた状態で内部液送液用ポンプP1が駆動された場合には、廃液用管路26から外部に排出される。
【0021】
図2(A)は本実施の形態のセルユニット9の構成を概略縦
断面図的に示す図であり、
図2(B)は
図2(A)のA−A線横断面端面図である。なお両図においては、断面箇所を示すハッチングは付していない。
【0022】
フローセル21は、内部流路23が形成された本体部33と、光源側耐圧レンズ35と、受光素子側耐圧レンズ37とを備えている。
【0023】
本体部33は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)により形成されており、光源ユニット27と対向する第1の外壁面39と、受光素子ユニット29と対向する第2の外壁面41と、第1の外壁面39及び第2の外壁面41を接続する周壁面43とを備えている。本体部33は、その他、硬質塩化ビニルやその他の旋盤加工が可能な材料で、且つ、高圧の海水に対して変質、変形しにくいものであればよい。そして本体部33の横断面の輪郭形状は、略正八角柱形状を呈して、第1の外壁面39及び第2の外壁面41の輪郭形状は円形を呈している。なお、本体部の横断面の輪郭形状は、円でも正四角形でもよい。
【0024】
本体部33には、周壁面43の第1の外壁面39側の縁部及び第2の外壁面41側の縁部に、それぞれ環状の段部33a及び33bが形成されている。そして環状の段部33aには、光源ユニット27の第1の容器9
aの
第2のシリンダ65の
端部65bが螺合されており、環状の段部33bには、受光素子ユニット29の第2の容器9
bの
第1のシリンダ53の
端部53bが螺合されている。したがって環状の段部33a及び33bの外周面部及び
第2のシリンダ65の
端部65b及び
第1のシリンダ53の
端部53bの内周部には、それぞれ図示しない螺子が形成されている。
【0025】
また、本体部33には、第1の外壁面39及び第2の外壁面41に開口し、本体部33を貫通する貫通孔33cが形成されている。この貫通孔33cは、後述する信号線31が挿入される。
【0026】
本体部33に形成された内部流路23は、光源ユニット27と受光素子ユニット29とを連結する方向に延びる光照射部分23aと、光照射部分23aに内部液を導入する導入路部分23bと、光照射部分23aから内部液を排出する排出路部分23cとを備えている。導入路部分23bは、後述する第1の外壁面39に形成された凹部39aに開口する開口部23dを有している。排出路部分23cは、後述する第2の外壁面41に形成された凹部41aに開口する開口部23eを有している。導入路部分23b及び排出路部分23cは、光照射部分23aに接続されない端部が、本体部33の対向する一対の周壁面43a及び43bに開口して入口ポート23f及び出口ポート23gをそれぞれ形成している。入口ポート23fには、第2の送液管路13が接続される溶液入口用継手45が設けられており、出口ポート23gには、第5の送液管路19が接続される溶液出口用継手47が設けられている。
【0027】
第1の外壁面39には、円柱状の凹部39aが形成されている。凹部39aは、排出路部分23cの開口部23eを介して、内部流路23と連通している。凹部39aの底部には、光源側耐圧レンズ35がセットされている。レンズ35と凹部39aの底部は図示されていないO−リングにより水密構造が形成されている。光源側耐圧レンズ35は、凹部39aの内周壁部に沿って設けられた円筒状の光源側レンズ押さえ49により凹部39aの底部に押し付けられて、排出路部分23cの開口部23eを水密に塞いでいる。本実施の形態では、光源側耐圧レンズ35が、光学窓を構成している。
【0028】
第2の外壁面41には、円柱状の凹部41aが形成されている。凹部41aは、導入路部分23bの開口部23dを介して、内部流路23と連通している。凹部41aの底部には、受光素子側耐圧レンズ37がセットされている。受光素子側耐圧レンズ37は、凹部41aの周壁部に沿って設けられた円筒状の受光側レンズ押さえ51により凹部41aの底部に押し付けられて、導入路部分23bの開口部23dを水密に塞いでいる。本実施の形態では、受光素子側耐圧レンズ37が、光学窓を構成している。
【0029】
光源ユニット27は、第1のシリンダ53と、第1のエンドブラケット55と、水中コネクタ57と、LEDユニット59と、制御基板61と、CPU基板63とを備えている。本実施の形態では、第1のシリンダ53と第1のエンドブラケット55とから第1の容器9
aが構成されている。第1のシリンダ53は、アルミニウム材料等の水密及び耐圧機能を有する材料により円筒形形状に形成されている。第1のシリンダ53の軸線方向の一方の端部53aには、第1のエンド
ブラケット55がセットされている。
第1のエンドブラケット55は、アルミニウム材料等で形成されている。シリンダ53と
第1のエンドブラケット55とは、図示しないO−リングにより水密構造がとられている。第1のエンドブラケット55には、二酸化炭素分圧の測定結果を外部に出力するための図示しない外部出力用信号線が接続される水中コネクタ57が中央に設けられている。第1のシリンダ53と第1のエンド
ブラケット55とは、第1のシリンダ53に第1のエンド
ブラケットをねじ込んで図示していないO−リングにより水密構造がとられている。
【0030】
第1のシリンダ53には、軸線方向の他方の端部53b側の縁部の内壁面に、本体部33の段部33aの表面に形成された螺子部と螺合する図示しない螺子部が形成されている。また、第1のシリンダ53の他方の端部53b側の縁部の内壁面と本体部33の段部33aの表面との間には、図示しないO−リングが設けられている。第1のシリンダ53と本体部33とは、本体部33の段部33aを第1のエンドブラケット55の軸線方向の他方の端部53b内に配置した状態で、第1のエンドブラケット55を回転させることにより水密に接続される。
【0031】
LEDユニット59は、波長の異なる光を発光する複数のLED(発光ダイオード)を有しており、制御基板61の出力に応じて複数のLEDを発光させる。複数のLEDは、光源ユニット27を本体部33に接続したときに、光源側耐圧レンズ35と対向して、内部流路23の光照射部分23a内の内部液に光を照射する位置に配置されている。制御基板61は、CPU基板63からの出力に基づいてLEDユニットに複数のLEDの駆動を制御する制御信号を出力する。
【0032】
CPU基板63には、中央処理装置(CPU)を搭載したマイクロコンピュータとメモリが実装されている。このメモリには、種々の分圧の二酸化炭素分圧と温度と内部液の吸光度情報(すなわち検量線情報)が予め記憶されている。CPUは、受光素子ユニット29の出力とメモリに記憶された吸光度情報とに基づいて二酸化炭素分圧の測定結果を演算し、演算結果を水中コネクタ57から外部に出力する。本実施の形態では、CPU基板63が二酸化炭素分圧測定部を構成している。
【0033】
受光素子ユニット29は、第2のシリンダ65と、第2のエンド
ブラケット67と、受光センサ69と、アンプ基板71とを備えている。
【0034】
本実施の形態では、第2のシリンダ65と第2のエンド
ブラケット67とから第2の容器9
bが構成されている。第2のシリンダ65は、第1のシリンダ53と同様に、アルミニウム材料等の水密及び耐圧機能を有する材料により円筒形形状に形成されている。第2のシリンダ65の軸線方向の一方の端部65aには、アルミニウム材料等により形成された第2のエンド
ブラケットが67が嵌合されている。第2のシリンダ65と第1のエンド
ブラケット67とは、第2のシリンダ65に第2のエンド
ブラケット67をねじ込んで図示していないO−リングにより水密構造がとられている。
【0035】
第2のシリンダ65には、軸線方向の他方の端部65b側の縁部の内壁面に、本体部33の段部33bの表面に形成された螺子部と螺合する図示しない螺子部が形成されている。また、第2のシリンダ65の他方の端部65b側の縁部の内壁面と本体部33の段部33bの表面との間には、図示しないO−リングが設けられている。第2のシリンダ65と本体部33とは、本体部33の段部33bを第2のエンド
ブラケット67の軸線方向の他方の端部65b内に配置した状態で、第2のエンド
ブラケット67を回転させることにより水密に接続される。
【0036】
受光センサ69は、受光素子ユニット29を本体部33に接続したときに、受光素子側耐圧レンズ37と対向して、内部流路23の光照射部分23a内の内部液を透過した光を受光できる位置に配置されている。受光センサ69は、内部流路23の光照射部分23a内の内部液を透過した光を受光して内部液の吸光度を測定し、測定結果の信号をアンプ基板71に出力する。アンプ基板71は、受光センサ69が出力した測定結果の信号を増幅して、信号線31を介して光源ユニット27のCPU基板63に出力する。
【0037】
信号線31は、受光素子ユニット29のアンプ基板71と、光源ユニット27のCPU基板63とを電気的に接続しており、アンプ基板71により増幅された検出結果の信号をCPU基板63に出力する。信号線31は、本体部33に形成された貫通孔33cを通って、アンプ基板71とCPU基板63とを電気的に接続している。
【0038】
図3は、本実施の形態の二酸化炭素分圧測定装置のCPU基板63が海水中の二酸化炭素の分圧pCO
2を演算する場合のフローである。
【0039】
まずステップST1で、バルブV2及びV4のみを開いた状態で内部液送液用ポンプP1を駆動し、純水用
容器7に貯留された純水を平衡器に通した内部液を本体部33の内部流路23に供給し、予め定めたn個(nは2以上の整数)の波長λ
1乃至λ
nの光をLEDユニット59により内部液に照射して、n個の波長λ
1乃至λ
nにおけるpH感応性の比色試薬を含まない溶液の光量(光の透過強度)I
0をそれぞれ測定する。
【0040】
次にステップST2で、バルブV1及びV4のみを開いた状態で内部液送液用ポンプP1を駆動し、試薬用シリンダ5に充填された試薬溶液を平衡器3に送液して、平衡器3の外側の海水と平衡器3の内側の試薬溶液を含む内部液との二酸化炭素分圧pCO
2を平衡化する。なお、平衡器3の外側の海水と平衡器3の内側の試薬溶液を含む内部液との二酸化炭素分圧pCO
2を平衡にするために、試薬溶液を含まない内部液を廃液用管路26から外部に排出した後、バルブV4を閉じてバルブV3を開いて試薬溶液を含む内部液を循環させてもよい。
【0041】
ステップST3で二酸化炭素分圧pCO
2が平衡化された試薬溶液を含む内部液をセルユニット9に送液し、ステップST4で二酸化炭素分圧pCO
2が平衡化された試薬溶液を含む内部液におけるn個の波長λ
1乃至λ
nの光量(光の透過強度)Iをそれぞれ測定する。ステップST5では、測定した光量I
0及び光量Iからn個の波長λ
1乃至λ
nのそれぞれについての吸光度を算出し、得られた吸光度から吸光度比RをステップST6で算出する。ステップST7では、吸光度比Rから試薬溶液を含む内部液のpHを算出する。
【0042】
ここで、光量I
0及び光量Iの測定から試薬溶液を含む内部液のpHの算出までを詳細に説明する。
【0043】
[水素イオン濃度[H
+]の測定]
内部液中に比色指示薬(仮に指示薬Iと称す)としてブロモチモールブルー等のスルホンフタレイン系pH指示薬が含有されていた場合、当該比色指示薬Iは、内部液中で以下の式(1)及び(2)で示される2段階の解離平衡が成り立つ。
【0044】
H
2I⇔HI
-+H
+・・・・・・(1)
HI
-⇔I
2-+H
+・・・・・・(2)
なお、スルホンフタレイン系pH指示薬としては他に例えば、ブロモクレゾールパープル、ブロモフェノールブルー、ブロモチモールブルー、メタクレゾールパープル、フェノールレッド、チモールブルー等を挙げることができる。
【0045】
ここで、指示薬H
2Iの解離定数をK
(H2I)とすると当該K
(H2I)は以下の式(3)で表すことができる。また、指示薬の2段階目のHI
-の解離定数をK
(HI)とすると当該K
(HI)は以下の式(4)で表すことができ、海水のpH(水素イオン濃度指数)は、式(4)より式(5)で表すことができる。なお[H
2I]は指示薬H
2Iにおける非解離形の濃度であり、[HI
-]は指示薬H
2Iにおける第1解離形の濃度であり、[I
2-]は指示薬H
2Iにおける第2解離形の濃度であり、[H
+]は水素イオン濃度である。
【0046】
K
(H2I)=([H
+]・[HI
-])/[H
2I]・・・・・・(3)
K
(HI)=([H
+]・[I
2-])/[HI
-]・・・・・・(4)
pH=pK
(HI)+log([I
2-]/[HI
-])・・・・・・(5)
ただし、pH=-log([H
+])、pK
(HI)=-log(K
(HI))である。
【0047】
ここで、波長λ
1における第1解離形(HI
-)及び第2解離形(I
2-)のモル吸光係数をそれぞれ
1ε
HI、
1ε
I-とし、波長λ
2における第1解離形(HI
-)及び第2解離形(I
2-)のモル吸光係数をそれぞれ
2ε
HI、
2ε
I-とする。そして、内部流路23の光照射部分23aの長さをLとすれば、波長λ
1及び波長λ
2における内部液の吸光度Abs
1およびAbs
2は、それぞれ以下の式(6)および式(7)で表すことができる。
【0048】
Abs
1=
1ε
I-・L・[I
2-]+
1ε
HI・L・[HI
-]・・・・・・(6)
Abs
2=
2ε
I-・L・[I
2-]+
2ε
HI・L・[HI
-]・・・・・・(7)
ここで、上記式(6)および上記式(7)において、波長λ
1及び波長λ
2における吸光度Abs
1およびAbs
2の比をR=Abs
1/Abs
2とし、モル吸光係数の比をそれぞれ、e
1(I)=
1ε
HI/
2ε
HI、e
2(I)=
1ε
I-/
2ε
HI、e
3(A)=
2ε
I-/
2ε
HIとすると、上記式(6)および式(7)は以下の式(8)で示すことができる。つまり、[HI
-]と[I
2-]との比は、2波長(ここでは波長λ
1及び波長λ
2)の吸光度およびモル吸光係数から算出することができる。
【0049】
([I
2-]/[HI
-])=(R-e
1(I))/(e
2(I)-R・e
3(I))・・・・・・(8)
よって、上記式(5)と上記式(8)より以下の式(9)を導くことができる。
【0050】
pH=pK
(HI)+log[(R-e
1(I))/(e
2(I)-R・e
3(I))]・・・・・・(9)
なお、Rの値は、比色試薬を含まない溶液の光量(光の透過強度)I
0と、比色試薬を含む溶液を含む内部液の光量(光の透過強度)Iを測定することにより、吸光度Abs=−log(I/I
0)を算出して求めることができる。
【0051】
以上より、[H
+]は、e
1(I)、e
2(I)、e
3(I)、K
(HI)をそれぞれパラメーターとする以下の式(10)で示すことができる。
【0052】
[H
+]=F[R、K
(I)、e
1(I)、e
2(I)、e
3(I)]・・・・・・(10)
なお、
λε
I-、
λε
HIはそれぞれ、pK
(HI)に対して、十分高いアルカリ性、もしくは十分低い酸性にすれば実験的に求めることができる。
【0053】
λε
I-=
λAbs
1(I
-)/([I
2-]・L)・・・・・・(11)
λε
HI=
λAbs
1(HI)/([HI
-]・L)・・・・・・(12)
このように、e
1(I)、e
2(I)、e
3(I) K
(HI)をあらかじめ求めておけば、Rを測定することにより内部液の水素イオン濃度[H
+]を求めることができる。
【0054】
[炭酸系の平衡]
海水の炭酸系の平衡については、DOE(1994)Handbook of methods for the analysis of the various parameter of the carbon dioxide system in sea water. Version 2, A.G.Dickson & C.Goyet, eds.ORNL/CDIAC-74に詳しいが、以下に簡単に説明する。
【0055】
二酸化炭素が水に溶ける((式13)及び(式14))と、炭酸水素イオンHCO
3-(aq)、炭酸イオンCO
32-(aq)が生成し、以下の式(15)及び式(16)に示すような平衡反応が成立する。
【0056】
CO
2(g)⇔CO
2(aq)・・・・・・(13)
CO
2(aq)+H
2O(l)⇔H
2CO
3(aq)・・・・・・(14)
H
2CO
3(aq)⇔H
+(aq)+HCO
3-(aq)・・・・・・(15)
HCO
3-(aq)⇔H
+(aq)+CO
32-(aq)・・・・・・(16)
なお、上記式(13)〜(16)において、H
2CO
3(aq)とCO
2(aq)とを区別して議論するのは難しいので、H
2CO
3(aq)とCO
2(aq)との合計をCO2
*(aq)として表現すると、以下の式(17)〜(18)になる。
【0057】
CO
2(g)⇔CO2
*(aq)・・・・・・(17)
CO2
*(aq)+H
2O(l)⇔H
+(aq)+HCO
3-(aq)・・・・・・(18)
なお、上記式(17)および(18)の平衡は、平衡定数を使うことにより以下の式(19)〜(21)で示すことができる。
【0058】
K
0=[CO2
*]/f
(CO2)・・・・・・(19)
K
1=[H
+][HCO
-]/[CO
2*]・・・・・・(20)
K
2=[H
+][CO
2-]/[HCO
-]・・・・・・(21)
ここで、f
(CO2)は、二酸化炭素のフガシティであり、二酸化炭素分圧との関係は、以下の式(22)で示すことができる。
【0059】
f
(CO2)=(x(CO
2)・exp(1/RT)∫(V
(CO2)-RT/p')dp'・・・・・・(22)
式(22)で示すように、二酸化炭素分圧pCO
2=(x(CO
2)・p)を測定すれば、気体の全圧と海水の塩分とから二酸化炭素のフガシティが計算できる。ここでx(CO
2)はCO
2のモル分率、pは気相の全圧とする。
【0060】
[内部液のpHからpCO
2の計算]
試薬溶液の水素イオン濃度[H
+]が求まれば、あらかじめ、試薬溶液の調製時に添加するナトリウムイオン濃度を調整しておく。試薬溶液の炭酸平衡についても、海水同様に平衡が成り立つが、平衡定数は海水と若干異なっているが、一般的に知られた値である。
【0061】
内部液について、陽イオンの和と陰イオンの和はイオンバランスから
[HCO
3-]+2[CO
32-]+[OH
-]+[HI
-]+2[I
2-]=[H
+]+[Na
+]・・・・・・(23)
が成り立ち、測定したRから[H
+]が計算される。
【0062】
ここで予め加えた色素の濃度ΣIとして、pH4以上では、[H
2I]≒0であり、ΣI=[HI
-]+[I
2-]と式(4)とから[HI
-]と[I
2-]はそれぞれ、
[HI
-]=(ΣI)[H
+]/([H
+]+K
(HI))・・・・・・(24)
[I
2-]=(ΣI)K
(HI)/([H
+]+K
(HI))・・・・・・(25)
となる。さらに水の解離は、
[OH
-]=Kw/[H
+]・・・・・・(26)
であり、式(20)及び式(21)より、
[HCO
3-]=[CO
2*]K
1/[H
+]・・・・・・(27)
[CO
32-]=([CO
2*]K
1/[H
+])K
2/[H
+]・・・・・・(28)
であるので、式(23)は、
[CO
2*]K
1/[H
+]+2([CO
2*]K
1/[H
+])K
2/[H
+]+Kw/[H
+]+(ΣI)[H
+]/([H
+]+K
(HI))+2(ΣI)K
(HI)/([H
+]+K
(HI))=[H
+]+ [Na
+]・・・・・・(29)
となる。式(29)の、(ΣI)に予め加えた指示薬濃度を、[Na
+]に予め加えたアルカリの濃度を、[H
+]にRから算出した濃度を、その他に解離定数を導入することで、[CO
2*]を計算することができる。
【0063】
求めた[CO
2*]により式(19)からf
(CO2)が計算される。求めたf
(CO2)と式(22)とにより、x(CO
2)を計算し、さらに気相(大気)の全圧(気圧)により、内部pCO
2(IN)を計算する。内部液のpCO
2(IN)と海水pCO
2(SEA)がガス透過膜を介して平衡に達していればpCO
2(IN)=pCO
2(SEA)が成り立つ。なお本実施の形態では、式(29)において[Na
+]を変えることで、全体の系をずらして、内部液のpH5.5〜6.0に調整している。
【0064】
次に、二酸化炭素が水に溶ける速度とpHとの関係を
図4を参照して簡単に説明する。
図4は、二酸化炭素が水に溶けたときの平衡状態を示す図である。CO
2が水和状態から炭酸になる反応、つまり状態(I)から状態(II)の反応が大変遅く、状態(II)から状態(III)はこれに比べては速い。また、H
2CO
3の濃度はCO
2に比べ0.3%以下であることが知られている。反応速度は、温度、pHによって大きく異なり、温度が低いと遅く、また、pHが中性付近は遅い。なお詳細については、Johnson K.S., Carbon dioxide hydration and dehydration kinetics in seawater, Limnol Oceanogr.,27(5),1982,849-855 を参照されたい。CO
2が水和状態から炭酸になる反応速度を、
1/τ=(k
+1 + k
-1[H
+] + k
+4 + k
-4[OH
-])・・・・・・(30)
を用いて計算する。
【0065】
図5は、pHの値と、CO
2が水和して炭酸平衡が63.2%に達するのに必要な時間とを示したグラフである。pHが5以下ならば応答は大変速いが、解離して、炭酸水素イオンになる量は減ってしまうので、pHをあまり変化させない。そのため、pH5〜pH6、好ましくはpH5.5〜pH6付近であると、応答速度及びpHの変化量とも良好であり、最適であることが予想される。
【0066】
図6は、内部液のナトリウム濃度を変えた時の二酸化炭素分圧を変えた時の内部液のpHをプロットしたグラフである。なお内部液のpHは、内部液の温度が25℃のものである。ナトリウムは、NaOH、NaHCO
3もしくはNa
2CO
3で添加されている。ナトリウム濃度が30μM以上の場合には、pHの値が6.0以上となってしまう。ナトリウム濃度が8μMの場合は、pHは5.8以下になるがxCO
2が高濃度になった時に出力をうまくとらえることができなかった。ナトリウム濃度15μMの時、xCO
2が高濃度の時にも変化をとらえることができたので、最適であった。
【0067】
図7は、本発明の第2の実施の形態の二酸化炭素分圧測定装置101の構成を概略的に示す図である。なお
図7には、
図1に示した実施の形態と同様の部分には、
図1に付した符号に100の数を加えた数の符号を付して詳細な説明を省略する。本実施の形態の平衡器103は、管状のガス透過膜からなる管状部材103aの外側に、ポリテトラフルオロエチレンから構成された内径6mmの中空円筒状の外側管状部材103eを備えた2重管構造を有しており、管状部材103aと外側管状部材103eとの間に海水流路103fを備えている。外側管状部材103eには、海水流路103fに海水を導入する海水導入路175と、海水流路103fに導入された海水を排出する海水排出路177とが接続されている。海水排出路177には、海中から海水を採取するための採取用ポンプP2が設けられている。採取用ポンプP2は、図示しないポンプ駆動装置を備えている。
【0068】
本実施の形態の二酸化炭素分圧測定装置101では、採取用ポンプP2の駆動を制御することにより、平衡器103の海水流路103fへの海水の流入の停止が可能となる。そのため、例えば二酸化炭素分圧が高い海域をAUVと共に通過した場合に、採取用ポンプP2の駆動を止めることにより、二酸化炭素分圧が高い海水を海水流路103fに滞留させることができる。そのため、滞留した海水と内部液との二酸化炭素分圧pCO
2を十分に平衡化させることができるので、より精度の高い二酸化炭素分圧を測定することができる。
【0069】
また、例えば二酸化炭素分圧測定装置101がAUVの内部に搭載される場合には、AUV内で海水が滞留してしまい、採取用ポンプP2を備えていないと、二酸化炭素分圧が高い海水が平衡器103の周囲に到達しないため、正しい二酸化炭素分圧を測定できない場合がある。しかしながら採取用ポンプP2を備えている場合には、二酸化炭素分圧が高い海水を積極的に海水流路103fに流入させることができるので、二酸化炭素分圧を精確に測定することができる。
【0070】
図8は、本発明の第3の実施の形態の二酸化炭素分圧測定装置201の構成を概略的に示す図であり、
図9は、第3の実施の形態の二酸化炭素分圧測定装置201の内部に構成される信号処理装置の構成の一部を示すブロック図である。なお
図8及び
図9には、
図1に示した実施の形態と同様の部分に、
図1に付した符号に200の数を加えた数の符号を付して詳細な説明を省略する。本実施の形態では、第2の実施の形態と同様に、平衡器203は、外側管状部材203eを備えた2重管構造を有しており、海水流路203fを備えている。また、二酸化炭素分圧測定装置201は、海水導入路275と、277と、採取用ポンプP2を備えている。本実施の形態では特に、試料水測定装置279を備えている。試料水測定装置279は、試料水のpHを測定するpH測定器281と、試料水の塩分を測定する塩分センサ283と、試料水の温度を測定する温度センサ285とを少なくとも備えている。試料水測定装置279は、光源ユニット225内のCPU基板263と電気的に接続されており、各種の測定結果をCPU基板263に出力する。CPU基板263は、採取用ポンプP2のポンプ駆動装置PDと電気的に接続されており、採取用ポンプP2の駆動を制御する制御信号をポンプ駆動装置PDに出力する。ポンプ駆動装置PDは、pH測定器281が予め定めたpH値以上のpH値を測定したときには、二酸化炭素分圧測定装置201での測定が完了するまで、採取用ポンプP2の駆動を停止する。CPU基板263は、記憶部287と、全アルカリ度演算部289と、二酸化炭素分圧推定部291とを備えている。
【0071】
ここで、海水の全炭酸濃度C
Tと全アルカリ度A
Tと上記炭酸アルカリ度A
Cとの関係について説明する。
【0072】
海水の全炭酸濃度C
Tは、以下の式(31)で定義される。
【0073】
C
T=[CO
2*]+[HCO
3-]+[CO
32-]・・・・・・(31)
さらに、海水の全アルカリ度A
Tは、以下の式(32)に示すように、プロトン供与体とプロトン受容体との差で定義される。なお、以下の式(32)で省略されているものについては無視できるほど小さい存在である。
【0074】
A
T=[HCO
3-]+2[CO
32-]+[B(OH)
4-]+[OH
-]+[HPO
42-]+2[PO
43-]+[SiO(OH)
3-]+[NH
3]+[HS
-]+・・・-[H
+]
F-[HSO
4-]-[HF]-[H
3PO
4]-・・・・・・(32)
また、炭酸アルカリ度A
Cは以下の式(33)で示すことができる。
【0075】
A
C=[HCO
3-]+2[CO
32-]・・・・・・(33)
ここで、上記全アルカリ度A
Tと上記炭酸アルカリ度A
Cとの関係は、以下の式(34)で示すことができる。なお、以下の式(34)で省略されているものについては無視できるほど小さい存在である。-
A
C=A
T-([B(OH)
4-]+[OH
-]+[HPO
42-]+2[PO
43-]+[SiO(OH)
3-]+[NH
3]+[HS
-]+・・・-[H
+]F-[HSO
4-]-[HF]-[H
3PO
4]-)・・・・・・(34)
ここで、([B(OH)
4-]+[OH
-]+[HPO
42-]+2[PO
43-]+[SiO(OH)
3-]+[NH
3]+[HS
-]+・・・-[H
+]F-[HSO
4-]-[HF]-[H
3PO
4]-)については、塩分から推定することができる。
【0076】
そして塩分とA
TからA
Cを計算することができる。(20)、(21)、(33)より、
[HCO
3-]=[CO
2*]K
1/[H
+]・・・・・・(35)
[CO
32-]=([CO
2*]K
1/[H
+])K
2/[H
+]・・・・・・(36)
[CO
2*]=A
C[H
+]
^2/( K
1[H
+]+2 K
2)・・・・・・(37)
と表すことができる。
【0077】
次に全アルカリ度について説明する。塩分(S=35)で規格化した時の全アルカリ度(NA
T=A
T*35/S)は、表層の外洋水で2300〜2350μmol/kgであり、大西洋で約2300μmol/kg、太平洋で約2350μmol/kg付近であることが知られている。深層水の場合、これより高い場合が多く2450μmol/kgに達することがある。当然、沿岸水や、サンゴ礁のように石灰化が起こるような海域では変化する。A
Tは、塩分とNA
Tとから概算する方法が知られている。海域によって、NA
Tが大きく変化しないところならば、NA
Tから概算したA
Tにより式(34)でA
Cを計算する。そして測定したpHを使用して、式(33)から[CO
2*]を計算し、式(19)からf(CO
2)を計算し、式(22)からx(CO
2)を計算し、気相(大気)の全圧(気圧)からpCO
2を計算する。
【0078】
具体的なNATは、例えば
図8に示すように各海洋の海域に応じた式等から算出する。(出典:Millero,F.J.,Lee,K.,Roche,M.,1998. Distribution of alkalinity in the surface water of the major ocean. Mar.Chem. 60, 111-130)。
【0079】
本実施の形態の記憶部287には、
図8に示すNA
Tの算出式が記憶されている。全アルカリ度演算部289は、塩分センサ283の測定結果と、温度センサ285の測定結果と、記憶部293に記憶された算出式とに基づいて全アルカリ度を演算して二酸化炭素分圧推定部291に出力する。二酸化炭素分圧推定部291は、全アルカリ度と、pH測定器281が測定した海水のpHとに基づいて、海水の二酸化炭素分圧の予測値を演算する。演算した二酸化炭素分圧の情報は、海水のpHの情報とともに、ポンプ駆動装置PDに出力される。ポンプ駆動装置PDは、海水のpHの情報と演算した二酸化炭素分圧の情報とに基づいてポンプP2を駆動する。
【0080】
図11は、pHと全アルカリ度から二酸化炭素の分圧pCO
2を推定してポンプの駆動を制御する場合のフローである。まずステップST11で、pH測定器281、塩分センサ283及び試料水の温度を測定する温度センサ285が、海水のpH、塩分及び温度pHを測定する。ステップST12で測定した海水の塩分及び温度と、記憶部293に記憶された算出式とに基づいて全アルカリ度演算部289がNA
Tを算出する。全アルカリ度演算部289は次にステップST13で、NA
TからA
Tを演算する。ステップST14では、二酸化炭素分圧推定部291が炭酸アルカリ度A
Cを演算する。二酸化炭素分圧推定部291は次にステップST15で、ステップST11で測定した海水のpHと演算した炭酸アルカリ度A
CとからpCO
2の予測値を算出する。さらにステップST16で、pCO
2の予測値と現在のpCO
2の値とから採取用ポンプP2の駆動を制御する制御信号を生成し、ポンプ駆動装置PDに送信する。ポンプ駆動装置PDは、制御信号に基づいて採取用ポンプP2の駆動を制御する。
【0081】
上記実施の形態では、深海中の二酸化炭素分圧を測定しているが、海中の任意の場所に配置して二酸化炭素分圧を測定させてもよいのは勿論である。また、湖等の淡水や汽水中の二酸化炭素分圧の測定に利用できるのは勿論である。
【0082】
また上記実施の形態では、比色試薬としてBCPを利用しているが、他のpH感応性の比色試薬を使用してもよい。また、pH感応性の比色試薬以外の試薬溶液を使用してもよい。
【0083】
さらに上記実施の形態では、内部流路の形状をクランクとしているが、U字型、H字型等の他の形状としてもよい。