(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す側面図であり、
図2は、その平面図である。
この基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円形の基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置である。基板処理装置1は、基板Wを水平に保持して当該基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線L1まわりに回転させるスピンチャック2(基板保持手段)と、スピンチャック2に保持された基板Wに処理液を供給する処理液供給機構3(処理液供給手段)とを含む。スピンチャック2は、図示しない隔壁によって区画された処理室4内に収容されている。
【0015】
スピンチャック2は、回転軸線L1に沿って鉛直に延びる筒状の回転軸5と、回転軸5の上端に水平に取り付けられた円盤状のスピンベース6と、このスピンベース6上に配置された複数の保持ベース7と、回転軸5を回転軸線L1まわりに回転させるスピンモータ8(チャック回転駆動機構)とを含む。スピンチャック2は、基板Wを水平方向に挟んで当該基板Wを水平に保持する挟持式のチャックである。
【0016】
この実施形態では、4つの保持ベース7が、スピンベース6の上面周縁部において基板Wの外周形状に対応する円周に沿って適当な間隔をあけて配置されている。なお、保持ベースは3つ以上配置されていればよく、たとえば、6つの保持ベースがスピンベース6上に配置されていてもよい。
スピンチャック2は、各保持ベース7に支持された複数の保持ピン9を基板Wの周端面に当接させることにより、基板Wを水平方向に挟み込んで保持することができる。これにより、基板Wが、スピンベース6の上面から上方に間隔を開けた状態で水平に保持される。スピンチャック2は、スピンベース6上に水平支持ピン10を有している。スピンチャック2と基板搬送ロボット(図示せず)との間で基板Wを受け渡しするときは、水平支持ピン10が基板Wの下面に接して、当該基板Wを受け渡し高さで支持する。基板Wを回転させて処理するときには、保持ピン9を基板Wの周端面に当接させることにより、基板Wを水平支持ピン10の上方に離間させて、受け渡し高さよりも高い処理高さで基板Wが保持される。基板Wが処理高さで保持された状態で、スピンモータ8の駆動力が回転軸5に入力されることにより、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線L1まわりに基板Wが回転する。
【0017】
処理液供給機構3は、スピンチャック2に保持された基板Wの上面に処理液を供給する上面処理液供給機構11を含む。上面処理液供給機構11は、薬液ノズル12と、第1薬液供給配管13と、第1薬液バルブ14とを含む。さらに、上面処理液供給機構11は、リンス液ノズル15と、第1リンス液供給配管16と、第1リンス液バルブ17とを含む。第1薬液供給配管13は、薬液ノズル12に接続されている。第1薬液バルブ14は、第1薬液供給配管13に介装されている。また、第1リンス液供給配管16は、リンス液ノズル15に接続されている。また、第1リンス液バルブ17は、第1リンス液供給配管16に介装されている。
【0018】
第1薬液バルブ14が開かれると、第1薬液供給配管13から薬液ノズル12に薬液が供給される。また、第1薬液バルブ14が閉じられると、第1薬液供給配管13から、薬液ノズル12への薬液の供給が停止される。薬液ノズル12から吐出された薬液は、スピンチャック2に保持された基板Wの上面中央部に供給される。同様に、第1リンス液バルブ17が開かれると、第1リンス液供給配管16からリンス液ノズル15にリンス液が供給される。また、第1リンス液バルブ17が閉じられると、第1リンス液供給配管16からリンス液ノズル15へのリンス液の供給が停止される。リンス液ノズル15から吐出されたリンス液は、スピンチャック2に保持された基板Wの上面中央部に供給される。
【0019】
また、処理液供給機構3は、スピンチャック2に保持された基板Wの下面に処理液を供給する下面処理液供給機構18を含む。下面処理液供給機構18は、スピンチャック2に保持された基板Wの下面に向けて処理液を吐出する下面ノズル19と、回転軸5内で上下に延びる第1処理液供給配管20と、第1処理液供給配管20に連結された第2処理液供給配管21とを含む。さらに、下面処理液供給機構18は、第2処理液供給配管21に連結された第2薬液供給配管22および第2リンス液供給配管23と、第2薬液供給配管22に介装された第2薬液バルブ24と、第2リンス液供給配管23に介装された第2リンス液バルブ25とを含む。
【0020】
下面ノズル19は、スピンチャック2に保持された基板Wの下面の中央領域に対向する対向部26を含む。対向部26は、スピンベース6より上方に配置されている。対向部26は、たとえば、水平面に沿って配置された円盤状である。対向部26の中心付近には、スピンチャック2に保持された基板Wの下面中央に向けて処理液を吐出する処理液吐出口27が形成されている。
【0021】
第2薬液バルブ24が開かれると、第2処理液供給配管21を介して、第1処理液供給配管20から下面ノズル19に薬液が供給される。また、第2薬液バルブ24が閉じられると、下面ノズル19への薬液の供給が停止される。下面ノズル19に供給された薬液は、処理液吐出口27から上方に吐出される。これにより、スピンチャック2に保持された基板Wの下面中央部に薬液が供給される。同様に、第2リンス液バルブ25が開かれると、第2処理液供給配管21を介して、第1処理液供給配管20から下面ノズル19にリンス液が供給される。また、第2リンス液バルブ25が閉じられると、下面ノズル19へのリンス液の供給が停止される。下面ノズル19に供給されたリンス液は、処理液吐出口27から上方に吐出され、スピンチャック2に保持された基板Wの下面中央部に供給される。
【0022】
処理液供給機構3から基板Wに供給される薬液としては、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、BHF(Buffered Hydrogen Fluoride:バッファードフッ酸)、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(たとえばTMAH:テトラチメルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、界面活性剤、腐食防止剤のうちすくなくとも一つを含む液を例示することができる。また、処理液供給機構3から基板Wに供給されるリンス液としては、純水(脱イオン水)、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水や、希釈濃度(たとえば10〜100ppm程度)の塩酸水などを例示することができる。
【0023】
図3A、
図3Bおよび
図3Cは、保持ベース7およびこれに関連する構成を示す模式的な拡大上面図である。
図3Aでは、保持ベース7が保持位置にあって、基板Wが固定ピン28と可動ピン29とで保持されている状態が示されており、
図3Bでは、保持ベース7が解除位置にあって、基板Wが水平支持ピン10により支持されている状態が示されている。
図3Cでは、保持ベース7が保持位置と解除位置との間の中間位置にあるときの状態が示されている。
【0024】
保持ベース7上には、単一の固定ピン28と複数の可動ピン29とを含む複数の保持ピン9と、水平支持ピン10とが配置されている。この実施形態では、複数の保持ピン9は、単一の固定ピン28と二つの可動ピン29とを含む。保持ベース7は、この実施形態では、楕円形状に形成されており、鉛直方向に沿って下方に延びた回転軸30を楕円形状の長軸の一端部近傍に有している。この回転軸30は、保持ベース回動機構31(
図4Aおよび
図4B参照)に連結されている。
【0025】
保持ベース7は、保持ベース回動機構31により、回転軸30と共軸の鉛直な回動軸線L2まわりに回動変位させられる。具体的には、保持ベース7は、固定ピン28および可動ピン29を基板Wの周端面に当接させて当該基板を保持する保持位置(
図3Aの位置)と、固定ピン28および可動ピン29が基板Wの周端面から離間した解除位置(
図3Bの位置)との間で変位させられる。保持ベース7が解除位置にあるとき、基板Wは水平支持ピン10により下方から支持される。
【0026】
また、保持ベース7は、スピンチャック2の上面から上方に所定の間隔を開けて配置されている(
図4Aおよび
図4B参照)。これにより、保持ベース7が回動変位させられる場合でも、保持ベース7とスピンチャック2との間には摺動部がないため、パーティクルの発生を抑制できる。
固定ピン28は、保持ベース7に対する相対位置が固定された固定当接部32を有している。保持ベース7が保持位置にあるときには、固定当接部32が基板Wの周端面に当接する(
図3A参照)。一方、保持ベース7が解除位置にあるときには、固定当接部32は基板Wの周端面から離間している(
図3B参照)。
【0027】
二つの可動ピン29は、基板Wの周方向に関して固定ピン28を挟んで配置されており、保持ベース7に対して相対移動可能な可動当接部33をそれぞれ有している。より具体的には、二つの可動当接部33は、基板Wの周方向に沿って、固定当接部32からそれぞれ所定の間隔を開けて配置されている。さらに具体的には、固定当接部32および二つの可動当接部33の全てが基板Wの周端面に当接した状態において、二つの可動当接部33の各当接位置は、固定当接部32の当接位置からそれぞれ所定距離以上離間している。
【0028】
可動当接部33は、解除位置よりも保持位置に近い中間位置(
図3C参照)から保持位置までの所定の当接範囲に保持ベース7があるときに、基板Wの周端面に当接する。保持ベース7が前記当接範囲よりも解除位置側にあるときには、可動当接部33は基板Wの周端面から離間している。したがって、保持ベース7が解除位置にあるときには、可動当接部33は基板Wの周端面から離間している。可動ピン29は、解除位置から保持位置へと向かって保持ベース7が変位するときに、固定ピン28に先行して基板Wに向かって変位するように配置されている。また、この実施形態では、二つの可動ピン29は、解除位置から保持位置へと向かって保持ベース7が変位する過程で、前記中間位置においてほぼ同時に基板Wの周端面に当接するように配置されている。したがって、
図3Cに示すように、保持ベース7が中間位置にあるとき、二つの可動ピン29の可動当接部33が基板Wの周端面に当接しており、固定ピン28の固定当接部32は基板Wの周端面から離間している。
【0029】
水平支持ピン10は、可動ピン29よりも基板Wの回転軸線L1に近い位置に配置されている。より具体的には、水平支持ピン10は、保持ベース7が解除位置にあるときでも、平面視において、基板Wの周端面の内側に位置している。したがって、保持ベース7が解除位置にあって、固定ピン28および可動ピン29が基板Wの周端面から離間しているときには、基板Wは水平支持ピン10により水平に支持される。水平支持ピン10は、回動軸線L2上に配置されていてもよい。この場合、水平支持ピン10が回動中心となるため、水平支持ピン10の基板Wに対する位置は固定されている。したがって、保持ベース7が回動変位するとき、水平支持ピン10と基板Wの相対位置が不変に保たれるので、水平支持ピン10による基板Wの支持位置が変化せず、それらの間の擦れが発生しない。また、この場合、固定ピン28および可動ピン29は水平支持ピン10を回動中心として、回動変位させられることになる。
【0030】
この実施形態では、スピンベース6に備えられた全ての保持ベース7が同様に構成されている。したがって、基板Wを保持して回転すべきときには、全ての保持ベース7が保持位置に配置されることによって、基板Wの周端面は全ての保持ベース7にそれぞれ備えられた固定ピン28および可動ピン29により保持される。また、基板搬送ロボット(図示せず)とスピンチャック2との間で基板Wを受け渡しするときには、全ての保持ベース7が解除位置に配置されることによって、基板Wの周縁部の下面が、全ての保持ベース7にそれぞれ備えられた水平支持ピン10に当接し、それらの水平支持ピン10によって基板Wが下方から支持される。
【0031】
図4Aおよび
図4Bは、保持ベース7および固定ピン28の構成および動作を示す模式的な拡大側面図である。
図4Aでは、保持ベース7が解除位置にあって、基板Wが水平支持ピン10により水平に支持されている状態が示されており、
図4Bでは、保持ベース7が保持位置にあって、基板Wが固定ピン28により水平に保持されている状態が示されている。
【0032】
保持ベース回動機構31は、保持ベース7に設けられた回転軸30に連結されている。保持ベース回動機構31は、たとえば、スピンチャック2内に収容されている。保持ベース回動機構31の駆動力が保持ベース7の回転軸30に入力されることにより、保持ベース7は、固定ピン28および可動ピン29の各当接部32,33が基板Wの周端面に接触して基板Wが保持される保持位置(
図3Aおよび
図4B参照)と、各当接部32,33が基板Wの周端面から離れた解除位置(
図3Bおよび
図4A参照)との間で変位する。
【0033】
水平支持ピン10は、ほぼ半球状の頭部を有している。したがって、保持ベース7が解除位置にあるとき、水平支持ピン10は、基板Wの周縁部の下面に点接触する。これにより、基板Wは、下面側から水平支持ピン10により水平に支持される(
図4A参照)。
固定ピン28は、柱状に形成されており、基板Wの回転軸線L1に向かって水平方向に開いたV字状の固定当接部32を有している。したがって、保持ベース7が解除位置から保持位置に向かって回動させられると、水平支持ピン10上に載置された基板Wは、その周端面がV字状の固定当接部32の下側傾斜面32bによって案内されながら、受け渡し高さから処理高さへとせり上がる。そして、保持ベース7が保持位置に到達したとき、基板Wは、固定ピン28に形成された固定当接部32に入り込み、その周端部がV字状の固定当接部32の上側傾斜面32aと下側傾斜面32bとに挟まれることにより、水平に保持される(
図4B参照)。
【0034】
図5Aおよび
図5Bは、保持ベース7および可動ピン29の構成および動作を示す模式的な拡大側面図である。
図5Aおよび
図5Bにおいて、
図4Aおよび
図4Bに示す各部に相当する部分には、それらの各部に付した参照符号と同一の参照符号を付し、それらの部分については説明を省略する。
図5Aでは、保持ベース7が解除位置にあって、基板Wが水平支持ピン10により水平に支持されている状態が示されており、
図5Bでは、保持ベース7が保持位置にあって、基板Wが可動ピン29の可動当接部33により水平に保持されている状態が示されている。
【0035】
可動ピン29は、柱状に形成されており、基板Wの回転軸線L1に向かって水平方向に開いたV字状の可動当接部33を有している。
可動ピン29は、下方に延びた可動支持部35を一体的に有している。可動支持部35は、可動ピン29の下方において保持ベース7内に設けられた可動機構収容凹部34に挿入されている。可動機構収容凹部34には、付勢手段としての弾性部材37と、ストッパ38とを含む可動機構36が収容されている。可動機構収容凹部34は、
図5Aおよび
図5Bの例では、スピンベース6の回転半径方向(回転軸線L1に垂直な方向)に対向する一対の側面34a,34cと、それらの側面34a,34c間を結合する底面34bとにより区画されている。
図3A〜図3Cを参照して、可動機構収容凹部34は、スピンベース6の回転半径方向に延びるように形成されている。
【0036】
弾性部材37は、コイルばね、板ばねなどであってもよい。
図5Aおよび
図5Bには、弾性部材37の一例としてのコイルばねを示す。このコイルばねは、可動機構収容凹部34の外方側の側面34aと可動支持部35との間に配置された圧縮コイルばねである。これにより、可動支持部35は、基板Wの回転軸線L1側に向かう方向に付勢されている。また、可動機構収容凹部34の底面34bには、ストッパ38が突設されている。ストッパ38は、弾性部材37の付勢力に抗して、可動支持部35の回転軸線L1側への移動を規制する。したがって、可動支持部35は、外側の側面34aとストッパ38との間で変位可能であり、それに応じて、可動ピン29は、保持ベース7に対して相対移動可能である。
【0037】
保持ベース7が保持位置から解除位置に向かって変位するとき、可動支持部35は、可動機構収容凹部34の側面34cから一定距離だけ離間した位置で停止し、それによって基板Wの周端面から離間する。解除位置よりも保持位置に近い中間位置から保持位置までの当接範囲に保持ベース7があるときには、可動当接部33は、基板Wの周端面に当接している。このとき、可動ピン29(可動支持部35)は、基板Wから押圧されるので、弾性部材37を圧縮する。それにより、可動ピン29は、弾性部材37が発生する付勢力によって、基板Wの回転軸線L1側に付勢され、基板Wの周端面に押し付けられる。
【0038】
保持ベース7が解除位置から保持位置に向かって回動させられると、水平支持ピン10上に載置された基板Wは、その周端面がV字状の可動当接部33の下側傾斜面33bによって案内されながら、受け渡し高さから処理高さへとせり上がる。そして、保持ベース7が保持位置に到達したとき、基板Wは、可動当接部33に入り込み、その周端部がV字状の可動当接部33の上側傾斜面33aと下側傾斜面33bとに挟まれることにより、水平に保持される。
【0039】
図6は、基板処理装置1による処理の一例を示す工程図である。
処理対象の基板Wは、基板搬送ロボットからスピンチャック2に渡される(基板搬入工程)。このとき、スピンチャック2は回転停止状態に制御されており、全ての保持ベース7は解除位置にある。よって、基板Wは、保持ベース7上の水平支持ピン10に載置されて水平に支持されることになる。その後、基板搬送ロボットが退避し、保持ベース回動機構31は、保持ベース7を解除位置から保持位置へと回動変位させる。これにより、各保持ベース7の保持ピン9(固定ピン28および可動ピン29)が基板Wの周端面に当接し、基板Wは水平支持ピン10から上方へと離間して、複数の保持ベース7にそれぞれ設けられた保持ピン9によって挟持される。
【0040】
この状態で、スピンモータ8が駆動されることにより、スピンベース6が所定の液処理速度で回転され、それによって、基板Wが回転軸線L1まわりに回転する(基板回転工程)。さらに、薬液バルブ14,24が開かれることにより、薬液ノズル12および下面ノズル19から基板Wの上面および下面にそれぞれ薬液が供給される。供給された薬液は、遠心力によって基板Wの上面および下面の全域に拡がり、その化学的作用によって基板全面を処理する(薬液処理工程)。
【0041】
所定の薬液処理時間に渡って薬液を供給した後、薬液バルブ14,24が閉じられ、薬液の供給が停止される。代わって、リンス液バルブ17,25が開かれることによって、リンス液ノズル15および下面ノズル19から基板Wの上面および下面にそれぞれリンス液が供給される。供給されたリンス液は、遠心力によって基板Wの上面および下面の全域に拡がり、基板全面の薬液を置換して洗い流す(リンス工程)。
【0042】
所定のリンス処理時間に渡ってリンス液を供給した後、リンス液バルブ17,25が閉じられ、リンス液の供給が停止される。次いで、スピンベース6の回転速度が、液処理速度からそれよりも高速な乾燥速度まで加速される。これにより、基板Wの表面の液成分を遠心力によって振り切るスピンドライが実行される(乾燥工程)。
所定の乾燥処理時間にわたってスピンドライが実行された後、スピンモータ8が停止されて、スピンベース6の回転が停止される。その後、全ての保持ベース7が解除位置へと回動させられる。それによって、基板Wの挟持が解かれ、基板Wは保持ベース7の水平支持ピン10上に載置された状態となる。この状態で、基板搬送ロボットは、スピンチャック2から処理済みの基板Wを搬出する(基板搬出工程)。
【0043】
図7は、乾燥時間と、保持ピンの当接幅との背反を説明するためのグラフである。保持ベース7を保持位置に導いて平面視円形の保持ピン9を基板Wの周端面に当接させたときに、平面視において、保持ピン9の外形円は、基板Wの外形がなす円の一部(円弧)を切り取る。その円弧の長さ(より正確には当該円弧の両端を結ぶ弦の長さ)によって「当接幅」が定義される。
【0044】
図7のグラフを作成するに当たり、当接幅がそれぞれ6.0mm、5.5mm、2.3mmになるように形成された複数種類の保持ピンを用意した。各種類の保持ピンに関して、基板の周端面に沿って等間隔に設定した4箇所に1本ずつ配置された同種の4本の保持ピンで基板を保持するスピンチャック(比較例)を製作した。それぞれのスピンチャックを用いて、基板に処理液を供給する液処理を行い、その後にスピンドライ処理を行って、処理液の乾燥時間を調べた。乾燥時間とは、基板上に残留する処理液量が許容量まで減少するのに要する時間である。より具体的には、基板と保持ピンとの当接部位における残留処理液が目視では確認できなくなるまでの時間である。スピンドライ時の基板の回転数は2500rpmとした。
【0045】
測定の結果によると、当接幅が6.0mmの場合の乾燥時間は約80秒であり、当接幅が5.5mmの場合の乾燥時間は約60秒であり、当接幅が2.3mmの場合の乾燥時間は約20秒であった。
たとえば、標準乾燥時間(乾燥工程での最長許容時間)が25秒だとすると、当接幅は2.5mm以下としなければならない。ところが、保持ピンの径を小さくして当接幅を小さくすると、保持ピンの強度が問題となる。具体的には、当接幅が5.0mm以上(ピンの耐久性が確保できる領域)では保持ピンの耐久性を確保することができるが、当接幅2.5mm以下では保持ピンが十分な強度を有することができない。しかし、当接幅が5.0mm以上の領域では、保持ピンの周辺における処理液残りが顕著に表れ、乾燥時間が標準乾燥時間である25secを大きく超えている。
【0046】
結局、
図7に表れているように、25sec以下での乾燥可能領域とピン耐久性が確保できる領域とに重なり部分はなく、各保持位置に一つの保持ピンを配置した構成のスピンチャックでは、短時間の乾燥と保持ピンの十分な強度とを両立できない。
第1実施形態では、一つの保持ベース7には複数の保持ピン9(29,28)が間隔を開けて配置されており、これらの全部が基板Wの周端面に当接する。したがって、たとえば、それらの複数の保持ピン9(28,29)の各当接幅が2.5mm以下になるようにしながら、複数の保持ピン9(28,29)の当接幅の合計が5.0mm以上になるような設計が可能である。これにより、一つの保持ベース7に備えられた複数の保持ピン9(28,29)は、それら全体で、必要な強度を有することができる。そして、個々の保持ピン9(28,29)の当接幅が十分に小さいので、標準乾燥時間以下の乾燥時間で基板Wを十分に乾燥して処理液残りを解消できる。また、複数の保持ピン9(28,29)が間隔を開けて配置されているので、保持ピン9(28,29)が一体となって処理液を堰き止めるようなこともなく、遠心力による処理液のスムーズな排出を実現できる。このことも、乾燥時間の短縮および処理液置換効率の向上に寄与している。
【0047】
以上のように、この実施形態によれば、各保持ベース7に設けられた複数の保持ピン9は、一つの固定ピン28と複数の可動ピン29とを含むので、全部の保持ピン9を確実に基板Wの周端面に当接させた状態で基板Wを保持することができる。そのため、基板Wに加わる応力が分散するので、応力集中による基板Wへの悪影響や基板Wの破損を回避できる。しかも、保持ベース7に備えられた全ての保持ピン9を基板Wの周端面に確実に当接させることができるので、各保持ピン9は大きな強度を有している必要がない。そのため、それらを比較的小さく設計することができる。それにより、各保持ピン9の近傍における処理液置換効率が良好になり、処理液残りが生じたりすることを抑制または防止しながら基板Wを乾燥できる。したがって、品質の高い基板処理を実現できる。
【0048】
図8は、この発明の第2実施形態に係る基板処理装置41の保持ベースおよび可動ピンの構成を示す模式的な拡大側面図である。
図8において、
図4Aおよび
図4Bに示す各部に相当する部分には、それらの各部に付した参照符号と同一の参照符号を付し、それらの部分については説明を省略する。
第2実施形態に係る基板処理装置41では、可動ピン42が、保持ベース43上に固定されて支持されている。より具体的には、可動ピン42は、基板Wの周端面に当接する可動当接部44と、保持ベース43に固定された固定部45と、固定部45と可動当接部44とを結合する弾性結合部46とを一体的に有している。可動ピン42は、柱状に構成されている。
【0049】
固定部45は、保持ベース43に対して相対変位しないように固定されて支持されている。弾性結合部46は、可動ピン42の側面にスピンベース6の回転半径外方側から切り欠きを形成して構成されている。すなわち、弾性結合部46は、断面積を小さくすることによって、弾性変形するように構成されている。この弾性結合部46の上方に可動当接部44が結合されている。可動当接部44を基板Wの周端面に押し付けられると、弾性結合部46が弾性的に変形することによって、可動当接部44は固定部45に対して基板Wの回転軸線L1から離れる方向に相対的に変位する。このときは、弾性結合部46の変形量に応じて当該弾性結合部46が発生する復元力によって、可動当接部44が基板Wの周端面に向けて付勢される。すなわち、弾性結合部46は、可動当接部44を基板Wの周端面に向けて付勢する付勢手段としての役割を有する。
【0050】
この構成によれば、可動ピン42は、保持ベース43に対する相対位置が固定されているが、可動当接部44が保持ベース43に対して相対的に変位することができる。その結果、第1実施形態のような可動機構収容凹部34およびそれに収容される可動機構36を設けなくとも、より一層簡単な構成で、可動ピン42を構成することができる。これにより、簡単な構成で、固定ピン28および可動ピン42の両方を基板Wの周端面に確実に当接させることができる。この結果、基板処理装置1と同様の効果を達成することができる。
【0051】
図9は、この発明の第3実施形態に係る基板処理装置51の保持ベースの模式的な拡大上面図である。
図9において、
図3Aおよび
図3Bに示す各部に相当する部分には、それらの各部に付した参照符号と同一の参照符号を付し、それらの部分については説明を省略する。
第3実施形態に係る基板処理装置51では、保持ベース52を解除位置から保持位置まで変位させるときに、保持ベース52上に配置された二つの可動ピン53(53a,53b)の内の一方の可動ピン53が、他方の可動ピン53よりも基板Wの周端面に先に当接する位置に配置されている。
図9では、回動軸線L2に近い側の可動ピン53aが、回動軸線L2から遠い側の可動ピン53bよりも基板Wの周端面に先に当接する位置に配置されている。これにより、保持ベース52が解除位置から保持位置まで回動変位するときに、一方の可動ピン53aが基板Wの周端面に最初に当接し、次に他方の可動ピン53bが基板Wの周端面に当接し、最後に固定ピン28が基板Wの周端面に当接する。保持ベース52が保持位置から解除位置まで回動変位するときには、固定ピン28が基板Wの周端面から離間し、次に可動ピン53bが基板Wの周端面から離間し、最後に可動ピン53aが基板Wの周端面から離間する。このように、複数の可動ピン53b,53bが、順次、基板Wの周端面に対して当接/離間する構成とすることもできる。
【0052】
なお、
図9には、回動軸線L2に近い可動ピン53aが可動ピン53bよりも基板Wの周端面に先に当接するように配置された構成を示しているが、回動軸線L2から遠い側の可動ピン53bが近い側の可動ピン53aよりも基板Wの周端面に先に当接する配置としてもよい。
図10は、この発明の第4実施形態に係る基板処理装置61の保持ベースの模式的な拡大上面図である。
図10において、
図3Aおよび
図3Bに示す各部に相当する部分には、それらの各部に付した参照符号と同一の参照符号を付し、それらの部分については説明を省略する。
【0053】
第4実施形態に係る基板処理装置61では、単一の固定ピン62と一つの可動ピン63とが保持ベース64上に配置されている。このように、可動ピンは、一つだけとすることもできる。
[その他の実施形態]
この発明の実施形態の説明は以上であるが、この発明は、前述の第1〜第4実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0054】
たとえば、前述の第1実施形態では、単一の固定ピン28を跨ぐように二つの可動ピン29が配置されているが、一つの可動ピン29を挟むように、固定ピン28と他方の可動ピン29とが配置されていてもよい。すなわち、単一の固定ピン28に対して、基板Wの周方向に関する同じ側に複数の可動ピン29が配置されてもよい。また、可動ピン29は、3個以上配置されていてもよい。
【0055】
また、第1〜第4実施形態では、楕円形状の保持ベース7,43,52,64が用いられているが、楕円形以外の形状、たとえば、円形状や卵形状でもよい。
さらに、前述の実施形態では、保持ベースが回動変位する構成を説明したが、保持ベースがスピンベース6上で基板の周端面に対してスライド変位する構成としてもよい。
また、前述の実施形態では、円形の基板Wを例にとったが、角形の基板に対して処理を施す基板処理装置に対しても、この発明を同様に適用することができる。
【0056】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の変更を施すことが可能である。以下、
この明細書および図面から抽出される特徴の例を以下に示す。
項1:基板(W)を保持して処理液で処理する基板処理装置であって、基板が保持される保持位置と基板の保持が解除される解除位置との間で変位可能な保持ベース(7,43,52,64)と、前記保持ベースに対する相対位置が固定された固定当接部(32)を有し、前記保持ベースが前記保持位置にあるときに前記固定当接部が基板の周端面に当接し、前記保持ベースが前記解除位置にあるときに前記固定当接部が基板の周端面から離間するように前記保持ベースに支持された固定ピン(28)と、前記保持ベースに対して相対移動可能な可動当接部(33,44)を有し、前記解除位置よりも前記保持位置に近い中間位置から前記保持位置までの当接範囲に前記保持ベースがあるときに前記可動当接部が基板の周端面に当接し、前記保持ベースが解除位置にあるときに前記可動当接部が基板の周端面から離間するように前記保持ベースに支持された可動ピン(29,42,53,63)と、前記当接範囲において前記可動当接部を基板の周端面に向けて弾性的に付勢する付勢手段(37,46)とを含む、基板処理装置。
この構成によれば、保持ベースは、保持位置と解除位置との間で変位可能である。保持ベースには、固定ピンおよび可動ピンが支持されており、これらは、保持ベースが変位されると、それに伴って変位する。保持ベースが解除位置にあるとき、固定ピンの固定当接部および可動ピンの可動当接部は、いずれも基板の周端面から離間している。保持ベースが解除位置から保持位置まで変位するとき、中間位置で可動当接部が基板の周端面に当接し、保持位置で固定当接部が基板の周端面に当接する。中間位置から保持位置までの当接範囲では、付勢手段が可動当接部を基板の周端面に向けて弾性的に付勢する。
よって、保持ベースが保持位置に到達した状態では、固定ピンおよび可動ピンの両方が基板の周端面に確実に当接している。これにより、基板の周端面にかかる応力を分散できるので、大きな応力による基板への悪影響や基板の破損を回避できる。しかも、固定ピンおよび可動ピンの両方を基板の周端面に確実に当接させることができるので、固定ピンおよび可動ピンはそれぞれ大きな強度を有している必要がない。そのため、それらを比較的小さく設計することができる。これにより、基板を処理液で処理する場合であっても、固定ピンおよび可動ピンと基板との間において、処理液の置換効率が悪くなったり、処理液残りが生じたりすることを抑制または防止できる。したがって、品質の高い基板処理を実現できる。
項2:前記可動ピンが前記保持ベースに対して相対移動可能に支持されており、前記付勢手段が前記可動ピンと前記保持ベースとの間に配置された弾性部材(37)を含む、項1に記載の基板処理装置。
この構成によれば、弾性部材によって可動ピンを基板の周端面に向けて弾性的に付勢することにより、可動当接部を基板の周端面に押し付けることができる。したがって、簡単な構成で、固定ピンの固定当接部および可動ピンの可動当接部の両方を、確実に基板の周端面に当接させることができる。
項3:前記可動ピンが前記保持ベースに固定された固定部(45)を含み、前記付勢手段が、前記固定部と前記可動当接部とを相対変位可能に結合する弾性結合部材(46)を含む、項2に記載の基板処理装置(41)。
この構成によれば、可動ピンに組み込まれた弾性結合部材の働きにより、可動当接部は、保持ベースに対して相対的に変位できる。これにより、一層簡単な構成で、固定ピンの固定当接部および可動ピンの可動当接部両方を、基板の周端面に確実に当接させることができる。