(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
[1]ガス遮蔽用材料(I)
本発明のガス遮蔽用材料は、チタン酸アルミニウム系酸化物により構成されるものであって、このチタン酸アルミニウム系酸化物は、Al、Ti、Y及びOを含有する。具体的には、このチタン酸アルミニウム系酸化物は、チタン酸アルミニウム(Al
2TiO
5)にY
2Ti
2O
7が添加された複合酸化物であり、Al
2TiO
5相及びY
2Ti
2O
7相により構成される。
【0010】
上記チタン酸アルミニウム系酸化物に含有されるYの含有割合は、Y
2Ti
2O
7換算で、Al
2TiO
5及びY
2Ti
2O
7の合計を100モル%とした場合に、20モル%以下(通常、2モル%以上)であり、好ましくは5〜15モル%、更に好ましくは5〜10モル%である。
本発明においては、Y
2Ti
2O
7の含有割合が、上記の範囲となっていることにより、複合酸化物(チタン酸アルミニウム系酸化物)における粒界き裂のき裂長さを、Y
2Ti
2O
7による空隙のピン止め効果によって、Al
2TiO
5における粒界き裂のき裂長さよりも短くすることができる(
図1を参照)。更には、複合酸化物における粒界き裂の開口幅を、Al
2TiO
5における粒界き裂の開口幅よりも狭くすることができる(
図1参照)。そのため、耐熱衝撃性及び耐熱性を損なうことなく、優れたガス遮蔽性を得ることができる。尚、
図1における「AT」はAl
2TiO
5を示し、「YT」はY
2Ti
2O
7を示す。
但し、ここでいう「粒界き裂のき裂長さ」とは、1個のき裂(ひとつながりのき裂)の長さを意味する。
また、「粒界き裂の開口幅」とは、き裂の空間を形成している幅を意味する。
【0011】
また、チタン酸アルミニウム系酸化物全体を100質量%とした場合に、Al
2TiO
5及びY
2Ti
2O
7の合計は、80〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは90〜100質量%、更に好ましくは95〜100質量%である。
【0012】
[2]ガス遮蔽用材料(II)
本発明のガス遮蔽用材料は、チタン酸アルミニウム系酸化物により構成されるものであって、このチタン酸アルミニウム系酸化物は、Al、Ti、
Mg及びOを含有する。具体的には、このチタン酸アルミニウム系酸化物は、チタン酸アルミニウム(Al
2TiO
5)にMgTi
2O
5が添加された複合酸化物であり、Mg
xAl
2(1−x)Ti
(1+x)O
5相(但し、xは0.1以下である。)により構成される。
【0013】
上記チタン酸アルミニウム系酸化物に含有されるMgの含有割合は、MgTi
2O
5換算で、Al
2TiO
5及びMgTi
2O
5の合計を100モル%とした場合に、20モル%以下(通常、2モル%以上)であり、好ましくは5〜15モル%、更に好ましくは5〜10モル%である。
本発明においては、MgTi
2O
5の含有割合が、上記の範囲となっていることにより、熱膨張異方性が低減し、複合酸化物(チタン酸アルミニウム系酸化物)における粒界き裂の開口幅を、Al
2TiO
5における粒界き裂の開口幅よりも大幅に狭くすることができる(
図2参照)。そのため、耐熱衝撃性及び耐熱性を損なうことなく、優れたガス遮蔽性を得ることができる。尚、
図2における「AT」はAl
2TiO
5を示す。
【0014】
また、チタン酸アルミニウム系酸化物全体を100質量%とした場合に、Mg
xAl
2(1−x)Ti
(1+x)O
5は、80〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは90〜100質量%、更に好ましくは95〜100質量%である。
【0015】
[3]ガス遮蔽用材料(III)
本発明のガス遮蔽用材料は、チタン酸アルミニウム系酸化物により構成されるものであって、このチタン酸アルミニウム系酸化物は、Al、Ti、Y、Mg及びOを含有する。具体的には、このチタン酸アルミニウム系酸化物は、チタン酸アルミニウム(Al
2TiO
5)にY
2Ti
2O
7及びMgTi
2O
5が添加された複合酸化物であり、Mg
xAl
2(1−x)Ti
(1+x)O
5相(但し、xは0.1以下である。)及びY
2Ti
2O
7相により構成される。
【0016】
上記チタン酸アルミニウム系酸化物に含有されるY、Mgの各含有割合は、それぞれ、Y
2Ti
2O
7換算、MgTi
2O
5換算で、Al
2TiO
5、Y
2Ti
2O
7及びMgTi
2O
5の合計を100モル%とした場合に以下の通りである。
Y
2Ti
2O
7の含有割合は20モル%以下(通常、2モル%以上)であり、好ましくは5〜15モル%、更に好ましくは5〜10モル%である。
また、MgTi
2O
5の含有割合は20モル%以下(通常、2モル%以上)であり、好ましくは5〜15モル%、更に好ましくは5〜10モル%である。
本発明においては、Y
2Ti
2O
7、MgTi
2O
5の各含有割合が、それぞれ、上記の範囲となっていることにより、複合酸化物(チタン酸アルミニウム系酸化物)における粒界き裂のき裂長さを、Y
2Ti
2O
7による空隙のピン止め効果によって、Al
2TiO
5における粒界き裂のき裂長さよりも短くすることができる(
図3参照)。更には、Mgの固溶による熱膨張異方性の低減によって、複合酸化物における粒界き裂の開口幅を、Al
2TiO
5における粒界き裂の開口幅よりも大幅に狭くすることができる(
図3参照)。そのため、耐熱衝撃性及び耐熱性を損なうことなく、優れたガス遮蔽性を得ることができる。尚、
図1における「AT」はAl
2TiO
5を示し、「YT」はY
2Ti
2O
7を示す。
【0017】
また、チタン酸アルミニウム系酸化物全体を100質量%とした場合に、Mg
xAl
2(1−x)Ti
(1+x)O
5及びY
2Ti
2O
7の合計は、80〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは90〜100質量%、更に好ましくは95〜100質量%である。
【0018】
[4]各チタン酸アルミニウム系酸化物について
上述の各ガス遮蔽用材料を構成するチタン酸アルミニウム系酸化物の相対密度は、80〜98%であることが好ましく、より好ましくは85〜96%、更に好ましくは88〜94%である。
【0019】
また、上述の各ガス遮蔽用材料を構成するチタン酸アルミニウム系酸化物の平均クラスターサイズ(粒子長径の平均サイズ、D
max50)は、2〜15μmであ
り、より好ましくは2〜8μm、更に好ましくは2〜4μmである。このサイズが上記範囲である場合には、耐熱衝撃性及び耐熱性を損なうことなく、優れたガス遮蔽性を得ることができる。
尚、上記平均クラスターサイズ(D
max50)は、焼結体サンプルを表面研磨の上、走査型電子顕微鏡で組織を撮影し、撮像組織を構成している全ての粒子をスケッチして、粒径解析ソフトにて全粒子の長径データを取り組み、存在確率が50%に対応した長径から算出することができる。
【0020】
また、各チタン酸アルミニウム系酸化物の製造方法については特に限定されない。具体的には、例えば、Al、Ti、Y、Mg等の元素を含む原料粉末(例えば、酸化物粉末、窒化物粉末、炭化物粉末等)を選択的に用いて、所望形状の成形体を作製し、得られた成形体を焼成することにより製造することができる。そして、得られたチタン酸アルミニウム系酸化物を、切削加工等により所望形状に加工することによりガス遮蔽用材料を製造することができる。
また、上記原料粉末における酸化物粉末は、複合酸化物であってもよい。この複合酸化物を製造する方法は特に限定されず、例えば、錯体重合法、共沈法、ゾルゲル法及び固相法等の公知の合成法を用いて製造することができる。
尚、各チタン酸アルミニウム系酸化物の製造に用いられる粉末は、市販品であってもよい。
【0021】
また、上記成形体の成形方法は特に限定されず、例えば、ホットプレス、熱間静水圧成形(HIP)、冷間静水圧成形(CIP)等の公知の方法を用いることができる。焼成時の条件は特に限定されず、例えば、焼成温度は約800〜1400℃、焼成雰囲気は、大気雰囲気や、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気等とすることができる。
尚、焼結体の製造には、公知の焼結助剤等の添加剤を用いてもよい。
【0022】
[5]ガス遮蔽性の評価方法
本発明のガス遮蔽用材料におけるガス遮蔽性能は、例えば、次のように評価することができる。
ガス遮蔽用材料の一面側と他面側に、分圧の異なる腐食ガスを供給する。この際の、ガス遮蔽用材料の厚さ方向における腐食ガスの透過量の計測において、温度を変化させた場合の、その変化に対する透過量の依存性を評価する。そして、各々の温度における腐食ガスの透過係数を算出し、温度と単位粒界密度当たりの透過係数との相関を求め、その相関に基づいて、ガス遮蔽用材料のガス遮蔽性能を評価することができる。
【0023】
上記ガス遮蔽性の評価方法では、試験片を作製し、この試験片の一面側と他面側に、分圧の異なる腐食ガスを供給する。この腐食ガスは、ガス遮蔽用材料が高温で用いられるときに、例えば、この部材を酸化させるガスであり、酸素ガス、水蒸気等が挙げられる。
尚、高腐食ガス分圧領域では、低分圧側には、Arガス等の不活性ガスが供給され、高分圧側には不活性ガスと微量の酸素ガスとの混合ガスを供給するが、不活性ガス及び混合ガスのいずれにも微量の腐食ガスが含有されているため、「分圧の異なる腐食ガスを供給する」と表現する。
【0024】
そして、分圧が異なることにより、腐食ガスが高分圧P(II)側から低分圧P(I)側に透過するが、この透過量を、各々の腐食ガスに適したガスセンサ等により計測する。また、低分圧側で腐食ガスの分圧が平衡に達した時点の分圧に基づき、下記式(1)に従って、粒界密度で除した透過係数(単位粒界密度当たりの透過係数)を算出する。
PL/S
gb=C
p・Q・L/V
st・S・S
gb (1)
(PL;透過係数、S
gb;粒界密度、C
p;透過した腐食ガスの濃度、Q;腐食ガスの流量、V
st;理想気体モル体積、S;試験片の面積、L;試験片の厚さ)
尚、上記粒界密度(S
gb)は、試験後の試験片表面の総粒界長をSEMで測定することで算出することができる。
【0025】
更に、温度を変化させたときに、低分圧側で腐食ガスの分圧が平衡に達した時点の分圧に基づき、各々の平衡分圧において上記式(1)に従って、それぞれの単位粒界密度当たりの透過係数を算出する。
このようにして、温度と、単位粒界密度当たりの透過係数との相関を求め、絶対温度の逆数を横軸、単位粒界密度当たりの透過係数を縦軸とした両対数グラフを作成し、温度の変化に対する、単位粒界密度当たりの透過係数の依存性を評価し、単位粒界密度当たりの透過係数の絶対値によりガス遮蔽用材料のガス遮蔽性能を評価する。
【0026】
[6]用途について
本発明の各ガス遮蔽用材料は、上述のようにガス遮蔽性に優れているため、溶融金属に接触する物(溶融金属接触材)に用いられるものとすることができる。
上記溶融金属接触材の形状は特に限定されず、溶融金属に接触する物全体を構成していてもよいし、その物の一部を構成する部材であってもよい。具体的な溶融金属接触材としては、例えば、ストーク、樋、管路、溶湯搬送容器、ラドル、湯だまり等の鋳造用治工具等が挙げられる。
【0027】
また、上記溶融金属の種類は特に限定されないが、具体的には、例えば、アルミニウム、マグネシウム、銅、又はそれらの合金を主成分とする溶融金属を挙げることができる。
上記アルミニウム合金の種類は特に限定されず、一般的に、アルミニウム合金の鋳造プロセスにおいて用いられているものを挙げることができる。例えば、主成分であるアルミニウム(Al)と、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ケイ素(Si)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)及びスズ(Sn)等から選ばれる少なくも1種の金属との合金が挙げられる。
具体的には、一般用アルミニウム合金ダイカスト、特殊用アルミニウム合金ダイカスト等が挙げられる。一般用アルミニウム合金ダイカスト(JIS記号)としては、ADC10、ADC10Z、ADC12、ADC12Zが挙げられる。特殊用アルミニウム合金ダイカスト(JIS記号)としては、ADC1、ADC3、ADC5、ADC6、ADC14が挙げられる。
【0028】
上記マグネシウム合金の種類は特に限定されず、一般的に、マグネシウム合金の鋳造プロセスにおいて用いられているものを挙げることができる。例えば、主成分であるマグネシウム(Mg)と、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、ケイ素(Si)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)及び鉄(Fe)等から選ばれる少なくも1種の金属との合金が挙げられる。
具体的には、一般用マグネシウム合金ダイカスト、特殊用マグネシウム合金ダイカスト等が挙げられる。一般用マグネシウム合金ダイカスト(JIS記号)としては、MDC1B、MDC1Dが挙げられる。特殊用マグネシウム合金ダイカスト(JIS記号)としては、MDC2B、MDC3B、MDC4が挙げられる。
【0029】
上記銅合金の種類は特に限定されず、一般的に、銅合金の鋳造プロセスにおいて用いられているものを挙げることができる。例えば、主成分である銅(Cu)と、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)及びニッケル(Ni)等から選ばれる少なくも1種の金属との合金が挙げられる。
【0030】
また、本発明の各ガス遮蔽用材料は、上述の溶融金属接触材以外にも、熱交換器(過熱器)等の過熱水蒸気システムにおける配管等の部材として用いることができる。
このガス遮蔽用材料を過熱水蒸気システムにおける配管として用いた場合には、優れたガス遮蔽性により、管外表面からの大気の吸い込みを抑制することができ、過熱水蒸気中の酸素分圧の上昇を抑制することができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。ここで、部は、特記しない限り質量基準である。
【0032】
[1]Al
2TiO
5にY
2Ti
2O
7が添加された複合酸化物により構成されたガス遮蔽用材料の作製(実施例1)
(1−1)原料粉末の調製(Al
2TiO
5粉末の調製)
Al
2O
3粉末(大明化学工業社製、商品名「タイミクロン」、純度:99.99%、平均粒径:1.6μm)と、TiO
2粉末(石原産業社製、商品名「PT−401M」、純度:99.99%、平均粒径:0.07μm)とを、Al
2O
3及びTiO
2の合計を100モル%とした場合に、TiO
2が50モル%となる配合割合で、エタノールを加えてボールミル混合を24時間行った。次いで、75℃で乾燥した後、粉砕し、目開き100μmの篩いを通すことにより、混合粉末を調製した。
その後、混合粉末を、大気中において、5℃/分で1550℃まで昇温し、その温度を2時間保持することによって仮焼した。次いで、粉砕し、目開き100μmの篩いを通すことにより、Al
2TiO
5粉末を得た。
【0033】
(1−2)原料粉末の調製(Y
2Ti
2O
7粉末の調製)
チタニウムテトラ−iso−プロポキシド[Ti(O−iPr)
4]と、エチレングリコールと、無水クエン酸とを混合した。更に、無色透明になるまでビーカー内で混合して(50℃×1時間)、硝酸イットリウム・6水和物[Y(NO
3)
3・6H
2O]をビーカー内に追加し、無色透明になるまで混合した(50℃×1時間)。尚、各成分の配合割合はモル比[チタニウムテトラ−iso−プロポキシド:硝酸イットリウム・6水和物:エチレングリコール:無水クエン酸]で、0.2:0.2:4:1である。
その後、130℃×10時間の条件にて、エステル化反応させた後、マントルヒーターを用いて、350℃×5時間の条件にて熱分解した。次いで、得られた熱分解物をアルミナ鞘に移し、大気中(0.3L/分の酸素気流中)において、5℃/分で1300℃まで昇温し、その温度を1時間保持することによって焼成した。その後、粉砕し、目開き100μmの篩いを通すことにより、チタン酸イットリウム(Y
2Ti
2O
7)粉末を得た。
【0034】
(1−3)ガス遮蔽用材料の作製
上記Al
2TiO
5粉末及び上記Y
2Ti
2O
7粉末にエタノールを加えてボールミルにて96時間湿式混合してスラリーを得た[Al
2TiO
5:Y
2Ti
2O
7=95:5(モル比)]。次いで、得られたスラリーを乾燥した後、得られた混合粉末を目開き48μmの篩いに通した。
次いで、得られた混合粉末を、金型[寸法;φ36(mm)]を用いて40MPa(室温)の圧力で一軸加圧成形した後、冷間等方圧プレス(圧力:250MPa)を行い、成形体を得た。その後、大気炉を用いて大気中において、5℃/分で1500℃まで昇温し、その温度を4時間保持することによって焼成した。焼成後、25℃まで降温させることによって、実施例1のガス遮蔽用材料を得た。
そして、X線回折の結果、この焼結体は、Al
2TiO
5相とY
2Ti
2O
7相により構成されていることが確認できた。
また、この焼結体におけるYの含有割合は、Y
2Ti
2O
7換算で、Al
2TiO
5及びY
2Ti
2O
7の合計を100モル%とした場合に、5モル%である。更に、この焼結体の相対密度は96%であった。また、この焼結体における平均粒径(D
max50)は5.6μmであった。尚、この焼結体(実施例1)における粒度分布(長径)を
図4に示す。
【0035】
[2]Al
2TiO
5にY
2Ti
2O
7が添加された複合酸化物により構成されたガス遮蔽用材料の作製(実施例2)
上記(1−1)で得られたAl
2TiO
5粉末、及び上記(1−2)で得られたY
2Ti
2O
7粉末にエタノールを加えてボールミルにて96時間湿式混合してスラリーを得た[Al
2TiO
5:Y
2Ti
2O
7=95:5(モル比)]。次いで、得られたスラリーを乾燥した後、得られた混合粉末を目開き48μmの篩いに通した。
次いで、得られた混合粉末を、金型[寸法;φ36(mm)]を用いて40MPa(室温)の圧力で一軸加圧成形した後、冷間等方圧プレス(圧力:250MPa)を行い、成形体を得た。その後、大気炉を用いて大気中において、5℃/分で1500℃まで昇温し、その温度を2時間保持することによって焼成した。焼成後、25℃まで降温させることによって、実施例2のガス遮蔽用材料を得た。
そして、X線回折の結果、この焼結体は、Al
2TiO
5相とY
2Ti
2O
7相により構成されていることが確認できた。
また、この焼結体におけるYの含有割合は、Y
2Ti
2O
7換算で、Al
2TiO
5及びY
2Ti
2O
7の合計を100モル%とした場合に、5モル%である。更に、この焼結体の相対密度は96%であった。また、この焼結体における平均粒径(D
max50)は4.1μmであった。尚、この焼結体(実施例2)の粒度分布(長径)を
図5に示す。
【0036】
[3]Al
2TiO
5にMgTi
2O
5が添加された複合酸化物により構成されたガス遮蔽用材料の作製(実施例3)
(3−1)原料粉末の調製(Mg
xAl
2(1−x)Ti
(1+x)O
5粉末の調製)
Al
2O
3粉末(大明化学工業社製、商品名「タイミクロン」、純度:99.99%、平均粒径:1.6μm)と、TiO
2粉末(石原産業社製、商品名「PT−401M」、純度:99.99%、平均粒径:0.07μm)と、Mg化合物粉末[4MgCO
3・Mg(OH)
2・5H
2O粉末(関東化学社製)]を、Al
2O
3、TiO
2及びMg化合物(MgTi
2O
5換算)の合計を100モル%とした場合に、TiO
2が52.38モル%、MgTi
2O
5が4.76モル%となる配合割合で、エタノールを加えてボールミル混合を24時間行った。次いで、75℃で乾燥した後、粉砕し、目開き100μmの篩いを通すことにより、混合粉末を調製した。
その後、混合粉末を、大気中において、5℃/分で1550℃まで昇温し、その温度を2時間保持することによって仮焼した。次いで、粉砕し、目開き100μmの篩いを通すことにより、Mg
xAl
2(1−x)Ti
(1+x)O
5粉末を得た(尚、x;0.1)。
【0037】
(3−2)ガス遮蔽用材料の作製
上記Mg
xAl
2(1−x)Ti
(1+x)O
5粉末にエタノールを加えてボールミルにて96時間湿式混合してスラリーを得た。次いで、得られたスラリーを乾燥した後、得られた粉末を目開き48μmの篩いに通した。
次いで、得られた粉末を、金型[寸法;φ36(mm)]を用いて40MPa(室温)の圧力で一軸加圧成形した後、冷間等方圧プレス(圧力:250MPa)を行い、成形体を得た。その後、大気炉を用いて大気中において、5℃/分で1500℃まで昇温することによって焼成した。焼成後、25℃まで降温させることによって、実施例3のガス遮蔽用材料を得た。
そして、X線回折の結果、この焼結体は、Mg
xAl
2(1−x)Ti
(1+x)O
5相により構成されていることが確認できた。
また、この焼結体におけるMgの含有割合は、MgTi
2O
5換算で、Al
2TiO
5及びMgTi
2O
5の合計を100モル%とした場合に、10モル%である。更に、この焼結体の相対密度は93%であった。また、この焼結体における平均粒径(D
max50)は6.8μmであった。尚、この焼結体(実施例3)の粒度分布(長径)を
図6に示す。
【0038】
[4]Al
2TiO
5にY
2Ti
2O
7及びMgTi
2O
5が添加された複合酸化物により構成されたガス遮蔽用材料の作製(実施例4)
上記(3−1)で得られたMg
xAl
2(1−x)Ti
(1+x)O
5粉末、及び上記(1−2)で得られたY
2Ti
2O
7粉末にエタノールを加えてボールミルにて96時間湿式混合してスラリーを得た[Mg
xAl
2(1−x)Ti
(1+x)O
5:Y
2Ti
2O
7=95:5(モル比)]。次いで、得られたスラリーを乾燥した後、得られた混合粉末を目開き48μmの篩いに通した。
次いで、得られた混合粉末を、金型[寸法;φ36(mm)]を用いて40MPa(室温)の圧力で一軸加圧成形した後、冷間等方圧プレス(圧力:250MPa)を行い、成形体を得た。その後、大気炉を用いて大気中において、5℃/分で1500℃まで昇温し、その温度を1時間保持することによって焼成した。焼成後、25℃まで降温させることによって、実施例4のガス遮蔽用材料を得た。
そして、X線回折の結果、この焼結体は、Mg
xAl
2(1−x)Ti
(1+x)O
5相とY
2Ti
2O
7相により構成されていることが確認できた。
また、この焼結体におけるMg及びYの含有割合は、それぞれ、MgTi
2O
5換算、Y
2Ti
2O
7換算で、Al
2TiO
5、Y
2Ti
2O
7及びMgTi
2O
5の合計を100モル%とした場合に、それぞれ、10モル%である。更に、この焼結体の相対密度は97%であった。また、この焼結体における平均粒径(D
max50)は4.7μmであった。尚、この焼結体(実施例4)の粒度分布(長径)を
図7に示す。
【0039】
[5]Al
2TiO
5により構成された比較用のガス遮蔽用材料の作製(比較例1)
上記(1−1)で得られたAl
2TiO
5粉末にエタノールを加えてボールミルにて96時間湿式混合してスラリーを得た。次いで、得られたスラリーを乾燥した後、得られた粉末を目開き48μmの篩いに通した。
次いで、得られた粉末を、金型[寸法;φ36(mm)]を用いて40MPa(室温)の圧力で一軸加圧成形した後、冷間等方圧プレス(圧力:250MPa)を行い、成形体を得た。その後、大気炉を用いて大気中において、5℃/分で1500℃まで昇温し、その温度を3時間保持することによって焼成した。焼成後、25℃まで降温させることによって、比較例1のガス遮蔽用材料を得た。
そして、この焼結体の相対密度は90%であった。また、この焼結体における平均粒径(D
max50)は5.0μmであった。尚、この焼結体(比較例1)の粒度分布(長径)を
図8に示す。
【0040】
[6]性能評価及びその結果
(6−1)試験片の作製
実施例1〜4及び比較例1のガス遮蔽用材料を切削加工することにより、直径23.5mm、厚さ0.25mmの各試験片を作製した。尚、各試験片の表面は、両面ともに鏡面仕上げとした。
【0041】
(6−2)酸素透過特性の評価
図9に示すガス透過係数測定装置100を用いて、酸素透過特性の評価を行った。尚、
図9における矢印はガスの流れを示す。
この際、酸素分圧差の条件として、P
O2(I)=1Pa、P
O2(II)=10
5Paにおいて酸素透過特性を評価した。
具体的には、2本のアルミナ保護管の間にガラスシール2を介して試験片3を配置した。その後、試験片3の両側に100cc/分の流速で高純度Arガスを供給した。ここで、ガラスシール2と試験片3との間のガスリークの影響を防止するため、上下のアルミナ保護管11、12の外側に、更にアルミナ保護管(外側アルミナ保護管13)を配置し、外側と内側の保護管の間にも同一流速にて高純度Arガスを供給した。
【0042】
その後、上下のチャンバーの酸素分圧を、それぞれ酸素センサ(ジルコニアセンサ)61、62により計測しながら、電気炉8により900℃まで昇温させてガラスシール2によるシールを完成させ、次いで、計測温度まで降温させた。酸素分圧の計測は酸素センサ61、62を720℃に保持して実施した。その後、各々のセンサの出力が一定となった時点で、上下チャンバーの平衡酸素分圧を計測し、バックグラウンド値とした。
【0043】
次いで、上側チャンバーの供給ガスを高酸素分圧ガス(100体積%のO
2ガスであり、下側チャンバーに供給される高純度Arガスより更に酸素分圧が高い。)に切り替え、100cc/分の流速で供給し、上下チャンバーの酸素分圧の変化をモニターした。そして、それぞれのセンサの出力が一定となった時点で、下側チャンバーの平衡酸素分圧を計測し、バックグラウンド値との差分から、前記式(1)に基づいて酸素ガスに係る単位粒界密度当たりの透過係数PL/S
gbを算出した。
その後、電気炉8により温度を変化させ、各々の温度における下側チャンバーの平衡酸素分圧を計測し、バックグラウンド値との差から、前記式(1)に基づいて、それぞれの酸素ガスに係る単位粒界密度当たりの透過係数PL/S
gbを算出した。
【0044】
図10によれば、各測定温度において、Al
2TiO
5に何も添加されていない焼結体により構成される試験片(比較例1)の単位粒界密度当たりの透過係数よりも、Al
2TiO
5に、Y
2Ti
2O
7及びMgTi
2O
5の少なくとも一方が添加された焼結体からなる試験片(実施例1〜4)の単位粒界密度当たりの透過係数の方が低く、ガス遮蔽性に優れていることが分かった。
また、Y
2Ti
2O
7及びMgTi
2O
5の少なくとも一方が添加された焼結体からなる試験片(実施例1〜4)のなかでは、MgTi
2O
5が添加された焼結体からなる試験片(実施例3)、Y
2Ti
2O
7が添加された焼結体からなる試験片(実施例1〜2)、Y
2Ti
2O
7及びMgTi
2O
5の両者が添加された焼結体からなる試験片(実施例4)の順に、単位粒界密度当たりの透過係数が低くなっており、実施例4が最もガス遮蔽性に優れていることが分かった。