(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019536
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】高効率触媒、その調製および使用
(51)【国際特許分類】
C07K 7/06 20060101AFI20161020BHJP
C07K 7/08 20060101ALI20161020BHJP
C12N 9/08 20060101ALI20161020BHJP
G01N 33/58 20060101ALI20161020BHJP
C07D 487/22 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
C07K7/06ZNA
C07K7/08
C12N9/08
G01N33/58 Z
C07D487/22
【請求項の数】7
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2013-537148(P2013-537148)
(86)(22)【出願日】2011年11月4日
(65)【公表番号】特表2013-542949(P2013-542949A)
(43)【公表日】2013年11月28日
(86)【国際出願番号】EP2011069425
(87)【国際公開番号】WO2012059584
(87)【国際公開日】20120510
【審査請求日】2014年10月27日
(31)【優先権主張番号】MI2010A002059
(32)【優先日】2010年11月5日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】513110942
【氏名又は名称】インキディア エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】パヴォーネ、ヴィンチェンツォ
(72)【発明者】
【氏名】ナストリ、フラヴィア
(72)【発明者】
【氏名】マリオ、オルネッラ
(72)【発明者】
【氏名】ロンバルディ、アンジェリーナ
【審査官】
田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−172383(JP,A)
【文献】
Chem. Eur. J.,2003年,Vol.9,p.5643-5654
【文献】
Chem.Eur.J.,2011年 4月,Vol.17,p.4444-4453
【文献】
Langmuir,2010年11月11日,Vol.26,No.23,p.17831-17835
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
CAplus/REGISTRY/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(I):
【化1】
(I)
式中:
大環状部の窒素原子は、金属イオンMeと錯形成し、MeはFe、Mn、およびRuからなる群より選択されるもので、任意の可能な酸化状態にあり;
R1は、一般式(II)
の基であり:
【化2】
式中
n=2であり;
Aは、Ace−Asp、Ace−Asn、およびAce−Proからなる群より選択され;
X1は、Glu、Aada、Arg、hArg、およびLeuからなる群より選択され;
Y2は、GlnまたはGluであり;
Y3は、GlnまたはGluであり;
Y4は、Leuであり;
X5は、His、4Taz、および5Tazからなる群より選択され;
X6は、Ser、Thr、Asn、およびaThrからなる群より選択され;
Y7は、GlnまたはGluであり;
X8は、Orn、Lys、Dap、およびDabからなる群より選択され;
X9は、Glu、Aada、Arg、hArg、およびLeuからなる群より選択され;
Y10は、LysまたはOrnであり;
Bは、Ile−Thr−Leu−NH2であり;
Lは、COであり;
R2およびR7は、CH3であり;
R8は
、一般式(III)を有し、
【化3】
式中:
m=2であり;
Cは、Ace−Asp、Ace−Asn、またはAce−Proであり;
Z1は、Glu、Aada、Arg、およびhArgからなる群より選択され;
W2は、GlnまたはGluであり;
W3は、GlnまたはGluであり;
W4は、Leuであり;
Z5は、Ser、Gly、Ala、およびAibからなる群より選択され;
Z6は、Gln、Glu、およびSerからなる群より選択され;
W7は、GlnまたはGluであり;
Z8は、Orn、Lys、Dap、およびDabからなる群より選択され;
Z9は、Glu、Aada、Arg、およびhArgからなる群より選択され;
Dは、NH2であり;
Pは、COであり;
R3、R4、R5、およびR6は、互いに独立して、Hまたはメチルである、
である化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、式中:
大環状部の窒素原子は、金属イオンMeと錯形成し、MeはFe、Mn、およびRuからなる群より選択されるもので、任意の可能な酸化状態にあり;
R1は、一般式(II)の基であり:
式中
n=2であり;
Aは、Ace−Aspであり;
X1は、Glu、またはArg、またはLeuであり;
Y2は、GlnまたはGluであり;
Y3は、GlnまたはGluであり;
Y4は、Leuであり;
X5は、Hisであり;
X6は、Ser、Thr、Asn、およびThrからなる群より選択され;
Y7は、GlnまたはGluであり;
X8は、Lysであり;
X9は、Glu、またはArg、またはLeuであり;
Y10は、LysまたはOrnであり;
Bは、Ile−Thr−Leu−NH2であり;
Lは、COであり;
R2およびR7は、CH3であり;
R8は、一般式(III)を有し、式中:
m=2であり;
Cは、Ace−Aspであり;
Z1は、GluまたはArgであり;
W2は、GlnまたはGluであり;
W3は、GlnまたはGluであり;
W4は、Leuであり;
Z5は、Ser、Gly、Ala、およびAibからなる群より選択され;
Z6は、Gln、Glu、およびSerからなる群より選択され;
W7は、GlnまたはGluであり;
Z8は、Lysであり;
Z9は、GluまたはArgであり;
Dは、NH2であり;
Pは、COであり;
R3、R4、R5、およびR6は、互いに独立して、Hまたはメチルである、
である化合物。
【請求項3】
タンパク質、ペプチド、抗原、抗体もしくはその断片、受容体リガンド、ビオチン、ストレプトアビジン、酵素、酵素阻害剤、オリゴヌクレオチド、またはPNAと共有結合している、請求項1から2のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項4】
固相マトリクス、ナノ粒子、または電極に担持されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
エポキシ化反応、酸化反応、ヒドロキシル化反応、ニトロ化反応、または過酸化反応の触媒としての、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項6】
免疫診断キット、免疫組織化学検査、in situハイブリッド形成キット、ELISA、サザンブロット法、ノーザンブロット法、ウエスタンブロット法、細胞蛍光測定法、または電気化学的デバイスにおける、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項7】
以下:
汚染物質の分解;
医薬の代謝経路の特定;
を目的とする、
および
(i)水中の汚染物質、(ii)食品中の保存添加物、または(iii)体内の薬物または毒性物質の存在を特定するための化学的プローブとして使用すること
を目的とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポルフィリン様含窒素大環状分子でありペプチド官能基を有する合成化合物、ならびにそれらの調製および精密化学におけるそれらの使用に関する。本化合物は、例えば、触媒として、水溶液中または水−アルコール溶媒中での過酸化、酸化、水酸化、フェノールニトロ化、および不活性化合物エポキシ化などの反応に用いたり、水質管理および除染に用いたり、検査診断に用いたりすることができる。本化合物はまた、例えば、免疫組織化学検査、in situハイブリッド形成、ELISA測定、ならびにサザンブロット、ノーザンブロット、およびウエスタンブロット検査にも用いることができる。本発明による化合物は、そのままでも使用できるし、生体分子(抗体、抗原、酵素、受容体、核酸、ペプチド、およびタンパク質など)と共有会合した状態でも使用できる。本発明による化合物は、天然型および変異型血液タンパク質の低分子量(2000〜5000amu)類似体であり、従って大変有利なことに発現または抽出産物の代替物となることが見込まれるので、幅広い用途を有する。本発明による化合物はまた、固相マトリクスおよび/または常磁性および非常磁性ナノ粒子に支持された状態で用いることができる。
【背景技術】
【0002】
文献には、様々な組成を有し、様々な金属イオンをその中に取り込んだ窒素大環状分子が、非常に数多く見られる。応用性の観点から特に有望なものは、メソ−テトラアリール置換ポルフィリン類である。(”Metallo-porphyrins in catalytic oxidations” (1994) Sheldon R. A. ed. Dekker, NY; D. Mansuy, C. R. Chimie, 2007, 10, pp 392; Meunier, B. Chem. Rev. 1992, 92, pp. 1411)。応用の可能性があるにも関わらず、報告されている窒素大環状分子のほとんどは、いろいろな理由から工業的にまったく利用されてこなかった。理由としては、以下が挙げられる:1)水および生体液に対する溶解性の低さ;2)触媒反応課程における回転率および/または選択性の低さ;3)活性化するために強力な酸化試薬を使う必要があること。
【0003】
触媒特性を改善するために、β−ピロール位およびメソ位で置換された他のポリフィリンが、その後開発された(例えば、Bruice T. C. et al. PNAS, 1986, pp4646を参照)。しかしながら、これらの化合物も水溶性による制限が厳しく、実際には、水相/有機相界面での使用しかできない。
【0004】
メソ位を親水性基(アニオン型、カチオン型のいずれでも)で置換したポルフィリンは、水溶性であるが、工業用途での精密化学で有用となり得るほどの触媒効率は依然として有していない(Lindsay Smith, J. R. et al. J. Chem. Soc. Chem. Comm 1985, pp410; Bernadou, J. et al. Tetrahedron letters, 1988, pp6615)。
【0005】
最近になって、新規のペプチド−ポルフィリン結合体が報告された。これらの結合体は、ポルフィリンに結合したペプチド数に基づいて、モノ付加体とジ付加体に分類することができる。例えば、ミクロペルオキシダーゼは、シトクロムcのタンパク分解で得られるモノ付加ポルフィリンである。これらの化合物はまた、ペプチド要素のシステインとプロトポルフィリンIXのビニル基との間の2本のチオエーテル結合も特徴とする。タンパク分解に用いた酵素によって異なるミクロペルオキシダーゼが得られるが、その違いは、ペプチド鎖のアミノ酸の個数が違うことによって特徴づけられる(Aron, J.; Baldwin, D. A.; Marques, H. M.; Pratt, J. M.; Adams, P. A. J. Inorg. Biochem. 1986, 27, 227)。これらの化合物は、通称ミクロペルオキシダーゼMP8、MP9、MP10、およびMP11という(Munro, O. Q.; Marques, H. M. Inorg. Chem. 1996, 35, 3752; Adams, P. A. In: Peroxidases in Chemistry and Biology, 1993, Vol. II, Everse, J., Everse, K. E. & Grisham, M. B., eds, pp. 171-200. CRC Press, Boston, MA, USA; Marques, H. M. Dalton Trans. 2007, 4371)。
【0006】
今日最もよく特徴がわかっているミクロペルオキシダーゼのペプチド配列を以下に示す:
MP8:H−Cys−Ala−Gln−Cys−His−Thr−Val−Glu−OH(J. Aron, D. A. Baldwin, H. M. Marques, J. M. Pratt, P. A. Adams, J. Inorg. Biochem. 1986, 27, 227; D. A. Baldwin, H. M. Marques, J. M. Pratt, J. Inorg. Biochem. 1986, 27, 245; M. S. A. Hamza, J. M. Pratt, J. Chem. Soc, Dalton Trans. 1994, 1367);
MP9:H−Cys−Ala−Gln−Cys−His−Thr−Val−Glu−Lys−OH(Baldwin, D. A.; Mabuya, M. B.; Marques, H. M. S. Afr. J. Chem. 1987, 40, 103);MP11:H−Val−Gln−Lys−Cys−Ala−Gln−Cys−His−Thr−Val−Glu−OH(Carraway, A. D.; McCollum, M. G.; Peterson, J. Inorg. Chem. 1996, 35, 6885);MP'11:H−Lys−Thr−Arg−Cys−Glu−Leu−Cys−His−Thr−Val−Glu−OH(C. Dallacosta, E. Monzani, L. Casella, ChemBioChem. 5, 2004, 1692);Ac−MP8:Ac−Cys−Ala−Gln−Cys−His−Thr−Val−Glu−OH(Munro, O. Q.; Marques, H. M. Inorg. Chem. 1996, 35, 3752; Munro, O. Q.; Marques, H. M. Inorg. Chem. 1996, 35, 3768; Carraway, A. D.; McCollum, M. G.; Peterson, J. Inorg. Chem. 1996, 35, 6885);ビス−Ac−MP11:Ac−Val−Gln−Lys(Ac)−Cys−Ala−Gln−Cys−His−Thr−Val−Glu−OH(Carraway, A. D.; McCollum, M. G.; Peterson, J. Inorg. Chem. 1996, 35, 6885);Fmoc−Pro−MP8:Fmoc−Pro−Cys−Ala−Gln−Cys−His−Thr−Val−Glu−OH(Casella, L.; De Gioia, L.; Frontoso Silvestri, G.; Monzani, E.; Redaelli, C; Roncone, R.; Santagostini, L. J. Inorg. Biochem. 2000, 79, 31);Pro−MP8:H−Pro−Cys−Ala−Gln−Cys−His−Thr−Val−Glu−OH(Casella, L.; De Gioia, L.; Frontoso Silvestri, G.; Monzani, E.; Redaelli, C; Roncone, R.; Santagostini, L. J. Inorg. Biochem. 2000, 79, 31);Pro
2−MP8:H−Pro−Cys−Ala−Gln−Cys−His−Thr−Val−Glu−OH(Casella, L.; De Gioia, L.; Frontoso Silvestri, G.; Monzani, E.; Redaelli, C; Roncone, R.; Santagostini, L. J. Inorg. Biochem. 2000, 79, 31);MP9−22−(FmocAlaPro):H−Cys−Ala−Gln−Cys−His−Thr−Val−Glu−Lys(Fmoc−Ala−Pro)−OH(Casella, L.; De Gioia, L.; Frontoso Silvestri, G.; Monzani, E.; Redaelli, C; Roncone, R.; Santagostini, L. J. Inorg. Biochem. 2000, 79, 31)。
【0007】
ミクロペルオキシダーゼは、本発明が権利請求するペプチドとは構造が大きく異なっており、鉄の五配位構造を取るものの、その配列中にヒスチジン残基が1つしか含まれていないので、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)の触媒活性と比較して非常にささやかな触媒活性しか示さない。MP8、MP11、およびHRP酵素について、H
2O
2を用いたABTS酸化における速度パラメーターをいくつか例として示す。
【0008】
【表1】
【0009】
そのうえ、H
2O
2による有機物質の触媒的酸化中に触媒の迅速な分解が観測される。ミクロペルオキシダーゼの使用を制限する別の要因は、その水溶性の低さである。N−アセチル化ミクロペルオキシダーゼは、水溶性が上がり、酸化剤としてH
2O
2を用いた有機物質の酸化における触媒活性が向上しているが、それでも依然として分解されやすくささやかな触媒活性しか有さない。このため、ミクロペルオキシダーゼはいまだに工業的に利用されていない。
【0010】
ペプチド−ポルフィリンモノ付加結合体の他の例は、Casella L. et al.による報告(J. Chem. Soc. Dalton Trans. 1993, 2233)があり、最近ではNicolis S. et al.による総説(Comptes Rendus Chimie 10, 2007, 380-391)で再考されている。これらの分子も、本発明が権利請求する分子とは構造が大きく異なり、ミクロペルオキシダーゼと同じような制限(触媒活性の低さなど)を多数有しているため、いまだに工業的に利用されていない。
【0011】
新規のペプチド−ポルフィリンジ付加結合体は、Bensonにより報告されている(Benson, D. R.; Hart, B. R.; Zhu, X.; Doughty, M. B. J. Am. Chem. Soc. 1995, 117, 8502; Arnold, P. A.; Benson, D. R.; Brink, D. J.; Hendrich, M. P.; Jas, G. S.; Kennedy, M. L.; Petasis, D. T.; Wang, M. Inorg. Chem. 1997, 36, 5306; Wang, M; Kennedy, M. L.; Hart, B. R.; Benson, D. R. Chem. Commun. 1997, 883; Williamson, D. A.; Benson, D. R. Chem. Commun. 1998, 961; Liu, D.; Williamson, D. A.; Kennedy, M. L.; Williams, T. D.; Morton, M. M.; Benson, D. R. J. Am. Chem. Soc. 1999, 121, 11798; Liu, D.; Lee, K. -H.; Benson, D. R. Chem. Commun. 1999, 1205; Kennedy, M. L.; Silchenko, S.; Houndonougbo, N.; Gibney, B. R.; Dutton, P. L.; Rodgers, K. R.; Benson, D. R. J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 4635)。これらの化合物は、メソヘムのプロピオニル基に結合した2本の等価なペプチドを特徴とし、PSM(ペプチドサンドイッチ化メソヘム)と称される:PSM1、Ac−AKEAAHAEAAEAA−NH2;PSM2、Ac−AAEAAEAHAAEKA−NH2;PSM3、Ac−AKEAHAAEAAEAA−NH2;PSM4、Ac−AAEAAEAAHAEKA−NH2;PSM5、Ac−AAHAEAAEAKEAA−NH2;PSM6、Ac−AAEAAEAHAAEKA−NH2;PSM7、Ac−AAEFAEAHAAEKA−NH2;PSM8、Ac−AAEWAEAHAAEKA−NH2。
【0012】
ヒスチジンを含有する等価なペプチドがこれらの分子に存在することが、鉄の六配位構造と関係している。結果として、これらの分子は有機物質と結合する遠位を持たないので、H
2O
2による有機物質の酸化が関係する反応において非常に低い触媒活性しか示さない。このPSMシリーズの化合物は1つとしていまだに工業的に利用されていない。
【0013】
他のジ付加化合物としてミモクロムと称されるものがあるが、これらは以下に記載および再考されている:Nastri F. et al. Chem. Eur. J. 1997, 3, pp340; D'Auria G. et al. Chem. Eur. J. 1997, 3, pp350; Nastri F. et al. J. Biol. Inorg Chem. 1998, 3, pp671; Nastri F. et al. Biopolymers (Peptide Science)1998, pp5; Lombardi A. et al. Chem Rev. 2001, pp316; Lombardi A. et al. Inorg. Chim. Acta 1998, 275-276, pp301; Lombardi A. et al. Chem. Eur. J. 2003, 9, pp5643; Di Costanzo L. et al. J. Biol. Inorg. Chem. 2004, 9, pp1017; およびLombardi A. et al. Chem. Rev. 2001, 101, 3165-3189。
【0014】
ミモクロムI、II、およびIV(Nastri F. et al. Chem. Eur. J. 1997, 3, pp340; D'Auria G. et al. Chem. Eur. J. 1997, 3, pp350; Lombardi A. et al. Inorg. Chim. Acta 1998, 275-276, pp301; Lombardi A. et al. Chem. Eur. J. 2003, 9, pp5643; Di Costanzo L. et al. J. Biol. Inorg. Chem. 2004, 9, pp1017)も、ビス−ヒスチジン鉄配位構造を特徴とし、その結果Bensonが報告したPSMと同様な制限を示す。一方、ミモクロムIII、V、およびVI(Lombardi A. et al. Chem. Rev. 2001, 101, 3165-3189)は、五配位構造を示すが、しかしながら、2本のペプチド鎖(これらは長さが等しいものである)の特定のアミノ酸組成のため、これらの類縁体は、天然型ペルオキシダーゼの触媒活性以上の触媒活性を示すことはない。ミモクロムおよびHRP酵素について、H
2O
2を用いたABTS酸化における速度パラメーターをいくつか例として示す。
【0015】
【表2】
【0016】
このため、ミモクロムはいまだに工業的に利用されていない。
【0017】
さらに他の複雑な系はヘモアブザイム(Ricoux R., Raffy Q., Mahy J. P. C. R. Chimie 2007, 10, 684-702)である。これらは、分子量が非常に大きいという欠点を有し、本質的に変性および分解を受けるものである。ヘモアブザイムおよびHRP酵素について、H
2O
2を用いたABTS酸化における速度パラメーターをいくつか例として示す。
【0018】
【表3】
【0019】
他にもペプチド−ポルフィリン錯体系が、Sasaki T. and Kaiser E. T., JACS 1989, pp380; Akerfeldt K. S. et al. JACS, 1992, pp9656; Arnold, P. A. et al. JACS 1997, pp3181; Sakamoto S. et al. Chem Commun. 1997, pp1221; Kennedy, M. L. et al. JACS 2001, 123, pp4635に報告されており、最近ではReedy, C. J. and Gibney, B. R.(Chem. Rev. 2004, 104, pp. 617)に再考されている。これらの化合物は全て、六配位構造のヘム中心を有し、したがって、何かに応用できそうな触媒活性をまったく有していない。詳細には、ヘリクロム系(Sasaki T. and Kaiser E. T., JACS 1989, pp380)、テトラフィリン系(Akerfeldt K. S. et al. JACS, 1992, pp9656)、およびペプチド−メソヘム結合体(Arnold, P. A. et al. JACS 1997, pp3181; Sakamoto S. et al. Chem Commun. 1997, pp1221)は、らせん構造を誘導する目的でポルフィリン環を共有結合でペプチド配列に導入してある合成ペプチド−ポルフィリン結合体の例である。Choma C. T. et al. (JACS 1994, pp856)およびRobertson D. E. et al. (Nature 1994, pp425)により開発された系が、六配位型合成ヘムタンパク質の最初の例であるが、この系は「4ヘリックスバンドル」構造モチーフを取り入れたペプチド配列からなり、共有結合ではない方式で1つ以上のヘム基を系の内部に結合させることができる。
【0020】
またしても、上記の化合物のなかで、天然型ペルオキシダーゼの性質に匹敵するかこれより優れた性質を示すものは1つもない。
【0021】
したがって、今日までに提案されている構造による解決策は、以下の要求を同時に満足させるには不適切であることが明らかとなった:1)高い触媒効率;2)高い触媒回転率;3)水または水−アルコール溶媒系に対する適切な溶解性;4)触媒サイクル中の分解に対する耐性;5)低分子量かつ高比活性。西洋ワサビペルオキシダーゼは、pH=4.6で自身が有する最大活性と比較すると、中性pHでは触媒活性が落ちる。
【0022】
その他、天然型または変異型酵素(ペルオキシダーゼ、シトクロムP450、オキダーゼ、およびモノオキシゲナーゼなど)は、H
2O
2活性化を必要とする反応において要求される高い触媒活性を満足するものの、非常に高価であり、変性しやすく、したがって保存期間が限られたものになると思われ、それでいて第一にかなり巨大な分子サイズ(30,000〜200,000Da)を有することが挙げられるので、これらの産業利用は限られると思われる。例えば、HRPで機能化した常磁性ナノ粒子が、文献に報告されている(Xiaoyan Y. et al., Anal. Biochem. 2009, 393, pp56)。しかしながら、コーティングの度合いは相対的に低く、このことがナノ粒子に係留された触媒部位の個数の制限に関与しており、結果として触媒増幅も低い。
【0023】
多くの標準検査診断法(免疫組織化学検査、in situハイブリッド形成法、ELISA法、およびブロッティング法など)は、所望の生成物を検出する方法を利用するが、この方法は、検出しようとする分析物を含む検査試料を、その分析物と特異的に相互作用する能力がある認識分子とともにインキュベーションすることを含む。次いで、認識現象を信号(蛍光、比色、蛍光定量、電気化学、または放射性信号など)の発生により定量化する。多くの場合、分析物が低濃度で存在するときには、検査に1つ以上の増幅層を導入して信号を増幅する必要がでてくる。例えば、認識要素が一次抗体ならば、色素原の変換を触媒する酵素で機能化した二次抗体を加えることができる。その結果、各認識要素について、高純度の色素原がある一定の時間で産生される。
【0024】
ELISA検査では、西洋ワサビペルオキシダーゼ分子を3個まで導入して機能化した抗体が一般に用いられる。このように置換度が比較的低く決まってしまうのは、主にペルオキシダーゼの分子サイズ(約45000Da)によるものであり、したがって、置換度をもっと上げることが望ましいにも関わらず、そのような抗体を得ることができない。発色がELISA検査板に結合させた抗体数だけでなく分子認識を増幅する酵素の分子数にも依存するという事実から見ると、この態様は特に関連性が高い。そのうえ、小分子(ペプチド、抗原、オリゴヌクレオチド、PNA、受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、および酵素阻害剤)は、超巨大分子(天然型または変異型酵素など)に結合させると、標的分子を認識する能力を失ってしまう。
【0025】
したがって、今日、免疫組織化学検査、in situハイブリッド形成法、ELISA検査、ならびにサザンブロット、ノーザンブロット、およびウエスタンブロット検査に提案されている天然型または変異型酵素は、以下の要求を同時に満足させるのに適切であるとは言い切れないことが明らかとなった:
1)非常に高い感度;2)高い安定性;3)使用の汎用性および簡便さ。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】”Metallo-porphyrins in catalytic oxidations” (1994) Sheldon R. A. ed. Dekker, NY
【非特許文献2】D. Mansuy, C. R. Chimie, 2007, 10, pp 392
【非特許文献3】Meunier, B. Chem. Rev. 1992, 92, pp. 1411
【非特許文献4】Bruice T. C. et al. PNAS, 1986, pp4646
【非特許文献5】Lindsay Smith, J. R. et al. J. Chem. Soc. Chem. Comm 1985, pp410
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【非特許文献43】Choma C. T. et al., JACS 1994, pp856
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【非特許文献45】Xiaoyan Y. et al., Anal. Biochem. 2009, 393, pp56
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、新規クラスの低分子量(2000〜5000Da)ペプチド−ポルフィリン結合体に関する。この結合体は、これまでに一度も記載されたことのない特定のアミノ酸組成により、高い触媒効率という生体模倣した性質を保証する。本発明による化合物は、単独で用いることも、所望の巨大分子(モノクローナルおよびポリクローナル抗体、抗体断片、抗原、受容体、受容体アゴニストおよびアンタゴニスト、ビオチン、酵素、酵素阻害剤、核酸、PNA、ペプチド、ならびにタンパク質など)と共有会合させて用いることもできる。本発明による化合物は、固相マトリクスおよび/または常磁性および非常磁性ナノ粒子に支持させて用いることもできる。
【0028】
本発明による化合物は、以下の一般式(I)を有する:
【0029】
【化1】
【0030】
(I)
【0031】
式中:
大環状部の窒素原子は、金属イオンMeと錯形成し、MeはFe、Mn、およびRuからなる群より選択されるもので、任意の可能な酸化状態にあり;
R1は、一般式(II)の基であり:
【0032】
【化2】
【0033】
式中:
n=1、または2、または3であり;
Aは、Suc、またはAce、またはAce−Asp、またはAce−Asn、またはAce−Pro、またはAce−Lys−Pro、またはAce−Orn−Proであり;
X1は、Glu、Aada、Arg、hArg、Leu、Lys、およびOrnからなる群より選択されるアミノ酸であり;
Y2は、Gln、Glu、Lys、およびOrnからなる群より選択されるアミノ酸であり;
Y3は、Gln、Glu、Lys、およびOrnからなる群より選択されるアミノ酸であり;
Y4は、Leuであり;
X5は、His、hCys、Met、4Taz、および5Tazからなる群より選択されるアミノ酸であり;
X6は、Ser、Thr、Asn、Gln、aThr、Glu、Lys、およびOrnからなる群より選択されるアミノ酸であり;
Y7は、Gln、Glu、Lys、およびOrnからなる群より選択されるアミノ酸であり;
X8は、Glu、Aada、Orn、Lys、Dap、およびDabからなる群より選択される、アミド結合を形成するのに適した官能基を側鎖に有するアミノ酸であり;
X9は、Glu、Aada、Arg、hArg、Leu、Lys、およびOrnからなる群より選択されるアミノ酸であり;
Y10は、Gln、Glu、Lys、およびOrnからなる群より選択されるアミノ酸であり;
Bは、NH2、またはIle−NH2、またはIle−Thr−NH2、またはIle−Thr−Leu−NH2、またはIle−Thr−Leu−Lys−NH2、またはIle−Thr−Leu−Orn−NH2であり;
Lは、X8の側鎖上の官能基がアミンの場合はCO、X8の側鎖上の官能基がカルボキシルの場合はNHであり;
R2およびR7は、同一であるか異なっていて、HまたはCH3であり;
置換基R3、R4、R5、R6、およびR8のうちの1つは、式Q−(CH
2)s−を有し、式中、s=1、または2、または3であり、Qは、NH
2CO、またはCH
3CONH、またはHOOC、またはCH
3OOCであるか、あるいは置換基R3、R4、R5、R6、およびR8のうちの1つは、一般式(III)の基であり:
【0034】
【化3】
【0035】
式中:
m=1、または2、または3であり;
Cは、Suc、またはAce、またはAce−Asp、またはAce−Asn、またはAce−Pro、またはAce−Lys−Pro、またはAce−Orn−Proであり;
Z1は、Glu、Aada、Arg、hArg、Leu、Lys、およびOrnからなる群より選択されるアミノ酸であり;
W2は、Gln、Glu、Lys、およびOrnからなる群より選択されるアミノ酸であり;
W3は、Gln、Glu、Lys、およびOrnからなる群より選択されるアミノ酸であり;
W4は、Leuであり;
Z5は、Ser、Gly、Ala、およびAibからなる群より選択されるアミノ酸であり;
Z6は、Gln、Glu、Lys、Orn、Ser、Thr、Asn、およびaThrからなる群より選択されるアミノ酸であり;
W7は、Gln、Glu、Lys、およびOrnからなる群より選択されるアミノ酸であり;
Z8は、Glu、Aada、Orn、Lys、Dap、およびDabからなる群より選択される、アミド結合を形成するのに適した官能基を側鎖に有するアミノ酸であり;
Z9は、Glu、Aada、Orn、Lys、Arg、hArg、およびLeuからなる群より選択されるアミノ酸であり;
Dは、NH2、またはLys−NH2、またはOrn−NH2であり;
Pは、Z8の側鎖上の官能基がアミンの場合はCO、Z8の側鎖上の官能基がカルボキシルの場合はNHであり、
式(III)ではない残りの置換基R3、R4、R5、R6、およびR8は、同一であるか異なっていて、H、メチル、エチル、およびビニルから選択される。
【0036】
以下の表に、化合物中の一般式(II)および(III)による配列の組み合わせをいくつか示す。表中、1つの行にある各セルは、その配列の所定の位置において可能な選択肢を表す。
【0037】
一般式(II)
【0038】
【表4】
【0039】
一般式(III)
【0040】
【表5】
【0041】
本発明による化合物で好適なものは、一般式(I)の式中が以下のとおりのものである:
大環状部の窒素原子は、金属イオンMeと錯形成し、MeはFe、Mn、およびRuからなる群より選択されるもので、任意の可能な酸化状態にあり;
R1は、一般式(II)の基であり:
式中
n=2または3であり;
Aは、Suc、またはAce、またはAce−Asp、またはAce−Asn、またはAce−Proであり;
X1は、Glu、Aada、Arg、hArg、およびLeuからなる群より選択されるアミノ酸であり;
Y2は、GlnまたはGluであり;
Y3は、GlnまたはGluであり;
Y4は、Leuであり;
X5は、His、hCys、Met、4Taz、および5Tazからなる群より選択されるアミノ酸であり;
X6は、Ser、Thr、Asn、Gln、aThr、およびGluからなる群より選択されるアミノ酸であり;
Y7は、GlnまたはGluであり;
X8は、Glu、Aada、Orn、Lys、Dap、およびDabからなる群より選択される、アミド結合を形成するのに適した官能基を側鎖に有するアミノ酸であり;
X9は、Glu、Aada、Arg、hArg、およびLeuからなる群より選択されるアミノ酸であり;
Y10は、LysまたはOrnであり;
Bは、NH2、またはIle−NH2、またはIle−Thr−NH2、またはIle−Thr−Leu−NH2であり;
Lは、X8の側鎖上の官能基がアミンの場合はCO、X8の側鎖上の官能基がカルボキシルの場合はNHであり;
R2およびR7は、同一であるか異なっていて、HまたはCH3であり;
置換基R3、R4、R5、R6、およびR8のうちの1つは、式Q−(CH
2)s−を有し、式中、s=2または3であり、Qは、NH
2CO、またはCH
3CONH、またはHOOC、またはCH
3OOCであるか、あるいは置換基R3、R4、R5、R6、およびR8のうちの1つは、一般式(III)の基であり:
式中
m=2または3であり;
Cは、Suc、Ace、Ace−Asp、Ace−Asn、またはAce−Proであり;
Z1は、Glu、Aada、Arg、hArg、およびLeuからなる群より選択されるアミノ酸であり;
W2は、GlnまたはGluであり;
W3は、GlnまたはGluであり;
W4は、Leuであり;
Z5は、Ser、Gly、Ala、およびAibからなる群より選択されるアミノ酸であり;
Z6は、Gln、Glu、Ser、Thr、Asn、およびaThrからなる群より選択されるアミノ酸であり;
W7は、GlnまたはGluであり;
Z8は、Glu、Aada、Orn、Lys、Dap、およびDabからなる群より選択される、アミド結合を形成するのに適した官能基を側鎖に有するアミノ酸であり;
Z9は、Glu、Aada、Orn、hArg、およびLeuからなる群より選択されるアミノ酸であり;
Dは、NH2であり;
Pは、Z8の側鎖上の官能基がアミンの場合はCO、Z8の側鎖上の官能基がカルボキシルの場合はNHであり;
式(III)ではない残りの置換基R3、R4、R5、R6、およびR8は、同一であるか異なっていて、H、メチル、エチル、およびビニルから選択される。
【0042】
以下の表に、好適な化合物中の一般式(II)および(III)による配列の組み合わせをいくつか示す。表中、1つの行にある各セルは、その配列の所定の位置において可能な選択肢を表す。
【0043】
一般式(II)
【0044】
【表6】
【0045】
一般式(III)
【0046】
【表7】
【0047】
本発明による化合物でより好適なものは、一般式(I)の式中が以下のとおりのものである:
大環状部の窒素原子は、金属イオンMeと錯形成し、MeはFe、Mn、およびRuからなる群より選択されるもので、任意の可能な酸化状態にあり;
R1は、一般式(II)の基であり:
式中
n=2であり;
Aは、Ace−Asp、またはAce−Asn、またはAce−Proであり;
X1は、Glu、Aada、Arg、hArg、およびLeuからなる群より選択され;
Y2は、GlnまたはGluであり;
Y3は、GlnまたはGluであり;
Y4は、Leuであり;
X5は、His、4Taz、および5Tazからなる群より選択されるアミノ酸であり;
X6は、Ser、Thr、Asn、およびaThrからなる群より選択されるアミノ酸であり;
Y7は、GlnまたはGluであり;
X8は、Orn、Lys、Dap、およびDabからなる群より選択されるアミノ酸であり;
X9は、Glu、Aada、Arg、hArg、およびLeuからなる群より選択されるアミノ酸であり;
Y10は、LysまたはOrnであり;
Bは、Ile−Thr−Leu−NH2であり;
Lは、COであり;
R2およびR7は、CH
3であり;
R8は、式Q−(CH
2)s−を有し、式中、s=2であり、Qは、NH
2CO、またはCH
3CONH、またはHOOC、またはCH
3OOCであるか、あるいはR8は、一般式(III)を有し、式中:
m=2であり;
Cは、Ace−Asp、またはAce−Asn、またはAce−Proであり;
Z1は、Glu、Aada、Arg、およびhArgからなる群より選択されるアミノ酸であり;
W2は、GlnまたはGluであり;
W3は、GlnまたはGluであり;
W4は、Leuであり;
Z5は、Ser、Gly、Ala、およびAibからなる群より選択されるアミノ酸であり;
Z6は、Gln、Glu、およびSerからなる群より選択されるアミノ酸であり;
W7は、GlnまたはGluであり;
Z8は、Orn、Lys、Dap、およびDabからなる群より選択されるアミノ酸であり;
Z9は、Glu、Aada、Arg、およびhArgからなる群より選択されるアミノ酸であり;
Dは、NH2であり;
Pは、COであり;
R3、R4、R5、およびR6は、互いに同一であるか異なっていて、Hまたはメチルである。
【0048】
以下の表に、より好適な化合物中の一般式(II)および(III)による配列の組み合わせをいくつか示す。表中、1つの行にある各セルは、その配列の所定の位置において可能な選択肢を表す:
【0049】
一般式(II)
【0050】
【表8】
【0051】
一般式(III)
【0052】
【表9】
【0053】
本発明による化合物でさらにより好適なものは、一般式(I)の式中が以下のとおりのものである:
大環状部の窒素原子は、金属イオンMeと錯形成し、MeはFe、Mn、およびRuからなる群より選択されるもので、任意の可能な酸化状態にあり;
R1は、一般式(II)の基であり:
式中
n=2であり;
Aは、Ace−Aspであり;
XIは、Glu、またはArg、またはLeuであり;
Y2は、GlnまたはGluであり;
Y3は、GlnまたはGluであり;
Y4は、Leuであり;
X5は、Hisであり;
X6は、Ser、Thr、Asn、およびaThrからなる群より選択されるアミノ酸であり;
Y7は、GlnまたはGluであり;
X8は、Lysであり;
X9は、Glu、またはArg、またはLeuであり;
Y10は、LysまたはOrnであり;
Bは、Ile−Thr−Leu−NH2であり;
Lは、COであり;
R2およびR7は、CH3であり;
R8は、式Q−(CH
2)s−を有し、式中、s=2であり、Qは、NH
2CO、またはCH
3CONH、またはHOOC、またはCH
3OOCであるか、あるいはR8は、一般式(III)を有し、式中:
m=2であり;
Cは、Ace−Aspであり;
Z1は、GluまたはArgであり;
W2は、GlnまたはGluであり;
W3は、GlnまたはGluであり;
W4は、Leuであり;
Z5は、Ser、Gly、Ala、およびAibからなる群より選択されるアミノ酸であり;
Z6は、Gln、Glu、およびSerからなる群より選択されるアミノ酸であり;
W7は、Gln、またはGlu、またはAibであり;
Z8は、Lysであり;
Z9は、GluまたはArgであり;
Dは、NH2であり;
Pは、COであり;
R3、R4、R5、およびR6は、互いに同一であるか異なっていて、Hまたはメチルである。
【0054】
以下の表に、さらにより好適な化合物中の一般式(II)および(III)による配列の組み合わせのいくつかを示す。表中、1つの行にある各セルは、その配列の所定の位置において可能な選択肢を表す。
【0055】
一般式(II)
【0056】
【表10】
【0057】
一般式(III)
【0058】
【表11】
【0059】
一般式(I)の化合物は、適した対イオンと組み合わせて用いることもできるが、ただしそれらは特定の用途に対応しているものとする。
【0060】
本発明が権利請求する分子のような低分子量化合物についての、本明細書中以下に記載されるまったくもって新しい類のない性質は、選ばれた構造的解決策に由来する。以下の構造的特徴を有するペプチド−ポルフィリンジ付加体を、ここに初めて報告するとともに権利請求する:
a)長さの異なる2本のペプチド;一方のペプチド鎖は10〜16個のアミノ酸残基を有し、他方は、9〜12個のアミノ酸残基を有する;b)ポルフィリンとの共有会合がこれまでに報告されたことのない、長さの等しい、すなわち10個または11個または12個のアミノ酸残基を有する2本のペプチド。以下の構造的特徴を有するペプチド−ポルフィリンモノ付加体も、ここに初めて報告するとともに権利請求する:
a)ペプチド鎖は、10〜16個のアミノ酸残基を有する;b)ペプチド配列は、ポルフィリンとの共有会合がこれまでに報告されていない。
【0061】
驚いたことに、これらの構造的解決策は全て、それらの様々な構成要素の多くが親水性ではなかったとしても、良好な水溶性(>mM)を本発明が権利請求する化合物に付与する。この特徴は、特に重要である。なぜならこの特徴により、本発明が権利請求する分子を水溶液および水−アルコール溶液の両方で使用することが可能になり、その結果これまでに報告された大多数の他の修飾ポルフィリンが持つ利用上の問題が排除されるからである。
【0062】
そのうえ、今日までに報告されているプロセスとは異なり、本発明が権利請求する化合物を触媒に用いて不活性分子(H
2O
2、O
2、またはNOなど)を活性化する場合、その高い回転数と触媒効率は、天然型または変異型血液タンパク質のもの以上である。この特徴は低コストで工業的に利用するための必須要素である。記載の化合物は、実施例13にさらにより詳細に記載されるとおり、非常に高い比活性を示す。記載の化合物は、使用する触媒1グラムあたり、毎分数キログラムの基質を変換することができる。
【0063】
本発明が権利請求する化合物のいくつかについて、酸化剤としてH
2O
2を用いたABTS酸化における比活性値を以下にまとめる。
【0064】
【表12】
【0065】
そのうえ、本発明による化合物は、その化学的性質により、生体分子と共有結合して機能化することを、非常に簡単で経済的で汎用的なものにし、そして何よりその分子サイズの小ささにより、非常に高い置換度で、生体巨大分子(モノクローナルおよびポリクローナル抗体、抗体断片、抗原、受容体、受容体アゴニストおよびアンタゴニスト、ビオチン、酵素、酵素阻害剤、核酸、PNA、ペプチド、ならびにタンパク質など)を、その性質を変えることなく、本発明が権利請求する分子で置換することができ、それと同時に、存在する触媒量を増やすことができる。したがって、化学的、電気化学的、または分光学的プローブを、高い効率で認識現象を増幅する特徴を持たせながら、標的巨大分子の標的とすることができる。
【0066】
そのうえ、本発明が権利請求する分子を固相マトリクスまたはナノ粒子に支持させる場合、高いコーティング度合いの支持体を、文献で既知のコーティング法を用いて得ることができる。コーティングの度合いは、天然型または変異型酵素系を用いて達成される度合いより高く、10倍にもなり得る。
【0067】
したがって、本発明が権利請求する化合物は、以下のように用いることができる:1)純粋な酸化剤(H
2O
2、O
2)を用いた脂肪族および芳香族炭化水素のヒドロキシル化反応の触媒として;2)純粋な酸化剤(H
2O
2、O
2)を用いた脂肪族および芳香族オレフィンのエポキシ化反応の触媒として;3)純粋な酸化剤(H
2O
2、O
2)を用いた脂肪族および芳香族炭化水素の酸化反応の触媒として;4)純粋な酸化剤(H
2O
2、O
2)を用いた脂肪族および芳香族炭化水素の過酸化反応の触媒として;5)フェノールニトロ化触媒として;6)汚染物質の分解;7)リグニンの分解;8)水中の汚染物質を特定するプローブとして;9)食品中の保存料を特定するプローブとして;10)体内の薬物および毒性産物の濃度を特定するプローブとして;11)医薬の代謝経路を特定するin vitro診断;12)体液中の医薬および毒性産物の濃度の特定;13)免疫診断;14)免疫組織化学検査;15)in situハイブリッド形成;16)ELISA検査;17)サザンブロット、ノーザンブロット、およびウエスタンブロット検査;18)細胞蛍光測定;19)電気化学的デバイス。
【0068】
そのうえ、本発明による化合物は、合成および精製が容易であり、しかも低分子量であるため、発現または抽出により得られる血液タンパク質よりも低いコストで大規模に得ることができる。提案される合成手順は、主に、確立された固相ペプチド合成法に基づいており、Fmoc化学反応に代表されるような保護基を用いた合成が好ましい。本発明が権利請求する生成物の合成に必要な窒素大環状分子の多くは、市販されているか、でなければ文献に記載される方法の1つで合成することができる(Wijesekera T. P. & Dolphin D. in “Metalloporphyrins in catalytic oxidations” 1994, ed. Sheldon R. A., Dekker N. Y.)。
【0069】
本発明が関係する式(I)の化合物は、文献で既知の様々な手法により合成することができる。こうした手法として、固相ペプチド合成法、溶液ペプチド合成法、有機化学合成法、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。選択される合成スキームは、合成される特定分子の組成に明らかに依存する。好ましくは、製造コストの低い、特に産業規模でコストの低い、固相の技法と従来の溶液法の適切な組み合わせに基づく合成法が用いられる。具体的には、そのような方法として以下が挙げられる。
【0070】
i)適切に活性化したN保護アミノ酸とアミノ酸またはC保護ペプチド鎖との連続カップリングによるペプチド鎖断片の溶液合成、この合成は、中間体の単離、および続いてこの断片のN末端およびC末端の選択的脱保護を伴い、所望のペプチドが得られるまでこれらのカップリングを行う。これらの段階に続いて、窒素大環状分子との結合に関係する基の選択的脱保護、および大環状分子との縮合を行う。側鎖の完全な脱保護が必要な場合は、この段階で行うことができる。
【0071】
ii)不溶性重合体支持体で行うペプチド鎖のC末端からN末端に向かっての固相合成、残基X8の側鎖の選択的脱保護、および必要な場合は、他の残基の側鎖は保護したままのペプチドの樹脂からの切断。これに続いて、文献で既知のアミド結合形成方法の1つを用いて、ペプチドを窒素大環状分子の官能基と縮合させる。このとき窒素大環状分子は、金属と錯形成しているかいないかのいずれかである。これに続いて、適切な捕捉剤の存在下、TFAで完全脱保護を行う。含窒素大環状分子にまだ金属が挿入されていなければ、随意に挿入する。
【0072】
以下の実施例により、本発明による化合物をさらに例示するが、これらは制限するものではない。
【実施例1】
【0073】
3,7,12,17−テトラメチルポルフィリン−2(18)−N
9ε−(Ace−Asp
1−Glu
2−Gln
3−Gln
4−Leu
5−His
6−Ser
7−Gln
8−Lys
9−Arg
10−Lys
11−Ile
12−Thr
13−Leu
14−NH
2)−18(2)−N
9ε−(Ace−Asp
1−Glu
2−Gln
3−Gln
4−Leu
5−Ser
6−Ser
7−Gln
8−Lys
9−Arg
10−NH
2)−ジ−プロピオンアミドの合成;この化合物は、一般式(I)の式中が以下のとおりのものである:
【0074】
大環状部の窒素原子はFe3+イオンに配位しており;R2およびR7はCH3であり;R4およびR6はHであり;R3およびR5はCH3であり;R1は一般式(II)を有し、式中n=2であり;AはAce−Aspであり、X1はGluであり;Y2はGlnであり;Y3はGlnであり;Y4はLeuであり;X5はHisであり;X6はSerであり;Y7はGlnであり;X8はLys(N,ε−プロピオンアミド)であり;X9はArgであり;Y10はLysであり;BはIle−Thr−Leu−NH2であり;LはCOであり;AはAce−Aspであり;R8は一般式(III)を有し、式中m=2であり;CはAce−Aspであり;Z1はGluであり;W2はGlnであり;W3はGlnであり;W4はLeuであり;Z5はSerであり;Z6はSerであり;W7はGlnであり;Z8はLys(N,ε−プロピオンアミド)であり;Z9はArgであり;DはNH2であり;PはCOである。
【0075】
3,7,12,17−テトラメチルポルフィリン−2(18)−N
9ε−(Ace−Asp
1−Glu
2−Gln
3−Gln
4−Leu
5−His
6−Ser
7−Gln
8−Lys
9−Arg
10−Lys
11−Ile
12−Thr
13−Leu
14−NH
2)−18(2)−N
9ε−Ace−Asp
1−Glu
2−Gln
3−Gln
4−Leu
5−Ser
6−Ser
7−Gln
8−Lys
9−Arg
10−NH
2)−ジ−プロピオンアミドの合成について異なる工程を以下に記載する。
【0076】
デカペプチド(Ace−Asp
1(OtBu)−Glu
2(OtBu)−Gln
3(Trt)−Gln
4(Trt)−Leu
5−Ser
6(tBu)−Ser
7(tBu)−Gln
8(Trt)−Lys
9−Arg
10(Pbf)−NH
2)(1)の合成
【0077】
Fmoc戦略を用いて、手動の固相ペプチド合成により、Sieberアミド樹脂上でペプチド(1)を合成した。Sieber樹脂とは、9−Fmoc−アミノキサンテン−3−イルオキシ−Merrifield樹脂(100〜200メッシュ、1%2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン含有、置換レベル:0.52mmolg
−1)であり、保護ペプチドアミドの合成における優れた支持体である。
【0078】
アミノ酸は、Fmoc−Asp(OtBu)−OH、Fmoc−Glu(OtBu)−OH、Fmoc−Gln(Trt)−OH、Fmoc−Leu−OH、Fmoc−Ser(tBu)−OH、Fmoc−Arg(Pbf)−OHとして挿入した。第9位のLys残基は、Fmoc−Lys(Mmt)−OHとして挿入した。メトキシトリチル保護基(Mmt)は、穏やかな酸性条件下(1%TFA含有DCMまたはAcOH/TFE/DCM=1:2:7(v/v))でリシンの側鎖から除去することができる保護基である。この挙動により、除去に95%にも上るTFAが必要な他の側鎖保護基の存在下、Mmt基を選択的に除去することができる。この基を選択的に除去することができるため、全体が保護されたペプチドを、Lys9側鎖の遊離ε−アミノ基を通じて、ポルフィリン大環状分子とカップリングすることができる。
【0079】
合成は、0.25mmol規模で行った。N−αFmocの脱保護は、20%ピペリジン/DMF(v/v)溶液を用いて達成した。各サイクルで、3分間および7分間の別々の2つの処理を用いた。
【0080】
各アミノ酸についてカップリング工程を2回行った(45分のカップリング時間)。最初のカップリングでは、Ν,Ν−ジメチルホルムアミド(DMF)中、3当量のFmoc−アミノ酸、3当量のPyBop/HOBt、および6当量のDIEAを用いた。第2のカップリングでは、代わりに、DMF中、2当量のFmoc−アミノ酸、2当量のHATU、および4当量のDIEAを用いた。カップリングごとに、Kaiser検査で反応の完了を確認した。
【0081】
合成完了後、4.7%無水酢酸および4%ピリジンを含むDMFを用いて、N末端を15分間アセチル化した。
【0082】
焼結ガラスロート中、ペプチジル樹脂とAcOH/TFE/DCM=1:2:7(v/v)で処理してリシン9のMmt基を選択的に除去した。樹脂を10分間震盪撹拌し、溶媒を減圧除去した。この工程を15回繰り返した。最後に、樹脂をイソプロパノールおよびDCMで洗った。Mmt基の切断後、1%TFA/DCM(体積%)溶液を加えて、全体を保護したペプチドアミドを樹脂から切断した。樹脂を2分間震盪撹拌し、ろ液を氷冷した5%ピリジン/メタノール(体積%)含有フラスコに集めた。この処理を何度も繰り返した。最後に、樹脂をDCMで洗った。ろ液は、シリカゲルTLCを用い、クロロホルム/メタノール/酢酸=80:18:2(v/v/v)で確認した。所望の生成物を含有する画分を1つにまとめ、体積が5%になるまで減圧濃縮した。
【0083】
残渣に氷冷した水を加え、混合物を氷上で冷却して、保護ペプチドを析出しやすくした。生成物を濾過し、新鮮な水で数回洗い、真空乾燥させて、粗C末端デカペプチドアミド(1)を得た。
【0084】
生成物の単一性は、分析RP−HPLC(C18カラムに、アセトニトリルを含む0.1%TFA水溶液を、アセトニトリル濃度を30分かけて50%から95%に増加させながら流速1mLmin
−1で使用)により確認した。クロマトグラムは、保持時間23.8分の位置に主ピークを示した。ペプチドが目的物であることは、ESI−MS分光測定により調べて、予想される分子量(2463a.m.u.)であることを確認した。
【0085】
ペプチドの収率は85%だった。
【0086】
テトラデカペプチド(Ace−Asp
1(OtBu)−Glu
2(OtBu)−Gln
3(Trt)−Gln
4(Trt)−Leu
5−His
6(Trt)−Ser
7(tBu)−Gln
8(Trt)−Lys
9−Arg
10(Pbf)−Lys
11(Boc)−Ile
12−Thr
13(tBu)−Leu
14−NH
2)(2)の合成
【0087】
テトラデカペプチド(2)を、デカペプチド(1)と同様に合成した。アミノ酸は、Fmoc−Asp(OtBu)−OH、Fmoc−Glu(OtBu)−OH、Fmoc−Gln(Trt)−OH、Fmoc−Leu−OH、Fmoc−Ser(tBu)−OH、Fmoc−Arg(Pbf)−OH、Fmoc−Ile−OH、Fmoc−Thr(tBu)−OH、Fmoc−Lys(Boc)−OH、Fmoc−His(Trt)−OHとして挿入した。第9位のLys残基は、Fmoc−Lys(Mmt)−OHとして挿入した。
【0088】
生成物の単一性は、分析RP−HPLC(C18カラムに、アセトニトリルを含む0.1%TFA水溶液を、アセトニトリル濃度を30分かけて50%から95%に増加させながら流速1mLmin
−1で使用)により確認した。クロマトグラムは、保持時間23.4分の位置に主ピークを示した。ペプチドが目的物であることは、ESI−MS分光測定により調べて、予想される分子量(3311a.m.u.)であることを確認した。
【0089】
ペプチドの収率は90%だった。
【0090】
ペプチド−ポルフィリン中間体(3):3,7,12,17−テトラメチルポルフィリン−18(2)−プロピオン酸−2(18)−N
9ε−(Ace−Asp
1(OtBu)−Glu
2(OtBu)−Gln
3(Trt)−Gln
4(Trt)−Leu
5−Ser
6(tBu)−Ser
7(tBu)−Gln
8(Trt)−Lys
9−Arg
10(Pbf)−NH
2)プロピオンアミド、すなわちモノペプチド付加体の合成
【0091】
この中間体は、デカペプチド(1)とジュウテロポルフィリンIX(DP−IX)を溶液中でカップリングすることで合成した。
【0092】
デカペプチド(1)(0.100g、0.040mmol)とジュウテロポルフィリンIX・2HCl(0.028g、0.048mmol)を、DIEA(0.032mL、0.184mmol)を含むDMF30mLに溶解させた。次いで、PyBop(0.025g、0.048mmol)、HOBt(0.0075g、0.048mmol)、およびDIEA(0.017mL、0.096mmol)をDMF(10mL)に溶解させた溶液を滴下した。反応液を室温で3時間撹拌した。反応は、分析HPLC(C8カラムに、アセトニトリルを含む0.1%TFA水溶液を、アセトニトリル濃度を20分かけて50%から90%に増加させながら使用)およびシリカゲル薄層クロマトグラフィー(溶媒系は、クロロホルム/メタノール=90:10)でモニターした。反応液を減圧濃縮して体積を20%まで減少させ、冷ジエチルエーテルで沈殿させた。粗生成物をシリカゲルカラム(5×60cm)に乗せ、クロロホルム/メタノール溶媒のメタノール濃度を0%から10%に上げながら段階的に溶出させて精製した。生成物はメタノール濃度10%で溶出し、収率は48%であった。分析RP−HPLCおよびESI/MS分光測定により、生成物の純度および目的物であることを確認した(2980amu)。
【0093】
最終生成物:3,7,12,17−テトラメチルポルフィリン−2(18)−N
9ε−(Ace−Asp
1−Glu
2−Gln
3−Gln
4−Leu
5−His
6−Ser
7−Gln
8−Lys
9−Arg
10−Lys
11−Ile
12−Thr
13−Leu
14−NH
2)−18(2)−N
9ε−(Ace−Asp
1−Glu
2−Gln
3−Gln
4−Leu
5−Ser
6−Ser
7−Gln
8−Lys
9−Arg
10−NH
2)−ジ−プロピオンアミド(4)の合成
【0094】
モノペプチド付加体(3)(0.050g、0.017mmol)、テトラデカペプチド(2)(0.052g、0.017mmol)、およびDIEA(0.009mL、0.051mmol)を、20%TFE(v/v)含有DMF16mLに溶解した。次いで、HATU(0.0065g、0.017mmol)をDMF1mLに加えた溶液を滴下し、室温で合計2時間、反応を進行させた。反応中、pHを確認した。反応の進行は、分析HPLC(VydacC8カラムに、アセトニトリルを含む0.1%TFA水溶液を、アセトニトリル濃度を20分かけて50%から90%に増加させながら流速1mLmin
−1で使用)および薄層クロマトグラフィー(溶媒系はクロロホルム/メタノール=90:10)で追跡した。反応液を減圧濃縮して体積を20%まで減少させ、冷ジエチルエーテルで沈殿させた。粗生成物を真空乾燥した。側鎖の脱保護は、開裂混合物(0.75gフェノール含有チオアニソール/H
2O/EDT/TFA=0.25/0.5/0.5/8.75、v/v/v/v)を加え0℃で2.5時間作用させることにより行った。この処理を2回行った。ロータリーエバポレーターで反応液を濃縮し体積を約1〜2mLにした。粗生成物に冷ジエチルエーテルを加えて捕捉剤および沈殿物を抽出した。次いで、粗生成物を真空乾燥し、分取RP−HPLC(C18カラムに、アセトニトリルを含む0.1%TFA水溶液を、アセトニトリル濃度を35分かけて10%から80%に増加させながら使用)で精製した。所望の生成物を含む画分をプールし、凍結乾燥させて、最終生成物0.025g(7.2×10
−3mmol、収率42%)を得た。分析RP−HPLCにより、精製した生成物は純度が>99%であることが示され、ESi/MSにより予想分子量(3499amu)を確認した。
【0095】
生成物3,7,12,17−テトラメチルポルフィリン−2(18)−N
9ε−(Ace−Asp
1−Glu
2−Gln
3−Gln
4−Leu
5−His
6−Ser
7−Gln
8−Lys
9−Arg
10−Lys
11−Ile
12−Thr
13−Leu
14−NH
2)−18(2)−N
9ε−(Ace−Asp
1−Glu
2−Gln
3−Gln
4−Leu
5−Ser
6−Ser
7−Gln
8−Lys
9−Arg
10−NH
2)−ジ−プロピオンアミド(5)のFe3+錯体の合成
【0096】
文献の手順(Buchler JW. in The Porphyrins, Vol. 1 (Ed. D. Dolphin), Academic Press. New York. 1979, pp.389)に従って、大環状分子に鉄イオンを挿入した。最終化合物(4)(0.006g、1.7×10
−6mol、最終濃度1.0×10
−4M)を酢酸/TFE=6/4(v/v)に加えた溶液に、酢酸鉄(II)(50モル倍過剰)を加えた。反応液を、窒素下で還流させながら3時間40℃に維持した。反応は、分析HPLCでモニターした。次いで、溶媒を減圧除去し、生成物を分取RP−HPLC(C18カラムに、アセトニトリルを含む0.1%TFA水溶液を、アセトニトリル濃度を58.4分かけて10%から80%に増加させながら使用)で精製して単一物にした。純粋な生成物0.0032g(0.90×10
−3mmol、収率54%)が得られた。ESI/MS分析により、予想分子量(3552amu)を確認した。
【実施例2】
【0097】
抗体と共有結合した、実施例1に記載の化合物の合成
【0098】
実施例1に記載の化合物を、ヘテロ二官能性架橋剤を用いて、モノクローナルマウス抗体、抗ヒトIgG(以下、IgGと示す)と共有結合させた。Sulfo−SMCCがアミンとスルフヒドリルのクロス架橋剤であることから、この試薬を架橋剤として選択した。ヘテロ二官能性架橋剤は、2つの同一部分間(抗体抗体間など)の架橋形成を決定づけないことから、高い結合レベルを達成するのに最適な試薬である。結合プロトコルは2工程からなった。
【0099】
化合物(5)のLys11の側鎖のSulfo−SMCC(6)試薬による修飾
【0100】
化合物(5)0.002gを、0.1Mリン酸緩衝液(0.15MのNaCl、pH=7.2)0.8mLに溶解させた。この溶液に、sulfo−SMCCを0.0043g(モル比約1:20)含有する水溶液0.2mLを加えた。反応液を、撹拌しながら室温で2時間インキュベートした。
【0101】
反応の進行は、LC−MSで追跡した。反応が完了したら、PD10脱塩カラムに溶出緩衝液として100mMリン酸緩衝液(150mMのNaCl、pH7.2)を用いて、反応液を精製した。所望の生成物(6)を含む画分をプールして凍結乾燥させた。
【0102】
IgG分子(7)へのスルフヒドリル基の導入
【0103】
アセトニトリル0.010mLにS−アセチルチオ酢酸N−スクシンイミジル(SATA)0.8mgを溶解させ、これを、0.1M炭酸緩衝液(pH9)を用いた抗体溶液(IgG、1mg/mL、約6.7×10
−6M)に加えた。反応は、撹拌しながら30分間室温に維持した。修飾された抗体を、脱塩カラムを用いて、0.1M炭酸緩衝液(pH9)で溶出させて精製した。
【0104】
SATA−修飾抗体溶液にヒドロキシルアミン原液(ヒドロキシルアミン塩酸塩0.050gを0.1M炭酸緩衝液(pH9)1.0mlに溶解させて調製)0.100mLを加えて(NH2OHの量は、抗体の約30モル倍過剰)、SATA−修飾抗体の脱アセチル化を行った。
【0105】
反応は、撹拌しながら2時間室温に維持した。反応生成物を過剰のヒドロキシルアミンから精製する目的で、100mMリン酸緩衝液(150mMのNaCl、25mMのEDTA、pH5)で平衡化した脱塩カラムを用いた。
【0106】
修飾抗体(7)と化合物(6)の結合による結合生成物(8)の生成
【0107】
0.003Lの反応体積で化合物(6)0.0025gと修飾抗体(7)0.001gを反応させて、最終結合生成物(8)を得た。
【0108】
反応は、撹拌しながら2時間室温に維持した。反応の進行は、分析HPLC(0.1Mリン酸緩衝液(3.5mMのSDS、pH6)で平衡化した分子ふるいカラムを使用)で追跡した。結合生成物を、ガラスカラム(10×150mm、Sephadex G−100スーパーファイン10−40を充填)を用いてゲル濾過することにより精製した。分離は、0.1Mリン酸緩衝液(0.15MのNaCl、pH7)を流速3mL/hで流して行った。280nmの吸収帯と398nmの吸収帯の比を分析することで、結合比を見積もった。その結果、結合比は13(化合物(6)/IgG)であるとの見積もりになった。
【実施例3】
【0109】
化合物3,7,12,17−テトラメチルポルフィリン−2(18)−N
9ε−(Ace−Asp
1−Glu
2−Gln
3−Gln
4−Leu
5−His
6−Ser
7−Gln
8−Lys
9−Arg
10−Lys
11−Ile
12−Thr
13−Leu
14−NH
2)−18(2)−N
9ε−(Ace−Asp
1−Glu
2−Gln
3−Gln
4−Leu
5−Ser
6−Ser
7−Gln
8−Lys
9−Arg
10−NH
2)−ジ−プロピオンアミドの合成;この化合物は、一般式(I)の式中が以下のとおりのものである:
【0110】
大環状部の窒素原子はRu2+イオンに配位しており;R2およびR7はCH3であり;R4およびR6はHであり;R3およびR5はCH3であり;R1は一般式(II)を有し、式中n=2であり;AはAce−Aspであり、X1はGluであり;Y2はGlnであり;Y3はGlnであり;Y4はLeuであり;X5はHisであり;X6はSerであり;Y7はGlnであり;X8はLys(N,ε−プロピオンアミド)であり;X9はArgであり;Y10はLysであり;BはIle−Thr−Leu−NH2であり;LはCOであり;Aは、Ace−Aspであり;R8は一般式(III)を有し、式中m=2であり;CはAce−Aspであり;Z1はGluであり;W2はGlnであり;W3はGlnであり;W4はLeuであり;Z5はSerであり;Z6はSerであり;W7はGlnであり;Z8はLys(N,ε−プロピオンアミド)であり;Z9はArgであり;DはNH2であり;PはCOである。
【0111】
この化合物の合成は、ルテニウムイオンを大環状分子(DP−IX)に挿入することから始めた。続いて、デカペプチド(化合物1)およびテトラデカペプチド(化合物2)を、実施例1に記載したように、大環状分子とカップリングさせた。
【0112】
詳細には、多少変更した金属カルボニル法を用いて、ルテニウムイオンをポルフィリン環に挿入することで、Ru(II)−CO−DP−IX錯体を調製した。
【0113】
この方法は基本的に、高沸点非プロトン性溶媒(トルエン、DMF、ジオキサンなど)、「金属担体」としてのトリルテニウムドデカカルボニルRu
3(CO)
12、および還流条件下での非常に長い反応時間を使用する。本発明者らにより最適化された実験条件は、溶媒として酢酸−酢酸ナトリウム溶液を使用することに基づく(Hartmann M. et al. J. Biol. Inorg. Chem. 1997, 2, pp427)。詳細には、20.0mgのDP−IXを、酢酸ナトリウム133.0mgを含む酢酸溶液6.3mlに溶解させた。83mgのRu
3(CO)
12(約4当量)をこの溶液に加え、混合物を85℃に加熱して還流させた。
【0114】
金属化は、UV−vis分光測定および分析RP−HPLCでモニターした。24時間反応後の混合物の分析から、Ru2+が大環状分子に挿入されたことを確認した(収率80%)。
【0115】
反応液を冷却し、次いでこれに冷水50mLを加えた。所望の生成物、未反応DP−IX、および過剰のRu
3(CO)
12を含む赤褐色固体の形成が観測された。固体を、遠心分離により溶液から分離し、続いてメタノール処理した。メタノールを加えると、未反応DP−IXおよび所望の生成物が溶解したので、Ru
3(CO)
12の不溶性ペレットを遠心分離により溶液から分離した。所望の生成物を、RP−HPLCクロマトグラフィー(C18カラム(2.2×25cm)に、アセトニトリルを含む0.1%TFA水溶液を、アセトニトリル濃度を33分かけて20%から80%に増加させながら使用)で精製した。所望の生成物を含む画分をプールして凍結乾燥させ、純粋な生成物9.6mg(15×10
−3mmol、収率44%)を得た。
【0116】
生成物の単一性は、分析RP−HPLCにより確認した。MALDI質量分析は、Ru(II)−DP−IX分子イオンピークに相当する主ピークがm/z610amuに存在することを示した。実際、MALDIレーザー光源による試料のイオン化の間に、金属イオンからのCO脱離が観測される(Ishii K. et al. Inorg. Chem. 2004, 43, pp7369)。COの存在は、生成物のIRスペクトルを分析することにより確認した。IRスペクトルは、Ru(II)−CO−ポルフィリン錯体に特徴的なν=1989cm
−1の吸収帯を示した。
【0117】
Ru(II)−CO−DP−IXとデカペプチド(1)とのカップリング、さらに続いてテトラデカペプチド(2)とのカップリングは、実施例(1)に記載したとおりに行った。
【0118】
最終生成物をRP−HPLCで精製して、収率42%で得た。単一性および目的物であることは、LC−MS/ESI分析で確認した(3625amu)。
【実施例4】
【0119】
化合物3,7,12,17−テトラメチルポルフィリン−18(2)−プロピオン酸−2(18)−N
9ε−(Ace−Asp
1−Glu
2−Gln
3−Gln
4−Leu
5−His
6−Ser
7−Gln
8−Lys
9−Arg
10−Lys
11−Ile
12−Thr
13−Leu
14−NH
2)プロピオンアミドの合成、この化合物は、一般式(I)の式中が以下のとおりのものである:
【0120】
大環状部の窒素原子はFe3+イオンに配位しており;R2およびR7はCH3であり;R4およびR6はHであり;R3およびR5はCH3であり;R1は一般式(II)を有し、式中n=2であり;AはAce−Aspであり、X1はGluであり;Y2はGlnであり;Y3はGlnであり;Y4は、Leuであり;X5はHisであり;X6はSerであり;Y7はGlnであり;X8はLys(N,ε−プロピオンアミド)であり;X9はArgであり;Y10はLysであり;BはIle−Thr−Leu−NH2であり;LはCOであり;Aは、Ace−Aspであり;R8は一般式(III)を有し、式中m=2であり、QはHOOCである。
【0121】
この化合物の合成は、実施例(1)に記載のテトラデカペプチド、Ace−Asp
1(OtBu)−Glu
2(OtBu)−Gln
3(Trt)−Gln
4(Trt)−Leu
5−His
6(Trt)−Ser
7(tBu)−Gln
8(Trt)−Lys
9−Arg
10(Pbf)−Lys
11(Boc)−Ile
12−Thr
13(tBu)−Leu
14−NH
2)(中間体(2))およびDP−IXを用いて行った。実施例(1)に記載したように、テトラデカペプチドとDP−IXをカップリングさせた。実施例(1)に記載したのと同じ手順で、側鎖の保護基を外し、鉄イオンを大環状分子に挿入してから、最終生成物をRP−HPLCで精製した(収率48%)。単一性および目的物であることは、LC−MS/ESI分析で確認した(2311amu)。
【実施例5】
【0122】
化合物3,7,12,17−テトラメチルポルフィリン−2(18)−N
9ε−(Ace−Asp
1−Glu
2−Gln
3−Gln
4−Leu
5−His
6−Ser
7−Gln
8−Lys
9−Leu
10−Lys
11−Ile
12−Thr
13−Leu
14−NH
2)−18(2)−N
9ε−(Ace−Asp
1−Glu
2−Gln
3−Gln
4−Leu
5−Ser
6−Ser
7−Gln
8−Lys
9−Arg
10−NH
2)−ジ−プロピオンアミドの合成、この化合物は、一般式(I)の式中が以下のとおりのものである:
【0123】
大環状部の窒素原子はFe3+イオンに配位しており;R2およびR7はCH3であり;R4およびR6はHであり;R3およびR5はCH3であり;R1は一般式(II)を有し、式中n=2であり;AはAce−Aspであり、X1はGluであり;Y2はGlnであり;Y3はGlnであり;Y4はLeuであり;X5はHisであり;X6はSerであり;Y7はGlnであり;X8はLys(N,ε−プロピオンアミド)であり;X9はLeuであり;Y10はLysであり;BはIle−Thr−Leu−NH2であり;LはCOであり;AはAce−Aspであり;R8は一般式(III)を有し、式中m=2であり;CはAce−Aspであり;Z1はGluであり;W2はGlnであり;W3はGlnであり;W4はLeuであり;Z5はSerであり;Z6はSerであり;W7はGlnであり;Z8はLys(N,ε−プロピオンアミド)であり;Z9はArgであり;DはNH2であり;PはCOである。
【0124】
この化合物の合成は、以下を用いて行った:a)デカペプチド(Ace−Asp
1(OtBu)−Glu
2(OtBu)−Gln
3(Trt)−Gln
4(Trt)−Leu
5−Ser
6(tBu)−Ser
7(tBu)−Gln
8(Trt)−Lys
9−Arg
10(Pbf)−NH
2)(中間体1)、実施例(1)に記載のとおりに合成;b)テトラデカペプチド(Ace−Asp
1(OtBu)−Glu
2(OtBu)−Gln
3(Trt)−Gln
4(Trt)−Leu
5−His
6(Trt)−Ser
7(tBu)−Gln
8(Trt)−Lys
9−Leu
10−Lys
11(Boc)−Ile
12−Thr
13(tBu)−Leu
14−NH
2)(中間体(2))、X9の位置にアルギニン(Pbf)の代わりにロイシンを有するもの、実施例(1)に記載のとおりに合成;c)DP−IX。テトラデカペプチド、デカペプチドとDP−IXとのカップリングは、実施例1に記載のとおりに行った。
【0125】
実施例(1)に記載したのと同じ手順で、側鎖の保護基を外し、鉄イオンを大環状分子に挿入してから、最終生成物をRP−HPLCで精製した(収率25%)。単一性および目的物であることは、LC−MS/ESI分析で確認した(3509amu)。
【実施例6】
【0126】
化合物3,7,12,17−テトラメチルポルフィリン−2(18)−N
9ε−(Ace−Asp
1−Leu
2−Gln
3−Gln
4−Leu
5−His
6−Ser
7−Gln
8−Lys
9−Arg
10−Lys
11−Ile
12−Thr
13−Leu
14−NH
2)−18(2)−N
9ε−(Ace−Asp
1−Glu
2−Gln
3−Gln
4−Leu
5−Ser
6−Ser
7−Gln
8−Lys
9−Arg
10−NH
2)−ジ−プロピオンアミドの合成、この化合物は、一般式(I)の式中が以下のとおりのものである:
【0127】
大環状部の窒素原子はFe3+イオンに配位しており;R2およびR7はCH3であり;R4およびR6はHであり;R3およびR5はCH3であり;R1は一般式(II)を有し、式中n=2であり;AはAce−Aspであり、X1はLeuであり;Y2はGlnであり;Y3はGlnであり;Y4はLeuであり;X5はHisであり;X6はSerであり;Y7はGlnであり;X8はLys(N,ε−プロピオンアミド)であり;X9はArgであり;Y10はLysであり;BはIle−Thr−Leu−NH2であり;LはCOであり;AはAce−Aspであり;R8は一般式(III)を有し、式中m=2であり;CはAce−Aspであり;Z1はGluであり;W2はGlnであり;W3はGlnであり;W4はLeuであり;Z5はSerであり;Z6はSerであり;W7はGlnであり;Z8はLys(N,ε−プロピオンアミド)であり;Z9はArgであり;Dは、NH2であり;PはCOである。
【0128】
この化合物の合成は、以下を用いて行った:a)デカペプチド(Ace−Asp
1(OtBu)−Glu
2(OtBu)−Gln
3(Trt)−Gln
4(Trt)−Leu
5−Ser
6(tBu)−Ser
7(tBu)−Gln
8(Trt)−Lys
9−Arg
10(Pbf)−NH
2)(中間体1)、実施例(1)に記載のとおりに合成;b)テトラデカペプチド(Ace−Asp
1(OtBu)−Leu
2−Gln
3(Trt)−Gln
4(Trt)−Leu
5−His
6(Trt)−Ser
7(tBu)−Gln
8(Trt)−Lys
9−Arg
10(Pbf)−Lys
11(Boc)−Ile
12−Thr
13(tBu)−Leu
14−NH
2)(中間体(2))、X1の位置にGlu(OtBu)の代わりにロイシンを有するもの、実施例(1)に記載のとおりに合成;c)DP−IX。テトラデカペプチド、デカペプチドとDP−IXとのカップリングは、実施例1に記載のとおりに行った。
【0129】
実施例(1)に記載したのと同じ手順で、側鎖の保護基を外し、鉄イオンを大環状分子に挿入してから、最終生成物をRP−HPLCで精製した(収率27%)。単一性および目的物であることは、LC−MS/ESI分析で確認した(3536amu)。
【実施例7】
【0130】
化合物3,7,12,17−テトラメチルポルフィリン−2(18)−N
9ε−(Ace−Asp
1−Glu
2−Gln
3−Gln
4−Leu
5−His
6−Ser
7−Gln
8−Lys
9−Arg
10−Lys
11−Ile
12−Thr
13−Leu
14−NH
2)−18(2)−N
9ε−(Ace−Asp
1−Glu
2−Gln
3−Gln
4−Leu
5−Gly
6−Ser
7−Gln
8−Lys
9−Arg
10−NH
2)−ジ−プロピオンアミドの合成、この化合物は、一般式(I)の式中が以下のとおりのものである:
【0131】
大環状部の窒素原子はFe3+イオンに配位しており;R2およびR7はCH3であり;R4およびR6はHであり;R3およびR5はCH3であり;R1は一般式(II)を有し、式中n=2であり;AはAce−Aspであり、X1はGluであり;Y2はGlnであり;Y3はGlnであり;Y4はLeuであり;X5はHisであり;X6はSerであり;Y7はGlnであり;X8はLys(N,ε−プロピオンアミド)であり;X9はArgであり;Y10はLysであり;BはIle−Thr−Leu−NH2であり;LはCOであり;AはAce−Aspであり;R8は一般式(III)を有し、式中m=2であり;CはAce−Aspであり;Z1はGluであり;W2はGlnであり;W3はGlnであり;W4はLeuであり;Z5はGlyであり;Z6はSerであり;W7はGlnであり;Z8はLys(N,ε−プロピオンアミド)であり;Z9はArgであり;DはNH2であり;PはCOである。
【0132】
この化合物の合成は、以下を用いて行った:a)デカペプチド(Ace−Asp
1(OtBu)−Glu
2(OtBu)−Gln
3(Trt)−Gln
4(Trt)−Leu
5−Gly
6−Ser
7(tBu)−Gln
8(Trt)−Lys
9−Arg
10(Pbf)−NH
2)(中間体1)、実施例(1)に記載のとおりに合成、Z5の位置にセリン(tBu)の代わりにグリシンを有する;b)テトラデカペプチド(Ace−Asp
1(OtBu)−Glu
2(OtBu)−Gln
3(Trt)−Gln
4(Trt)−Leu
5−His
6(Trt)−Ser
7(tBu)−Gln
8(Trt)−Lys
9−Arg
10(Pbf)−Lys
11(Boc)−Ile
12−Thr
13(tBu)−Leu
14−NH
2)(中間体(2))、実施例(1)に記載のとおりに合成;c)DP−IX。
【0133】
テトラデカペプチド、デカペプチドとDP−IXとのカップリングは、実施例1に記載のとおりに行った。実施例(1)に記載したのと同じ手順で、側鎖の保護基を外し、鉄イオンを大環状分子に挿入してから、最終生成物をRP−HPLCで精製した(収率28%)。単一性および目的物であることは、LC−MS/ESI分析で確認した(3522amu)。
【実施例8】
【0134】
化合物3,7,12,17−テトラメチルポルフィリン−2(18)−N
9ε−(Ace−Asp
1−Glu
2−Gln
3−Gln
4−Leu
5−His
6−Ser
7−Gln
8−Lys
9−Arg
10−Lys
11−Ile
12−Thr
13−Leu
14−NH
2)−18(2)−N
9ε−(Ace−Asp
1−Leu
2−Gln
3−Gln
4−Leu
5−Ser
6−Ser
7−Gln
8−Lys
9−Arg
10−NH
2)−ジ−プロピオンアミドの合成、この化合物は、一般式(I)の式中が以下のとおりのものである:
【0135】
大環状部の窒素原子はFe3+イオンに配位しており;R2およびR7はCH3であり;R4およびR6はHであり;R3およびR5はCH3であり;R1は一般式(II)を有し、式中n=2であり;AはAce−Aspであり、X1はGluであり;Y2はGlnであり;Y3はGlnであり;Y4はLeuであり;X5はHisであり;X6はSerであり;Y7はGlnであり;X8はLys(N,ε−プロピオンアミド)であり;X9はLeuであり;Y10はLysであり;BはIle−Thr−Leu−NH2であり;LはCOであり;AはAce−Aspであり;R8は一般式(III)を有し、式中m=2であり;CはAce−Aspであり;Z1はLeuであり;W2はGlnであり;W3はGlnであり;W4はLeuであり;Z5はSerであり;Z6はSerであり;W7はGlnであり;Z8はLys(N,ε−プロピオンアミド)であり;Z9はArgであり;DはNH2であり;PはCOである。
【0136】
この化合物の合成は、以下を用いて行った:a)デカペプチド(Ace−Asp
1(OtBu)−Leu
2−Gln
3(Trt)−Gln
4(Trt)−Leu
5−Gly
6−Ser
7(tBu)−Gln
8(Trt)−Lys
9−Arg
10(Pbf)−NH
2)(中間体1)、実施例(1)に記載のとおりに合成、Z1の位置にGlu(OtBu)の代わりにロイシンを有する;b)テトラデカペプチド(Ace−Asp
1(OtBu)−Glu
2(OtBu)−Gln
3(Trt)−Gln
4(Trt)−Leu
5−His
6(Trt)−Ser
7(tBu)−Gln
8(Trt)−Lys
9−Arg
10(Pbf)−Lys
11(Boc)−Ile
12−Thr
13(tBu)−Leu
14−NH
2)(中間体(2))、実施例(1)に記載のとおりに合成;c)DP−IX。
【0137】
テトラデカペプチド、デカペプチドとDP−IXとのカップリングは、実施例1に記載のとおりに行った。実施例(1)に記載したのと同じ手順で、側鎖の保護基を外し、鉄イオンを大環状分子に挿入してから、最終生成物をRP−HPLCで精製した(収率30%)。単一性および目的物であることは、LC−MS/ESI分析で確認した(3536amu)。
【実施例9】
【0138】
化合物3,7,12,17−テトラメチルポルフィリン−2(18)−N
9ε−(Ace−Asp
1−Glu
2−Gln
3−Gln
4−Leu
5−His
6−Ser
7−Gln
8−Lys
9−Arg
10−Lys
11−Ile
12−Thr
13−Leu
14−NH
2)−18(2)−N
9ε−(Ace−Asp
1−Glu
2−Gln
3−Gln
4−Leu
5−Ser
6−Ser
7−Gln
8−Lys
9−Leu
10−NH
2)−ジ−プロピオンアミドの合成、この化合物は、一般式(I)の式中が以下のとおりのものである:
【0139】
大環状部の窒素原子はFe3+イオンに配位しており;R2およびR7はCH3であり;R4およびR6はHであり;R3およびR5はCH3であり;R1は一般式(II)を有し、式中n=2であり;AはAce−Aspであり、X1はGluであり;Y2はGlnであり;Y3はGlnであり;Y4はLeuであり;X5はHisであり;X6はSerであり;Y7はGlnであり;X8はLys(N,ε−プロピオンアミド)であり;X9はLeuであり;Y10はLysであり;BはIle−Thr−Leu−NH2であり;LはCOであり;AはAce−Aspであり;R8は一般式(III)を有し、式中m=2であり;CはAce−Aspであり;Z1はGluであり;W2はGlnであり;W3はGlnであり;W4はLeuであり;Z5はSerであり;Z6はSerであり;W7はGlnであり;Z8はLys(N,ε−プロピオンアミド)であり;Z9はLeuであり;DはNH2であり;PはCOである。
【0140】
この化合物の合成は、以下を用いて行った:a)デカペプチド(Ace−Asp
1(OtBu)−Leu
2−Gln
3(Trt)−Gln
4(Trt)−Leu
5−Gly
6−Ser
7(tBu)−Gln
8(Trt)−Lys
9−Leu
10−NH
2)(中間体1)、実施例(1)に記載のとおりに合成、Z9の位置にArg(Pbf)の代わりにロイシンを有する;b)テトラデカペプチド(Ace−Asp
1(OtBu)−Glu
2(OtBu)−Gln
3(Trt)−Gln
4(Trt)−Leu
5−His
6(Trt)−Ser
7(tBu)−Gln
8(Trt)−Lys
9−Arg
10(Pbf)−Lys
11(Boc)−Ile
12−Thr
13(tBu)−Leu
14−NH
2)(中間体(2))、実施例(1)に記載のとおりに合成;c)DP−IX。
【0141】
テトラデカペプチド、デカペプチドとDP−IXとのカップリングは、実施例1に記載のとおりに行った。実施例(1)に記載したのと同じ手順で、側鎖の保護基を外し、鉄イオンを大環状分子に挿入してから、最終生成物をRP−HPLCで精製した(収率28%)。単一性および目的物であることは、LC−MS/ESI分析で確認した(3509amu)。
【実施例10】
【0142】
実施例1に記載の化合物のペルオキシダーゼ活性
【0143】
この実施例では、H
2O
2および次の二次基質、ABTSおよびグアヤコール、を用いた、化合物Fe(III)−3,7,12,17−テトラメチルポルフィリン−2(18)−N
9ε−(Ace−Asp
1−Glu
2−Gln
3−Gln
4−Leu
5−His
6−Ser
7−Gln
8−Lys
9−Arg
10−Lys
11−Ile
12−Thr
13−Leu
14−NH
2)−18(2)−N
9ε−(Ace−Asp
1−Glu
2−Gln
3−Gln
4−Leu
5−Ser
6−Ser
7−Gln
8−Lys
9−Arg
10−NH
2)−ジ−プロピオンアミドのペルオキシダーゼ活性について記載する。化合物の合成は実施例1に記載してある。
【0144】
この化合物の二次基質ABTSに対するペルオキシダーゼ活性は、H
2O
2の存在下でのABTS
+・ラジカルカチオンの形成を追跡することで評定した。
【0145】
反応は、分光分析手法を用い、反応媒体中の生成物の出現を測定することで追跡した。ABTS
+・カチオンラジカルの形成は、660nm(λ
max(ε)=660nm(1.40×10
4M
−1cm
−1))で追跡した。反応は、50%TFE(v/v)含有100mMリン酸緩衝液(pH6.5)中、触媒濃度を2.0×10
−7Mにして行った。
【0146】
化合物の速度パラメーターは、還元基質の濃度を一定にしてH
2O
2濃度を変化させることにより、またその逆を行うことにより、決定した。
【0147】
より詳細には、様々なH
2O
2濃度(0.01÷200mMの範囲)で行われた実験では、ABTS濃度は0.1mMで一定に保たれた。様々なABTS濃度(0.005÷0.1mMの範囲)で行われた実験では、H
2O
2濃度は50mMであった。
【0148】
実験データを、2基質のミカエリス・メンテン速度式に当てはめ、以下の速度パラメーターを得た:K
mAH2=8.4±0.2 10
−2mMおよびk
cat=370.9±14s
−1。
【0149】
グアヤコール基質に対するペルオキシダーゼ活性は、グアヤコールの酸化生成物であるテトラグアヤコールの形成を追跡することで評定した。ε
470=2.66×10
4M
−1cm
−1を考慮に入れて、470nmの吸収の変化を測定した。
【0150】
詳細には、様々なH
2O
2濃度(1÷40mMの範囲)で行われた実験では、グアヤコール濃度は0.1mMで一定に保たれた。様々なグアヤコール濃度(0.0025÷0.07の範囲)で行われた実験では、H
2O
2濃度は10mMであった。
【0151】
実験データを、2基質のミカエリス・メンテン速度式に当てはめ、以下の速度パラメーターを得た:K
mAH2=9.2±0.4 10
−2mMおよびk
cat=8.0±0.1s
−1。
【0152】
ABTS酸化の場合、pH=6.5での比活性は104mmolg
−1s
−1である。この値は、西洋ワサビペルオキシダーゼの値(93mmolg
−1s
−1、pH4.6)と同等である。グアヤコール酸化の場合、比活性は西洋ワサビペルオキシダーゼの値の2倍の高さである。
【実施例11】
【0153】
フェノールニトロ化
【0154】
化合物Fe(III)−3,7,12,17−テトラメチルポルフィリン−2(18)−N
9ε−(Ace−Asp
1−Glu
2−Gln
3−Gln
4−Leu
5−His
6−Ser
7−Gln
8−Lys
9−Arg
10−Lys
11−Ile
12−Thr
13−Leu
14−NH
2)−18(2)−N
9ε−(Ace−Asp
1−Glu
2−Gln
3−Gln
4−Leu
5−Ser
6−Ser
7−Gln
8−Lys
9−Arg
10−NH
2)−ジ−プロピオンアミドについて、フェノールニトロ化を触媒する能力を評定した。化合物の合成は実施例1に記載してある。反応液の分析は、分析HPLCにより、Phenomenex Gemini C18カラム(150×4.6mm、5μm)を用い、H
2O/0.1%TFA(A)とCH
3CN/0.1%TFA(B)を溶出液として、20分かけてBの割合を10%から90%に直線的に増加させながら、流速1mL/minで流して行った。出発物質および生成物の濃度は、市販の試料および4−シアノフェノールを内部標準として用いて作製した較正曲線から求めた。フェノールニトロ化のための標準のインキュベーションは、リン酸緩衝液(pH6.5、50%TFE(v/v))中、0.2μΜの触媒、20mMのNaNO2、および3mMのH
2O
2の存在下、フェノール濃度1mMで行った。
【0155】
反応は、室温で、インキュベーション時間を40分として行った。反応液をRP−HPLCで分析した結果、4−ニトロフェノールおよび2−ニトロフェノール両方の形成が示された。反応時間40分での4−ニトロフェノールおよび2−ニトロフェノールの収率は、H
2O
2、NO
2−、およびフェノールの濃度を上げると増加した。ニトロフェノール類(4−体および2−体)の最大収率は、基質および酸化剤濃度がそれぞれ1.0mM、NO
2−濃度が40mMの場合に達成された。
【0156】
これらの条件では、ニトロフェノール類の合計収率は、約14.8%であった。ラクトペルオキシダーゼの存在下でのニトロフェノール類の合計収率は、この4倍にすぎない。
【実施例12】
【0157】
実施例2に記載の化合物の触媒活性
【0158】
例として、酸化剤としてH
2O
2および還元剤としてABTSを用いた場合の、抗体と共有結合した化合物Fe(III)−3,7,12,17−テトラメチルポルフィリン−2(18)−N
9ε−(Ace−Asp
1−Glu
2−Gln
3−Gln
4−Leu
5−His
6−Ser
7−Gln
8−Lys
9−Arg
10−Lys
11−Ile
12−Thr
13−Leu
14−NH
2)−18(2)−N
9ε−(Ace−Asp
1−Glu
2−Gln
3−Gln
4−Leu
5−Ser
6−Ser
7−Gln
8−Lys
9−Arg
10−NH
2)−ジ−プロピオンアミドのペルオキシダーゼ活性について、以下に記載する。化合物の合成は実施例2に記載したとおりである。
【0159】
実験は、50%TFE(v/v)含有100mMリン酸緩衝液(pH6.5)中で行った。実施例10に記載したとおり、触媒反応過程は、660nm(ε=14700M
−1cm
−1)でABTS
+・ラジカルカチオンの形成を追跡することにより評定した。化合物の速度パラメーターは、還元基質の濃度を一定にしてH
2O
2濃度を変化させることにより、またその逆を行うことにより、決定した。
【0160】
より詳細には、最初の実験では、ABTS濃度および結合体濃度を、それぞれ、0.1mMおよび2×10
−7Mで一定に保ち、H
2O
2濃度を、10〜100mMの範囲で変化させた。次の実験では、H
2O
2濃度および結合体濃度を、それぞれ、50mMおよび2×10
−7Mで一定に保ち、ABTS濃度を0.005÷0.1mMの範囲で変化させた。
【0161】
実験データを、2基質のミカエリス・メンテン速度式に当てはめ、以下の速度パラメーターを得た:K
mAH2=0.123mMおよびk
cat=91s
−1。
【実施例13】
【0162】
触媒活性の比較
【0163】
実施例4、5、6、7、8、および9に記載の化合物の触媒活性を、実施例10の記載と同様にして求めた。
【0164】
H
2O
2存在下でのABTS酸化に対する触媒活性について、実施例1、4、5、6、7、8、および9に記載の化合物と、天然型および組換ペルオキシダーゼならびに他の類似体との比較を、以下に記載する。
【0165】
H
2O
2を用いたABTS酸化に対する触媒活性
【0166】
【表13】
【0167】
比活性(molg
−1min
−1)に換算した触媒活性も表に記載する。比活性は、触媒1グラムあたり1分あたりに変換される基質のモル数に相当する。実施例に記載した化合物全てについて、中性pHでの比活性は、天然型ペルオキシダーゼよりも高く、その200倍まで達するものもあり、最大活性の条件(pH=4.6)では、HRPに匹敵するかこれより高いものである。比活性は、先行技術の化合物(MP8、MP11、ToCPP−13G10、ToCPP−14H7)の比活性よりも高く、その100,000倍まで達するものもあり、またミモクロムファミリーの比活性よりも高い。
【0168】
略号の記載
【0169】
アミノ酸の命名および略号については、IUPAC-IUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature(Eur. J. Biochem. 1984, 138, pp9)の推奨を参照。「側鎖」は、αアミノ酸のα炭素に結合した任意の鎖を意味する。アミノ酸は、特に記載のない限り、L型配置のものである。使用したその他の略号は以下のとおり:
【0170】
Sue=スクシニル、Ace=アセチル、Asp=アスパラギン酸、Asn=アスパラギン、Pro=プロリン、Lys=リシン、Orn=オルニチン、Glu=グルタミン酸、Aada=α−アミノアジピン酸、Arg=アルギニン、hArg=ホモアルギニン、Leu=ロイシン、Gln=グルタミン、His=ヒスチジン、hCys=ホモシステイン、Met=メチオニン、4TAZ=β−(4−チアゾリル)−アラニン、5TAZ=β−(5−チアゾリル)−アラニン、Ser=セリン、Thr=トレオニン、aThr=アロ−トレオニン、Dap=2,3−ジアミノプロピオン酸、Dab=2,4−ジアミノ酪酸、Ile=イソロイシン、Gly=グリシン、Ala=アラニン、Aib=α−アミノイソ酪酸、Fmoc=フルオレニルメトキシカルボニル、TFA=トリフルオロ酢酸、tBu=tert−ブチル、Trt=トリチル、PBF=2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン、DVB=ジビニルベンゼン、Mmt=メトキシトリチル、DMF=ジメチルホルムアミド、PyBop=ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート、HOBt=ヒドロキシベンゾトリアゾール、IDEA=ジイソプロピルエチルアミン、HATU=2−(7−アザ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、TFE=トリフルオロエタノール、DCM=ジクロロメタン、Boc=tert−ブチルオキシカルボニル、sulpho−SMCC=スルホスクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)=シクロヘキサン−1−カルボキシラート、EDTA=エチレンジアミン四酢酸塩、SDS=ドデシル硫酸ナトリウム、ABTS=2,2’−アジノ−ビス−3−エチル−ベンゾチアジン−6−スルホン酸、DP−IX=ジュウテロポルフィリンIX。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]