(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジン出力とエンジン回転数とに対応する座標平面上にエンジン回転数ラインが設定された第3のマップから、算出された前記エンジン出力に応じたエンジン回転数を読み取ることで、前記エンジンの目標エンジン回転数を設定する目標エンジン回転数設定手段と、
検出された前記出力回転数と設定された前記目標エンジン回転数とに基づいて、前記変速機の目標変速比を算出する目標変速比演算手段と、
前記変速機の変速比が前記目標変速比となるように前記変速機を制御する変速機制御手段と、をさらに備える請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
前記第3のマップのエンジン回転数ラインは、エンジン出力負側の領域では、エンジン出力が減少するにつれてエンジン回転数が上昇するように設定されている請求項3に記載の車両の制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的なエンジン及び変速機の制御装置では、アクセル操作量に応じてエンジンを直接的に制御しているため、エンジンは必ずしも最少燃料噴射量ライン上で運転されない。すなわち、エンジンはアクセル操作量に応じた
図8のマップ上のあらゆる点を使って運転されることになる。また、アクセル操作量は、変速機ECUにも入力され、変速機の変速比を決定するために用いられている。しかし、変速機のギア段も車速及びアクセル開度の2次元マップで設定されるため、必ずしも最少燃料噴射量ライン上でエンジンを運転するように設定されることにならない。そのため、一般的にエンジンの効率は30〜40%と認識されているが、これは
図8のマップ上の領域B近傍における効率であって、実走行レベルでは他の領域も多く使用されるため、エンジンの効率は10〜20%まで低下する。
【0006】
このようなエンジンの効率を改善する手法として、惰行制御と呼ばれるものがある。この惰行制御では、エンジンはエンジン出力がゼロの時に単位時間当たりの燃料噴射量が最も少なくなるアイドル回転数及び、アクセル開度をゼロにして運転される(
図8の太線Cの範囲)。すなわち、惰行制御によれば、クラッチを切断してアクセル開度をゼロにし、エンジンをアイドル回転に落とすことで、無駄な燃料消費を抑制することができる。
【0007】
しかし、惰行制御の適用範囲は、エンジン出力がゼロ近傍の範囲(
図8の太線Cの範囲)に限定されるため、エンジン出力がゼロ近傍から離れた場合は適用することができず、エンジンの燃費を効果的に向上させることができない。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、その目的は、最少の燃料噴射量でドライバが所望する車両走行を可能にしつつ、エンジンの燃費を効果的に向上することができる車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の車両の制御装置は、エンジンの駆動力が変速機を介して駆動輪に伝達される車両の制御装置であって、アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、前記変速機の出力回転数を検出する回転数検出手段と、変速機の出力回転数と出力トルクとに対応する座標平面上に所定開度毎に複数本の等アクセル開度線が設定された第1のマップから、検出された前記アクセル開度と前記出力回転数とに応じた出力トルクを読み取ることで、前記変速機の出力トルクを設定する変速機出力トルク設定手段と、検出された前記出力回転数と設定された前記変速機の出力トルクとに基づいて、前記エンジンのエンジン出力を算出するエンジン出力演算手段と、エンジン出力と燃料噴射量とに対応する座標平面上に前記エンジンの燃料噴射量を最も少なくする最少燃料噴射量線が設定された第2のマップから、算出された前記エンジン出力に応じた最少燃料噴射量を読み取ることで、前記エンジンの目標燃料噴射量を設定する目標燃料噴射量設定手段と、前記エンジンの燃料噴射量が前記目標燃料噴射量となるように前記エンジンを制御するエンジン制御手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、前記第2のマップの最少燃料噴射量線は、エンジン出力負側の領域では、燃料噴射量がゼロとなるように設定されてもよい。
【0011】
また、エンジン出力とエンジン回転数とに対応する座標平面上に最適エンジン回転数線が設定された第3のマップから、算出された前記エンジン出力に応じた最適エンジン回転数を読み取ることで、前記エンジンの目標エンジン回転数を設定する目標エンジン回転数設定手段と、検出された前記出力回転数と設定された前記目標エンジン回転数とに基づいて、前記変速機の目標変速比を算出する目標変速比演算手段と、前記変速機の変速比が前記目標変速比となるように前記変速機を制御する変速機制御手段とをさらに備えるものであってもよい。
【0012】
また、前記第3のマップの最適エンジン回転数線は、エンジン出力負側の領域では、エンジン出力が減少するにつれてエンジン回転数が上昇するように設定されてもよく、前記変速機は、無段変速機であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車両の制御装置によれば、最少の燃料噴射量でドライバが所望する車両走行を可能にしつつ、エンジンの燃費を効果的に向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1〜7に基づいて、本発明の一実施形態に係る車両の制御装置を説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0016】
図1に示すように、車両1には内燃機関としてのディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)10が搭載されている。エンジン10の出力軸は、クラッチ11を介して無段変速機12の入力軸に接続されている。また、無段変速機12の出力軸は、プロペラシャフト13、終減速機14及び、ドライブシャフト15を介して駆動輪17に接続されている。すなわち、エンジン10の駆動力は、クラッチ11が接続されると、無段変速機12で連続的に変速された後に、プロペラシャフト13、終減速機14及び、ドライブシャフト15を介して駆動輪17へと伝達されるように構成されている。
【0017】
アクセルセンサ18は、ドライバによるアクセルペダルの操作量を検出するもので、検出された操作量は電気的に接続された演算ECU40にアクセル開度A
pとして出力される。
【0018】
回転数センサ19は、無段変速機12の出力回転数を検出するもので、検出された出力回転数は電気的に接続された演算ECU40に変速機出力回転数N
tとして出力される。
【0019】
エンジンECU20は、エンジン10の燃料噴射等の各種制御を行うもので、公知のCPUやROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備え構成されている。このエンジンECU20は、演算ECU40と電気配線を介して相互通信可能に接続されており、演算ECU40から入力される制御信号に応じてエンジン10の運転状態を制御する。具体的には、エンジン10の燃料噴射量が演算ECU40から入力される目標燃料噴射量F
tとなるように、図示しないインジェクタの電磁ソレノイドに所定パルスの電流を印可するように構成されている。
【0020】
変速機ECU30は、無段変速機12の動作を制御するもので、公知のCPUやROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備え構成されている。この変速機ECU30は、演算ECU40と電気配線を介して相互通信可能に接続されており、演算ECU40から入力される制御信号に応じて無段変速機12の変速比を制御する。具体的には、無段変速機12の変速比が演算ECU40から入力される目標変速比S
tとなるように、図示しない変速用アクチュエータに所定の作動信号を出力するように構成されている。
【0021】
演算ECU40は、エンジン10の目標燃料噴射量F
tや無段変速機12の目標変速比S
tを演算するもので、前述のエンジンECU20や変速機ECU30と同様に公知のCPUやROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備え構成されている。これら目標燃料噴射量F
tや目標変速比S
tを演算するために、演算ECU40には、アクセルセンサ18、回転数センサ19及び図示しない車速センサ等の各種センサの出力信号がA/D変換された後に入力される。
【0022】
また、
図2に示すように、演算ECU40は、変速機出力トルク設定部41と、エンジン出力演算部42と、目標燃料噴射量設定部43と、目標エンジン回転数設定部44と、目標変速比演算部45とを一部の機能要素として有する。これら各機能要素は、本実施形態では一体のハードウェアである演算ECU40に含まれるものとして説明するが、これらのいずれか一部を別体のハードウェアに設けることもできる。
【0023】
変速機出力トルク設定部41は、アクセルセンサ18から入力されるアクセル開度A
pと、回転数センサ19から入力される変速機出力回転数N
tとに基づいて、無段変速機12の変速機出力トルクT
tを設定する。より詳しくは、演算ECU40には、予め実験等で作成された車速とアクセル開度毎の要求駆動力の関係を示す要求駆動力マップ(
図3参照)が記憶されている。この要求駆動力マップは、横軸を変速機出力回転数N
t、縦軸を変速機出力トルクT
tとした座標平面上に、複数本の等アクセル開度ライン(
図3中の破線参照)が所定開度毎、例えば10%毎に設定されている。なお、要求駆動力マップの座標平面上において、変速機出力トルクT
tが0(ゼロ)よりも小さい領域はエンジンブレーキが作用する領域を示している。
【0024】
要求駆動力マップ上では、アクセル開度が30〜100%の範囲にある等アクセル開度ラインは、変速機出力回転数N
tが上昇するにつれて、変速機出力トルクT
tは次第に低下するように設定されている。また、アクセル開度が0〜20%の範囲にある等アクセル開度ラインは、変速機出力回転数N
tが所定回転数に達するまでは、変速機出力トルクT
tは次第に低下するように設定される一方、変速機出力回転数N
tが所定回転数よりも上昇すると、変速機出力トルクT
tは次第に増加するように設定されている。変速機出力トルク設定部41は、要求駆動力マップから、アクセル開度A
pと変速機出力回転数N
tとに対応する変速機出力トルクT
tを読み取ることで、無段変速機12の変速機出力トルクT
tを設定するように構成されている。
【0025】
エンジン出力演算部42は、回転数センサ19から入力される変速機出力回転数N
t及び、変速機出力トルク設定部41で設定された変速機出力トルクT
tに基づいて、エンジン10のエンジン出力(仕事率)W
eを算出する。ここで、エンジン出力W
eは、以下の式(1)で算出することができる。
W
e=N
t×T
t・・・(1)
【0026】
このようにして算出されたエンジン出力W
eは、詳細を後述する目標燃料噴射量設定部43と目標エンジン回転数設定部45とにそれぞれ入力されるように構成されている。
【0027】
目標燃料噴射量設定部43は、エンジン出力演算部42で算出されたエンジン出力W
eに基づいて、エンジン10の目標燃料噴射量F
tを設定する。より詳しくは、演算ECU40には、
図4のエンジン動作線を示すマップの最少燃料噴射ラインを読み替えた、
図5のエンジン出力W
eと燃料噴射量Fとの関係を示す出力噴射量マップが記憶されている。この出力噴射量マップには、横軸をエンジン出力W
e、縦軸を燃料噴射量Fとした座標平面上に、エンジン10の燃料噴射量を最も少なくする最少燃料噴射量ライン(
図5中の太線参照)が設定されている。特に、この最少燃料噴射量ラインは、エンジン出力W
eの正側領域では、エンジン出力W
eが増加するにつれて、燃料噴射量Fは多くなるように設定される一方、エンジン出力W
eの負側領域では、燃料噴射量Fは0(ゼロ)となるように設定されている。
【0028】
目標燃料噴射量設定部43は、出力噴射量マップからエンジン出力W
eに対応する燃料噴射量Fを読み取ることで、目標燃料噴射量F
tを設定すると共に、設定した目標燃料噴射量F
tをエンジンECU20に出力するように構成されている。これにより、エンジンECU20から図示しないインジェクタの電磁ソレノイドに目標燃料噴射量F
tに応じた所定パルスの電流が印可され、エンジン10の燃料噴射量は目標燃料噴射量F
tとなるように制御される。
【0029】
目標エンジン回転数設定部44は、エンジン出力演算部42で算出されたエンジン出力W
eに基づいて、エンジン10の目標エンジン回転数N
eを設定する。より詳しくは、演算ECU40には、
図4に示すマップを読み替えた、
図6のエンジン出力W
eとエンジン回転数Nとの関係を示す出力回転数マップが記憶されている。さらに、この出力回転数マップには、横軸をエンジン出力W
e、縦軸をエンジン回転数Nとした座標平面上に、エンジン10の出力に応じた最適エンジン回転数ライン(
図6中の太線参照)が設定されている。最適エンジン回転数ラインは、エンジン出力W
eの正側領域では、エンジン出力W
eが増加するにつれて、エンジン回転数N
eは上昇するように設定される一方、エンジン出力W
eの負側領域では、エンジン出力W
eが低下するにつれて、エンジン回転数N
eは上昇するように設定されている。エンジン回転数設定部44は、出力回転数マップからエンジン出力W
eに対応するエンジン回転数Nを読み取ることで、目標エンジン回転数N
eを設定するように構成されている。
【0030】
目標変速比演算部45は、回転数センサ19から入力される変速機出力回転数N
t及び、目標エンジン回転数設定部44で設定された目標エンジン回転数N
eに基づいて、無段変速機12の目標変速比R
tmを算出する。ここで、目標変速比R
tmは、以下の式(2)で算出することができる。
R
tm=N
e/N
t・・・(2)
【0031】
このようにして算出された目標変速比R
tmは、変速機ECU30に出力される。これにより、変速機ECU30から図示しない変速用アクチュエータに目標変速比S
tに応じた作動信号が入力され、無段変速機12の変速比は目標変速比S
tとなるよう制御される。
【0032】
次に、本実施形態に係る車両の制御装置による制御フローを
図7に基づいて説明する。なお、本制御はエンジン10の始動(イグニッションスイッチのキースイッチON)と同時にスタートする。
【0033】
ステップ(以下、ステップを単にSと記載する)100では、変速機出力トルク設定部41により、アクセルセンサ18から入力されるアクセル開度A
pと、回転数センサ19から入力される変速機出力回転数N
tとに基づいて、
図3に示す要求駆動力マップから無段変速機12の変速機出力トルクT
tが設定される。
【0034】
S110では、エンジン出力演算部42により、回転数センサ19から入力される変速機出力回転数N
t及び、変速機出力トルク設定部41で設定された変速機出力トルクT
tに基づいて、エンジン10のエンジン出力W
eが算出される。
【0035】
S120では、目標燃料噴射量設定部43により、
図5に示す出力噴射量マップから前述のS110で設定されたエンジン出力W
eに対応する燃料噴射量Fが読み取られることで、目標燃料噴射量F
tが設定される。さらに、S130では、エンジン回転数設定部44により、
図6に示す出力回転数マップからエンジン出力W
eに対応するエンジン回転数Nが読み取られることで、目標エンジン回転数N
eが設定される。
【0036】
S140では、目標変速比演算部45により、回転数センサ19から入力される変速機出力回転数N
t及び、前述のS130で設定された目標エンジン回転数N
eに基づいて、無段変速機12の目標変速比R
tmが算出される。
【0037】
S150では、前述のS120で設定された目標燃料噴射量F
tが、演算ECU40からエンジンECU20に入力されると共に、前述のS140で算出された目標変速比R
tmが、演算ECU40から変速機ECU30に入力される。さらに、S160では、エンジン10の燃料噴射量が目標燃料噴射量F
tとなるように制御され、かつ、無段変速機12の変速比が目標変速比R
tmとなるように制御されてリターンされる。その後、本制御のS100〜160までの各ステップは、エンジン10の停止(イグニッションスイッチのキースイッチOFF)まで繰り返し行われる。
【0038】
次に、本実施形態に係る車両の制御装置による作用効果について説明する。
【0039】
本実施形態の車両の制御装置では、アクセルセンサ18で検出されるアクセル開度A
pと、回転数センサ19で検出される変速機出力回転数N
tとに基づいて、
図3に示す要求駆動力マップから変速機出力トルクT
tが設定される。さらに、この設定された変速機出力トルクT
tと、回転数センサ19で検出される変速機出力回転数N
tとに基づいてエンジン出力W
eが算出される。
【0040】
このようして算出されたエンジン出力W
eは、
図5に示す出力噴射量マップから最少燃料噴射量ラインに応じた目標燃料噴射量F
tの読み取りに用いられると共に、
図6に示す出力回転数マップから目標エンジン回転数N
eの読み取りに用いられる。さらに、設定された目標エンジン回転数N
eと、回転数センサ19で検出される変速機出力回転数N
tとに基づいて、無段変速機12の目標変速比R
tmが算出される。その後、設定された目標燃料噴射量F
tはエンジンECU20に出力されると共に、目標変速比R
tmは変速機ECU30に出力されるように構成されている。これにより、エンジン10の燃料噴射量は目標燃料噴射量F
tとなるように制御され、かつ、無段変速機12の変速比は目標変速比R
tmとなるように制御される。
【0041】
したがって、本実施形態の車両の制御装置によれば、ドライバのアクセル操作から、エンジン10の運転状態と無段変速機12の変速比とを一意に決定することができる。さらに、最少の燃料噴射量でドライバが所望する車両の走行を可能にしつつ、エンジン10の燃費を向上することができる。
【0042】
また、本実施形態の車両の制御装置では、
図5の出力噴射量マップに示すように、エンジン出力W
eの負側領域において、燃料噴射量Fは0(ゼロ)となるように設定されている。さらに、
図6の出力回転数マップに示すように、エンジン出力W
eの負側領域において、エンジン出力W
eが低下するにつれて、エンジン回転数Nは上昇するように設定されている。
【0043】
したがって、本実施形態の車両の制御装置によれば、エンジン出力W
eの負側領域において、無駄な燃料噴射を行わないことで、エンジン10の燃費を効果的に向上することができると共に、エンジン回転数を上昇させることで、エンジンブレーキを効果的に作用させることができる。
【0044】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0045】
例えば、上述の実施形態において、各ECU20,30,40は別体のハードウェアに設けられるものとして説明したが、これら一部もしくは全部を一体のハードウェアとして設けることもできる。
【0046】
また、エンジン10はディーゼルエンジンに限られず、例えばガソリンエンジンなど、他の内燃機関にも広く適用することができる。