(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車体フレームに対して車両上下方向に揺動可能に支持されるエンジンユニットと、このエンジンユニットの車両上方で車体フレームに取り付けられた燃料タンクと、この燃料タンク内で発生する燃料蒸発ガスの排出を抑制する燃料蒸発ガス排出抑制装置と、を有するスクータ型自動二輪車であって、
前記エンジンユニットは、エンジンと変速装置とを一体的に備えて構成され、
前記エンジンはクランクケースと、このクランクケースから車両前方に向かって延出するシリンダアッセンブリとを備えてなり、
前記シリンダアッセンブリのシリンダヘッドに吸気装置及び排気装置が接続され、これらの吸気装置と排気装置が、前記シリンダアッセンブリを挟み車幅方向反対側で車両後方へ延設され、
前記クランクケースの車幅方向一端側で前記吸気装置と同じ側から車両後方へ向かって前記変速装置のケーシングが延出され、
前記燃料蒸発ガス排出抑制装置は、前記燃料蒸発ガスを一時的に吸着すると共に前記吸気装置へ放出可能なキャニスタを備え、このキャニスタは、前記シリンダアッセンブリにおける前記吸気装置側の一側方であって前記変速装置ケーシングの車両前方に形成される空間内に配置されると共に、車両側面視において、前記吸気装置よりも前記エンジンユニットの揺動中心の近傍で、且つこの揺動中心の直上で前記吸気装置よりも下方に位置するように前記車体フレームに取り付けられ、
この車体フレームに取り付けられた前記キャニスタは、前記車体フレームに揺動可能に支持された前記エンジンユニットの前記エンジンの前記シリンダヘッドに接続された前記吸気装置とパージホースにより接続されたことを特徴とするスクータ型自動二輪車。
前記キャニスタは、車両側面視において、その上端が、吸気装置の下端よりも下方に位置するように配置されたことを特徴とする請求項1に記載のスクータ型自動二輪車。
前記キャニスタは、その長手方向を車両上下方向に向けた姿勢で配置され、燃料タンクと前記キャニスタ間を接続するサージホース、及び吸気装置と前記キャニスタ間を接続するパージホースが前記キャニスタの上部に接続される一方、一端が大気解放されたキャニスタエアホースの他端が、前記キャニスタの下部に接続されたことを特徴とする請求項1または2に記載のスクータ型自動二輪車。
前記キャニスタバキュームホースは、吸気装置側接続端部とキャニスタ側接続端部とを結ぶ仮想直線に対して車両前方側に配置されると共に、車両空車時の車両側面視においてその主要部が、前記仮想直線に対し平行に配設されたことを特徴とする請求項5に記載のスクータ型自動二輪車。
前記エンジンユニットは、車両側面視において、キャニスタバキュームホースの車両空車状態における位置と車両最圧状態における位置とのなす角度αよりも、前記キャニスタバキュームホースの車両空車状態における位置と車両最伸状態における位置とのなす角度βの方が小さくなるように設定されたことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載のスクータ型自動二輪車。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための実施形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明に係るスクータ型自動二輪車の一実施形態を示す左側面透視図であり、
図2は、
図1のスクータ型自動二輪車の後半部を、フレームカバーを除いて示す左側面図である。本実施の形態において、前後、左右、上下の表現は、車両乗車時の運転者を基準にしたものである。
【0014】
スクータ型自動二輪車10は、アンダーボーン型の車体フレーム11を備える。この車体フレーム11は、前頭部のステアリングパイプ12の後部から1本のメインフレーム13が下方へ向かって延出され、このメインフレーム13の下部から左右一対の第1リアフレーム14Aが後斜め上方へ延出され、これらの第1リアフレーム14Aに、平面視U字形状の第2リアフレーム14Bが一体化されて構成される。
【0015】
ステアリングパイプ12にフロントフォーク15が、ハンドルバー16と共に左右に回動自在に支持され、このフロントフォーク15の先端に前輪17が軸支されている。一方、
図1〜
図3に示すように、前記メインフレーム13の後端部と第1リアフレーム14Aとの連結部分にエンジン懸架ブラケット18が取り付けられる。このエンジン懸架ブラケット18に、リンク部材19を介してエンジンユニット20が、ピボット軸21回りに上下方向に揺動可能に枢支される。尚、ピボット軸21はエンジンユニット20側の揺動中心であり、
図2の符号22は、リンク部材19のエンジン懸架ブラケット18に対する車体側揺動中心である。
【0016】
エンジンユニット20は、スクータ用として一般的に用いられるものであり、エンジン23と変速装置24とを一体に備えて構成され、変速装置24の後部に後輪25が直接軸支される。変速装置24の後部と第2リアフレーム14Bとの間にリアクッションユニット26が上下に掛け渡され、このリアクッションユニット26によりエンジンユニット20及び後輪25が緩衝懸架される。ここで、変速装置24は、エンジン23の回転を変速及び伝動するベルト式無段変速機と最終減速機構(共に図示せず)とを含む。
【0017】
車体フレーム11における第2リアフレーム14Bの上方に、着座シート27が開閉自在に設けられる。この着座シート27の車両下方には、シリンダアッセンブリ32(後述)の車両上方に、ヘルメット等の物品を収納可能な物品収納ボックス28が配置され、エアクリーナ46(後述)の車両上方にフューエルタンク29が配置される。これらの物品収納ボックス28及びフューエルタンク29は、車体フレーム11の第2リアフレーム14Bに取り付けられて支持される。着座シート27を開放することによって物品収納ボックス28の上部開口28Aが開放され、この物品収納ボックス28内に物品の出し入れが可能になる。
【0018】
尚、車体フレーム11及びエンジンユニット20の前部は合成樹脂製のフレームカバー30によって全体的に覆われ、外観の向上や内部機器の保護が図られている。
【0019】
図1及び
図7に示すように、エンジン23は、クランクケース31から前方へ向かってシリンダアッセンブリ32が略水平方向に前傾して延出されて構成される。クランクケース31の車幅方向一端側(本実施形態では左側)から変速装置24のケーシング(変速装置ケーシング33)が一体に車両後方へ延出されている。即ち、クランクケース31は左右割り構造であり、左側クランクケース部が車両後方へ延出され、変速機カバーと共に変速装置ケーシング33が構成される。
【0020】
図1に示すように、シリンダアッセンブリ32は、シリンダ34とシリンダヘッド35とヘッドカバー36とがクランクケース31側から順次重ねられて構成される。そして、シリンダ34及びシリンダヘッド35の周囲は、合成樹脂製のシリンダカウル37により覆われている。
【0021】
シリンダカウル37内では、エンジン23のクランクシャフト(不図示)に取り付けられた冷却ファン(不図示)の回転により、
図4に示す導風口38から冷却用空気が導入されて、シリンダ34及びシリンダヘッド35が強制冷却される。上記導風口38は、シリンダカウル37の右側方に開口される。シリンダ34及びシリンダヘッド35を冷却した冷却用空気は、シリンダカウル37の下面に形成された排風口39から排出される。尚、
図4中の符号40は、変速装置ケーシング33内のベルト室へ空気を導くベルト冷却空気用ダクトである。
【0022】
図4〜
図8(特に
図4及び
図5)に示すように、シリンダアッセンブリ32のシリンダヘッド35には、上部に吸気装置41が、下部に排気装置42がそれぞれ接続されている。これらの吸気装置41と排気装置42は、シリンダアッセンブリ32を挟み車幅方向で反対側に位置づけられて、車両後方へ延設される。このうち吸気装置41は、車幅方向で変速装置ケーシング33と同じ側(本実施形態では左側)における変速装置ケーシング33の上方に配置されている。
【0023】
吸気装置41は、特に
図4及び
図7に示すように、シリンダヘッド35に形成される吸気ポート(不図示)に接続され、車両後方へ向けて湾曲形状に延出されるインテークパイプ43と、このインテークパイプ43に接続されるキャブレタ44と、このキャブレタ44に接続されるコネクティングチューブ45と、このコネクティングチューブ45に接続されるエアクリーナ46と、を有して構成される。エアクリーナ46にインレットパイプ47が設けられている。
【0024】
エアクリーナ46にて塵埃等が除去された洗浄な空気が、吸気としてキャブレタ44へ供給される。このキャブレタ44は、吸気ポートへの吸気量に応じて、フューエルタンク29からの燃料をフューエルホース48を経て所定量導入して霧化し、吸気と共にエンジン23(シリンダヘッド35)の吸気ポートへ供給する。ここで、
図2、
図3及び
図6中の符号49はフューエルドレンホースであり、符号29Aは、フューエルタンク29の上部を覆うフューエルタンクカバーである。また、
図5〜
図7中の符号50は、エンジン23内のブローバイガスをエアクリーナ46へ導くブリーザホースである。
【0025】
図6〜
図8を用いて吸気装置41について更に詳述すると、吸気ポートはシリンダヘッド35の左上隅部で左側面に開口する。この吸気ポートに接続されるインテークパイプ43は、車幅方向外側に向けて延出した後、後方へ向けて延出するような湾曲形状を有する。吸気装置41は、
図5及び
図7に示す車両平面視において、シリンダアッセンブリ32のシリンダ軸線Oに対して車両左側に偏倚した位置に配置され、上方に設けられた物品収納ボックス28(
図1、
図2)の底面との干渉を回避している。これにより、物品収納ボックス28を低位に配置でき、この物品収納ボックス28の上方に配置される着座シート27の座面が低くなるため、車両停止時におけるライダーの足着き性が良好になる。
【0026】
また、排気装置42は、
図4及び
図5に示すように、シリンダヘッド35内に形成される排気ポート(不図示)に接続されるエキゾーストパイプ51と、このエキゾーストパイプ51の下流端に接続されるマフラー52とを備えて構成される。エキゾーストパイプ51は、シリンダヘッド35の下面から車両下方へ延び、車幅方向一側へ向けて湾曲した後、エンジン23の一側方を通って車両後方へ延出する。本実施形態では、車幅方向右側にエキゾーストパイプ51及びマフラー52が配置される。このマフラー52は、マフラーカバー53で覆われると共に、車幅方向右側でエンジン23のクランクケース31の右側面後部に、マフラーブラケット54を介して固定される。このようにして、
図1及び
図2に示すように、排気装置42は、吸気装置41と共に、ピボット軸21回りにエンジンユニット20と同期して車両上下に揺動可能に構成される。
【0027】
ところで、
図2、
図3及び
図6に示すように、本実施形態のスクータ型自動二輪車10では、例えばエンジン23の停止中にフューエルタンク29内で発生した燃料蒸発ガスの車外への排出を抑制する燃料蒸発ガス排出抑制装置が設置されている。この燃料蒸発ガス排出抑制装置55は、フューエルタンク29内で発生した燃料蒸発ガスを一時的に吸着すると共に、吸気装置41内へパージ(放出)するキャニスタ56を備える。
【0028】
キャニスタ56は、シリンダアッセンブリ32における吸気装置41側(車両左側)の一側方であって変速装置ケーシング33の車両前方に形成される空間57内に配置される。従って、このキャニスタ56は、シリンダアッセンブリ32を挟んで排気装置42の反対側に位置づけられることになり、排気装置42のエキゾーストパイプ51及びマフラー52からの熱がシリンダアッセンブリ32によって遮られ、キャニスタ56に伝熱されることが防止される。
【0029】
また、キャニスタ56は、車両側面視において、エンジンユニット20の揺動中心であるピボット軸21の近傍且つ直上で、キャニスタブラケット58を用いて車体フレーム11のエンジン懸架ブラケット18に取り付けられる。更に、キャニスタ56はその上端が、吸気装置41(特にキャブレタ44)の下端よりも下方に位置するように配置されている。吸気装置41におけるキャニスタ56の上方に位置する部分(インテークパイプ43及びキャブレタ44)は、ピボット軸21の上方にあるため、エンジンユニット20の揺動時に略水平方向の揺動軌跡を描くことになる。従って、上述のようにキャニスタ56がピボット軸21の近傍且つ直上で吸気装置41の下方に位置しているので、エンジンユニット20の揺動時においても、キャニスタ56が吸気装置41に接触することが防止される。また、キャニスタ56が前記空間57内で吸気装置41の下方に配置されることで、デッドスペースの有効利用が図られる。
【0030】
また、キャニスタ56は、その長手方向を車両上下方向に向けた姿勢で配置されると共に、その上部を車両前方に傾斜させて、車体フレーム11のエンジン懸架ブラケット18に取り付けられる。これにより、車両走行時、エンジンユニット20の車両上下方向の揺動によってもキャニスタ56が周辺部品と干渉することを防止できる。詳述すると、キャニスタ56の後方には変速装置ケーシング33が配置されているが、エンジンユニット20の揺動により変速装置ケーシング33の前端がキャニスタ56に近接移動しても、キャニスタ56が前傾しているため相互に干渉することがない。
【0031】
キャニスタ56の上部後面側には、
図2、
図6及び
図10に示すように、フューエルタンク29からのサージホース60が接続され、フューエルタンク29内で発生した燃料蒸発ガスがキャニスタ56内に導かれて、キャニスタ56の活性炭59に吸着される。また、キャニスタ56の上部前面側には、吸気装置41のキャブレタ44に連通したパージホース61が接続され、後述のパージバルブ63によりキャニスタ56内と吸気装置41(キャブレタ44)との連通、遮断が切り換えられる。キャニスタ56の下部には、一端が大気開放されたキャニスタエアホース62が接続されており、キャニスタ56内は常時外気に連通している。
【0032】
キャニスタ56は、頂部にパージバルブ63を備える。このパージバルブ63には、そのダイヤフラム上部室66Aと吸気装置41(インテークパイプ43)とを接続するキャニスタバキュームホース64が設けられている。
【0033】
パージバルブ63は、
図10に示すように、ダイヤフラム65がダイヤフラム上部室66Aとダイヤフラム下部室66Bとを区画して設置され、ダイヤフラム上部室66A内にダイヤフラム65を付勢するスプリング67が配置され、ダイヤフラム65に弁体68が固着されて構成される。ダイヤフラム下部室66Bは連通孔69を介して、活性炭59が収容された収容室70に連通する。弁体68は、スプリング67の付勢力の作用で弁座71に圧接され、ダイヤフラム下部室66Bとパージホース61との連通を遮断する(パージバルブ63の閉弁)。また、ダイヤフラム上部室66Aはキャニスタバキュームホース64に連通する。
【0034】
パージバルブ63はスプリング67の付勢力により常閉とされる。キャニスタバキュームホース64からダイヤフラム上部室66Aに作用する吸気負圧により、スプリング67の付勢力に抗してダイヤフラム65が移動することで、弁体68が弁座71から離反してパージバルブ63が開弁される。このパージバルブ63が開弁状態にあるとき、キャニスタ56内の活性炭59で吸着された燃料蒸発ガスはパージ(放出)され、連通孔69、ダイヤフラム下部室66Bを経てパージホース61内を流れ、吸気装置41(キャブレタ44)に供給される。
【0035】
このようにして、
図2及び
図6に示すように、エンジン23の停止中にキャニスタ56内に吸着された燃料蒸発ガスは、エンジン23の運転時に吸気装置41のキャブレタ44内にパージされ、予混合気と共にエンジン23の燃焼室へ吸入されて燃焼される。このため、フューエルタンク29内で発生した燃料蒸発ガスの車外への放出が抑制される。
【0036】
ここで、前記パージホース61は、
図7に示すように、吸気装置41のキャブレタ44に接続され、このキャブレタ44の図示しない吸気通路内に配置されたスロットルバルブ(不図示)の下流側で吸気通路に連通する。
【0037】
また、前記キャニスタバキュームホース64は、
図8に示すようにパージホース61と略平行に隣接して配置されると共に、インテークパイプ43に取り付けられたスリーウェイジョイント72に接続され、キャブレタ44よりも下流側の前記吸気通路で発生する負圧を、キャニスタ56のパージバルブ63のダイヤフラム上部室66Aに導く。スリーウェイジョイント72の残りの一端には、二次エア供給装置73のエアカットバルブ74のダイヤフラム室(不図示)に吸気負圧を導くための別の負圧ホースである二次エアバキュームホース75が接続される。
【0038】
尚、二次エア供給装置73は、エンジン23のシリンダヘッド35の排気ポート内が排気脈動により負圧となったときにリードバルブ(不図示)が開弁して、二次エアホース76(
図7、
図8)から排気ポートに新気(二次エア)を導入することで、排気中に酸素を供給して排気中のHCやCOを酸化反応させたり、触媒の作用を促進させて有害排出物を低減させるものである。しかしながら、例えば急減速時等のように、エンジン23の高回転状態でスロットルバルブを全閉したような場合には、吸気負圧が大きくなり空燃比がリッチとなってしまうため、この状態で排気中に二次エアを供給するとアフターファイヤが発生し、触媒等を損傷する可能性がある。
【0039】
そこで、規定以上の吸気負圧が発生したときに二次エアホース76からの二次エアを遮断するために、エアカットバルブ74が設けられている。このエアカットバルブ74は常開とされており、過大な負圧が発生すると、この過大な負圧が二次エアバキュームホース75を経てエアカットバルブ74のダイヤフラム室に作用し、ダイヤフラムが移動してエアカットバルブ74が閉弁動作する。これにより、二次エアホース76から排気ポートへの二次エアの供給が遮断される。
【0040】
図2及び
図9に示すように、本実施形態では、キャニスタバキュームホース64は、吸気装置側接続端部(即ちスリーウェイジョイント側端部)Xとキャニスタ側接続端部(即ちパージバルブ側端部)Yとを結ぶ仮想直線Mに対して車両前方に配置される。更にキャニスタバキュームホース64は、車両空車時の車両側面視において、その主要部が、前記仮想直線Mに対して平行に略直線状に配設されている。これらにより、キャニスタバキュームホース64を最短経路で配管できると共に、キャニスタ56上方の狭小空間内にキャニスタバキュームホース64を収めることが可能になり、エンジンユニット20の揺動時にキャニスタバキュームホース64がパージホース61と共に大きく振動して車体フレーム11の特に第1リアフレーム14Aに干渉することが防止される。
【0041】
ここで、
図9における符号L0は、車両空車時(車両空車状態)におけるキャニスタバキュームホース64の位置を示し、符号L1はリアクッションユニット26の最圧時(車両最圧状態)におけるキャニスタバキュームホース64の位置を示し、符号L2はリアクッションユニット26の最伸時(車両最伸状態)におけるキャニスタバキュームホース64の位置を示す。
【0042】
また、略平行に隣接配設されたキャニスタバキュームホース64及びパージホース61は、
図9に示す車両側面視において、空車状態におけるキャニスタバキュームホース64の吸気装置側接続端部Xとエンジンユニット20の揺動中心であるピボット軸21とを結ぶ仮想直線Nに対して交差するように配設されている。これにより、エンジンユニット20の揺動時にキャニスタバキュームホース64及びパージホース61に作用する慣性力Fのうち、これらのホース(キャニスタバキュームホース64、パージホース61)の長手方向に直交する方向の分力F1がこれらのホースを揺動させる力になるが、この分力F1が慣性力Fよりも小さいので、これらのホース(キャニスタバキュームホース64及びパージホース61)を仮想直線Nに対して略平行となるように配設した場合に比べて、これらホースの振動時の振幅が抑制される。
【0043】
更に、エンジンユニット20は、車両側面視において、キャニスタバキュームホース64の車両空車状態における位置L0と車両最圧状態における位置L1とのなす角αよりも、キャニスタバキュームホース64の車両空車状態における位置L0と車両最伸状態における位置L2とのなす角βの方が小さくなるように設置されている。これにより、キャニスタ56が前傾配置されてキャニスタ側接続端部Y側でキャニスタバキュームホース64の曲率半径が小さくなっている場合でも、エンジンユニット20が車両最伸状態側へ揺動したときに、キャニスタバキュームホース64がキャニスタ側接続端部Y付近で潰されて、内部通路が遮断されることが防止される。
【0044】
尚、キャニスタバキュームホース64と平行にパージホース61が配設されているが、このパージホース61のキャニスタ側接続端部付近の変形についても、キャニスタバキュームホース64と同様であるため、パージホース61の内部通路の遮断が防止される。
【0045】
以上のように構成されたことから、本実施形態によれば、次の効果(1)〜(11)を奏する。
【0046】
(1)吸気装置41が、
図4に示すように、シリンダアッセンブリ32を挟んで排気装置42と反対側に配置され、キャニスタ56が、
図6及び
図9に示すように、シリンダアッセンブリ32における吸気装置41側の一側方であって変速装置ケーシング33の車両前方に形成された空間57内に配置されたので、キャニスタ56を排気装置42から離間して配置できる。このため、キャニスタ56内の活性炭59が高温となって燃料蒸発ガス(HC、CO)の吸着性能が低下することを防止できる。特に、排気装置42とキャニスタ56との間にシリンダアッセンブリ32が位置するので、排気装置42の周囲の高温雰囲気のみならず、排気装置42からの輻射熱もキャニスタ56に伝達しないようにできる。
【0047】
(2)キャニスタ56が、シリンダアッセンブリ32における吸気装置41側の一側方に配置されるので、キャニスタ56と吸気装置41とを接続するパージホース61及びキャニスタバキュームホース64の長さを短縮できる。このため、エンジンユニット20及び吸気装置41が車両上下方向に揺動した場合にも、これらのパージホース61及びキャニスタバキュームホース64が周辺部品と干渉することを回避でき、この結果、パージホース61及びキャニスタバキュームホース64の損傷を防止できる。
【0048】
(3)エンジンユニット20の揺動中心であるピボット軸21の近傍且つ直上にキャニスタ56が配置されたので、エンジンユニット20における揺動変位量が小さい部位の周辺にキャニスタ56を配置できる。このため、キャニスタ56とエンジンユニット20との干渉を確実に回避できる。
【0049】
(4)エンジンユニット20と共に揺動する吸気装置41は、エンジンユニット20の揺動中心であるピボット軸21の上方に位置しているため、この吸気装置41の揺動軌跡は略水平方向の成分が主になる。このとき、キャニスタ56の上端が、吸気装置41の下端(特にキャブレタ44の下端)よりも下方に位置しているので、キャニスタ56の上方空間で吸気装置41が上述のように略水平方向に揺動する際に、この吸気装置41とキャニスタ56との干渉を回避することができる。
【0050】
(5)吸気装置41はキャニスタ56の車両上方に配置されたので、この吸気装置41に接続されるパージホース61をキャニスタ56の上部に接続することで、パージホース61を短縮できる。これにより、エンジンユニット20と共に揺動するパージホース61の揺動変位量を低減でき、パージホース61の周辺部品との干渉を防止できるので、パージホース61の損傷を回避できる。
【0051】
(6)キャニスタエアホース62がキャニスタ56の下部に接続されたので、このキャニスタエアホース62の大気解放端から仮に水が浸入した場合にも、キャニスタ56内の底部に水が溜まることになる。このため、キャニスタ56内の活性炭59(
図10)に水が付着することを抑制できる。
【0052】
(7)キャニスタ56は、
図2及び
図9に示すように、その上部を車両前方に傾斜させて車体フレーム11のエンジン懸架ブラケット18に取り付けられたので、車両走行時に、エンジンユニット20の車両上下方向の揺動によっても、キャニスタ56が周辺部品、特に変速装置ケーシング33の前端部分と干渉することを防止できる。
【0053】
(8)キャニスタ56に接続されるパージホース61及びキャニスタバキュームホース64が略平行に隣接して配設されたので、エンジンユニット20の揺動時に振動するパージホース61及びキャニスタバキュームホース64をまとめて束ねることで、これらのホース61及び64をコンパクト化できる。
【0054】
(9)キャニスタバキュームホース64は、吸気装置側接続端部Xとキャニスタ側接続端部Yとを結ぶ仮想直線Mに対し車両前方に配置されると共に、車両空車時の車両側面視においてその主要部が仮想直線Mに対し平行に略直線状に配設されている。このため、キャニスタバキュームホース64を最短経路で配管でき、更にキャニスタ56上方の狭小空間内にキャニスタバキュームホース64を収めることができる。これらの結果、エンジンユニット20の揺動時にキャニスタバキュームホース64がパージホース61と共に大きく振動して周辺部品(特に第1リアフレーム14A)に干渉することを防止でき、更に、キャニスタバキュームホース64が吸気装置側接続端部X、キャニスタ側接続端部Y付近で大きく撓んで損傷し、燃料蒸発ガスが漏出することを防止できる。
【0055】
(10)パージホース61及びキャニスタバキュームホース64が、車両側面視において、車両空車状態におけるキャニスタバキュームホース64の吸気装置側接続端部Xとエンジンユニット20のピボット軸61とを結ぶ仮想直線Nに対し交差して配設されたので、エンジンユニット20の揺動時にパージホース61及びキャニスタバキュームホース64に作用する慣性力Fの分力F1が、パージホース61及びキャニスタバキュームホース64に振動を与える力になる。この分力F1は慣性力Fよりも小さいので、パージホース61及びキャニスタバキュームホース64を仮想直線Nに対して略平行となるように配設した場合に比べて、これらホースの振動時における振幅を抑制できる。
【0056】
(11)エンジンユニット20は、車両側面視において、キャニスタバキュームホース64の車両空車状態における位置L0と車両最圧状態における位置L1とのなす角αよりも、キャニスタバキュームホース64の車両空車状態における位置L0と車両最伸状態における位置L2とのなす角βの方が小さくなるよう設定されている。このため、エンジンユニット20の揺動時(特に車両最伸状態)にキャニスタバキュームホース64が大きく曲げ変形されて、内径の小さなキャニスタバキュームホース64の連通が遮断されることを防止できる。このようにキャニスタバキュームホース64の連通遮断が防止されるので、キャニスタ56のパージバルブ63の不必要な閉弁が回避され、キャニスタ56内の活性炭59に吸着された燃料蒸発ガスを吸気装置41のキャブレタ44内へ良好にパージすることができる。
【0057】
以上実施形態について説明してきたが、本発明は、上述したような各実施形態の具体的構成に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することができる。