特許第6019575号(P6019575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019575
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】車両運転支援装置及び車両運転支援方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20161020BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20161020BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   G08G1/16 D
   G08G1/09 D
   G08G1/09 H
   G08G1/09 F
   G08G1/09 R
   B60R21/00 621C
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-272589(P2011-272589)
(22)【出願日】2011年12月13日
(65)【公開番号】特開2013-125344(P2013-125344A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】塚田 悟之
【審査官】 田中 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−102529(JP,A)
【文献】 特開2006−226824(JP,A)
【文献】 特開2011−022643(JP,A)
【文献】 特開平09−190596(JP,A)
【文献】 特開2008−217248(JP,A)
【文献】 特開2010−020637(JP,A)
【文献】 特開2011−204125(JP,A)
【文献】 特開2008−065480(JP,A)
【文献】 特開2006−251894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 − 99/00
G01C 21/00 − 21/36
G01C 23/00 − 25/00
G09B 23/00 − 29/14
B60R 16/00 − 17/02
B60R 21/00 − 21/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点における自車両の左折を支援する車両運転支援装置であって
路車間通信機能及び車車間通信機能の少なくとも一方の通信機能を有する通信手段と、
前記通信手段によって自車両の後方を走行する二輪車を検出する二輪車検出手段と、
自車両に搭載した方向指示器の作動状態に基づいて、自車両の乗員の左折意思を検出する左折意思検出手段と、
前記通信手段によって自車両が進入しようとしている交差点の道路構造を取得する道路構造取得手段と、
自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
交差点手前において、前記左折意思検出手段で左折意思があることを検出し、且つ前記二輪車検出手段で自車両の後方を走行する二輪車が存在することを検出しているとき、前記走行状態検出手段で検出した走行状態と前記道路構造取得手段で取得した道路構造とに基づいて、前記二輪車に関する注意喚起の必要性を判断する必要性判断手段と、
前記必要性判断手段で注意喚起の必要性ありと判断したタイミングで、前記二輪車が自車後方から接近していることを示す情報を提示する情報提示手段と、を備え、
前記道路構造取得手段は、前記道路構造として、自車両が進入しようとしている交差点の道路幅員、及び自車両が走行している道路と自車両が左折しようとしている道路との交差角度を取得し、
前記必要性判断手段は、前記道路構造取得手段で取得した交差点の道路構造が、自車両の交差点への進入速度が遅くなる傾向が高い構造であるほど、前記注意喚起の必要性ありと判断するタイミングを遅くし、
前記道路幅員に基づいて前記注意喚起の必要性ありと判断したタイミングと、前記交差角度に基づいて前記注意喚起の必要性ありと判断したタイミングのうち、早い方を最終的な前記注意喚起の必要性ありと判断したタイミングとすることを特徴とする車両運転支援装置。
【請求項2】
前記必要性判断手段は前記注意喚起の必要性ありと判断するタイミングをステップ状に遅くすることを特徴とする請求項に記載の車両運転支援装置。
【請求項3】
前記必要性判断手段は、
自車両の現在の走行位置を検出する現在位置検出手段と、
前記現在位置検出手段で検出した自車両の現在の走行位置から、予め設定した交差点内での左折車両及び二輪車の軌道が交差すると予測される交差予測位置までの残距離を算出
する残距離算出手段と、
前記走行状態検出手段で検出した走行状態に基づいて、自車両が停止するのに要する停止必要距離を算出する停止必要距離算出手段と、を備え、
前記残距離算出手段で算出した前記交差予測位置までの残距離が、前記停止必要距離算出手段で算出した停止必要距離よりも短いとき、前記注意喚起の必要性ありと判断するものであって、
前記停止必要距離算出手段は、前記道路構造取得手段で取得した交差点の道路構造が、自車両の交差点への進入速度が遅くなる傾向が高い構造であるほど、前記停止必要距離を短く算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両運転支援装置。
【請求項4】
前記走行状態検出手段は、走行状態として自車両の現在の車速を検出し、
前記停止必要距離算出手段は、下式により停止必要距離Lnを算出するものであって、前記道路構造取得手段で取得した交差点の道路構造が、自車両の交差点への進入速度が遅くなる傾向が高い構造であるほど、下記減速度Dを大きく設定することを特徴とする請求項3に記載の車両運転支援装置。
Ln=Vnow・T+Vnow/2・D
Vnow:自車両の現在の車速
T:予め定義した運転者の反応時間
【請求項5】
交差点における自車両の左折を支援する車両運転支援方法であって
路車間通信機能及び車車間通信機能の少なくとも一方の通信機能によって自車両の後方を走行する二輪車を検出するステップと、
自車両に搭載した方向指示器の作動状態に基づいて、自車両の乗員の左折意思を検出するステップと、
前記通信機能によって自車両が進入しようとしている交差点の道路構造を取得するステップと、
自車両の走行状態を検出するステップと、
交差点手前において、左折意思があることを検出し、且つ自車両の後方を走行する二輪車が存在することを検出しているとき、前記走行状態と前記道路構造とに基づいて、前記二輪車に関する注意喚起の必要性を判断するステップと、
前記注意喚起の必要性ありと判断したタイミングで、前記二輪車が自車後方から接近していることを示す情報を提示するステップと、を備え、
前記交差点の道路構造を取得するステップでは、前記道路構造として、自車両が進入しようとしている交差点の道路幅員、及び自車両が走行している道路と自車両が左折しようとしている道路との交差角度を取得し、
前記注意喚起の必要性を判断するステップでは、取得した交差点の道路構造が、自車両の交差点への進入速度が遅くなる傾向が高い構造であるほど、前記注意喚起の必要性ありと判断するタイミングを遅くし、
前記道路幅員に基づいて前記注意喚起の必要性ありと判断したタイミングと、前記交差角度に基づいて前記注意喚起の必要性ありと判断したタイミングのうち、早い方を最終的な前記注意喚起の必要性ありと判断したタイミングとすることを特徴とする車両運転支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点における自車両の左折を支援するための情報提供を行う車両運転支援装置及び車両運転支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交差点を左折する車両に交差点を直進する二輪車の存在を伝達し、交差点左折時の安全性を向上する車両運転支援装置として、例えば特許文献1に記載の技術がある。
この技術では、路側設備が、交差点左折意思を有する左折車両に対して、当該左折車両の後方を走行する二輪車の情報を送信する。このとき、左折車両側では、左折車両の乗員に対して、後方に二輪車が存在することを報知する。この報知のタイミングは、左折車両の交差点までの距離と二輪車の交差点までの距離との比較結果および相対速度に基づいて決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−269426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術にあっては、単に交差点までの距離の比較や相対速度に基づいて情報提供のタイミングを決定しており、走行中の道路構造については全く考慮していない。そのため、道路構造によっては、情報提供のタイミングが不適切となる場合がある。
そこで、本発明は、交差点手前において、適切なタイミングで左折車両の乗員に二輪車の情報を提示することができる車両運転支援装置及び車両運転支援方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、交差点手前で乗員の左折意思を検出しており、且つ自車後方に二輪車を検出しているとき、交差点の道路構造と自車両の走行状態に基づいて、二輪車に関する注意喚起の必要性を判断する。このとき、交差点の道路構造が、自車両の交差点への進入速度が遅くなる傾向が高い構造であるほど、注意喚起の必要性ありと判断するタイミングを遅くする。そして、注意喚起の必要性ありと判断したタイミングで、二輪車が自車後方から接近していることを示す情報を提示する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、道路構造に対応した適切なタイミングで、左折車両の乗員に対して後方に二輪車が存在することを報知することができる。したがって、情報の信頼度を向上し、交差点左折時における安全性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る車両運転支援装置が適用されるシステムの構成を示す図である。
図2】車両運転支援装置の構成を示すブロック図である。
図3】処理部で実行する運転支援処理手順を示すフローチャートである。
図4】自車両の位置と交差予測位置との関係を示す図である。
図5】道路構成について説明する図である。
図6】減速度設定マップの一例を示す図である。
図7】第1の実施形態の動作を説明する図である。
図8】交差角度について説明する図である。
図9】減速度設定マップの一例を示す図である。
図10】第2の実施形態の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態では、日本国のように左側通行の地域を走行する車両に対して車両運転支援装置を搭載し、交差点での左折を支援する場合について説明する。なお、米国のように右側通行の地域を走行する車両に対して車両運転支援装置を搭載する場合には、交差点での右折を支援することになる。
【0009】
(第1の実施の形態)
(構成)
図1は、本実施形態に係る車両運転支援装置が適用されるシステムの構成を示す図である。
図中、符号1は路側インフラ設備である。路側インフラ設備1は、路上の交差点付近に設置した画像センサ2とDSRC(Dedicated Short Range Communication)送信機3とを備える。画像センサ2及びDSRC送信機3は、道路の進行方向と逆向き、即ち道路を走行する車両MCと対向する向きで設置する。画像センサ2は、交差点手前の一定の撮像エリア2aを走行する二輪車MBを撮像し、撮像した画像をDSRC制御装置4に出力する。
【0010】
また、路側インフラ設備1は、信号機5と信号制御機6とを備える。信号制御機6は、信号機5の灯色状態を制御すると共に、信号機5の灯色状態をDSRC制御装置4に出力する。
DSRC制御装置4は、画像センサ2から入力した撮像画像や信号制御機5から入力した信号灯色状態を解析する。そして、DSRC制御装置4は、これらの解析結果から車両MCに対して送信する交通情報を生成する。ここで、交通情報は、二輪車MBの情報(二輪車MBの有無、二輪車MBの位置情報など)、信号機5の灯色状態(赤/青/黄)などを含む。DSRC制御装置4は、生成した交通情報をDSRC送信機3に出力する。
【0011】
DSRC送信機3は、DSRC制御装置4から入力した交通情報を、交差点手前に設定したDSRC送信機3の有効通信エリア内を走行する車両MCに対して、電波によって配信する。
さらに、路側インフラ設備1は、光ビーコン通信機7を備える。光ビーコン通信機7は、DSRC送信機3に向かって走行する車両MCの道路上に、DSRC送信機3の設置位置から所定距離だけ車両MCの進行方向手前に離間した位置に設置する。この光ビーコン通信機7は、ビーコン制御装置8に登録した道路情報を、車両MCのアップリンク要求に応じたダウンリンク情報として送信する。
【0012】
ここで、道路情報は、車線情報(光ビーコン通信機7を設置した車線の情報)、道路構造(光ビーコン通信機7を設置した道路の幅員、次の交差点の交差角度)、位置情報(光ビーコン通信機7の設置位置)などを含む。
光波は直進性が強いため、光ビーコンを用いることにより、約3.5m四方の通信エリアを形成してスポット通信を行うことができる。つまり、光ビーコンの通信エリアでは、位置精度3.5m以下という正確な精度で車両MCに位置情報を伝達することができる。
【0013】
車両MCは、車両運転支援装置10を備える。車両運転支援装置10は、路側インフラ設備1から受信した交通情報及び道路情報に基づいて、交差点左折意思を有する車両MCの乗員に対して、必要に応じて車両MCの後方を走行する二輪車MBに関する注意喚起を行う。
【0014】
以下、車両運転支援装置10の具体的構成について説明する。
図2は、車両運転支援装置10の構成を示すブロック図である。
この車両運転支援装置10は、DSRC車載器11と、ビーコンアンテナ12と、カーナビゲーションシステム13とを備える。
DSRC車載器11は、DSRCアンテナ11aを介して路側のDSRC送信機3と電波による無線通信を行う。すなわち、DSRC車載器11は、DSRCアンテナ11aを介して路側のDSRC送信機3が送信する交通情報を受信する。DSRC車載器11は、受信した交通情報をカーナビゲーションシステム13に出力する。
【0015】
ビーコンアンテナ12は、路側の光ビーコン通信機7と光波による無線通信を行う。すなわち、ビーコンアンテナ12は、光ビーコン通信機7が送信する道路情報を受信する。ビーコンアンテナ12は、受信した道路情報をカーナビゲーションシステム13に出力する。
カーナビゲーションシステム13は、ナビゲーションECU21と、ディスプレイ22と、スピーカ23とを備える。
【0016】
ナビゲーションECU21は、制御プログラムに従って動作するマイクロコンピュータを中心として構成した電子制御ユニットである。ナビゲーションECU21は、各種情報に基づいて、自車左折時における上述した注意喚起の必要性を判断する。
ナビゲーションECU21は、DSRC通信部24と、光通信部25と、CAN通信部26と、処理部27と、HMI制御部28とを備える。
【0017】
DSRC通信部24は、DSRC車載器11が受信したDSRC送信機3からの交通情報を入力し、処理部27に出力する。
光通信部25は、ビーコンアンテナ12が受信した光ビーコン通信機7からの道路情報を入力し、処理部27に出力する。
CAN通信部26は、CANで通信される自車両の車速情報、ウィンカー情報(方向指示器の作動状態)、アクセル開度情報、ブレーキON/OFF情報などの自車両MCの走行状態を入力し、処理部27に出力する。
【0018】
処理部27は、DSRC通信部24や光通信部25、CAN通信部26から情報を収集する。処理部27は、これらの収集した情報に基づいて後述する運転支援処理を実行し、自車左折時における上述した注意喚起の必要性を判断する。そして、処理部27は、注意喚起の必要性の有無をHMI制御部28へ伝達する。
HMI制御部28は、処理部27で注意喚起の必要性ありと判断した場合に、予め用意してある画像情報をディスプレイ22に出力すると共に、予め用意してある音声情報をスピーカ23に出力する。
【0019】
本実施形態では、処理部27によって注意喚起の必要性があると判断した場合、ディスプレイ22は、自車後方に直進二輪車が接近していることを、文字や図形などにより表示する。また、処理部27によって注意喚起の必要性があると判断した場合、スピーカ23は、自車後方に直進二輪車が接近していることを、ガイド音声或いは警告音として出力する。
【0020】
図3は、処理部27で実行する運転支援処理手順を示すフローチャートである。
この運転支援処理は、交差点手前で自車両MCが光ビーコン通信機7の通信エリア内に到達したときに実行開始する。先ずステップS1で、処理部27は、光ビーコン通信機7から道路情報を受信し、ステップS2に移行する。
ステップS2では、処理部27は、前記ステップS1で取得した道路情報から自車両が走行している車線を認識する。すなわち、光ビーコン通信機7が送信した車線情報から、自車両が走行している車線(直進車線/左折車線/右折車線など)を特定する。
【0021】
また、このステップS2では、処理部27は、光ビーコン通信機7が送信した位置情報をもとに、光ビーコン通信機7の設置位置から次の交差点における直進二輪車との交差予測位置までの距離L[m]を認識する。
ここで、上記交差予測位置とは、図4の符号Pに示すように、交差点内で左折車両MCの軌道(走行経路A)と直進二輪車MBの軌道(走行経路B)とが交差すると予測した点である。この交差予測位置Pは予め設定しておく。つまり、光ビーコン通信機7の設置位置から交差予測位置Pまでの距離Lは固定値であり、その値は光ビーコン通信機7から受信可能となっている。
【0022】
なお、自車両MCが光ビーコン通信機7から道路情報を受信した時点での自車両MCの位置は、理論上、光ビーコン通信機7の設置位置の真下地点である。したがって、この時点での自車両MCの現在位置から交差予測位置Pまでの距離は、上記距離Lと等しいとみなす。
次にステップS3では、処理部27は、前記ステップS1で取得した道路情報から自車両が走行している道路構造を認識する。すなわち、光ビーコン通信機7が送信した道路構造の情報から、自車両が走行している車線の幅員を認識する。
【0023】
次にステップS4では、処理部27は、光ビーコン通信機7の設置位置を通過してからの自車両の走行距離Lp[m]を算出する。ここでは、光ビーコン通信機7からのダウンリンク情報を受信してからの経過時間t[s]と、CAN経由で取得した車速情報(自車両MCの現在車速Vnow)とに基づいて、光ビーコン通信機7の設置位置を通過してからの累積距離を算出する。そして、これを光ビーコン通信機7の設置位置を通過してからの自車両の走行距離Lpとする。これにより、処理部27は、自車両MCの現在の走行位置を認識することができる。
【0024】
次にステップS5では、処理部27は、自車両MCの現在位置から交差予測位置Pまでの残距離Lrを算出する。図4に示すように、交差予測位置Pまでの残距離Lrは、光ビーコン通信機7の設置位置と交差予測位置Pとの間の距離Lから、光ビーコン通信機7の設置位置と自車両MCの現在位置との間の距離Lpを減算した距離に等しい(Lr=L−Lp)。
【0025】
したがって、このステップS5では、処理部27は、前記ステップS2で認識した光ビーコン通信機7の設置位置と交差予測位置Pとの間の距離Lから、前記ステップS4で算出した走行距離Lpを減算して、残距離Lrを算出する。
但し、前記ステップS2の車線認識により自車両MCが左折車線を走行していないと判断した場合、残距離Lr=0に設定する。これは、以降の注意喚起の必要性判断処理を行わないためである。
【0026】
次にステップS6では、処理部27は、前記ステップS5で算出した残距離Lrが“0”よりも大きいか否かを判定する。そして、Lr≦0である場合には、自車両MCが交差予測位置Pを通過していると判断し、そのまま運転支援処理を終了する。一方、Lr>0である場合にはステップS7に移行する。
ステップS7では、処理部27は、自車両MCが停止するのに必要な距離(停止必要距離)Lnを算出する。ここでは、CAN経由で取得した車速情報をもとに自車両MCの現在車速Vnowを確認し、現在車速Vnowに基づいて次式をもとに停止必要距離Ln[m]を算出する。
Ln=Vnow・T+Vnow2 /2・D ………(1)
【0027】
ここで、Tは注意喚起を受けてから運転者が減速を開始するまでの反応時間[s]、Dは減速度[m/s2]である。すなわち、停止必要距離Lnは、注意喚起を受けた運転者が現在車速Vnowからある減速度Dで減速したときの停止に必要な距離である。
本実施形態では、停止必要距離Lnの算出に用いる減速度Dを、自車両MCが走行中の道路幅員に応じて決定する。車両の走行道路は、図5に示すように、車道、路肩、歩道等で構成している。本実施形態では、歩道を含めず、「車道の幅員+路肩の幅員」を「道路幅員」とする。
【0028】
減速度Dは、例えば図6に示す減速度設定マップを参照して設定する。減速度設定マップは、縦軸に減速度D[m/s2]、横軸に道路幅員[m]をとる。そして、道路幅員が2.75m未満ではD=0.8Gとなり、道路幅員が2.75m以上3.75m未満ではD=0.5Gとなるように設定する。また、道路幅員が3.75m以上4.25m未満ではD=0.4Gとなり、道路幅員が4.25m以上5.0m未満ではD=0.3Gとなるように設定する。さらに、道路幅員が5.0以上ではD=0.2Gとなるように設定する。
【0029】
なお、図6の減速度設定マップは一例である。道路幅員が狭いほど減速度Dが大きくなるように設定していれば、数値はこれに限定しない。ただし、減速度Dを変更する道路幅員の基準値(2.75m、3.75mなど)は、道路の規格に準じた値とすることが好ましい。例えば、普通道路では減速度Dを同じ値に設定するなどにより、注意喚起を出力するタイミングにばらつきが生じず、安定した判断を行うことができる。また、ここでは減速度Dがステップ状に変化するように設定しているが、リニアに変化するように設定することもできる。
【0030】
次にステップS8では、処理部27は、DSRC送信機3が送信する交通情報の受信有無を確認し、自車両がDSRC送信機3の有効通信エリア内に入ったか否かを判定する。このとき、データの受信がなければ、自車両がDSRC送信機3の有効通信エリア内に入っていないと判断し、前記ステップS4に移行する。一方、データの受信がある場合には、自車両がDSRC送信機3の有効通信エリア内に入ったと判断し、ステップS9に移行する。
【0031】
ステップS9では、処理部27は、DSRC送信機3からの交通情報を受信し、ステップS10に移行する。
ステップS10では、処理部27は、前記ステップS9で受信した交通情報から信号機5の灯色状態を確認し、信号機5の現示が青であるか否かを判定する。そして、信号機5の現示が青である場合にはステップS11に移行し、信号機5の現示が青でない(赤又は黄である)場合には前記ステップS4に移行する。
【0032】
ステップS11では、処理部27は、前記ステップS9で受信した交通情報から、画像センサ2の撮像エリア2aに二輪車MBが存在するか否かを判定する。そして、二輪車MBが存在する場合にはステップS12に移行し、二輪車MBが存在しない場合には前記ステップS4に移行する。
ステップS12では、処理部27は、前記ステップS9で受信した交通情報から、二輪車MBの走行位置(交差予測位置Pまでの距離)を確認する。そして、二輪車MBから交差予測位置Pまでの距離と、前記ステップS5で算出した自車両MCから交差予測位置Pまでの残距離Lrとを比較する。このようにして、二輪車MBが自車両MCの現在位置よりも後方に存在するか否かを判定する。そして、二輪車MBが自車両MCの後方に存在する場合にはステップS13に移行し、二輪車MBが自車両MCの後方に存在しない場合には前記ステップS4に移行する。
【0033】
ステップS13では、処理部27は、CAN経由で取得したウィンカー情報をもとに、左ウィンカーがONになっているか否かを判定する。そして、左ウィンカーがONになっている場合には、交差点左折意思があるとしてステップS14に移行し、左ウィンカーがOFFになっている場合には前記ステップS4に移行する。
ステップS14では、処理部27は、前記ステップS5で算出した残距離Lrが前記ステップS7で算出した停止必要距離Lnよりも小さくなったか否かを判定する。そして、Lr<Lnである場合にはステップS15に移行し、Lr≧Lnである場合には前記ステップS4に移行する。
【0034】
ステップS15では、処理部27は、CAN経由で取得したブレーキON/OFF情報をもとに、ブレーキがON状態であるか否かを判定する。そして、ブレーキがONしている場合には、注意喚起の必要性がないと判断してそのまま運転支援処理を終了する。一方、ブレーキがOFFしている場合には、注意喚起の必要性があると判断してステップS16に移行する。
【0035】
ステップS16では、処理部27は、注意喚起の必要性があることをHMI制御部28へ伝達する。これにより、ディスプレイ22及びスピーカ23を用いて直進二輪車MBの接近情報を提示し、乗員に対して直進二輪車MBに関する注意喚起を行う。
【0036】
(動作)
次に、第1の実施形態の動作について説明する。
本車両運転支援装置10は、自車両MCが交差点手前で光ビーコン通信機7からの道路情報及びDSRC送信機3からの交通情報を受信すると、カーナビゲーションシステム13の処理部27にて、自車両MCの乗員への注意喚起の必要性を判断する。具体的には、運転者が交差点左折意思を有するときに、運転者が自車後方を走行する二輪車MBの存在に気づいていないと推測した場合に、注意喚起が必要であると判断する。
【0037】
交差点左折意思を有するか否かは、左ウィンカーがONしているか否かによって判断する。また、運転者が自車後方を走行する二輪車MBの存在に気づいているか否かは、自車両MCの現在速度Vnow やブレーキのON/OFFの走行状態によって判断する。ここでは、交差点内の二輪車MBとの交差予測位置Pまでの残距離Lrが自車両MCの現在速度Vnow での停止必要距離Lnよりも短く、且つ運転者がブレーキ操作を行っていないとき、二輪車MBの存在に気づいていないと判断する。
そして、車両運転支援装置10は、注意喚起が必要であると判断すると、カーナビゲーションシステム13のディスプレイ22やスピーカ23を用いて、二輪車MBに関する注意喚起を行う。
【0038】
以下、具体的な例を挙げながら詳細に説明する。
例えば、次の交差点で左折の意思を有する自車両MCが交差点手前で光ビーコン通信機7の通信エリア内に到達すると、車両運転支援装置10は光ビーコン通信機7から道路情報を受信する(図3のステップS1)。このとき、車両運転支援装置10は、自車両MCが左折車線を走行中であることを認識する(ステップS2)。また同時に、車両運転支援装置10は、図4に示す光ビーコン通信機7の設置位置から交差予測位置Pまでの距離Lを認識する。さらに、車両運転支援装置10は、走行中の道路幅員を認識する(ステップS3)。
【0039】
自車両MCが光ビーコン通信機7の通信エリア内に到達した時点では、図4に示す光ビーコン通信機7の設置位置からの走行距離Lpは“0”である。そのため、この時点での自車両MCの現在位置から交差予測位置Pまでの残距離Lrは、距離Lと等しい。
そして、その後は所定時間毎(例えば100msec毎)に、CAN経由で現在車速Vnowを用いて光ビーコン通信機7の設置位置からの走行距離Lpを算出し、自車両MCの現在の走行位置を認識する。また、算出した走行距離Lpを距離Lから減算し、交差予測位置Pまでの残距離Lrを算出する。残距離Lrは、自車両MCが交差予測位置Pの手前を走行している間、Lr>0となる。
【0040】
このように、自車両MCが光ビーコン通信機7の通信エリア内に到達した後は、所定時間毎(例えば100msec毎)に自車両MCの現在位置を更新する。光ビーコン通信機7から取得した距離Lと、CAN経由で取得した現在車速Vnowから算出した走行距離Lpを用いるので、自車両MCの現在位置を正確に認識することができる。したがって、自車両MCから交差予測位置Pまでの残距離Lrを精度良く算出することができる。
【0041】
また、このとき車両運転支援装置10は、現在車速Vnowをもとに、自車両MCが安定して停止することを前提に、停止必要距離Lnを算出する(ステップS7)。停止必要距離Lnは、上述した(1)式をもとに算出する。このように、自車両MCの空走距離(Vnow・T)と、運転者がブレーキ操作を実行して減速度Dが発生したとき、車速Vnowが0になるまでの自車両MCの走行距離(Vnow2 /2・D)との和を、停止必要距離Lnとする。したがって、自車両MCが現時点において安定して停止するために必要な距離を適切に求めることができる。
【0042】
その後、自車両MCがDSRC送信機3の有効通信エリア内に到達すると(ステップS8でYes)、車両運転支援装置10はDSRC送信機3から交通情報を受信する(ステップS9)。このとき、車両運転支援装置10は、信号機5の灯色状態や画像センサ2の撮像エリア2a内の二輪車MBの有無、二輪車MBが存在する場合にはその位置を認識する。
【0043】
自車両MCが交差点手前で赤信号により停止している状態では、自車両MCの後方の二輪車MBの有無にかかわらず、注意喚起の必要性はない。また、信号機5の現示が青であり、自車両MCが交差点に進入しようとしている場合であっても、自車両MCの後方に二輪車MBが存在しなければ、注意喚起の必要性はない。さらに、自車両MCが交差点を直進しようとしている場合にも、注意喚起の必要性はない。
【0044】
そこで、車両運転支援装置10は、交差点の信号現示、自車両MCの後方の二輪車MBの有無、及び交差点での左折意思を判定する。
このとき、DSRC送信機3から受信した交通情報から、信号現示が青であること、自車両MCの後方に二輪車MBが存在することを確認しており、左折意思として左ウィンカーをONしている場合、注意喚起をする要件を満たしていると判断する。そのため、この場合には、現時点での交差予測位置Pまでの残距離Lrと停止必要距離Lnとを比較し(ステップS14)、注意喚起の必要性を判断する。そして、ブレーキがONされることなく交差予測位置Pまでの残距離Lrが停止必要距離Lnよりも短くなると(ステップS15でNo)、注意喚起の必要性があると判断する。
【0045】
交差予測位置Pまでの残距離Lrが停止必要距離Lnよりも短い場合とは、比較的自車両MCの速度が速く、減速度Dでブレーキ操作を実行しても、交差予測位置Pに到達するまでの間に確実に停止できる状態ではないことを意味している。したがって、このような状況下で運転者の減速意思を検出できない場合には、運転者が後方二輪車に気づいていないと推測し、注意喚起を行うと判断する。そして、カーナビゲーションシステム13のディスプレイ22やスピーカ23を用いた注意喚起を行う。
【0046】
これにより、運転者は自車後方に二輪車MBが存在することを認識することができる。そのため、運転者は、交差点進入時に二輪車MBを警戒して減速するなどの対応を行うことができる。したがって、交差点左折時における安全性を向上することができる。
ところで、交差点を左折する際の運転者の傾向として、道路幅員が比較的狭い場合には、道路幅員が比較的広い場合と比較して低速で交差点に進入するということがわかっている。つまり、道路幅員が比較的狭い交差点では、運転者は自然に大きく減速する傾向がある。そのため、道路幅員が狭い場合と広い場合とで、注意喚起を行うタイミングを同じにすると、道路幅員が狭い交差点に進入しようとしている場合に、不必要な注意喚起により乗員が煩わしさを感じる場合がある。
【0047】
仮に、道路幅員を考慮せず、上記(1)式における停止必要距離Lnの算出に用いる減速度Dを、道路幅員が比較的広い場合に適応した固定値(例えば0.3G)とした場合、以下のようになる。
減速度Dを固定値とすると、自車両MCが同一速度Vnowで走行している場合、道路幅員にかかわらず、常に自車両MCが交差点手前の同じ位置に到達した時点で二輪車MBに関する注意喚起を出力することになる。
【0048】
上述したように、道路幅員が狭い交差点に進入しようとしているときのブレーキ操作により発生する減速度は、道路幅員が広い交差点に進入しようとしているときのそれに比べて大きい。つまり、道路幅員が狭い交差点に進入しようとしているときに自車両MCが停止に要する距離は、道路幅員が広い交差点に進入しようとしているときのそれに比べて短い。
【0049】
したがって、停止必要距離Lnの算出に用いる減速度Dを固定値(0.3G)とすると、道路幅員が狭い交差点に進入しようとしているときの停止必要距離Lnを、実際の停止に要する距離よりも長く算出してしまう。そのため、実際に注意喚起が必要となる位置よりも交差点手前で注意喚起が必要である(Lr<Ln)と判断してしまう。その結果、不必要な注意喚起により、乗員が煩わしさを感じる。また、この不必要な注意喚起により、情報の信頼度が低下し乗員の注意力を却って低減させてしまう。
【0050】
そこで、本車両運転支援装置10は、道路幅員に応じて注意喚起を行うタイミングを変更する。具体的には、図6に示すように、道路幅員が狭いほど停止必要距離Lnの算出に用いる減速度Dを大きく設定する。これにより、道路幅員が狭いほど注意喚起の必要性判断に用いる停止必要距離Lnを短く算出し、注意喚起が必要であると判断し難くする。
図7は、道路幅員の違いによる注意喚起の出力タイミングの違いを示す図である。図7(a)は道路幅員が狭い場合(例えば2.75m未満)、図7(b)は道路幅員が広い場合(例えば5m以上)を示している。
【0051】
図6の減速度算出マップによると、図7(a)の状況下では減速度Dを0.8Gに設定する。一方、図7(b)の状況下では減速度Dを0.2Gに設定する。したがって、自車両MCが同一速度Vnowで走行している場合、図7(a)の状況下で算出した停止必要距離Lnは、図7(b)の状況下で算出した停止必要距離Lnよりも短くなる。
停止必要距離Lnが短いほど、交差予測位置Pまでの残距離Lrが停止必要距離Lnを下回りにくい。そのため、処理部27は、自車両MCが交差予測位置Pにより近づかないと注意喚起が必要であると判断しない。
【0052】
すなわち、図7(a)に示すように道路幅員が狭い場合、図7(b)に示す道路幅員が広い場合と比較して交差予測位置Pまでの距離が短くなった時点で注意喚起を出力することになる。換言すると、図7(a)に示すように道路幅員が狭い場合、図7(b)に示す道路幅員が広い場合と比較して注意喚起のタイミングが遅くなる。このように、道路構造に対応した適切なタイミングで注意喚起することができる。
【0053】
また、交差予測位置Pまでの残距離Lrが停止必要距離Lnよりも短い場合であっても、運転者に減速の意思がある場合(ステップS15でYes)には注意喚起を行わない。これにより、運転者が後方の直進二輪車MBを警戒して減速操作をしているにもかかわらず、直進二輪車MBに関する注意情報を出力してしまうのを防止することができる。このように、不適切な注意喚起を抑制することで、運転者が煩わしさを感じるのを抑制することができる。
【0054】
以上のように、自車両MCが次の交差点で左折する意思を有する状況下で、運転者が自車両MCの後方を走行する二輪車MBの存在に気づいていないと推測した場合に、注意喚起が必要であると判断する。さらにこのとき、同一の走行状況では、道路幅員が狭いほど注意喚起し難くする。したがって、不必要な注意喚起を抑制し、運転者が煩わしさを感じるのを抑制することができる。また、不必要な注意喚起を頻繁に行うことに起因する運転者の注意力の低減を抑制することができる。その結果、注意喚起の信頼性を高めることができる。
【0055】
なお、図2において、DSRC車載器11及びビーコンアンテナ12が通信手段に対応し、CAN通信部26が走行状態検出手段に対応している。
また、図3において、ステップS3が道路構造取得手段に対応している。さらに、ステップS4〜S7、S14及びS15が必要性判断手段に対応している。ここで、ステップS4が現在位置検出手段に対応し、ステップS5が残距離算出手段に対応し、ステップS7が停止必要距離算出手段に対応している。
また、ステップS11及びS12が二輪車検出手段に対応し、ステップS13が左折意思検出手段に対応している。さらに、ステップS16と図2のディスプレイ22及びスピーカ23が情報提示手段に対応している。
【0056】
(効果)
第1の実施形態では、以下の効果が得られる。
(1)処置部27は、路側のDSRC送信機3と車両に搭載したDSRC車載器11との無線通信により取得した交通情報に基づいて、自車両の後方を走行する二輪車を検出する。また、処理部27は、CAN経由で取得した左ウィンカーの作動状態に基づいて、自車両MCの乗員の左折意思を検出する。さらに、処理部27は、路側の光ビーコン通信機7と車両に搭載したビーコンアンテナ12との無線通信により取得した道路情報から、自車両が進入しようとしている交差点の道路構造を確認する。また、処理部27は、CAN経由で自車両MCの走行状態を検出する。
【0057】
そして、処理部27は、交差点手前において、自車両MCが左折意思を有することを検出し、且つ自車両MCの後方を走行する二輪車MBが存在することを検出しているとき、上記走行状態と上記道路構造とに基づいて、二輪車MBに関する注意喚起の必要性を判断する。このとき、処理部27は、上記道路構造が、自車両の交差点への進入速度が遅くなる傾向が高い構造であるほど、注意喚起の必要性ありと判断するタイミングを遅く設定する。処理部27は、注意喚起の必要性ありと判断すると、そのタイミングで二輪車MBが自車後方から接近していることを示す情報を提供する。
【0058】
これにより、自車両MCが交差点左折意思を有するときに、運転者が後方を走行する二輪車MBの存在に気づいていない場合には、二輪車MBに関する注意喚起を出力することができる。したがって、交差点左折時における安全性を向上することができる。また、当該注意喚起は、交差点の道路構造に対応した適切なタイミングで出力することができる。そのため、不必要な注意喚起を抑制し、不必要な注意喚起を頻繁に行うことに起因する運転者の注意力の低減を抑制することができる。その結果、注意喚起の信頼性を高めることができる。
【0059】
(2)処理部27は、路側の光ビーコン通信機7と車両に搭載したビーコンアンテナ12との無線通信により取得した道路情報から、自車両が進入しようとしている交差点の道路構造として、自車両が進入しようとしている交差点の道路幅員を確認する。ここで、処理部27は、道路幅員が狭いほど注意喚起の必要性ありと判断するタイミングを遅くする。
このように、交差点の道路幅員が狭いほど進入速度が遅くなる傾向が高いことを考慮し、道路幅員に応じて注意喚起の必要性ありと判断するタイミングを変更する。したがって、適切なタイミングで注意喚起を出力することができる。
【0060】
(3)処理部27は、交差点の道路構造が、自車両の交差点への進入速度が遅くなる傾向が高い構造であるほど、注意喚起の必要性ありと判断するタイミングをステップ状に遅くする。これにより、同等の走行状況で注意喚起を出力するタイミングにばらつきが生じるのを防止し、注意喚起の必要性の判断を安定して行うことができる。
【0061】
(4)処理部27は、自車両MCの現在の走行位置を検出する。また、処理部27は、自車両MCの現在の走行位置から予め設定した交差点内での左折車両と二輪車との交差予測位置Pまでの残距離Lrを算出する。さらに、処理部27は、自車両MCの走行状態に基づいて、自車両が停止するのに要する停止必要距離Lnを算出する。そして、処理部27は、交差予測位置Pまでの残距離Lrが、停止必要距離Lnよりも短いとき、前記注意喚起の必要性ありと判断する。このとき、処理部27は、交差点の道路構造が、自車両の交差点への進入速度が遅くなる傾向が高い構造であるほど、停止必要距離Lnを短く算出する。
これにより、交差点の道路構造が、自車両の交差点への進入速度が遅くなる傾向が高い構造であるほど、交差予測位置Pまでの残距離Lrが停止必要距離Lnを下回らない方向に停止必要距離Lnを算出することができる。したがって、交差点の道路構造が、自車両の交差点への進入速度が遅くなる傾向が高い構造であるほど、注意喚起を出力するタイミングを確実に遅くすることができる。
【0062】
(5)処理部27は、CAN経由で自車両MCの走行状態として自車両MCの現在の車速Vnowを検出する。また、処理部27は、次式により停止必要距離Lnを算出する。
Ln=Vnow・T+Vnow2/2・D
このとき、交差点の道路構造が、自車両の交差点への進入速度が遅くなる傾向が高い構造であるほど、上記減速度Dを大きく設定する。
これにより、交差点の道路構造に応じた適切な停止必要距離Lnを算出することができる。
【0063】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
この第2の実施形態は、前述した第1の実施形態において、道路幅員に応じて注意喚起のタイミングを変更しているのに対し、交差点の交差角度に応じて注意喚起のタイミングを変更するようにしたものである。
【0064】
(構成)
第2の実施形態の基本構成は、前述した第1の実施形態と同様である。
また、第2の実施形態における処理部27で実行する運転支援処理手順は、図3に示す手順と同様である。ただし、図3においてステップS7の処理が第1の実施形態とは異なる。したがって、ここでは処理の異なる部分を中心に説明する。
ステップS7では、処理部27は、自車両MCが停止するのに必要な距離(停止必要距離)Lnを算出する。ここでは、CAN経由で取得した車速情報をもとに自車両MCの現在車速Vnowを確認し、現在車速Vnowに基づいて上記(1)式をもとに停止必要距離Ln[m]を算出する。
【0065】
本実施形態では、停止必要距離Lnの算出に用いる減速度Dを、交差点の交差角度に応じて決定する。交差角度は、図8に示すように、進入路R1と退出路(ここでは左方路)R2とが交差する角度である。本実施形態では、進入路R1と退出路R2とが直角に交わる場合を交差角度=0度とする。また、進入路R1と退出路R2とがなす角が鈍角である場合(左前方に左折する場合)、交差角度を正値とする。一方、進入路R1と退出路R2とがなす角が鋭角である場合(左後方に左折する場合)、交差角度を負値とする。
【0066】
減速度Dは、例えば図9に示す減速度設定マップを参照して設定する。減速度設定マップは、縦軸に減速度D[m/s2]、横軸に道路幅員[m]をとる。そして、交差角度が−5度未満ではD=0.8Gとなり、交差角度が−5度以上+5度未満ではD=0.5Gとなるように設定する。また、交差角度が+5度以上+15度未満ではD=0.4Gとなり、交差角度が+15度以上+30度未満ではD=0.3Gとなるように設定する。さらに、交差角度が+30以上ではD=0.2Gとなるように設定する。
【0067】
なお、図9の減速度設定マップは一例である。交差角度が小さいほど減速度Dが大きくなるように設定していれば、数値はこれに限定しない。また、ここでは減速度Dがステップ状に変化するように設定しているが、リニアに変化するように設定することもできる。
【0068】
(動作)
次に、第2の実施形態の動作について説明する。
本車両運転支援装置10は、上述した第1の実施形態と同様に、自車両MCが交差点手前で光ビーコン通信機7からの道路情報及びDSRC送信機3からの交通情報を受信すると、カーナビゲーションシステム13の処理部27にて、自車両MCの乗員への注意喚起の必要性を判断する。具体的には、自車両MCが次の交差点で左折する意思を有する状況下で、運転者が自車両MCの後方を走行する二輪車MBの存在に気づいていないと推測した場合に、注意喚起が必要であると判断する。
【0069】
ところで、交差点を左折する際の運転者の傾向として、交差点の交差角度が鋭角である場合には、交差角度が直角である場合と比較して低速で交差点に進入するということがわかっている。また、交差点の交差角度が鈍角である場合には、交差角度が直角である場合と比較して高速で交差点に進入するということがわかっている。つまり、交差角度が小さい交差点では、運転者は自然に大きく減速する傾向がある。
【0070】
そのため、交差角度が鋭角である場合と鈍角である場合とで、注意喚起を行うタイミングを同じにすると、交差角度が鋭角である交差点に進入しようとしている場合に、不必要な注意喚起により乗員が煩わしさを感じる場合がある。
仮に、交差点の交差角度を考慮せず、上記(1)式における停止必要距離Lnの算出に用いる減速度Dを、交差角度が比較的大きい場合に適応した固定値(例えば0.3G)とした場合、以下のようになる。
【0071】
減速度Dを固定値とすると、自車両MCが同一速度Vnowで走行している場合、交差角度にかかわらず、常に自車両MCが交差点手前の同じ位置に到達した時点で二輪車MBに関する注意喚起を出力することになる。
上述したように、交差角度が鋭角である交差点に進入しようとしているときのブレーキ操作により発生する減速度は、交差角度が鈍角である交差点に進入しようとしているときのそれに比べて大きい。つまり、交差角度が鋭角である交差点に進入しようとしているときに自車両MCが停止に要する距離は、交差角度が鈍角である交差点に進入しようとしているときのそれに比べて短い。
【0072】
したがって、停止必要距離Lnの算出に用いる減速度Dを固定値(0.3G)とすると、交差角度が比較的小さい交差点に進入しようとしているときの停止必要距離Lnを、実際の停止に要する距離よりも長く算出してしまう。そのため、実際に注意喚起が必要となる位置よりも交差点手前で注意喚起が必要である(Lr<Ln)と判断してしまう。その結果、乗員が煩わしさを感じる。また、不必要な注意喚起により、情報の信頼度が低下し乗員の注意力を却って低減させてしまう。
【0073】
そこで、本車両運転支援装置10は、交差角度に応じて注意喚起を行うタイミングを変更する。具体的には、図8に示すように、交差角度が小さいほど停止必要距離Lnの算出に用いる減速度Dを大きく設定する。これにより、交差角度が小さいほど注意喚起の必要性判断に用いる停止必要距離Lnを短く算出し、注意喚起が必要であると判断し難くする。
【0074】
図10は、交差角度の違いによる注意喚起の出力タイミングの違いを示す図である。図10(a)は交差角度が鋭角である場合(例えば−5度未満)、図10(b)は交差角度が鈍角である場合(例えば+30度以上)を示している。
図8の減速度算出マップによると、図10(a)の状況下では減速度Dを0.8Gに設定する。一方、図10(b)の状況下では減速度Dを0.2Gに設定する。したがって、自車両MCが同一速度Vnowで走行している場合、図10(a)の状況下で算出した停止必要距離Lnは、図10(b)の状況下で算出した停止必要距離Lnよりも短くなる。
【0075】
そのため、図10(a)に示すように交差角度が小さい場合、図10(b)に示す交差角度が大きい場合と比較して交差予測位置Pまでの距離が短くなった時点で注意喚起を出力することになる。換言すると、図10(a)に示すように交差角度が小さい場合、図10(b)に示す交差角度が大きい場合と比較して注意喚起のタイミングが遅くなる。このように、道路構造に対応した適切なタイミングで注意喚起することができる。
【0076】
(効果)
第2の実施形態では、以下の効果が得られる。
(6)処理部27は、路側の光ビーコン通信機7と車両に搭載したビーコンアンテナ12との無線通信により取得した道路情報から、道路構造として、自車両が走行している道路と自車両が左折しようとしている道路との交差角度を確認する。ここで、処理部27は、交差角度が狭いほど注意喚起の必要性ありと判断するタイミングを遅くする。
このように、交差点の交差角度が狭いほど進入速度が遅くなる傾向が高いことを考慮し、交差角度に応じて注意喚起の必要性ありと判断するタイミングを変更する。したがって、適切なタイミングで注意喚起を出力することができる。
【0077】
(変形例)
(1)上記各実施形態においては、道路幅員と交差点の交差角度とを両方用いて停止必要距離Lnの算出に用いる減速度Dを設定することもできる。この場合、道路幅員に基づいて図6の減速度算出マップから設定した減速度Dと、交差角度に基づいて図9の減速度算出マップから設定した減速度Dの小さい方を最終的な減速度Dとする。
これにより、道路幅員に基づいて設定した情報提供タイミングと、交差角度に基づいて設定した情報提供タイミングのうち、早い方のタイミングで情報提供することができる。その結果、道路幅員と交差角度の両方を考慮した適切なタイミングで注意喚起することができる。このとき、減速度Dをセレクトローするので、情報提供タイミングを安全側に設定することができる。
【0078】
(2)上記各実施形態においては、道路構造に応じて停止必要距離Lnの算出に用いる減速度Dを変更することで注意喚起のタイミングを変更する場合について説明したが、減速度Dを固定値(例えば、0.3G)とすることもできる。
この場合、固定値である減速度Dを用いて算出した停止必要距離Lnに道路構造に応じて変化するゲインを乗算する。そして、その結果を最終的な停止必要距離Lnとする。ここで、上記ゲインは、道路幅員が狭いほど(若しくは交差点の交差角度が小さいほど)小さくなる値とする。これにより、上述した各実施形態と同様に、交差点の道路構造が、自車両MCの交差点への進入速度が遅くなる傾向が高い構造であるほど、停止必要距離Lnを短く算出し、注意喚起の必要性ありと判断し難くすることができる。
【0079】
(3)上記各実施形態においては、路側に設置したDSRC送信機3や光ビーコン通信機7との路車間通信により、二輪車MBの情報等の交通情報や道路構造等の道路情報を取得しているが、車車間通信を用いることもできる。例えば、自車前方を走行する車両から道路構造を取得したり、自車後方を走行する車両から自車後方を走行する二輪車の情報を取得したりすることもできる。
【符号の説明】
【0080】
1…路側インフラ設備、2…画像センサ、2a…撮像エリア、3…DSRC送信機、4…DSRC制御装置、5…信号機、6…信号制御機、7…ビーコン通信機、8…ビーコン制御装置、10…車両運転支援装置、11…DSRC車載器、11a…DSRCアンテナ、12…ビーコンアンテナ、13…カーナビゲーションシステム、21…ナビゲーションECU、22…ディスプレイ、23…スピーカ、24…DSRC通信部、25…光通信部、26…CAN通信部、27…処理部、28…HMI制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10