(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては同一または対応する部分に図中同一の符号を付し、その説明は繰返さない。
【0017】
本実施の形態に係る電子血圧計は、上述した“うっ血”の程度である“うっ血度”に基づき、収縮期血圧および拡張期血圧の血圧算出に用いるためのパラメータの値を決定する。ここでは、うっ血により末梢側部位に溜まる血液量が多い場合をうっ血度が高いと称し、少ない場合を低いと称する。
【0018】
(外観および構成)
本発明の実施の形態では、血圧測定装置の1例である電子血圧計1を説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る電子血圧計1の外観斜視図である。
図1を参照して、電子血圧計1は、本体部10と、被測定者の測定部位、たとえば上腕に手動で巻付けるためのカフ20と、本体部10とカフ20とを接続するためのエアチューブ31とを備える。
【0020】
本体部10は、机などの台と接する設置面と、設置面と所定の角度をなす表面10Aと、設置面に対して垂直な面である2つの側面10Bおよび図示のない背面とを有している。本体部10の左側面10Bには、上述のエアチューブ31が接続される。
【0021】
本体部10の表面10Aには、測定結果などを表示するための表示部40と、ユーザ(代表的には被測定者)が指示を入力するために操作される操作部41とが配置される。表示部40は、たとえば液晶等のディスプレイにより構成される。操作部41は、たとえば、電源のON/OFFを切替えるための操作を受付ける電源スイッチ41A、測定開始および停止の指示入力の操作を受付ける測定スイッチ41Bおよび停止スイッチ41C、メモリスイッチ41D、および電子血圧計1のユーザ(被測定者)を選択的に指定する操作を受付けるための使用者選択スイッチ41Eを含む。メモリスイッチ41Dは、過去の測定結果をメモリから読出し読出した測定結果の表示を指示するために操作される。
【0022】
カフ20は、略長方形の形状を有した帯状の袋であり、袋内に空気袋21が内蔵される(後述の
図2参照)。カフ20は、その長手方向に延びる辺を測定部位の周囲(腕周)に沿わせるようにして巻付けられる。
【0023】
図2は、本発明の実施の形態に係る電子血圧計1のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【0024】
図2を参照して、空気袋21は、エアチューブ31を介してエア系30に接続される。本体部10は、上述の表示部40および操作部41に加え、エア系30と、各部を集中的に制御し、各種演算処理を行なうためのCPU(Central Processing Unit)100と、CPU100に所定の動作をさせるプログラムや各種データを記憶するためのメモリ部42と、測定された血圧を記憶するための不揮発性メモリの一例であるフラッシュメモリ43と、CPU100に電力を供給するための電源44と、計時するためのタイマ45と、着脱可能な記録媒体132からプログラムやデータの読出しおよび書込みをするためのインターフェイス部46とを含む。
【0025】
本実施の形態では、電子血圧計1は複数の被測定者により共用されることから、使用者選択スイッチ41Eを備えるが、共用されない場合には使用者選択スイッチ41Eは省略されてよい。また、測定スイッチ41Bを、電源スイッチ41Aと兼用してもよい。その場合には、測定スイッチ41Bは省略することができる。
【0026】
エア系30は、空気袋21内の圧力(以下、カフ圧という)を検出するための圧力センサ32と、カフ圧を加圧するために、空気袋21に空気を供給するためのポンプ51と、空気袋21の空気を排出しまたは封入するために開閉される弁52とを含む。
【0027】
本体部10は、エア系30に関連して、発振回路33と、ポンプ駆動回路53と、弁駆動回路54とをさらに含む。
【0028】
圧力センサ32は、静電容量形の圧力センサであり、カフ圧により容量値が変化する。発振回路33は、圧力センサ32の容量値に応じた発振周波数の信号(以下、圧力信号という)をCPU100に出力する。CPU100は、発振回路33から得られる信号を圧力に変換し圧力を検知する。ポンプ駆動回路53は、CPU100から与えられる制御信号に基づいてポンプ51を制御する。弁駆動回路54はCPU100から与えられる制御信号に基づいて弁52の開閉を制御する。
【0029】
なお、カフ20には空気袋21が含まれることとしたが、カフ20に供給される流体は空気に限定されるものではなく、たとえば液体やゲルであってもよい。あるいは、流体に限定されるものではなく、マイクロビーズなどの均一な微粒子であってもよい。
【0030】
(機能構成)
図3は、本発明の実施の形態に係る電子血圧計1の機能構成を示す機能ブロック図である。
図3を参照して、CPU100は、発振回路33からの出力信号を入力する脈波検出部118および圧力検出部112と、血圧推定部402を含む関連情報取得部113と、加圧目標値取得部114と、うっ血の程度を判定するうっ血度判定部123と、うっ血度に基づき血圧(収縮期血圧および拡張期血圧)を算出するためのパラメータの値を可変に決定するためのパラメータ決定部125と、ポンプ駆動回路53と弁駆動回路54とに制御信号を出力する加圧制御部115および減圧制御部116と、オシロメトリック法によるパラメータを用いた所定演算に従って血圧値を算出するための血圧算出部117と、フラッシュメモリ43のデータを読み書き(アクセス)するためのメモリ処理部119と、表示部40の表示を制御する表示制御部120と、過去の血圧測定時に判定されたうっ血度に基づくガイダンスを出力するための報知部130と、を備える。
【0031】
加圧制御部115および減圧制御部116は、カフ圧を調整するために、ポンプ駆動回路53および弁駆動回路54に制御信号を送信する。具体的には、カフ圧を加圧し、またカフ圧を減圧するための制御信号を出力する。本実施の形態では、カフ圧を一定速度で減圧する過程において、血圧算出部117による血圧導出処理が行なわれる。脈波検出部118は、発振回路33からの圧力信号に重畳される脈波信号を検出する。圧力検出部112は、発振回路33からの圧力信号を圧力値に変換し、出力する。
【0032】
加圧目標値取得部114は、血圧推定部402が推定した血圧を用いて血圧測定時の加圧目標値を取得する。
【0033】
ここでは、上述のタイマ45と、カフ20と、圧調整部と、圧力検出部112とを含んで測定部が構成される。圧調整部は、カフ圧を加圧または減圧することにより調整するための加圧制御部115および減圧制御部116を含む。
【0034】
血圧算出部117は、圧調整部によりカフ圧が調整される過程において圧力検出部112によって検出されるカフ圧に基づき、パラメータを用いて血圧値を算出する。より具体的には、圧力検出部112からの圧力値と、脈波検出部118から入力する脈波信号およびパラメータを用いて血圧(収縮期血圧および拡張期血圧)、ならびに脈拍数を算出する。脈拍数は、脈波信号を用いて公知の手順に従って算出されるので詳細説明は略す。
【0035】
関連情報取得部113は、測定部から出力される情報に基づき、血圧測定に関連した情報を取得する。うっ血度判定部123は、取得された関連情報を用いて、測定部位よりも末梢側部位のうっ血度を判定する。
【0036】
(測定データの格納例)
図4は、本発明の実施の形態に係るメモリに格納された測定データを説明する図である。血圧値を含む測定データは、フラッシュメモリ43のテーブル431に格納されて、電子血圧計1の各部は、メモリ処理部119を介してテーブル431のデータをアクセス(読み書き)する。
【0037】
テーブル431には、血圧測定毎に、被測定者を識別するIDデータと、測定日時421、うっ血度422、推定収縮期血圧423、および血圧値・脈拍数427が対応付けて格納される。
【0038】
IDデータは、使用者選択スイッチ41Eの操作に従う識別子を指す。測定日時421は、血圧測定時に、より典型的には血圧測定終了時にタイマ45から受理した計時データに基づく日時を指す。うっ血度422は、うっ血度判定部123が判定したうっ血度C(C1、C2など)を指す。推定収縮期血圧423は、血圧測定開始後の圧力信号に基づき、血圧推定部402により推定された収縮期血圧(推定収縮期血圧ESBP)を指す。血圧値・脈拍数427は、血圧測定時に血圧算出部117により取得された血圧(収縮期血圧SBPおよび拡張期血圧DBP)値および脈拍数PLSを指す。
【0039】
ここでは、これらデータをテーブル形式で格納することにより各データを対応付けているが、フラッシュメモリ43において対応付けが特定できれば、格納形式はテーブルに限定されない。
【0040】
(うっ血度の判定)
うっ血度は血圧測定に関連した情報を用いて算出(判定)される。本実施の形態では、うっ血度の算出に用いる血圧測定に関連した情報を異ならせることで、異なる種類のうっ血度を算出することができる。まず、血圧測定に関連した情報として加圧時間を用いたうっ血度の判定を説明する。
【0041】
<加圧時間による判定>
図5と
図6を参照して、うっ血度の判定を説明する。
図5には、本実施の形態によるうっ血度と加圧開始からの経過時間である加圧時間の関係がグラフで示される。グラフの縦軸はうっ血度を指し、横軸は加圧時間(単位:sec)を指し、グラフは、発明者の実験結果を指す。グラフによれば、一定速度で加圧した場合には加圧時間が長くなればなるほど、うっ血度は大きくなる。
【0042】
図5のグラフは次の式(1)に置き換えることができる。うっ血度判定部123は式(1)に従って、うっ血度Cを算出することで、うっ血度を判定する。
【0043】
C=α×t
2+β×t+γ ・・・式(1)
式(1)では、各変数について、Cはうっ血度、tは加圧時間、α、βおよびγは予め実験により求められた定数を指す。
【0044】
図6には、
図5のグラフで示す加圧時間と、うっ血度Cとを対応付けて格納したテーブル441が示される。テーブル441はフラッシュメモリ43に予め格納される。うっ血度は、式(1)に代替してテーブル441を検索することにより判定するようにしてもよい。具体的には、うっ血度判定部123は、タイマ45からの時間データが指す加圧時間に基づきテーブル441を検索することにより、当該加圧時間に対応したうっ血度Cを読出す。これにより、うっ血度を判定する。
【0045】
(血圧算出用パラメータ値の決定)
本実施の形態では、パラメータ決定部125は、オシロメトリック法によるパラメータ値を、うっ血度判定部123が判定したうっ血度を用いて決定する。
【0046】
まず、血圧算出部117のオシロメトリック法により血圧を決定する。この処理を、
図7を参照して説明する。
図7のグラフは、上述した特許文献1に開示されており、縦軸に減圧過程において脈波検出部118により検出された圧脈波振幅値(単位:mmHg)を、横軸に圧力検出部112により検出されるカフ圧(単位:mmHg)が取られる。
【0047】
カフ圧の変化に伴い検出される各圧脈波振幅の値を結んだものを包絡線と呼び、
図7には、発明者の実験による実線と破線で示す2つの包絡線が示される。実線の包絡線は、末梢側部位にうっ血が生じていない状態を指し、破線の包絡線は、うっ血が生じている状態を指す。
【0048】
ここで、
図7の実線の包絡線の場合には、パラメータ決定部125は、圧脈波振幅の最大振幅値Ampmaxに所定の比率を乗じ、且つ所定のオフセット値を加算し、この算出値をパラメータ値と決定する。収縮期血圧の算出用のパラメータTh
SBPおよび拡張期血圧の算出用のパラメータTh
DBPとは、それぞれ次の式(2)と式(3)に従って算出することができる。
【0049】
Th
SBP=Ampmax×a
SBP+b
SBP・・・式(2)
Th
DBP=Ampmax×a
DBP+b
DBP・・・式(3)
上述の変数については、a
SBPおよびa
DBPは所定の比率、b
SBPおよびb
DBPは所定のオフセットを指し、予め実験等などで決定される値である。
【0050】
血圧算出部117は、測定時に脈波検出部118から入力する圧脈波と圧力検出部112から入力するカフ圧を同期して入力し、それら入力のデータをタイマ45の時間データに基づく時系列に従ってフラッシュメモリ43に格納する。これにより、フラッシュメモリ43に格納されたデータは、包絡線を指す。また、パラメータ決定部125からは、式(2)と式(3)で算出されたパラメータTh
SBPおよびTh
DBPの値を入力する。そして、血圧算出部117は、入力したパラメータ値と、フラッシュメモリ43のデータに従う
図7の実線の包絡線との交点に対応したカフ圧を抽出し、抽出したカフ圧のうち、高圧側を収縮期血圧(SBP)および低圧側を拡張期血圧(DBP)としてそれぞれ決定する。
【0051】
一方、末梢側部位にうっ血が発生する場合には、式(2)と式(3)で算出されたパラメータTh
SBPおよびTh
DBPの値を用いることはできない。つまり、脈波検出部118により検出される圧脈波振幅が小さくなり、その結果、血圧算出部117が取得する包絡線は、
図7の破線で示すものとなる。
【0052】
ここで、破線の包絡線が、実線の包絡線の形状と同じで、且つ全体的に形状が小さくなるだけあるならば、上述のパラメータTh
SBPおよびTh
DBPの値をそのまま利用することができ、再度、パラメータ値を算出する必要はない。
【0053】
しかしながら、減圧過程で血圧を測定する方式を採用した場合には、カフ圧が低くなるほど測定血圧はうっ血の影響をうけることになる。つまり、収縮期血圧での圧脈波振幅と、拡張期血圧での圧脈波振幅を比較すると、拡張期血圧での圧脈波振幅の方がよりうっ血の影響を受け、圧脈波振幅がより小さくなる。したがって、実線の包絡線で算出したパラメータ値を、破線で示す包絡線にそのまま用いて算出される血圧には、うっ血による誤差が含まれることになる。そこで、誤差を排除して正確な血圧を算出するために、パラメータ決定部125は、パラメータTh
SBPおよびTh
DBPの値を、うっ血度を用いて算出する。例えば式(4)と式(5)を用いて、パラメータTh
SBPおよびTh
DBPを補正する。
【0054】
Th
SBP=Ampmax×a
SBP×C
SBP+b
SBP・・・式(4)
Th
DBP=Ampmax×a
DBP×C
DBP+b
DBP・・・式(5)
ここで、変数C
SBPおよびC
DBPの値は式(1)で算出されたうっ血度Cに基づき算出される値であって、予め実験等で決定される値である。
【0055】
また、上述の式(5)と式(4)では、式(2)と式(3)の変数a
SBPおよびa
DBPをうっ血度で補正するとしているが、変数b
SBPおよびb
DBPをうっ血度で補正するとしても良いし、両方を補正するとしてもよい。
【0056】
このようにして、うっ血が生じている場合(
図7の破線の包絡線)であっても、うっ血による誤差を排除するためのパラメータTh
SBPおよびTh
DBPの値を決定することができるから、血圧算出部117は、決定したパラメータ値を用いることで、うっ血が生じていない場合(
図7の実線の包絡線)と同様の収縮期血圧と拡張期血圧を決定することができる。
【0057】
(算出された血圧値の補正)
上述では、血圧算出用パラメータの値をうっ血度により補正したが、パラメータ値に代替して、血圧をうっ血度に基づき補正することで、うっ血度による誤差を排除した正確な血圧を決定するとしてもよい。
【0058】
まず、血圧算出部117は、脈波検出部118と圧力検出部112からの圧脈波振幅とカフ圧とを用いて
図7の破線の包絡線のデータを取得すると想定する。収縮期血圧の算出用のパラメータTh
SBP´および拡張期血圧の算出用のパラメータTh
DBP´の値は、式(2)と式(3)の最大振幅値Ampmaxを、破線の包絡線の圧脈波振幅の最大振幅値Ampmax´に代替することで算出できる。
【0059】
パラメータ決定部125からのパラメータ値を用いることなく算出された収縮期血圧および拡張期血圧それぞれを、変数SBP´およびDBP´で表すとすれば、正確な血圧は次式で算出できる。
【0060】
SBP=SBP´+OffsetC
SBP・・・式(6)
DBP=DBP´+OffsetC
DBP・・・式(7)
ここで、変数SBP´およびDBP´は、うっ血度による補正がされる前の血圧(暫定血圧)、すなわちパラメータTh
SBP´とTh
DBP´の値と破線の包絡線の交点から算出された血圧値を指す。変数OffsetC
SBPおよびOffsetC
DBPは式(1)で算出されたうっ血度より算出される補正用の係数であり、予め実験等で決定される値を指す。
【0061】
このように、うっ血による誤差を含んだ暫定血圧を算出し、暫定血圧をうっ血度に基づいたパラメータ値で補正する場合であっても、誤差のない正確な血圧を算出することができる。
【0062】
上記では、算出されるべき血圧の種類(収縮期血圧または拡張期血圧)にかかわらず同じ種類のうっ血度を使用したが、算出されるべき血圧の種類毎に、当該血圧の算出に用いるうっ血度の種類を異ならせるとしてもよい。たとえば、収縮期血圧を算出する場合には、後述の収縮期血圧により算出されたうっ血度を使用し、拡張期血圧を算出する場合には、後述の脈圧により算出されたうっ血度を使用する、などである。
【0063】
(ガイダンス出力)
本実施の形態では、うっ血度に基づいたガイダンスを出力する。具体的には、報知部130は、テーブル431に格納されたうっ血度422に基づき、被測定者に対して血圧測定のためのガイダンスを出力する。
【0064】
血圧測定では、カフ20を測定部位に巻付けることにより動脈の血液の流れが一時的に止まるまで加圧することから、血圧を連続して長時間測定することは、うっ血の原因となる。また、測定部位にカフ20をきつめに巻くこともうっ血の原因となる。そこで、報知部130は、血圧測定開始時に、うっ血状態に陥らないためのガイダンスを出力する。
【0065】
まず、報知部130は、テーブル431の直近に格納された所定個数のうっ血度422の代表値(平均値または中央値など)を算出し、算出した代表値と所定値とを比較し、比較結果に基づき、代表値のうっ血度が高いか否かを判定する。
【0066】
報知部130は、うっ血度の代表値が高いと判定した場合であって、且つ測定間隔が短いと判定した場合には、表示部40に“うっ血し易いようです。十分な間隔をあけて測定してください。”とメッセージを表示し、測定間隔をあけるように注意を喚起する。つまり、テーブル431の直近に格納されたうっ血度422に対応した測定日時421に基づき、測定間隔を算出する。算出した測定間隔と所定時間とを比較し、比較結果に基づき、測定間隔は所定時間よりも短いと判定した場合には、当該メッセージを出力する。
【0067】
なお、判定結果、代表値が高くない場合、または測定間隔が所定時間以上である場合には、報知部130による上記のメッセージ出力は省略される。
【0068】
(処理フローチャート)
次に、
図8のフローチャートに従って、電子血圧計1のオシロメトリック法による測定動作を説明する。
図8のフローチャートに従うプログラムは、予めメモリ部42に格納される。CPU100は、メモリ部42からプログラムの指令を読出し、その指令にしたがって各部の動作を制御することにより、測定動作が実現される。
【0069】
まず、CPU100は、被測定者による電源スイッチ41Aの操作を受付けると、電源44を制御して各部に電力を供給する(ステップST(以下、単にSTという)3)。その後、CPU100は、初期化として処理用メモリ領域を初期化し、カフ20内の空気を排気し、圧力センサ32の0mmHg補正を行う(ST5)。被測定者は、予めカフ20を測定部位に巻付けていると想定する。
【0070】
初期化後、報知部130は上述したガイダンスの手順に従った判定により、必要に応じて表示部40にメッセージを表示する(ST6)。したがって、被測定者をメッセージのガイダンスに従うことで、測定を止めて、十分な時間が経過した後に測定を開始することができる。
【0071】
その後、CPU100は、測定開始を指示するために被測定者による測定スイッチ41Bの操作を受付けると(ST7)、関連情報取得部113は、加圧時間を計測するためのタイマ変数TPに、たとえば値“0”をセットすることにより初期化する(ST9)。タイマ変数TPは、CPU100の内部メモリに格納される。初期化後、加圧が開始される。具体的には、圧調整部は、弁52を閉鎖し、ポンプ51を駆動することでカフ圧を一定速度で加圧する(ST11)。
【0072】
関連情報取得部113は、加圧開始後の加圧過程では、タイマ45からの時間データを用いてタイマ変数TPの値を加算する動作を継続する(ST13)。したがって、タイマ変数TPの値は、加圧動作が継続している加圧時間を指すことになる。
【0073】
加圧制御部115および減圧制御部116は、圧力検出部112により検出されるカフ圧を入力し、入力するカフ圧と所定圧力(例えば、収縮期血圧+30mmHg)とを比較する。比較結果に基づき、カフ圧が所定圧力を指すと判定しない間は(ST15でNO)加圧動作は継続するが、指すと判定すると(ST15でYES)、減圧制御部116は、弁52は閉鎖した状態のままポンプ51を停止する(ST17)。ポンプ51が停止すると、関連情報取得部113はタイマ変数TPの加算を停止する。うっ血度判定部123は、上述した手順に従って、タイマ変数TPが指す加圧時間から末梢側部位のうっ血度を判定する(ST8)。
【0074】
次に、減圧制御部116は、ポンプ51の停止状態のまま弁52を徐々に開きカフ圧を減圧開始する(ST21)。以降、減圧過程に移行する。
【0075】
減圧過程では、パラメータ決定部125は、上述した手順に従って、うっ血度に基づいたパラメータ値を決定する(ST23)。なお、うっ血度に基づいたパラメータ値の決定のタイミングは、うっ血度が判定された後であればよく、減圧過程移行後に限定されるものではない。
【0076】
脈波検出部118は、カフ圧に重畳した動脈の容積変化に基づく圧脈波振幅を検出する。血圧算出部117は、圧脈波振幅とパラメータ決定部125が決定したパラメータ値とを用いて、オシロメトリック法に従って血圧を算出する(ST25)。また、脈拍数も算出される。
【0077】
CPU100により、血圧算出部117により血圧として収縮期血圧および拡張期血圧の両方が算出されたか否かが判定される(ST27)。算出されていないと判定されると(ST27でNO)、処理はST21に移行し、減圧が継続するが、両方の血圧が算出完了したと判定されると(ST27でYES)、減圧制御部116は、弁52を完全に開放し、カフ内の空気を急速排気する(ST29)。また、算出された血圧は、表示制御部120により表示部40に表示される(ST31)。また、メモリ処理部119は、算出された血圧値・脈拍数427、タイマ45の時間データに基づく測定日時421、うっ血度判定部123が判定したうっ血度422をテーブル431に対応付けて格納する(ST33)。その後、CPU100は、電源44をOFFし測定処理は終了する。
【0078】
(うっ血度の他の判定方法)
本実施の形態によるうっ血度の判定方法は、上述した加圧時間によものに限定されず、以下のような他の方法を適用することもできる。
【0079】
<最高加圧値による判定>
ここでは、
図6のST15の所定圧の値を最高加圧値と称し、最高加圧値は、予めフラッシュメモリ43に格納されていると想定する。うっ血度判定部123は、フラッシュメモリ43から読出した最高加圧値を用いることで、上述した加圧時間と同様の手順でうっ血度を判定することができる。つまり、ポンプ51による加圧速度は一定であるとすれば、上述の加圧時間は最高加圧値に代替することができるからである。
【0080】
発明者は、実験により、最高加圧値とうっ血度の関係を次の式(8)に表わし、式(8)に従って最高加圧値からうっ血度を算出することができるとの知見を得た。実験によれば、加圧時間と同様に、最高加圧値とうっ血度は、最高加圧値が高くなるほどうっ血度がは高くなるとの関係を有する。
【0081】
C=δ×Pcmax
2+ε×Pcmax+φ・・・式(8)
式(8)の変数について、Cはうっ血度、Pcmaxは最高加圧値、δ、ε、φは予め実験等により求められた定数である。
【0082】
なお、うっ血度判定部123は式(8)の代わりにテーブルを検索することでうっ血度を判定してもよい。つまり、実験により取得した最高加圧値と、対応するうっ血度とを予めテーブルに登録し、当該テーブルをフラッシュメモリ43に格納しておく。うっ血度判定部123は当該テーブルを、最高加圧値に基づき検索して、対応するうっ血度を読出すことで、うっ血度を判定する。
【0083】
<加圧速度による判定>
うっ血度判定部123は加圧速度によってもうっ血度を判定することができる。つまり、最高加圧値に達するまでの加圧時間は加圧速度によって一義的に決定される。そのため、前述した加圧時間と最高加圧値とを加圧速度に置き換えても同様のことが言える。
【0084】
ここで、加圧速度vは、ポンプ51に印加する駆動電圧値により決定される。うっ血度判定部123は、ポンプ51の入力段に取付けられた電圧センサ(図示せず)が検出する駆動電圧値を入力し、入力した電圧値を所定換算式に従って加圧速度vに変換する。
【0085】
発明者は、実験により、加圧速度vとうっ血度の関係を次の式(9)に表わし、式(9)に従って加圧速度からうっ血度を算出することができるとの知見を得た。式(9)によれば、加圧速度が遅くなればなるほどうっ血度が高くなるとの関係が得られる。
【0086】
C=η×v
2+τ×v+κ・・・式(9)
式(9)の変数について、Uはうっ血度、vは加圧速度、η、τ、κは予め実験等により求められた定数である。
【0087】
なお、うっ血度判定部123は式(9)の代わりにテーブルを検索することでうっ血度を取得してもよい。つまり、実験により取得した加圧速度と、対応するうっ血度とを予めテーブルに登録し、当該テーブルをフラッシュメモリ43に格納しておく。そして、うっ血度判定部123は当該テーブルを、加圧速度vに基づき検索して、対応するうっ血度を読出すことで、うっ血度を判定する。
【0088】
<カフサイズ・測定部位周囲長による判定>
上述の加圧時間や加圧速度は、カフサイズ(カフ20の空気容量の大きさ)、言い換えると測定部位の周囲長や、ポンプ51の駆動電圧値によっても変化する。
【0089】
カフサイズは測定部位周囲長によりその適切なサイズが決められており、測定部位周囲長が大きくなればなるほどカフサイズを大きくする必要がある。例えば、ポンプ51を一定電圧値で駆動した場合に、同じカフ圧に達するまでの所要時間はカフサイズが大きいほど長くなり、結果としてうっ血度は高くなる。
【0090】
そこで、本実施の形態では、CPU100は、被測定者が、予め操作部41を操作して入力するカフサイズまたは測定部位周囲長を受付ける機能である情報受理部を有する。うっ血度判定部123は、情報受理部が受理したカフサイズまたは測定部位周囲長を用いてうっ血度を所定演算式から算出する。
【0091】
うっ血度判定部123は演算式に代替して、テーブルを検索してうっ血度を判定してもよい。つまり、実験により取得したカフサイズと、対応するうっ血度とを予めテーブルに登録し、当該テーブルをフラッシュメモリ43に格納しておく。そして、うっ血度判定部123は、当該テーブルを、受理したカフサイズに基づき検索して、対応するうっ血度を読出すことで、うっ血度を判定する。同様に、測定部位周囲長についても、測定部位周囲長と、対応するうっ血度とを予め登録したテーブルをフラッシュメモリ43に格納しておき、これを測定部位周囲長に基づき検索することで、対応するうっ血度を読出すようにしてもよい。
【0092】
なお、同じカフサイズまたは測定部位周囲長であっても、ポンプ51の駆動電圧が低いと上記と同様のことが言える。そこで、ポンプ51の駆動電圧によってうっ血度を算出してもよく、また、テーブルを用いて対応するうっ血度を読出すとしてもよい。
【0093】
<収縮期血圧による判定>
うっ血度判定部123は、被測定者の収縮期血圧からうっ血度を判定するとしてもよい。具体的には、前述の最高加圧値は、例えば収縮期血圧+30mmHgといった所定圧である。そこで、前述の最高加圧値を収縮期血圧に置き換えて同様の手順でうっ血度を判定することができる。
【0094】
発明者は、実験により、収縮期血圧とうっ血度の関係を次の式(10)に表わし、式(10)に従って収縮期血圧からうっ血度を算出することができるとの知見を得た。実験によれば、最高加圧値と同様に、収縮期血圧が高くなるほどうっ血度が高くなる、との知見を得た。
【0095】
C=μ×SBP
2+ν×SBP+ο・・・式(10)
式(10)の変数について、Uはうっ血度、SBPは収縮期血圧、μ、ν、οは予め実験等により求められた定数である。
【0096】
なお、うっ血度判定部123は式(10)の代わりにテーブルを検索してうっ血度を取得してもよい。つまり、実験により取得した収縮期血圧値と、対応するうっ血度とを予めテーブルに登録し、当該テーブルをフラッシュメモリ43に格納しておく。そして、当該テーブルを、うっ血度判定部123が最高加圧値に基づき検索して、対応するうっ血度を読出すことで、うっ血度を判定する。
【0097】
ここで、うっ血度判定に用いる収縮期血圧は、血圧推定部402が加圧過程で検出される圧脈波振幅を用いて推定した収縮期血圧(以下、推定収縮期血圧という)を用いてもよい。
【0098】
血圧推定部402は、脈波検出部118からの出力に基づき収縮期血圧を推定する。具体的には、脈波検出部118は、カフ圧に重畳した振動成分である脈波信号を抽出して出力する。脈波検出部118は、ハイパスフィルタ機能を有し、当該ハイパスフィスタ機能を用いてカフ圧から各脈波を抽出して出力する。
【0099】
血圧推定部402は、脈波検出部118から脈波信号を入力し、入力した脈波信号の各脈波について起点・終点を一拍毎に検出し、圧脈波振幅を算出する。そして、加圧過程で入力する脈波信号のうち、圧脈波振幅が最大振幅をもつ脈波を特定し、その振幅値を用いた所定演算式から収縮期血圧を算出する。これにより、推定収縮期血圧を取得する。したがって、血圧測定時には、加圧目標値取得部114は、加圧過程で血圧推定部402から推定収縮期血圧を入力し、(推定収縮期血圧+30mmHg)の演算に従って加圧目標である最高加圧値を算出し、算出した値を、ステップST15の所定圧として調整部に与えるようにしてもよい。なお、推定収縮期血圧は、ステップST33でテーブル431に、他の測定データを関連付けて格納される。
【0100】
また、うっ血度判定に用いる収縮期血圧は、減圧中に検出された圧脈波振幅より、うっ血の度合いによる補正前の血圧算出パラメータを使用して算出された暫定収縮期血圧であってもよい。
【0101】
また、収縮期血圧により補正するとしたが、脈圧(収縮期血圧と拡張期血圧の差分)により補正するとしてもよい。つまり、オシロメトリック法はカフ圧を変化させたときの圧脈波振幅の変化により血圧を算出するので、脈圧による補正は収縮期血圧の補正に有効であるとともに、特に拡張期血圧の補正にその効果がある。つまり、減圧時に血圧を算出する方式では、脈圧が大きい人、すなわち、収縮期血圧と拡張期血圧の差が大きい人では、減圧開始してから拡張期血圧が決定されるまでに比較的長い時間を要し、うっ血度が大きくなり、結果として拡張期血圧の誤差の増大につながるからである。
【0102】
脈圧での補正は式(10)の収縮期血圧SBPの代わりに脈圧を使用すればよい。
また、血圧算出に用いるうっ血度は、上記の加圧時間、加圧速度、収縮期血圧などの少なくとも2つ以上の要素を用いて算出したうっ血度の代表値であってもよい。具体的には、加圧時間、加圧速度、収縮期血圧などの少なくとも2つ以上の要素それぞれを用いて算出したうっ血度の平均値を用いてもよい。
【0103】
(他の実施の形態)
本実施の形態の血圧取得部としては、上述したオシロメトリック法による第1血圧取得部の他に、次に説明するマイクロフォン法による第2血圧取得部がある。
【0104】
本実施の形態に係る第2血圧取得部を備える電子血圧計1Aの外観は
図1と同様である。
図9には、他の実施の形態に係る電子血圧計1Aのハードウェア構成が示される。
図9を参照して、
図2の電子血圧計1の構成と異なる点は、本体部10に代替して本体部10A、およびカフ20に代替してカフ20Aを備える点である。カフ20Aは、空気袋21とコロトコフ音を集音することにより検出するための音検出部であるマイクロフォン22を含む。本体部10Aは、本体部10の構成に追加してA/D(Analog/Digital)変換回路47を備え、そしてCPU100に代替してCPU100Aを備える。電子血圧計1Aの他の構成は
図2に示すものと同様であるから、ここでは説明を略す。
【0105】
A/D変換回路47は、マイクロフォン22からの出力電圧信号をデジタルデータに変換してCPU100Aに出力する。この出力電圧はコロトコフ音の音圧レベル(単位:dB)を指す。音圧が大きいほど大きな音として認識される。
【0106】
(機能構成)
図10は、電子血圧計1Aの機能構成を示す機能ブロック図である。
図10を参照して、CPU100Aの
図3の構成と異なる点を説明する。
【0107】
CPU100Aは、パラメータ決定部125に代替して閾値決定部127を備え、血圧を取得する血圧取得部として血圧算出部117に代替して血圧決定部129を備える。
図10の他の構成は、
図3に説明したものと同様であるから説明は略す。
【0108】
本実施の形態では、コロトコフ音の音圧に基づき、すなわちA/D変換回路47の出力電圧に基づき血圧を決定するための基準電圧を指す閾値TKを用いる。閾値TKは、初期値として予めフラッシュメモリ43の所定領域に格納される。
【0109】
つまり、前述したようにマイクロフォン法では、減圧過程においてコロトコフ音が出現したときに検出されるカフ圧を収縮期血圧、コロトコフ音が減弱または消滅したときに検出されるカフ圧を拡張期血圧として決定する。
【0110】
閾値TKは、コロトコフ音の出現および減弱(消滅)を検出するために用いられるパラメータ値を指す。閾値TKは、判定されるうっ血度に基づき、閾値決定部127によって決定される。したがって、閾値決定部127は、血圧決定部129が血圧決定に用いるパラメータ値を決定するためのパラメータ決定部に相当する。
【0111】
図11と
図12は、本発明の他の実施の形態に係るうっ血の有無による閾値TKの変更を説明するためのグラフであり、発明者の実験により取得されたものである。
図11と
図12を参照して、上段には、血圧測定時の圧調整部によるカフ圧の変化を示すグラフが模式的に示される。このグラフの横軸には経過時間(単位:sec)がとられ、縦軸にカフ圧(単位:mmHg)がとられる。また、下段には、上段のグラフに関連付けてコロトコフ音レベル(音圧レベル)の変化を示すグラフが模式的に示される。このグラフの縦軸には、上段グラフが指す血圧測定時の圧調整部によるカフ圧の変化に伴い検出されるコロトコフ音レベル(すなわち、A/D変換回路47の出力電圧値)がとられ、横軸には経過時間(単位:sec)がとられる。下段のグラフに関連して、閾値TKが示される。
【0112】
血圧測定時には、血圧決定部129は減圧を開始してから減圧終了するまで(または、血圧決定完了と判定されるまで)A/D変換回路47の出力電圧を入力し、入力した電圧値と所定の閾値TKとを比較し、比較結果に基づき(電圧値>閾値TK)の条件が成立するか否かを判定する。減圧開始後において最初に当該条件の成立を判定したときに圧力検出部112が検出するカフ圧を収縮期血圧SBPと決定し、その後に当該条件が不成立と判定したときの直前において圧力検出部112が検出したカフ圧を拡張期血圧DBPと決定する。
【0113】
ここでは、血圧決定部129は、圧力検出部112からのカフ圧とA/D変換回路47からの出力電圧とを同期して入力する。入力する毎に、入力したカフ圧のデータと出力電圧のデータとを関連付けてメモリ処理部119を介してフラッシュメモリ43に格納する。したがって、血圧決定部129は、上記の条件が成立または不成立と判定したときの出力電圧に基づきフラッシュメモリ43を検索することで、関連付けされたカフ圧を、すなわち収縮期血圧SBPと拡張期血圧DBPとして読出すことができる。
【0114】
図11と
図12は、同一被測定者について、うっ血が生じていない場合とうっ血が生じている場合のグラフを指す。閾値TKを用いて血圧を決定する場合に、
図11のうっ血が生じていないケースでの決定血圧(収縮期血圧SBPと拡張期血圧DBP)と、
図12のうっ血が生じているケースでの決定血圧(収縮期血圧SBPPと拡張期血圧DBPP)とは一致しない。つまり、うっ血により血流量が減少しコロトコフ音が小さくなることに起因して、うっ血が生じている場合に、うっ血が生じていないケースと同じ閾値TKを用いると、決定血圧は誤差ΔSPおよびΔDPを含むことになる(
図12参照)。誤差を補正するには、
図12の2点鎖線で示す閾値TKを、破線の閾値TKに変更する必要がある(
図12参照)。
【0115】
発明者は、うっ血度に依存せずに正確に血圧を決定するために、実験によって、うっ血度毎に閾値TKを決定した。フラッシュメモリ43には、複数種類のうっ血度と、各うっ血度に対応して閾値TKが登録されたテーブル432が予め格納される。したがって、閾値決定部127は、うっ血度判定部123により判定されたうっ血度に基づき、メモリ処理部119を介してテーブル432を検索することにより、対応する閾値TKを読出し、血圧決定部129に出力する。これにより、血圧決定部129は、うっ血度によらず正確に血圧測定するための閾値TKを取得することができる。
【0116】
(処理フローチャート)
図13と
図14のフローチャートに従って、マイクロフォン法による測定動作を説明する。これらフローチャートに従うプログラムは、予めメモリ部42に格納される。CPU100Aは、メモリ部42からプログラムの指令を読出し、その指令に従って各部の動作を制御することにより、測定動作が実現される。
【0117】
図13のフローチャートでは、ステップST3〜ST19では、
図8のステップST3〜ST19と同じ処理が実行される。これにより、うっ血度判定部123によりうっ血度が判定される。
【0118】
続いて、閾値決定部127は、うっ血度判定部123から判定されたうっ血度を入力し、入力したうっ血度に基づきテーブル432を検索する、検索により、うっ血度に対応した閾値TKを決定する(ST20)。
【0119】
図14を参照して、減圧制御部116は、ポンプ51の停止状態のまま弁52を徐々に開きカフ圧を減圧開始する(ST21)。以降、減圧過程に移行する。
【0120】
減圧過程では、血圧決定部129は、決定した閾値TKとA/D変換回路47から逐次入力する電圧値とを比較し、比較結果に基づき(電圧値≧閾値TK)の条件が成立するか否かを判定する(ST25a)。判定結果に基づき、減圧開始後において最初に当該条件の成立を判定したときに(ST25bでYES)、圧力検出部112が検出するカフ圧を収縮期血圧SBPと決定し(ST25c)、その後に当該条件が不成立と初めて判定したとき(ST25dでYES)の直前において圧力検出部112が検出したカフ圧を拡張期血圧DBPと決定する(ST25e)。血圧を決定しない間は(ST25bでNO、ST25dでNO)、ステップST27の処理に移行する。
【0121】
CPU100Aにより、収縮期血圧SBPおよび拡張期血圧DBPの両方が決定されたか否かが判定される(ST27)。決定されていないと判定されると(ST27でNO)、処理はステップST21に移行し、減圧が継続するが、両方の血圧が決定したと判定されると(ST27でYES)、カフ内の空気を急速排気し(ST29)、決定された血圧値の表示する(ST31)。また、メモリ処理部119は、決定された血圧値・脈拍数427、測定日時421、うっ血度422などを対応付けてテーブル431に格納する(ST33)。その後、CPU100Aは、電源44をOFFし測定処理は終了する。
【0122】
上述したオシロメトリック法およびマイクロンフォン法では、カフ圧の減圧過程で血圧を算出する減圧血圧測定法を説明したが、カフ圧の加圧過程に検出される圧脈波振幅またはコロトコフ音により血圧を算出する加圧血圧測定法においても同様の手順を適用することができる。本実施の形態では、加圧血圧測定法では加圧速度を、脈拍数が少ない人でも血圧算出に十分な圧脈波振幅情報・コロトコフ音を得ることができるように十分に遅い速度(例えば5.5mmHg/sec)に設定するが、収縮期血圧が高い被測定者、またはカフ20が巻付けられる測定部位の周囲長が長い被測定者の場合には、収縮期血圧が低い人、または測定部位周囲長が短い人に較べてうっ血度は大きくなる。
【0123】
これに対処可能なように、各実施の形態では、うっ血度を判定し、うっ血度に基づき決定したパラメータ値を用いて血圧を算出するから、またはうっ血度に基づき決定した閾値TKを用いて血圧を決定するから、いずれの測定法であっても、うっ血の有無またはうっ血度の高低にかかわらず正確に血圧を測定できる。
【0124】
(実施の形態の効果)
上述の実施の形態によるオシロメトリック法またはマイクロフォン法の血圧測定により奏される効果を従来の測定方法と比較して説明する。
【0125】
従来の血圧測定では、カフ圧を所定の圧力(例えば収縮期血圧+30mmHg程度)まで加圧する必要があるため、一定速度で加圧した場合には血圧の高い人では加圧に時間がかかり、血圧の低い人よりうっ血が発生しやすい傾向にあったので、うっ血による測定誤差があった。これに対して、本実施の形態では、うっ血度を判定して血圧測定するので、うっ血による誤差を排除した血圧測定が可能になる。
【0126】
また、加圧速度はカフ20の空気容量、すなわち、測定部位の周囲長にも影響を受ける。測定部位下の動脈にカフ圧を減衰なく伝達するには、カフ20の幅が測定部位周囲長の2/3以上必要であることが判明している。そのため、測定部位周囲長が大きい人ほどカフ20の幅、すなわち、カフ圧を上昇させるのに必要な空気量が増加し、結果として、加圧速度が遅くなりうっ血が発生しやすい傾向にあった。これに対処するために、従来は、測定部位周囲長が大きいほど、カフ圧の加圧に使用されるポンプの駆動電圧を高く設定していた。しかしながら、家庭向けの電子血圧計では本体の大きさの制限により搭載するポンプの大きさも制限され、その加圧能力に限界があることや、駆動電源として一般的に電池が使用されておりポンプの駆動電圧も制限があることから、十分な対策となっていなかった。これに対して、本実施の形態では、うっ血度を判定して血圧測定するので、ポンプの改良なく、また過度の電力消費もなく、うっ血による誤差を排除した血圧測定が可能になる。
【0127】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。