(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記導入制御部は、前記クランクの角度が、前記ピストンが下死点に到達する近傍の角度になると、前記還元剤の導入を停止するように前記還元剤導入部を制御することを特徴とする請求項1に記載の脱硝装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
コンテナ船やタンカー等の大型船舶では、熱効率がよく、低質燃料油(重油)が使用できるためコスト面で有利である、ユニフロー型の2サイクルエンジン(2ストロークエンジン)が広く使用されている。このようなエンジンにおいて、化石燃料、例えば、ガソリン、軽油、重油、液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)、および液化石油ガス(LPG:Liquefied Petroleum Gas)等の燃料を燃焼させると、その結果生じる排気ガスには、NOxが含まれる。以下、エンジンから排出される排気ガス中のNOxを還元する脱硝システム100について説明する。なお、以下の実施形態においては、脱硝システム100に用いるエンジンとしてユニフロー型の2ストロークエンジンを例に挙げて説明するが、他の形式の2ストロークエンジン等に脱硝システム100を採用することもできる。
【0015】
(脱硝システム100)
図1は、本実施形態にかかる脱硝システム100を説明するための説明図である。
図1に示すように、脱硝システム100は、エンジン200と、過給機120と、脱硝装置300とを含んで構成される。
図1中、物質(排気ガス、還元剤)の流れを実線で示し、制御の流れを破線で示す。
【0016】
エンジン200は、例えば、ユニフロー型の2ストロークエンジンであり、複数のシリンダ210で構成される。
【0017】
過給機120は、タービン122と、タービン122と同軸の圧縮機124とを含んで構成される。タービン122は、エンジン200から排出された排気ガスX1によって回転し、圧縮機124は、タービン122の回転を利用し、外部から導入される空気を圧縮してエンジン200への掃気圧を高める。こうすることで、エンジン200の出力を向上させることができる。
【0018】
脱硝装置300は、排気ガスX1にアンモニアを作用させることで、排気ガスX1中に含まれるNOxを窒素に還元(分解)する。
【0019】
このように、エンジン200から排出された排気ガスX1は、脱硝装置300に導入され、NOxが除去されて、排気ガスX2として外部に排出される。
【0020】
このような2ストロークエンジンは、4ストロークエンジンと比較して、高効率であり燃料に対する活性ガス(空気)の割合が高いので排気ガスの温度が低い場合が多い。そこで、本実施形態では、脱硝装置300に導入される還元剤(尿素水)の気化、分解を確実に行うために、排気ガスの温度が高い、シリンダ210を構成する排気弁220の近傍であって排気弁220の下流(以下、排気弁220の近傍であって排気弁220の下流を、単に排気弁220の下流近傍と称する)の排気路350に還元剤を導入する。排気弁220の下流近傍の排気ガスX1の温度は、600℃程度であるため、尿素水を確実に気化、分解してアンモニアを生成することができる。
【0021】
以下、本実施形態にかかるエンジン200および脱硝装置300の具体的な構成について詳細に説明する。
【0022】
(エンジン200)
図2は、本実施形態にかかるエンジン200を説明するための説明図である。ここでは、理解を容易にするために、1つのシリンダ210を図示して説明する。
図2に示すエンジン200は、ディーゼルエンジンであって、シリンダ210(シリンダヘッド210a、シリンダライナ210b)と、ピストン212と、燃料噴射弁214と、排気ポート216と、排気弁駆動装置218と、排気弁220と、掃気ポート222と、掃気室224と、ロータリエンコーダ230と、排気集合管232と、を含んで構成され、ガバナー(調速機)250、燃料噴射制御装置252、排気制御装置254等の制御部によって制御される。
【0023】
シリンダ210は、掃気、圧縮、燃焼、排気といった行程を、シリンダ210内部におけるピストン212の往復の行程で完了するレシプロエンジンである。シリンダ210は、上記行程を通じて、クロスヘッド(図示せず)に連結されたピストン212がシリンダ210内を摺動自在に、
図1中白抜き矢印に示す方向に往復移動する。このようなクロスヘッド型のピストン212では、シリンダ210内でのストロークを比較的長く形成することができ、ピストン212に作用する側圧をクロスヘッドが受けるため、2ストロークエンジンの高出力化を図ることができる。さらに、シリンダ210とクロスヘッドが収まるクランク室とが隔離されるので、低質燃料油を用いる場合においても汚損劣化を防止することができる。
【0024】
燃料噴射弁214は、シリンダ210のストローク方向一端部である、ピストン212の上死点より上方のシリンダヘッド210aに設けられ、エンジンサイクルにおける所望の時点で適量の燃料油(主燃料)を噴射する。
【0025】
排気ポート216は、シリンダ210のストローク方向一端部である、ピストン212の上死点より上方のシリンダヘッド210aの頂部に設けられた開口部であり、シリンダ210内で生じた燃焼後の排気ガスX1を排気するために開閉される。排気弁駆動装置218は、所定のタイミングで排気弁220を上下に摺動し、排気ポート216を開閉する。このようにして排気ポート216を介して排気された排気ガスX1は、排気路350および排気集合管232を経て、過給機120のタービン122に供給された後、脱硝触媒314でNOxが還元され、排気ガスX2として外部に排気される。
【0026】
掃気ポート222は、シリンダライナ210bのストローク方向の、排気ポート216が設けられた一端部に対する他端部側に設けられた開口部であり、ピストン212の摺動動作に応じてシリンダ210内に活性ガスを吸入する。かかる活性ガスは、酸素、オゾン等の酸化剤、または、その混合気(例えば空気)を含む。掃気室224には、過給機120の圧縮機124によって加圧された活性ガス(例えば空気)が封入されており、掃気室224とシリンダ210内の差圧をもって掃気ポート222から活性ガスが吸入される。掃気室224の圧力は、過給機120のタービン122の回転に応じた圧縮機124の出力に基づいて決定される。
【0027】
排気集合管232は、排気弁220を通じてシリンダ210と連通する複数の排気路350を併合する。
【0028】
ガバナー250は、上位にあたる制御装置から入力されたエンジン出力指令値と、ロータリエンコーダ230からのクランク角度信号によるエンジン回転数に基づいて、燃料噴射量を導出し、燃料噴射制御装置252に出力する。燃料噴射制御装置252は、ガバナー250から入力された燃料噴射量を示す情報と、ロータリエンコーダ230からのクランク角度信号に基づいて、燃料噴射弁214における燃料油の噴射量および噴射タイミングを制御する。排気制御装置254は、燃料噴射制御装置252からの排気弁開閉タイミング信号と、ロータリエンコーダ230からのクランク角度信号に基づいて、排気弁駆動装置218に排気弁操作信号を出力する。
【0029】
以下、上述したエンジン200のエンジンサイクルにおける各制御部の動作について説明する。
【0030】
(エンジンサイクルにおける各制御部の動作)
図3は、エンジン200の各制御部の動作を説明するための説明図である。特に
図3(a)〜(e)はエンジン200の断面図を、
図3(g)は
図3(a)〜(e)の状態の時間関係を示すためのタイミングチャートを示している。ここでは、エンジン200における行程を排気、掃気、圧縮、燃焼の順で説明する。
【0031】
燃焼行程後の排気行程では、
図3(a)の如く、排気ポート216および掃気ポート222が閉塞状態にあり、シリンダ210内は排気ガスX1で満たされている。燃焼圧によってピストン212が下降し下死点に近づくと、排気制御装置254は排気弁駆動装置218を通じて排気弁220を開弁する。そして排気弁220の開弁が開始された後、ピストン212の摺動動作に応じて掃気ポート222が開口する。すると、
図3(b)、(c)に示すように、掃気ポート222から活性ガスY1が吸入され、活性ガスY1は、スワールを形成しながら上昇し、シリンダ210内の排気ガスX1を排気ポート216から押し出す。
【0032】
そして、排気ガスX1の排出が完了すると、
図3(d)の如く、圧縮行程に転じたピストン212によって掃気ポート222が塞がれ、その後、排気制御装置254は、排気弁駆動装置218を通じて排気弁220を閉じる。
【0033】
そして、さらなる圧縮行程を経て活性ガスY1は高圧に圧縮され高温となり、さらに、燃料噴射弁214からの燃料油の噴射に基づいて燃料油が着火されて、
図3(e)のような燃焼行程が行われる。そして、燃焼行程によりピストン212が押し下げられると
図3(a)の状態に戻り、以後、排気、掃気、圧縮、燃焼の行程を繰り返す。
【0034】
図3で示したように、排気弁220が閉じられている間、排気弁220のすぐ下流には、掃気ポート222が開放されてから排気弁220が閉じられる前に、掃気ポート222から掃気され、そのまま排気されてしまった活性ガスY1が滞留している(
図3(d)参照)。活性ガスY1は、80〜90℃程度と温度が低い。したがって、上述したように排気弁220の下流近傍で単に還元剤を導入すると、還元剤を十分に気化、分解することができない場合が生じ得る。
【0035】
上述したように、ここでは、エンジン200としてディーゼルエンジンを例に挙げて説明したが、ガスエンジンにおいても、排気弁220が閉じられている間、排気弁220のすぐ下流には、80〜90℃程度の低温のガスが滞留してしまう。以下、ガスエンジンとしてのエンジン270についても詳述する。
【0036】
(エンジン270)
図4は、本実施形態にかかるエンジン270を説明するための説明図である。ここでも、理解を容易にするために、1つのシリンダ210を図示して説明する。
図4に示すエンジン270は、ガスエンジンであって、シリンダ210(シリンダヘッド210a、シリンダライナ210b)と、ピストン212と、パイロット噴射弁272と、排気ポート216と、排気弁駆動装置218と、排気弁220と、掃気ポート222と、掃気室224と、燃料噴射ポート274と、燃料噴射弁276と、ロータリエンコーダ230と、排気集合管232と、を含んで構成され、ガバナー(調速機)250、燃料噴射制御装置278、排気制御装置254等の制御部によって制御される。
【0037】
なお、上述したエンジン200の構成要素として既に述べた、シリンダ210(シリンダヘッド210a、シリンダライナ210b)、ピストン212、排気ポート216、排気弁駆動装置218、排気弁220、掃気ポート222、掃気室224、ロータリエンコーダ230、排気集合管232、ガバナー(調速機)250、排気制御装置254は、実質的に機能が等しいので重複説明を省略し、ここでは、構成が相違するパイロット噴射弁272、燃料噴射ポート274、燃料噴射弁276、燃料噴射制御装置278を主に説明する。
【0038】
パイロット噴射弁272は、シリンダ210のストローク方向一端部である、ピストン212の上死点より上方のシリンダヘッド210aに設けられ、エンジンサイクルにおける所望の時点で適量の燃料油を噴射する。ここで、パイロット噴射弁272が噴射する燃料油は、燃料ガスと活性ガスとの混合気を着火させるためのものである。
【0039】
燃料噴射ポート274は、例えば、シリンダ210内周面の中腹部(排気ポート216と掃気ポート222との間)において、周方向に所定の間隔を空けて設けられた複数の開口部である。燃料噴射弁276は、燃料噴射ポート274内に配置され、燃料噴射制御装置278からの指令を受けて、例えば、重油をガス化した燃料ガスを噴射する。こうしてシリンダ210内に燃料ガスが供給される。
【0040】
燃料噴射制御装置278は、ガバナー250から入力された燃料噴射量を示す情報と、ロータリエンコーダ230からのクランク角度信号に基づいて、燃料噴射弁276における燃料ガスの噴射量および噴射タイミングを制御する。
【0041】
以下、上述したエンジン270のエンジンサイクルにおける各制御部の動作について説明する。
【0042】
(エンジンサイクルにおける各制御部の動作)
図5は、エンジン270の各制御部の動作を説明するための説明図である。特に
図5(a)〜(f)はエンジン270の断面図を、
図5(g)は
図5(a)〜(f)の状態の時間関係を示すためのタイミングチャートを示している。ここでは、エンジン270における行程を排気、掃気、圧縮、燃焼の順で説明する。
【0043】
燃焼行程後の排気行程では、
図5(a)の如く、排気ポート216および掃気ポート222が閉塞状態にあり、シリンダ210内は排気ガスX1で満たされている。燃焼圧によってピストン212が下降し下死点に近づくと、排気制御装置254は排気弁駆動装置218を通じて排気弁220を開弁する。そして排気弁220の開弁が開始された後、ピストン212の摺動動作に応じて掃気ポート222が開口する。すると、
図5(b)に示すように、掃気ポート222から活性ガスY1が吸入され、活性ガスは、燃料ガスY2の混合を促進するためのスワールを形成しながら上昇し、シリンダ210内の排気ガスX1を排気ポート216から押し出す。
【0044】
活性ガスY1の吸入に伴う排気ガスX1と活性ガスY1との境界が、
図5(b)の如く、燃料噴射ポート274に達すると、燃料噴射制御装置278は、燃料噴射弁276に燃料ガスY2の噴射を開始させる。この時、排気ポート216および掃気ポート222は開放されており、シリンダ210内の圧力はまだ低い状態であるため、燃料噴射弁276に高い圧力をかけなくとも(低圧でも)、燃料噴射弁276は、適切に燃料ガスY2を噴射することができる。
【0045】
ただし、燃料ガスY2の噴射タイミングが早すぎると、シリンダ210の燃焼室に残存する高温の排気ガスX1に燃料ガスY2が接触し、排気ガスX1の熱が燃料ガスY2に伝わり過早着火が生じるおそれがある。そこで、本実施形態では、
図5(b)に示すように、燃料噴射制御装置278は、掃気ポート222からの活性ガスY1が燃料噴射ポート274に達した後、さらに所定時間が経過するのを待って燃料ガスY2を噴射する。すると、
図5(c)のように、燃料ガスY2と活性ガスY1とを混合した予混合気Y3と、排気ガスX1との間に、燃料ガスY2が混合されていない活性ガスY1を主成分とする狭入層Y4が生成される。
【0046】
そして、排気ガスX1の排出が完了すると、
図5(d)の如く、圧縮行程に転じたピストン212によって掃気ポート222が塞がれ、その後、排気制御装置254は、排気弁駆動装置218を通じて排気弁220を閉じる。ここでは、狭入層Y4の一部が排気ポート216から排出された時点で排気弁220を閉じることで、狭入層Y4に混入してきた排気ガスX1をシリンダ210内に残すことなく排出でき、また、予混合気Y3を排気ポート216から排出することなく、シリンダ210内に適切に予混合気Y3を残すことができる。こうして、過早着火を予防し、エンジン駆動の安定化を図ることができる。
【0047】
ところで、シリンダ210内における活性ガスY1の上昇速度は、排気ポート216の開放度(リフト量)と掃気ポート222の開放度(開口面積)の少なくともいずれか一方に基づいて推定でき、これらはクランク角度信号から一意に求めることができるので、燃料噴射制御装置278は、クランク角度信号から燃料ガスY2の噴射タイミングを設定する。
【0048】
燃料噴射制御装置278は、燃料噴射弁276を通じて燃料ガスY2を噴射し続け、
図5(e)で示したように、ピストン212が燃料噴射ポート274に達する前に、燃料ガスY2の噴射を停止する。このように、燃料噴射制御装置278による燃料ガスY2の噴射が一通り完了した後、さらなる圧縮行程を経て予混合気Y3は高圧に圧縮され、さらに、パイロット噴射弁272からの燃料油の噴射に基づいて予混合気Y3が着火されて、
図5(f)のような燃焼行程が行われる。そして、燃焼行程によりピストン212が押し下げられると
図5(a)の状態に戻り、以後、排気、掃気、圧縮、燃焼の行程を繰り返す。
【0049】
図5で示したように、排気弁220が閉じられている間、排気弁220のすぐ下流には、掃気ポート222が開放されてから排気弁220が閉じられる前に、掃気ポート222から掃気され、そのまま排気されてしまった狭入層Y4が滞留している(
図5(d)参照)。狭入層Y4は、活性ガスY1を主成分としているため、80〜90℃程度と温度が低い。したがって、上述したように排気弁220の下流近傍で単に還元剤を導入すると、還元剤を十分に気化、分解することができない場合が生じ得る。
【0050】
このように上述したディーゼルエンジンであるエンジン200であっても、ガスエンジンであるエンジン270であっても、排気弁220が閉じられている間、排気弁220のすぐ下流には、温度が低いガスが滞留しているため、排気弁220の下流近傍で単に還元剤を導入すると、還元剤を十分に気化、分解することが困難である。そこで、本実施形態では、還元剤を導入するタイミングを工夫することで、排気路における尿素やその他の反応生成物の析出を防止することが可能な脱硝装置300を提供する。
【0051】
(脱硝装置300)
脱硝装置300では、排気ガスX1に還元剤を導入し、還元剤の導入位置の下流にある、脱硝触媒で、排気ガスX1中に含まれるNOxを還元して窒素を生成する選択式触媒還元方式を採用している。
【0052】
上述した
図1に示すように、脱硝装置300は、還元剤導入部310と、導入制御部312と、脱硝触媒314とを含んで構成される。
【0053】
還元剤導入部310は、エンジン200(または、エンジン270)を構成する複数の排気弁220と、排気集合管232との間に形成される排気路350にそれぞれ設けられ、排気路350それぞれに還元剤(尿素水)を導入(噴霧)する。
【0054】
導入制御部312は、ロータリエンコーダ230からのクランク角度信号に基づいて、クランクの角度が、排気弁220が開弁される角度から所定の角度回転したときから尿素水の導入を開始するように還元剤導入部310を制御する。
【0055】
図6は、クランクの角度と導入制御部312による還元剤導入タイミングとの関係を説明するための説明図である。
【0056】
図6に示すように、導入制御部312は、クランクの角度が、排気弁220の開放が開始される角度から所定の角度α(例えば、5〜15度)回転した後、すなわち、排気弁220の開放が開始されてから所定時間経過後に、尿素水を導入するように還元剤導入部310を制御する。
【0057】
上述したように、排気弁220の開放が開始された時点から所定時間が経過するまでは、排気ポート216を通じてシリンダ210から排出される排気ガスX1により、排気弁220のすぐ下流に滞留している低温の活性ガスY1(エンジン270においては、活性ガスY1を主成分とする狭入層Y4、以下、単に低温のガスと称する)が押し出されて、排気路350に移動する。ここで、排気弁220の開放が開始されるとともに尿素水を導入すると、排気ガスX1に押し出され排気路350を移動する低温のガスに尿素水を導入してしまい尿素が分解されない。
【0058】
そこで、導入制御部312が排気弁220の開放が開始されてから所定時間が経過するまでは尿素水を導入しないように還元剤導入部310を制御することで、尿素が分解されずに排気路に析出してしまう事態を回避することが可能となる。そして、導入制御部312は、排気弁220の開放が開始される角度から所定の角度α回転した後から、すなわち滞留している低温のガスが通過してから、尿素水が導入されるように還元剤導入部310を制御することで、高温の排気ガスX1が排気路350に到達し始めてから尿素水の導入が開始されるので、尿素水を確実に、気化、分解することができる。
【0059】
また、導入制御部312は、クランクの角度が、ピストン212が下死点に到達する近傍の角度になると、尿素水の導入を停止するように還元剤導入部310を制御する。ピストン212が下死点に到達する近傍では、高温の排気ガスX1が排気ポート216から排出されている。しかし、下死点に到達する近傍から高温の排気ガスX1とともに低温のガスが排気ポート216から排出される。したがって、導入制御部312が、ピストン212が下死点に到達する近傍の角度になると、尿素水の導入を停止するように還元剤導入部310を制御することで、ピストン212が下死点に到達した後、排気弁220が閉じられる前までに、排気ポート216から排出される低温のガスに尿素水を導入してしまい、尿素が分解されずに排気路に析出してしまう事態を回避することが可能となる。
【0060】
脱硝触媒314は、バナジウム、タングステン、モリブデン等の金属またはその酸化物と酸化チタン等で構成され、過給機120のタービン122を通過した排気ガスX1中のNOxを還元する。
【0061】
以上説明したように、本実施形態にかかる脱硝装置300によれば、尿素水の導入期間を、クランクの角度が、排気弁220が開弁される角度から所定の角度回転したときから、ピストン212が下死点に到達する近傍の角度になるまでとすることで、高温の排気ガスX1が排気路350を流通している間のみ排気路350に尿素水を導入することができる。これにより、排気路350における尿素やその他の反応生成物の析出を防止することができ、別途の加熱装置を利用せずとも、尿素水を気化、分解してアンモニアを生成させ、脱硝触媒314に確実にアンモニアを供給することが可能となる。
【0062】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。