(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
眼鏡レンズの周縁を加工するための大径の第1周縁加工具と前記第1周縁加工具より小径の第2周縁加工具を有する眼鏡レンズ周縁加工装置によって、眼鏡レンズの周縁を加工するためのデータを決定する眼鏡レンズ加工データ決定装置であって、
眼鏡レンズを眼鏡フレームに取り付けるための基本玉型を得る基本玉型取得手段と、
前記第1周縁加工具の径に基づき、前記第1周縁加工具によって前記基本玉型より小さな動径長に加工されてしまう加工干渉を回避して前記第1周縁加工具によって加工可能に前記基本玉型を補正した補正玉型を決定する第1決定手段と、
前記補正玉型に基づいて前記第1周縁加工具によってレンズの周縁を加工する領域を決定し、前記第1周縁加工具によって前記基本玉型に加工されない残部分を前記第2周縁加工具によって加工する領域として決定する第2決定手段と、
を備えることを特徴とする眼鏡レンズ加工データ決定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では眼鏡フレームのデザインは多様化していきており、特に、リムレスフレーム(いわゆるツーポイントフレーム)、ハーフリムフレーム(いわゆるナイロールフレーム)においては、レンズの外径形状にファッション性を持たせることができるため、レンズの外形が内側に窪んだ凹形(逆R形状)がデザインされるものも増えてきている。
【0005】
しかし、眼鏡レンズ周縁加工装置が持つ仕上げ砥石等の周縁加工具の径よりも小さな凹形を有する玉型が加工データとして扱われ、作業者がこれに気が付かずに、その玉型に基づいて通常の加工条件でレンズ周縁が加工されると、誤った形状(加工具の径より小さな凹形が削り取られた形状)にレンズが加工されてしまう。
【0006】
本件発明は、誤った形状にレンズが加工されるトラブルを回避でき、また、凹形を有する玉型であっても適切にレンズを加工することができる眼鏡レンズ加工データ決定
装置及び眼鏡レンズ加工データ決定プログラムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1) 眼鏡レンズの周縁を加工するための大径の第1周縁加工具と前記第1周縁加工具より小径の第2周縁加工具を有する眼鏡レンズ周縁加工装置によって、眼鏡レンズの周縁を加工するためのデータを決定する眼鏡レンズ加工データ決定装置であって、眼鏡レンズを眼鏡フレームに取り付けるための基本玉型を得る基本玉型取得手段と、前記第1周縁加工具の径に基づき、
前記第1周縁加工具によって前記基本玉型より小さな動径長に加工されてしまう加工干渉を回避して前記第1周縁加工具によって加工可能に
前記基本玉型を補正した補正玉型を決定する第1決定手段と、前記補正玉型に基づいて前記第1周縁加工具によってレンズの周縁を加工する領域
を決定し、前記第1周縁加工具によって前記基本玉型に加工されない残部分を前記第2周縁加工具によって加工する領域として決定する第2決定手段と、を備えることを特徴とする。
(2)
粗加工された眼鏡レンズの周縁を平仕上げ加工するための大径の平仕上げ加工用の第1周縁加工具と前記第1周縁加工具より小径の平仕上げ加工用の第2周縁加工具を有する眼鏡レンズ周縁加工装置によって、眼鏡レンズの周縁を加工するためのデータを決定する眼鏡レンズ加工データ決定装置であって、眼鏡レンズを眼鏡フレームに取り付けるための基本玉型を得る基本玉型取得手段と、前記第1周縁加工具の径に基づき、前記第1周縁加工具によって前記基本玉型より小さな動径長に加工されてしまう加工干渉を回避して前記第1周縁加工具によって加工可能に前記基本玉型を補正した補正玉型を決定する第1決定手段と、前記補正玉型に基づいて前記第1周縁加工具によってレンズの周縁を平仕上げ加工する領域を決定し、前記基本玉型に対して前記補正玉型に補正した部分を前記第2周縁加工具によって平仕上げ加工する領域として決定する第2決定手段と、を備えることを特徴とする。
(3)
眼鏡レンズの周縁を加工するための大径の第1周縁加工具と前記第1周縁加工具より小径の第2周縁加工具を有する眼鏡レンズ周縁加工装置によって、眼鏡レンズの周縁を加工するためのデータを決定する眼鏡レンズ加工データ決定装置において実行される眼鏡レンズ加工データ決定プログラムであって、前記眼鏡レンズ加工データ決定装置の演算ユニットによって実行されることで、眼鏡レンズを眼鏡フレームに取り付けるための基本玉型を得るステップと、前記第1周縁加工具の径に基づき、前記第1周縁加工具によって前記基本玉型より小さな動径長に加工されてしまう加工干渉を回避して前記第1周縁加工具によって加工可能に前記基本玉型を補正した補正玉型を決定するステップと、前記補正玉型に基づいて前記第1周縁加工具によってレンズの周縁を加工する領域を決定し、前記第1周縁加工具によって前記基本玉型に加工されない残部分を前記第2周縁加工具によって加工する領域として決定するステップと、を前記眼鏡レンズ加工データ決定装置に実行させることを特徴とする。
(4)
粗加工された眼鏡レンズの周縁を平仕上げ加工するための大径の平仕上げ加工用の第1周縁加工具と前記第1周縁加工具より小径の
平仕上げ加工用の第2周縁加工具を有する眼鏡レンズ周縁加工装置によって、眼鏡レンズの周縁を加工するためのデータを決定する眼鏡レンズ加工データ決定装置において実行される眼鏡レンズ加工データ決定プログラムであって、前記眼鏡レンズ加工データ決定装置の演算ユニットによって実行されることで、眼鏡レンズを眼鏡フレームに取り付けるための基本玉型を得るステップと、前記第1周縁加工具の径に基づき、
前記第1周縁加工具によって前記基本玉型より小さな動径長に加工されてしまう加工干渉を回避して前記第1周縁加工具によって加工可能に
前記基本玉型を補正した補正玉型を決定する
ステップと、前記補正玉型に基づいて前記第1周縁加工具によってレンズの周縁を
平仕上げ加工する領域を決定し、前記基本玉型に対して前記補正玉型に補正した部分を前記第2周縁加工具によって平仕上げ加工する領域として決定するステップと、を前記眼鏡レンズ加工データ決定装置に実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、誤った形状にレンズが加工されるトラブルを回避できる。また、凹形を有する玉型であっても適切なレンズの加工が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明に係る眼鏡レンズ加工データ決定装置の説明に先立ち、眼鏡レンズ周縁加工装置の構成例を説明する。
図1は、眼鏡レンズ周縁加工装置の概略構成図である。
【0010】
眼鏡レンズ周縁加工装置1のベース170上には、一対のレンズチャック軸102L,102Rを回転可能に保持するキャリッジ101が搭載されている。チャック軸102L,102Rに挟持された眼鏡レンズLEの周縁は、スピンドル(加工具回転軸)161aに同軸に取り付けられた周縁加工具としての大径の砥石群168により加工される。砥石群168は、粗砥石162、ヤゲン形成用のV溝及び平加工面を持つ仕上げ砥石164を含む。レンズLEの周縁加工具としては、カッターが使用されても良い。粗砥石162及び仕上げ砥石164の加工径は100mm程である。加工具の加工径が大きいほど、眼鏡レンズの周縁は、効率よく、短時間で加工される。
【0011】
レンズチャック軸102R,102Lは、キャリッジ101に設けられたモータ121を持つレンズ回転ユニット120により回転される。また、レンズチャック軸102R,102Lは、X軸方向移動ユニット140によりX軸方向(チャック軸方向)に移動され、Y軸方向移動ユニット150(軸間距離変動ユニット)によりY軸方向(チャック軸102L、102Rと砥石スピンドル161aとの軸間距離が変動される方向)に移動される。キャリッジ101は、X軸方向に延びるシャフト103,104に沿って移動可能な支基141に搭載され、モータ145の駆動によりX軸方向(チャック軸の軸方向)に移動される。これらによりX軸方向移動ユニット140が構成される。支基140はY軸移動用モータ150が固定されている。モータ150の回転はY軸方向に延びるボールネジ155に伝達され、ボールネジ155の回転によりキャリッジ101はY軸方向に移動される。これらにより、Y軸方向移動ユニット150が構成される。
【0012】
図1において、キャリッジ101の上方の左右には、レンズコバ位置検知ユニット300F,300Rが設けられている。装置本体1の手前側に面取りユニット200が配置されている。
【0013】
キャリッジ部100の後方には、レンズにリムレスフレームの取り付け穴を加工する補助加工ユニット400が配置されている。
図2は、補助加工ユニット400の構成図である。ユニット400のベースとなる固定板401は、
図1のベース170に立設されたブロック300aに固定されている。固定板401にはZ軸方向(XY方向に対して直交する方向)に延びるレール402が固定され、レール402に沿って移動支基404が摺動可能に取り付けられている。移動支基404は、モータ405がボールネジ406を回転することによってZ軸方向に移動される。移動支基404には、回転支基410が回転可能に保持されている。回転支基410は、回転伝達機構を介してモータ416によりその軸回りに回転される。回転支基410の先端部には、回転部430が取り付けられている。回転部430には回転支基410の軸方向に直交する回転軸431が回転可能に保持されている。回転軸431の一端に穴加工工具としてのエンドミル435と、溝掘り加工具としてのカッター(又砥石)436と、が同軸に取付けられている。エンドミル435の径は、穴加工に適するように、直径0.8mmのものが標準として用意されているが、直径1.0mm、1.2mm、1.6mm等が選択的に取り替えて使用可能にされている。なお、エンドミル435は、レンズ周縁を部分的にカットするための小径の第2仕上げ加工具としても兼用される。
【0014】
図3は、眼鏡レンズ加工データ決定装置に係る構成図である。加工データ決定装置600は、眼鏡フレームのリム(レンズ枠)等から取得された玉型データ、玉型の設計データを入力するデータ入力ユニット601と、加工装置1にレンズの周縁を加工させるための玉型等の加工データを決定する演算ユニット610と、データを表示するディスプレイ602と、キーボード等の入力デバイス603と、加工装置1が持つ周縁加工具の径(仕上げ砥石164の径及びエンドミル435の径)を記憶するメモリ605と、プリンタ606と、演算ユニット610により決定された玉型を含む加工データが登録(記録保存)されるデータベース620と、加工装置1とのデータの入力及び出力が行われる入出力ユニット607と、を備える。演算ユニット610、ディスプレイ602、入力デバイス603等を含む加工データ決定装置600は、市販のパーソナルコンピュータが使用される。
【0015】
加工データ決定装置600の入出力ユニット607は加工装置1と接続され、データベースに記録保存された加工データが呼び出されて加工装置1に出力される。データ入力ユニット601は、インターネット等の通信手段501に接続され、フレームメーカ500で設計されたリム又は眼鏡フレームに取り付けられるレンズの設計データが入力される。また、データ入力ユニット601は、眼鏡フレームのリム及びデモレンズの形状をトレースするトレース装置510に接続可能にされている。
【0016】
次に、加工データ決定装置600に係る動作を説明する。フレームメーカ500では、眼鏡フレームのリム及びリムレスフレームに取り付けられるレンズの形状がCADで設計され、設計データはDXF等の所定のファイル形式でインターネット501等を介して、データ入力ユニット601に入力される。また、眼鏡フレームに取り付けられていたデモレンズの形状は、トレース装置510によって読み取られ、データ入力ユニット601に入力される。トレース装置510としては、デモレンズをカメラにより撮像し、カメラにより撮像されたレンズ像を画像処理してレンズ外径形状を得る光学式装置が使用される。この光学式のトレース装置は、特開2007−27599号公報等に記載された周知のものが使用可能である。
【0017】
演算ユニット610には、データ入力ユニット601を経て入力されるレンズ形状に関するデータ及び仕上げ砥石164の径等に基づいて、加工装置1にレンズの周縁を加工させるための玉型を含む加工データを決定するプログラムが記憶されている。以下、このプログラムを説明する。
【0018】
データ入力ユニット601により入力されたレンズ形状データは、演算ユニット610によって解析処理される。
図4及び
図5は、データ入力ユニット601に入力されたレンズ形状の例である。
図4はリムレスフレームに取り付けられるレンズの例である。
図5は眼鏡フレームのリムに取り付けられるレンズの例である。フレームメーカ500から
図4に示されるレンズ形状が設計データとして入力された場合、設計データからレンズの輪郭部分とリムレスフレームを取り付けるための穴部分とが区分けされ、輪郭部分のみが抽出される。例えば、幅10〜80mm、高さ10〜60mmの範囲で繋がっている線分がレンズ外径の輪郭部分とされ、また、輪郭部分の内部で直径10mmの範囲に存在している穴部分HPは、輪郭部分と区別して抽出される。抽出された輪郭部分が玉型(以下、基本玉型TSという)として取得される。基本玉型TSは、幾何中心FCを基準にした動径長と動径角のデータ(rn,θn)(n=1,2,3,・・・N)の形式で与えられる。
図5においても、抽出された輪郭部分が基本玉型TSとして取得される。
【0019】
なお、基本玉型TS及び穴部分HPのデータの取得機能は、データ入力ユニット601に受け持たせても良い。また、トレース装置510が玉型を取得する機能を持っている場合には、所得された基本玉型TSはデータ入力ユニット601から演算ユニット610に入力される。
【0020】
次に、演算ユニット610は、装置1が持つ砥石164によってレンズを基本玉型TSに加工する際に、加工干渉が生じること無く加工可能か否かを判定する。
図5の基本玉型TSにおいては、全ての領域で砥石164の径より小さな凹形部分は無いため、加工可能と判定される。加工可能と判定された場合、基本玉型TSを加工データとしてデータベース620に登録するための登録画面がディスプレイ602に表示される。
図6は、ディスプレイ602に表示される登録画面の例である。画面700には、右レンズ用の玉型図形GTSと左レンズ用の玉型図形GTSが表示される。左レンズ用の玉型図形GTSは、右レンズ用の玉型図形GTSに対して左右を反転した形状で表示される。
【0021】
図6において、画面700の上方には、玉型及び加工データをデータベース620に読み出し可能に登録するための識別コードとしてのパターン番号を付与する入力欄702が表示されている。入力欄702には、キーボード等の入力デバイス603によってパターン番号が入力される。また、画面700には、左右の玉型間の距離DBL、フレームタイプ及びチャック中心のレイアウトデータを入力する欄705、706、707が設けられている。スイッチ704がクリックされることにより、基本玉型TS及びレイアウトデータを含む加工データが識別コードに対応付けてデータベース620に登録される。
【0022】
登録された加工データをデータベース620から呼び出すときには、図示を略すパターン呼び出し画面にてパターン番号を入力することにより、パターン番号に対応する玉型(基本玉型TS)を含む加工データがデータベース620から呼び出される。呼び出されたデータは、入出力ユニット607を介して演算ユニット610に接続された加工装置1に出力される。また、図示を略すジョブ作製画面にてパターン番号に対応する作業番号が入力され、これがデータベース620に登録されている場合、加工装置1からの作業番号の指示信号が入出力ユニット607を介して入力されることにより、パターン番号に対応する玉型の加工データがデータベース620から呼び出され、入出力ユニット607から加工装置1側に出力される。作業番号を利用したデータの出力は、作業番号のバーコードをプリンタ606から作業標に印字出力させた後、加工装置1に接続されたバーコード読取器で作業標のバーコードが読み取られることにより、効率的に行える。
【0023】
演算ユニット610に入力された基本玉型TSが
図4である場合を説明する。
図7は、
図4に示された基本玉型TSに対して、砥石164の半径Raで加工干渉が生じること無く加工可能か否かの判定を説明する図である。
図7において、基本玉型TS上の点P1と点P2の間で、中心FCを基準にした角度α以外の領域の玉型領域Taは凸形状である。玉型領域Taの各加工点では半径Raの砥石164を接触したときに他の加工点に砥石164が干渉することなく加工可能である。各加工点は、玉型の動径角θn毎に、玉型の幾何中心FCと砥石164の中心WCとの軸間距離Lを短くしたとき、初めに砥石164が玉型に接する点Pmとして求められる。しかし、点P1からP2に至る角度αの範囲の玉型領域Tbは、砥石164の半径Raより小さな凹形(逆R形状)であるため、この領域の各加工点では半径Raの砥石164を接触したときに他の加工点に砥石164が干渉し、加工不可となる。
【0024】
加工不可と判定された場合、ディスプレイ602には、玉型TSがデータベース620に登録不可である旨のエラーメッセージ(警告)が表示され、データベース620への登録処理が禁止される。ディスプレイ602は警告器として兼用される。この警告により、作業者は、
図4の玉型TSについては、加工装置1の砥石164では加工できない形状であること知ることができる。そして、加工不可と判定された玉型TSについては、データベース620に登録されないため、この玉型TSを使用した加工が実施されず、誤った形状でレンズが加工されるトラブルが回避される。
【0025】
次に、
図7に示されたように、凹形を有する玉型TSであっても、補助加工ユニット400が有する穴加工用のエンドミル435をレンズの周縁加工用の第2周縁加工具として使用し、レンズを玉型TSに従って加工可能にする実施形態を説明する。
【0026】
演算ユニット610は、
図7の基本玉型TSにおいて、砥石164による加工不可の領域Tbがあると判定した場合、加工不可領域Tbを半径Raの砥石164によって加工可能に補正した補正玉型を求める。演算ユニット610は、
図8のように、点P1からP2に至る角度αの範囲(砥石164が干渉する加工点の範囲)の領域Tbに関して、半径Raの砥石164で加工可能なように、領域Tbの内側に窪んだ凹形を砥石164の半径Raより大きくした形に補正した補正玉型を決定する。言い換えれば、演算ユニット610は、加工不可領域Tbについて周縁加工具の砥石164の外周が接触する加工点が1点となる形を求めることにより、補正玉型を決定する。例えば、直線Tdで結んだ形状に補正した補正玉型TC(rcn,θcn)(n=1,2,3,…,N)を決定する。点P1からP2の領域Tbの補正形状は、直線に限られず、半径Rの砥石164より大きな径であれば、凹形の曲線又は凸形の曲線であっても良く、砥石164が接触する加工点が複数点とならずに、1点となれば良い。
【0027】
次に、演算ユニット610は、補正玉型TCに対して、点P1からP2の領域Tbの玉型部分を第2周縁加工具であるエンドミル435で追加加工する軌跡TCbとして決定する。追加加工軌跡TCbは、基本玉型TSの動径データ(rn,θn)の内、角度θp1〜θp2の範囲での動径データから得られる。
【0028】
直径0.8mmのエンドミル435が使用されている場合、この径よりも追加加工軌跡TCbの凹形が大きければ、エンドミル435によって追加加工可能と判定される。加工可能と判定されると、ディスプレイ602に登録画面が表示される。
【0029】
図9は、基本玉型TS、補正玉型TC及び追加加工軌跡TCbの加工データをデータベース620に登録するときの画面例である。画面700には、
図6と同様に、右レンズ用の玉型図形GTSと左レンズ用の玉型図形GTSが表示される。また、玉型図形GTS上で、基本玉型TSに対する補正部分Tdが点線で表示され、また、点P1と点P2の間の追加加工軌跡TCbは補正を伴わない部分に対して異なる色で表示される。このような表示の区分けにより、作業者は基本玉型TSに対する補正玉型TC、追加加工軌跡TCbが存在していることを知ることができる。玉型図形GTS内には、演算ユニット610により抽出された穴HPも合わせて表示されている。
【0030】
図9において、画面700の上方には、玉型を含む加工データをデータベース620に読み出し可能に登録するための識別コードとしてのパターン番号を付与する入力欄702が表示されている。入力欄702には、キーボード等の入力デバイス603によってパターン番号が入力される。また、画面700には、左右の玉型間の距離DBL、フレームタイプ及びチャック中心のレイアウトを入力する欄705、706、707が設けられている。スイッチ704がクリックされることにより、基本玉型TS、補正玉型TC及び追加加工軌跡TCbの加工データ、穴HPの加工データ及びその他の入力データが識別コードに対応付けてデータベース620に登録される。
【0031】
登録された玉型及び加工データのパターンを呼び出すときには、図示を略すパターン呼び出し画面にてパターン番号を入力することにより、パターン番号に対応する玉型を含む加工データがデータベース620から呼び出される。呼び出されたデータは、入出力ユニット607を介して加工装置1に出力される。また、ジョブ作製画面にてパターン番号に対応する作業番号が入力され、これがデータベース620に登録されている場合、前述と同様に作業番号がデータベース620からの加工データの呼び出しに利用される。
【0032】
図9の玉型の加工データによる加工装置1側でのレンズ加工の動作を説明する。データベース620から転送された基本玉型TS、補正玉型TC及び追加加工軌跡TCb等のデータは装置1のメモリに記憶される。レンズチャック軸102R、102Lに保持されたレンズLEは、初めに、補正玉型TCに基づいて粗砥石162により粗加工された後、仕上げ砥石164により仕上げ加工される。仕上げ加工において、平加工モードが設定されているときは、砥石164の平加工面でレンズLEの周縁が平加工される。次に、補助加工ユニット400が駆動され、補正玉型TCで加工されたレンズLEは、追加加工軌跡TCbに基づいてエンドミル435によって加工される。また、穴HPの位置データ、穴径データがあるときには、そのデータに基づいて補助加工ユニット400が駆動され、エンドミル435によって穴加工される。このように、基本玉型TSが砥石164の径よりも小さな凹形(逆R形状)であっても、適切に加工できる。
【0033】
なお、エンドミル435により加工されるレンズLEの仕上げ面は、砥石164により加工される仕上げ面より粗い場合がある。この場合には、エンドミル435で追加加工された部分を周知のバフ仕上げを行うことにより、砥石164による加工面との差を無くすことができる。
【0034】
以上の実施形態は種々の変容か可能である。加工センターにおいては、加工データ決定装置600は複数の加工装置1と接続可能にされている。加工装置1が持つ第1仕上げ加工具の砥石の径が、
図1に示した砥石164より小さく、例えば、直径60mmの砥石の場合には、第1仕上げ加工具の砥石で基本玉型TSが干渉することなく可能可能か否かの判定が異なる。また、加工不可領域の範囲が狭くなる場合がある。この場合、
図10に示すように、ディスプレイ602に加工具の径の設定値を変更する画面720を表示させ、入力欄721にて第1仕上げ加工具の径の設定値を変更し、その値をメモリ605に記憶させる。これにより、加工データ決定装置600は、加工装置1が持つ大径の仕上げ加工具の径に応じて、基本玉型TSに対して加工可能か否かを適切に判定できる。
【0035】
また、
図10の画面720では、入力欄722にて第2仕上げ加工具の径の設定値も変更できる。例えば、第2仕上げ加工具のエンドミル435は、直径0.8mmの他、直径1.0mm、1.2mm、1.6mmが使用可能にされている。作業者が、エンドミル435の径に応じて入力欄721の設定値を変更できる。レンズに加工される穴径が大きいときには、それに合わせてエンドミル435も大きな径のものに変えると、穴加工を迅速に行えて有利である。しかし、エンドミル435の径が大きくされると、エンドミル435でレンズの周縁を追加の仕上げ加工する場合に、基本玉型TSの凹形(逆R形状)が極端に小さくなっている部分の加工が行えないことがある。例えば、
図11のように、基本玉型TSの点P1から点P2までの間にノコギリ刃状のデザインがされ、凹形部分がエンドミル435の径よりも小さな形状であった場合には、エンドミル435であっても基本玉型TS通りに追加加工が行えない。演算ユニット610は、エンドミル435の径に基づいて補正玉型TCに対してエドミル435で追加加工して基本玉型TSを得ることが可能か否かを判定し、基本玉型TSを得ることできない場合にはディスプレイ60に警告を表示する。これにより、エドミル435の追加加工によって基本玉型TSに対して干渉を起こした状態で加工されてしまう不都合を回避できる。
【0036】
また、基本玉型TSの凹形部分については、追加加工によって基本玉型TSに対して干渉を起こさないように、
図11の斜線部Teを残して基本玉型TSに近似する玉型を得るように、追加加工軌跡TCbを決定するようにしても良い。この場合、デザインされた基本玉型TSと僅かに異なるが、加工不可を回避することが可能になる。
【0037】
また、補助加工ユニット400の第2仕上げ加工具としては、エンドミル435に代えて、大径の仕上げ砥石164よりは小径(例えば、直径10〜20mm)の仕上げ砥石又はカッターが使用される場合がある。この場合でも、前述のように、
図10の画面上の入力欄722にて仕上げ加工具の径の設定値が入力され、メモリ605に記憶されていることにより、演算ユニット610によって追加加工の可否の判定が行われる。