【文献】
佐藤学、外4名,,"電界印加法によるバルク形LiTaO3ドメイン反転格子",電子情報通信学会論文誌,日本,社団法人電子通信学会,1995年 8月,Vo.J78-C-1,pp.366-372
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。なお、各図において各構成要素の形状、大きさ及び配置関係について、この発明が理解できる程度に概略的に示してある。また、以下、この発明の好適な構成例について説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。また、各図において、共通する構成要素には同符号を付し、その説明を省略することもある。
【0014】
(発明の概要)
まず、
図1(A)〜(C)を参照して、この発明の周期的分極反転構造の形成方法の概要について説明する。
図1(A)は、周期的分極反転領域(以下、素子領域とも称する。)のみを備える基板の模式的な平面図であり、従来型に対応する。
図1(B)は、素子領域に加えて電荷量調整領域(以下、調整領域とも称する。)を備える基板の模式的な平面図であり、本発明に対応する。なお、
図1(B)中には、素子領域の一部を拡大した部分拡大図を記してある。
図1(C)は、調整領域の有無による電荷移動量の変化を模式的に示す特性図である。なお、
図1(C)において、縦軸は任意単位の電荷移動量とはみ出し成長の成長速度とし、横軸は任意単位の時間とする。また、
図1(A)及び(B)には、基板の結晶軸の方向を矢印X、Y及びZとして記してある。
【0015】
図1(A)及び(B)に示した基板10及び30のそれぞれに素子領域Aが設けられる。素子領域Aは、分極反転領域に対応する周期的な帯状領域12aと、隣り合った帯状領域12aの間の領域であり非分極反転領域に対応する帯間領域12bとを備える。素子領域Aは、第1主面に設けられ、各種素子に利用される周期的分極反転構造が形成される。
図1(B)に示した基板30において、調整領域Bは、共通基板上に素子領域Aとは別に設けられる、言わばダミーで分極反転を生じさせる第1主面30aの領域とする。
【0016】
従来型の基板10で、はみ出し成長を充分に制御できなかったのは、素子領域Aにおける分極反転領域の生成速度が速すぎることに一因がある。つまり、余りにも生成速度が速いため、分極反転領域の生成を設計幅以内で止めることができず、言わば分極反転領域生成が進み過ぎてしまっていた。
【0017】
発明者は、分極反転領域の生成速度が、該領域を通過する電荷量である電荷移動量に依存するとの知見を得、適当な手段で電荷移動量を抑えれば、はみ出し成長の進行速度を低下できると考えた。そこで、
図1(B)に示すように、基板30で、素子領域Aの他に、調整領域Bを形成し、この領域Bにも分極反転を生じさせた。これにより、分極反転領域の形成時に、電荷は、面積比に応じて帯状領域12aと調整領域Bとに分配されて、両領域12a及びBを流れる。よって、
図1(C)に示すように、本発明による基板30(II)では、従来型の基板10(I)に比べて、帯状領域12aでの電荷移動量がHからLへと低下する。これにより、基板30では、分極反転領域の生成速度、従ってはみ出し成長速度が、はみ出し量を実用上充分に制御可能な程度に低下する。
【0018】
ここで、電荷移動量とは、基板の第1及び第2主面間を、1cm
2の分極反転領域を介して1秒間に流れる電荷量(μC/(秒・cm
2))とする。電荷移動量は、形成された分極反転領域の面積及び基板の自発分極の大きさに比例して第1及び第2主面間を流れる反転電流から求められる。なお、一般に、分極反転領域を形成する工程では、常に、反転電流がモニタされ、分極反転領域形成工程の終点決定に用いられる。
【0019】
発明者の評価によれば、分極反転領域を形成する際の帯状領域12aの電荷移動量は、7μC/(秒・cm
2)以下であることが好ましい。帯状領域12aの電荷移動量をこの範囲とすることにより、分極反転領域の成長速度を実用上許容できる程度に低下させることができ、はみ出し成長を容易に制御することができる。また、帯状領域12aの電荷移動量は、3μC/(秒・cm
2)以下であればより一層好ましく、1μC/(秒・cm
2)以下であれば最も好ましい。これにより、分極反転領域の成長速度がより一層低下し、はみ出し成長をより一層容易に制御できる。
【0020】
図1(B)中の拡大図に示すように、帯状領域12aと調整領域Bとの間の最小間隔Dは、0.1mm以上とすることが好ましい。ここで、最小間隔Dとは、帯状領域12aの外縁と、調整領域Bの外縁との間の最小距離とする。最小間隔Dをこの範囲とすれば、分極反転構造形成工程において、たとえはみ出し成長があったとしても、帯状領域12a由来の分極反転領域と、調整領域B由来の分極反転領域とが繋がってしまうことがない。
【0021】
上述から明らかなように、調整領域Bは、電荷移動量を調整するためにだけ設けられる、実用的には不要な領域、言わば捨て領域である。
【0022】
(周期的分極反転構造の形成方法)
図2及び
図3を参照して、周期的分極反転構造の形成方法について説明する。
図2は領域区画工程の説明に供する、
図1(B)のP−P線に沿った断面図である。
図3は分極反転構造形成工程の説明に供する模式図であり、(A)は分極反転前における基板を装置とともに模式的に示す断面図であり、(B)は分極反転後における基板を装置とともに模式的に示す断面図である。なお、
図2には、基板の結晶軸の方向を矢印X、Y及びZとして記してある。
【0023】
この実施形態の周期的分極反転構造の形成方法は領域区画工程と分極反転構造形成工程と備える。
【0024】
<領域区画工程>
図2を参照すると、領域区画工程では、基板30の第1主面30aに、周期的な帯状領域12a、及び電荷移動量を調整するための調整領域Bを設ける。具体的には、第1主面30aを被覆する絶縁膜32に設けた開口部として、両領域12a及びBを区画する。上述のように、絶縁膜32の開口部である帯状領域12aと、絶縁膜32で被覆された帯間領域12bとで素子領域Aが構成される。帯状領域12aのストライプ状の開口部は、周期的に並列されている。つまり、帯状領域12aのストライプ状の開口部は、結晶軸のX軸方向に関して等間隔に配置されている。帯状領域12aは、ストライプの長手方向が基板30の結晶軸のY軸方向と平行に配置されている。次に行われる分極反転構造形成工程で、帯状領域12aと調整領域Bの基板30には、分極反転領域が形成される。
【0025】
ここで、調整領域Bの面積は、帯間領域12bを含まない帯状領域12aの面積の総和の4.75倍以上とすることが好ましい。調整領域Bの面積をこのように設定することにより、分極反転構造形成工程において、帯状領域12aの電荷移動量を実用上許容できる程度に低下させることができる。これにより、分極反転領域の成長速度が鈍化し、その結果、はみ出し成長を容易に制御することができる。また、調整領域Bの面積は、帯状領域12aの面積の総和の12.5倍以上であればより一層好ましく、16.2倍以上であれば最も好ましい。これにより、より一層容易にはみ出し成長を制御できる。
【0026】
具体的には、領域区画工程では、まず、第1主面30aの全面に絶縁膜32を形成する。この例では、絶縁膜32を、スパッタリング法又は真空蒸着法等の周知の方法で形成した、厚みが約1μmのSiO
2膜とする。次に、絶縁膜32の全面に図示しないレジストを塗布し、フォトリソグラフィによって、分極反転領域となるべき帯状領域12a及び調整領域Bのレジストを除去する。そして、これらの領域12a及びBに延在する絶縁膜32を周知の方法により除去して、基板30の第1主面30aを露出させ、帯状領域12aと、上述の面積を持つ調整領域Bとを得る。
【0027】
基板30は、自発分極の向きに直交する平面でカットされた平行平板でかつ単一ドメインの強誘電体結晶基板とする。自発分極の方向は、第2主面30bに対応する−Z面から、第1主面30aに対応する+Z面に向う方向(図中、白抜き矢印参照)である。この例では、基板30として、MgO添加のニオブ酸リチウム(LiNbO
3)単結晶基板を用いている。
【0028】
<分極反転構造形成工程>
続いて、
図3(A)及び(B)を参照して、分極反転構造形成工程について説明する。まず、
図3(A)を参照して、分極反転構造形成工程で用いられる装置60について、簡単に説明する。装置60は、第1及び第2部分62及び64と、電圧印加部66とを備える。
【0029】
第1部分62は、基板30の第1主面30a側に位置し、基板30と、第1容器46と、第1電解質水溶液52とで構成される。より詳細には、第1部分62は、下面を基板30の第1主面30aとし、側面を第1容器46とする水密容器と、この水密容器に満たされた、第1電解質水溶液52とで構成される。第1電解質水溶液52は、第1主面30aの全面に接触しており、帯状領域12a及び調整領域Bに反転電圧を印加するための一方の電極として機能する。なお、第1主面30aと第1容器46との間に設けられたO−リング44により、第1部分62の水密が保たれている。
【0030】
第2部分64は、第2主面30b側に位置し、基板30と、第2容器40と、第2電解質水溶液50とで構成される。より詳細には、第2部分64は、上面を基板30の第2主面30bとし、側面及び下面を第2容器40とする水密容器と、この水密容器に満たされた、第2電解質水溶液50とで構成される。第2電解質水溶液50は、容器の上面である第2主面30bの全面に接触しており、反転電圧を印加するための他方の電極として機能する。なお、第2主面30bと第2容器40との間に設けられたO−リング42により、第2部分64の水密が保たれている。
【0031】
電圧印加部66は、第1及び第2ロッド電極36及び38と、電源34とを備えている。第1及び第2ロッド電極36及び38は、それぞれ、第1及び第2電解質水溶液52及び50中に浸漬される。そして、両ロッド電極36及び38の間には、電源34から所定の反転電圧が供給される。この例では、第1主面30a側に配置された第1ロッド電極36を正極とし、第2主面30b側に配置された第2ロッド電極38を負極とする。
【0032】
この装置60を用いて分極反転構造形成工程を実施する。詳細には、電源34から、第1及び第2ロッド電極36及び38を介して、第1及び第2主面30a及び30b間に、上述した範囲の電荷移動量で、抗電界以上の反転電圧を印加する。これにより、
図3(B)に示すように、帯状領域12a及び調整領域Bの基板30の分極が反転して、分極反転領域が形成される。なお、電荷移動量を監視するためと、分極反転構造形成工程の終点を決定するために、第1及び第2部分62及び64の間を流れる反転電流の大きさは、図示しない電流計でモニタされている。
【0033】
このようにして、分極反転構造形成工程が終了したら、第1及び第2電解質水溶液52及び50を水洗し、絶縁膜32を周知の化学エッチングで取り除くことで、基板30への周期的分極反転構造の形成が完了する。
【0034】
(効果)
この実施形態の周期的分極反転構造の形成方法では、上述のように、調整領域Bを設けることで、帯状領域12aの電荷移動量を小さくしている。その結果、分極反転領域が新たに生成される速度が従来に比べて小さくなり、はみ出し成長幅を容易に制御することができる。
【0035】
また、帯状領域12aの電荷移動量が小さくなることから、分極反転領域を形成するために印加する反転電圧の持続時間(パルス幅)を緩和できる。つまり、従来は、はみ出し成長が抑制される程度に電荷移動量を小さくするためには、持続時間が100μ秒程度の極短パルス状の反転電圧を印加する必要があった。しかし、この実施形態によれば、直流の反転電圧を印加する際の持続時間を0.1秒以上としても、実用上十分な程度にはみ出し成長幅を制御できる。
【0036】
さらに、この実施形態では、調整領域Bと帯状領域12aとを同時に形成できるので、従来技術とは異なり、はみ出し成長の抑制のための工程数が増加しない。
【0037】
以下、実施形態の効果の理解に資するために、発明者が行った実験について説明する。発明者は、上述の基板10と基板30のそれぞれに装置60を用いて分極反転構造形成工程を実施した。なお、基板10を用いて行われた分極反転構造形成工程を従来例とも称し、基板30を用いて行われた分極反転構造形成工程を実施例とも称する。
【0038】
まず始めに、従来例及び実施例の共通点を列記する。
【0039】
(1)帯状領域12aの面積の総和を約0.4cm
2とし、第1主面の中央付近に設けた。
【0040】
(2)反転電圧の大きさを約6kV/mmとした。つまり、第1及び第2主面間にこの大きさの直流電圧を印加した。
【0041】
(3)幅が約2μmの複数の帯状領域12aを、約5μm間隔で並列した。つまり、帯間領域12bの幅を約5μmとした。
【0042】
次に、従来例及び実施例の相違点を列記する。
【0043】
(4)実施例において、調整領域Bの面積を約5cm
2とし、
図1(B)に示すように、帯状領域12aを言わばコ字状に囲んで配置した。
【0044】
(5)従来例では、持続時間が100m秒のパルス状の反転電圧を、反転電流が所定値を超えるまで断続的に印加した。これは、約50μC/(秒・cm
2)の電荷移動量に対応する。一方、実施例では、反転電流が上述の所定値を超えるまでの約100秒間に渡り、反転電圧として、上述の直流電圧を連続的に印加した。これは、約3μC/(秒・cm
2)の電荷移動量に対応する。
【0045】
その結果、実施例では、帯状領域12aの直下に、幅が約3μmの分極反転領域が形成された。つまり、実施例では、はみ出し成長量を1μmに制御できた。それに対し、従来例では、はみ出し成長速度が速すぎるために、隣接する2本の帯状領域12aの間で分極反転領域が繋がってしまい、正常な形成がなされなかった。
【0046】
この結果から、調整領域Bを有する実施例では、はみ出し成長の制御が容易であることが分かる。一方、実施例と同じ反転電流値で分極反転構造形成工程を終了させたにも拘わらず、従来例では、はみ出し成長を制御しきれずに、帯状領域12a間で分極反転領域が繋がってしまった。
【0047】
なお、この例では、実施例のはみ出し成長幅を1μmとしたが、はみ出し成長幅は、反転電圧の持続時間を調整することにより、任意の値に制御可能である。例えば、持続時間を短くすれば、はみ出し成長幅を0(ゼロ)に近づけることも可能である。
【0048】
(変形例)
以下、この実施形態の変形例について説明する。この実施形態では反転電圧の持続時間が100秒の場合を例示したが、持続時間に特に制限は無く、従来同様にμ秒オーダーの極短パルス状でもよい。ただし、この実施形態のように調整領域Bを適切に設ければ、今まで、隣接する分極反転領域が繋がってしまい正常な形成が難しかった0.1秒以上の持続時間の反転電圧でも、周期的分極反転領域を正常に形成できる。
【0049】
また、この実施形態では調整領域Bが連続した1領域の場合を例示したが、調整領域Bは互いに離間した複数のサブ領域に分割されていても良い。
【0050】
また、基板30には、上述のLiNbO
3の他に、LiTaO
3、KTiOPO
4、及びKNbO
3等を設計に応じて選択できる。また、基板30を波長変換素子として用いる場合、光電場による屈折率変化、いわゆる光損傷を抑制するために、Mg、Zn、Sc、及びIn等を基板にドーピングするのが良い。
【0051】
また、この実施形態では、自発分極の向きに直交する平面でカットされた基板30を用いたが、基板は、自発分極の向きに直交する平面から数度程度ずれた平面でカットされていてもよい。
【0052】
また、領域区画工程で第1主面30aに形成する絶縁膜32としては、上述のSiO
2の他に、フォトレジストや、窒化シリコン膜等を用いても良い。
【0053】
また、第1及び第2電解質水溶液52及び50は、充分に高い導電性を持つ種々の電解質水溶液を選択できる。例えば、LiCl、NaCl、及びKCl等を電解質として選択できる。
【0054】
また、この実施形態では、分極反転構造形成工程において、電解質水溶液を、反転電圧を印加する電極として用いたが、この電極には金属薄膜を用いてもよい。以下、
図4を参照して、この点について説明する。
図4は、電極である金属薄膜が形成された基板の断面構造を模式的に示す断面図である。
図4を参照すると、基板30の第1主面30a側には、第1電極72である金属薄膜が全面に形成されている。つまり、第1電極72は、帯状領域12a及び調整領域Bのみでなく、絶縁膜32の表面にも形成されている。また、第2主面30bの全面には、第2電極70である金属薄膜が形成されている。なお、金属薄膜は、真空蒸着法等の周知の方法で形成すればよい。また、金属薄膜の材料には、種々の金属を設計に応じて選択すればよい。この例では、金属薄膜の材料として金を用いている。そして、第1及び第2電極72及び70を電源34と電気的に接続し、上述したような条件の反転電圧を印加することで、分極反転構造形成工程を行う。
【0055】
(波長変換素子の形成方法)
以下、
図5を参照して、波長変換素子の形成方法について説明する。
図5は、波長変換素子の構造を模式的に示す斜視図である。なお、
図5においては、基板30と波長変換素子80との対応関係を示すために、概略的に基板30をも記してある。
【0056】
概略的には、
図5の波長変換素子80は、ダイシング等で切り出された基板30の素子領域Aの部分に光導波路82を形成したものに相当する。波長変換素子80は、入力された被変換光INを、波長変換した変換済光OUTとして出力する。
【0057】
波長変換素子80の形成方法は、基板形成工程と光導波路形成工程とを備えており、基板形成工程として、上述した周期的分極反転構造の形成方法を用いる。上述の分極反転構造形成工程により素子領域Aが形成される。素子領域Aは、帯状領域12aの下側に形成された分極反転領域と、帯間領域12bの下側に形成された非分極反転領域とを交互に備えた周期的分極反転構造PPが形成された領域である。
【0058】
光導波路82は、分極反転領域と非分極反転領域の境界面Sに対して直行する光伝搬方向P(図中矢印参照)に沿って延在するとともに、屈折率が周囲の素子領域Aよりも高いコア84を備えている。このコア84と周囲の素子領域Aとでいわゆるプレーナ型の光導波路82が構成される。
【0059】
コア84は、光導波路形成工程により形成される。より詳細には、光導波路形成工程では、コア84をプロトン交換法により形成する。プロトン交換法では、まず素子領域Aの第1主面30a側に、コア84の形成予定領域のみを露出させた金属マスク(Tiマスク等)を形成する。なお、金属マスクは周知のフォトリソグラフィで形成できる。次に、この金属マスクが形成された素子領域Aを、温度が約200℃の安息香酸中に約2時間浸すことで、プロトン交換反応を行わせる。最後に、金属マスク及び安息香酸を除去し、温度が約450℃の酸素雰囲気中で約6時間アニール処理することで、周囲よりも屈折率が高いコア84を形成し、光導波路82を得る。
【0060】
波長変換素子80において、周期的分極反転構造PPの周期Λの値を、QPM条件を満たす値に設定することで波長変換が生じる。例えば、第2高調波発生に基づく波長変換を行うには、周期的分極反転構造PPの周期Λを、次式(1)を満たす値とすればよい。
Λ=λω/{2(N2ω−Nω)}・・・ (1)
ここで、λωは被変換光INの波長、Nωは被変換光INに対する光導波路82の等価屈折率、N2ωは変換済光OUTに対する光導波路82の等価屈折率である。被変換光IN又は変換済光OUTに対する等価屈折率とは、光導波路82を伝播する被変換光IN又は変換済光OUTの伝播定数と波数の関係を規格化して表した数値である。被変換光IN又は変換済光OUTが光導波路82を伝播する際は、この等価屈折率の空間中を伝播するものとして両者の位相速度を扱うことができる。
【0061】
この他、差周波発生、和周波発生等に基づく波長変換素子についても同様に、これらのQPM条件を満たすように、周期Λを設定することで、それぞれの様式の波長変換が実現される。
【0062】
この実施形態の波長変換素子の形成方法では、上述の周期的分極反転構造の形成方法を利用している。その結果、周期的分極反転構造PPにおける分極反転領域と非分極反転領域の幅を厳密に制御できる。これにより、上述した効果に加えて、得られる波長変換素子80の変換効率を高めることができる。また、波長変換素子80では、分極反転領域の形成速度が遅くできるので、従来よりも幅の狭い分極反転領域を形成することができ、より短波長領域での波長変換が可能となる。
【0063】
なお、この実施形態では、コア84を境界面Sに対して垂直に設けているが、コアの延在方向は、境界面Sに対して垂直以外の非平行、つまり斜めであってもよい。この構成によっても、周期的分極反転構造PPの実効的な周期Λ’に応じた波長で波長変換を行うことができる。ここで、実効的な周期Λ’とは、境界面Sとコア84の延在方向のなす角をΘとしたときに、Λ’=Λ/sinΘで与えられる。
【0064】
また、波長変換素子80は、プレーナ型の光導波路84以外にも、例えば、光伝搬方向に直交する方向の断面形状が凸型のリッジ型光導波路等を用いても良い。なお、リッジ型光導波路のコアに相当する凸部は、ダイシングソー等により機械的に切断することで形成できる。特に、上述のプレーナ型光導波路82のコア84の部分を凸型に形成して、リッジ型光導波路とすれば、コアの屈折率をより一層高めることができる。その結果、このリッジ型光導波路を伝播する被変換光IN及び変換済光OUTの閉じ込め効率が高くなり、波長変換効率が向上する。