(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019619
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 27/04 20060101AFI20161020BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20161020BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20161020BHJP
H01L 21/329 20060101ALI20161020BHJP
H01L 29/866 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
H01L29/78 657C
H01L29/78 655F
H01L29/78 652N
H01L29/90 D
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-43578(P2012-43578)
(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公開番号】特開2013-182903(P2013-182903A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161562
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 朗
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 直樹
【審査官】
綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−321307(JP,A)
【文献】
特開2007−035796(JP,A)
【文献】
特開2009−043953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/329
H01L 21/331
H01L 27/04−06
H01L 29/739
H01L 29/78
H01L 29/866
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型のドリフト層と、該ドリフト層の表面に選択的に形成された第2導電型のベース領域と、該ベース領域の表面に選択的に形成された第1導電型のエミッタ領域を第1主面に有する縦型パワー半導体素子と、該パワー半導体素子の第1主面上に絶縁層を介して形成され、前記ドリフト層の第1主面側に接続された第1電極とゲート電極との間に接続され中央の前記第1電極に向かって小さくなる複数のループ状の定電圧ダイオードの直列接続により構成されるポリシリコンからなるダイナミッククランプダイオードを備え、該ダイナミッククランプダイオードが前記縦型パワー半導体素子の外周部を囲む耐圧構造の内側の領域上に配置され、前記ダイナミッククランプダイオードの一端直下に前記ドリフト層を貫通し空乏層の伸びを抑えるストッパ層が配置され、前記縦型パワー半導体素子の耐圧に比べて前記ダイナミッククランプダイオードのクランプ電圧の方が低く、前記クランプ電圧では前記ダイナミッククランプダイオードの前記第1電極に接続された前記一端直下の前記ドリフト層が空乏化されないことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記ストッパ層が、前記ドリフト層と同じ導電型で高濃度であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ストッパ層が、トレンチと、該トレンチを充填する高濃度不純物が添加されたポリシリコンと、前記トレンチを取り囲む絶縁層もしくは前記トレンチを取り囲み前記ドリフト層と同じ導電型で高濃度の不純物層を備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ダイナミッククランプダイオードの平面形状が円形もしくは矩形であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ダイナミッククランプダイオード上に前記縦型パワー半導体素子のゲートパッドもしくはエミッタパッドが絶縁膜を介して配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ダイナミッククランプダイオードの耐圧が100V以上あることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記縦型パワー半導体素子が、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)もしくはパワーMOSFET(MOS型電界効果トランジスタ)であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の内燃機関点火用イグナイタなどに用いられる半導体装置に関する。特に、インダクタンス負荷でスイッチングを行った際の逆起電圧などインダクタンス負荷に蓄積されたエネルギーを半導体スイッチをオンさせることにより吸収するとき、そのオン信号を半導体スイッチに与えるためのダイナミッククランプ回路を内蔵した半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内燃機関点火用イグナイタなどでは、インダクタンス負荷でスイッチングを行った際のインダクタンス負荷に蓄積されたエネルギーを半導体スイッチをオンさせることにより吸収するときに、そのオン信号を半導体スイッチに与えるダイナミッククランプ回路を内蔵した半導体装置が多用されている。
【0003】
図10は、ダイナミッククランプ回路を内蔵した半導体装置を用いたイグニッションシステムの要部構成図である。
図11および
図12は、従来のダイナミッククランプ回路を内蔵した半導体装置1の構成図であり、
図11は要部平面図、
図12は
図11のX−X線で切断した要部断面図である。
【0004】
図10において、半導体装置1を構成するIGBT2のコレクタ端子3とゲート電極4の間には、複数の定電圧ダイオード6−1,6−2,・・・・で構成される定電圧ダイオード群6と逆流防止ダイオード7が接続されたダイナミッククランプ回路を構成するダイナミッククランプダイオード24が形成されている。また、ゲート電極4とゲート端子8の間にはゲート抵抗9が接続されている。
【0005】
ゲート保護ダイオード10及び11はESD(静電気放電:Electro−Static Discharge)などの外来サージからIGBT2のゲート4を保護するためのものでゲート抵抗9とともに外来サージを大きく減衰させる効果がある。
【0006】
図10において、駆動回路12からオン信号(Highレベル:通常3〜5V)がゲート端子8に印加されると、ゲート抵抗9を通してIGBT2のゲート4の電位(ゲート電位)が上昇してIGBT2がオンする。IGBT2がオンすると、バッテリー13からイグニッションコイル14の1次コイ14aにバッテリー13の電圧が印加され、1次コイル14aにバッテリー13の電圧を1次コイル14aのインダクタンスで割った値のdi/dtの勾配で上昇する電流が流れる。
【0007】
イグニッションコイル14の1次コイル14aに流れる電流は、時間とともに増加し、所定のタイミングで駆動回路12からオフ信号(Lowレベル:通常0〜1V)がゲート端子8に印加され、IGBT2がオフする。このIGBT2がオフすることにより、イグニッションコイル14の1次コイル14aに蓄積したエネルギーにより、イグニッションコイル14の1次コイル14aに印加される電圧が上昇し、コレクタ端子3の電位は上昇する。
【0008】
1次コイル14aの電圧上昇により、イグニッションコイル14の2次コイル14bには1次コイル14aと2次コイル14bの巻き数比に応じた高い電圧が発生する。この2次コイル14bに発生する高い電圧はスパークプラグ15のギャップ間に印加され、このキャップ間で放電が発生する。この放電によりエンジンのシリンダー内でガソリンと空気の混合気体が点火され、シリンダーが動作を開始する。
【0009】
尚、
図10において、毎回IGBT2がオンしたとき、そのオンした瞬間に、イグニッションコイル14の1次コイル14aにバッテリー13の電圧が印加される。このとき、2次コイル14bには、1次と2次コイル14bの巻き数比に応じた電圧が発生する。例えば、巻き数比が1:100でバッテリー電圧が13Vとすると、2次コイル14bには1300Vの電圧が発生する。この2次電圧がスパークプラグ15に印加されると、IGBT2がオンした瞬間(正規のタイミングでない期間)にスパークプラグ15は誤放電(誤点弧)することになる。この誤放電時には2次コイル14bからスパークプラグ15を通してGNDへ放電電流が流れる。この誤放電(誤点弧)を防止するために、誤点弧防止ダイオード16を設ける。この誤点弧防止ダイオード16を設けることで、2次コイル14bで発生した電圧の一部を誤点弧防止ダイオード15で負担するため、スパークプラグ15に印加される電圧が低減されて、スパークプラグ15の誤放電を防止できる。
【0010】
IGBT2を通して1次コイル14aに流れる1次電流の遮断時に、イグニッションコイルの1次コイル14aの逆起電力(1次コイル14aに蓄積したエネルギーで発生する起電力)によりコレクタ端子3に高い電圧が発生する。この高い電圧がIGBT2のアバランェ電圧を超えると、IGBT2にアバランシェ電流が流れてIGBT2を破壊する。
【0011】
このため、IGBT2にアバランシェ電圧が印加されないように、ダイナミッククランプダイオード24を設けている。
このダイナミッククランプダイオード24は、イグニッションコイル14の1次コイル14aのインダクタンスに蓄えられたエネルギーをIGBT2をオンさせて吸収するために、IGBT2にそのトリガー信号を与える働きをする。
【0012】
その動作は、IGBT2のゲート・コレクタ間に定電圧ダイオード群6の逆方向電圧及び逆流防止ダイオード7で構成されるダイアミッククランプダイオード24を接続することで、定電圧ダイオード群6の逆方向電圧及び逆流防止ダイオード7の順方向電圧の合計で決まるクランプ電圧(イグナイタの場合通常400〜600V)以上の電圧がIGBT2のエミッタ・コレクタ間に印加されたとき、このダイナミッククランプダイオード24に電流が流れる。この電流はゲート抵抗9から駆動回路12を通りGNDへ流れる。
【0013】
この電流によりゲート抵抗9には電圧降下が発生する。この電圧降下によりIGBT2のゲート4の電圧は上昇し、IGBT2はオンする。IGBT2がオンすると、1次コイル14aのインダクタンスに蓄えられたエネルギーがIGBT2を通してGNDへ放出される。このエネルギーの放出は、見方を変えると、IGBT2でこのエネルギーを吸収したことになる。
【0014】
なお、イグニッションコイル14の設計によっては、IGBT2の遮断によってクランプ電圧に達しない場合もある。このようなイグニッションコイル14であっても、スパークプラグ15の失火(ミスファイア)等による無声放電が起こる場合がある。この無声放電時には放電電圧がクランプ電圧に達するほど高くなるため、無声放電時にIGBT2が破壊しないように、ダイナミッククランプダイオード24を付加することが必要である。
【0015】
図11において、耐圧構造20で囲まれた領域内にIGBT2を構成するIGBTセルが埋め込まれた活性領域21とワイヤボンディングを行うためのゲートパッド22、エミッタパッド23が設けられている。なお、耐圧構造20は低い電圧の場合は特に必要ではないが、耐圧が100V程度以上では必要となる。
【0016】
通常ゲートパッド22の直下には活性領域21は存在しないが、エミッタパッド23の下にはIGBTセルが埋め込まれた活性領域21が存在する。ただし、エミッタパッド23はワイヤボンディングを行う箇所直下に段差が生じるとワイヤボンディング時のダメージによりシェルクラックなどが発生する。このシェルクラックはコレクタ・エミッタ(CE)間をショートするなどの不具合を起こすため、エミッタパッド23の下には活性領域21のセルを形成しない場合もある。
【0017】
耐圧構造20内の一部には、チップ周辺部表面のコレクタ電位となる部分と、活性部周辺のゲート電位となる部分との間(
図12に示すn
+拡散領域36とp
+拡散領域32の間のn
−ドリフト領域27上に厚いフィールド酸化膜33を介して)にダイナミッククランプダイオード24を構成する定電圧ダイオード群24(
図10に示す定電圧ダイオード6−1.6−2、・・・と逆流防止ダイオード7)が形成されている。
【0018】
図12において、p
+基板25の上にn
+バッファ層26及びn
−ドリフト層27が積層されている。p
+基板25の表面にはコレクタ電極38が形成されている。n
−ドリフト層27の表面にはpベース領域28と、その一部に形成されたn
+エミッタ領域29と、ゲート酸化膜30を介しポリシリコンで形成されたゲート電極31とからなるIGBTセルが活性領域21に形成されている。
ゲートパッド22の直下のn
−ドリフト層27表面にはp
+拡散領域32が形成され、フィールド酸化膜33を介してポリシリコン層31aが形成されている。ポリシリコン層31aはゲート電極31に接続し、両者は同時に形成される。
【0019】
ポリシリコン層31aの上には層間絶縁膜34を介してゲートAl電極35が形成されており、このゲートAl電極35を被覆する点線で示すパッシベーション42に開口部を設けゲートパッド22としている。
【0020】
この半導体装置の最外周のn
−ドリフト層27の表面にはn
+拡散領域36が形成されている。ポリシリコン層31aに形成されたn領域40−1,40−2,40−3,・・・とp領域41−1,41−2,・・・のn領域とp領域を交互に形成することにより、定電圧ダイオードの直列接続が形成され、また逆流防止ダイオードの直列接続が形成される。この低電圧ダイオードと逆流防止ダイオードはダイナミッククランプ回路24aを構成するダイナミッククランプダイオード24となる。
【0021】
n領域40の最もn
+拡散領域36に近いn領域40−1はAl電極37によりほぼコレクタ電位に等しいn
+拡散領域36に接続される。
図10に示す様にダイナミッククランプダイオード24はコレクタ3、ゲート電極4間に接続される。
【0022】
なお、
図12に示す断面図では、このダイナミッククランプダイオード24はポリシリコンのn領域40−1/p領域41−1/n領域40−2/p領域41−2・・・・・が繰り返されるため、
図10とは異なっている。
図12の断面図ではダイオードの逆方向接合と順方向接合が互いに向かい合って交互に繰り返される。n領域40−1/p領域41−1/n領域40−2/p領域41−2・・・・・が繰り返されてポリシリコンで形成される場合には、拡散長が短く、接合で注入された少数キャリアは隣の接合には影響を与えない。そのため、例えば、p領域41/n領域40で構成されるダイオードの順方向電圧の合計がp領域41/n領域40で構成されるダイオードの逆方向電圧(逆耐圧)の合計に加算されクランプ電圧が高くなる。しかし、
図12に示すダイナミッククランプダイオード24と
図10の回路に示したダイナミッククランプダイオード6(6−1,6−2,6−3,・・・)、7の場合と保護の効果としては同じである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
前記した従来のダイナミッククランプ回路24aを内蔵した半導体装置では、耐圧構造20の一部に酸化膜(フィールド酸化膜33)を介してダイナミッククランプダイオード24が形成されている。そのため、
図11のAの箇所では、ダイナミッククランプダイオード24直下の空乏層の広がり方とダイナミッククランプダイオード24が無い部分の空乏層の広がり方が異なる。ダイナミッククランプダイオード24直下の空乏層の広がり方がダイナミッククランプダイオード24が無い部分の空乏層の広がり方より広がる。
【0024】
そうすると、その境界付近に空乏層の曲がりが発生して、電界強度が高い箇所が出来やすくなる。その結果、耐圧が正常に得られない場合が発生する。
また、耐圧は正常であっても、低温でのダイナミッククランプが連続的に発生する動作などでは、空乏層の広がりが狭くなり、電界強度が高まり、ホットキャリアによる影響と見られるリーク電流の増加などの現象が発生する場合がある。
【0025】
また、ダイナミッククランプダイオード24を耐圧構造20の一部に設けると耐圧構造が制約され、耐圧構造が占める面積が増加し、チップ面積が増加して製造コストが上昇する。
【0026】
この構造ではダイナミッククランプダイオード回路を形成する箇所は耐圧構造を形成する箇所に限定され、耐圧構造20とダイナミッククランプダイオード回路24aを接続する必要があり、ダイナミッククランプダイオード回路を形成する場所の選択の自由度が小さい。
【0027】
この発明の目的は、前記の課題を解決して、ダイナミッククランプ回路周辺での電界集中を防止し、耐圧の低下やリーク電流の増加などを防止することができる半導体装置を提供することにある。
【0028】
また、耐圧構造が占める面積を縮小し、ダイナミッククランプ回路を形成する箇所の自由度を広げ、コスト上昇を招かずにダイナミッククランプ回路を形成することができる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
前記の目的を達成するために、特許請求の範囲の請求項1に記載の発明によれば、第1導電型のドリフト層と、該ドリフト層の表面に選択的に形成された第2導電型のベース領域と、該ベース領域の表面に選択的に形成された第1導電型のエミッタ領域を第1主面に有する縦型パワー半導体素子と、該パワー半導体素子の第1主面上に絶縁層を介して形成され、前記ドリフト層の第1主面側に接続された第1電極とゲート電極との間に接続され中央の前記第1電極に向かって小さくなる複数のループ状の定電圧ダイオードの直列接続により構成されるポリシリコンからなるダイナミッククランプダイオードを備え、該ダイナミッククランプダイオードが前記縦型パワー半導体素子の外周部を囲む耐圧構造の内側の領域上に配置され、
前記ダイナミッククランプダイオードの一端直下に前記ドリフト層を貫通し空乏層の伸びを抑えるストッパ層が配置され、前記縦型パワー半導体素子の耐圧に比べて前記ダイナミッククランプダイオードのクランプ電圧の方が
低く、前記クランプ電圧では前記ダイナミッククランプダイオードの前記第1電極に接続された前記一端直下の前記ドリフト層が空乏化されない構成の半導体装置とする。
【0032】
また、特許請求の範囲の請求項
2に記載の発明によれば、請求項
1に記載の発明において、前記ストッパ層が、前記ドリフト層と同じ導電型で高濃度であるとよい。
また、特許請求の範囲の請求項
3に記載の発明によれば、請求項
1に記載の発明において、前記ストッパ層が、トレンチと、該トレンチを充填する高濃度不純物が添加されたポリシリコンと、前記トレンチを取り囲む絶縁層もしくは前記トレンチを取り囲み前記ドリフト層と同じ導電型で高濃度の不純物層を備えるとよい。
【0033】
また、特許請求の範囲の請求項
4に記載の発明によれば、請求項1〜
3のいずれか一項に記載の発明において、前記ダイナミッククランプダイオードの平面形状が円形もしくは矩形であるとよい。
【0034】
また、特許請求の範囲の請求項
5に記載の発明によれば、請求項1〜
4のいずれか一項に記載の発明において、前記ダイナミッククランプダイオード上に前記縦型パワー半導体素子のゲートパッドもしくはエミッタパッドが絶縁膜を介して配置されるとよい。
【0035】
また、特許請求の範囲の請求項
6に記載の発明によれば、請求項1〜
5のいずれか一項に記載の発明において、前記ダイナミッククランプダイオードの耐圧が100V以上あるとよい。
【0036】
また、特許請求の範囲の請求項
7に記載の発明によれば、請求項1〜
6のいずれか一項に記載の発明において、前記縦型パワー半導体素子が、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)もしくはパワーMOSFET(MOS型電界効果トランジスタ)であるとよい。
【発明の効果】
【0037】
この発明によれば、耐圧構造とは別の領域にダイナミッククランプ回路を配置することで、耐圧構造上にダイナミッククランプ回路が存在しなくなるため、電界集中が起こる箇所が存在しなくなり、耐圧の低下、リーク電流の増加などが防止することができる。
【0038】
また、ダイナミッククランプ回路の直下ではダイナミッククランプダイオードが電位勾配を持つフィールドプレートとして作用するため電界集中が発生し難く安定した耐圧が得られる。
【0039】
また、ダイナミッククランプダイオードを絶縁膜を挟んで複数積層し、耐圧構造上にダイナミッククランプ回路を形成しないことで、ダイナミッククランプ回路の縮小化を図ることができ、さらに耐圧構造の幅を短縮することができる。その結果、製造コストの低減を図ることができる。
【0040】
また、ダイナミッククランプ回路を形成する箇所の自由度を広げ、コスト上昇を招かずにダイナミッククランプ回路を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】この発明の第1実施例に係る半導体装置100の要部平面図である。
【
図2】
図1のX−X線で切断した要部断面図である。
【
図3】コレクタ電圧がクランプ電圧に到達したときの空乏層の広がりを示した図である。
【
図4】この発明の第2実施例に係る半導体装置200の要部平面図である。
【
図5】この発明の第3実施例に係る半導体装置300の要部平面図である。
【
図6】
図5のX−X線で切断した要部断面図である。
【
図7】この発明の第4実施例に係る半導体装置400の要部平面図である。
【
図8】
図7のX−X線で切断した要部断面図である。
【
図9】この発明の第5実施例に係る半導体装置500の要部平面図である。
【
図10】ダイナミッククランプ回路を内蔵した半導体装置を用いたイグニッションシステムの要部構成図である。
【
図11】従来のダイナミッククランプ回路を内蔵した半導体装置の要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
実施の形態を以下の実施例で説明する。
<実施例1>
図1および
図2は、この発明の第1実施例に係る半導体装置100の構成図であり、
図1は要部平面図、
図2は
図1のX−X線で切断した要部断面図である。
図1および
図2において、
図11および
図12と同一部位には同一の符号を付した。
【0043】
この半導体装置100は、p
+基板25と、p
+基板上に配置されるn
+バッファ層26と、このn
+バッファ層26上に配置されるn
−ドリフト層27を備える。n
−ドリフト層27上に選択的に配置されるpベース領域28、p
+拡散領域32a、n
+拡散領域36を備える。pベース領域28の表面層に配置されるn
+エミッタ領域29と、このn
+エミッタ領域29とn
−ドリフト層27に挟まれたpベース領域28上にゲート酸化膜30を介して配置されるポリシリコンで形成されたゲート電極31とを備える。
【0044】
ゲート電極31上とn
−ドリフト層27上に配置された絶縁膜33と、絶縁膜33上に配置され、前記ゲート電極31と接続するポリシリコン層31aと、このポリシリコン層31aに交互に配置されるn層40(40−1,40−2,40−3、・・・)とp層41(41−1,41−2、・・・)からなるダイナミッククランプ回路を構成するダイナミッククランプダイオード24aとを備える。符号で40,41は総称した番号であり、40−1,40−2,40−3・・・および41−1,41−2、・・・は個々の領域に付した番号である。
【0045】
n
+拡散領域36とp
+拡散領域32aに挟まれて配置される耐圧構造20と、ポリシリコン層31a上、ゲート電極31上に配置される層間絶縁膜34と、層間絶縁膜34上に配置され、n
+エミッタ領域29とpベース領域28に電気的に接続されるエミッタAl電極23aを備える。n
+拡散領域36aと電気的に接続するAl電極37aと、ポリシリコン層31aと接続するゲートAl電極35を備える。ゲートAl電極35がパッシベーション膜42の開口部から露出したゲート電極パッド22と、エミッタAl電極23aがパッシベーション膜42から露出したエミッタ電極パッド23と、p
+基板25の表面に配置されるコレクタ電極38とを備える。
【0046】
図1および
図2において、
図11および
図12と異なるのは、ダイナミッククランプダイオード24aが耐圧構造20の一部上ではなく、耐圧構造20とは別にリング状に形成されたp
+拡散領域32aで囲まれたn
−ドリフト領域27上に絶縁膜33を介して形成されている点である。尚、耐圧構造20で囲まれた領域内にIGBTセルが形成された活性領域21とワイヤボンディングを行うためのゲートパッド22およびエミッタパッド23が設けられている点は
図11および
図12と同じである。
【0047】
IGBT2のコレクタ電圧は、p
+基板25と、n
+バッファ層26と、n
−ドリフト層27と、n
+拡散領域36aを通してAl電極37aに印加され、n
+拡散領域36aに接続するダイナミッククランプダイオード24aに印加される。
【0048】
図3は、コレクタ電圧がクランプ電圧に到達したときの空乏層の広がりを示した図である。
図3に示すように、コレクタ電圧がクランプ電圧に到達しても空乏層43はn
+拡散領域36a直下のn
−ドリフト層27には広がらない。なお、本図では空乏層端がn
+バッファ層26に到達していない様に描かれているがn
−ドリフト層27の濃度や厚さ、クランプ電圧の値によっては到達する場合もある。
【0049】
また、ダイナミッククランプダイオード24aの最外周下のn
−ドリフト層27の表面には、p
+領域32aが形成される。
図2では、このp
+領域32aは耐圧構造20の端部に配置されるp
+領域32aと重なっている。ダイナミッククランプダイオード24aの一部の上には層間絶縁膜34を介してゲートAl電極35が形成されており、そのゲートAl電極35上に形成されるパッシベーション膜42に開口部を設けゲートパッド22としている。
【0050】
このようにゲートパッド22下にダイナミッククランプダイオード24aの一部を形成することにより面積効率を上げることが可能となる。ただし、この場合コレクタ電位が上昇した場合、ダイナミッククランプダイオード24aの中央付近の電位はゲート電位に対し高くなるため、層間絶縁膜の厚さや膜質を考慮し、十分な耐圧を確保する必要がある。
【0051】
また、電極Al上に層間絶縁膜34を介してゲートパッド22を設けるなどの2層配線した場合は、ゲートパッド22の大きさを十分大きくできるので、ダイナミッククランプダイオード24aの全体をゲートパッド22直下に形成することが可能となる。また、ダイナミッククランプダイオード24aは必ずしもゲートパッド22の下に形成する必要はなく、活性領域21内の任意の場所に設けても構わない。但し、その場所にはセルは形成しない。
【0052】
つまり、ダイナミッククランプダイオード24aを形成する箇所は耐圧領域20以外の任意の箇所を選定できるので、形成箇所の選定に対して自由度が向上する。たとえば、チップの中央に形成した場合、端部にある場合に比較してダイナミッククランプによるゲート電圧の上昇がゲート配線抵抗の影響を受け難くチップ全体に均等に与えられる利点がある(ゲートポリシリコンには配線抵抗が存在するため、ダイナミッククランプダイオードとゲート電極の接続点に近い所のゲート電圧が先に上昇し、離れた場所のゲート電圧の上昇が遅れるため電流が近い所に集中する。チップの中央にダイナミッククランプダイオードを配置することで、距離の差が小さくなり、比較的均一にオンすることができる。)。
【0053】
尚、前記半導体装置100においては、縦型パワー半導体素子はIGBT2を例にあげて説明したがパワーMOSFETとしても構わない。また、ダイナミッククランプ回路を内蔵した半導体装置を用いたイグニッションシステムにおいては、ダイナミッククランプダイオード24aの耐圧(クランプ電圧)は100V以上とするとよい。
【0054】
また、n領域40とp領域41の繰り返しで構成される前記のダイナミッククランプダイオード24aを、n領域40とp領域41からなるpn接合を一つ置きに導電膜で短絡してもよい。この場合はpnダイオードが直列接続された
図10のダイナミッククランプダイオード6,7と同じ構成になる。
<実施例2>
図4は、この発明の第2実施例に係る半導体装置200の要部平面図である。
図1と異なるのは、ダイナミッククランプダイオード24bが同心円上ではなく矩形になっている点とダイナミッククランプダイオード24bの一部がエミッタパッド23下に形成されている点である。
【0055】
これは、エミッタパッド23下に活性領域のセルを形成しない場合に適用可能である。ダイナミッククランプダイオード24bはこの他に長円形などであっても問題ないこと、エミッタパッド23とゲートパッド22の間隔を小さくして、エミッタパッド23下に一部を、ゲートパッド22下に残りの一部を形成することが可能であることもいうまでもない。
【0056】
前記の実施例1および実施例2において、耐圧構造20上にはダイナミッククランプダイオード24a、24bが存在しないため、電界集中が起こる箇所が存在しない.そのため、耐圧の低下、リーク電流の増加などの懸念がない。
【0057】
また、ダイナミッククランプダイオード24a、24b直下では電位勾配を持つフィールドプレートとして作用するため電界集中が発生し難く安定した耐圧が得られる。
さらに、耐圧構造20にダイナミッククランプダイオード24a、24bを形成しないため、耐圧構造20の幅を狭く設計することができる。その結果、チップサイズが縮小化され製造コストを低減することがてきる。
<実施例3>
図5および
図6は、この発明の第3実施例に係る半導体装置300の構成図であり、
図5は要部平面図、
図6は
図5のX−X線で切断した要部断面図である。この半導体装置300と実施例1の半導体装置100との違いは、ダイナミッククランプダイオード24aが、微細加工されて小さなダイナミッククランプダイオード24cとした場合であり、中央部にn
+バッファ層24に達するストッパ層44を設けている点である。このストッパ層44は高濃度のn拡散層44aで形成する。このストッパ層44を設けることで、
コレクタ電圧がクランプ電圧に到達した時点で、左右から伸びてくる空乏層43が中央で接して繋がる(ピンチオフする)ことが防止される。空乏層43がピンチオフするのが防止されるために、コレクタ電圧は電圧降下することなくダイナミッククランプダイオード24cに伝達され、コレクタ電圧がクランプ電圧で効果的に抑えられる。
<実施例4>
図7および
図8は、この発明の第4実施例に係る半導体装置400の構成図であり、
図7は要部平面図、
図8は
図7のX−X線で切断した要部断面図である。この半導体装置400と実施例1の半導体装置100との違いは、ダイナミッククランプダイオード24aが、二層に配置されて小さなダイナミッククランプダイオード24dとした場合であり、中央部にn
+バッファ層26に達するストッパ層44を設けている点である。
【0058】
一層目のダイナミッククランプダイオード24d−1と二層目のダイナミッククランプダイオード24d−2は同一諸元で形成され、それぞれは層間絶縁膜34を挟んでAl電極46で接続される。二層目のダイナミッククランプダイオード24d−2の中央部はゲートパッドに接続する。この場合も実施例4と同様の効果が得られる。ただし、この場合p
+拡散領域32a付近はその上部にあるポリシリコン層31aの電位が高く空乏層が伸び難いため、フィールド酸化膜33の厚さを厚くするなどの工夫が必要である。
<実施例5>
図9は、この発明の第5実施例に係る半導体装置500の要部平面図である。この半導体装置500と実施例4の半導体装置400との違いは、n
+バッファ層26に達するストッパ層44がトレンチ47と、このトレンチ47の周りに高濃度のn拡散層48と、トレンチ47を充填するポリシリコン49で構成されている点である。このポリシリコン49はポリシリコン層31aを形成するときに同時に充填するとよい。また、前記の高濃度のn拡散層48の代わりに絶縁層を配置しても構わない。この実施例5の場合も実施例4と同様の効果が得られる。また、実施例3や実施例4のストッパ層44にも実施例5のストッパ層が適用できることは言うまでもない。
【0059】
前記の実施例1〜5を纏めると以下のようになる。
1)耐圧構造とは別の領域にダイナミッククランプ回路を配置することで、耐圧構造上にダイナミッククランプ回路が存在しなくなるため、電界集中が起こる箇所が存在しなくなり、耐圧の低下、リーク電流の増加などを防止することができる。
2)ダイナミッククランプ回路の直下ではダイナミッククランプダイオードが電位勾配を持つフィールドプレートとして作用するため電界集中が発生し難く安定した耐圧が得られる。
3)ダイナミッククランプダイオードを絶縁膜を挟んで複数積層し、耐圧構造上にダイナミッククランプ回路を形成しないことで、ダイナミッククランプ回路の縮小化を図ることができ、さらに耐圧構造の幅を短縮することができる。その結果、製造コストの低減を図ることができる。
4)ダイナミッククランプ回路を形成する箇所の自由度を広げ、コスト上昇を招かずにダイナミッククランプ回路を形成することができる。
【符号の説明】
【0060】
1,100,200,300,400,500 半導体装置
2 IGBT
3 コレクタ端子
4 ゲート電極
5 エミッタ端子
6 定電圧ダイオード
7 逆流防止ダイオード
8 ゲート端子
9 ゲート抵抗
10、11 ゲート保護ダイオード
12 駆動回路
13 バッテリー
14 イグニッションコイル
15 スパークプラグ
16 オン時誤点弧防止ダイオード
20 耐圧構造
21 活性領域
22 ゲートパッド
23 エミッタパッド
23a エミッタAl電極
24,24a ダイナミッククランプダイオード
25 p
+基板
26 n
+バッファ層
27 n
−ドリフト層
28 pベース領域
29 n
+エミッタ領域
30 ゲート酸化膜
31 ゲート電極
31a ポリシリコン層
32,32a p
+拡散領域
33 フィールド酸化膜
34、45 層間絶縁膜
35 ゲートAl電極
36,36a n
+拡散領域
37,37a、46 Al電極
40 n領域(総称)
40−1,40−2.40−3、・・・ n領域(個別)
41 p領域(総称)
41−1,41−2、・・・ p領域(個別)
42 パッシベーション膜
43 空乏層
44 ストッパ層
47 トレンチ
48 高濃度のn拡散層
49 ポリシリコン