(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019622
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】クランプオン型超音波流量計
(51)【国際特許分類】
G01F 1/66 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
G01F1/66 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-45478(P2012-45478)
(22)【出願日】2012年3月1日
(65)【公開番号】特開2013-181812(P2013-181812A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2015年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】古儀 史也
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕之
(72)【発明者】
【氏名】福原 聡
(72)【発明者】
【氏名】岡本 和年
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 来
【審査官】
山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭56−133620(JP,A)
【文献】
特開平01−295160(JP,A)
【文献】
実開昭63−063764(JP,U)
【文献】
特開2001−324363(JP,A)
【文献】
特開平03−261858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/66
G01N 29/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動子を実装する楔部材の底面部を、音響結合材を介して配管の外壁部に接続したクランプオン型超音波流量計において、
前記楔部材に設けられ、前記振動子から送信された超音波を受信する受信手段と、
前記配管の内面と流体との境界面で反射された超音波が前記受信手段により受信される以前の時間帯において前記受信手段により受信される受信波形を切り出す診断波形切出手段と、
前記診断波形切出手段により切り出された前記受信波形の所定周波数範囲での周波数スペクトルを演算するスペクトル演算手段と、
前記スペクトル演算手段により演算された周波数スペクトルの総和が所定の閾値を超えた時に、前記音響結合材の異常を警報するアラーム手段と、
を備えることを特徴とするクランプオン型超音波流量計。
【請求項2】
前記音響結合材は、グリース、接着剤、カプラントのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のクランプオン型超音波流量計。
【請求項3】
前記スペクトル演算手段は、FFT(Fast Fourier Transform)演算回路であることを特徴とする請求項1または2に記載のクランプオン型超音波流量計。
【請求項4】
前記受信手段を、前記振動子とは別個の振動センサとして構成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のクランプオン型超音波流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動子を実装する楔部材の底面部を、音響結合材を介して配管の外壁部に接続したクランプオン型超音波流量計に関し、音響結合材の減少を警告することを可能としたクランプオン型超音波流量計を提供する。
【背景技術】
【0002】
図7は、反射相関方式を用いたクランプオン型超音波流量計の構成例を示す側断面図である。反射相関型超音波流量計の構造および動作原理の詳細については、特許文献1に技術開示がある。
【0003】
流体Fが流れる配管10の外壁部には楔部材20の底面部がクランプオン接続されている。この楔部材20の上面部には斜め方向に配置される振動子30が実装され、流体Fの流れ方向に対して超音波の入射方向に所定の入射角を与える。
【0004】
クランプオン接続により生じる、楔部材20の底面部と配管10の外壁部間の空隙部には、超音波の伝搬特性の高い高粘度のグリースやカプラント等の音響結合材40を塗って空隙部を充填している。
【0005】
振動子30から、配管10内に流れる流体Fに超音波を送信し、流体内に含まれる気泡やパーティクルからの反射信号を振動子3で受信し、この受信信号eを流量計測部50に入力して流体Fの流量を演算して出力する。
【0006】
配管10の外壁部に接続された温度センサ60および楔部材20の側部に接続された温度センサ70の温度検出値により、流量計測部50での流量演算において配管および楔部材内の音速計算の温度補償を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−151452
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来構成のクランプオン型超音波流量計では次のような問題がある。
(1)
図8は、クランプオン型超音波流量計の正断面図であり、
図8(A)は、音響結合材40が正常に充填されている状態を示し、同(B)は充填が不十分の状態を示す。
【0009】
図8(A)の正常状態では、楔部材20から配管10への超音波が入射する際、響結合材40が空隙部に十分に充填された部分では、透過領域Lが十分に確保されて超音波は容易に透過することができるが、同(B)の不十分状態では楔部材20の底部と配管10との空隙部に空気等が存在することになり、音響インピーダンスの差から超音波はほとんど透過することができないので、透過領域はL´に示すように縮小される。
【0010】
(2)そのため、音響結合材が経年劣化や溶け出し等により減少すると、透過する超音波が少なくなるため受信信号が低下し、測定精度が低下する場合や測定自体が不可能となる場合がある。
【0011】
(3)音響結合材の劣化によって発生する問題は再度塗り直すことで解決されるが、受信信号の低下は、音響結合材の劣化以外にも様々な要因で現れるため、すぐに原因を特定することはできない。
【0012】
(4)また、超音波流量計の設置場所に容易に立ち入ることができない場合には、監視員が直接音響結合材の状態を目視して確認することは難しいという問題がある。
【0013】
本発明の目的は、音響結合材の状態を直接確認することなく音響結合材の減少を診断して警報することが可能なクランプオン型超音波流量計を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような課題を達成するために、本発明は次の通りの構成になっている。
(1)振動子を実装する楔部材の底面部を、音響結合材を介して配管の外壁部に接続したクランプオン型超音波流量計において、
前記楔部材に設けられ、前記振動子から送信された超音波を受信する受信手段と、
前記配管の内面と流体との境界面で反射された超音波が前記受信手段により受信される以前の時間帯において前記受信手段により受信される受信波形を切り出す診断波形切出手段と、
前記診断波形切出手段により切り出された前記受信波形の所定周波数範囲での周波数スペクトルを演算するスペクトル演算手段と、
前記スペクトル演算手段により演算された周波数スペクトルの総和が所定の閾値を超えた時に、前記音響結合材の異常を警報するアラーム手段と、
を備えることを特徴とするクランプオン型超音波流量計。
【0015】
(2)前記音響結合材は、グリース、接着剤、カプラントのいずれかであることを特徴とする(1)に記載のクランプオン型超音波流量計。
【0016】
(3)前記スペクトル演算手段は、FFT(Fast Fourier Transform)演算回路であることを特徴とする(1)または(2)に記載のクランプオン型超音波流量計。
【0017】
(4)
前記受信手段を、前記振動子とは別個の振動センサ
として構成することを特徴とする請求項(1)乃至(3)のいずれかに記載のクランプオン型超音波流量計。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、流量計測を継続しながら音響結合材の減少を自動的に診断して警報することが可能となり、クランプオン型超音波流量計のメンテナンス性を著しく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明を適用したクランプオン型超音波流量計の一実施例を示す機能ブロック図である。
【
図2】診断波形切出しの概念を説明する振動子の受信波形図である。
【
図5】本発明を適用したクランプオン型超音波流量計の信号処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】本発明を適用したクランプオン型超音波流量計の他の実施例を示す側断面図である。
【
図7】クランプオン型超音波流量計の構成例を示す側断面図である。
【
図8】クランプオン型超音波流量計の構成例を示す正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図面により詳細に説明する。
図1は、本発明を適用したクランプオン型超音波流量計の一実施例を示す機能ブロック図である。
図7で説明した従来構成と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0021】
本発明の特徴部は、振動子30の受信信号eを入力する音響結合材診断部100を備える構成にある。音響結合材診断部100の機能構成は、診断波形切出手段101、スペクトル演算手段102、アラーム手段103よりなる。
【0022】
診断波形切出手段101は、振動子30の受信信号eより、診断に必要な範囲の診断波形を切り出す。この診断波形は、流体内の気泡やパーティクルから反射してくる受信信号よりも前に振動子30で受信された受信信号の波形を用いる。
【0023】
図2は、診断波形切出しの概念を説明する振動子の受信波形図である。時刻t1の超音波送信のタイミングから反射波の反射波の到達予想時間t2までの期間T内の適当な範囲T´を診断波形切出し範囲Aとする。
【0024】
この診断波形の受信範囲は、波形の切り出し範囲が超音波送信後から楔部材20、配管10の音および伝搬距離から算出される、配管内面と流体との境界面での反射波が検出される時間以前の受信波である。
【0025】
この受信波は、流体F内に入射できずに楔部材20や配管10内で反射してきた信号である。そのため、振動子30から発生する超音波信号の強さが音響結合材40の状態に関わらず常に一定である場合、音響結合材40が減少すると楔部材20を透過する波が減るため、楔部材-配管・音響結合材境界面からの反射波が増え、受信波は強くなる。一方、音響結合材が十分である場合、楔部材20を透過する波が増えるため受信波は弱くなる。
【0026】
スペクトル演算手段102は、切り出した診断波形を周知のFFT(Fast Fourier Transform)演算回路等により、超音波駆動周波数の1/2〜2倍までの周波数範囲でスペクトル演算する。
【0027】
図3は、
図2のAに示す範囲で切り出した診断波形のスペクトル演算結果を示す波形図である。音響結合材が十分の場合、一部除去の場合、ない場合によりスペクトルのレベルが順次大きくなることが分かる。
【0028】
アラーム手段103は、演算されたスペクトルの総和を計算し、総和値により受信波の強さの変化を判断する。この総和値が所定の閾値Mを超えた場合に音響結合材の異常を警報出力する。
【0029】
図4は、スペクトル総和の変化を示す特性図である。音響結合材が十分の場合のスペクトル総和をP1、音響結合材一部除去の場合のスペクトル総和をP2、音響結合材を除去した場合のスペクトル総和をP3で示し、順次増加する特性を有する。この総和が閾値Mを超えたQ点で警報が出力される。
【0030】
図5は、本発明を適用したクランプオン型超音波流量計の信号処理手順の一例を示すフローチャートである。ステップS1乃至ステップS11は、通常の流量計測のフローを示し、ステップ101乃至ステップ104は、常時またはオンデマンドで起動されるオフラインの音響部材診断部100の診断フローを示している。
【0031】
流量計測が開始すると、ステップS1で測定前にあらかじめ入力された流量・流速の計算を行うために必要なパラメータ(配管の肉厚・外径、楔部材の入射角・伝搬距離等)を取得する。これらパラメータは、測定開始時に一度だけ設定される。
【0032】
ステップS2で測定に必要なパラメータの演算を実行し、ステップS3でこのパラメータを保存する。ステップS4で配管・楔部材の温度を測定し、ステップS5で配管・楔部材の音速を計算する。
【0033】
ステップS7で送信信号を生成し、ステップS8で振動子により超音波を送信する。ステップS9で超音波の被測定流体内の気泡やパーティクルからの反射波eを受信し、ステップS10で流速・流量の演算を実行し、ステップS11で演算結果の表示を行い、ステップS4に戻り、流量計測を繰り返し実行する。
【0034】
音響結合材診断部100では、ステップS101で受信波eから流体内部到達前の反射波を診断波形として切出し、ステップS102で周波数スペクトルを演算する。ステップS103でスペクトル総和と閾値Mとの比較が実行され、スペクトル総和が閾値M以上であればステップS104で使用者に警告やエラーをアラームALとして出力する。
【0035】
図6は、本発明を適用したクランプオン型超音波流量計の他の実施例を示す側断面図である。流量計測のための超音波の送受信を行う振動子30とは別個の振動センサ200を、楔部材20内で配管10からの反射波を受信しやすい個所に配置して、診断波形をこの振動センサ200で検出する構成をとることも可能である。
【0036】
クランプオン型超音波流量計で採用される音響結合材としては、グリースが一般的であるが、その他に接着剤、カプラント等を採用することができる。
【0037】
以上説明したクランプオン型超音波流量計の実施例では、反射相関方式を説明したが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、ドプラ方式や伝搬時間差方式を採用したクランプオン型超音波流量計に対しても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 配管
20 楔部材
30 振動子
40 音響結合材
50 流量計測部
60 温度センサ(配管)
70 温度センサ(楔部材)
100 音響結合材診断部
101 診断波形切出手段
102 スペクトル演算手段
103 アラーム手段