特許第6019623号(P6019623)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6019623含浸体の製造方法、及び、多層プリント配線板用積層板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019623
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】含浸体の製造方法、及び、多層プリント配線板用積層板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20161020BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20161020BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   C08J5/04CEW
   H05K1/03 610H
   H05K3/46 T
【請求項の数】9
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2012-46771(P2012-46771)
(22)【出願日】2012年3月2日
(65)【公開番号】特開2012-184422(P2012-184422A)
(43)【公開日】2012年9月27日
【審査請求日】2015年1月21日
(31)【優先権主張番号】61/448,784
(32)【優先日】2011年3月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉本 洋之
(72)【発明者】
【氏名】三浦 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】助川 勝通
【審査官】 中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/019336(WO,A1)
【文献】 特開2001−357729(JP,A)
【文献】 特開平05−069442(JP,A)
【文献】 特開昭60−240437(JP,A)
【文献】 特開平05−320383(JP,A)
【文献】 特開昭63−047136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16
15/08−15/14
C08J 5/04−5/10
5/24
H05K 1/03
3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下に示す樹脂(A)及び樹脂(B)を含む水性分散液を基布に含浸する工程、及び、
含浸した基布を樹脂(A)の一次融点未満、樹脂(B)の融点以上の温度で熱処理する工程、を含むことを特徴とする含浸体の製造方法。
樹脂(A):380℃での溶融粘度が50万Pa・s以上のポリテトラフルオロエチレン樹脂
樹脂(B):樹脂(A)の一次融点未満の融点を有する熱可塑性樹脂、又は、380℃での溶融粘度が50万Pa・s未満のポリテトラフルオロエチレン樹脂
【請求項2】
水性分散液は、樹脂(B)の含有率が樹脂(A)と樹脂(B)との合計の1〜60質量%である請求項1記載の含浸体の製造方法。
【請求項3】
樹脂(B)は、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体樹脂、及び、ポリオレフィン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である
請求項1又は2記載の含浸体の製造方法。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の製造方法における工程を経て製造された含浸体と金属箔とを重ねた後、樹脂(A)の一次融点未満、150℃以上で加圧成形する工程、を含むことを特徴とする多層プリント配線板用積層板の製造方法。
【請求項5】
請求項1、2又は3記載の製造方法における工程を経て製造された含浸体と接着剤層と金属箔とを重ねた後、樹脂(A)の一次融点未満、150℃以上で加圧成形する工程、を含むことを特徴とする多層プリント配線板用積層板の製造方法。
【請求項6】
以下に示す樹脂(A)及び樹脂(B)を含む水性分散液を基布に含浸する工程、及び、
含浸した基布と金属箔とを重ねた後、樹脂(A)の一次融点未満、樹脂(B)の融点以上の温度で加圧成形する工程、を含むことを特徴とする多層プリント配線板用積層板の製造方法。
樹脂(A):380℃での溶融粘度が50万Pa・s以上のポリテトラフルオロエチレン樹脂
樹脂(B):樹脂(A)の一次融点未満の融点を有する熱可塑性樹脂、又は、380℃での溶融粘度が50万Pa・s未満のポリテトラフルオロエチレン樹脂
【請求項7】
以下に示す樹脂(A)及び樹脂(B)を含む水性分散液を基布に含浸する工程、及び、
含浸した基布と接着剤層と金属箔とを重ねた後、樹脂(A)の一次融点未満、樹脂(B)の融点以上の温度で加圧成形する工程、を含むことを特徴とする多層プリント配線板用積層板の製造方法。
樹脂(A):380℃での溶融粘度が50万Pa・s以上のポリテトラフルオロエチレン樹脂
樹脂(B):樹脂(A)の一次融点未満の融点を有する熱可塑性樹脂、又は、380℃での溶融粘度が50万Pa・s未満のポリテトラフルオロエチレン樹脂
【請求項8】
水性分散液は、樹脂(B)の含有率が樹脂(A)と樹脂(B)との合計の1〜60質量%である請求項6又は7記載の多層プリント配線板用積層板の製造方法。
【請求項9】
樹脂(B)は、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体樹脂、及び、ポリオレフィン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である
請求項6、7又は8記載の多層プリント配線板用積層板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含浸体の製造方法、及び、多層プリント配線板用積層板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板等の高周波信号伝送用製品では、絶縁材の誘電体損が重要なファクターとなっている。誘電体損は、誘電率(ε)と誘電正接(tanδ)との関数であり、小さいほど絶縁材として好ましい。
【0003】
誘電率と誘電正接が小さい絶縁材の材料の一つとして、ポリテトラフルオロエチレン[PTFE]が知られており、例えば、フッ素樹脂積層板として、PTFEのエマルジョンをガラスクロスに含浸させ、乾燥したレジンクロスを用い、最外面等に積層板の成形性を良好なものとするために、PTFEよりも融点の低いPFA、FEP、ETFE、CTFE等からなるフッ素樹脂フィルムを配設し、その後、金属箔と一体成形する技術が知られている。
【0004】
しかしながら、このような積層板を多層プリント配線板の内層材等として用いる場合には、多層成形の二次成形において、融点の低いフッ素樹脂からなる層が融解して二次成形後の寸法が大きく変化するという問題があった。
【0005】
そこで、寸法安定性に優れる多層プリント配線板用の積層板を提供することを目的として、特許文献1には、PTFE樹脂のみからなるフッ素樹脂層を介在させて所要枚数のPTFE樹脂及び他のフッ素樹脂を含浸した樹脂含浸基材を積層し、両外面の該フッ素樹脂含浸基材の外側にもPTFE樹脂のみからなるフッ素樹脂層を配設してなる多層プリント配線板用積層板が記載されている。しかしながら、このようにして得られる多層プリント配線板用積層板は、誘電正接、誘電率等の電気特性に関して充分なものではなかった。
【0006】
ところで、特許文献2には、誘電正接、誘電率等の電気特性に優れ、また、末端加工性や機械的強度に優れた成形体として、ポリテトラフルオロエチレン樹脂と、融点が100℃以上、322℃未満である熱可塑性樹脂とからなる成形体であって、前記ポリテトラフルオロエチレン樹脂は、示差走査熱量計による結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度が、340℃以上の温度に加熱した後における示差走査熱量計による結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度よりも3℃以上高い成形体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭64−51938号公報
【特許文献2】国際公開2005/019336号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、誘電正接及び比誘電率が低く、また、機械的強度に優れた含浸体を製造する方法を提供することにある。本発明の目的は、誘電正接及び比誘電率が低く、また、機械的強度に優れた多層プリント配線板用積層板を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等が、誘電正接及び比誘電率が低く、かつ機械的強度に優れた含浸体を製造する方法について鋭意検討したところ、380℃での溶融粘度が50万Pa・s以上のポリテトラフルオロエチレン樹脂と、このポリテトラフルオロエチレン樹脂よりも低い融点をもつ樹脂とを混合し、それらの融点の中間温度で焼成することにより、ポリテトラフルオロエチレン樹脂よりも低い融点をもつ樹脂を融解し、かつポリテトラフルオロエチレン樹脂を未焼成とすることで、低誘電率かつ低誘電正接であり、更に、機械的強度が良好な含浸体が得られることが見出された。
【0010】
本発明は、以下に示す樹脂(A)及び樹脂(B)を含む水性分散液を基布に含浸する工程、及び、含浸した基布を樹脂(A)の一次融点未満、樹脂(B)の融点以上の温度で熱処理する工程、を含むことを特徴とする含浸体の製造方法である。
樹脂(A):380℃での溶融粘度が50万Pa・s以上のポリテトラフルオロエチレン[PTFE]樹脂
樹脂(B):樹脂(A)の一次融点未満の融点を有する熱可塑性樹脂、又は、380℃での溶融粘度が50万Pa・s未満のPTFE樹脂
【0011】
本発明は、上記製造方法における工程を経て製造された含浸体と金属箔とを重ねた後、樹脂(A)の一次融点未満、150℃以上で加圧成形する工程、を含むことを特徴とする多層プリント配線板用積層板の製造方法(以下、「第一の多層プリント配線板用積層板の製造方法」ともいう。)でもある。
【0012】
本発明は、上記製造方法における工程を経て製造された含浸体と接着剤層と金属箔とを重ねた後、樹脂(A)の一次融点未満、150℃以上で加圧成形する工程(以下、「第二の多層プリント配線板用積層板の製造方法」ともいう。)でもある。
【0013】
本発明は、以下に示す樹脂(A)及び樹脂(B)を含む水性分散液を基布に含浸する工程、及び、含浸した基布と金属箔とを重ねた後、樹脂(A)の一次融点未満、樹脂(B)の融点以上の温度で加圧成形する工程、を含むことを特徴とする多層プリント配線板用積層板の製造方法(以下、「第三の多層プリント配線板用積層板の製造方法」ともいう。)でもある。
樹脂(A):380℃での溶融粘度が50万Pa・s以上のPTFE樹脂
樹脂(B):樹脂(A)の一次融点未満の融点を有する熱可塑性樹脂、又は、380℃での溶融粘度が50万Pa・s未満のPTFE樹脂
【0014】
本発明は、以下に示す樹脂(A)及び樹脂(B)を含む水性分散液を基布に含浸する工程、及び、含浸した基布と接着剤層と金属箔とを重ねた後、樹脂(A)の一次融点未満、樹脂(B)の融点以上の温度で加圧成形する工程、を含むことを特徴とする多層プリント配線板用積層板の製造方法(以下、「第四の多層プリント配線板用積層板の製造方法」ともいう。)でもある。
樹脂(A):380℃での溶融粘度が50万Pa・s以上のPTFE樹脂
樹脂(B):樹脂(A)の一次融点未満の融点を有する熱可塑性樹脂、又は、380℃での溶融粘度が50万Pa・s未満のPTFE樹脂
【0015】
上記水性分散液は、樹脂(B)の含有率が樹脂(A)と樹脂(B)との合計の1〜60質量%であることが好ましい。
【0016】
上記樹脂(B)は、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体樹脂、及び、ポリオレフィン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明の含浸体の製造方法は、樹脂(A)及び樹脂(B)を含む水性分散液を基布に含浸する工程(含浸工程)を含む。
【0018】
上記水性分散液を基布に含浸する方法としては、ディッピング等の一般的な含浸方法を用いることができる。上記含浸工程は、例えば、上記水性分散液を基布に含浸させ、その後、水性分散液を含浸させた基布を乾燥するものであることが好ましい。上記乾燥は、少なくとも上記樹脂(A)の一次融点未満の温度で行うものであるが、例えば、90〜150℃で行うことができる。
【0019】
上記基布は、表面に凹凸を有するものであることが好ましく、例えば、ガラス基材、ポリイミド樹脂繊維、フッ素樹脂繊維等が挙げられる。接着性の観点から、ガラス基材が好ましく、ガラスクロス、ガラスマット、及び、ガラスペーパーからなる群より選択される少なくとも1種のガラス基材がより好ましい。基布の厚さは、例えば、0.05〜0.5mm程度とすることができる。上記基布は、融点又は軟化点が後述する熱処理の温度以上であることが好ましい。
【0020】
上記樹脂(A)は、380℃での溶融粘度が50万Pa・s以上のPTFE樹脂である。上記樹脂(A)の380℃での溶融粘度は、100万Pa・s以上が好ましい。上記溶融粘度は、ASTM D 1238に準拠し、フローテスター(島津製作所製)及び2φ−8Lのダイを用い、予め測定温度(380℃)で5分間加熱しておいた2gの試料を0.7MPaの荷重にて上記温度に保って測定することができる。
【0021】
上記樹脂(A)は、テトラフルオロエチレン[TFE]単独重合体であってもよいし、TFEと、TFE以外の微量モノマーとの共重合体であって、非溶融加工性であるもの(以下、変性ポリテトラフルオロエチレン[変性PTFE]という。)であってもよい。
【0022】
上記微量モノマーとしては、例えば、パーフルオロオレフィン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、環式のフッ素化された単量体、パーフルオロアルキルエチレン等が挙げられる。上記パーフルオロオレフィンとしては、ヘキサフルオロプロピレン[HFP]等が挙げられ、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)としては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)等が挙げられ、環式のフッ素化された単量体としては、フルオロジオキソール等が挙げられ、パーフルオロアルキルエチレンとしては、パーフルオロメチルエチレン等が挙げられる。
【0023】
上記変性PTFEにおいて、上記微量モノマーに由来する微量モノマー単位の全モノマー単位に占める含有率は、通常、0.001〜1モル%の範囲である。本明細書において、上記「微量モノマー単位」は、フルオロポリマーの分子構造上の一部分であって、対応するフルオロモノマーに由来する部分を意味する。例えば、TFE単位は、フルオロポリマーの分子構造上の一部分であって、TFEに由来する部分であり、−(CF−CF)−で表される。上記「全モノマー単位」は、フルオロポリマーの分子構造上、モノマーに由来する部分の全てである。本明細書において、「全モノマー単位に占める微量モノマー単位の含有率(モル%)」とは、上記「全モノマー単位」が由来するモノマー、即ち、フルオロポリマーを構成することとなったモノマー全量に占める、上記微量モノマー単位が由来する微量モノマーのモル分率(モル%)を意味する。
【0024】
上記変性PTFEにおいて、上記全モノマー単位に占める微量モノマー単位の含有率は、得られる含浸体の誘電正接を低くさせる点で、低い方が好ましく、好ましい上限は0.1モル%である。
【0025】
上記樹脂(A)としては、得られる含浸体の誘電正接を低くさせる点で、TFE単独重合体が好ましい。
【0026】
上記樹脂(A)としては、数平均分子量が350万〜800万であるものが好ましい。上記樹脂(A)の数平均分子量は、大きくなると成形性に劣りやすく、少な過ぎると機械的強度や電気的特定が低下しやすい。上記樹脂(A)の数平均分子量のより好ましい下限は、400万であり、より好ましい上限は700万である。本明細書において、数平均分子量は、ASTM D−4895 98に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D−792に準拠した水置換法により測定した標準比重より計算されるものである。
【0027】
上記樹脂(A)は、示差走査熱量計による結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度[T]が、340℃以上に加熱した後における示差走査熱量計による結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度[T]よりも3℃以上高いものであることが好ましい。なお、本明細書中で、上記最大ピーク温度[T]を一次融点ともいい、最大ピーク温度[T]を二次融点ともいう。
上記最大ピーク温度[T]は、上記最大ピーク温度[T]よりも5℃以上高いことが好ましく、10℃以上高いことがより好ましい。上記最大ピーク温度[T]は、上記範囲内の温度であればよく、通常、上記最大ピーク温度[T]よりも21℃高い温度以下であり、最大ピーク温度[T]よりも15℃高い温度以下であってもよい。通常、樹脂(A)の一次融点は、330〜350℃であり、一旦溶融した後に測定される二次融点は約327℃となる。
本明細書において、上記吸熱カーブは、示差走査熱量計を用いて、昇温速度10℃/分の条件で昇温させて得られたものである。
上記樹脂(A)は、上記最大ピーク温度[T]を有する場合、ポリテトラフルオロエチレンの重合後、焼成した履歴のないものである。本明細書において、上記樹脂(A)を一次融点以上の温度に加熱することを「焼成」ということがある。上記樹脂(A)について、該一次融点以上の温度に加熱した履歴がないことを「未焼成」又は「半焼成」ということがある。
上記焼成は、含浸体や多層プリント配線板用積層板の加熱時の形状(例えば、厚み等)により異なるが、例えば、340℃の温度にて5分間加熱することにより行うものである。
【0028】
上記樹脂(A)の一次融点は、333〜347℃であることが好ましい。得られる含浸体の耐クラック性の点で、上記樹脂(A)の一次融点のより好ましい下限は338℃であり、より好ましい上限は342℃である。本明細書において、上記樹脂(A)の一次融点は、示差走査熱量計を用いて、昇温速度10℃/分の条件で吸熱ピークを測定することにより求められる。
【0029】
上記樹脂(A)は、目的とする含浸体の用途や、上記樹脂(A)及び樹脂(B)を含む水性分散液の調製方法等により、乳化重合、懸濁重合、溶液重合等の公知の方法で製造することができるが、上記水性分散液を調製する観点からは、乳化重合により得られるものが好ましい。上記樹脂(A)としては、例えば乳化重合により得られたものである場合、乳化重合により得られた重合上がりの水性分散液又はその濃縮物を用いてもよいし、上記水性分散液を凝析して取り出した粉末を用いてもよい。上記乳化重合により得られる粉末は、ファインパウダーということがある。
【0030】
上記樹脂(A)の重合上がりの水性分散液中の樹脂粒子(一次粒子)の平均粒子径(平均一次粒径)は、通常0.1〜0.5μmである。上記平均一次粒径の好ましい下限は0.2μmであり、好ましい上限は0.3μmである。本明細書において、上記平均一次粒径は、重力沈降法に基づく測定により得られるものである。
【0031】
上記樹脂(B)は、樹脂(A)の一次融点未満の融点を有する熱可塑性樹脂、又は、380℃での溶融粘度が50万Pa・s未満のポリテトラフルオロエチレン樹脂である。
【0032】
上記樹脂(B)は、融点が100℃以上、322℃未満であることが好ましい。上記融点は、多層プリント配線基板等、得られる含浸体の使用時の耐熱性の点で、120℃以上がより好ましく、機械的強度と後述する熱処理時の温度設定がしやすい点で、300℃以下が好ましい。上記樹脂(B)は、上記範囲内に融点を有するものであるので、本発明の製造方法で得られる含浸体は、例えば、室温〜100℃未満の比較的低温での使用に際して、形状安定性を有し、伝送特性変化を生じないので、高度の高周波伝送特性が求められる用途に好適に使用することができる。上記樹脂(B)の融点の測定法としては、樹脂の種類により公知の測定法を採用することができるが、例えば、示差走査熱量計を用いて、昇温速度10℃/分の条件で吸熱ピークを測定することにより求めることができる。
【0033】
上記樹脂(A)の一次融点未満の融点を有する熱可塑性樹脂(380℃での溶融粘度が50万Pa・s未満のPTFE樹脂を除く)としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、含フッ素樹脂等が挙げられる。上記ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリプロピレン〔PP〕系樹脂、ポリエチレン〔PE〕系樹脂等が挙げられる。
上記ポリプロピレン〔PP〕系樹脂は、構成するプロピレンポリマーがプロピレン単独重合体であるものであってもよいし、主要単量体としてのプロピレンと、プロピレンとの共重合可能な単量体との共重合体であるものであってもよい。上記プロピレンの共重合体としては、例えば、プロピレンとエチレンとがランダム又はブロック状に共重合したプロピレン/エチレン系共重合体等をも含むものであってもよい。
上記含フッ素樹脂としては、溶融加工性含フッ素樹脂が挙げられる。
上記溶融加工性含フッ素樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体[PFA]樹脂、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体[FEP]樹脂、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体[ETFE]樹脂、エチレン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂、ポリフッ化ビニリデン[PVdF]樹脂等が挙げられる。
上記PFA樹脂としては、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)共重合体樹脂、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)共重合体樹脂等が挙げられる。
上記含フッ素樹脂としては、PFA樹脂及びFEP樹脂からなる群より少なくとも1種の樹脂が好ましい。
上記380℃での溶融粘度が50万Pa・s未満のPTFE樹脂は、通常、低分子量のPTFEであり、樹脂(A)の一次融点未満の融点を有する。
【0034】
上記樹脂(B)としては、耐熱性に優れ、比較的高温下でも安定した使用が可能な含浸体が得られる点で、FEP樹脂、PFA樹脂、及び、ポリオレフィン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0035】
上記樹脂(B)は、372℃におけるMFRが0.5〜80(g/10分)であるものが好ましい。上記MFRは、より好ましい下限が8(g/10分)であり、より好ましい上限が50(g/10分)であり、更に好ましい上限が25(g/10分)である。本明細書において、上記MFRは、ASTM D−2116に準拠して測定したものである。
上記樹脂(B)は、MFRが小さいので、後述の熱処理時に上記樹脂(A)からなる粒子同士の間の隙間に充分に行き渡って隙間を埋めることができ、その状態で冷却により固化するので、本発明の製造方法により得られる含浸体は機械的強度に優れるものとなる。
上記樹脂(B)は、PTFE樹脂よりも比誘電率と誘電正接とが高いので、PTFE樹脂の電気特性を活かした部材に混在させることは避けられてきた。しかしながら、本発明の含浸体の製造方法は、PTFE樹脂よりも電気特性に劣る熱可塑性樹脂を用いたにもかかわらず、樹脂としてPTFE樹脂のみを用いた含浸体の比誘電率と誘電正接とを損なうことなく、優れた機械的強度を達成することができる。
【0036】
上記樹脂(B)の数平均分子量は、特に限定されないが、1000〜50万であることが好ましい。上記数平均分子量は、大きすぎると含浸時に繊維化することがあり、小さ過ぎると、得られる含浸体の機械的強度が低下することがある。
【0037】
上記樹脂(B)は、公知の方法で製造することができるが、本発明の含浸体の製造方法は、含浸に水性分散液を用いるものであるため、乳化重合法により重合されたものが好ましい。
【0038】
上記水性分散液は、樹脂(A)及び樹脂(B)を含む。また、上記水性分散液は、通常、水性媒体を含む。
【0039】
上記水性分散液を調製する方法としては、例えば、(i)上記樹脂(A)からなる粉末と上記樹脂(B)からなる粉末とを乾式混合(ドライブレンド)し、混合した粉末を水等の水性媒体に添加する方法、(ii)上記樹脂(A)又は上記樹脂(B)の一方の樹脂からなる水性分散液に、他方の樹脂からなる粉末を添加する方法、(iii)上記樹脂(A)からなる水性分散液と上記樹脂(B)からなる水性分散液とを混合する方法等が挙げられる。なかでも、充分に混合でき、均質で、機械的強度と電気特性に優れた含浸体が得られやすい点で、上記(ii)又は(iii)の方法が好ましく、(iii)の方法がより好ましい。本発明の含浸体の製造方法は、上記樹脂(A)からなる水性分散液と上記樹脂(B)からなる水性分散液とを混合する工程を含むことが好ましい。上記混合する工程は、水性分散液全質量に対して、樹脂(A)と樹脂(B)の合計が、40〜70質量%である水性分散液を得るものであることが好ましく、50〜65質量%である水性分散液を得るものであることがより好ましい。
【0040】
上記(iii)の方法としては特に限定されないが、上記樹脂(A)と上記樹脂(B)とが充分に混合され、均質な混合物を得やすい点で、上記樹脂(A)の平均粒径と上記樹脂(B)の平均粒径とは、互いにほぼ同じであることがより好ましい。
【0041】
上記水性分散液は、上記樹脂(B)の含有率が、樹脂(A)と樹脂(B)との合計の1〜60質量%であることが好ましい。上記含有率の好ましい下限は、5質量%、より好ましい下限は、10質量%であり、好ましい上限は50質量%、より好ましい上限は40質量%、更に好ましい上限は30質量%である。
上記含有率が60質量%を超える場合、得られる含浸体の誘電正接が大きくなるため電気特性が低下することがあり、上記含有率が1質量%未満である場合、得られる含浸体の硬度が低下するため機械的強度が低下することがある。
【0042】
上記水性媒体としては、水を単独で使用してもよいし、水とアルコール等の水溶性化合物と併用した水性混合媒体であってもよい。
【0043】
上記樹脂(A)及び樹脂(B)を含む水性分散液は、得られる含浸体の比誘電率を低くし、電気特性を向上させる点で、上記樹脂(A)及び上記樹脂(B)に加え、更に、発泡剤を含むものであってもよい。上記発泡剤としては、成形加工時に気泡を生じ得るものであれば特に限定されないが、例えば、カルボニルヒドラジド、アゾ系化合物、無機化合物等の分解性化合物が挙げられる。
【0044】
上記カルボニルヒドラジドとしては、4,4−ビスオキシベンゼンスルホニルヒドラジド等が挙げられる。上記アゾ系化合物としては、例えば、アゾジカルボン酸アミド、5−フェニルテトラゾール等が挙げられる。
上記無機化合物としては、窒化ホウ素、タルク、セリサイト、珪藻土、窒化ケイ素、ファインシリカ、アルミナ、ジルコニア、石英粉、カオリン、ベンゾナイト酸化チタン等が挙げられる。
【0045】
上記発泡剤は、上記樹脂(A)及び上記樹脂(B)の合計の0.1〜5質量%の量で添加することが好ましい。上記発泡剤の添加量は、使用する発泡剤の種類により異なるが、発泡率の点で、0.5質量%以上がより好ましく、誘電正接の点で、1質量%以下がより好ましい。
【0046】
上記水性分散液は、得られる含浸体の低誘電率化、高誘電率化、低損失化などの目的で、酸化金属粉やセラミック粉、ガラスビーズ、中空ガラスなどのフィラーを含有してもよい。
【0047】
本発明の含浸体の製造方法は、含浸した基布(樹脂(A)及び樹脂(B)を含む水性分散液を、基布に含浸して得られた基布)を樹脂(A)の一次融点未満、樹脂(B)の融点以上の温度で熱処理する工程を含む。
【0048】
上記熱処理は、樹脂(A)の一次融点未満、樹脂(B)の融点以上の温度で行う。ここで、上記熱処理の温度は、熱処理時の樹脂の温度(以下、「樹脂温度」ともいう。)を意味する。上記熱処理は、上記含浸した基布に対して行い、好ましくは、炉等の加熱装置の内部に上記含浸した基布を入れて行うが、上記加熱装置の設定温度は、一般に上記熱処理の温度よりも15〜20℃近く高い温度にする。例えば、上記含浸した基布が炉を約1分間で通過する場合には、熱処理の温度は、炉温度より約15〜20℃近く低い温度となる。上記熱処理時の樹脂の温度は、例えば、接触温度計を用いて測定することができる。また、熱処理時の樹脂の温度は、実質的に基布の温度と同じであり、上記基布の温度を測定することにより、樹脂の温度としてもよい。
【0049】
上記熱処理の温度は、エネルギー効率の点で、上記樹脂(B)の融点を大きく超えない温度が好ましく、用いる上記樹脂(B)の種類にもよるが、好ましい下限は、用いる上記樹脂(B)の融点よりも5℃高い温度、より好ましい下限は、用いる上記樹脂(B)の融点よりも10℃高い温度である。
上記熱処理の温度の好ましい上限は、樹脂温度が確実に上記樹脂(A)の一次融点未満であるように加熱装置の温度を設定する点で、用いる上記樹脂(B)の融点にもよるが、用いる上記樹脂(A)の一次融点よりも5℃低い温度であり、より好ましい上限は、用いる上記樹脂(A)の融点よりも10℃低い温度である。
【0050】
熱処理の時間は、樹脂(B)の種類や、熱処理の温度により適宜変更すればよいが、例えば、1〜15分であることが好ましい。
【0051】
本発明の含浸体の製造方法は、上記熱処理を上記特定の温度範囲において行うものであるので、得られる含浸体は、樹脂(A)が未焼成又は半焼成のままの状態であり、上記樹脂(B)が溶融されたのち固化してなるものである。このため、本発明の含浸体の製造方法は、比誘電率と誘電正接が低く、機械的強度に優れた含浸体を製造できる。本発明の製造方法により得られる含浸体は、基布、樹脂(A)及び樹脂(B)からなるものであり、該樹脂(A)は、樹脂(A)の一次融点以上に加熱した履歴のないものである。
【0052】
本発明の含浸体の製造方法は、樹脂(A)と、融点が100℃以上、322℃未満である樹脂(B)とを含む水性分散液を基布に含浸した後の基布を熱処理することからなるものであることが好ましい。上記樹脂(B)の融点を上記のように、幅広い範囲で設定することができるため、熱処理工程における熱処理の温度も幅広く設定することができる。そのため、熱処理温度・管理が容易で簡便である。
【0053】
本発明の製造方法により得られる含浸体は、上記樹脂(B)の含有率が、樹脂(A)と樹脂(B)との合計の1〜60質量%であることが好ましい。上記含有率の好ましい下限は、5質量%、より好ましい下限は、10質量%であり、好ましい上限は50質量%、より好ましい上限は40質量%、更に好ましい上限は30質量%である。上記含有率が60質量%を超える場合、誘電正接が大きくなるため電気特性が低下することがあり、上記含有率が1質量%未満である場合、得られる含浸体の硬度が低下するため機械的強度が低下することがある。
【0054】
本発明の製造方法により得られる含浸体は、該含浸体を構成する樹脂(A)が上述の最大ピーク温度〔T〕を有し未焼成又は半焼成のままの状態であるものであり、上記水性分散液を基布に含浸した後、上記樹脂(A)を一次融点以上の温度に熱処理せずに、樹脂(B)を溶融したのち固化させて得られるものである。
PTFE樹脂は、一般に、一次融点以上の温度に加熱することにより、比誘電率と誘電正接が高くなるので、熱処理により得られる含浸体は誘電体損が大きく、伝送速度が低下してしまう。一方、一次融点以上の温度に加熱することなく得た含浸体は、機械的強度に劣る。
本発明の製造方法で得られる含浸体は、上記樹脂(A)が未焼成又は半焼成の状態であるので、比誘電率と誘電正接は低く、電気特性に優れているのに加え、上記樹脂(B)は、上記樹脂(A)からなる粒子同士の間を埋める状態で固化しているので、機械的強度に優れる。
本発明の製造方法により得られる含浸体は、機械的強度に優れているので、形状安定性に優れ、比誘電率が変化しにくいことから、高周波信号伝送用製品に用いた際、伝送速度を安定に保つことができる。
【0055】
上記含浸体は、誘電正接のみならず比誘電率も低いものであるので、誘電体損が小さく、絶縁体として好適に用いることができ、低誘電体損と、安定した高伝送速度とが求められる高周波信号伝送用製品における絶縁体として特に好適に用いることができる。上記含浸体の比誘電率及び誘電正接は、例えば、後述する多層プリント配線板用積層板において、誘電率及び誘電正接を測定することにより、算出することができる。
【0056】
上記含浸体は、例えば、後述の多層プリント配線板用積層板等の絶縁体として用いる場合、伝送損失は、一般に、導体の電気絶縁抵抗によるものと、誘電体損(α)によるものとに分類される。
上記誘電体損は、下記一般式で表されるように比誘電率及び誘電正接の関数で表され、誘電正接に比例する。
【0057】
【数1】
【0058】
本発明の製造方法で得られる含浸体は、例えば後述の多層プリント配線板用積層板等の絶縁体として用いる場合、誘電体損が低く、低伝送損失を可能にしたものであり、絶縁体、特に多層プリント配線板用積層板等の高周波信号伝送用製品における絶縁体に好適である。
【0059】
上述の含浸体からなる高周波信号伝送用製品もまた、本発明の一つである。上記高周波信号伝送用製品としては、高周波信号の伝送に用いる製品であれば特に限定されず、高周波回路の絶縁板、接続部品の絶縁物、プリント配線基板等の成形板が挙げられる。また、アンテナ素子、分岐回路等に用いる絶縁体としても使用可能である。上記高周波信号伝送用製品において、上記含浸体は、比誘電率と誘電正接が低い点で、絶縁体として好適に用いることができる。
【0060】
本発明の第一の多層プリント配線板用積層板の製造方法は、上記含浸体の製造方法における工程を経て製造された含浸体と金属箔とを重ねた後、樹脂(A)の一次融点未満、150℃以上で加圧成形する工程、を含む。
【0061】
上記第一の多層プリント配線板用積層板の製造方法により得られる多層プリント配線板用積層板は、上記樹脂(A)が未焼成又は半焼成であるため、誘電正接及び比誘電率を低くすることができる。また、上記含浸体が機械的強度に優れるものであるため、上記製造方法により得られる多層プリント配線板用積層板も機械的強度に優れる。
【0062】
上記第一の多層プリント配線板用積層板の製造方法は、加圧成形する工程の前に、2以上の上記含浸体を重ねる工程、若しくは、1又は2以上の上記含浸体と1又は2以上の他の絶縁体とを重ねる工程、を含むものであってもよい。他の絶縁体としては、特に限定されないが、ガラスクロス等の基布にフッ素樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂等を含浸したものが挙げられる。
【0063】
上記第一の多層プリント配線板用積層板の製造方法において、上記加圧成形は、樹脂(A)の一次融点未満、150℃以上で行う。このような温度範囲に加圧成形の温度を設定することにより、上記含浸体が有する未焼成又は半焼成である樹脂(A)を、未焼成又は半焼成のままの状態で維持することができる。これにより、得られる多層プリント配線板用積層板の電気特性及び機械的強度を優れたものとすることができる。上記加圧成形の温度は、上記樹脂(A)の一次融点よりも5℃以上低い温度であることが好ましく、上記樹脂(A)の一次融点よりも10℃以上低い温度であることがより好ましい。
【0064】
また、上記加圧成形の温度は、樹脂(B)の融点以上の温度であることが好ましい。上記加圧成形の温度は、上記樹脂(B)の融点よりも5℃以上高い温度であることがより好ましく、上記樹脂(B)の融点よりも10℃以上高い温度であることが更に好ましい。上記温度範囲に設定することにより、上記金属箔と基布との接着を強固なものとすることができる。
【0065】
加圧成形の圧力は、0.1〜50MPaであることが好ましく、より好ましくは、5〜20MPaである。加圧成形する時間は、例えば、1〜90分である。
【0066】
上記第一の多層プリント配線板用積層板の製造方法は、上記加圧成形する工程の後、金属箔をエッチングして、パターン回路を形成する工程を含むものであってもよい。
【0067】
上記金属箔としては、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、亜鉛、又はこれらの合金からなる金属箔が例示され、好ましくは銅箔である。また、接着力の向上を目的として、サイディング、ニッケルメッキ、銅−亜鉛合金メッキ、またはアルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート、シランカップリング剤などによって、化学的あるいは機械的な表面処理を施してもよい。
【0068】
本発明の第二の多層プリント配線板用積層板の製造方法は、上記含浸体の製造方法における工程を経て製造された含浸体と接着剤層と金属箔とを重ねた後、樹脂(A)の一次融点未満、150℃以上で加圧成形する工程、を含む。
上記第二の多層プリント配線板用積層板の製造方法により得られる多層プリント配線板用積層板は、上記樹脂(A)が未焼成又は半焼成であるため、誘電正接及び比誘電率が低く、更に、機械的強度に優れる。第二の多層プリント配線板用積層板の製造方法において、上記接着剤層は、上記含浸体と金属箔とを接着させるものである。
【0069】
上記含浸体と接着剤層と金属箔とを重ねる方法としては、含浸体の片面又は両面に接着剤層を形成した後、金属箔を接着剤層上に重ねてもよいし、金属箔の片面に接着剤層を形成した後、接着剤層が含浸体と接触するように、含浸体の片面又は両面に接着剤層が形成された金属箔を重ねてもよい。接着剤層は、樹脂からなる組成物を塗布することにより形成してもよいし、樹脂フィルムを重ねることにより形成してもよい。
【0070】
金属箔の片面に接着剤層を形成する場合、例えば、金属箔と樹脂フィルムと離型シート(例えば、ポリアミドイミドからなるシート、ポリイミドからなるシート等)とを、あらかじめ320℃程度の加熱圧着等により接着させた後、離型シートを除去し、接着剤層と上記含浸体とを重ね合わせてもよい。
【0071】
上記第二の多層プリント配線板用積層板の製造方法は、加圧成形する工程の前に、2以上の上記含浸体を重ねる工程、又は、1又は2以上の上記含浸体と1又は2以上の他の絶縁体とを重ねる工程、を含むものであってもよい。他の絶縁体としては、特に限定されないが、ガラスクロス等の基布に、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂等を含浸したものが挙げられる。
【0072】
上記接着剤層は、樹脂からなるものであることが好ましい。接着剤層を構成する樹脂としては、例えば、PFA樹脂、FEP樹脂、ETFE樹脂、エポキシ樹脂、硬化性官能基を有する含フッ素樹脂、溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂等が挙げられる。PFA樹脂、FEP樹脂は上記と同じである。エポキシ樹脂、硬化性官能基を有する含フッ素樹脂、溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂の詳細は、後述する。
【0073】
上記樹脂フィルムとしては、PFA樹脂、FEP樹脂、ETFE樹脂、エポキシ樹脂、硬化性官能基を有する含フッ素樹脂、及び、溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂からなる樹脂フィルムが好ましい。上記樹脂フィルムとしては、PFA樹脂からなるフィルム及びFEP樹脂からなるフィルムからなる群より選択される少なくとも1種のフィルムがより好ましく、更に好ましくは、PFA樹脂からなるフィルムである。
【0074】
上記接着剤層は、樹脂からなる組成物を塗布した後、乾燥することによっても形成することができる。樹脂からなる組成物は、通常、該樹脂を分散又は溶解することが可能な媒体を含む。
【0075】
上記樹脂からなる組成物は、官能基を有する樹脂からなる組成物であることが好ましい。官能基を有する樹脂としては、例えば、後述するエポキシ樹脂、硬化性官能基を有する含フッ素樹脂、ETFE樹脂、溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂等が挙げられる。
【0076】
上記樹脂からなる組成物は、エポキシ樹脂と硬化性官能基を有する含フッ素樹脂とからなるものであることも好ましい形態の一つである。これにより、熱処理して得られた基布と金属箔とが強固に接着する。また、上記樹脂からなる組成物から形成された接着剤層は絶縁性にも優れているので、得られる多層プリント配線板用積層板は優れた電気特性を示す。上記多層プリント配線基板としては特に限定されないが、例えば、携帯電話、各種コンピューター、通信機器等の電子回路のプリント配線基板が挙げられる。
【0077】
上記樹脂からなる組成物を塗布する方法としては、刷毛塗り、浸漬塗布、スプレー塗布、コンマコート、ナイフコート、ダイコート、リップコート、ロールコーター塗布、カーテン塗布等の方法が挙げられる。上記樹脂からなる組成物を塗布した後、熱風乾燥炉等により25〜200℃で1分〜1週間乾燥し、硬化させることが好ましい。
【0078】
本発明の第二の多層プリント配線板用積層板の製造方法は、上記含浸体と接着剤層と金属箔とを重ねた後、樹脂(A)の一次融点未満、150℃以上で加圧成形する工程、を含む。加圧成形の温度を上記範囲に設定することにより、上記含浸体が有する未焼成又は半焼成である樹脂(A)を、未焼成又は半焼成のままの状態で維持することができる。また、得られる多層プリント配線板用積層板の電気特性及び機械的強度を優れたものとすることができる。
【0079】
上記加圧成形の温度、圧力、時間の好ましい範囲は、上記第一の多層プリント配線板用積層板の製造方法と同じである。このような温度、圧力の範囲に加圧成形の温度を設定することにより、得られる多層プリント配線板用積層板の電気特性及び機械的強度をより優れたものとすることができる。
【0080】
また、接着剤層が樹脂からなるものである場合、上記加圧成形の温度は、接着剤層を構成する樹脂の融点以上であることも好ましい。上記加圧成形の温度は、接着剤層を構成する樹脂の融点よりも5℃以上高い温度であることがより好ましく、接着剤層を構成する樹脂の融点よりも10℃以上高い温度であることが更に好ましい。
【0081】
上記接着剤層は、低誘電率化、高誘電率化、低損失化などの目的で、酸化金属粉やセラミック粉、ガラスビーズ、中空ガラスなどのフィラーを含有してもよい。
【0082】
金属箔としては、上記第一の多層プリント配線板用積層板の製造方法で例示したものと同じである。また、第二の多層プリント配線板用積層板の製造方法は、金属箔をエッチングして、パターン回路を形成する工程を含むものであってもよい。
【0083】
本発明の第三の多層プリント配線板用積層板の製造方法は、以下に示す樹脂(A)及び樹脂(B)を含む水性分散液を基布に含浸する工程、及び、含浸した基布と金属箔とを重ねた後、樹脂(A)の一次融点未満、樹脂(B)の融点以上の温度で加圧成形する工程、を含む。
樹脂(A):380℃での溶融粘度が50万Pa・s以上のポリテトラフルオロエチレン樹脂
樹脂(B):樹脂(A)の一次融点未満の融点を有する熱可塑性樹脂、又は、380℃での溶融粘度が50万Pa・s未満のポリテトラフルオロエチレン樹脂
【0084】
上記第三の多層プリント配線板用積層板の製造方法により得られる多層プリント配線板用積層板は、上記樹脂(A)が未焼成又は半焼成であるため、誘電正接及び比誘電率を低くすることができる。また、上記製造方法により得られる多層プリント配線板用積層板は機械的強度にも優れる。樹脂(A)及び樹脂(B)は、上記含浸体の製造方法と同じである。また、樹脂(A)及び樹脂(B)を含む水性分散液を基布に含浸する工程は、上記含浸体の製造方法と同じである。
【0085】
上記第三の多層プリント配線板用積層板の製造方法は、含浸した基布と金属箔とを重ね合わせる工程の前に、2以上の上記含浸した基布を重ねる工程、又は、1又は2以上の上記含浸した基布と1又は2以上の他の絶縁体とを重ねる工程、を含むものであってもよい。他の絶縁体としては、上記と同じものが挙げられる。
【0086】
上記第三の多層プリント配線板用積層板の製造方法は、上記含浸した基布と金属箔とを重ねた後、樹脂(A)の一次融点未満、樹脂(B)の融点以上の温度で加圧成形する工程を含む。
【0087】
上記第三の多層プリント配線板用積層板の製造方法において、上記加圧成形は、樹脂(A)の一次融点未満、樹脂(B)の融点以上の温度で行う。加圧成形の温度の好ましい範囲は、上記熱処理の温度と同じである。加圧成形の圧力、時間の好ましい範囲は、上記第一の多層プリント配線板用積層板の製造方法と同じである。
【0088】
上記第三の多層プリント配線板用積層板の製造方法は、上記加圧成形する工程の後、金属箔をエッチングして、パターン回路を形成する工程を含むものであってもよい。
【0089】
本発明の第四の多層プリント配線板用積層板の製造方法は、以下に示す樹脂(A)及び樹脂(B)を含む水性分散液を基布に含浸する工程、及び、含浸した基布と接着剤層と金属箔とを重ねた後、樹脂(A)の一次融点未満、樹脂(B)の融点以上の温度で加圧成形する工程、を含む。
樹脂(A):380℃での溶融粘度が50万Pa・s以上のポリテトラフルオロエチレン樹脂
樹脂(B):樹脂(A)の一次融点未満の融点を有する熱可塑性樹脂、又は、380℃での溶融粘度が50万Pa・s未満のポリテトラフルオロエチレン樹脂
【0090】
上記第四の多層プリント配線板用積層板の製造方法により得られる多層プリント配線板用積層板は、上記樹脂(A)が未焼成又は半焼成であるため、誘電正接及び比誘電率を低くすることができる。また、上記製造方法により得られる多層プリント配線板用積層板は機械的強度にも優れる。
【0091】
上記第四の多層プリント配線板用積層板の製造方法は、含浸した基布と接着剤層と金属箔とを重ね合わせる工程の前に、2以上の上記含浸した基布を重ねる工程、又は、1又は2以上の上記含浸した基布と1又は2以上の他の絶縁体とを重ねる工程、を含むものであってもよい。他の絶縁体としては、上記と同じものが挙げられる。
【0092】
樹脂(A)及び樹脂(B)は、上記含浸体の製造方法と同じである。また、樹脂(A)及び樹脂(B)を含む水性分散液を基布に含浸する工程は、上記含浸体の製造方法と同じである。
【0093】
上記含浸した基布と接着剤層と金属箔とを重ねる方法としては、含浸した基布の片面又は両面に接着剤層を形成した後、金属箔を接着剤層上に重ねてもよいし、金属箔の片面に接着剤層を形成した後、接着剤層と含浸した基布とが接触するように、含浸した基布の片面又は両面に接着剤層が形成された金属箔を重ねてもよい。接着剤層は、樹脂からなる組成物を塗布することにより形成してもよいし、樹脂フィルムを重ねることにより形成してもよい。第四の多層プリント配線板用積層板の製造方法において、上記接着剤層は、上記含浸した基布と金属箔とを接着させるものである。
【0094】
金属箔の片面に接着剤層を形成する場合、例えば、金属箔と樹脂フィルムと離型シート(例えば、ポリアミドイミドからなるシート、ポリイミドからなるシート等)とを、あらかじめ320℃程度の加熱圧着等により接着させた後、離型シートを除去し、接着剤層と上記含浸した基布とを重ね合わせてもよい。
【0095】
上記第四の多層プリント配線板用積層板の製造方法において、上記樹脂フィルムは、上記第二の多層プリント配線板用積層板の製造方法において例示したものと同じものが挙げられる。
【0096】
上記第四の多層プリント配線板用積層板の製造方法において、上記樹脂からなる組成物、及び、組成物を塗布する方法としては、本発明の第二の多層プリント配線板用積層板の製造方法において例示したものと同じである。
【0097】
上記第四の多層プリント配線板用積層板の製造方法は、含浸した基布と接着剤層と金属箔とを重ねた後、樹脂(A)の一次融点未満、樹脂(B)の融点以上の温度で加圧成形する工程を含む。
【0098】
上記第四の多層プリント配線板用積層板の製造方法において、上記加圧成形は、樹脂(A)の融点未満、樹脂(B)の融点以上の温度で行う。加圧成形の温度の好ましい範囲は、上記含浸体の製造方法における熱処理の温度と同じである。加圧成形の圧力、時間の好ましい範囲は、上記第一の多層プリント配線板用積層板の製造方法と同じである。
【0099】
上記第四の多層プリント配線板用積層板の製造方法は、金属箔をエッチングして、パターン回路を形成する工程を含むものであってもよい。
【0100】
本発明の第一、第二、第三又は第四の製造方法で得られる多層プリント配線板用積層板は、tanδで表される誘電正接が10×10−4以下であることが好ましい。上記誘電正接の好ましい上限は、7×10−4であり、より好ましい上限は、3×10−4である。上記誘電正接は、上記範囲内であれば、例えば、下限が0.15×10−4であってもよく、通常、下限が0.2×10−4であってもよい。
【0101】
本発明の第一、第二、第三又は第四の製造方法で得られる多層プリント配線板用積層板の比誘電率(ε)は、特に限定されないが、通常、2.7〜4.0である。上記比誘電率は、下限が3.0であってもよく、好ましい上限は3.5である。
未焼成及び半焼成PTFEは、通常、密度が約1.7、比誘電率が約1.7と低い。従って、未焼成PTFE及び/又は半焼成PTFEを有する含浸体からなる多層プリント配線板用積層板は、比誘電率が低いものとなる。
【0102】
本明細書において、上記誘電正接及び上記比誘電率は、それぞれネットワークアナライザーを用いて、共振周波数及び電界強度の変化を20〜25℃の温度下で測定し、12GHzにおける値を算出して得られるものである。
【0103】
以下に、上述した接着剤層に用いることができる、エポキシ樹脂、硬化性官能基を有する含フッ素樹脂、及び、エポキシ樹脂と硬化性官能基を有する含フッ素樹脂とからなる組成物について説明する。
上記エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールAなどに基づくエビビス型化合物のエピコート828(シェル化学社製)、アルキル変性型のEPICLON800、EPICLON4050、EPICLON1121N(DIC社製)、ショーダイン(昭和電工社製)、アラルダイトCY−183(チバガイギー社製)などのグリシジルエステル系化合物、ノボラック型のエピコート154(シェル化学社製)、DEN431、DEN438(ダウケミカル社製)、クレゾールノボラック型のECN1280、ECN1235(チバガイギー社製)、ウレタン変性型EPU−6、EPU−10(地竜化工業社製)などが挙げられる。
【0104】
上述したエポキシ樹脂の他にも、各種の接着性樹脂が使用可能であり、条件を適宜選択すれば、あらゆる種類の接着性樹脂を用いることができる。
【0105】
上記含フッ素樹脂には明確な融点を有する樹脂性のポリマー、ゴム弾性を示すエラストマー性のポリマー、その中間の熱可塑性エラストマー性のポリマーが含まれる。
【0106】
硬化性官能基を有する含フッ素樹脂において、硬化性官能基は、ポリマーの製造の容易さや硬化系に併せて適宜選択されるが、たとえば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、グリシジル基、シリル基、シラネート基、及びイソシアネート基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基が好ましい。なかでも、硬化反応性が良好な点から水酸基、シアノ基、及びシリル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基がより好ましく、ポリマーの入手が容易な点や反応性が良好な点から、水酸基が特に好ましい。これらの硬化性官能基は、通常、硬化性官能基を有する単量体を共重合することにより含フッ素樹脂に導入される。
【0107】
硬化性官能基を有する単量体としては、たとえば、水酸基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、アミノ基含有単量体、及びシリコーン系ビニル単量体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、より好ましくは、水酸基含有単量体である。
【0108】
(1−1)水酸基含有単量体:
水酸基含有単量体としては、カルボキシル基を含まない水酸基含有ビニルモノマーであることが好ましく、水酸基含有ビニルエーテル及び水酸基含有アリルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、水酸基含有ビニルエーテルであることが更に好ましい。
【0109】
水酸基含有ビニルエーテルとしては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、及び6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらのなかでも、特に4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、及び2−ヒドロキシエチルビニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種が、重合反応性及び官能基の硬化性が優れる点で好ましい。
【0110】
水酸基含有アリルエーテルとしては、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、及びグリセロールモノアリルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0111】
水酸基含有ビニルモノマーとしてはまた、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルなどが例示できる。
【0112】
(1−2)カルボキシル基含有単量体:
カルボキシル基含有単量体としては、たとえば式(I):
【0113】
【化1】
(式中、R、R及びRは同じかまたは異なり、いずれも水素原子、アルキル基、カルボキシル基またはエステル基;nは0または1である)で表される不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、そのモノエステルまたは酸無水物などの不飽和カルボン酸類;または式(II):
【0114】
【化2】
(式中、R及びRは同じかまたは異なり、いずれも飽和または不飽和の直鎖または環状アルキル基;nは0または1;mは0または1である)で表わされるカルボキシル基含有ビニルエーテル単量体などがあげられる。
【0115】
式(I)の不飽和カルボン酸類の具体例としては、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、桂皮酸、3−アリルオキシプロピオン酸、3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸無水物、フマル酸、フマル酸モノエステル、フタル酸ビニル、ピロメリット酸ビニルなどがあげられる。それらのなかでも単独重合性の低いクロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、及び3−アリルオキシプロピオン酸からなる群より選択される少なくとも1種が、単独重合性が低く単独重合体ができにくいことから好ましい。
【0116】
式(II)のカルボキシル基含有ビニルエーテル単量体の具体例としては、たとえば3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−アリロキシブトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−ビニロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−ビニロキシブトキシカルボニル)プロピオン酸などの1種または2種以上があげられる。これらの中でも3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸などが、単量体の安定性や重合反応性がよい点で有利であり、好ましい。
【0117】
(1−3)アミノ基含有単量体:
アミノ基含有単量体としては、たとえばCH=CH−O−(CH−NH(x=0〜10)で示されるアミノビニルエーテル類;CH=CH−O−CO(CH−NH(x=1〜10)で示されるアリルアミン類;そのほかアミノメチルスチレン、ビニルアミン、アクリルアミド、ビニルアセトアミド、ビニルホルムアミドなどがあげられる。
【0118】
(1−4)シリコーン系ビニル単量体:
シリコーン系ビニル単量体としては、たとえばCH=CHCO(CHSi(OCH、CH=CHCO(CHSi(OC、CH=C(CH)CO(CHSi(OCH、CH=C(CH)CO(CHSi(OC、CH=CHCO(CHSiCH(OC、CH=C(CH)CO(CHSiC(OCH、CH=C(CH)CO(CHSi(CH(OC)、CH=C(CH)CO(CHSi(CHOH、CH=CH(CHSi(OCOCH、CH=C(CH)CO(CHSiC(OCOCH、CH=C(CH)CO(CHSiCH(N(CH)COCH、CH=CHCO(CHSiCH〔ON(CH)C、CH=C(CH)CO(CHSiC〔ON(CH)Cなどの(メタ)アクリル酸エステル類;CH=CHSi[ON=C(CH)(C)]、CH=CHSi(OCH、CH=CHSi(OC、CH=CHSiCH(OCH、CH=CHSi(OCOCH、CH=CHSi(CH(OC)、CH=CHSi(CHSiCH(OCH、CH=CHSiC(OCOCH、CH=CHSiCH〔ON(CH)C、ビニルトリクロロシランまたはこれらの部分加水分解物などのビニルシラン類;トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルブチルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテルなどのビニルエーテル類などが例示される。
【0119】
硬化性官能基を有する単量体に基づく重合単位は、硬化性官能基を有する含フッ素樹脂を構成する全重合単位の8〜30モル%であることが好ましい。より好ましい下限は10モル%であり、より好ましい上限は20モル%である。
【0120】
硬化性官能基を有する含フッ素樹脂は、含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位を有することが好ましい。
【0121】
含フッ素ビニルモノマーとしては、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、フッ化ビニル、へキサフルオロプロピレン及びパーフルオロアルキルビニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、低誘電率、低誘電正接、分散性、耐湿性、耐熱性、難燃性、接着性、共重合性及び耐薬品性等に優れている点で、TFE、CTFE及びフッ化ビニリデンからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、低誘電率、低誘電正接及び耐候性に優れ、防湿性にも優れている点で、TFE及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種であることが更に好ましく、TFEが特に好ましい。
【0122】
含フッ素ビニルモノマーに基づく繰り返し単位は、硬化性官能基を有する含フッ素樹脂を構成する全単量体単位の20〜49モル%であることが好ましい。より好ましい下限は30モル%であり、更に好ましい下限は40モル%である。より好ましい上限は47モル%である。
【0123】
硬化性官能基を有する含フッ素樹脂は、カルボン酸ビニルエステル、アルキルビニルエーテル及び非フッ素化オレフィンからなる群より選択される少なくとも1種のビニルモノマー(但し、フッ素原子を有するものを除く)に基づく繰り返し単位を含むことが好ましい。カルボン酸ビニルエステルは、相溶性を改善する作用を有する。カルボン酸ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ−t−ブチル安息香酸ビニル等が挙げられる。アルキルビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。非フッ素化オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、n−ブテン、インブテン等が挙げられる。
【0124】
上記ビニルモノマー(但し、フッ素原子を有するものを除く)に基づく繰り返し単位は、硬化性官能基を有する含フッ素樹脂を構成する全単量体単位のうち、水酸基含有ビニルモノマーに基づく繰り返し単位及び含フッ素ビニルモノマーに基づく繰り返し単位が占める単量体単位以外の全単量体単位を構成することが好ましい。
【0125】
硬化性官能基が導入される含フッ素樹脂としては、構成単位の観点から、たとえば次のものが例示できる。
【0126】
硬化性官能基を有する含フッ素樹脂としては、例えば、パーフルオロオレフィン単位を主体とするパーフルオロオレフィン系ポリマー、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)単位を主体とするCTFE系ポリマー、ビニリデンフルオライド(VdF)単位を主体とするVdF系ポリマー、フルオロアルキル単位を主体とするフルオロアルキル基含有ポリマー等が挙げられる。
【0127】
(1)パーフルオロオレフィン単位を主体とするパーフルオロオレフィン系ポリマー
具体例としては、テトラフルオロエチレン(TFE)の単独重合体、またはTFEとヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)などとの共重合体、さらにはこれらと共重合可能な他の単量体との共重合体などがあげられる。
【0128】
上記共重合可能な他の単量体としては、たとえば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ−t−ブチル安息香酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類;エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテンなど非フッ素系オレフィン類;ビニリデンフルオライド(VdF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ビニルフルオライド(VF)、フルオロビニルエーテルなどのフッ素系単量体などがあげられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0129】
これらのうち、TFEを主体とするTFE系ポリマーが、耐候性、共重合性、耐薬品性に優れている点で好ましい。
【0130】
具体的な硬化性官能基を有する含フッ素樹脂としては、たとえばTFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/VdF/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体などがあげられ、特に、TFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、及び、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が好ましい。
【0131】
(2)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)単位を主体とするCTFE系ポリマー
具体例としては、たとえばCTFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体などがあげられる。
【0132】
(3)ビニリデンフルオライド(VdF)単位を主体とするVdF系ポリマー
具体例としては、たとえばVdF/TFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体などがあげられる。
【0133】
(4)フルオロアルキル単位を主体とするフルオロアルキル基含有ポリマー
具体例としては、たとえばCFCF(CFCFCHCHOCOCH=CH(n=3と4の混合物)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ステアリルアクリレート共重合体などがあげられる。
【0134】
これらのうち、耐候性、防湿性を考慮すると、パーフルオロオレフィン系ポリマーが好ましい。
【0135】
上記接着剤層において、硬化性官能基を有する含フッ素樹脂とエポキシ樹脂との質量比は、5:95〜90:10であることが好ましく、10:90〜70:30であることがより好ましい。水酸基含有含フッ素樹脂が多すぎると接着性低下のおそれがあり、エポキシ樹脂が多すぎると絶縁性、耐湿性、耐熱性、難燃性の低下のおそれがある。
【0136】
上記接着剤層を形成するための組成物は、硬化性官能基を有する含フッ素樹脂及びエポキシ樹脂以外に、硬化剤等を含むものであってもよい。
【0137】
上記接着剤層を形成するための組成物は、硬化剤を含むことが好ましい、硬化剤としては、インシアネート、メラミン樹脂、及び、フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0138】
インシアネートとしては、たとえばブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリイソシアナトノナンなどの脂肪族インシアネート;シクロヘキシルイソシアネート、インホロンジイソシアネート(IPDI)などの脂環式インシアネート;トリレンジインシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)などの芳香族インシアネートなどがあり、耐候性の点から脂肪族及び脂環式イソシアネートが好ましい。
【0139】
メラミン樹脂としては、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロールメラミン誘導体に低級アルコールとしてメチルアルコール、エチルアルコール、インプロピルアルコール、ブチルアルコール、インブチルアルコールなどを反応させてエーテル化した化合物及びそれらの混合物を好ましくあげることができる。
【0140】
メチロールメラミン誘導体としては、たとえばモノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンなどをあげることができる。
【0141】
メラミン樹脂の分類として、アルコキシ化される割合によって、完全アルキル型、メチロール基型、イミノ基型、メチロール/イミノ基型に分けられるが、いずれも本発明に使用できる。
【0142】
フェノール樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂があげられる。
【0143】
また、上記組成物は、要求特性に応じて各種の添加剤を含むものであってもよい。添加剤としては、硬化促進剤、顔料分散剤、消泡剤、レベリング剤、UV吸収剤、光安定剤、増粘剤、密着改良剤、つや消し剤などがあげられる。
【0144】
硬化促進剤としては、従来公知のスズ系、他の金属系、有機酸系、アミノ系、リン系の硬化促進剤が使用できる。
【0145】
上記接着剤層を形成するための組成物は、有機溶剤を含むことが好ましい。有機溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;プロピレングリコールメチルエーテルなどのアルコール類;ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素類;これらの混合溶媒などがあげられる。
【0146】
上記接着剤層を形成するための組成物は、固形分濃度が、エポキシ樹脂及び硬化性官能基を有する含フッ素樹脂の合計で10〜80質量%であることが好ましい。固形分濃度がこの範囲であれば、組成物の粘度が適当であり、塗装して均一な塗膜を形成できる。
【0147】
以下に、上述した接着剤層に用いることができる、溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂について説明する。
溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂は、カルボキシル基、カルボニル基、ヒドロキシル基、カルボン酸塩基、カルボキシエステル基、エポキシ基、及び、アミノ基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有することが好ましい。溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂が有する官能基としてより好ましくは、カルボキシ基、シアノ基、エポキシ基、及び、ヒドロキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の基であり、中でも、ヒドロキシル基が特に好ましい。上記溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂は、官能基を主鎖末端又は側鎖の何れかに有するものであってもよいし、主鎖末端及び側鎖の両方に有するものであってもよい。
【0148】
上記溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニル、及び、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種の含フッ素エチレン性単量体を重合することにより得られる含フッ素重合体からなるものが好ましい。
【0149】
上記溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂は、導体との接着性を向上させる観点から、カルボキシル基、カルボニル基、ヒドロキシル基、カルボン酸塩基、カルボキシエステル基、エポキシ基、及び、アミノ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する官能基含有含フッ素エチレン性単量体と、上記の官能基を有さない含フッ素エチレン性単量体とを共重合して得られる官能基含有含フッ素エチレン性重合体からなるものが好ましい。官能基含有含フッ素エチレン性単量体が有する官能基としては、カルボキシル基、シアノ基、エポキシ基、及び、ヒドロキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基が好ましく、中でも、ヒドロキシル基が好ましい。
【0150】
上記官能基含有含フッ素エチレン性単量体としては、例えば、国際公開第98/51495号パンフレットに記載のものが挙げられ、下記式:
CX=CX−R−CHOH
(X、Xは同じか又は異なり、水素原子又はフッ素原子であり、Rは炭素数1〜40の2価のアルキレン基、炭素数1〜40の含フッ素オキシアルキレン基、炭素数1〜40のエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基又は炭素数1〜40のエーテル結合を含む含フッ素オキシアルキレン基を表わす。)で示される単量体が好ましい。
【0151】
上記官能基含有含フッ素エチレン性単量体は、重合体中の単量体全量の0.05〜30モル%であることが好ましい。
【0152】
上記官能基を有さない含フッ素エチレン性単量体は、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニル、及び、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)よりなる群から選択される少なくとも1種の含フッ素エチレン性単量体であることが好ましい。
【0153】
上記溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂は、官能基含有含フッ素エチレン性単量体/テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、官能基含有含フッ素エチレン性単量体/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、官能基含有含フッ素エチレン性単量体/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、官能基含有含フッ素エチレン性単量体/クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、官能基含有含フッ素エチレン性単量体/エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、官能基含有含フッ素エチレン性単量体/エチレン/テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、官能基含有含フッ素エチレン性単量体/ビニリデンフルオライド/テトラフルオロエチレン共重合体、及び、官能基含有含フッ素エチレン性単量体/ビニリデンフルオライド/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種の重合体からなるものであることが好ましい。
【0154】
上記溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂は、パーフルオロ重合体からなるものであってもよいし、非パーフルオロ重合体からなるものであってもよい。上記溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂は、パーフルオロ重合体からなるものであることが好ましく、官能基含有含フッ素エチレン性単量体/テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなるものも好ましい。テトラフルオロエチレン単位70〜99モル%とPAVE単位1〜30モル%からなる共重合体であることが好ましく、テトラフルオロエチレン単位80〜97モル%とPAVE単位3〜20モル%からなる共重合体であることがより好ましい。テトラフルオロエチレン単位が70モル%未満では機械物性が低下する傾向があり、99モル%をこえると融点が高くなりすぎ成形性が低下する傾向がある。なお、本明細書中で、「パーフルオロ重合体」は、主鎖を構成する炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子で置換されている重合体であればよく、例えば、上記溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂が有する官能基には水素原子が含まれていてもよい。
【0155】
上記溶融加工可能な官能基含有フッ素樹脂は、融点が280〜310℃であることが好ましい。より好ましくは、285〜300℃である。上記融点は、DSC装置を用い、10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線から求めることができる。
【発明の効果】
【0156】
本発明の含浸体の製造方法は、上記構成を有することによって、誘電正接及び比誘電率が低く、また、機械的強度に優れた含浸体を製造することができる。また、上記含浸体を熱処理温度・管理が容易で簡便な方法により製造することができる。本発明の多層プリント配線板用積層板の製造方法は、上記構成を有することによって、誘電体損が低く、機械的強度と形状安定性に優れ、高周波伝送速度が速く、安定している多層プリント配線板を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0157】
本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例によって限定されるものではない。
【0158】
各実施例及び各比較例において、以下の方法を用いて評価した。評価結果は下記表1に示す。
(1)樹脂温度:接触温度計により求めた。
(2)融点温度:示差走査熱量計(RDC220;セイコー電子社製)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で吸熱ピークを測定することにより算出した。
なお、PTFEの一次融点は、PTFE水性分散体を加熱して、融点測定用のPTFE粉末を得た後、得られたPTFE粉末を用いて、250〜360℃の温度範囲、昇温速度10℃/分の条件で示差走査熱量計による結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度を一次融点とした。
PTFEの二次融点は、一次融点を測定した後のPTFE粉末を用いて、250〜360℃の温度範囲、昇温速度10℃/分の条件で示差走査熱量計による結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度を二次融点とした。
(3)硬度(ショアA):各実施例及び比較例で得られた積層板を測定サンプルとして用い、JIS K 6253に準拠して、タイプAのデュロメータにより測定した。
【0159】
実施例1
PTFE水性分散体(ダイキン工業株式会社製、商品名:ポリフロンPTFE D−610C、PTFEの380℃での溶融粘度:120万Pa・s)とFEP水性分散体(ダイキン工業株式会社製、商品名:ネオフロンFEP ND−110)を樹脂重量比率がPTFE:FEP=9:1となるように混合し、ガラス布(日東紡績株式会社製 WE05E)に含浸させた後、乾燥炉にて100℃で水分を乾燥させ、その後280℃で熱処理して厚み0.06mmの樹脂含浸基材を作った。
【0160】
この樹脂含浸基材を5枚重ねて、両面にPFAからなる25μm厚みのフィルムを1枚ずつ重ねて、さらに両面外側に銅箔(厚み0.018μm)を2枚重ねて310℃、2MPa、30分間の条件で加圧成形して積層板を作成した。
【0161】
この積層板の比誘電率、tanδを12GHzにおいて空洞共振器法で測定したところ、比誘電率 3.02、tanδ 0.0003であった。
【0162】
実施例2
PTFE水性分散体(ダイキン工業株式会社製、商品名:ポリフロンPTFE D−610C、PTFEの380℃での溶融粘度:120万Pa・s)とPFA水性分散体(ダイキン工業株式会社製、商品名:ネオフロンPFA AD−2CRE)を樹脂重量比率がPTFE:PFA=9:1となるように混合し、ガラス布(日東紡績株式会社製WE05E)に含浸させた後、乾燥炉にて100℃で水分を乾燥させ、その後280℃(PFAの融点以上の温度、PTFEの一次融点(338℃)未満の温度)で熱処理して厚み0.06mmの樹脂含浸基材を作った。
【0163】
この樹脂含浸基材を5枚重ねて、両面にPFAからなる25μm厚みのフィルムを1枚ずつ重ねて、さらに両面外側に銅箔(厚み0.018μm)を2枚重ねて320℃(FEPの融点以上の温度、PTFEの融点未満の温度)、2MPa、30分間の条件で加圧成形して積層板を作成した。この積層板の比誘電率、tanδを12GHzにおいて空洞共振器法で測定したところ、比誘電率 3.02、tanδ 0.0004であった。
【0164】
実施例3
PTFE水性分散体(ダイキン工業株式会社製、商品名:ポリフロンPTFE D−610C、PTFEの380℃での溶融粘度:120万Pa・s)とPE水性分散体(BYK社製、商品名:AQUACER 507)を樹脂重量比率がPTFE:PE=9:1となるように混合し、ガラス布(日東紡績株式会社製、WE05E)に含浸させた後、乾燥炉にて100℃で水分を乾燥させ、厚み0.06mmの樹脂含浸基材を作った。
この含浸基材を5枚重ねて、両面にPEからなる25μm厚みのフィルムを1枚ずつ重ねて、さらに両面外側に銅箔(厚み0.018μm)を2枚重ねて150℃(PEの融点以上の温度、PTFEの一次融点(338℃)未満の温度)、2MPa、30分間の条件で加圧成形して積層板を作成した。
この積層板の比誘電率、tanδを12GHzにおいて空洞共振器法で測定したところ、比誘電率 3.09、tanδ 0.0004であった。
【0165】
実施例4
PTFE水性分散体(ダイキン工業株式会社製、商品名:ポリフロンPTFE D−610C、PTFEの380℃での溶融粘度:120万Pa・s)とFEP水性分散体(ダイキン工業株式会社製、商品名:ネオフロンFEP ND−110)を樹脂重量比率がPTFE:FEP=95:5となるように混合し、ガラス布(日東紡績株式会社製、WE05E)に含浸させた後、乾燥炉にて100℃で水分を乾燥させ、その後280℃で熱処理して厚み0.06mmの樹脂含浸基材を作った。
【0166】
この含浸基材を5枚重ねて、両面にPFAからなる25μm厚みのフィルムを1枚ずつ重ねて、さらに両面外側に銅箔(厚み0.018μm)を2枚重ねて310℃(FEPの融点以上の温度、PTFEの一次融点(338℃)未満の温度)、2MPa、30分間の条件で加圧成形して積層板を作成した。この積層板の比誘電率、tanδを12GHzにおいて空洞共振器法で測定したところ、比誘電率 3.01、tanδ 0.00025であった。
【0167】
実施例5
PTFE水性分散体(ダイキン工業株式会社製、商品名:ポリフロンPTFE D−610C、PTFEの380℃での溶融粘度:120万Pa・s)とFEP水性分散体(ダイキン工業株式会社製、商品名:ネオフロンFEP ND−110)を樹脂重量比率がPTFE:FEP=99:1となるように混合し、ガラス布(日東紡績株式会社製、WE05E)に含浸させた後、乾燥炉にて100℃で水分を乾燥させ、その後280℃で熱処理して厚み0.06mmの樹脂含浸基材を作った。
この含浸基材を5枚重ねて、両面にPFAからなる25μm厚みのフィルムを1枚ずつ重ねて、さらに両面外側に銅箔(厚み0.018μm)を2枚重ねて310℃(FEPの融点以上の温度、PTFEの一次融点(338℃)未満の温度)、2MPa、30分間の条件で加圧成形して積層板を作成した。
【0168】
この積層板の比誘電率、tanδを12GHzにおいて空洞共振器法で測定したところ、比誘電率 3.00、tanδ 0.0002であった。
【0169】
比較例1
PTFE水性分散体(ダイキン工業株式会社製、商品名:ポリフロンPTFE D−610C、PTFEの380℃での溶融粘度:120万Pa・s)をガラス布(日東紡績株式会社製、WE05E)に含浸させた後、乾燥炉にて100℃で水分を乾燥させ、その後280℃で熱処理して厚み0.06mmの樹脂含浸基材を作った。この含浸基材を5枚重ねて、両面にPFAからなる25μm厚みのフィルムを1枚ずつ重ねて、さらに両面外側に銅箔(厚み0.018μm)を2枚重ねて360℃(PTFEの一次融点を超える温度)、2MPa、30分間の条件で加圧成形して積層板を作成した。この積層板の比誘電率、tanδを12GHzにおいて空洞共振器法で測定したところ、比誘電率 3.31、tanδ 0.0006であった。
【0170】
比較例2
FEP水性分散体(ダイキン工業株式会社製、商品名:ネオフロンFEP ND−110)をガラス布(日東紡績株式会社製、WE05E)に含浸させた後、乾燥炉にて100℃で水分を乾燥させ、その後280℃で熱処理して厚み0.06mmの樹脂含浸基材を作った。この含浸基材を5枚重ねて、両面にPFAからなる25μm厚みのフィルムを1枚ずつ重ねて、さらに両面外側に銅箔(厚み0.018μm)を2枚重ねて310℃、2MPa、30分間の条件で加圧成形して積層板を作成した。この積層板の比誘電率、tanδを12GHzにおいて空洞共振器法で測定したところ、比誘電率 3.32、tanδ 0.0007であった。
【0171】
比較例3
PTFE水性分散体(ダイキン工業株式会社製、商品名:ポリフロンPTFE D−610C、PTFEの380℃での溶融粘度:120万Pa・s)とFEP水性分散体(ダイキン工業株式会社製、商品名:ネオフロンFEP ND−110)を樹脂重量比率が9:1となるように混合し、ガラス布(日東紡績株式会社製、WE05E)に含浸させた後、乾燥炉にて100℃で水分を乾燥させ、その後280℃で熱処理して厚み0.06mmの樹脂含浸基材を作った。この含浸基材を5枚重ねて、両面にPFAからなる25μm厚みのフィルムを1枚ずつ重ねて、さらに両面外側に銅箔(厚み0.018μm)を2枚重ねて360℃(PTFEの一次融点を超える温度)、2MPa、30分間の条件で加圧成形して積層板を作成した。
【0172】
この積層板の比誘電率、tanδを12GHzにおいて空洞共振器法で測定したところ、比誘電率 3.31、tanδ 0.0006であった。
【0173】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0174】
本発明の含浸体の製造方法は、上述の構成よりなるので、比誘電率及び誘電正接が低く、機械的強度に優れた含浸体を製造することができる。本発明の多層プリント配線板用積層板の製造方法は、上述の構成よりなるので、誘電体損を抑え、かつ機械的強度に優れた多層プリント配線板用積層板を製造することができる。