(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という。)について詳細に説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
(画像形成装置の構成)
図1は、第1の実施の形態に係る画像形成装置を示す説明図である。
【0018】
図1には、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置100が示されている。
図1に示された画像形成装置100は、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kと、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10と、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー画像を記録材(記録紙)である用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写部20と、二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着装置60と、を備えている。また、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有している。
【0019】
本実施の形態において、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、矢印A方向に回転する感光体ドラム11の周囲に、これらの感光体ドラム11を帯電する帯電器12と、感光体ドラム11上に静電潜像を書込むレーザ露光器13(
図1中、露光ビームを符号Bmで示す)と、各色成分トナーが収容されて感光体ドラム11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14と、感光体ドラム11上に形成された各色成分トナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16と、感光体ドラム11上の残留トナーが除去されるドラムクリーナ17と、等の電子写真用デバイスが順次配設されている。これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト15の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の順に、ほぼ直線状に配置されている。
【0020】
中間転写体である中間転写ベルト15は、ポリイミド又はポリアミド等の樹脂にカーボンブラック等の帯電防止剤を適当量含有させたフィルム状の無端ベルトで構成されている。そして、その体積抵抗率は、10
6Ωcm〜10
14Ωcmとなるように形成されており、その厚さは、例えば、0.1mm程度に構成されている。中間転写ベルト15は、各種ロールによって、
図1に示すB方向に所定の速度で循環駆動(回動)されている。この各種ロールとして、定速性に優れたモーター(図示せず)により駆動されて中間転写ベルト15を回動させる駆動ロール31と、各感光体ドラム11の配列方向に沿ってほぼ直線状に延びる中間転写ベルト15を支持する支持ロール32と、中間転写ベルト15に対して一定の張力を与えるとともに中間転写ベルト15の蛇行を防止する補正ロールとして機能するテンションロール33と、二次転写部20に設けられるバックアップロール25と、中間転写ベルト15上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニングバックアップロール34と、を有している。
【0021】
一次転写部10は、中間転写ベルト15を挟んで感光体ドラム11に対向して配置される一次転写ロール16により構成されている。一次転写ロール16は、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは、例えば、鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層は、例えば、カーボンブラック等の導電剤を配合したアクリロニトリル ブタジエンゴム(NBR)とスチレン・ブタジエンゴム(SBR)とエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)とのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が10
7Ωcm〜10
9Ωcmのスポンジ状の円筒ロールである。そして、一次転写ロール16は、中間転写ベルト15を挟んで感光体ドラム11に圧接配置され、さらに一次転写ロール16には、トナーの帯電極性(マイナス極性とする。以下同様。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体ドラム11上のトナー像が中間転写ベルト15に順次、静電吸引され、中間転写ベルト15上において重畳されたトナー像が形成されるようになっている。
【0022】
二次転写部20は、中間転写ベルト15のトナー像担持面側に配置される二次転写ロール22と、バックアップロール25と、によって構成される。バックアップロール25は、EPDMゴムからなる内層部とカーボンを分散したEPDM及びNBRのブレンドゴムからなるチューブ状の表面層とから構成されている。そして、その表面抵抗率が10
7Ω/□〜10
10Ω/□となるように形成され、硬度は、例えば、70°(アスカーC)に設定されている。このバックアップロール25は、中間転写ベルト15の裏面側に配置されて二次転写ロール22の対向電極をなし、二次転写バイアスが安定的に印加される金属製の給電ロール26が当接配置されている。
【0023】
一方、二次転写ロール22は、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層と、で構成されている。シャフトは、例えば、鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムから形成され、体積抵抗率が10
7Ωcm〜10
9Ωcmのスポンジ状の円筒ロールである。そして、二次転写ロール22は、中間転写ベルト15を挟んでバックアップロール25に圧接配置され、さらに二次転写ロール22は接地されてバックアップロール25との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写部20に搬送される用紙P上にトナー像を二次転写する。
【0024】
また、中間転写ベルト15の二次転写部20の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト15上の残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト15の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーナ35が接離自在に設けられている。一方、イエローの画像形成ユニット1Yの上流側には、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにおける画像形成タイミングをとるための基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)42が配設されている。
【0025】
この基準センサ42は、中間転写ベルト15の裏側に設けられた所定のマークを認識して基準信号を発生しており、この基準信号の認識に基づく制御部40からの指示により、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは画像形成を開始するように構成されている。また、黒の画像形成ユニット1Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が配設されている。
【0026】
さらに、本実施の形態の画像形成装置では、用紙搬送系として、用紙Pを収容する用紙トレイ50と、この用紙トレイ50に集積された用紙Pを所定のタイミングで取り出して搬送するピックアップロール51と、ピックアップロール51により繰り出された用紙Pを搬送する搬送ロール52と、搬送ロール52により搬送された用紙Pを二次転写部20へと送り込む搬送シュート53と、二次転写ロール22により二次転写された後に搬送される用紙Pを定着装置60へと搬送する搬送ベルト55と、用紙Pを定着装置60に導く定着入口ガイド56と、を備えている。
【0027】
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の基本的な作像プロセスについて説明する。
図1に示すような画像形成装置では、画像読取装置(IIT)(図示せず)やパーソナルコンピュータ(PC)(図示せず)等から出力される画像データは、画像処理装置(IPS)(図示せず)により所定の画像処理が施された後、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって作像作業が実行される。IPSでは、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の所定の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、レーザ露光器13に出力される。
【0028】
レーザ露光器13では、入力された色材階調データに応じて、例えば、半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々の感光体ドラム11に照射している。画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各感光体ドラム11では、帯電器12によって表面が帯電された後、このレーザ露光器13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。
【0029】
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの感光体ドラム11上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム11と中間転写ベルト15とが当接する一次転写部10において、中間転写ベルト15上に転写される。より具体的には、一次転写部10において、一次転写ロール16により、中間転写ベルト15の基材に対し、トナーの帯電極性(マイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を中間転写ベルト15の表面に順次重ね合わせて一次転写が行われる。
【0030】
トナー像が中間転写ベルト15の表面に順次一次転写された後、中間転写ベルト15は移動してトナー像が二次転写部20に搬送される。トナー像が二次転写部20に搬送されると、用紙搬送系では、トナー像が二次転写部20に搬送されるタイミングに合わせてピックアップロール51が回転し、用紙トレイ50から所定サイズの用紙Pが供給される。ピックアップロール51により供給された用紙Pは、搬送ロール52により搬送され、搬送シュート53を経て二次転写部20に到達する。この二次転写部20に到達する前に、用紙Pは一旦停止され、トナー像が担持された中間転写ベルト15の移動タイミングに合わせてレジストロール(図示せず)が回転することで、用紙Pの位置とトナー像の位置との位置合わせがなされる。
【0031】
二次転写部20では、中間転写ベルト15を介して、二次転写ロール22がバックアップロール25に押圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された用紙Pは、中間転写ベルト15と二次転写ロール22との間に挟み込まれる。その際に、給電ロール26からトナーの帯電極性(マイナス極性)と同極性の電圧(二次転写バイアス)が印加されると、二次転写ロール22とバックアップロール25との間に転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト15上に担持された未定着トナー像は、二次転写ロール22とバックアップロール25とによって押圧される二次転写部20において、用紙P上に一括して静電転写される。
【0032】
その後、トナー像が静電転写された用紙Pは、二次転写ロール22によって中間転写ベルト15から剥離された状態でそのまま搬送され、二次転写ロール22の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55へと搬送される。搬送ベルト55では、定着装置60における最適な搬送速度に合わせて、用紙Pを定着装置60まで搬送する。定着装置60に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着装置60によって熱及び圧力で定着処理を受けることで用紙P上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙載置部に搬送される。
【0033】
一方、用紙Pへの転写が終了した後、中間転写ベルト15上に残った残留トナーは、中間転写ベルト15の回動に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニングバックアップロール34及び中間転写ベルトクリーナ35によって中間転写ベルト15上から除去される。
【0034】
次に、本実施の形態の画像形成装置に用いられる定着装置60について説明する。
【0035】
(定着装置の構成)
図2は、
図1に示す画像形成装置に用いられる定着装置の断面図である。
【0036】
定着装置60は、定着部材の一例としての定着ロール61と、加圧部材の一例としてのエンドレスベルト62と、エンドレスベルト62を介して定着ロール61から押圧される圧力部材の一例としての圧力パッド64と、定着ロール61を加熱する加熱部材90とにより主要部が構成されている。
【0037】
定着ロール61は、金属製のコア(円筒状芯金)611の周囲に耐熱性弾性体層612、及び離型層613を積層して構成された円筒状ロールであり、回転自在に支持されて所定の表面速度(例えば、194mm/sec)で回転する。本実施の形態の定着ロール61は、外径が軸方向で一様な所謂ストレートロールで形成されている。
【0038】
定着ロール61の内部には、発熱源として、例えば、定格600Wのハロゲンヒータ66が配設されている。一方、定着ロール61の表面には温度センサ69が接触して配置されている。画像形成装置の制御部40は、この温度センサ69による温度計測値に基づいてハロゲンヒータ66の点灯を制御し、定着ロール61の表面温度が所定の設定温度(例えば、175℃)を維持するように調整している。
【0039】
エンドレスベルト62は、出力画像に継ぎ目に起因する欠陥が生じないように、原形が円筒形状に形成された継ぎ目がない無端ベルトである。エンドレスベルト62は、エンドレスベルト62の内部に配置された圧力パッド64とベルトガイド部材63と、さらにはエンドレスベルト62の両端部に配置されたエッジガイド部材80(後述する
図3参照)と、によって回動自在に支持されている。そして、ニップ部Nにおいて定着ロール61に対して圧接されるように配置され、定着ロール61に従動して回動(例えば、194mm/sec)する。また、エンドレスベルト62の内周面と圧力パッド64との摺動抵抗を小さくするために、圧力パッド64のエンドレスベルト62との接触面に摺動シート68が配設される。
【0040】
加熱部材90は、定着ロール61の外周面(圧接部分H)に図示しない加圧機構によって圧接されている。この加熱部材90は、本体として金属等の熱伝導性の高い材料でできたパイプ91と、パイプ91の内部に設けられた抵抗発熱体93と、パイプ91の内部に封入された液状の熱媒92とを有し、抵抗発熱体93がパイプ91中を移動可能な構造となっている。
【0041】
(加熱部材の構成)
図3は、定着装置60に用いられる加熱部材90の構成の一例を示す斜視図である。また、
図4(a)〜(c)は、加熱部材90の構成の一例を示す断面図である。
【0042】
加熱部材90は、金属製のパイプ91の内部に、液体等の熱媒92と、抵抗発熱体93とが配置されており、熱媒92と抵抗発熱体93は、隔壁により隔てられている。また、熱媒92と抵抗発熱体93は、中心軸94を中心にパイプ91に対し回転可能となっている。
【0043】
この加熱部材90は、
図4(a)に示すように、抵抗発熱体93が圧接部分Hに近接するように配置されることで、圧接している定着ロール61に対し外部加熱部材として機能する。
【0044】
また、加熱部材90は、
図4(c)に示すように、抵抗発熱体93が
図4(a)に示す状態と180度反対方向に配置されることで、温度のばらつきを抑制する温度ばらつき抑制部材として機能する。この場合、抵抗発熱体93の発熱を止めることにより、より低温の温度ばらつき抑制効果を達成するための温度ばらつき抑制部材として機能する。
【0045】
また、加熱部材90は、
図4(b)に示すように
図4(a)と
図4(c)の中間の状態において、温度ばらつき抑制部材及び加熱補助部材として機能する。
【0046】
ここで、
図5は、定着装置におけるエンドレスベルト62が支持される構成を示す説明図である。
図5は、用紙Pの搬送方向下流側から見た定着装置60の一方の端部領域を示している。
【0047】
図5に示すように、エンドレスベルト62の内部に配置されたホルダ65の両端部にエッジガイド部材80が配設されている。エッジガイド部材80は、ニップ部Nとその近傍に対応する部分に切り欠きが形成された円筒状、すなわち断面がC形状のベルト走行ガイド部801と、このベルト走行ガイド部801の外側に設けられ、エンドレスベルト62の外径よりも大きな外径で形成されたフランジ部802と、さらにフランジ部802の外側に設けられ、エッジガイド部材80を定着装置60本体に位置決めして固定するための保持部803と、で構成されている。
【0048】
(各部材の詳細)
次に、定着装置60を構成する各部材について詳細に述べる。
【0049】
まず定着ロール61では、コア(基材)611は、鉄、アルミニウム、SUS等の熱伝導率の高い金属で形成された円筒体で構成されている。コア611の外径および肉厚は、本実施の形態の定着装置60では、圧力パッド64の押圧力が小さいため、
図7に示したロール定着装置の場合より、小径化、薄肉化を図ることができ、通常、外径15mm〜50mm、肉厚はその材料によって異なるが、アルミの場合で1mm〜3mm、SUSや鉄の場合は0.4mm〜1.5mm程度である。
【0050】
耐熱性弾性体層612は、耐熱性の高い弾性体で構成され、特に、ゴム硬度が15°〜45°(JIS−A)程度のゴム、エラストマー等の弾性体を用いるのが好ましい。具体的には、シリコーンゴム、フッ素ゴム等を用いることができる。なかでも、表面張力が小さく、弾性に優れる点でシリコーンゴムが好ましい。本実施の形態の定着装置60では、ゴム硬度が35°(JIS−A)のHTVシリコーンゴムを600μmの厚さでコア611に被覆している。耐熱性弾性体層612の厚さは、通常、3mm以下、好ましくは、0.1mm〜1.5mmの範囲内である。耐熱性弾性体層612のコア611の表面に形成する方法としては、特に制限はなく、例えば、公知のコーティング法、成型などが採用できる。
【0051】
離型層613の材質としては、トナー像に対し適度な離型性を示すものであれば特に制限はなく、例えば、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0052】
離型層613の厚さは、通常、10μm〜50μm、好ましくは15μm〜30μmの範囲内である。離型層613を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば、上述したコーティング法などが挙げられる。また、押出し成型によって形成されたチューブを被覆する方法が挙げられる。本実施の形態の定着装置60では、厚さ30μmのPFAを被覆している。
【0053】
エンドレスベルト62は、出力画像に継ぎ目に起因する欠陥が生じないように、原形が直径15〜40mmの円筒形状に形成された継ぎ目がない無端ベルトであり、ベース層と、このベース層の定着ロール61側の面または両面に被覆された離型層とから構成されている。ベース層は、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等のポリマーにより形成され、その厚みは、30〜200μm、好ましくは40〜125μm、より好ましくは50〜100μm程度である。ベース層の表面に被覆される離型層としては、フッ素樹脂、例えばPFA、PTFE、FEPや、それらの複合材料、又それらの樹脂にカーボンやアルミナ、硫酸バリウムのようなフィラーを配合したもので形成され、その厚みは5〜100μm、好ましくは10〜40μm程度である。
【0054】
圧力パッド64は、エンドレスベルト62の内部に配置され、上述したように、プレニップ部材64aと剥離ニップ部材64bとで構成され、バネや弾性体によって定着ロール61を、例えば、40kgfの荷重で押圧するようにホルダ65に支持されている。プレニップ部材64aには、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の弾性体や板バネ等を用いることができ、定着ロール61側の面は、ほぼ定着ロール61の外周面に倣う凹状曲面で形成されている。本実施の形態の定着装置60では、幅10mm、厚さ5mm、長さ320mmのシリコーンゴムを用いている。圧力パッド64の硬さは、特に制限はなく、通常、JIS A硬度が10°〜40°の範囲である。
【0055】
剥離ニップ部材64bは、PPS、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミド等の耐熱性を有する樹脂、又は鉄、アルミニウム、SUS等の金属で形成されている。剥離ニップ部材64bの形状としては、ニップ部Nにおける外面形状が一定の曲率半径を有する凸状曲面に形成されている。そして、本実施の形態の定着装置60では、エンドレスベルト62は、圧力パッド64により定着ロール61に約40°の巻き付き角度でラップされ、約8mm幅のニップ部Nを形成している。
【0056】
摺動シート68は、低摩擦シートであり、硬質でかつ可撓性を有する低摩擦材料であることが要求される。摺動シート68の具体的な例としては、1)耐熱性の不織布をシート材として用いる方法、2)ガラスクロス等の織布にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂を含浸コートしたものをシート材として用いる方法、3)フッ素樹脂クロス等の織布をシート材として用いる方法、4)ポリイミド等の耐熱樹脂の表面に、プレス型押しで連続した凹凸形状を設け、これをシート材として用いる方法等を挙げることができる。
【0057】
さらに、ホルダ65には、定着装置60の長手方向に亘って潤滑剤塗布部材67が配設されている。潤滑剤塗布部材67は、エンドレスベルト62内周面に対して接触するように配置され、潤滑剤を適量供給する。これにより、エンドレスベルト62と摺動シート68との摺動部に潤滑剤を供給し、摺動シート68を介したエンドレスベルト62と圧力パッド64との摺動抵抗をさらに低減して、エンドレスベルト62の円滑な回動を図っている。また、エンドレスベルト62の内周面や摺動シート68表面の摩耗を抑制する効果も有している。
【0058】
本発明における潤滑剤としては、ベルトとの濡れ性が良いことが好ましい。このような観点から、本発明においては、基油としてフルオロシリコーン油、パーフルオロポリエーテル油等のフッ素オイルを用いることが好ましい。
【0059】
加熱部材90のパイプ91は、アルミやSUS、鉄などの金属を用いることが、その熱伝導性、剛性、加工性の観点から好ましい。抵抗発熱体93は、種種の公知の加熱体が使うことができるが、セラミックヒータ等の抵抗発熱体が好ましい。
【0060】
加熱部材90のパイプ91の表面は、トナーや異物の付着がしないように、離型性の高い、例えばPFAなどのフッ素樹脂の被覆層や、フッ素樹脂含有無電解ニッケルメッキのようなメッキ層を設けることが好ましい。
【0061】
また、熱媒92として封入する液体は、パイプ91に比べて熱容量が大きく安定したものが必要であり、例えば、水やグリセリン、耐熱性のオイル(シリコーンオイルや弗素オイルなど)又は、常温溶融塩であるイオン性液体を用いることができる。特に、イオン性液体は、幅広い温度域において液状で比較的低粘度である上、蒸気圧がほぼ0であり、高温でも揮発しない上、高い比熱容量をもつため熱媒として適している。また、これらの液体に熱伝導を高めるために、無機フィラーや、カーボンナノ粒子などを分散させてもよい。
【0062】
なお、ここでは、定着ロール61に対し、本発明の加熱部材90を適用したが、エンドレスベルト62に対して適用しても構わない。
【0063】
また、ここでは、定着回転体としてロール形状(定着ロール61)、加圧回転体としてベルトを用いたいわゆるフリーベルト定着方式(エンドレスベルト62)に対して適用し説明したが、定着回転体側にもベルトを用いたベルト−ベルト定着方式や、定着側がベルト、加圧側がロールの構成となっているベルト−ロール方式についても、本発明を適用することができる。
【0064】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、
図1に示した画像形成装置に搭載する定着装置であって、異なる加熱部材を用いた定着装置について説明する。なお、第1の実施の形態と同様な構成については同様な符号を用い、その詳細な説明を省略する。
【0065】
図6は、第2の実施の形態に係る加熱部材の構成の一例を示す断面図である。
【0066】
加熱部材90Aは、金属製のパイプ91の内部に、熱媒92と抵抗発熱体の93Aが配置されており、熱媒92中を抵抗発熱体93Aがその端部を中心に回転可能となっている。
図6(a)〜(c)に示すように、抵抗発熱体93Aの端部を中心に回転することで、上記
図4(a)〜(c)に示した例と同等の効果を発揮する。
【0067】
つまり、この加熱部材90Aは、
図6(a)に示すように、抵抗発熱体93Aが圧接部分Hに近接するように配置されることで、圧接している定着ロール61に対し外部加熱部材として機能する。
【0068】
また、加熱部材90Aは、
図6(c)に示すように、抵抗発熱体93Aが
図6(a)に示す状態から60度回転した位置に配置されることで、温度ばらつき抑制ばらつき抑制部材として機能する。この場合、抵抗発熱体93Aの発熱を止めることにより、より低温の温度ばらつき抑制効果を達成するための温度ばらつき抑制部材として機能する。
【0069】
また、加熱部材90Aは、
図6(b)に示すように
図6(a)と
図6(c)の中間の状態において、温度ばらつき抑制部材及び加熱補助部材として機能する。
【0070】
(第3の実施の形態)
図7は、第3の実施の形態に係る加熱部材の構成の一例を示す断面図である。
【0071】
加熱部材90Bは、金属製のパイプ91の内部に、熱媒92と抵抗発熱体の93Bが配置されており、熱媒92中を抵抗発熱体93Bが
図7中の上下方向に移動可能となっている。
図7(a)〜(c)に示すように、抵抗発熱体93Bが移動することで、上記
図4(a)〜(c)に示した例と同等の効果を発揮する。
【0072】
つまり、この加熱部材90Bは、
図7(a)に示すように、抵抗発熱体93Bが圧接部分Hに近接するように配置されることで、圧接している定着ロール61に対し外部加熱部材として機能する。
【0073】
また、加熱部材90Bは、
図7(c)に示すように、抵抗発熱体93Bが圧接部分から遠ざかった位置に配置されることで、温度ばらつき抑制部材として機能する。この場合、抵抗発熱体93Bの発熱を止めることにより、より低温の温度ばらつき抑制効果を達成するための温度ばらつき抑制部材として機能する。
【0074】
また、加熱部材90Bは、
図7(b)に示すように
図7(a)と
図7(c)の中間の状態において、温度ばらつき抑制部材及び加熱補助部材として機能する。
【0075】
(第4の実施の形態)
図8は、第4の実施の形態に係る加熱部材の構成の一例を示す斜視図である。なお、第4の実施の形態は第1〜第3の実施の形態と組み合わせて実施することができるが、一例として第2の実施の形態と組み合わせた場合について説明する。
【0076】
加熱部材90Cは、金属製のパイプ91の内部に、熱媒92と複数の抵抗発熱体93a〜93eが配置されており、熱媒92中を抵抗発熱体93a〜93eがそれぞれその端部を中心に回転可能となっている。つまり、抵抗発熱体93a〜93eは、
図6に示す抵抗発熱体93Aを回転軸方向において5等分したものである。なお、抵抗発熱体は、等分に分割する以外に、加熱部材90Cを通過する用紙の幅の種類に合わせて分割することがより好ましい。
【0077】
この加熱部材90Cは、
図6(a)に示すように、抵抗発熱体93a〜93eのそれぞれが第2の実施の形態の抵抗発熱体93Aのように圧接部分Hに近接するように配置されることで、圧接部分Hに対応する定着ロール61に対し外部加熱部材として機能する。
【0078】
また、加熱部材90Cは、
図6(c)に示すように、抵抗発熱体93a〜93eのそれぞれが第2の実施の形態の抵抗発熱体93Aのように
図6(a)に示す状態から60度回転した位置に配置されることで、温度ばらつき抑制部材として機能する。
【0079】
また、加熱部材90Cは、抵抗発熱体93a〜93eのそれぞれが第2の実施の形態の抵抗発熱体93Aのように
図6(b)に示すように
図6(a)と
図6(c)の中間の状態に配置される場合において、温度ばらつき抑制部材及び加熱補助部材として機能する。
【0080】
以下、上記加熱部材90Cを用いて定着ロール61を加熱及び温度ばらつき抑制行う場合の動作例を説明する。
【0081】
図9(a)及び(b)は、定着装置の動作の一例を示すグラフ図である。
【0082】
図9(a)に示すように、定着装置60を通過する用紙Pの通紙幅がl
1からl
2のd
1である場合であって、温度センサ69が計測する定着ロール61の表面温度が低温オフセット温度T
L1より低い場合、抵抗発熱体93b〜93dが加熱補助部材として機能する。なお、低温オフセット温度T
L1及び高温オフセット温度T
H1は、定着装置60が通紙幅d
1の用紙Pについて未定着トナー像を定着可能な下限温度及び上限温度である。
【0083】
上記動作の後、
図9(b)に示すように、定着ロール61の表面温度は少なくともl
1からl
2の範囲が定着可能領域となり、抵抗発熱体93b〜93dは温度ばらつき抑制部材及び加熱補助部材として機能し、l
1からl
2の範囲の温度を一定に保つ。
【0084】
図10(a)〜(c)は、定着装置の動作の一例を示すグラフ図である。
【0085】
図10(a)に示すように、定着装置60全体をウォームアップした後、定着装置60を複数枚、連続通過した用紙Pの通紙幅がl
1からl
2のd
1であった場合、温度センサ69が計測する定着ロール61の表面温度は、l
1からl
2の範囲において低下し、それ以外の範囲において高温オフセット温度T
H1を超える。
【0086】
次に、
図10(b)に示すように、通紙幅がl
3からl
4のd
2である用紙Pが通紙される場合、通紙幅d
2の低温オフセット温度がT
L2であるとすると、l
1からl
2の範囲は加熱する必要があり、それ以外の範囲は冷却する必要がある。従って、抵抗発熱体93a及び93eは加熱することなく温度ばらつき抑制部材として機能し、抵抗発熱体93b〜dは加熱されて加熱補助部材として機能する。
【0087】
上記動作の結果、l
3からl
4の範囲の定着装置60の表面温度は低温オフセット温度T
L2から高温オフセット温度T
H1の範囲に収まり、通紙幅d
2の用紙Pの定着動作が可能となる。その後、通紙幅d
2の用紙がさらに通紙される場合、抵抗発熱体93a〜93eは温度ばらつき抑制部材及び加熱補助部材として機能し、l
3からl
4の範囲の温度を一定に保つ。
【0088】
(他の実施の形態)
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々な変形が可能である。例えば、定着ロール61に代えてエンドレスベルトを用いた定着ベルトを用いてもよい。また、定着ベルトを用いた場合には、定着ベルトの内周面側から加熱部材90により加熱及び温度ばらつき抑制を行なってもよい。また、エンドレスベルト62、つまり加圧部材に対して加熱部材90を圧接して用いてもよい。
【0089】
(実施例)
以下、実施例に基づき、本実施の形態をさらに具体的に説明する。なお、本実施の形態は実施例に限定されるものではない。まず、実施例の評価項目について説明する。
【0090】
(評価項目1)
ウォームアップ時間:20℃環境下で、定着装置60の表面温度が雰囲気温度と同じ状態から、定着装置に規定の電力を与え、定着回転体の温度検知装置が、定着開始温度(175℃)になるまでの時間を計測した。
【0091】
(評価項目2)
大サイズで厚紙の連続通紙枚数:評価項目1の評価後、一定時間後(本実施例では180sec後とした)に、A3サイズのNcolor157gsm紙(富士ゼロックス社製)を連続通紙し、定着可能な枚数を評価した。
【0092】
(評価項目3)
小サイズ連続通紙枚数:同じく評価項目1の評価後、一定時間後(ここでは、180sec後とした)に、B5サイズのC2紙70gsm(富士ゼロックス社製)をSEF通紙(B5の短辺を定着回転体軸と平行に通紙)で連続通紙し、定着装置60の非通紙部の温度が225℃になるまでの通紙可能枚数を評価した。
【0093】
(定着装置の仕様)
なお、評価に用いた定着装置の各構成部品の仕様は以下のとおりである。
【0094】
定着ロール61は、外径26mm、肉厚1.8mm、長さ360mmである円筒状鉄製のコアの外周面に、厚さ600μmのシリコーンHTVゴム(ゴム硬度33度:JIS−A)の弾性層を設け、この弾性層の表面に、厚さ25μmのテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)のチューブを離型層として被覆し、表面を鏡面状態に仕上げた。
【0095】
定着ロール61のコアの内部には、加熱源としてハロゲンランプ(600w)を配設した。定着ロール61の表面温度は、加熱された定着ロール61の表面に当接した状態で配置された感温素子である温度センサ69及び温度コントローラー(制御部40)とにより175℃に制御した。
【0096】
エンドレスベルト62は、周長94mm、厚さ80μm、幅344mmの熱硬化性ポリイミド樹脂を基材とし、この基材の外周面に、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)が厚さ30μmでコーティングして離型層を形成した。
【0097】
エンドレスベルト62を押圧する圧力パッド64は、幅5mm、厚さ5mm、長さ340mmのシリコーンゴムのプレニップ部材64a上に摺動シート68を設け、摺動シート68表面には、予め潤滑剤として粘度300cStのアミノ変性シリコーンオイル、(KF8009A:信越化学(株)製)を、0.3cc塗布した。摺動シート68の大きさは、幅340mm、長さ60mmとし、ホルダ65の上に配置されたベルト走行ガイドの表面には、ベルト回転方向のリブを設け、エンドレスベルト62の内周面との接触面積を少なくした。圧力パッド64は、エンドレスベルト62を介して図示しない圧縮コイルスプリングにより定着ロール61を34.5kgの荷重で押圧した。
【0098】
定着ロール61へのエンドレスベルト62の巻き付け角度は約25°であり、ニップ部の幅は、約6mmとした。図示しないモーターから定着ロール61に伝達された駆動力により、定着ロール61及びエンドレスベルト62は、速度194mm/secで回転させた。
【0099】
上記定着ロール61に、本発明の加熱部材90を圧接し、圧接部Hの圧接ニップ幅を3mmとした。
【0100】
加熱部材90は、SUS製で外径18mm、厚み0.8mmのパイプ表面にフッ素樹脂を30%含有する無電解ニッケルメッキを10μmコートし、そのパイプ内に、抵抗発熱体93として、400Wのセラミックヒータを配置し、熱媒92として、グリセリン(沸点290.℃、熱伝導率300mW/m・K(230℃)を用いた。
【0101】
上記構成で、評価項目1から評価項目3の評価を行った。まず、加熱部材90の位置を
図4の(a)の位置とし、セラミックヒータに電力を供給し発熱させ、外部加熱機能を動作させることで、評価項目1についてウォームアップ時間が24secとなり、評価項目2についてA3厚紙を1分辺り15枚にて、145枚連続通紙可能であった。
【0102】
次に、加熱部材90における抵抗発熱体93の位置を
図4の(c)の位置とし、セラミックヒータへの電力を遮断し、熱媒体による温度ばらつき抑制機能を動作させた上で、評価項目3の小サイズ連続通紙を、B5、SEFで1分辺り27枚で通紙したところ、120枚連続通紙可能であった。
【0103】
(比較例)
加熱部材90を設けない定着装置60の定着ロール61内のハロゲンヒータ66に400wのハロゲンランプを追加して合計1000wとすることで、実施例と同等の電力供給量として、実施例と同じ条件で評価項目1から評価項目3について評価した所、評価項目1としてウォームアップ時間は35secであり、評価項目2として厚紙連続通紙は75枚連続通紙可能であった。
【0104】
評価項目3としての小サイズ連続通紙は65枚であり、連続通紙後に定着ロール61の表面のうち非通紙部の表面温度が225℃を超えてしまい、一旦通紙を中断し、定着ロール61の表面温度のばらつき抑制を行う為のインターバルが必要となった。
【0105】
つまり、評価項目2及び評価項目3について、いずれの枚数も実施例と比べ約半分程度であった。また、評価項目3について、小サイズ連続通紙を実施例と同じ枚数まで達成するには、通紙間隔を空けて、B5、SEFで1分辺り12枚まで下げる必要があった。